シチュエーション
俺の隣には彼女がいる。 あの時からもう二度と会うこともないと思っていたのに、思いがけない再会、 すれ違いに喧嘩を繰り返し、別の相手が横にいた時もあった。 なのにいつの間にか目で追っていたのは何故だろう。 腐れ縁で片付けるには、彼女は俺の心に棲みすぎた。 そよ風になびく柔らかな髪をかき上げる彼女の薬指には、 真新しいプラチナの指輪が煌めいている。 細く長い指に整えられた爪先から恥じらう耳元、 そよぐ髪の間から覗くうなじへと視線を流していると、ふとこちらを向いた。 「なに?」 視線に気が付いていたのか、わずかに頬を染めて上目使いに軽く笑う。 「そろそろ時間だな、と」 「そうね」 ごまかしも含めて彼女の手を取り指を絡めると、嬉しそうに微笑んだ。 この笑顔をずっと見ていたい、これからはずっと一緒だ。 お互いにきゅっと手を握り締め目を合わせて呼吸を整える。 はじめての二人での仕事。緊張でかすかに震える彼女に大丈夫と声をかけ、 深呼吸をする。 「「保守」」 SS一覧に戻る メインページに戻る |