シチュエーション
≪俺≫ 寿司屋で住み込みで働く男。25歳。 身長175センチの中肉中背、刈り込み頭。 親方に恩義があるため、親方の娘≪お嬢≫を思い、思われながらも、 その思いを伝えようとしない。 また、中卒という立場である自分を卑下し続けている。 ≪お嬢≫ 本名:美香21歳。現在、大学生。親方の娘。 身長158センチ。Cカップの中肉中背。 セミロングのつやのある黒髪と愛嬌のある顔が特徴。 ≪俺≫にずっと好意を寄せているが、その好意への返答は、 いつもはぐらかされ、ごまかされ続けている。 自分の思いが届いていてほしいと思いつつ、 いままでの関係が『家族』も含めて崩れてしまうのを少し恐れている。 最近は酒に逃げる事が多い。 夜1時、玄関に何かが倒れこむような、音が響き渡る。 だが、もはや日常となってきたので、俺はあわてない。 2階の自室から出て、階段を下りるとやはり玄関にお嬢が倒れこんでいた。 「たらいまー、かえったじょー」 「……お帰りなさい、お嬢。今日も大学の飲み会で?」 「そうなのー、もうね、こう、先輩とか、付き合いが大変にゃのよー」 中学卒業と同時にこの寿司屋「魚丸」に入った俺は、大学などのそういう付き合いの大変さは、わからない。特に、お酒にここまで飲まれてまで付き合わなければならないという必要性が理解できない。もちろん、だからといってそういう付き合いを否定するわけじゃないのだが。 「連中飲まないと怒るしねー、って、あれー、お母はんじゃないねー」 「俺ですよ、次郎です」 「……あー、なんらー、ジロー君かー、うひゃひゃひゃー、次郎君らー」 何が面白いのだろうか、全く分からない。 まぁ、ともかくお嬢の部屋に運ばなければならないので、玄関に倒れこみながら、奇声を上げて笑うお嬢の背中に手を回しそのまま一気に担ぎ上げる。 「お姫様だっこらー、ジロー君ちっからもちー♪うひゃひゃひゃー」 手を叩き、またも大声を出して笑うお嬢をなだめすかすように俺は小さな声で彼女に言う。 「もう少し静かにしてください。親方と女将さんはもう寝ているんですから」 一階には親方と女将さんの寝室があるのだ。ここで騒ぐと起きてくる心配がある。(ちなみに二階にお嬢の部屋が、さらに屋根裏に俺は居候させてもらっている) 「……うんー、わかっら」 「……お嬢にしては、珍しく物分りがいいですね」 「あー、わたしー、いつだって物分りいいもんねー」 「はいはい」 俺は苦笑いしながら、階段を一段ずつ踏み外さないように登っていく。 「次郎君に抱っこされるのー、気持ちいいねー。ゆっさゆっさしてゆりかごみたい。わたし、今日ここで寝ようかなー」 「それは、俺に一晩中持っていろと?」 「ジロー君ならできるよー、ほら、こんなに胸板厚いしー」 「むちゃ、言わないでくださいよ……。あとさりげなく、俺の胸触らないでください」 「いいじゃん、減るもんじゃないんだから」 お嬢はニヘニヘとだらしなく笑うと、ここぞとばかりに俺の胸板をぺたぺたと触りまくる。 「それで許されたら、世の中のセクハラが全てなくなりますね……っと」 俺は『美香の部屋(許可なく入ったら殺す、特にパパ)』と名札が着いた部屋のドアをゆっくりと開く。 お嬢の部屋は、いわゆる女の子らしい部屋とは違い、白と黒をメインとした全体的にシンプルなまとまりになっている。 本人曰く、 「見た目より、機能重視」 だ、そうだ。 俺は部屋の左端に置かれたベッドまでお嬢を連れて行き、ゆっくりと下ろす。 「気分はどうですかね?水持ってきましょうか?」 「うーん、いいよー。それよりさー」 「なんです?なにか、胃薬とか持ってきたほうがいいですかね?」 「ここに座って」 ベッドで寝そべるお嬢が指で示すのは床だ。 「はい?」 「いいから、座るの!!座りなさい!!命令!!」 ……だんだんと説教おじさんモードに入りつつあるのだろうか? とりあえず、しぶしぶと俺は床に座り込…… 「ちがーう!!体育座りじゃない!!正座!!」 ……正座する。 「あんたれ、わかってるの?!私が、毎日、どういう、思いしてるか!!」 「いや、大学のご学友との付き合いも大変そうだなー、と」 「バカーーーーーーーー!!」 