ある娼婦の一日 ――毒を持つ名花3――
シチュエーション


「メッセージを送信しました」。

携帯のディスプレイにメール送信完了のテキストが表示された。早川由貴はその文面を
見届け、満足そうな笑みを口元に浮かべた。

あの高橋健太という男は意外と早く気づいたようだ。「月刊ベストメイト」誌の素人投
稿ページに掲載された自分の裸体。ヒントを与えたとはいえ、あれから数時間でこんな
メールが来るとは思わなかった。

抜くにしても寝る前だろうと思っていた。だが由貴に手コキでイカされたことが余程の
衝撃だったのか。それともフェラをお預けされ、理想のタイミングで快感を貪れなかった
マゾ男特有の屈辱が欲望を滾らせたのか。

どちらにしろ、思い通りに男を手玉に取った自分に酔い痴れる快感が、由貴の心を満た
していた。

今頃は次のページに書いてある「素人告白」コーナーでも読んでいるだろう。掲載者の
性体験やセックス観が、一緒に送った資料を元に面白おかしく編集・改変されて掲載され
ている。あの童貞M男にとってはさぞかし刺激的だろう。

メールを送ったところで程よい疲労が襲ってきた。健太と別れた後にナンパしてきた男
と、人気のない陸橋の下で一戦交えたせいもある。フェラで一発射精させてやった後に立
ちバックで二発。たった十数分で三度も果てた早漏男にイかされることはなかったが、そ
こそこの快感とカネは得ることができた。

〈でも、そこまで金が目当てってわけでもないしね〉

むしろ由貴の場合はセックスが目的だ。体を売るのはもう日常茶飯事だが、それとて男
の興味を惹くこと、きっかけ作りという側面が強い。

金はむしろおまけ。さっきの男との代金だって、高校生の小遣いで手が届く額である。
中学時代にはワンコインでヤらせたことが何度もあった。

こうすることで「援交に手を出している」という暗愚さではなく、「手軽にセックスさ
せてくれる」という評価と噂も流れ出すようになる。

本来なら不道徳な売春すらも厭わぬ悪魔なのに、この一件を聞いた途端、彼女が聖母に
見えるようになってしまう男は少なからず存在してしまう。そんな風にして、男たちと由
貴は互いを標的にし合っていた。

〈……んん?〉

そこで由貴は気がついた。すぐそばから自分へと突き刺さる視線に。

≪次の停車駅は府調――、府調です≫

発車を告げるベルが鳴り、ドアが閉まる。由貴が通学に利用する私鉄の車両がゆっくり
と動き始めた。この銘大前駅から次の府調駅まで約十分……。

〈遊ぶには充分ね〉

由貴は無表情のまま、わざとあくびを浮かべて座席に背を預けた。

隣席のビジネスマンの視線が、彼女の胸元へチラチラと向けられるのをしっかりと意識
しながら。

乳房のボリュームは制服でかなり覆い隠される。しかし男は間近にいたからか、それと
も元から胸が好きなのか――由貴の悟りにも無関心に、視線をさまよわせては一瞬だけ、
胸元で目を止めるのだ。

制服の隙間に焦点を当て、胸の谷間を覗き見ようとしているのは間違いない。

〈男って本当、気づかれてるって思わないんだね……〉

由貴ほどの巨乳になればこんな視線はいつものことだ。彼女でなくても女のほとんどは
そんな視線に気付いているのだが。

後で思い出して抜くくらいなら、金さえ出せばいい思いさせてやるのに――と思うのだ
けれど、実行に移す男ばかりではない。星創学園の男どもはどいつもこいつも好色な目で
しか由貴を見ないくせに、ヤリマンだの淫売だのと噂はしているくせに、「やらせろ」の
一言をなかなか言わない。余程のことがない限り、拒みはしないのだが。

隣に座っている男、年齢は二十台後半だろう。仕事帰りに女子高生で眼福を満喫しよう
というところか。粗暴な男ではなさそうだが、女にモテるようなタイプでもなさそうだ。

〈さて、やってみますか〉

寝たふりをしながら由貴は工作を始めた。薄目を開けて様子をうかがっても、男の視線
は相変わらずチラチラと胸元を見ているままだ。

心の中で挑発的な笑いを浮かべながら、さり気なくセーラー服のスカーフを緩めつつ、
今となっては珍しくなった前開きのファスナーをわずかに下ろす。更に服の端を手で引っ
張って引き下げつつ、持っていた通学用のバッグを抱え込み、乳房の膨らみを下から支え
るように盛り上げる。

