お嬢さまそうではありません
シチュエーション


「お嬢様そうではありません」

少年は首を横に振りそっと少女の手に自分の手を持っていく。

「う、五月蝿い! わかってオル!」

フリルの付いた薄桃色のかわいいエプロンを着た少女は、
頭の後ろに付いたポニーテールを激しく降り、少年の手を払いのけると、
コーヒーカップの中にスプーンを入れる。

「あっ! 駄目ですそれではお客様にお出しできません」
「なぜじゃ!? 之はかき混ぜる為の物であろう!」

少年は静かに首を振り、

「スプーンはコーヒーカップの手前に置くのです、そして取っ手は右側に来るように置いて下さい」
「うう〜」

新しいスプーンを置きなおすと、よたよたと危ない足取りで、お客の待つテーブルへと少女は進んでいく。

「お嬢様が急に『社会勉強をしてみたい!』と言われたから、知り合いの方にお願いしましたが……」

今にもこぼすか、こぼさぬかと言う絶妙な足取りで運ぶ姿に客の視線が集まる。

「はわわわぁ……あ、あう」

「おいおい大丈夫か?」
「お嬢ちゃん、しっかり」

厨房からコーヒーを運ぶまで大仕事だ。

「ま、またせた、……あ、いや、お……、お待たせした!」

店中に間違いが伝わるくらい、ハッキリした声で挨拶するとカタンとコーヒーを置く。

『コーヒー一杯でドンだけ待たせるんだ』

男はそう言い掛け、持って来た少女の顔を見る。
其処には満面の笑みをたたえた愛らしい少女の顔があり、男は目線を反らすと、

「ハイ、ありがとう……」

一言ぽつりと言った。
ソレを聞いた少女はパッと顔をいっそう明るくし。

「うむ、大儀であった!」

大声で叫んだ。
それは、およそ店じゅうの人間が心の中で突っ込みを入れた瞬間であった。

「はふ〜」

ピークを過ぎ、客が居なくなったのを見て少女はため息をつく。

「おつかれ……さまです」

その傍らで壁にもたれかかり肩で息をする少年が、小さく返事をした。
『少女が何かするたびに飛んで行ってはフォローをする』その繰り返しで疲労困憊していた。

「大丈夫? 澤木ちゃん」

店のマスターが心配そうに声をかけてくるが、

「はぃ……」

小さく返事をするのがやっとであった。

「ふむ、澤木は少し休んでおれ、後はやっておくゆえ」

小さい胸を誇らしげに反らし両手を腰に置く。

「紙ナプキンの‘ホジュう,も理解したのじゃ」
「‘ホジュう,って、……」

少年が絶望しかけた時、

ピンポン。
チャイムが鳴り。

「お、また誰かきたのぅ、行って来るのじゃ」

パタパタと少女がポニーテールを揺らし子犬のように走っていく。

「元気なお嬢さまですね」
「ええ、旦那様も、奥様も元気なお子様を欲しがられておられ、巴お嬢さまが元気に育ちいつも喜んでおられます」

まあそのぶん、一般常識が非常に残念な事になってしまったのだが……。
そう澤木が言いかけたとき、パタパタと巴が戻ってきた。
やがて、コーヒーをカップに入れると、そのまま客席へは向かわず、なぜか、更衣室へと入っていく。
そして数分後、何故か体育着に着替えた巴はそのままコーヒーを持って、客のところへと走って行く。

その客は困惑気味に体操服姿の少女を見つめていた。

「何じゃ、お主が『見たい』といったから、着替えてきたのだぞ!」
「 いえ……ぼくは……『飲みたい』と……」
「なんと!? そ、そうか……うう、わかった! この巴、神城家の名に誓い、一度受けた事は必ず守るのじゃ!」

そう言うと、巴はモタモタとテーブルの上に上がる。
体操着姿の少女が突然目の前でテーブルに乗り始め、客は唖然としたまま口を開けている。

「貸すが良い」

そう言ってコーヒーを手に取った。

「まだ少し熱いのぅ……じゃがしかし、約定を違えるのは恥じゃ」

と、独り言を言いながら意を決したようにチョロチョロと自分の体操着にコーヒーをかけ始めた。
見るまに真っ白だった体操着は茶色く染まり、トロトロと下に零れ、股間の部分に集まってくる。

