シチュエーション
私の親友、日向 優(ひなた ゆう)は問題児だった。 とは言っても、問題児であった頃の優を私はよく知らない。 学校には来ても授業には出ないおかしな子だったからだ。 クラスメイトの影山くんの働きかけで優は段々と授業に出るようになった。 それからしばらくして、影山くんは学校から姿を消した。 優も手術のために病院に入院することになった。 その時、私達は初めて優が重病にかかっていたことを知った。 クラスのみんなでお見舞いにいった。 影山くんだけが来なかった。 彼は誰とも仲がよかったけど、特に親しい人はいなかったようだ。 その唯一の例外が、優だったのだろうか。 私にはそれが少しだけ、羨ましかった。 「日向さん、だよね?」 僕はベンチに寝そべった少女に声を掛けた。 冬が近いとはいえ、秋の陽気はまだまだ暖かい。 僕の目には彼女がその暖気を目一杯吸いこんでいるように見えた。 「そうですけど」 彼女はチラリと僕を見るとすぐに視線を逸らした。 まるで興味がないという風に。 なるほど、先生が手を焼くわけだ。 「どうして授業に出ないの?」 僕はあまり彼女を警戒させないように彼女の隣のベンチに座る。 彼女は僕を気に掛ける様子もなく、まっすぐに空を見つめていた。 「意味がないからです」 彼女はそう言ながら僕を見ると小馬鹿にするようにクスリと笑った。 その様は必死に勉強している人間を馬鹿にしているようでもある。 僕も学校での勉強に意味があるとは思ってない。 その点では彼女の意見には同意できる。 だけど、それだけでは腑に落ちないこともある。 「じゃあ、なんで君は学校に来ているの?」 僕はその疑問を素直に彼女にぶつけることにした。 もっと時間を掛けて親密になれればいい。 そう考えてもいたけれど、それはどうも難しそうだ。 「家にいても同じだからです」 流れる雲を見つめ続ける彼女の瞳はどこか淋しそうだった。 なんとなく、その気持ちは僕にもわかる。 「そっか、淋しいんだ」 僕は彼女の気持ちを代弁するかのようにポツリと呟く。 彼女はガバっと跳ね起きると、僕に向かって大きな声で叫んだ。 「淋しくなんかありません!」 真っ赤な顔をして、彼女は僕を睨みつけてくる。 クールなのかと思いきや、これはなかなか直情的な子だ。 「そう。 君は雲が好きなの?」 僕は彼女から視線を逸らし、彼女の見ていたらしい雲を見る。 それは、何の変わり映えもしない普通の雲だった。 「別に好きじゃないです」 気勢を逸らされたのか、彼女はぷいっと横を向いた。 こういうのをツンデレというのだろうか。 少なくとも素直ではないのは確かなようだ。 そんな彼女の姿が、僕の目には微笑ましく映っていた。 キンコンカンコーン。 休み時間の終了を知らせるチャイムが鳴った。 「授業、行かなくていいんですか?」 また雲を眺めているのだろうか、遠い目をした彼女が尋ねる。 「いい天気だから、僕も君を見習って授業をさぼろうかと思ってね」 僕を見た彼女の目が一瞬、信じられないという風に大きく見開かれる。 そんな彼女に僕はニッコリと笑ってみせた。 好き好んで他人と接したがる人間はいない。 そんな人間がいたとしても、それは何かしらの下心があるからに違いない。 僕もその例に漏れず、彼女への下心がある。 ただ、それが世間一般のソレとは少し異なっているだけのことだ。 僕はベンチにドサリと寝そべって空を見上げた。 青い空を白い雲が流れていく。 ゆとりを持って見る空はこんなにも美しかったのかと改めて実感させられる。 彼女はいつもこんな景色を眺めているのだろう。 チラリと横目で隣のベンチに座っている彼女を見た。 僕を見ていたらしい彼女は慌てて視線を逸らす。 「ぷっ、ははははは」 そんな彼女の姿に、僕は思わず噴き出していた。 人との触れ合いに慣れていないらしい彼女の姿は僕の目には新鮮に映る。 