黒き娼婦と白き王子 序章
シチュエーション


ここファルセリオン神皇国は、
北方ファル大陸を支配する、歴史ある国としてそれなりに栄えていた。
寒冷の地で土地は痩せており、
耕すにも石ころと交じりの土が大半で、
せいぜい麦と僅かな放牧、漁によって成り立つ。
だが天は良くしてくれたもので、鉱石や貴金属の産出に優れ、
その加工、細工の腕は遠く海山を隔てた国まで鳴り響いていた。
剣を作れば甲冑をも両断し、落下する髪の毛すら二つに分かれるというもの。
美術的価値があり、純度の優れた金貨は万国共通の貨幣信用力を発揮し、
金細工装飾品はもちろんのこと、他国への王冠作成の受注まで抜群の技術を誇っていた。

そんな中でもこの国が長く平和であったのは、
ひとえに南は大海によって隔てられており、
北へ行けば獣も住むのも不可能な不毛の凍土、
東西は山脈と広大な森林が風雪とともに立ちふさがっている環境のためだった。
交易のためには難所を渡る必要があるため、持ち帰った品は各国で法外な値段になってるとも言われていた。

基本的に敵対国がないのが、いまの皇国の現状である。
何しろ、どの国からも遠く隔てており、
地政学上どうあがいても紛争地にならないのだ。
幸い王制からの緩やかな統治の下、内乱もなく民衆は暮らしていた。
歴史上省みても、内乱の原因の最もたるは貧困、そして他国からの干渉。
国民は現状に満足するだけの裕福さはあり、
長い歴史と職人気質の誇りがそれを支えていた。
人心が安定すれば、そもそも世の中をひっくり返そうななどと考える者は袋叩きにあうのがオチである。

********************

南海を見渡せる灯台の上、警備兵は不審者がいないか見張っていた。
とは言え正直なところ、その職務は怠慢の一言につきる。
長年の平和に、日々これといったことのない繰り返し。
加えて初冬、流氷に囲まれ始めた今は訓練もなし。
この雪混じりの嵐に航海するものは海の藻屑となるのが運命だ。
ごく近海での漁は営まれているが、
その場合は喧嘩騒ぎが出たら止めにいく程度がせいぜい。
たまに遠海へと流されるものがいるが、それはごく稀なできごと。
そんなことになれば、下手すれば命を落としかねないと誰もが注意を払っている。

そんな中、兵士の一人が奇妙なものを発見した。
肉眼でも確認できるそれは、流氷と共に荒波に翻弄されながらも必死で耐える小船に見えた。

「おい……何か漂流してるぞ」
「どれ……お、本当だ。この時期に無謀だな。何をそんなに欲しがるんだ?」

望遠鏡を覗き込みながら嵐に揉まれる小船を確認した。
大抵皇国に用事があると言えば交易しかない。
だが今の時期にくるのは、どう考えても割に合わない行為だ。
普通命を分の悪い天秤に預ける奴はいない。
海流に飲まれて漂流してきたとしか思えないが、ここまで流れてくることはまずない。

今はここ、陸からは沖合いには手出しできない。
速度と小回り重視の警備艇では、自分たちまで難破するのが目に見える。

「どうする?」
「まあ救出するにしても、上に連絡して裁可を仰ごう。
どの道、うちら警備班だけでは無理だしな」
「まあ軍船、砕氷装備の哨戒用くらいは必須だな」

一気に慌ただしくなったものの、皆悪い気はしなかった。
人の不幸を喜ぶつもりはないが、やはり暇なのよりは人様の役に立てて、
なおかつ感謝されればそれにこしたことはないのであった。
相手が商人なら結構な報酬になるかもしれない、という欲もあったが。

数人を状況把握のために灯台を任せ、
もう一方は散開しただちに軍船の使用許可をもらうと同時に、
必要な人手を集めて救出への準備をする。
まだ流氷は厚くないからそれ程手間もかからないはず。

この手際のよさは特筆に価した。
冬の海の中、冷たいしぶきに当てられながらも、
無事助けられたのは、ひとえに早期発見とその後の行動の早さにあった。
乗員四名は全員無事であった。
ただ、本船には他に何人か居たらしいが、
沈む帆船の中、小船に乗り移れたのはこの四名だけだったらしい。

********************

現在の国王、チュルハン王は謁見の間にて漂流者報告を受け、
まず最初に無事救出した警備隊へのねぎらいの言葉をかける。

一週間前に起こった出来事は、漂流した当事者による体力の回復が待たれ、
ようやく今こうして行事にのぞむことができるようになった。
並べられた人物を見て、皆一様に驚く。
どこから見ても肌の色が褐色であること、
髪の色も漆黒に染められていた。
最初は単なる汚れかと思われていたが、洗い擦っても落ちないことから、
これが地肌に髪の色だと納得することと相成った。