いきなり、大声で叫んだお嬢は手元の枕をつかむとこちらに向かってものすごい勢いで投げつけてきた。 とっさに、俺は体を左に倒し回避する。 枕は壁に当たり、背後のゴミ箱にあたり中身をぶちまける。 「あーあーあー。ちょっと酔っ払いすぎですよ、お嬢……」 「うるらい、うるらい、うるさーーーーーーーーーい!!何で、当たらないのよ、ジロー君の馬鹿!!ジロー君なんか、枕に当たって死んじゃ えばいいんだ!!」 「……枕で殺されるのは勘弁ですね。とりあえず、ゴミ箱片付けますよ」 俺は倒れたゴミ箱を立て、散らばったゴミを拾いいれながら、お嬢に話しかける。 「で、それで?そんなに荒れてる理由は何です?」 「……」 黙りこくるお嬢に、俺は口を開きかけ…… ……やめた。妙な心遣いはお嬢をさらに傷つけるだけだ。 本当はお嬢が何を言いたいのか分かる。お嬢は一体何に悩んでいるのかも。 ……お嬢は、俺に好意を持っている。 これは、単なるうぬぼれとかではない。 長年、同じ屋根の下で暮らしてきたのだ…… ちょっとした、仕草、言葉、表情。 その一つ一つでお嬢が家族としての好意以上に俺を意識しているのを感じる。 けど、駄目だ……。俺は親方を裏切れない。 当時どうしようもない悪がきで、何をしてもうまくいかなくて、世界そのものを憎んでいた俺を立ち直らせてくれ、さらに仕事や家の世話をしてくれたのは親方だった。 その親方が、本当に宝物のように大事に育ててきたお嬢を俺がもらうわけにはいかない。 お嬢はもっと幸せになるべきなのだ、俺なんかみたいな屑と一緒にならないで。 俺はずっとそう誓い続けていた。 ……そして、俺がお嬢の思いに気づいているように、お嬢も俺の思いに気づいているだろう。 思いを伝えたとしても、俺が拒絶することが分かっている。 ゆえにお嬢はその鬱屈した思いを酒で晴らすのだろう。 だから、俺には、酒に向かうお嬢を止める資格はない。 「お嬢、これ以上お話がないようなら俺は戻りますよ」 そう言うと、俺はゆっくりと立ち上がる。 「ま、待って!」 あわてるお嬢に俺は笑顔を向ける。 「なんですか?」 俺の顔を見て一瞬、お嬢の表情がこわばる。 それもそうだろう。俺は笑っている、けど、お嬢には分かるのだろう、この笑みが、俺の全ての感情を封じ込めた冷たい笑みだということを。 「特に用事は無いですね。それじゃあ、戻りますよ?」 俺はお嬢に背を向け、部屋から出ようとする。 だが…… 「もぅ、ぃやだよぅ……」 震える声が室内に響く。 俺は拳を爪が食い込むほど握り締める。 振り向きたくなかった、振り向いたら、自分の誓いも、もう何もかも忘れてしまいそうで。 だけど、俺はそれ以上に…… 「お嬢……」 お嬢を泣かせたくなかった……。 振り向けば、ベッドの上に座りながらお嬢はしゃくりあげるように泣いていた。 「ひっく、もぅ、やだぁ……。なんで、ひっく、なんでぇ?だって、私は、私はぁ、ジロー君のこと好きなのに、ひっく、どうして、どうして、気づいてるのに、気づかないふりするの?」 それは言ってはいけなかったのに、そして聞いてはいけなかったのに…… それを言えば俺たちの関係は…… 「……俺は、俺なんかはお嬢に釣り合いませんよ」 「……なんで、ひっく、どうして?どうして、そんなこと言うの?」 俺は、目を伏せるようにして語る。 「……俺は親方に恩義があるんです。そして、その親方が本当に目に入れても痛くないくらい、大切に大切に育ててきたのがお嬢です。当たり前ですが、親方はお嬢に幸せになって欲しいと願っている」 「……」 「だから、俺もお嬢には本当に幸せになって欲しいと思っている」 お嬢は涙をためた目でこちらを見つめる。 「俺には、お嬢を幸せにできる自信なんて全くありません。 俺は、いろんな人と仲良くなれるお嬢と違って、 人付き合いはめっぽう苦手です。中卒の俺には学もありません。 親方のおかげで寿司作りや料理はうまくなったものの、 寿司屋でこの先も食って行ける保証なんて存在しない。だったら……」 「……私にはもっと幸せにしてくれる人と、一緒にいて欲しいの?」 