「なっ、なんで笑うんですか!?」 彼女は口を尖らせるようにして僕に叫んだ。 思った通り感情の揺れの大きい子だ。 「君が可愛いから」 感情を剥き出しにする彼女が面白くて、ついつい虐めてみたくなる。 可愛い子に意地悪してしまうのは僕の悪い癖だった。 それが理由で何度、好きな子に嫌われてしまったことか。 「なっ、なっ、なっ………」 言葉がでないのか、彼女は口をパクパクとさせている。 そんな彼女に、僕はにっこりと笑って見せた。 「こんの、女ったらしーーーーー!」 彼女の怒声が突き抜けるような晴天に響き渡った。 彼女は懲りもせずに屋上のベンチに寝そべっていた。 もっとも懲りないという点では、お互い様なのかもしれない。 妙に大人しいと思えば、彼女はすぅすぅと可愛い寝息を立てて眠っていた。 僕は彼女の頭の先、ベンチの余った部分に座り、何気なく彼女の頭を撫でてみる。 彼女の髪はサラサラと心地よく、陽光をよく吸収してポカポカと暖かい。 突然、ぱちっと彼女が目を開くと、その視線が僕の視線と絡み合う。 「おはよう」 僕は彼女の頭を撫でていた手を持ち上げて、よっとばかりに挨拶をした。 「ななな、なにしてるんですか〜!?」 彼女は勢いよく跳ね起きるとベンチの限界ぎりぎりまで後ずさる。 その手は胸元でぺけを作るように交差されている。 「何って、髪を撫でてただけだよ」 敵意を持って睨みつけてくる彼女に、にっこりと微笑んでみせる。 悪意のないことをアピールしたかったのだが逆効果だったか。 彼女は僕を指差して、開いた口が塞がらないとばかりに口をパクパクしている。 どんな罵声が聞けるのかと思ったら、彼女は溜めた息を吐いて指を下ろした。 「あれ、怒らないの?」 予想外の反応に僕は思わず尋ねずにはいられない。 「……怒る気も失せました」 ぷいっと彼女は僕から顔を逸らせる。 かと思いきや、その視線の矛先はたまに僕の方を向く。 どうも、随分と警戒されてしまったようだ。 「ん〜っ!」 体を反らせて伸びをする僕の動きに彼女の体がびくりと反応する。 そんな彼女の反応に僕は必死に笑いを堪える。 「だ、だから、何で笑うんですか!」 笑われることの理不尽さに彼女は頬を膨らませる。 僕はそんな彼女を、にやにやしながら見つめていた。 彼女と話すための時間は無尽蔵ではないけれどあった。 少なくとも、僕と会話するのが嫌そうではなかった。 結果的に、僕達は次第にお互いのことを話すようになっていた。 例えば、僕が留年していて彼女よりも一つ年上だということとか。 その時から、彼女は僕のことを先輩と呼ぶようになった。 目上の人間に対する畏敬の念からではない。 僕に対する彼女なりの嫌がらせのつもりらしい。 あまりいい気はしないので、彼女の目論見は成功といっていいだろう。 「先輩は息ができないってどういう事だと思いますか?」 突如として、彼女が突拍子もないことを尋ねてきた。 彼女のことだから、それは普通の意味合いではないのだろう。 「苦しいことだと思うよ」 それが、精神的な意味にしても、肉体的な意味にしても。 どちらとでも取れるような答えを彼女に返す。 何にせよそれは、僕の体験したことのないことだ。 僕には彼女の気持ちはわからない。 わからないけど、理解しなければいけない。 それが、彼女を正すための近道であり、僕がここにいる理由でもあるのだ。 「私は、その息ができなくなることがあるんです」 重苦しい沈黙を破って、彼女がその口を開いた。 それは、彼女が初めて僕に見せた弱さだった。 彼女の呼吸器の障害は心臓が原因のものらしい。 成長につれ障害は肥大化し、いずれはその命すら奪う難病だと聞いた。 唯一、彼女を救う手段は臓器移植のみ。 特殊な体質の彼女に適合する臓器が手に入る予定は……。 今のところはまだない。 僅かに俯いた彼女の見せる辛そうな表情。 不謹慎でも、僕にはそれが少し嬉しかった。 