シチュエーション
蓮台寺結衣 教職員。絵に描いたような才色兼備、だが油断のならないくせ者。 家柄があり、高学歴、高身長、生徒からの高評価と、他の教師から手が出せない孤高の存在。 人の心を食べるのが大好きな、妖怪みたいな趣向を持つ。 将棋部顧問。 姫川ハルキ 生徒。双子の兄であり、気さくで人を選ばない社交的な性格。 訳あって弟を溺愛するブラコンだが、普段はおくびにも出さないで接する。 親は離婚して父のみの家庭。 料理の腕は一級品。 姫川アキト 双子の弟。成績はトップクラス。 兄とは違い、友人を選ぶタイプで不器用な方。 将棋部部長で全国レベルの腕前。 平岩葵 一人暮らしをするOL。妹の茜がハルキとの交際があった。 ******************** 「しっかしお前もアホだね、ノートを忘れるなんて。 だいたい課題くらい、わざわざ暗い校舎へ取りに行かなくてもいいだろ」 「あ〜うるさい。月曜の朝からどたばたするのが嫌なんだよ」 そろそろ紅葉も見えはじめる時期、日が沈めばだいぶ気温が下がる。 そんな中、暗い夜道を歩きながら会話する二人組みがいた。 話の内容からも読み取れるように、まだ学生とわかる年恰好だった。 二人を見ればすぐにわかる共通点がある。 普通ではありえないほど顔が似ている。 双子であった。 学校内ではすこぶる有名な二人であった。 単純に双子だというのもそうだが、人目を引き付けずにはいられない魅力的な容貌が二つ並ぶのはなかなか見られない光景だ。 兄は気さくで嫌味のない明るさを振りまき、同性異性とわず親しまれる愛嬌の良さがあったし、 対称的に弟は比較的物静な文化系であり、そのギャップもまた話題の一つだった。 両者の特徴が良い風に中和されるのも、ある意味敵をつくらず友好関係を築きやすい要因の一つでもあった。 そういう事もあり二枚目特有の近寄りがたさは無く、人望の多さはかなりのものがあり、 異性からの告白も少なからずあった。 「んで、あの、ラブレターどうするの」 双子の兄、ハルキは噛んで含めるようにゆっくりと話す。 口調に興味とわずかな揶揄が含まれていた。 「正直お前にまかせたいぐらいだ。断ってきてほしいよ」 弟のアキトは兄に向かってお前呼ばわりするが、 呼ばれたほうは気にした風もなかった。 いつもの事だった。 「もらったのはアキトなんだから、筋ってものがあるだろ」 「正論ありがとう。わかってはいるけど、色々と難しいしめんどくさいよね、本当にこういうのはさ」 「はぁ〜、別に知らない女子ではないんだろ」 「そうだけど、こういうのはよくわからない。それほど好みではないと思うし」 「お前の好みねぇ、たとえばどんな?」 「んん………」 熟考する弟を怪訝に伺う。 「たとえば……たとえばの話だけど、蓮台寺先生みたいな」 「ほっほー、結衣ドン先生ねぇ。たしかに結衣ドンが恋人ならそりゃ最高だろうね」 「誰が広めたのか知らないけど、そのドンって付けるのはやめろよな……」 少なからぬ思慕の念があるのだろう、兄が言った呼び名に不満げな声を上げる。 蓮台寺結衣その人は女性にしては比較的背が高いため、裏では通称結衣ドンと呼ばれていた。 だが何もそれだけが要因ではなく、色々絡んで定着の感があるほど親しまれた呼び名になっていった。 「ははは、別に悪口ではないって。むしろ褒め言葉に近いね。 あの存在感は何と言うか、とにかく絶対無視できない何かがあるだろ、あの人はさ。 美人で可愛いけど、それだけじゃあ出ない魅力って言うか、とにかく人を引き付ける何かがあるもんな。 結衣先生が涙ながらにお願いしたら、なにがなんでもかなえてやりたい、 いっそこの人のためなら死ねる、とか言い出す奴もいそうなくらい。 それに教師連中の中でも、結衣ドンには下手に逆らえないらしいぜ。 イイトコの出だって話だしね、おまけに一流大学の出身、 頭の良さと関係あるか知らんけど、 将棋部顧問になってお前をめっためたにしたと聞いたときは爆笑ものだったぜ」 ぺらぺらと話す兄にくらべ、弟のほうは適当に聞き流しながら相槌を打つ。 弟のアキトは一年生の時にはすでに将棋部副部長を任され、 先輩が引退した二年生の今は文句なしに部長だった。 今年新任に入った笹川結衣が副顧問になった時、見かけ、さらには女性というから判断して、 部員全員がたいした事はないだろうとふんでいたそうだった。 だが実際対局するとことごとく生徒側の全敗、その時に結構な話題となり全校に知れ渡っていた。 それというのも、この学校は全国でも有数の強豪校だからである。 「あぁ、そういえば課題、結衣先生の教科だもんな。 