俺は首を縦に振る。 「大学には俺より学があり、人当たりもよく、 有望な未来をもっている人なんてたくさんいるでしょう」 改めて、お嬢の瞳を見つめ返す。 ずっと、一緒にいた。 友達のような、妹のような、恋人のような……そんな仲。 しかし、それでいて主人と従者としての関係と変わりなかった。 初めて会った時から、ずっと、ずっと好きだった。 けれど、その思いは一生届かない、届けてはいけない。本当に彼女の幸せを願うならば。 だから…… 「もう一度、言います。俺には、あなたを幸せにできな……」 俺の口を閉ざすように、そっとお嬢は俺の顔を両手で包み込んだ。 そして、 「優しいんだね、ジロー君は」 涙で濡れた顔でやわらかく微笑んだ。 「俺は、優しいわけじゃ……」 「うん、知ってる。だから、優しくて、ひどいよ、ジロー君……」 そのままお嬢は俺の顔を両腕で胸元に抱き寄せる 「ねぇ、ジロー君」 「……はい」 「幸せって何なのかなぁ……」 「……」 お嬢はゆっくりと、言葉を紡ぎ続ける。 「あのね、ジロー君は自分のこと卑下してるみたいだけど、 そんなことないよ。たしかに、ジロー君は学がないかもしれないし、 人見知り激しいし、お寿司作りにしか能が無いのかもしれない。 けどね、私は知ってるよ。ジロー君は誰よりも優しいし、 打ち解ければ今までの仏頂面が気にならなくなるくらいにいい笑顔で笑うし、 責任感もあるよね、他にもいーっぱい、いいところあるよ」 俺は何も言わない。お嬢に、温かく包まれているのが気持ちよくて。そして…… 「私ね、ジロー君がいると幸せになれるかどうか、なんて分からない。 だって、未来がどうなるかなんて誰にも分からないし、 私には幸せっていうのがどういうのかよくわからない。 ……だけどね、一つだけ言えるのはね」 一息。 「ジロー君に好きって言えなかったのは、ずっと、ずっと苦しかったよ。 だからジロー君がいなくなったら、私、もっと、もっと、もーっと辛いよ。 もう、そんな思いしたくないよ……」 また、お嬢の声が震え始める。 「ひっく、もしかしたら、私ね、ジロー君といるだけでね、ひっく、幸せだったのかもしれない」 俺は……間違えていたのだろうか? 他の人と一緒にいるほうが幸せになるなんて言ったのは俺のエゴでしかなかったのだろうか? 「いやだよぉ……ジロー君と離れたら幸せになんてなれないよぉ…… うぅ……他の人と一緒になってもジロー君が一緒じゃなきゃ、絶対幸せじゃないよぉ……」 お嬢は嗚咽交じりに、言う。 俺は、自分のことを人間の屑だと思っていた。親方に出会うまで、いろんな悪さをしたし、何も学ぼうとしなかった。若さゆえとはいえ、俺はそんな自分が許せなかったし、これからも決して許すことは無いだろう。 だから、俺のような人間が誰かに思われるなんてことは無いと思っていた。 だけど、お嬢はそんな俺を認めてくれた、好きだと、一緒にいたいと。 俺はそんなことが許される人間ではないというのに…… 俺は……俺は…… 「?ジロー君?大丈夫?」 何もしゃべらない、俺を心配したのか、お嬢が俺に話しかけてくる。 「ごめんなさい……もう少しだけ、あともう少しだけ、このままでいさせてください」 「……うん、いいよ」 お嬢のやわらかい指が俺の髪を、優しくなでる。 俺は心を落ち着かせるために、大きく息を吸う。 あー、なんか、甘い臭いがすると思ったら、案の定、酒の臭いだった。 「お嬢……酒臭いです」 「う、う、うるさい!!誰のせいで、酒飲んでたと思ってるの?!」 俺の頭を軽く叩く。 ハハハと笑いながら、俺はゆっくりと顔を上げる。 俺たちは見つめあう。お嬢の顔は涙でくしゃくしゃになっていた。 「お嬢……ひどい顔ですね」 「……お互い、はい、ティッシュ」 「え?」 自分の顔に手で触れれば、そこには涙のあとがあった。 「ハハハ……何で、泣いてるんでしょうね、俺」 「泣いてるの、気づかなかったの?」 「えぇ、十年ぶりくらいに泣いたから、自分では分からなくなっちゃたのかもしれないですね」 俺はお嬢にもらったティッシュで涙を拭く。 同じように、お嬢も涙を拭う。 