「そっか、怖いんだね」 僕は俯いた彼女の頭をポンポンと軽く撫ぜる。 図星なのか、僕を見つめる彼女の目が大きく見開かれた。 一人は寂しい、だけど人に弱みを見せたくない。 そんな彼女の選んだ妥協点が、この屋上という聖域だったのだろう。 「大丈夫、君は死なない」 力強く、彼女を抱き寄せて囁く。 「僕が保証する、君は絶対に死なないって」 キンコンカンコーン。 授業の始まりを知らせるチャイムが鳴った。 彼女の小さな手が抱き締めていた僕の体を突き放す。 「授業が始まりますよ、先輩」 俯いたまま彼女は言った。 僕には俯いた彼女の顔は見えない。 だけど、コンクリートの床に染み込んだ水滴の痕。 それが彼女がどんな顔をしているのかを教えてくれる。 「もう何回エスケープしたと思ってるんだい?」 その言葉に僕を突き放していた彼女の手が僕の制服を握り締める。 そして、トンと彼女の頭が僕の胸に押しつけられる。 「先輩は意地悪です」 ふっと息を吐き出すように彼女は呟いた。 「でも、先輩の言葉なら本当にそうかもしれないって思えます」 「……信じてもいいですか?」 彼女にしては珍しい弱気の台詞。 それだけ僕が彼女の心に近づけたのだと思いたい。 「僕のことを嫌いじゃないなら信じてほしい」 彼女の髪に手を伸ばして、そっと撫でる。 「私は先輩なんて、大嫌いです」 そう言いながら彼女は僕の背中に手を回して緩く抱き締める。 「そう? 僕は君のことが大好きだよ」 僕も彼女の背中に手を回し、彼女を抱き締め返した。 視線が交錯し、ゆっくりと彼女が瞼を閉じる。 彼女との付き合いのほとんどがそうであるように 僕は彼女の意図を汲み取らないといけない。 唇を重ね、彼女の甘やかな唇を存分に味わう。 それは甘美な感触であると同時に僕を思い悩ませる。 これ以上の行為は僕に許されるのだろうか、と。 「先輩……」 何かを期待するかのように彼女が僕を見つめる。 熱く潤んだ熱を持った瞳。 その眼差しを断ち切るように僕は再び彼女と唇を重ねた。 そうして彼女を強く抱き締める。 僕は聖人君主ではないし、一人の男として立派に性欲を持っている。 それでも迷いが僕を躊躇わせていた。 「先輩の意気地なし。」 どくん、その言葉が僕の胸を打った。 本当に勇気があるのは僕じゃない。 震える体を健気にも抑え続けている彼女の方だった。 僕は何に怯えていたのだろう。 制服の中へと手を伸ばし彼女のふくらみに手を添える。 そこは僕の鼓動など比較にならないほど早く脈打っていた。 「ごめん……」 僕は一言だけ呟いた。 それは今までの僕の行いに対しての贖罪。 そして、これからの僕の行いに対しての贖罪だった。 「少し待ってて」 彼女の頭を軽くぽんと叩いて昇降口のドアに向かう。 ドアが開かないように軽く仕掛けを施す。 「せ、先輩……?」 僕の行動に不安を感じたのか彼女は声をかけてくる。 授業中だし誰もこないと思うけど万が一ということもある。 「誰にも邪魔されたくないからね」 僕は彼女に向かって軽く微笑んで見せる。 唖然とした彼女の髪をかき上げて可愛いおでこにキスをする。 「優しくするから」 そう囁きながら彼女の首筋に唇を這わせていく。 彼女の体から甘いミルクの香りが僕の鼻をくすぐるように漂ってくる。 制服の中に手を差しこんで彼女の背中に添って指を滑らせた。 ブラ紐に手が触れると紐を辿るようにホックまで指を手繰らせていく。 「あっ……」 弾けるような感触と共にホックが外れる。 緩んだブラの隙間から彼女の膨らみに手を伸ばす。 思っていたよりは小さいけれど、揉めるぐらいはあることに安心した。 早鐘を打つ彼女の胸の膨らみを優しく丁寧にこね回す。 「ふっ……んっ」 彼女の胸を弄ぶほどに彼女の口からは小さく息が漏れる。 胸への刺激に声がでそうなのを堪えているのだろうか。 「声、出してもいいんだよ?」 