なんで週末のこんな時間、ノートを取りに行くなんて言い出したのか不思議だったんだ」 「いまさら気付く鈍感さに完敗です」 「どちらかと言うと、お前の健気さに乾杯したいけどね……。 今日のメシといい、ラブレターといいお前は不器用だよな。 まあそんなことはいいや、さっさと入ろう」 夜の帳が落ちる中、校門から入ろうと辺りを窺うが、すでに鍵は閉められていた。 迂回して職員玄関へ向かうと扉は開いており、そこから入っていく。 「うお、思ったより怖いな」 「さっさと行こうぜ。なんだかんだ言っても、誰かに見つかると色々面倒だし」 真っ暗な廊下を忍び足で歩く。 少なくともまだ誰か、宿直が残っている可能性が高い。 非常用の赤いランプに内心驚きながら、目的地まで到着する。 先行したハルキが教室の戸を開ける時、ギギッと予想以上に大きな音が鳴り響いた。 「おい」 「大丈夫だって。ほらさっさとノートを持って帰ろうぜ」 下手に明かりを点けられないため、机の中を手探りであさり、目的の物を眼を凝らして確かめる。 間違いないのを確認して、早々に立ち去ることにした。 「ちょっとまってくれ……」 兄の方が静かに声を出す。 「なに?」 「悪い、トイレに行きたいんだが」 「しょうがないな、見つかる前に早く行けよ」 「それはそうなんだがね、……一緒に来てくれ」 「…………」 少しの間が空く。 微妙な雰囲気が漂う中、アキトがため息をついた後、しぶしぶ同行した。 「いや、ほらね、結構怖いだろ」 「まあな」 「それに漏れるよりましだろ」 「まあな」 トイレに入るハルキを冷ややかに眺めながら適当に返事をする。 「うう、寒い」 待ってる時間は長く感じられ、思ったよりも冷えた。 ******************** 「あら?」 戸締りを始める矢先、先ほどから物音がするのを聞きとがめ、 不審者の可能性を考え慎重に音源を探っていた。 話し声を聞いてみると、どうやら生徒が忘れ物を取りに来たようだった。 このまま出るようなら見逃そうかと思ったが、 トイレへと入っていったため、とりあえず事情を聞くことにする。 ******************** 「わっ、せ、先生」 トイレの入り口で待つ弟は、近づかれるまで人の気配を感じなかったため、 まるでSFかホラーのように、暗闇の中から突然現れた教師に心底驚く。 「はい、こんな時間に何をしているのアキト君」 しかも、もしかしたらこの場で一番出会いたくない蓮台寺結衣先生その人だった。 女性ながら、男子平均身長やや上のアキトよりも上背のため、 この場面においての威圧感はさらなるものがあった。 「あっ、これは……その」 突然の出現にしどろもどろになっていると、 トイレから兄のほうが用を足して出てくるところだった。 「あぁ、結衣先生こんばんわ」 「こんばんわ、ハルキ君。わざわざ土曜日のこんな時間に校舎へ何のよう?」 「あー、それはですね、こいつが課題で使うノートを忘れたんですよ。 それでどうしてもって事で取りに来たんです。騒がせてすみません。 ほらお前も何か言えよ」 「すみません……」 うなだれたように言葉少なく謝る。 「まあそんなにしゅんとしなくてもいいわよ。大丈夫、別にこれくらい何も問題にならないわよ」 「はい、本当にすみません」 「そうだっ!」 弟と、弟の憧れと思われる教師を見て、ハルキは何か気付き、唐突に手を叩いて声をあげた。 両者の視線が集まるが、大して気にした風もなくまくしたてはじめる。 「こいつ、取りに来た課題って先生の教科なんだよね。 どうせなら教えてくれないかな、先生もこのまま宿直するだけなら暇だろうからさ」 「宿直といっても、見回りの後、警備システムをセットしたら帰るから、学園に泊まるわけではないのよ。 だけど、……まあそれくらい別にかまわないかな……。あとひとつ、もう遅いのだし親御さんの同意が無ければダメよ」 「えっ、いいですよ。先生も都合があるでしょうし。それに自分で解いてこそ意味があるものだろうし」 「ばか。お前ちょっと……」 ハルキは強引にアキトをヘッドロックして耳元でぼそぼそ呟いた。 「これは少しでもお近づきになれるチャンスだぞ」 「そ、そうかぁ?」 「そうだって、なかなか無いぞ。こういう状況は」 「でも親父にはどう言うの」 「そんなもん適当でいいだろ。別にやましいことするわけじゃあないんだし」 「動機は充分やましいかと思うけど……」 うぅと唸りながら、少しの考慮のすえにうなずいたアキトを確認して離す。 「はい、お願いします」 「それじゃあ親御さんに連絡しなさい。持ってなければ携帯貸すわよ」 「どうも、お借りします」 アキトは内心喜びながら電話するハルキを見ていた。 