綾子 夏の昼の夢
シチュエーション


・・・いい夜だったな。

ベッドに寝転がりながら、綾子は昨夜のことを思い出していた。
恋人同士が「結ばれる」という表現があるけれど、]
確かにあの瞬間、物理的にも、精神的にも私たちは「結ばれ」た。
緊張の中で高ぶる性感が上り詰めていく感じは、しばらく忘れられそうもない。
他人に触られるというだけで、どうしてあんなに感じ方が違うんだろう。
それに、私の性癖を、彼は満たしてくれそうなことをほのめかす。

今朝はどちらともなく早起きして、朝食をとって、海を見に行った。
その後、大学の課題があるからと断って、家まで送ってもらったのだ。
ずぅっと、体の芯が熱かった。
激しいオナニーを繰り返していた綾子の体は、1度イったくらいでは満足しないのだ。

時計を見た。
まだ、11時か・・・
体はうずいていたけれど、それよりも体中を満たす幸福感が勝っていた。
このまま、ちょっと寝ちゃおうかな・・・
うとうとするうちに、綾子は眠りに落ちていった。


*   *   *


「んぁっ、?!」

下半身からの性感で目が覚めた。
カビくさくて暗い牢屋の中だ。
綾子は身ぐるみを剥がれ、両腕は天井から伸びた縄につるされ、更に股縄がかけられており、
身動きをすると股縄が陰核をとらえるようになっていた。

「これは、とんだ勘違いをしてしまいましたな。」

背後から男性の声。
振り向こうとすると、ギシっと縄がきしみ、性感となって綾子を襲う。

「んぁ・・・だ、誰!」
「やはり、貴女はニセモノだったようですね。」

その一言が鍵となり、ぼんやりした記憶が蘇ってくる。
そうだ、私は姫の影武者として、姫の代わりに捕らえられたのだ。
影武者だとバレるのはわかっていた。
姫が無事ならば、自分は捨ておかれる存在なのだ。
下手なことをしゃべってまう前に、舌を噛みきって死ななければいけないと思った。
恐ろしくて、歯がガチガチ鳴った。

「おっと」

迷っている間に、背後から手が伸びてきて、口の中に何かをつっこんだ。
ギャグボールだ。

「ふんふふふんふーー!(ふっざけんなー!)」

何もしゃべれない。抗議もできない。もちろん、死ねない。

「少し今立て込んでおりましてね、そのままお待ちください。悪いようにはいたしませんよ」

そう言い残すと、足音は遠ざかっていった。

為す術なし、とはこのことで、身動きもとれず、助けも呼べず、
綾子は逃げるチャンスが訪れるのを待つしか無かった。

静寂は、すぐに破られた。
正面から足音がして、マントに包まれた人影が見えた。
身構えると・・・現れたのは、

(雅樹?!)

そう、恋人の雅樹だった。
彼は鍵を取り出して開け、ゆっくりと近づいてきた。

コツ、コツ、コツ・・・

無機質な足音が響く。

(助けにきてくれたの?)

自分が今ひどい姿だということも忘れ、期待を膨らませていると、

「助けにきたんじゃないよ。」
「・・・綾子には、見てほしくないな。」

と言い、布を取り出したかと思うと、手際よく目隠しされてしまった。

「ふんふんっふふんふー!(外しなさいよ馬鹿ー!)」

次の瞬間、綾子の首筋にヌルリとした感触が走った。

(何・・・?!)

逃れようと身をよじると、陰核に刺激が走る。

「んんっぅーっ」

ヌルリとした何かは、数を増し、背中や乳房を愛撫する。
その度に身をよじり、下半身からも快感が走る。
頭の中が白黒してきた。早くも、絶頂が近いのだ。

(なんだってこんなときに・・・!)

「ああぁ、あぁ、あっ、あっ、あぁー・・・」

すると、突然ヌルリとした感触はやんだ。

「楽にしてあげないよ。」

(どうして・・・いや、だいたい何でこんな・・・!)

「ふんふふんふふふんふー!(これを外しなさいよ!)」
「ああ、それ。」

あっさりと、ギャグボールは外された。

「あんた自分が何やってるか・・・んんっ!」

ーーわかってるんでしょうね!
と言う前に、口で口をふさがれた。体が密着する。

「んんーっ!んぅーーっ!」

頭がおかしくなりそうだった。
そして、同時に綾子は、彼が「見てほしくない」と言った訳を悟った。

(このヌルヌルしたの・・・雅樹のカラダだ・・・!)