「さて、そなたらのはどこから来たのか、名はなんと言うのかな?」

異国人たちはあちこちを巡る商人らしく、
万国共通語で会話が可能だった。
源流を同じくする皇国の言葉とは、方言程度の違いはあれど充分に通用する。

「はっ。まずはこの場をお借りしまして、簡単ではありますが礼をさせてもらいたいと思います。
このたびは船が沈没し生死をさまよう中、
九死に一生を得られたこと、まことに感謝いたします。
私たちは遥か南にありますザムーラ国で様々な物を取り扱う商人です。
その中で私はこの商団長を務めていますパザン・シウと申します」

まず漂流を助けてもらった礼を述べた後、質問に答える。
ここから王じきじきの言葉ではなく、側近からの質疑となる
ざわざわと騒がしいのは、やはり特異な色の物珍しさからだった。
皇国の人間は白い肌に金髪か銀髪、まれに赤毛。
まるで異国人たちが絹にインクを垂らした染みのように感じられた。

「ふむ。なぜ漂流などしたのだ」
「それが……どうやら風向きと海流に異変があったらしく、
当初より北側へと航路が逸れていたところに嵐に遭い、氷塊に衝突し浸水してしまったようで」
「難儀であったのう。だが……。
そなたらの髪、肌の色は何故黒いのだ。今回の嵐にも関係しているのではないか」
「そうそう、大方神事かもしれぬぞ。穢れたものをこの地に触れさせんとする」
「そんなことは関係ありません。我々は様々な国を渡り歩きますが、
神は常に平等を説いています。それに心やましきことなど何一つ」

ザムーラ人の代表するように、生き残りのリーダー、パザンは朗々と答える。
幾つかの国でも似たような話は聞いていたため、こういう反応もさして驚くに値はしない。
だがやり取りを続けてる内に感じるのは、どうも芳しくないということ。
質疑応答の中、半数ほどはその肌、髪の色の不吉さから忌み嫌う空気が漂っていた。
もともと閉鎖的なお国柄か、パザンは徐々に旗色の悪さを感じていた。
追放程度ならまだしも、幽閉、処刑となる可能性も捨てきれない。
なぜならわざわざ費用をかけて追放するくらいなら、
後腐れのない、もっとも簡単な方法選ぶだろう。
人道や道義がどの程度なのかも国によって大きく違うため、事の成り行きが読めない。

それでもパザンは美髯をなでながら精悍な表情を保つ。
もともと楽観こそ美徳とする気風の国の育ち。
強く一歩前へ踏み出し注目を集め、両手を大きく上げた。
少々芝居がかっていたが、大人数相手へ訴えるに大事なのは勢いである。

「王よ。直々にお伺いしたい。我々に何の非があると!
皆もわかっているはずです。
海の女神はときどき気まぐれであること。
心当たりなど何も無く災難に見舞われることなど、
一度や二度ではないでしょう」
「ふむ。シェシングよ。どうかな」

末席で傍聴していた海軍海洋警備班隊長のシェシングは、
王に呼びかけられ立ち上がって一礼する。

「はい。我々は何度も哨戒のため海を回りますが、
確かに高波や嵐に見舞われることは何度もあります。
また、それ故に航海や整備、操舵技術の鍛錬になることも確かです。
これは海の上は人知の及ばぬところ、いつ何時なにが起こってもおかしいものではありません」
「ふむ、それもそうよのう」

助けた相手が不吉な存在などと烙印を押されても彼らに得は無く、
また嵐に見舞われるたびに徳も無しなどと言われればたまったものではなかろう。
形は違えど、同じ海と船を生業とするところのシンパシーもあった。

パザンは思わぬ所からの助けに喜ぶ。
ただ異質なものに難癖をつけたいだけなのが、嫌疑派の本質である。
それを身内から正論でもって反論してくれたのは僥倖とも言うべき。
あとは一押し。

「いえ、ただ海の女神はたいへん嫉妬深いともお聞きします。
本来なら女人禁制の船上ですが、今回訳あって女を連れていました。
姿を隠してたとは言え、その正体は女神にはお見通しだったのやもしれません。……さっ」

そうパザンが述べた後、後ろに控えていた一人が前に出た。
頭からベールに包まれていたその者はするすると身にまとった薄布を取り払う。
周囲から、おおっと感嘆の声が漏れる。