無事親から了承をえられ、三人は宿直室へと向かった。 余談だがハルキは親に、教師はクラスの担任、つまり男だと伝えていた。 ******************** 暖房によって暖められた部屋へと入る。 畳張りにテレビと簡易な台所、ちゃぶ台かと見まごうテーブルと昭和の香りがする造りだ。 だが一角にパソコンと警報装置の制御盤と思われるパネル、 多機能な電話とハイテクな機器が集まっているため、そんなレトロな香りもたちまち霧散する。 「夕食は食べてきた?」 「はい、おかまいなく」 「それじゃあお茶くらい出すわ、待っててね」 暖かい烏龍茶だったが、飲むと身体が温まる感じになる。 一息ついて明かりの元で結衣を見上げると、ずいぶんとラフな姿をしていることに気付く。 ノースリーブのブラウスに膝上までのジーパン調スカートにサンダル履き、 アクセントとして腰にラップスカートのような物を巻いて引き締めている。 見た目には学生の普段着にすら見えるその姿は、 似合っており格好も良いが、もう今の季節には寒そうに見えた。 むき出しの肩に何か掛けてやりたい。 「先生、その格好寒くない?」 「さっきね、シャワー浴びてたのよ。外は少し寒かったけど身体は温まってたからそれほどではないわ、 ほらほら、ノートと教科書を広げて、わからない所があったら気軽に聞いてね」 「お前はどうするの? 何も持ってきてないだろうし」 「先生を相手にトークとか」 「はいはい、ハルキくんには私の教科書貸してあげるから、一緒に勉強しなさい」 「うっ」 ハルキは教科書を手渡され、思わず唸る。 腕にかかる重みがこれから先の困難を表していた。 「うむむ、しかたない。ルーズリーフ少しくれ」 かくして二人とも、熱心に課題に取り組むという方法でしかアピールできなくなっていた。 しばらくカリカリとシャープペンシルの音が鳴る。 今この時においては、なかなかにして模範的な生徒と言え、そんな二人を結衣はじっと見ていた。 テーブルに両腕を重ね、そこに上半身を乗り出すようにあずける。 ほんのり上気した肌、たわわな胸が盛り上がり隙間から深い谷間が見えた。 それほど大きくないテーブルなため、手を伸ばせば届く距離にある。 「ねえ」 「はい?」 結衣はくすくすと、さも子供のように微笑む。 二人は気のせいか、甘い匂いを感じる。 「さっきから全然進んでないわよ」 「あっ……」 「いや……」 「ふふ、そういうお年頃なのはわかるけど、人の胸をちらちらと見てはだめよ」 赤面しながら二人は気を取り直し課題へと勤しむが、明らかに集中できていないことがわかる。 ノートと分の悪いにらめっこが続くが、やがてハルキは両手をあげる。 「だめだ、降参。悪いけど付き合いきれん、一抜けだ!」 「お前と言うやつは……」 「あはは、まあまあ、ここまでつき合わせてきたんだから怒らない」 結衣はおかしそうに笑いながら、なだめるように言い聞かせると、 兄に向けた気分もどこかへと霧散していく。 どうにも逆らえないと言ったのは、あながち外れではなかった。 「……いや、別に怒ってはいませんけど」 「というわけで先生、本来の目的、俺とトークをしましょう」 お調子者の口調で軽口を叩くと、結衣はにっこりと微笑む。 だが出てくる言葉は、 「だめよ、アキト君の邪魔になるから、やる気がないなら帰りなさい」 と、拒絶の意だった。 「うへ〜、しかたない、見たいテレビもあるし俺は帰るわ」 ハルキはばつが悪そうに頭をかきながら立ち上がる。 「ぅえ、おい」 アキトは内心、言いだしっぺのお前が真っ先に帰るのはないだろと思い眼を合わせると、 まるで見透かしたように相手は片目を瞑る。 ハルキの微妙に面白がる表情を作りながらするウインクを見て、全てを悟った。 良い意味で解釈すれば、気を利かせたと言いたいところだろうが、 これからアキトが二人きりになる状況を明らかに面白がり楽しんでる。 「あら、冗談なのに、気を悪くしたらごめんね。別に居てくれてもいいいのよ」 「いえいえお構いなく。俺はこれでも優等生ですから大丈夫ですよ」 などと兄の成績をおおよそ知る弟にしてみれば、世迷い事をぬかしながらそそくさと退出していった。 「ふふ、いいお兄さんね」 それは明らかに誤解だったと思うが、訂正するのは気が引けた。 なんだかんだ言っても、少し嬉しかったのである。 その後も勉強は続いていった。 やがて課題も後半に移ると、さすがに難しくなったのか手が止まる場面が増えていく。 「どう、わからない?」 結衣が向かいにあるノートをのぞきこむと、自然と胸元が谷間まで見える。 アキトはその深さをこっそり盗み見するが、それだけで眩暈がしそうだった。 