「馬鹿みたいだね、もう大人になったっていうのに二人して泣いて」 「……そうですね、けれど」 「けれど?」 お嬢が疑問の声とともに、首をかしげる。 俺はゆっくりとお嬢を胸に抱き寄せる。 「このことでもう二度と泣かせません。俺もお嬢のことが好きです。付き合ってください」 お嬢は一瞬きょとんとした顔をしたが、俺のいった言葉をゆっくりと咀嚼するように考え、 次の瞬間、また涙を流し始めた。 「うわ、二度と泣かさないといった矢先に泣き出さないでください!!」 「だってぇ、だってぇ……い、いままでジロー君のほうから、 ひっく、好きなんていってくれたことな、ないから、うれしくて」 俺は、しゃくりあげなら泣くお嬢の頬に流れる涙のあとをなぞるようにそっと舐める。 「ひぅ!!」 思わずお嬢が声を上げる。 「ほら、これでお嬢の涙は俺のものですね。だから、もう泣く必要はないですよ」 「うぅ〜、な、涙とられたー」 恨めしげに俺を見上げるお嬢、その顔が急に愛おしくなり、俺はさらに強く抱きしめる。 そして……俺はそのままそっと、お嬢と口付けを交わした。 「……ん」 最初は唇だけをかせね合わせる、 お嬢のやわらかい唇をゆっくりと確かめるように感触を味わう。 「……んぁ、ふぅ」 時折もれるお嬢の声に、少しずつ興奮を覚える。 そして、唇同士の接触だけでは物足りなくなり、俺はお嬢の唇に舌を伸ばした。 お嬢もこちらの意図が分かったのだろう。ほんの少し躊躇したが、同じように舌を出す。 触れ合う、舌と舌は互いの唾液とともに濃密に絡み合う。 俺は、まだ、怖がるお嬢のためにさらに舌を進めていく。 口内で互いの舌が求め合い、さらに口の中を蹂躙する。 「んふ、あふぅ……ん、あぅ……」 お嬢の悩ましげな声が、俺の脳を甘い痺れのような感覚で支配する。 もう、これ以上何も考えられなくなるような、そんな感じだ。 俺はキスしたまま、ゆっくりとお嬢とベッドに倒れこむ。 そして、一応念のために 「いい……ですよね?」 ここから先に進んでいいかどうか、確認する。 これ以上進んだら、俺たちは、行くところまで行くしかない。 それに対してお嬢は何も言わない、ただ、顔を赤くして、俺から目をそらし、小さく頷いた。 俺たちはもう、戻れない。 俺は、返事を確認すると、仰向けになったお嬢のYシャツの前ボタンを、順番に外していく。 全てはずし終えれば、ピンク色のレースののブラジャーがあらわになる。 俺はお嬢の背中に手を回し、ブラジャーを外そうとする、が、 「あ、あれ?」 ホックが何故か見つからない。 「あ、あの、それフロントホックだから……」 「えぇ?あっ」 よく見れば、前にホックがあった。なるほど、こういうタイプもあるのか…… 当たり前だが、今までブラジャーなんてものをまともに触ったことは無い。 やはり、AVのようにはうまく行かないものだ。 「うわ、慣れてないの丸出しでかっこ悪いですね、俺」 自分が知識だけでしか知らない事に思わず苦笑いする。 「……ジロー君がこういうのに慣れてたら、それはそれで嫌だよ」 お嬢も、つられるように微笑む。 俺は言われたように、今度はフロントホックを外すと、お嬢の胸が現れる。 小ぶりでもなく、だからといって大きすぎない、そんな、ちょうどいい大きさだった。 ツンと上向きにたった乳首が可愛らしい。 思わず、俺はお嬢に質問する。 「……お嬢って、何カップなんですか?」 「……Cカップ、って、そんなの知ってどうするの?もっと、大きいほうが良かった?」 「いや、単なる興味本位です。あと、個人的にはこれくらいの大きさが一番好きですよ」 ハハ、と俺ははにかむ。 それに対して、 「……ジロー君のスケベ」 と、恥ずかしげにお嬢は顔を赤らめる。 「お嬢、俺、多分これからもっとスケベになりますよ?」 「え?って、きゃ!!」 左胸の乳首を、優しくそっと舐めあげた。 「だから、覚悟してくださいね?」 「……覚悟って、あぅ、んんぅ……」 俺は返事をしない、乳輪を最初はゆっくりと回わするように舐める。 そして、その間、右胸をやわらかく揉みしだく。 「ふぅ……あっ……ん、ぃゃぁ……」 「ぃゃぁ」 と言われたが、ここでやめたら男ではない。 