シチュエーション
結核は治る病。なんだそーだ。鳥海サナは、そう聞かされた。コマネチのおいちゃんもそう言っていたっけ。 それまで病気の類とは無縁だった彼女。それが珍しく風邪を引き、鬼の霍乱か?と父親に笑われたので足をふんずけてやった。 ただ。風邪にしては妙に長引くと思って病院へ行って見たら。 「結核ですね」 その一言で、サナは二ヶ月間の入院を申し渡されたのだった。若い身空の二ヶ月は貴重だ… それだけが、不満だった。 サナの地元は山の中。高原地帯にある。そのせいか、昔から高地療養所…サナトリウムがあった。 最近、また入院患者が増えてきているそうだ… サナもまた、家の近くだからと言う理由で、そこへ押し込められてしまった。地元の人間でココに入院するのは珍しい。 普通の病気なら普通の病院へ入るからだ。この地にも、大気の汚染が押し寄せて来ているのだろうか… 与えられた病室は個室。木造で年季が入ってはいるが、広くて閑かで怖いくらい。 実際、妙な噂もクラスメイトから聴いた。 「出るらしいよ〜、アソコ」 何が出るって言うのよ。 … やたら元気な、看護士のお姉さん。読書室で出会った、病弱そうな眼鏡の青年。 そして、宵闇に垣間見た影。 サナの記憶に強く残る二ヶ月がいま、始まる。 続く? SS一覧に戻る メインページに戻る |