緋色の深夜/元ネタ:はみだし刑事情熱系
シチュエーション


一度は解散の危機にさらされた広域捜査隊が本庁上層部の判断で存続されることが決定して数ヶ月が経ったある日のことである。
その日はこれといった事件もなかったので広域メンバーの刑事たちは既に帰り、オフィスには兵吾と玲子だけが残った。

ピピピ・・・

兵吾の携帯電話が鳴る。愛娘・みゆきからのメールだ。

『今日は友達の家に泊まります。』
「友達?どうせ武田じゃないのか?」

みゆきの年上の恋人のことをよく思っていない兵吾はそうひとりごちると携帯電話の電源を切った。

「高見さん、何見てたの?」

玲子が兵吾に声をかけた。

「みゆきからのメール。あいつ、今日はダチの家に泊まるってさ」
「そうなの・・・あの子、今朝家を出るときは何も言わなかったけど」

玲子が心配そうな口調で言う。

「大丈夫大丈夫、みゆきのことだから明日になりゃ元気に帰ってくるって、きっと」

兵吾は心配するなとでも言うように玲子の背中をポンポンと叩いた。

「それもそうかも。あの子は誰かさんに似て悪運が強いものね」
「おい、それどういうことだよ」

玲子の言葉に兵吾は少しむすっとしたが、内心では別のことを考えていた。

(久しぶりに玲子と二人きりか・・・・)

「そろそろ帰ろうかしら。」

そう言ってオフィスを出た玲子を兵吾は追いかけた。

「玲子、待ってくれ!今日はお前んちに泊めて欲しいんだ」
「どうしたの?いきなり」

兵吾は照れ笑いしながら答えた。

「だって、毎晩カップ麺やコンビニ弁当ばかり食ってるわけにもいかないだろ?たまにはお前の手料理が食いたいよ」
「全くしょうがないわねえ」

玲子は半ば呆れつつも、兵吾が自分の家に泊まることを許した。

兵吾は久しぶりに玲子の家の玄関をまたいだ。多少殺風景な自分の部屋とは明らかに異なる空気に、彼の胸は高鳴った。

「高見さん、炒飯でいいかしら?」

玲子の優しい声ではっと我に帰る兵吾。

「玲子の作るもんなら何でもいいよ」
「本当?」

玲子の顔に少女のような笑みが浮かぶ。
キッチンに立ち、フライパンを振る玲子の表情はリビングにいる兵吾には見えないが、きっとどこにでもいる主婦のそれだと兵吾は思った。
やがてリビングに香ばしい香りが漂い始め、玲子手製の炒飯が出来上がった。
兵吾は無言でそれをかき込み、あっという間に平らげた。

「美味かったよ、玲子」

兵吾の満足そうな表情を見ていると、玲子の脳裏にかつての幸せな記憶がよみがえって来た。
今私の目の前にいる男はいつもこうだった。私の料理をいつも美味しそうに平らげ、私にやんちゃな坊やみたいな笑顔を見せてくれた。
警察という男社会の中でなめられないように女を捨てて生きてきた私を一人の女として認めてくれて、私を心底から愛してくれた・・・

「玲子、どうした?」
「ううん、何でもないわ」

兵吾に声をかけられ、玲子は少し気恥ずかしくなった。

「私、これからお風呂沸かしてくるわね」

玲子はそう言ってバスルームに向かった。

「サンキュー、俺、ちょうどひとっぷろ浴びたかったんだ」
「そうなの。じゃあ脱衣所にバスローブ置いておくわ」

玲子は真新しいタオル地のバスローブを脱衣所の籠の中に入れた。バスローブは、玲子が兵吾から「再婚指輪」をもらった翌日に、兵吾の為に内緒で購入してずっとしまいこんでいた物だった。
それから少し時間が経ち、兵吾はバスルームに向かった。

少し熱めの風呂に浸かりながら、兵吾は父親であることよりも刑事であることを優先させたために妻の愛を失ってしまった時のことを思い出していた。
あの時俺が判断を誤らなければ、幼くか弱かったみゆきを全力で守っていれば、ずっと玲子と夫婦でいられたのに。本当に馬鹿だったよなあ、
俺・・・

「高見さん、私も入るわよ」

バスルームのドアを開け、玲子が入ってきた。玲子は兵吾の目前で体に巻いていたバスタオルを取り、体を洗い始めた。
玲子の小柄だが均整の取れた美しい裸体は、物思いに耽っていた兵吾から暗い気分を消し去った。

「玲子・・・!」

兵吾は湯船から出ると、全身についた石鹸の泡を洗い流す為にシャワーを浴びている玲子に抱きついた。

「高見さん、ちょ、ちょっと待って」

玲子の声に構わず兵吾は玲子を強く抱き締め、唇を奪った。兵吾がキスを繰り返す度に玲子の体に兵吾の胸板や熱くなった下半身が当たる。
出しっぱなしのシャワーに濡らされながらの抱擁と、兵吾からの久しぶりのキスは、玲子の気持ちを高ぶらせた。