さらに執拗に舌と指で乳首を攻め続けた。 「ぁう……ぅく……や、やぁ……」 お嬢の呼吸が、それに反応するようにだんだんと荒くなる。 舌で乳首を舐め回しながら、徐々に吸う。 「ひぅっ!!あぁぁぁ……」 お嬢が思わず、声を上げる。 しかし、俺はそれでは飽き足らず、執拗に乳首を攻め続ける。 「ふぅ……あっ、あっ、あぅっ……」 と、そこで今度はあえて舌を胸からはなす。 「……ふぇ?」 気が緩んだのか、お嬢は間の抜けた声を出した。 だが、もちろん俺は手を緩めたわけではない。 今度は反対側の胸をおもむろに口に含み、舌でその先端を転がす。 「ぅっ……あぅ……」 切なげに声を漏らす、お嬢。 俺の左手はその間ゆっくりと、お嬢の下半身に伸びる。 そして、そっとスカートの中に手を入れた。 少し、湿ったような下着の感触を指先が感じ取る。 俺は、そこをゆっくりと、なぞる。 「あぁぁぁ………」 悩ましげな声を上げ、お嬢が軽く震える。 下着をさらに撫で続けると、下着がさらに湿ってくる。 そこで俺は胸へのくちづけをやめると、お嬢の耳もとで告げた。 「下も脱がしますよ?」 「……え、えっと、別に自分で脱げるよ?」 お嬢は恥ずかしそうに、こちらを見つめる。 「いやいや、ここは俺に脱がさせてくださいよ」 俺は満面の笑顔で遠慮してもらう。男なら、一度は自分の手で脱がしたいと思うのだ。 これは理屈じゃない、浪漫だ。 「ジロー君やっぱりスケベだ……」 俺の満面の笑顔を見て、もうどうにもならないと悟ったのか、お嬢は諦めるように苦笑いすると、投げやり気味にこちらに身を任す。 そして、そっと言う。 「……わ、わたしだって初めてなんだから……」 「……だから?」 「……その……優しくしてね?」 照れながら、そう言うお嬢に俺は 「……ハハ、できる限りは。」 と答えておくことにした。 まぁ、内心、この時点で、いろいろといっぱいいっぱいなのだが。 お嬢を不安にさせるわけにもいかない。 とりあえず、慣れない手つきで、お嬢のスカートを脱がしていく。 そうすれば、スカートの下、ブラジャーと同じピンク色のレースの下着があらわになる。 「かわいい下着ですね」 「何、かわいいのは下着だけなの?」 お嬢がその言葉に、軽くムッとした顔になった。 「いや、もう、お嬢もめちゃくちゃ可愛いですよ。こう、照れる姿とか」 「むー、なんか言い訳くさいー」 「そんな、下着に嫉妬しないでくださいよ」 そんなお嬢の態度に思わず、笑いかける。 「じゃあ、こんな悪い下着は取っちゃいますか、 これ以上見てたらお嬢が嫉妬しつづけちゃいますから」 「……って、えっ?ちょ、ちょっと、まだ、心の準備が……」 今更、言っても遅い。 もちろん、聞く耳をもたない、俺は容赦なく下着を脱がす。 お嬢の黒いこんもりとしたアンダーヘアーが、露出する。 「あぅ……、恥ずかしいよ……」 両手で赤くなった顔を隠すように覆う、お嬢。 「ほら、ちゃんと、顔も見せてください」 「うぅ……」 俺から目を背けながら、おずおずと両手を下げる。 「お嬢、もう一回言っていいですか?」 「……な、何を?」 「すっげぇ、可愛い」 臆面もなく、俺は自分の思ったところを、お嬢に伝えた。 「……ジロー君も、かわいいよ」 「かわいいじゃなくて、せめて、かっこいいにしてくださいよ。 なんか、いろいろ男としての自信がなくなりますから」 くすっ、お嬢は笑うとこちらに顔を近づけて、そっと言う。 「じゃあ、ジロー君かっこいい」 そうして、頬に優しくキスをしてくれた。 「強くて、まっすぐで、頼りがいがあって、時たま不器用だけど、だけど、それ以上に優しくて……大好きだよ。ジロー君、だーい好き」 甘く、とろけるような声で俺に思いを伝えてくれる。 俺はその言葉でほんの少し心が温かくなる。 だが、出る言葉は 「すいません、俺、もう、これ以上我慢できないかも。お嬢が、その……可愛すぎて」 最低だ、いろんな意味で。 しかし、そろそろ俺の下半身は我慢限界だったのだ。 その言葉に、お嬢はもう一度ベッドに倒れこむと、こちらに両手を広げた。 「……うん。