集中しようと意識するが、ほのかなシャンプーの香りに心はたやすく乱される。 「アキト君、聞いてる?」 「えっ、あ、スミマセン。ぼーしてしまいまして」 「もう、ちゃんと聞いてくれないとダメ。ここは重要なんだから」 結衣は立ち上がって、すたすたとテーブルを迂回して歩く。 迂回などと言うには大げさな時間と距離だが、 アキトは一歩近づくごとに増すプレッシャーに、周りの風景がスローモーションになるほどだった。 たかだか三歩ほどだっただろうが、隣に腰を下ろす瞬間までに心拍数は跳ね上がっていた。 「うんうん、充分いいじゃない。基本が出来て、次は応用ね」 「は、はい」 体力気力根性、そして理性を総動員して集中する。 見えない苦闘も肩と肩が触れてしまえばあえなく崩れ去る。 物理的距離がゼロという状態は、きわめて危険だった。 暖かく柔らかい感触に、男の生理現象が否応無しに発揮される。 そんな葛藤も知ってか知らずか、結衣は体を寄せる。 もしかしたら、書きとめてるノートが見にくかったのかもしれないが、 もはやアキトにとって課題より、時折二の腕に当たる胸に意識が集中する。 熱くなった下半身が行動は勿論のこと、思考も阻害した。 「――だから……、アキト君?」 「……えっ……あっ、あれ?」 「ふ〜ん、先生はマジメな話をしているんだけど」 結衣はそう言ってさらに身を寄せる。 すでに当たると言うレベルではなく、押されていた。 「……今、思ったんだけど聞いていいかな?」 「は、はい?」 アキトは自分の邪な考えが暴露し、告発され被告席に立つ気分だった。 そして十三階段から断頭台まで、そう遠くない距離を一本道。 「アキト君てさ、あんまり女性に慣れてないの?」 慣れる? 女性に? いったいどういう意味だろう。 そもそも女性に慣れるとはどういう状態を言うのだろうか。 アキトは予想外の質問に戸惑った。 「なんだかとたんに集中できないで、意識がこちらに向いてるみたいだからね、なんとなくそう思ったのよ。 だけど私、本当の事を言うと、なんだか遊んでる女泣かせなイメージがあったのよね、アキト君てさ」 「あ、あの〜、それはないですよ」 「あらあらごめんなさい。わざわざ夜にノートを取りにくるくらい真面目だものね」 それには裏の理由があったのだが、特に説明する必要もなかった。 「それに俺、女子と付き合ったことなんて一度もないですよ」 「そうなの。……でもそれは、ちょっと嬉しいかな」 「はあ」 意図のわからない相手の喜びに、気の抜けた返事をした。 「少し噂を小耳にはさんだのよね。さっきみたいな事、まあ女泣かせ? 遊び人と言うかな」 「んん? そうなんですか」 アキトは首をかしげる。 噂など当事者の耳にも多少なりとも入ってくるものだと思うが、 今回に関して言えば、初耳だった。 アキトは同性愛者でもないのに女子の告白を全て断っていたため、 難攻不落という噂が立ち、かえって硬派と言われていた。 実態はそこまでではなくとも、結果として出来上がったイメージは思いの他評判が良い。 本人もその評判に多少なり自負するところがあるため、結衣の話に意外な気持ちも強かった。 しかし、かすかだが別の推測で、胸に引っかかる部分もあった。 もしかしたら兄だろうか? 「俺は、女性を泣かせるような事は……してませんよ」 一部に嘘があったため、少し言葉に詰まる。 実際は告白を断るときに、相手に泣かれた事があったが、 これはノーカウントと心の中で付け加えた。 アキトはふと、今日は心にしまっていく思考が多い日だと考える。 「そう? この前屋上で女の子と対面してる時、 その子、涙を流してるように見えた気がしたんだけどね」 「えっ、それは……」 なるべく人目につかない時間と場所を選んでいただけに、指摘された事実に驚いた。 「そ、その……ラブレター渡されたり告白されたりした事があってそれで、えっと、 で、でもその、ちゃんと失礼の無いように断ってますよ。 それで泣かれてもしかたないじゃないですか」 あまりにあたふたするアキトの様子に、結衣は吹きだしてしまった。 「とにかく、そういう訳ですから。少なくとも先生が思ってるようなことではないですよ」 憮然と答えを締めくくる。 「ごめんなさい。でも何で断ってるの? 私が知ってる限りでも、結構な数よ。 こんな事言うと不謹慎だけど、まるで選り取りみどりだよね」 「えっと、それは……」 実に答えにくい質問だった。 まさかこの場であなたが好きだからとは言えまい。 加えて相反するように、 どうにも告白してくる相手には良い印象を持てないでいる自分がいた。 