「サウラ・ガリィと申します」

姿を現した女は恭しく礼をする。
それだけで氷と大理石に包まれた無味無臭の宮殿にふわりと草花の香りがするようだった。
火がたかれているとはいえ、
この寒さの中、滑らかな褐色の肌を惜しげもなく晒す扇情的な衣装。
背丈に似合う、艶やかな漆黒の長い髪。
肌の色のせいかもしれないが、その引き締まった身体にすらりと伸びる繊細な手足。
だが弱々しさなど皆無であり、溢れんばかりの眩しい太陽光の力を感じさせた。
それは皇国の女性には無い魅力だった。

「ぜひ命を助けてもらった礼として、滞留の間サウラを王に献上したく思いますが」

どこか妖艶で淫猥な雰囲気を纏いながら、
けして下品ではないのは清楚さも感じられたからだろう。
装飾とは対照的な美麗な顔つきは知性をも匂わせ、
誰が見ても超高級娼婦とわかるその美しさに、場が静まり返っていた。

あとはただ彼らには『嵐を受けるに値する』別の理由を差し出せばお終いである。
サウラにはその理由として有り余るほどであった。
男なら我が物へと、女なら嫉みの対象か諦めの溜め息をせずにはいられまい。

王の下、パザンたちは賓客として扱われることとなった。

********************

「シェシング殿には感謝してもしきれんな」
「彼らもいちいち業務に口出しされては面白くないでしょうから」

客室に設けられたテーブルにパザン以下二名がかこむ。
一人は筋骨隆々とした、名はグーリーと言う無口な男。
もう一人はシーフゥと言う少年で、こちらが主に話の相手をした。

「これからどうしますか?」
「そうだな……。うっ」

ごく小さな器に注がれた液体を口にするが、思わずむせ返る。
この国特有の蒸留酒は喉を通らなかったようだ。

「ゲホッ、くぅ何だこの酒は?」
「噂には聞いていましたが、火酒ですね。
この極寒の地では、身体を温めるには必須なのでしょう」
「ふうぅ、まったく……。
とりあえずは滞在を甘んじる他はあるまい。
どちらにせよ、これから海は氷に覆われ春までは帰れんそうだ。
本当にサウラのおかげで助かったよ」

もう一度パザンは器に入った酒を、今度は一気にあおった。
飲み干した後、アルコールくさい息を吐きながら声を荒げる。

「だが、このまま帰れん。
船は沈み、品々も海の藻屑となりはてた。
無一文のまま、このままおめおめと国に帰ったところで落ちぶれるだけよ」

ここから声を落として、室内の人間だけ聞こえるように呟く。
謁見での出来事は、彼らに慎重さを植えつけていた。
母国語で話しているとはいえ、まだまだ油断はできず、
どこかで見張りがいる可能性も否定できない。

「だが流れ着いたのが噂に聞きしファルセリオン神皇国とは、俺もまだまだついている。
まったく、この金の器を持って帰るだけで一財産だぞ。
俺の見立てだとこの一揃えだけで金貨五十枚分はくだらん。
サウラ一人でも仕上げは上々だが、我々もすることを成さねばな。
あの謁見の状況だと、先々を考えて手を打たねばならぬだろう。
お前たちにも協力してもらうぞ」

二人は同時に頷いた。

********************

瀟洒な天蓋つきのベッドにふわりと転がり、長い脚を組む。
サウラの今の姿を見たら、男なら大枚はたいても惜しくなかろう。

謁見の時は王の立場上、サウラの親展を丁重にお断りしなければならなかった。
勿論ここに呼ぶためにもそれ相応の身分や手続きがいるのだが、
チュルハン王はそんなものは完全にすっ飛ばしていた。

「はあはあ、いやらしくて、おかしくなりそうだよ」
「ふふ、一国の主たる君が、女一人に惑わされてはいけませんわ。
さあ、たっぷり味わって、免疫をつけませんこと」

伏せたまま手を伸ばして妖しく誘う。
相手が一国の王とて、することは変わらない。
自信に満ち溢れたどこか挑発的な表情、磨きぬかれたこの身体で身も心も蕩かす。
王は手を取ってベッドに上がり、その豊満な胸に顔を埋めた。
片手で後ろの結び目を解きながら、熱いベーゼを交わす。
実に手馴れた様子にサウラは微笑したが、負けずに小高く盛り上がる部分に触れる。