いいよ、来て」 そっと、俺はお嬢の股間を指で触れる。 敏感なところを触れられて、軽く、びくっと悶える、お嬢。 だが、軽く触れただけなのに、指はお嬢が濡れているのを、しっかり確認できた。 前戯は必要なさそうだった。 俺は自らのズボンをおろすと、自分の屹立したペニスを取り出す。 そんな、立派なものではないが、お嬢は、チラッと見ると「うわぁ……」という声を上げた。 どういう方向性で驚いてくれてるかは知らないが。 そして、それをゆっくりと、お嬢のヴァギナの入り口に近づけると、 最後にもう一度だけ尋ねる。 「……いいですよね?」 「……うん、ジロー君と、つながりたい」 お嬢はそういうと、こちらの首に腕を絡ませた。 俺はペニス先っぽを入り口に軽くこすりつけ、ペニスの先をお嬢の愛液で濡らす。 もう、覚悟は決まった。 俺はペニスをお嬢のヴァギナの中に少しずつ挿れていく。 まずは亀頭をゆっくりと、ゆっくりと、温かく包みこんでいく。 「う……くっ……」 お嬢が何かをこらえるような声をあげると、苦しそうな顔でこちらを見つめる。 首に回っている腕に、力がこもるのが分かる。 やはり、初めてだから痛いのだろう。 「……すいません、お嬢、もう少しの間、我慢してください……」 俺が、真剣な顔でそういうと、お嬢は痛みをこらえた必死な笑顔で答える。 「……う、ん、大丈夫」 「……分かりました」 もう、ここはあえて一気にいくことにした。 「……いきます、今までより痛いかもしれませんが」 「……だ、大丈夫」 お嬢は、俺の首から腕を放すと、両手でシーツをぎゅっと握り締める。 「……いきます!!」 「……うん!!」 俺は腰に力を入れると、強引にお嬢の中を一気に進んでいく。 「……あぐぅっ!!あぁぁぁぁぁぁぁ!!」 部屋に、お嬢の叫びが響く。 だが、もう止められない。 一瞬、ペニスをキュッと絞まったような感覚に陥るが、そこを無理やり抜けると、 気づけば、ペニスは根元までお嬢に包み込まれていた。 「……あぅぅぅ」 涙目でこちらを見つめるお嬢。だが、その表情はどこか晴れ晴れしていた。 「……大丈夫ですか?痛いですか?」 俺は心配になり、尋ねる。 「う、うん……け、けど、もうちょっと、動かないで。まだ、痛いから」 「え、えぇ」 俺は、ちょっと我慢する事にした。 ぶっちゃければ、お嬢の中が気持ちよすぎて、いつ出てもおかしくない状態だが、気合で我慢だ。 お嬢は痛みをこらえながら、こちらに笑顔で言う。 「……やっと、一つになれたね」 「そうですね」 俺は、ふと、気になって聞く。 「後悔してますか?」 「バカ」 こつんと、頭をこづかれる。 「ジロー君と一緒になれる、このときを何年待ったと思ってるの?」 「……」 「ジロー君は私が待ち焦がれた、この10年間まで後悔させるつもり?」 「……全く、お嬢にはかなわないな」 俺は、思わず、頭を掻く。 「ジロー君は後悔してるの?」 同じように俺に問う。だから、俺は正直に答える。 「……えぇ、後悔してます」 「えっ?」 失望したような表情がお嬢の顔に浮かぶ。 俺はすかさず続ける。 「こんなことなら、もっと早くこういう関係になればよかったって」 俺の答えに一瞬きょとんとしたお嬢は、今度は俺をジロッとした目で見つめる。 「ジロー君、性格悪い」 「お嬢に対抗したんですよ」 「むー」 と、抗議の声を上げようとするお嬢の唇を、俺の唇で封じる。 今度は唇と唇同士の軽いキス。 互いに顔を向かい合わせ、そして、くすっ、と笑いあう。 「お嬢、俺、そろそろ、我慢できないです、動きますよ?」 「うん、多分、大丈夫、まだヒリヒリするけど」 その言葉に、俺はコクリと頷く。 そして、俺はゆっくりと腰を動かし始める。 「くっ……あぅ……」 俺のピストンに合わせるようにお嬢が声を上げる。 ペニスに肉ひだが絡みつき、温かく俺を包みながら、時たまキュッと締め上げる。 俺はその感覚に思わず、射精しそうになるが、そこを必死に我慢する。 「あぁん、あっ、あっ、あっ、あぅ!!」 こんな、反応見せられて自分だけ先にイクわけにはいかない。 ピストン運動を徐々にスピードアップしながら、聞く。 