「高見さん、離して。私が気持ちよくさせてあげるから」

玲子はシャワーを止めると跪き、兵吾のものを口に含んで舌を動かした。

「玲子、お前そんなこと・・・どこで、覚えた・・・・?」

気持ちよさと恥ずかしさで兵吾の言葉が途切れ途切れになる。
玲子は顔を真っ赤にしている兵吾を見上げながら舌の動きをいっそう強め、兵吾が果てると、口の中に放出された精液を全て飲み干した。

「なかなかよかったぜ。」

そう言うと兵吾はバスルームを出て、濡れた体をタオルで拭いた。
みゆきの読んでいた少女雑誌の記事を内緒で読み、その内容を真似してやってみた口での愛撫を褒められ、玲子は少し嬉しくなった。

「玲子、今日は一緒に寝よう。俺、お前としたくなっちまった」

脱衣所から兵吾の声が聞こえ、玲子はゆっくりと立ち上がった。
すると、先程の熱いシャワーと抱擁で体が温められて血の巡りが良くなったからか、玲子の両脚の間からたらたらと血が流れ出した。

「高見さんごめんなさい、私今夜はダメだわ」

玲子が出したバスローブに着替えていた兵吾はドアを開けて玲子に聞いた。

「どうしてだよ?」

玲子は再びバスタオルで体を隠し、うつむきながら言った。

「生理になっちゃったみたいなの。今の私としたら、高見さん血まみれになっちゃうわ」
「何言ってんだよ。俺たち仕事で血は見慣れてるだろ?」

兵吾はそう言うと玲子を抱きかかえ寝室に向かった。
兵吾は玲子をベッドに横たえると彼女の体を隠しているバスタオルを剥ぎ取り、乳房を愛撫し始めた。
兵吾の薄い唇に乳首を吸われ、玲子の顔が赤らむ。
何度も強く吸われ、時々軽く歯を立てられ、その度玲子の口から熱い吐息が漏れる。
兵吾は普段見られない玲子の悩ましく淫らな表情を堪能し、玲子の乳首から口を離した。

「お前やっぱり感じやすいんだな」
「それは高見さんが・・・」

玲子は兵吾と別れてから失意の中で他の男に体を許したことがあったが、乳房の愛撫だけで自分をここまで感じさせてくれる男は兵吾だけだった。

「玲子、四つん這いになって俺の方にケツ向けろ」

玲子は兵吾の言葉に素直に従う。

「力抜いてろよ」

玲子の秘所に兵吾の男にしては細い指が一本、また一本と入り込む。最愛の男の指が自分の中で動く度、玲子の体の奥が熱くなる。

「そろそろいいか?」

兵吾は血と愛液でヌルヌルになった玲子の秘所から指を引き抜くと、自身の硬いものをそこに突き入れた。

「くっ・・・」

兵吾の激しい腰の動きと、自分の体の一部が兵吾のもので満たされる感覚に玲子は唇を噛み締める。

「声殺さなくてもいいんだぜ。どうせ誰も聞いちゃいないさ」

押し寄せる快感に声を噛み殺して耐える玲子に兵吾がそっと囁く。

「あっ、ああん、高見さん、高見さん・・・・・兵吾ぉ!!」

玲子は絶頂に達する間際に兵吾の事を二十年ぶりに下の名で呼び、その声に誘われるように兵吾もまた絶頂に達した。
兵吾のバスローブは汚れなかったが、ベッドのシーツには鮮血がぽたぽたと落ちた。
ことが終わり、ベッドにうつぶせになっている玲子の横で兵吾が聞いた。

「なあ、さっき俺のこと兵吾って呼んだろ?」

玲子は兵吾のいる方に寝返りを打って答えた。

「いいじゃない。私たち、より戻したんだから。高見さんがくれた指輪だって、ほら」

玲子は左手の薬指にはめたプラチナの指輪を兵吾に見せた。
自分が大変な思いをして手に入れ、迷いの末にようやく渡すことができた指輪を玲子が職場にいる時以外も肌身離さずつけている。
そのことが兵吾にはとても嬉しかった。

「大事にしてくれてありがとう。愛してるぜ、玲子!」

兵吾は既に眠ってしまった玲子の頬にキスすると、自分も眠りについた。
二人が男女の関係に戻っても、二人が部下と上司の関係であることは変わらないし、当分の間は一緒に暮らすことも再婚を誓う為の「一枚の紙」に署名することもない。

しかし、二人にとっては今のこの幸せとお互いの心身に残る温もりこそが、指輪にも匹敵する復縁の証なのだ。






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