〈これでどう?〉

星創学園の女子の制服は胸当てのないタイプのセーラー服だ。こんなことをすれば当然、
胸の谷間が強調されて丸見えになる。

そのまま寝たふりを続けて数分。電車が何駅かを通過したところで由貴は薄目を開け、
気づかれぬように様子をうかがった。

〈……狙い通り〉

もう男はチラチラと見るのをやめていたが、歓心を他に移したわけではない。

むしろ逆だった。その視線は乳房の谷間に釘付けになっていた。まるで固定されたかの
ように、男の目は由貴の胸元から離れられなくなっている。

その状態で深く切れ込んだ谷間を男に堪能させる。寝たふりをしながら由貴は心の中で
くすくす笑っていた。

勿論、男はそんなことに気づきもしない。ただ睡魔に襲われた女子高生の思わぬ露出で
欲情し続けているに違いない。掌の上で踊らされているなど、思いもしないだろう。

だから、由貴はそんな事実を思い知らせてやるのだ。

〈楽しい時間は終わりだよ〉

列車の減速が座席に座っていても伝わってくる。あと二、三分で府調駅に到着するとい
うところか。

由貴はそこで寝たふりをやめた。瞬間的に男の視界へ顔を滑り込ませ、ニヤニヤとした
笑顔を替わりにに見せつけてやった。

「!?」

途端に男の顔色が変わった。その狼狽が手に取るようにわかる。

表情の変化が面白い。目を白黒させて顔を真っ赤にしてしまう。谷間を覗くために傾げ
ていた顔と体を突然正対させ、あらぬ方向へと焦点を向けるようになった。

この瞬間、由貴にからかわれていたことを男はようやく悟るのだ。頭の中も混乱し切っ
ているだろう。恥ずかしさの余り、逃げ出したい心境に違いない。

たっぷり十秒は男にいやらしい笑顔を向けたまま様子を観察する。男は内省か羞恥か、
こちらを見ようともしない。

由貴はその姿を確認すると座席に深く座り直し、制服を整えて谷間を隠した。

横目で男をうかがう。もう露骨な視線を乳房に向けてくることはもうない。替わりにチ
ラチラと向けてくる視線は頻度を下げて継続していた。

欲に満ちた目ではなく、驚きと戸惑いの目だ。「いったい何なんだ、この女は?」――
まあ、こんな挑発を見せつけられたら当然の反応ではある。

≪間もなく府調〜、府調です。京八矢神原線・端本方面はお乗り換えです≫

聞き取りにくい車掌の声が野太く響いた。電車が大きく減速し始め、ホームに入線する。
府調駅は乗り換え駅で客の乗降が激しい。停車寸前で隣の男は立ち上がり、逃げるように
出口へと向かった。