「……気持ち、いいんですか?」 「わか、わかんないよぉ、だ、だけど、声が出ちゃうの!! ジロー君が動くと!!あぅっ!!」 俺が出し入れするたびにお嬢の愛液が飛び散り、グチュ、グチュと卑猥な音を立てる。 「……いた、痛いのにぃ!!ジロー君のが、ズン!!ズン!!ってくるのぉぉ!!」 お嬢の手が、シーツを強く握り締めているのが分かる。 耐えているのは痛みからだろうか、快感からだろうか。 俺は無言で、そのまま腰を振り続ける。 もう、これ以上余計な事をしゃべる余裕は無い。 「ふっ、あっ、あっ、いや、ぃやぁ、あぁぁぁ!!」 お嬢はシーツから手を離し、こんどは俺にしがみついてくる。 俺の二の腕を、ギュッと、つかむ。 「あっ、あぅ、あっ、ん、ちゅぅ、ちゅぱ、んむんんんん」 俺はあえぎ声を上げるお嬢の唇を熱く重ねる。 「むちゅぅ、あむ、れろ、あぅ、んちゅ……」 舌を濃厚に絡み合わせ、互いの唾液をむさぼる。 そして、そこで唇を離す。 「ぷはっ!!あっ、あっ、あっ、きゃぅん!!」 跳ねるようにお嬢が、ベッドでのけぞる。 俺のピストンは、これが最後とばかりにラストスパートをかける。 「お嬢!!俺、俺、もうっ!!」 「う、ん!!いい、いいよ!!中に!!中に出してぇ!!」 「!?け、けど!!」 「大丈夫!!あぅっ!!だ、大丈夫だから!!」 「わか、わかりました!!」 お嬢の言葉を信じる。 パン、パンと肌と肌がぶつかり合う音が部屋に響く。 「っく!!すいませんっ!!い、いきます!!」 「きて、ジロー君きてぇぇぇぇぇ!!」 痙攣するように、俺は貯めていたものを、一気にお嬢の中に放出する。 「くっ!!」 まるで、最後の一滴まで搾り取られるようにヴァギナが脈動する。 俺はいままでの人生の中で一番長いと思われる、射精をした。 ゆっくりと、ゆっくりと、お嬢の中を満たしていく。 そして、最後の一滴を出し終え、 「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……」 部屋に響く、お嬢の声がゆっくりと収束していく。 俺とのつながりを名残惜しむように。 ……俺たちの初めての行為はこうして、終焉を迎えた。 「で?大丈夫なんですか?」 「100%大丈夫なんて日があると思う?」 「……それじゃあ」 「だって、ずっと一緒にいてくれるんでしょ?」 「……お嬢にはかないません」 二人の距離後日談〜親方〜 「よぉ、ジロー、たまには酒に付き合えや」 親方の声が閉店後の店内に響く。 「別に構わないですけどけど……禁酒は?」 「あぁ?別にかまわねーよ、今日はな」 親方は俺にずっと禁酒を命じていた。 中学時代、ドラッグ、煙草、飲酒、全てを行っていた俺は親方のもとについて以来、その全てをやめた。 もちろん、親方にやめるように言われたのも理由の一つだが、自分でも今までの生活とのけじめをつけるつもりだった。 だから、酒を飲むのは実に十年ぶりとなる。 「ビールでかまわねーよな」 「それでいいです」 親方は業務用の冷蔵庫から、ビンのビールを取り出すとコップに注ぐ。 「ほらよ、十年ぶりのお酒様だ、丁寧に扱えや」 「ありがたく、受け取らせていただきます、お酒様。と、これでいいですか?」 「お前、相変わらず冗談のセンスねーな」 クックッ、と親方は笑う。 俺は酒を受け取ると、机に着く。だが、まだ酒は飲まない。 というのも、親方が酒を飲むのは、何か話したい時だ。 しらふでは、恥ずかしくてしゃべれない事は酔いに任せてしゃべる。 この人は、そういう人だ。 そして、もちろん今日、この場でしゃべるとしたら、 「てめー、夜は随分とごさかんだったみたいじゃねーか」 昨夜のことに決まってる。この人が、気づかないわけが無いのだ。 じろりと敵が目の前にいるかのように、こちらを睨みつける。 「……」 俺は、何も言い返さない、ただ、その親方の目をじっと見つめ返す。 重苦しい沈黙が店内を支配する。 親方がときおり、酒を喉に通す音だけが、店内に響く。 十分ほど、経っただろうか。 親方が、笑い始めた。先ほどみたいに忍び笑いではなく、豪快に。 「ハーハッハハ!!