シチュエーション
柱から吊し上げられた手首は血の巡りが悪くなり体とは反対にひんやりとしていた。 「んんっ…ふぅ、っふ…!」 もう半刻は経っただろうか。初雪は秘部の入り口への愛撫から逃れようと体を捻る。しかしほとんど爪先しか床に着かない状態での抵抗はたかがしれている。 相手は空いているほうの手を羽で触れるようにそわそわと脇腹や内股を撫で、舌と歯で乳首を交互に弄る。強弱をつけて長い間擦られ続けている蕾は上気した頬と同様に赤く紅潮していた。 「あ、ぁ…も…やっ…です…」 吐く息さえ熱を持つのに、指先は白く震えていた。 先代が大きくした芸妓一家に長女として生まれた初雪は、これといった不自由もなく育った。 そのためか、我が儘と言うほどではないにしろ、女中や丁稚ばかりが周りにいる環境で育った彼女は誰かに従うという行為を何となく疎ましく思った。 生まれつき見えざるもの“妖”が見えていた彼女はある日弟と共に祓い屋に入らないかと京紫という何処となく胡散臭い男に誘われた。そこで初めて誰かの下につくという窮屈さを知り、 つい姉弟で反抗に近い態度をとってしまったのだ。 それでこの「躾」だ。なぜこのような方法で、なぜ自分だけ、という疑問は長時間の愛撫にとうに頭から飛んでいた。 「ひぃっ!っひ、あ、あぅ…」 それまで執拗に入り口だけを弄っていた指先が僅かに中に押しこまれ、恐らく第一関節の半分程度埋め込まれただけなのに、初めてであるせいか大袈裟に息が詰まる。 しかしそれ以上指は侵入せず、息を潜めるようにじっと静止した。 「…あっ…ぃ、痛……っ」 「…物足りないですか?」 「はぁ…っそんな…」 「ぴくぴく震えて、私の指飲み込まれそうですよ」 「ふああっ!あっゃ、ひぃ、ひやぁぁっ!」 荒い呼吸を繰り返しながら反抗的に睨みつけると、笑って揶揄しながら浅いところを激しく掻き回された。京紫に言われた通りにきゅうきゅうと痙攣して指を奥まで誘い込もうとする内部の蜜に気付いてしまい、顔が熱くなる。 「あぁ、あ、あっ、ぁ、はぁっ」 足の力が抜けて頭上に縛られた手にほとんどの体重がかかり、それでも快感は膨れ上がっていく。遊ばれている秘部から蜜が太腿を伝って零れ、それさえも刺激となって初雪を追い詰める。 「一度いきたいでしょう?」 「…そ、な…こと…んんっ」 「言ってしまったほうが楽になりますよ?」 「……っ…ぁ…」 快楽を誘う言葉を唇が耳に触れるほどの距離で囁かれ、初雪は無意識に物欲しげな視線を返す。 柱から吊し上げられた手首は血の巡りが悪くなり体とは反対にひんやりとしていた。 「んんっ…ふぅ、っふ…!」 もう半刻は経っただろうか。初雪は秘部の入り口への愛撫から逃れようと体を捻る。 しかしほとんど爪先しか床に着かない状態での抵抗はたかがしれている。 相手は空いているほうの手を羽で触れるようにそわそわと脇腹や内股を撫で、 舌と歯で乳首を交互に弄る。 強弱をつけて長い間擦られ続けている蕾は上気した頬と同様に赤く紅潮していた。 「あ、ぁ…も…やっ…です…」 吐く息さえ熱を持つのに、指先は白く震えていた。 先代が大きくした芸妓一家に長女として生まれた初雪は、 これといった不自由もなく育った。 そのためか、我が儘と言うほどではないにしろ、 女中や丁稚ばかりが周りにいる環境で育った彼女は 誰かに従うという行為を何となく疎ましく思った。 生まれつき見えざるもの“妖”が見えていた彼女はある日、 弟と共に祓い屋に入らないかと京紫という―― 後に自分達の従者となった ―― 何処となく胡散臭い笑顔が絶えない男に誘われた。 そこで初めて誰かの下につきながら働くという窮屈さを知り、 つい姉弟で、祓い屋の頭領に対し反抗に近い態度をとってしまったのだ。 それで従者であり、保護者である京紫からお説教の後に、この「躾」だ。 なぜこのような方法で、なぜ自分だけ、 という疑問は長時間の愛撫にとうに頭から飛んでいた。 「ひぃっ!っひ、あ、あぅ…」 それまで執拗に入り口だけを弄っていた指先が僅かに中に押しこまれ、 恐らく第一関節の半分程度埋め込まれただけなのに、 初めてであるせいか大袈裟に息が詰まる。 