そう彼女の耳に優しく囁きながら胸への愛撫を続ける。 耳まで真っ赤にした彼女は意地でも声を出そうとはしない。 僕にはそんな彼女が可愛くて仕方がなかった。 「あっ!?」 不意に彼女が小さく声を漏らした。 「先輩、ちょっと待って」 彼女が慌てて僕を押しとどめようとする。 「どうしたの?」 突然の彼女の心変わりに僕は思わず尋ねていた。 「……下着が汚れちゃうから」 恥ずかしそうに呟く彼女。 その言葉を聞いた瞬間、彼女が僕を止めた理由に理解がいった。 「向こう向いてようか?」 僕は気恥ずかしさに彼女から視線を逸らしながら聞いた。 「……うん」 視界の端に彼女がこくりと頷くのが見えた。 僕が彼女に背を向けると、しゅるりとスカートが擦れる音が聞こえる。 そうして、たんたんと二つ床に足を落とす音。 「先輩、いいよ」 ようやく彼女からお呼びがかかり、僕は彼女へと向き直る。 気恥ずかしそうな顔の彼女、この制服の下には何も は い て な い。 そんなことを考えると、なんというか不思議な気分になってしまうものだ。 僕は無言で彼女の手を引いて、ベンチの前に立たせるとスカートの後ろを捲り上げる。 「座って」 そうしてベンチに彼女を座らせる。 制服が汚れないようにするための僕なりの配慮だ。 彼女を押し倒しながら制服の裾から指を滑りこませていく。 「ふっ……んっ…」 胸に触れると閉じられた彼女の睫毛がぴくりと揺れた。 そのままゆっくり、彼女と唇を重ねる。 熱く、舌と舌を絡ませ合う濃厚なディープキス。 「んっ…んんっ……」 合間に漏れる彼女の吐息がたまらなく愛しく思える。 舌を絡ませつつも神経は手に集中させる。 気取られないように彼女のスカートを少しずつ捲り上げ、 肌に触れてしまわないよう時間をかけて彼女の股間へと指を近づけていく。 「んっ…!?」 指先に触れた淡い感触に彼女は小さく身悶える。 ばれてしまったのなら、もはや我慢する意味もない。 僕は指先を彼女の秘所へと這わせた。 指先に感じられるひんやりとした液体の感触。 彼女のそこはすでに愛液を溢れさせていた。 「濡れてるよ…」 濡れ具合を確かめるように秘裂に何度か指を滑らせて すっかりと熱くなった蜜壷の中に少しずつ指を潜り込ませていく。 指を進ませるほどに彼女の可愛らしい唇からくぐもった声が漏れる。 「やっ……んくっ……」 内壁を指先で交互に擦るようにして彼女の中を軽く掻きまわす。 壁を擦る度に彼女の身体がびくりと小さく跳ねる。 何かを堪えるように彼女の口から吐き出される熱い吐息。 そんな彼女の仕草が可愛くて、ついつい虐めたくなってしまう。 愛撫を中断する頃には彼女は息を荒くして、ぐったりとしていた。 その隙に財布の中のコンドームを僕自身に装着する。 何年前のコンドームだろうか。 当時のことを思い出すと情けなくなるので今はやめよう。 彼女の秘所に僕自身を擦りつけるようにして滑り具合を確認する。 どうやら準備は十分のようだ。 「いくよ」 短く確認を取ると彼女の中への挿入を開始する。 半ばまでペニスが入った時点で何かに引っ掛かるような感じがした。 「かなり痛いかもしれないけど、我慢できる?」 彼女は手で口を抑えながら首を縦に振る。 僕は一息にペニスを彼女の奥へと突き込んだ。 「んう〜〜〜っ!!」 手で抑えられた彼女の口からくぐもった悲鳴が漏れる。 さすがにかなり痛かったようだ。 目の端からはじんわりと涙が滲んでいる。 「大丈夫?」 汗の浮いたおでこの前髪を撫で上げるようにして尋ねる。 彼女はこくこくと頷いたけど、それがやせ我慢であることは間違いなかった。 「やっぱり、やめようか」 言いながら、少しでも痛みが和らぐようにと彼女の頭を撫でる。 彼女に苦痛を味合わせながら、僕一人が絶頂に達したところで何の意味もない。 僕の目的は、彼女を気持ち良くしてあげることだからだ。 