恋に恋する乙女が、自分の事をよくも知りもしないで告白しているものだと思っていた。 端的に言って、アキトは自分はツマラナイ人間だという自嘲に近い念がある。 趣味といえば将棋一筋で、あとは成績が二重丸もらえる程度にしかとりえがなく、 気の利いたおしゃべりや遊びなど、とても縁遠い物だと。 結婚相手としては良いだろうが、恋人としてはデートもまともに出来ない最低な相手だろうと、 年齢不相応な達観した評価をアキトは自分に下していた。 だからこそか、余計に結衣の存在は衝撃的だった。 優しくほがらかで茶目っ気も親しみもある美人が、将棋においては自分より強い。 おそらく学生時代においては、成績のよさでも負けていただろう。 ツマラナイ人間なりに持っていた自負が、完全に叩き潰されていた。 初めて対局したその日、閉校時間間際まで何度も勝負して全敗が決まった瞬間、 もう恋に落ちる運命だったと言いきれるほど、悔しさより先にときめきを感じていた。 答えあぐねて視線を泳がせると、当たり前に横にいる結衣に目が止まった。 さらさらの長い黒髪、小顔に理知的でたおやかな目、長いまつ毛が瞬きとともに舞う。 微笑を湛えた美貌が、可愛らしく組む両手の上に預け、今一身にアキトへ向いている。 自然のままでも艶やかに朱をおびた唇に触れたかった。 意識を逸らそうとすればするほど、返って意識してしまう。 「それは?」 人肌のぬくもりは、青い衝動を呼び起こすのに充分な効力があった。 へたすれば、目の前の人を押し倒しかねない。 隠してはいるが、先ほどから完全に勃起して、布地に擦れるだけでも射精しそうだった。 加速度的に勢いを増す嵐の中、かすかな理性を総動員して、熱暴走しそうな頭で計算する。 「お手洗いに行ってきます!」 三十六計逃げるに如かず、であった。 ********************************* 宿直室から出て、一番手短なトイレに明かりを点けて入る。 夜の校舎がかもしだす特有の恐怖など一片も感じなかった。 すぐさまズボンを下ろし洋式の便座に座り、自慰を始める。 どうせ誰もいない、羞恥心などこの場では不要だ。 映像や写真ではない、すぐ近くに居る女性を性のはけ口にするのは気が引けたが、 始めてみるとむしろ、何故今まで行わなかったのか不思議なくらいスムーズに、そしていつもより興奮した。 アキトは想像の中で結衣を犯し始めた。 手をつないだりキスや愛撫など、愛情表現の段階を全て吹き飛ばし、 ただただ服を剥ぎ取り、全裸で交合する情景を思い浮かべた。 病み付きになりそうなほど甘美な快楽、たとえ想像の中だけでもここまでいけるものだろうか。 時間が許す限り味わいたかったが、待たせているためそうもいかない。 第一そんな精神的余裕などなかった。 目を閉じ、一心不乱に想像を膨らませていく。 「はあはあぁ、先生、はあ、はあ」 「ねえ、大丈…………、ごめん、ね」 アキトは自分の想像の結衣とは違う台詞に夢心地から引き戻される。 しかもその台詞はごく近く、頭上から聞こえた。 アキトはあまりの余裕のなさに、鍵を掛け忘れていた事に気付く。 いまだに自分は断頭台に上がったままだという立場を思い出した。 それどころかもはや手遅れであり、ギロチンは落とされ自分の首が転がっているのが見えるようだった。 「そのね、なんだか苦しそうな声が聞こえたし、ノックをしても反応が無かったから……。 でも、元気そうでよかったよ」 客観的事実を見れば、まったくもって結衣の言うとおりだった。 「こんな所でオナニーしてはダメだけど、 ……本当にすごく元気、苦しそうだし助けてあげる、ね」 「えっ」 結衣は屈んでビクビクと血流の増した男根を握る。 さらにはそれを擦り、息を吹きかけた。 それだけでもアキトは果てそうになった。 「けど無条件はだめ。答えればこんなところでオナニーしてたこと許してあげるよ。ほら」 「くぅぁ、な、何を、ですか?」 先端からは汁が溢れ、イキたくてもいけない苦痛は拷問の域に達している 「トイレに入る前に言った質問。ふふ、なぜアキト君は恋人をつくらないの?」 「それは……別に付き合いたいと思う女性がいなかっただけ」 「ふ〜ん、そうなんだ」 結衣は小悪魔的な表情を浮かべ、怒張を再び手でしごき、慰める。 まるで全てを見透かすような目に、アキトは自分の考えが知られる恐怖より、 なぜか気恥ずかしさ、羞恥の方が勝った。 「アキト君て、嘘つくとすぐわかる。今のもさ、事実だけど、真実じゃない、みたいな。 ねえ、私に聞かせて。オナニーしてた時、何を考えてたの、誰を想像してたの?」 結衣は一言一句区切り、丁寧に言い聞かせる。 全てを読み取り、頭で理解していてもそれだけでは足りない。 