しかしそれ以上指は侵入せず、息を潜めるようにじっと静止した。 「…あっ…ぃ、痛……っ」 「…物足りないですか?」 「はぁ…っそんな…」 「ぴくぴく震えて、私の指飲み込まれそうですよ」 「ふああっ!あっゃ、ひぃ、ひやぁぁっ!」 荒い呼吸を繰り返しながら反抗的に睨みつけると、 笑って揶揄しながら浅いところを激しく掻き回された。 京紫に言われた通りにきゅうきゅうと痙攣して 指を奥まで誘い込もうとする内部の蜜に気付いてしまい、顔が熱くなる。 「あぁ、あ、あっ、ぁ、はぁっ」 足の力が抜けて頭上に縛られた手にほとんどの体重がかかり、 それでも快感は膨れ上がっていく。 遊ばれている秘部から蜜が太腿を伝って零れ、 それさえも刺激となって初雪を追い詰める。 「一度いきたいでしょう?」 「…そ、な…こと…んんっ」 「言ってしまったほうが楽になりますよ?」 「……っ…ぁ…」 快楽を誘う言葉を唇が耳に触れるほどの距離で囁かれ、 初雪は無意識に物欲しげな視線を返す。 「初雪さま」 「ぅ……」 「………」 すると、再び指の動きが止まる。 ねだるように腰が揺れてしまい初雪は俯いた。 「…っあ……あの、もっと、奥…」 「…奥が何ですか?」 「……奥、に…っ…ください…」 震えた声で告げるも更に言葉を強要されて、瞳を揺らしていた涙が零れる。 下を向いていたために頬を濡らすことはなくそれは床に落ちた。 「まあ初めてですからね、それでいいでしょう」 嘘みたいに優しく頭を撫でられたかと思うと、 中にほんの少しだけ埋められた指に僅かに力がこめられ更に侵入してきた。 「や、っぅ、ふっ…」 「初雪さま、ここを開くように意識をしてください」 「や、いゃあっぁぁあっ…!」 弱々しく首を振るが、節の目立つ男性らしい指は構わずに押し入ってくる。 しかしそれも一寸半ほど侵入したところで止まった。 「ふえ? ……」 「この辺、ちょっと痛いですかね?」 「んぅっ…は、い…少し…」 少し奥側の内壁を押し揉まれ、今まで体験した事のない痛みに感覚が襲われる。 正直に頷くと、そうですかと満足げに微笑まれた。 「じゃ、その感じ覚えておいてくださいね。とりあえず一度いかせてあげます」 指が入ったまま、もう一方の手が自身に伸ばされる。 蜜で濡れたものがゆるゆると扱かれ、びくんと赤く染まった体が跳ねた。 「ああっ!!やっ、嫌ぁっ!ひ、っあ、あ、んんっーー…!!」 快楽感を我慢できずに、ぐりぐりと弄られる陰核への刺激から 分泌液を吐き出すと、きゅうと膣に差し込まれたままの指を締め付けてしまう。 長時間愛撫を受けた入り口の襞から何だかよく分からない じんわりとした感覚が背筋を這って、自分に与えられる快感に一瞬の出来事が長く感じた。 「はぁっ……ぅ…ぐすっ」 力の入らない足で立たされたまま、嗚咽を漏らして俯く。 ぽろぽろと涙が零れ、先程出た分泌液同様に床に落ちた。 「それじゃあ今度はこちらを使いましょうか」 「ぇ、やっ…そんなもう無理です…京紫さん…」 「大丈夫ですよ」 ゆっくり埋められた指が動きだし、自然と体が強張る。 京紫は初雪の足を、膝が胸につくほど持ち上げる。 自分の着物を前だけ緩めてそれを取り出すと、散々指で弄った場所にあてがった。 自分の体の事なのにまるで相手のほうがその状態を 把握しているような口振りに初雪は怯えながらも口を噤んだ。 「はーい。深呼吸。吸ってー」 「え、えっ」 狼狽えながらも、有無を言わせない緩やかな命令と笑顔に、 思わず、すうっ、と息を吸い込む。 するとそれに合わせて、拒否させる暇も与えずに奥まで強引に押し進める。 「や、やあ!!っひ、ぃ!あ、ぁっやめっ、んんーーッ!!!」 散々弄ったせいか、それとも中で処女膜が切れて 出血したのか途中で滑りが良くなって、根本まで埋めこんだ。 息をついて組み敷いた相手を見遣ると、初雪は腕で口を押さえていた。 強く噛んで、声をあげないようにしているようだ。 「駄目ですよう。止めたら。さ、吐いてー」 「あっ、ぃぃ!!!ぁ、も、ャ…ッッ!!」 抗えない言葉はまるで呪文のようだ。 