シチュエーション
![]() 病院着の前を掻き分けて、大きな指が胸元へと潜り込んでくる。 仕事で荒れた乾燥した手が私の胸に触れる。 ざらりとした感触に、体がぞくぞくする。 少し触られただけなのに、先端がもう硬く尖り始めている。 『ほら、すっかり硬くなってる。』 そう言わんばかりに硬くなった先端を弄ばれる。 優しい指遣いが、私の感じる場所を的確に捉えて離さない。 「んっ・・・。」 少し乱暴に硬くなった乳首を、こね回されて引っ張られる。 先端から広がる、ぞくりとする刺激に小さく声が漏れた。 『声を漏らすとみんなにばれちゃうよ?』 耳に囁くような小さな声と共に体を弄ばれる。 意地悪にされる程に、体はどんどんと熱く火照っていく。 焦らすようなツボを心得た愛撫は少しずつ私の体を昂ぶらせていく。 まだ、触れもしていないのに、私は愛液を溢れさせてしまっていた。 そんな状態を察して、指は下へ下へとゆっくりと肌を伝い降りていく。 肌と布に隙間を作るようにして、指が下着の中へと潜り込む。 指はぽわぽわとした毛を軽く弄ぶと、濡れた割れ目の上をぬらりと滑った。 『こんなに溢れさせて、うさぎちゃんは本当にエッチだね。』 普段ならば、絶対に聞くことのないだろう言葉。 そんな台詞が頭の中に、はっきりと聞こえた。 割れ目を少しずつ押し開くみたいにして、指が何度も往復を繰り返す。 愛液を潤滑液にぬるぬると滑る指先が、たまに敏感な突起に擦れる。 「んんっ・・・!」 その刺激に、びくりと体を震わせて仰け反らせてしまう。 意地悪な愛撫に、愛液がどんどんと溢れてくる。 『うさぎちゃん、そろそろ入れるね。』 私のあそこに、太い何かが押し当てられる。 焦らすみたいにゆっくりと、緩やかな出入りを繰り返す。 そこはもうぬるぬるで、準備は充分みたいだった。 「はっ・・・くっ・・・。」 ずぬりと、それは奥へと押し込まれていく。 その感覚に体が、きゅうっと、それを締め付けさせる。 『うさぎちゃんの中、すごく気持ちいいよ。』 気持ち良さそうな顔が嬉しくて、膣が更に締まった。 それを合図に、体の中に押し込まれたものが動きだす。 最初は緩やかに、でも次第に速さを増して。 「んっ・・・ふっ・・・」 中を擦られる気持ちよさに、小さく息を漏らす。 丁寧だった挿入は、少しずつ荒さと激しさを増していく。 同時に頭の中を染め上げるような気持ちよさが体を支配する。 「先生・・・、先生っ・・・!」 必死に声を押し殺す私に、先生は激しい挿入を繰り返す。 掻き回すような行為に愛液が淫らな音を立てているのが、はっきりとわかる。 私は声が漏れてしまわないように、病院着の裾を捲り上げて口に咥える。 「んっ・・・んんん〜っ・・・!!!」 襲い来る快感に体が、きゅうっと指を締めつける。 昂ぶり弾けた感覚に私は布を強く噛み締めてイった。 はあはあと荒く息をつきながら、余韻に浸る。 力の抜けた口からは、ぱさりと布が胸元に落ちた。 乱れた着衣を整え、息を整えながら考える。 熱くなった体が冷めるにつれて、虚しさが心の中を占めていく。 いつもそうだ。自分を慰めた後はどうしようもない寂しさに包まれる。 不安を感じると私は呼吸ができなくなってしまう。 だから、このボタンを押すのは仕方がないことなんだ。 そう自分に言い聞かせるようにして、私はボタンに手を伸ばした。 震える指で緊急呼出用のボタンを押さえる。 これで五分もせずに、あの人がここにやってくる。 その事実が、私の心から不安を取り除いていく。 廊下の向こうから響く足音、そうして勢いよく扉が開かれた。 「ウサギちゃん、大丈夫かい!?」 息を切らせながらの苦しそうな声。 その姿に思わず頬が緩んでしまいそうになる。 「はい、大丈夫です。」 心を落ち着けて、平静を装って頷いてみせる。 私が微笑むと先生は、「よかった」と荒くした息を隠さずに呟いた。 誰にでも献身的な、先生のそういう所が私は好きだ。 「それじゃ、脈を測るから手を出して。」 その言葉に少しドキリとした。脈を測られたら嘘がばれる。 だけど、それを止める方法が私にはなかった。 渋々と差し出した私の手首を、先生の指が押さえる。 「ウサギちゃん。」 俯いた先生の口から漏れる抑揚のない声。 いつも、私を呼びかける暖かな声とは明らかに違う。 落胆や失望、そんな含みを持っている様に感じられた。 「どうして、嘘をついたんだい?」 怒りを押し殺したような冷たい声。私は何も答えられない。 伏せられたままの先生の表情は私からは見えなかった。 「せ、先生に会いたかったんです。」 叱られた子供のように声が震えてしまっていた。 ・・・バンッ!!! 病室の壁に先生の掌が叩きつけられて激しい音を立てる。 「君もわかってるだろう?」 先生が私に問いかける。 いつも優しい先生の表情は険しかった。 「この病院がどれだけ忙しいのか知ってる筈だろう?」 微塵も怒りを隠そうとはせず、先生は語り続ける。 私は何も答えられない。 「君のお遊びに付き合っている暇はないんだよ。」 沈黙を破るように先生は言い放つ。 そうして、私も見ようともせず荒々しく立ち上がった。 勢いのまま、早足に病室を出て行こうとする。 「先生っ、行かないで!」 身が引き裂かれるような思いで、私は叫んでいた。 胸を締めつけられるような苦しさ。苦しくて息もできない。 先生を追おうとした体は無様にも寝台から崩れ落ちる。 「せんせ・・・い・・・。」 言葉は擦れ音にならない。先生の出て行った扉は涙でぼやける。 ゆっくりと、私の意識は黒に染まっていった。 ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() |