「いやです」 頬を膨らませて、彼女はきっぱりと言い切った。 こういう時の彼女の強情さには目を見張るものがある。 梃子でも引いたりはしないのだろう。 「こんな、途中でやめるなんて絶対に許さないです」 彼女は僕の制服の襟を握り締め、ぐいっと引っ張るようにして立ち上がる。 僕と体を入れ替えると、ベンチの上に僕を押し倒す。 そうして、僕の上に馬乗りになった。 「先輩がイクまでは絶対にやめませんから」 そう宣言して彼女は膝立ちの姿勢から腰をと落としていく。 彼女の蜜壷がゆっくりと僕のペニスを呑み込んでいく。 「あっ…ぐっ……」 苦痛に彼女の顔が歪む。 彼女が自ら望んでそうしている行為だ。 僕に止められるはずがなかった。 「……優」 僕の目の前で彼女は必死に痛みに耐えている。 彼女の為に僕がしてやれることなんて限られている。 一番の解決策は少しでも早く射精してしまうことだろう。 「先輩……」 苦痛に歪んだままの表情で彼女は僕に微笑んだ。 そんな彼女の健気さに僕は胸が締めつけられる気がした。 彼女の中で締めつけられているペニスが思わず硬くなってしまう。 「はっ…んんっ……」 途切れ途切れに息を漏らしながらも彼女はゆっくりと挿入を繰り返す。 締めつけは悪くはないし、滑りも悪くはない。 だけど、こんな緩慢な刺激では絶対にいけそうにはない。 「先輩……気持ちいい、ですか?」 不安そうな表情で彼女が尋ねてくる。 「……うん、気持ちいいよ」 それは嘘じゃない、彼女の中はすごく気持ちがよかった。 ただ、抜けるほど強い刺激ではなかったけれど。 「そう、ですか……」 彼女は嬉しそうに微笑むと腰の動きを僅かに早める。 痛みが薄れてきたのか、ただ我慢をしているだけなのか。 一つだけはっきりと言えるのは、彼女の漏らす声色。 それに苦痛以外の何かが混じり始めているということだろうか。 「んうっ……、先…輩……」 熱い吐息吐き出すようにして、彼女が僕を呼ぶ。 その腰つきは次第に早く、滑らかな物に変わっていく。 それは強い締めつけと相まって、僕を限界へと追い詰めていく。 「くっ、出るっ!」 僕は呆気なくゴムの中に精液を吐き出していた。 「先輩……、いっちゃったんですか?」 彼女は怪訝そうな表情で僕を見つめてくる。 「そうだよ」 軽い倦怠感を感じながら僕は彼女に答える。 「……よかった」 彼女は満足そうな表情を浮かべて微笑んだ。 だけど、その少し前に彼女の見せた物足りなそうな顔。 僕はそれを見逃さなかった。 「それじゃ、お返し……だね」 僕はニンマリと笑うと、腰をゆったりと動かし始める。 「えっ……?」 間の抜けた彼女の声が印象的だった。 抜いたら終わりだと考えていたんだろうか? どっこい、世の中そんなに甘くはない。 「今度は僕が君を気持ちよくしてあげる」 彼女の腰を両手で掴むようにして身体を起こして、彼女の首筋に舌を這わせる。 左手は彼女の腰を抱いたまま、右手を制服の中へと滑り込ませていく。 精液を吐き出して意気消沈していた僕の物はすぐに固さを取り戻し始める。 「せっ、先輩……!?」 彼女の口から戸惑うような声が漏れる。 その振動は彼女の喉を通して直接に僕の舌へと伝わってくるようだ。 「さっきはあんまり触れなかったから、今度はじっくり触ってあげるね」 彼女の控え目な膨らみをやわやわと揉み解す。 控え目とはいってもそこは立派に女性の胸なわけで、楽しむ分には問題はない。 しっとりと汗ばんだ彼女の胸の感触は、手に吸いつくように柔らかくて心地よかった。 「さっきよりドキドキしてるよ?」 どくどくと掌に伝わってくる彼女の脈動。 それを慈しむように彼女の滑らかな胸を撫で上げていく。 舌で指で彼女の身体を弄びながら、腰を尺取虫のようにゆったりと動かしていく。 緩慢な動作は確実に彼女の柔らかな内壁を捉え、擦り上げていく。 「はっ…くうっ……」 可愛い口からは苦しそうな息が漏れる。 