「ここがもう……こんなに熱いですわ」
「くふ、お前を見てるだけでもうこんなだよ」

そこは歳に似合わず、すでにがちがちになっていた。
どれほど求めているのか、サウラには見るまでもなく理解できる。
胸当てが落ち、外気に当たる豊満な乳房が生暖かい感触に包まれた。
ずるずると舌なめずりの音と、女の艶かしい吐息が重なる。

「ん、じゅる……ちゅるちゅる」
「はあぁ……おっぱい食べられてますの」

揉んで舐め、吸い付いて離れる。
唇が外れると形の良い美乳がぷるんと動くのが妖しい魅力を匂わせる。
その間も手は服を脱がしていき、そう数などないサウラはほとんど全裸になった。
王は花芯が潤ってるのに気付くと、サウラの身体を小脇に抱えてうつ伏せにした。
性急ではあったが、我慢が効かなかった。

「ふふ、このまま後ろからしたいのですか」
「そうだ。普段とは違う女ならば、普段とは違う趣向を味わいたくてな」

サウラは進んで四つんばいに這い、尻を上げる。
そうなれば後は尻を掴み、男根を宛がって挿入するのみだった。
膣口を押し付けられると、徐々に挿入へと前進する。
鞘に納まれば、一気に走るように力いっぱい打ち込んだ。

「ふぁああ、熱いですわ。中の奥っ……奥まで当たってますぅ!」

サウラは両手をベッドにつき、上半身を支えたまま、
腰から迫り来る獣のごとき交わりに声を上げた。
背後からたわわな胸を揉まれつつ、ぴったりと腰が密着するたびにその甘美な痺れがお互いを侵食する。
雄渾な牡器官が長さを活かしたストロークで、絶え間ない快楽を送り込まれる。

「どうか、ふふ。国の男より良いかな?」
「や、はあ、はあ、ダメぇ! そんなこと……ああぁ!!」

喉を見せてむせび泣く牝を支配する。
亀頭が抜けるぎりぎりまで引き抜き、
そして勢いとともに膣奥まで念入りに犯す。
その侵入に反応して肉襞は抵抗はおろか、まるで吸い付くように愛撫でもって歓待した。

「ほら、ほら言わんか。くく、お前の故郷の男より良いのだろ、んん」
「あふあぁ! ひぁ、そ、そうですわ。王の太いチンポにサウラは最高の心地です!
もう……もう国に帰れませんわ」

にんまりと王は口元を歪める。
くびれた曲線美の中心を抱え、子宮口まで埋め込んだまま巧みに抉った。
褐色の肌に珠のような汗が浮かび、滑らかに照り輝く。

「あっ、あぁ」
「くく、認めたな。本当は誰の一物でもよがるくせに、この淫売が。
一体どれだけの男に揉まれたんだ、このでかい胸は?」
「ひゃぁあ、おっぱいそんなに強く……」

元は娼婦の身であることをチュルハン王は熟知していた。
下賎なものに触れる禁忌の快楽も、甘く美味なるもの。

「わかっているのだぞ。だが汝のその罪を赦してやろう。
わしの子種でもって、すみずみまで浄化してやる。よいかな」
「あはぁ……はあはあ、はい」

頷いたそばからくる激しい突き上げに、サウラは顔を伏せてソファーを掴む。
性欲の塊が硬い肉棒から、今度は体液に乗せて迸った。
限界を超えた絶頂の連続が、筒の内側を駆け抜ける快楽は何事にも代えがたい。
それが最高の女へと注ぐならもはや別格だ。
尻肉を掴み、膣口が見えるほど開いて、なおも突き入れてはぐりぐりと押し込む。

「ぐぅ!! ふっ! はあはあ」
「あ! アぁ……それっ! きちゃう」

子宮口へと熱烈な愛撫と、そこから容赦なく支配をひろげる子種が全身を染める。
ドクンドクンと密着する性器の間から互いの息遣いか聞こえそうなほど、
射精は多量で、長く長く続いた。
サウラは崩れ落ちそうになる全身をしっかりと支え、
結合しやすい体勢を保ったまま進んで牡汁を向かい入れた。

「ああぁ……出てます。私の中に王の神聖な子種が……」

領外の女へと種付けするには有り余る量だった。
王は射精し続ける間、膣口までぴったりと陰嚢を付ける。
こちらから動かなくとも胸を愛撫すると、
サウラが感極まったように腰をよじり、襞の隅々まで精子をすりこんでいく。
結合部からはグチュリと淫猥な音を鳴らしながら、泡だった粘液が垂れていった。

「ふううぅい。サウラよ、そなたたちが滞在の間、最高のもてなしをしよう」
「あふん、はあはあ……はい、光栄ですわ」






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