ハハハハハハハハハ!!」 「親方、気が狂いましたか?」 「お前の冗談、やっぱ、センスねーよ」 笑顔のまま、親方はちびりとビールを口に含む。 「ったく、お前らくっつくのに何年かかってるんだ」 「十年ですね、初めて会った時から考えるなら」 そうか、十年か、そう呟くと、親方はしゃべり始めた。 「お前が美香に好意を持ってたのは、ずっと知ってる。 もちろん、美香もお前にずっと好意を抱いていたろ」 「やっぱり、気づいてましたよね」 俺はずっと、親方が気づいているのだ、ということに気づいていた。 そう、だから…… 「……だから、しょっちゅう俺に対して言いましたよね。 美香に指触れる奴は、家族以外、誰にも許さんって」 「あぁ、言ったな」 そう、親方は気づいていた、ゆえに俺に釘を刺したのだ。手を触れるなと。 「まぁ、最終的には触れる以上のことをしたわけですが」 「あぁ、そうだな」 相槌を打つ親方の顔はどこかうれしそうだった。 俺はその顔を見て、ようやく確信する。 昨日からずっと考えていた事、 ずっと親方をどう説得すべきかということを考え続けていた。 親方のいままで言ってきた事を思い出し、 親方に納得してもらうにはどうしたらいいのかを。 そこで、一つおかしなことに気づいた。 それは、何故、親方は俺とお嬢をくっつけるのを嫌がるのか。 親方の性格からして、本当はそれはありえなかった。 何よりも誰よりも自由奔放で、決して縛られる事を望まず、 縛る事をしない人が、たとえ大事な娘とはいえ、お嬢と俺の間だけ…… 俺は、考え続け、それを納得させる理由を一つだけ思い当てた。 それは…… 「親方は、俺を試し続けてたんですね……」 「気づくのおせーんだよ、バカ」 親方は自らのコップにさらにビールを注ぐ。 「大体、おれっちの態度一つで娘との仲をあきらめるだぁ? そんな、軟弱者に俺は娘を嫁にやりたくはねーな」 「それじゃあ……」 「ったく、てめーも美香も時間と手間かけさせやがって」 ビールを一気に飲み干し、こちらを睨みつける。 「すいません……」 俺は一応謝っておく。 「わざわざ、嫌いな嘘ついてまで、俺を試させて……」 本当に親方には、頭が上がらない。 と、そこで、親方は予想外の一言を言った。 「あ?俺がいつ嘘ついた?」 「は?だって、美香に指触れる奴は、誰も許さんって」 「だから、おまえは馬鹿だって言ってんだよ。いったじゃねーか、『家族以外』って」 「……え?」 親方はそこで一息つくと、こちらを真剣なまなざしで見つめる。 「てめーは、俺の息子だ。俺が、背中を見せて、育てた、大切な息子だ。 たとえ、戸籍が認めなくても、お前は俺の家族だ。……だから、いいんだよ」 ぶっきらぼうな口調で告げたのは、俺を家族と認める言葉。 「け、けど、俺を引き取る時、養子縁組が出来るのにしないとか言ったって」 それは、俺を引き取るが、『家族』にはいれないという宣告だとずっと思っていた。 だが…… 「てめーが戸籍上まで俺の息子になったら、美香と義兄妹になって 結婚とかやりにくくなってたぞー」 クックッと悪事が成功したように喜ぶ、親方。 ということは…… 「俺はずっと親方の手の平で踊り続けてたわけですか……」 「てめーが勝手に踊り続けたんだろ。俺は用意してやっただけだぜ」 俺はもう、驚きを通り越して、ただ、唖然としていた。 「親方……あんたには一生かけても、かないませんよ」 「テメーが俺に勝つなんて一生どころか、1000年かかってもねーよ」 俺たちは互いに笑いあう。 話しが終わった事を確認した俺は、机においていたビールを一気に飲む干す。 十年ぶりのビールは当時と味は全く変わらず、しかし 「……当時飲んだ時より、美味しいですね」 「あたりめーだろ、酒は大人になって飲むからうまいんだ。ガキが大人ぶってに飲んだところでそのうまさが分かるわけねーんだよ」 俺は親方のその言葉に、涙が、こぼれそうになりながらも、グッとこらえた。 「まったく、親方、強すぎですよ」 「酒がか?」 「全てです」 俺は、笑いながら言う。 この人たちには一生かなわないと思いながら。 SS一覧に戻る メインページに戻る |