彼女の身体はじんわりと熱く火照ってきているのだろう。 その首筋にはうっすらと汗が滲んでいる。 「痛くない?」 優しく彼女の体が痛まないように。 ゆっくりと彼女を突き上げるようにして尋ねる。 「はっ……はい」 短くこくりと頷くだけの反応、それだけ余裕がないということなのだろう。 膨らみに手を這わせ、中を浅く擦りつける。 その度に、彼女は小さく息を漏らして肢体をびくりと震わせる。 「優の中、すごく熱くなってるよ」 羞恥心を煽るように彼女の首すじに囁きかける。 その言葉に反応するように、彼女の膣が僕自身を小さく締めつける。 僕の首に抱きついたまま彼女は何も答えなかった。 ただ、背中に回された手に僅かに力が篭っただけだ。 彼女の爪が僕の制服に食い込むのがわかる。 反応を見ればわかる、きっと彼女の顔は真っ赤なのだろう。 そんな彼女の様子に僕はくすりと笑う。 彼女の胸の先端を指で軽く弄んで、少し強めに逸物を押し込む。 「んんっ…ふあっ!」 びくりと背筋を仰け反らせると、彼女の口からは艶っぽい吐息が吐き出される。 彼女が身体が仰け反る度に、膣がぎゅっと締まって僕自身を強く締めつけてくる。 その感触がたまらなく気持ちがいい。 「気持ちいい?」 緩く彼女の答えを引き出すように彼女の中をゆったりと掻き回す。 彼女の言葉を妨害しない程度にゆっくりゆっくりと。 「気持ちいい…、です」 躊躇うような小さな声で彼女はその言葉を口にした。 彼女にその言葉を言わせたという征服感に僕はぞくぞくとしたものが走るのを感じた。 その高揚感に僕自身が一段と硬さを増し彼女の中を軽く擦る。 んっ、と小さく彼女の唇から息が漏れる。 「そう、よかった」 僕はニッコリ笑って囁くと、少し強めの挿入を開始する。 これから先にもう気遣いは必要ない。 ただ、彼女を気持ちよくすることだけに没頭すればいいのだ。 彼女の柔らかく滑らかな膨らみを揉み解す。 そうしながら、その先端を指先でくりくりと刺激していく。 次第に彼女の先端が硬くなっていくのがわかる。 「んっ…ふあっ…」 胸は彼女の中でも特に弱いところの一つなんだろう。 他の場所を弄った時と比べると実に反応が素直だ。 少し弄ぶだけで、すぐに僕自身を締め付けさせてくる。 そんな彼女を見ていると、ますます胸が触りたくなってしまうわけで。 ついつい指先に神経を集中させて、彼女の胸を触ってしまう。 「あっ…先輩…っ…!」 彼女が頭を僕の胸に強く押しつけてくる。 俯かせたその唇からは、はあはあと荒く息を喘がせている。 そろそろ限界が近いのだろう。 腰をしゃくりあげる度に、内壁を擦られる感覚に彼女は小さく息を漏らす。 背中に回った手には力が篭り、彼女の中は僕自身を締めあげる。 狭くなった中を押し広げるように挿入すると一層強い反応が得られる。 触れれば触れるほどに彼女の口から漏れる声は大きくなっていく。 まるで、淫らな音を鳴り響かせる楽器のように。 僕はゆったりと腰を突き上げながら、胸を弄んでいた手を スカートの中へと潜りこませて、彼女のクリトリスを軽く刺激した。 「うあっ…!?」 肉の芽を指で押さえつけると、彼女はびくりと体を仰け反らせる。 そのまま肉芽を指先で転がすように刺激を加える。 「せっ…、先輩っ……」 彼女は苦しそうに息を喘がせながら、体をびくびくと震わせる 肉芽を弄ぶ度に、彼女は今までにない強さで僕自身を締めつけてくる 「んっ……んんんっ!!」 僕を抱き締める彼女の手に力が篭り、彼女の膣がぎゅっと僕のものを強く締め上げる。 その締め上げを利用して僕もラストスパートに入る。 下の壁を擦るように引き抜きながら、抉るように彼女の中に深く突き込む。 彼女の締め付けに、体をぞくりとした感覚が這いあがる。 「ふあっ…、先輩ぃ……!」 彼女の口から切なげな可愛い声が漏れる。 