シチュエーション
![]() 日の出前にも関わらず、杏種はあまりの寝苦しさに目を覚ましてしまった。 「…あつい…おもい…うぅ…」 掛け布団を蹴り飛ばそうともがくが、濡れた綿に縛られたように身動きがとれない。 ピンときて杏種は華奢な眉を寄せる。 腕を拘束から引き抜き布団をめくると、案の定そこにはスケベ執事の姿があった。 どうせ酔っ払って部屋に侵入したんだろう。杏種の胸を湯たんぽにしてグースカ寝息を立てていた。 「…やっぱり柏木か」 念のため、杏種は自分の体をあらためた。 パジャマは脱がされていないしショーツも穿いたまま。念のため股間を指先で触れてみるが、特に違和感はない。 胸元に柏木の顎髭と不精髭が当たって痛痒いくらいだ。 ―どうやら今日も、杏種の処女膜は無事らしい。 「……」 杏種は口をへの字に曲げた。何だか釈然としない。 よそのお宅のお嬢様とはすぐエッチするくせに。 そりゃ、杏種はちんちくりんで童顔で、バストだって76センチしかないけど…ちょっとくらいはムラムラしないのだろうか。 別にセックスしたい訳じゃないし、処女を卒業したい訳じゃない。 不特定多数のお嬢様と関係を持つ柏木も、簡単に柏木に口説かれてしまうお嬢様も杏種は軽蔑してる。 …でも、この、なんというか、なんだその、蚊帳の外に置かれたような嫌〜なモヤモヤ感。 「…………バ柏木…死ね」 ぐにっ 頬をつねってやると、柏木は何の夢を見ているのか幸せそうに寝言を呟いた。 「もう…痛いってば麻理奈様ぁ…」 杏種の鉄拳が柏木の顔面に落ちた。 ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() |