「ふぅ、ふわぁ! あ、あついぃ……! さ、さあ早く口を近づけて飲むが良い」
「えっ? え!?」

客が狼狽していると、 

「ちょっと待て! 貴様! お嬢さまに何をしてる!」

事態の異常さに澤木が走りより男の胸倉に掴みかかる。

「えっ!? わ、わたしは……」
「やめよ澤木!」

その時、巴の凛とした声が店に響いた。

「私がこの者の要求を受けると言ったのじゃ、おぬしは下がっておれ!」

両腕を後ろに付き二本の手で体を支えるようにしながらゆっくりと足を開く、

「さ、さあ、家の者が失礼をした、後でキツク叱るゆえ、ゆっくりと飲むが良い」
「巴お嬢さま……」

ユックリと手を離し、客に深く頭を下げると澤木は後ろに下がる。

「ほれ早くせよ、足りぬのであれば……」

再びチョロチョロと巴は今度は直接股間部分にコーヒーをかけ始めた。

「え、ええ、は、はい……」

男はゆっくりと股間部分に顔を近づけた。
コーヒーのにおいに混じり、少女の柔らかい太ももの匂いと、コーヒーが染込んだ体臭と混ざった体操着の匂いが鼻を打つ。。

「ひゃ、ひゃうぅん!」

唇が触れた瞬間に、巴は大きく仰け反り、男の顔を太ももで締め上げる。

目の前の、冷たいコーヒーと、少女の程よく蒸らされた体操着の暖かな体温。
そして、両足の少しひんやりとした感触を味わいながら、男はズルズルと音を立てて、飲み干してゆく。

「お、おと! 音を立ててすすっては駄目なのじゃ!」

少女の過敏な部分に舌が這わせられ、なめられ、啜られるたびに、巴は体を仰け反らせ、
ぴくぴくと腰を浮かせる。

「あ、ああ! だめぇ! 駄目なのじゃ!」

大きな声を上げ、巴はポニーテールを激しく揺らす。
濡れた体操服が体にペッタリと張り付き、少女の小さな体の線をハッキリと浮き彫りにしていた。
小さな胸の形がツンと膨らむ。
苦しさのあまり、両手で客の頭を押さえつけ、ガクガクと体を動かす巴。

「えっ! ちょ、く、くるし……!」

男は太ももを抑え、一端頭を離そうとするが、その度に頭を動かすので逆に、
刺激を高める結果になる。

「ふ、ふわああぁ! お、おかしくなりそうじゃ! ふわあ!」

体操着とその下の下着越しに刺激を受けイヤイヤと巴は首を振る。
だがその、抵抗が逆に自分自身を追い詰めていく。

「あ、あああ! だ、だめじゃ! 駄目……! あ、あああぁああ!!」

ついにガクンと大きく身を震わせ巴はガクリと力尽きる。
その途端、今度は内側よりトロトロとした液体が濡れた体操服を、湿らしていく。

「あ、ああぁぁぁ……」

締め付けていた太ももや、押さえつけていた両手が離れ、ゆっくりと巴は崩れ落ちて行った。



「オイアンタ! どういうつもりだ!!」

澤木は怒りに身を震わせながら男を睨みつける。

「い、いや、私はただ……」
「落ち着け澤木、この者が『ブルマー姿が見たい』と申したので着替えたのだが……」

ハァ、とため息をつくと、

「まさか、‘見たい,ではなく、‘飲みたい,であったとは……」

少しうなだれる巴。

今は着替え終わりまたもとの制服に戻っている。

二人に挟まれ、男はおどおどとした様子でチラリと澤木を見つめると、

「いや、私は『ブルーマウンテンが飲みたい』と言ったのですが……」

と、呟く。

その後、澤木は客に土下座をして謝り、コーヒー代630円彼持ちとなった。


「むう、今日は色々勉強になったのじゃ」
「はぁ」

帰りの車の中、誇らしげな顔で呟く巴、その横でうなだれる澤木。

「なるほど、客のゆう事を全て聞いていては駄目という事なのじゃな」

うんうんとうなづく少女を見て。

「お嬢さまそうではありません」

と、彼は心の中で呟いた。






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