ゆっくりと先程確認をとられた場所を再び押されて、ひ、と呼吸が止まった。 震える息を恐々吐き出すと、今度はある一点を押さえていた異物が力を緩めていくので、 初雪は少し安心してきたのか、嗚咽をあげながら息を吐ききった。 「はい、今度は吸う番ですよー」 「ゃ……」 異物を動かされたくなくて中をきつく締め付けると思わぬ快感に襲われる。 まだそんなに強く締めては駄目だと注意しながら、腰を揺すると初雪が小さく呻くのが聞こえる。 力の抜き方を知らない彼女の中は京紫さえ痛みを覚えるほどの締め付けだった。 「じゃもう一度ですよ。吸ってー」 「…ぅ、んんっ…」 「吐いてー」 「っは…ぁぁあっ」 「吸ってー」 「ぃやあああっ」 息を吸ってその部分をゆっくり押され、信じられないほどの強い痛みに体が硬直した。 痛い目に会うことの多いはずの職に手を染めている女が泣くほどの激痛なのだ。 それでも京紫は気にしないで吐いてと続ける。 やめてと震えた声を絞り出す力もなく、何とか拒絶を訴えようとふるふると頭を振る。 そんな彼女の必死の哀願を無視して注挿を繰り返すと、 もはや鳴咽は殺しきれず、その口端からつぅと唾液が伝う。 「い、あぁ…っ、無理で、す…」 「どうしたんですか?」 「やっ…」 「嫌、じゃ分かりませんよ」 「…きょ、…ぁ、っ…!!」 僅かだったが相手が反応を示したので、京紫は一度動きを止めた。 「私の事、憎いですか?」 尋ねると、初雪は、まともに言葉を発せられないほど乱れた呼吸の間に途切れ途切れに、 前に迷惑をかけたから祓い屋は辞めさせられるのかと紡いだ。 私こそ嫌われたのか、と。 その質問には答えずに、いつも通りの胡散臭い笑顔で強く揺さぶった。 「ひ!やあっんぅぅっ!!」 「こら。声をあげたら深呼吸できないでしょう」 「っい…無、理…っは、ぅ」 それでも、形だけでも繕うように努めてゆっくり空気を取り込むと、 すっかり快楽源となったそこを擦られて悲痛な叫び声は喘ぎによく似ている。 長い絶頂に飛びそうになる意識を繋ぎ止めていると、 埋められた異物が更にそこを弄り続けるので、 自分ではもう動かせない体が大きく跳ねた。 極めたと思ったのにそこからさらに浮上する快感を きつく目を瞑って逃がそうとするが、高まる熱は歯止めを知らずに理性を狂わせていく。 「ひぃ!ひ、ぁあっも、もぉ…っ!」 何度も訪れる絶頂に限界を訴えるが 愛撫する手は止めてもらえず、もう一度申し出ようと口を開く。 しかしあまりに強い快楽に声が出なくなっていた。 「……ッぁ…ーーー!っーー…!」 喘ぎ声すら漏らせない事に軽い恐慌状態に陥り、 開いた口の端から飲み込むのを忘れた唾液が伝い落ちる。 これ以上感じては本当に気が狂いそうだ。 しかしそれを伝える術は失われ、初雪は腕を吊られたまま悶えるしかなかった。 「ゃ…ーーーっ!…ーー…っく、ーーー…ッッ!!」 「もう少しですよ、頑張ってください」 すると初雪は早くそうしてと急かすように 感じたことのない中全体がとろけそうな快感にぼろぼろと涙を零し、小さく頷いた。 何度目かの刺激で初雪は体を硬直させた。 腰ががくがくと震え、強すぎる快感に絶頂に達したのだと悟る。 「…、くっ……!」 痙攣するような締め付けで極めて、京紫は中に熱を放った。 どろどろとした流れを初めて感じた初雪は僅かに身を捩ったが、 京紫が最後の一滴まで搾るように奥を突くと、 動かない体は性感にのみ従順に震え、最後にびくん、びくんと痙攣し、 初雪はようやく意識を飛ばすことで快楽地獄から解放された。 目が覚めると先程と同じ部屋だったが、拘束は解かれていた。 働かない頭が夢だっただろうかと錯覚させ、しかし手首の擦れた縄の痕が事実を突き付ける。 「………」 いくら初めて触れられるところを使ったとはいえ、 幼子でもないのにあんなに声をあげて泣き、喘いだなんて。 恥ずかしすぎて涙が出そうになったところに、襖が開いて京紫が戻ってきた。 「喉が渇いたでしょう。