そんな彼女の姿からは、香り立つような女の匂いを感じさせる。 絶頂の後も激しく責められてきついんだろう。 とは言っても、僕もこんな状態ではやめるにやめられない。 「ごめん、僕も後少しだから…。」 彼女は身体をぐったりとさせて、はあはあと息を乱れさせている。 首に絡んだ腕も抱きつくわけではなく、力なく垂れ下がっているだけ。 僕は彼女の身体を両腕で支えると、己の欲望を満たすための挿入を繰り返す。 「んうっ……、うあぁっ…!」 彼女の唇から漏れる辛そうな喘ぎ。 そんな彼女の表情にも、そそる物を感じてしまう。 僕は絶頂に向けて容赦なく腰を突き込んでいく。 「優っ、いくよ」 僕は彼女の体を強く抱き締める。 高まる快感をペニスから迸らせるようにして僕は絶頂を迎えていた。 張りつめたゴムの中に精液がドクドクと吐き出されていく。 彼女の体を抱いたまま、僕はベンチの上にゆっくりと倒れ込む。 荒い呼吸の度に持ちあがる彼女の重みが不思議なぐらい心地よかった。 キンコンカンコーン。 授業の終わりを知らせるチャイムが鳴った。 「優、たまには授業に出てみようとは思わない?」 僕の上に圧し掛かる存在に僕は声を掛ける。 「たまには、授業に出てみるのも悪くはないかもしれませんね」 そう言って彼女は意地悪そうな笑みを浮かべる。 それは、僕の見た彼女の笑顔の中で一番の笑顔に見えた。 私が授業に出始めると、入れ替わるように先輩は学校に来なくなった。 その頃の私は、遅れていた学力を取り戻すのに必死だった。 だから、先輩の事を考えている余裕なんてなかった。 それからしばらくして、ドナーが見つかったという朗報が私の耳に届けられた。 信じられなかった。 今まで諦めていたものが手に入るという喜び。 手術の失敗や感染症といった問題はあった。 だけど、そんなものは輝ける未来の前には霞んで見えた。 手術が無事に成功してから何年経っただろうか。 本当に私は病気だったのか、そう思える程に私は健康になっていた。 結婚して初めての子供を産んだばかりの私は、 我が子の愛らしい寝顔を見る度に幸せな気持ちで一杯になれた。 きっと、私は人生で一番に幸せな時期を迎えているのだろう。 「優、これ・・・」 産婦人科のベッドで休養中の私に母さんが手渡したのは一通の手紙だった。 差出人の名前は、あの影山先輩だった。 優へ この手紙を読む頃には君は手術を終えて元気になっていると思います 君を支えてくれるであろう素敵な人が君の傍にはいますか? もし、そんな人がいるのなら少し残念です だけど、傍にいなかった僕には何も言える資格はないよね 君が幸せであるかどうか、それが僕の唯一の心残りです もし、君が自分の選んだ相手に自信が持てないと言うのなら一言 大丈夫、君の選んだ相手に間違いはないよ もっと自分を信じて 僕は君の幸せをいつまでも祈り続けています 永遠の愛を篭めて 20xx x月x日 影山 大輝 手紙を読み終えると、私の瞳からは涙が溢れていた。 忘れかけていた記憶が鮮烈な映像となって頭の中に蘇ってくる。 この手紙は私の手術が行われるよりも前に書かれた物だ。 それなのに、先輩は私が手術をすることを知っていた。 私は先輩に自分の病気の事を話した事はない。 先輩が私を励ますために言った根拠のない台詞、忽然と姿を消した先輩。 全ての点が私の中で線となって繋がっていた。 悲しかった、悲しかったけど、それ以上に嬉しかった。 先輩は私を捨てたんだとずっと思っていた。 だけど、そうじゃなかった。 先輩はずっと一緒だった、ずっと私と一緒だったんだ。 「優・・・?」 母さんが心配そうに私に声をかけてくる。 「ううん、何でもない」 私は服の袖で涙を拭って答える。 「私、今すごく幸せなの・・・すごく幸せ・・・」 力強く脈打つ鼓動を掌に感じながら、 私は溢れ出す心からの笑顔で母さんに微笑んでいた。 SS一覧に戻る メインページに戻る |