お戯れ(非エロ)
シチュエーション


男騎士「どうやら私は姫様に嫌われているらしい……だが」
男騎士「それでも、この命をかけてお守りしよう」
姫(うぜえええ……)

侍女「キャーッ!!」

城の中庭からの悲鳴を聞きつけ、重い甲冑を身に付けたまま騎士が馳せ参じる。

騎士「何事か!?」
侍女「ひっ、ひっ、姫さまが落ちっ、落ちてっ!」

そこには震える指先で井戸を指し示す侍女がいた。

騎士「なんとっ!」

慌てて覗き込む騎士の背後に、小さな影が忍び寄る。

姫「ば〜〜〜〜〜っかじゃないの?」

嘲るような声と共に騎士へ与えられたのは、背中への鈍い衝撃。

騎士「ぐっ、う、うわぁ〜〜〜っ!!」

縁に半身を乗り出していた騎士は、仄暗い井戸の中にあっさりと吸い込まれていった。

騎士「ぐふっ、ぶ、ぶはあっ……。な、何をする!?」

騎士が持ち前の素早さを以て甲冑を脱ぎ捨て、立ち泳ぎの姿勢で見上げると、そこには悪戯っぽい笑みを浮かべて中を覗き込む姫の姿があった。

騎士「姫さまっ!?」
姫「ふふっ、不様ね。こんな単純な手に騙されるようでは騎士として失格よ。暫らくそこで反省なさい」

騎士「ご無体な!」
姫「なによ。情けないあんたにはこれがお似合いよ」

衣擦れの音

騎士「姫? いったい何を……お、おやめください!」
姫「ほらほら」

井戸の端にしゃがみ込み、放尿する姫。

騎士「うぷっ、お、おやめくだ」
姫「ほらほら、顔にかかってるわよ」

黄金飛沫を浴びながら、恨めしそうに見上げる騎士。
しかし、そこにいるのは高笑いを続ける姫一人だった。

騎士「侍女殿! そこにおられるのであろう! 姫の無体を止めてはくれぬか!」
姫「ふーん。騎士ともあろう者が、そんな簡単に助けを求めるんだ。しかも女子供に」
騎士「くっ……私個人の助けを求めているのではありませぬ。姫をお止めしたいと言っているのです」
姫「あっそ。そんな言われなくてもすぐに止まるわよ」

放尿が止まり、姫はすっくと立つ。

姫「そんなにいつまでも出続けるわけないでしょう? 人をなんだと思っているの? さっさと上がってきなさい」

騎士は脱ぎ捨てた甲冑をひもで縛り、沈まないように壁に引っかける。
こうしておけば後で回収することもできるだろう。

姫「早く昇ってきなさい」
騎士「は。ただいま!」

壁のあるかなしかの凹凸を探り、騎士は自らの身体を引き上げていく。
ほとんど光の差さない井戸内での登攀は困難を極めたが、そこは国内でも有数の騎士である。
なんとか、半分ほどを登ったところで……

姫「あ、また催してきたわ」
騎士「ひ、姫!?」

再び、衣擦れの音。

姫「ほらほら」
騎士「うっぷ。姫、おやめ、おやめくださいっ!」
姫「そう言いながらも顔はこっちに向けられているけど」
騎士「登って……うぷっ……いる途中だからです!」
姫「見てるでしょ?」
騎士「そのようなご無礼、考えたことも……うぷっ……ございません!」
姫「見てるよね?」
騎士「そもそも逆光です!」
姫「見ようとはしたのね?」
騎士「あ、いえ、そのような……」

あれから何とかして上がることのできた騎士。
すでに姫の姿はなく、侍女がタオルと温かいスープを用意して待っていた。

騎士「すまないな。貴方達にも迷惑をかけている」
侍女「いいえ。姫様が無茶をなさるのは貴女相手の時だけです」
騎士「なんですと?」
侍女「貴女がいない時は、慈悲深く聡明で、とっても愛らしい姫様なのですよ」
騎士「……人に尿をかけるのが?」
侍女「きっと、姫様なりの親愛のあらわれかと」
騎士「どこの獣ですか。そんな王族は困ります」
侍女「ですよね」
騎士「しかし……あのお戯れが私相手の時だけだとすれば……」
侍女「ええ。貴殿一人が我慢すれば済むことです」
騎士「な……」
侍女「これも国のため。忠誠を誓った王のため。騎士の務めではないですか」
騎士「…………」






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