声に表せば時系列に刻まれ、言葉は過去から未来へ影響を与える重りとなる。 欲しいのは、内に秘めるわかりきった真実ではなく、本人が発声にする事実だ。 肉体は精神の器にすぎないなどど良く言われるが、それは例外こそあるもののごく一部。 実際は精神など肉体によって容易く支配される。 「せ……」 「んん〜、聞こえない」 結衣は陰茎に力を込めて握り、さらに親指で裏筋の部分をなぞる。 「あっ! せ、先生! 先生のことを想って、オナニーしてました」 「私、アキト君のオナペットにされてたんだ。ちょっと悲しいな」 さっと愁眉にかえる表情に、心に痛みを感じた。 「はあはあ、でも……おれ……おれ……」 「でも……なにかな。私、アキト君の弁解を聞きたいな。本当はそんな人じゃないよね」 途中で言いかけて止めるアキトに、結衣は優しい上目遣いで窺う。 自ら懺悔するのを静かに待つ聖女のように。 一層増した心の痛みが、肉の悦びと合わさり、強く精神を蝕む。 「っ、先生のことが好きだから、好きだから想像したんだ! 普段はそんなこと、とてもできないけど、今日は先生の近くに居られて嬉しかったから、つい。 そんな汚すようなまね、最初はだめだって思ったけど、始めてみるといつもよりすごく気持ちよくて」 「私のこと、好きなのね」 「うん、先生のことすごく好き」 「今まで、女の子の告白断っていたのもそのため?」 「そう、そうですよ、俺、先生のこと、大好きだから」 「すごい誠意、ちょっと感動しちゃったよ。 うふふ、それなら私でオナニーしてたのも許してあげる」 アキトは霞む頭の中で、とりあえず嫌われなかったことに胸をなでおろした。 「最後にもう一つ、想像の中で私とアキト君は何をしてたの?」 「はあはあ、セックス! セックス……してました」 「うん、ありがと。素直になってくれて嬉しい。お礼に口でして上げる」 アキトは肉棒に手とは違う、濡れたものが這う感触に震えるような快感が走る。 下から上へ、最後には先端の括れに絡ませ、口に含んで唇でしごく。 口を離して、手で握りながら鈴口を舌先で舐めた。 「ちゅう、ん、あぁ、アキト君の大きい。口に入りきらないかな。はむ、じゅ、んん」 「あっあっ、せっ、先生、うあぁ、そんなこと」 「先っぽ、しょっぱい汁がすごいよ。このまま我慢しないで、たくさん出して」 根元を両手で添えて、その先は唇と呼応して顔と手を上下する。 口内の熱い粘膜が、ぬるぬると亀頭のまわりに接触しては敏感に反応する、 暴れまわる陰茎を結衣はしっかりと押さえ込み、逃げ場を無くしては確実に追い詰めていく。 「ん、ん、じゅ、んむ、ぅぅっ、ず、んはぁ、ちゅ、んんぅ」 「あっ、ふああぁああぁぁぁ!!」 アキトが絶叫した瞬間、結衣は喉奥に熱い粘液を感じた。 手の中で肉茎がびくびく跳ねるたび、噴出する精液を舌で受け止める。 焦らされた分、射精は途切れることなく、あきれるくらい長かった。 「はあはあっ、はあぁ、はあ、先生……」 結衣はこれ以上出ない事を確かめ、 残った分も吸い出すよう、丁寧に唇をすぼめながら徐々に顔を下げた。 「んん……」 口から抜くとき、真一文字に固く結び、下唇に指を添え零さないよう離れる。 陰茎の先から口へ伝う銀の糸が名残惜しげに落ちた。 ゆっくりとそれを見届けた後、両手で器を作り、 そこへ愛らしい舌を案内として口腔に溜めた精液をもどす。 どれだけ出したのか、とろとろと白く長い糸、透明と白濁色で斑になった塊がしたたり落ちていった。 唾液と混ざった分があっても、量の多さに圧倒される。 赤い舌にも白い粘液が絡まってなかなか落ちない。 吐き出したりせず気を長く重力にまかせていたが、途中で諦め飲み下す。 アキトは罪悪感の中に、密かな喜悦を感じた。 「んん、アキト君、たくさん出したね、我慢してたからかな」 息苦しかったのか、白皙の頬を朱に染め、うっすらと見尻に涙をにじませる姿は、 今まで見た何よりも淫猥で美しかった。 「ねえ、アキト君のこれ、どうしたらいいかな?」 「せ、先生、汚いですから」 アキトは気遣ってハンカチを出すが、結衣は受けとれない、受けとらない。 「ううん、ダメ。両手がふさがってるもの。質問をかえるね。 アキト君の出したの、どうして欲しい?」 「え」 一瞬頭に浮かんだ映像が脳裡に焼きつく。 「素直に言ってみて。私もうアキト君の気持ちわかってるから、 どんなことを言っても軽蔑しないよ」 手にもどしている途中、自分の密かに思った薄汚い感情が湧き上がる。 それは彼女が喉を鳴らした瞬間に、強く感じたものと背中合わせのものだ。 「あ、あの……」 アキトは一体自分はどんな顔をしてるのだろうか、疑問に思った。 