恐らく、触手。
手と、胴体からも伸びていて、綾子の体を弄んだ。
粘性のある液体をまとった触手は、耳の穴の中まで入り込み、足の指先一本一本までもを丁寧に這い回る。
飽くまで優しく愛撫を続ける触手に、綾子は酔っていた。
イきそうでイかない、一番気持ちいい時間。
いつしか口は解放され、綾子は間延びした喘ぎ声を上げ続けていた。

「ぁぁー、ぁぁー、ぁっ、あっ、あぁ、ぁー・・」

その時、

「そろそろ良いでしょう。」

と、目を覚まして最初に聞いた、あの男性の声がした。
触手の責めはやみ、背後から近づいてきて、目隠しが外された。
綾子の目の前に広がっていたのは、広場だった。
綾子は一段高い場所で、衆目に晒される形となっていた。
老若男女が綾子を見ていた。
ある者は目を爛々と輝かせ、ある者は汚らわしいものでも見るように。
中には幼い子供もいて、舐め回すように綾子を見ている。

「や、やめてぇええ!見ないで!お願いです!!」

そう叫んだはずなのに、同時に愛液がドロリと太股を伝って垂れてくる。
少年と親の会話が聞こえる。

「ねえ、あのお姉ちゃん、言ってることとやってることが別々じゃない?」
「女の人の体は、正直にできているのよ。口で嘘をつくことはできても、体は嘘をつけないのよ。」

屈辱だった。

背後から、

「もう少しだけ我慢したら、楽にしてあげるよ。」

と優しげな声ー雅樹の声が聞こえ、伸びた触手が乳首を締めあげた。

「ふあっ!」

続いて、下半身に向かって2本の触手が伸びてきて、綾子の秘所の入り口をカパっと開けた。

「では、お一人ずつどうぞ。」

すると、広場にいた老若男女たちが、1列になって、綾子の秘所を観察しにくる。
羞恥で涙が止まらない。それなのに、相変わらず愛液の分泌は盛んだ。
先ほどの少年が、陰核にかけてある縄を触った。
あまりの快感に、綾子は一瞬、気を失った。

「はっ・・・あっ・・・」

遠くの方で、少年が親に叱られている。
触ってはいけない決まりだったようだ。
少年が最後の番だったようで、雅樹は

「みなさま、ご協力ありがとうございました。」

と丁寧に礼を述べ、拍手をもらっていた。

気がつくと、牢屋に戻っていた。全ての縄は外され、綾子は床に投げ出されている。

「綾子・・・気がついたね。」

目の前にいるのは、人間の体から、触手が生えているバケモノだった。
触手おばけだ・・・と、綾子は思った。
緑色の触手は、ぬめりを帯びて光っている。

「やめて雅樹・・・やめて・・・」

狭い、四角いコンクリートの部屋の中を、腰が抜けて立てない綾子は、四つん這いで逃げ回った。
雅樹はゆっくりゆっくりと綾子に近づいてくる。
狭い部屋の中で、いくら逃げても、逃げきれるはずはないのだ。
綾子が部屋の角に追いつめられてしまうまで、そう時間はかからなかった。

「雅樹・・・その体・・・どうして・・・」

綾子は泣きながら、言葉を絞り出した。

「綾子が、喜んでくれると思ってね。」

そう言って、人間のものではない、真っ黒でぬらぬらと光った陰茎を取り出した。
それは、綾子の知る雅樹の陰茎よりも一回り大きかった。

「ま、待って!」
「待たないよ。」

遠慮なく綾子の中に侵入してきたのにも関わらず、痛みはなく、ただ壊れそうな快感があるのみだった。

「あああああああああっああああっあああああ!!!!」

そしてピストン運動が開始される。

「イくときは、イくって言うんだよ。」

もともと性感の高まっていた体は、十数秒で限界を迎えた。

「んぁあああああああ!ああああ!イっく・・・いやああああ!イっくううう!あああああああああ!!」

*   *   *

ミーンミンミンミンミーンミンミンミン・・・

蝉の声で目を覚ます。

す、すごい夢を見てしまった・・・。

大体、設定がベタすぎて、自分でも恥ずかしくなってくる。
雅樹を触手おばけにするなんて、私は一体彼をなんだと思っているんだろう。一応、大切な恋人のはずなんだけどなぁ。
台無しな感じがハンパない。
それに、ブラジャーははだけてるし、パンツはびしょびしょだし・・・。
もしかして私、夢見ながら喘いでたかなあ。
お隣さんに聞かれてないと良いなあ・・・。
次からは、オナニーは我慢しないようにしよう。
それで、今日は洗濯しよう。
自分の性欲に自分で呆れながら、綾子は起きあがった。


後日

「綾子おはよう」
「おはよう。

ねえ雅樹、自分が触手おばけになった夢見なかった?」

「はあ?」
「いや、見てないなら・・・いいや。」

(一体、どんな夢だったんだ・・・?)






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