お水持ってきました」 「え……あ、…その、……ありがとう…」 「顔真っ赤ですよ」 「だって…あ、あんな事の後で、平然となんかしてられませんよ」 視線を合わせられないまま小さな湯呑みを受け取ると、からかうように笑われる。 「いけませんねぇ、そんなに顔に出やすくて私の主が務まると思っているのです?」 「主…?だって、京紫さんの事いっぱい怒らせたし…」 「それだけで主を外れて貰うと? 私は貴女様の能力も買っているんですよ、初雪さま」 「え……」 「でなければ、甘えたがりで世間知らずのお嬢さまに従ったりしませんよ」 思わず喜びそうになったところにすかさず 水を差すように当てこすりの言葉を繋げられて、初雪は口を噤んだ。 「私は、祓い屋の規則として、一生尽くす主が必要です。なので、貴女様には 弟君の紫苑様と共に私の主を続けて頂きます。なので、今の行為も全ては正統な主の形成の為。 分かってやって下さい。…初雪さま、これは命令ですよ。ほら、頭領相手でしたら、こういう場合は?」 「あ……え…う…承り、まして…えっと…候…?」 慣れない謙譲語でたどたどしく返事をすると、 やはり何か可笑しかったのか京紫は苦笑する。 何度か瞬くと、不安が表情に出たのかやんわりとそれを否定された。 「大丈夫です。可笑しくないですよ、様になってないだけですから。 …さてと。これは良いとして、」 にっこりと笑む従者に嫌な予感がして初雪は思わず身構える。 「内心が顔に出るのは、直していくしかありませんね」 「え」 「今日と同じ方法で訓練していきましょうね?主さま」 「それって………えええええ!! い、嫌ですよ!大体、さっき言った通りに『主を形成する躾』なのでしょう!? 私、もう生意気言ったりしないもんっ…」 「ほら、そうやってすぐ動揺するのがいけないと言っているんです。 それに、気持ち良かったなら一石二鳥じゃないですか」 「それとこれは話が別です!!」 「…というのが私と入りたての初雪さまのなれそめで」 「そうだったのか。でも…」 蘇芳はそこで言葉を切った。廊下を駆ける足音が喧しく近づいてきたためだ。 部屋の前まで来ると、スパンと音を立てて外れそうな勢いで障子が力一杯に開く。 「きょーうーしーさーんー!!紫苑に何か変なこと吹き込んだでしょう!? だって今日、なんか余所余所しいものっ!って…蘇芳さん、いらっしゃったのですか」 「その話、たった今、俺も聞いた」 「ええええええええ?!」 「別に可笑しなことは話していません。初雪さまの幼く、可愛らしい頃のお前の昔話です」 「む、かしの、話って?」 嫌な予感が走り、美しい面差しを引き攣らせる初雪を見上げ、 蘇芳は苦笑する京紫に先程切った言葉の続きを紡ぐ。 「お初専用従者の教育は、ある意味祓い屋随一だね」 ですが、余り躾とやらは効かなかったようで、と笑いながら京紫の苦笑いが深まる。 二人の発言の意味に気付いたのか、それってまさか、 と瞬く間に初雪は顔を赤く染め上げていき、 「な、な、何でベラベラ話すのですか!やっぱり京紫さんなんて大っ嫌い!!!!」 と、叫んだ。 芸妓の仕事をしている時や表での人間関係では腹芸が巧いと言われるほどで、 周りの人達に、ちょっとした悪戯をする方の立場だというのに 従者の京紫が年上だという事もあるのか祓い屋ではその調子が狂わされてしまう。 「はぁ……」 「おや、落ち込んでしまいましたね。大丈夫ですよ、初雪さま 私は初雪さまのそういう愛らしい所が凄く好きですよ。」 「う、うう、う嬉しくないもん…」 「だから鍛えればいいじゃありませんか。私も協力しますしー、蘇芳殿も手伝ってくれるようですよ?ねぇ」 「あ、勿論」 「い、いえいえ!結構ですっ!!じゃあ私はこれで」 同僚二人の笑顔に空気が冷えたような寒気を覚えて初雪はそそくさと部屋を後にした。 顔が熱く、自分でもわかるほど鼓動が激しくなっている。 こんな生理現象、経験でどうにかなるとは思えないのだが。 「―― はぁ」 取り敢えず、弟に忘れて貰いに行こうか。 多分、今頃に過去の自分を責めているだろう事実を知った哀れな彼を思い、 それで初雪は、ようやく少し笑うことが出来た。 SS一覧に戻る メインページに戻る |