恥ずかしさで人が死ぬなら、きっと自分は死んでいる。 「の……飲んで……欲しい」 「うん」 恐る恐る言った希望に対して、結衣は躊躇なく了承の返事をして、すぐに実行へ移した。 嫌がるそぶりなど見せず、両手いっぱいになった精液に口を付け、舌ですくい、嚥下していく。 むせ返るような性臭、まだ湯気が立ちそうなほど暖かい。 「んん……すごく濃いよ。舌に絡まって……」 だが慈しむように指の一本一本、手首にこぼれた分まで、 自分が彼女のために出した精液は、再び全て彼女のものになった。 「ねえ、戻ろうよ」 アキトは夢見心地をさまよいながら頷く。 「アキト君が想像していたものが手に入るよ、きっと全部」 今、夢と現実の境界はどこにあるのだろうか。 **************************** 宿直室の戸を開き、内履きを脱いで上がる。 結衣は手と口をゆすぐため、備え付けの簡易な台所へ向かう。 少々の時間の後、戻ってきた姿を見て絶句する。 「ねえ、アキト君てこういうの好きかな」 僅かな面積しか肌を隠していないその格好は、 ノーブラで下着のみの上にエプロンを羽織ったものだった。 腰に食い込む下着の紐、そして動きに合わせてひらひらと舞う結び目がひどくいやらしい。 アキトは自分の理性が引き千切れる音を感じた。 ふらふらと近寄って抱きつき、たわわな胸を揉みしだいては、 さらさらに梳られた髪を手ですくいあげ、後頭部を押さえて熱烈にキスをする。 本来ならとてもできないことも、二人だけに用意されたこの空間なら可能だった。 「んん、ちゅる、ぅん」 甘い吐息と重なるように結衣が舌を割り込ませ、歯茎をなぞって侵入を図った。 開いた口腔へと舌を深く入れ、絡み合いお互いの唾液の甘さを確認する。 飽きること無く長い間、舌なめずりと吸い付くような音、人の呼気が続く。 「ん、はあはあ、激しいね」 「だって、こんな、エッチな格好で、先生すごくいやらしいから」 「私のせい?」 アキトは赤面して頷く。 自分の劣情に対する羞恥、期待がないまぜになり、支離滅裂に近い事を自覚する。 子供じみた責任転嫁だが、客観的に見て、裸エプロンで誘惑されれば男に罪は無いだろう。 結衣は単に容姿が良いというだけではなく、 充分にウェストは絞られていながら、その分突出するところは申し分ないボリュームである。 おまけに、それに見合うほどの身長の高さが、均整の取れたスタイルの良さをさらに際立てる。 男なら平常心を保てるのは土台無理に近い。 「んちゅ、ん」 再び接吻をしながら腰にある蝶々結びの一端を引っ張り、ひらりと最後の一線を守る布が落ちる。 前掛けにより、肝心のところは見えそうで見えないのも、余計煽るものがある。 彼女と一つになりたい衝動に抗うすべは、すでに持ち合わせていなかった。 腰に腕をまわし、エプロンの上からすでに勃起した強張りを下半身に擦りつける。 「はあはあ、もう我慢できない!」 「私のせいだものね、アキト君」 お互いこの言葉が妙に急所らしく、結衣は面白がり、アキトはますます赤面する。 台所に手をつき、白い尻をアキトに向ける。 後背位で待ち受けながら、誘うように流し目を送った。 ズボンを下ろし、腰のくびれを掴むと、軽く脚を開き入れやすいよう妖しく誘う。 待ち望む性交へと大きく腰を進め、すでに蜜で濡れる割れ目を、亀頭で押し開き侵入する。 先っぽがつつまれるだけで背筋を快感が走り抜けて行く中、 歯を食いしばるように、蜜壷へと肉槍をすべて収めた。 「んん、やっぱり、アキト君のってすごい……。奥までぴったりくるよ」 「あ、あぁ、先生の中、すごく気持ちいい」 「ねえ、私のこと好き?」 アキトは何度も首を縦に振る。 「それなら中にあるコレで……どれだけ好きか私に教えて欲しいの」 「先生、センセイ、おれ! あぁ!!」 壊れた人形のように、がくがくと突然動き始める。 我を忘れて暴走する腰の動きに、膣内で怒張が何度も往復してその激しさを伝え、 貫いたものが根元まで潜り込む度に肉襞が締め付ける。 初めて受ける肉の洗礼は、想像の時より甘く強烈な快楽をもたらした。 「アキト君すごい、私の体に、ずんずんって、響くよ」 エプロンを胸の谷間にはさみ、剥きだしになった乳房を五本の指で鷲掴みにして 、吸い付くような柔らかさに酔いしれる。 結衣は後ろを振り返り、舌をのばして口付けを催促した。 舌が触れ、唇が重なれば、すぐにディープキスへ移行し、互いに絡めあい唾液を交換する。 結合した下半身はその間も休み無く動いていた。 雄々しく猛る雄渾は最終目的地まで容易に到達して子宮を叩く。 長いストロークで矢継ぎ早に繰り返されるたび、 蹂躙を許す膣壁は蠕動して快楽の悦びを分かち合う。 粘膜の摩擦は次々と溢れ出る愛液によって加速する一方だった。 顔に似合わぬ剛直は存分に結衣の性器を責め抜き、悶えさせ、着実に最後の到達点へと昇る。 牡の生殖器官に呵責など無い。出してしまえばお終いだ。 アキトはセックスに溺れながらも、なけなしの理性で最後までコントロールを試みる。 結衣はスローダウンしたことに怪訝な表情をした。 「あ、はあはあ、どうしたの?」 「はあっはあっ、気持ちよすぎて、その、いきそうなんです。 けどその……出すのは外にしなくちゃって思って」 「可愛い声。ねえ、ぐって奥まで入れて」 アキトは言われるまま、肉槍を押し進める。 密着して腰に当たる尻の柔らかさが心地よい。 言葉通り、すでに達しそうなのがわかる。肉棒は膣内でも脈打つたび跳ねていた。 先端に触れるものは魅惑の入り口。 「ほらぁ、わかる? ここまでしか、アキト君の愛が伝わらないなんて、とっても残念な気持ち。、 どれだけ好きか私に教えて欲しいって言ったのに、アキト君たら最後まで教えてくれないんだから」 今度はアキトが怪訝な表情をする番だった。 「で、でも、それって」 「ねえ、このまま小刻みに動いて」 一方的にアキトの言葉を遮って要求する。 腰を少し引き、そして突き出す。 これだけでも気を抜くと達しかねない、間隔を置いて控えめに肉打つ音が鳴った。 「ああぁ、わかるよ、奥まで、ん、くる」 結衣はひたいを台所に付けるようにして後ろを振り返り、奥を刺激されるたびに喉を鳴らす。 逆さになった彼女の顔には、ありありと至福の表情が浮かんでいた。 高貴な存在が、頭を下に置く屈服した姿勢、 その蕩けた表情は、性行為のみによって見られるものだろう。 「ほらぁ、この先に、アキト君の気持ちが届きそうなのに、教えてくれないの?」 「はあっ、はあっ!」 ぴったりとお互いの性器を結合させたまま、白い尻に片手を添えくゆらす。 ずたずたにされた理性はまだかすかに残っていたが、それもどろりとした物質に流されていく。 洗い流された後に残るのは衝動的な本能だった。 「わかりました。どれだけ俺が、センセイのこと好きか、最後まで……教えてあげます!!」 「あっあぁ、そうよ! 最後まで、全部教えて!!」 より熱さを増した男根が、勢いと共に挿入した。 汗に光る裸身が艶かしくうねり、性の営みの激しさに荒い息を漏らす。 すでに準備の整う女の内部はたやすく受け入れ、たっぷりと粘膜で侵入者に歓喜を伝え、 さらにはぐいぐいと食いつく肉壷が離れることを許さない。 離れがたい淫らな奉仕にも、牡の本能は本来の目的を忘れない。 一刻も早く解放の時を目指すが、すでにそれもままならなくなっていた。 時が経てば経つほど、快感などすでに生ぬるい風に過ぎず、 どろどろに溶けたマグマが五感を埋め尽くし、全身を灼く。 この灼熱をそのまま彼女に注ぎたい。 「あああぁぁぁ! はあっ、もう何も考えられない!」 「ああ、はあぁ、いいよ、私もいく! いっちゃうよ! でもぉ、熱いの感じながらいきたいの!! 出して! 結衣の中で、早くぅ奥まで教えて!!」 最後の瞬間、がっしりと結衣の下半身を掴み、外れないよう固定する。 全身を灼くような熱が、子宮へと放出していった。 「くっ、先生わかる、気持ち良すぎてぇ、止まらない!」 脈動に合わせるようにしながら、腰を打ち付ける。 子宮口へ勢いを乗せた怒張が当たり、鈴口から無数の精子を含んだ白い粘液が迸る。 膣内射精の快楽に酔いしれながら、助走をつけて何度も子種を最奥まで注ぎ込んだ。 「ああぁぁ! アキト君が中にくる。どろどろの熱いのが、奥まで届いてる!! 中に出されながら、いかされるよぉ!! 高らかに宣言した後、背筋が張り詰めさせ、びくびくと震えながらのけ反る。 快楽の果てに合わせ、いまだ刺激を受ける膣も収縮して精を搾り取る。 結衣の絶頂を感じながら腰を前後させ、要求に応えるように最後の一滴まで注ぎ込み、 万感の思いを込めて生殖行為を締めくくろうとした。 「んん……熱いのいっぱい届いてるよ。アキト君、本当に私のことが好きなんだね」 量や濃さ、勢いも全て二回目とは思えないほど、 アキトが陰茎を引き抜くと、引きずられるように白く泡だって溢れ出す。 「はあはあっ、そうです。ふうぅ……これで、俺の本気が先生に届いたんですね」 「ねえ、布団敷くから、今度はその上でもっと、もっと……アキト君を教えて……」 アキトは一つ思い出した。 まだ想像したものは全て手に入っていない。 全身がわななき、血が沸騰する。 SS一覧に戻る メインページに戻る |