〈逃がすもんか〉

由貴もそっと立ち上がり、他の客に紛れながらホームに降りた。大勢の客がひしめく中、
男の背を捕捉したまま雑踏の中を進んでいった。

階段を上がった先の改札口前で追いついた。ためらうこともなく男の背をポンポンと軽
く叩く。反射的に振り向いた男はそこでぎょっとした顔になった。

「あ、え……!?」

何を思ったのか二の句が告げない。驚愕の目で男はこちらを見た。

彼女はそこで先ほどのニヤニヤ笑いを再び浮かべてみせる。その上でからかうような口
調で、しかし詰問するのだ。

「ねえ、見てたよね?」

言いながら由貴は左手を自分の胸元に当てる。その手の動きに誘導されるように、男の
目も一瞬だけ胸元へと移動した。

好色な視線ではない。むしろ怯えすら感じられる。もしかしたら警察にでも突き出され
ると思っていたかもしれない。

動揺して何も答えられず、戸惑い続ける男にお構いなく、由貴はその視線を一気に好色
なものへと変えてしまう。

「もっと見たくない?」

言いながら左手の指を服の上から谷間に埋め、残ったもう一方の手で右の乳房を持ち上
げる。普段は制服が隠してしまう胸の膨らみも、こうすれば一目瞭然だろう。

「ど、どういうつもりだよ?」

男の放った一声はまだ戸惑ったままだった。無理はないかもしれない。まさか追いかけ
てくるとは思わなかっただろう。

「そのままの意味ですよ。もっと見たいんじゃないですか?」

由貴はニヤニヤ笑ったまま、男との距離を詰めていく。

「あんな風に覗き見するだけで満足してるんですか?違いますよね?」

くすくすと笑いながら問い詰めていく。男には「悪いことをしていた」という負い目が
ある。だから主導権を握るのもたやすい。

「後で思い出して抜くくらいだったら、実際にヤって出したいでしょ?」
「な、何を言ってんだ、あんた……」

経験も少ない男に魔が差したというところか。ここまで言ってもにやけた顔にならない。
背中を押してやらないと駄目なタイプなのだろうか。

挑発的に笑いながらぐいと一歩前に出て、由貴は更に言う。

「お礼してくれたら……制服姿の女子高生を好きにしていいですよ?」

男の顔色が変わる。戸惑いから驚愕へ。そして意味を理解した後――好奇心へ。

あと一歩だ。そう確信した由貴は更に男の背中を押してみた。

「私ね……ピル飲んでるから、好きなだけ中に出しても大丈夫ですよ?」

好奇心と驚愕が交差する男に蠱惑的な笑みを向けながら半歩後退し、昼間、あの童貞の
先輩に見せつけたように――くいっと腰を回してみせた。

「何発出してもいいんですよ……あなたの好きなだけ、ね?」

男の顔が好奇心から更に進み、獣の欲望に染まった。

由貴もその顔を見て確信する。この男も落ちたな、と。

異性の性的な視線に気づかぬふりをして、わざとガードを緩める。そうやって男の目を
釘付けにした後、問い詰めて誘い込む。高校に入ってからこうして男を引っかけたのはも
う五回目だった。卒業までに十回は超えるだろう。

既に星創学園の男子三人がこのパターンで由貴に童貞を奪われている。中学以前も含め
たらどうなるか。数などもう覚えていなかった。

府調駅から十分ほど歩いたところにあるアパートが男の家だった。先にシャワーを借り
て準備を整えた。今は男が浴室にいる。欲望を満たせる期待で興奮した股間でも洗ってい
るのだろう。

この男はどんなセックスをするのだろう。自分の欲を満たすための一方的なセックスは
して欲しくないが、さほどの期待もしていない。この男に私の反応と性感を見極めながら、
より感じさせようとしてくれれば楽しめるのだが…そんな男は少なかった。

常に気持ち良くさせてあげたいとは思っているが、実際に男を果てさせても屈辱に感じ
てしまう輩は多い。互いに快感で悶えられれば最高だと思うのだが、言葉を交わさずに理
解してくれる男はそれほど多くはない。

自分の欲望で女を屈服させたいとか、自分のテクで忘我の淵に落としてやりたいと考え
る男ばかりだ。そんなセックスは大抵が男の独り善がりで、面白くもなければ気持ち良く
もない。

由貴はセックスの快楽などとっくに知り尽くしている。今更そこらの男に仕込まれなく
ても充分なのだ。

そして自分をよがり狂わせられる男など、滅多にいないこともよく知っている。なれば
こそ互いに感じさせ合い、セックスを楽しみたいのだが、この男はどうだろうか。

そんな風に考えながらも局部は既に濡れ始めている。とくんと疼き始めた自分の反応に

「早く出てきてくんないかな」と思い始めたとき、シャワーの音が消えた。
いよいよだなと思うと更に下半身は濡れる。どうせならすぐしたいから裸で出てきてく
れないかなと思ったけれど、残念ながら男は着替えてから出てきた。

「ああ、別に裸のまま出てきても良かったんですけど……」
「おいおい、それはさすがになあ」

苦笑しながら男はバスタオルを洗濯機に放り込んだ。

由貴はその後ろ姿にそっと近づき、後ろから抱きついた。

「それじゃあ、始めましょう?」

男を興奮させる挑発的な釣り目で男を見上げながら、くすっと笑った。

「んんぅ……ん、ん…」

いやらしく重なる唇から生々しい吐息が漏れる。熱を帯びた股間は更に湿りを増し、男
の手が触れる箇所から次々と新たな熱が生み出されていく。

唇が重なり合うだけのキスを楽しんだ後に舌を絡めて来た。少し強引な感はあるが嫌い
ではない。

欲望に塗れ、あれだけ乳房を視姦していた男だが、いきなり胸に触れてくるようなこと
はなかった。キスを味わったところで次は――と思っていたら、やはり胸を下から支える
ように触れてきた。

「あん……」

口から喘ぎ声が漏れ、由貴はひくっと震えながら唇を離した。男はそれ以上キスを迫ら
ず、制服の上から柔らかく乳房を撫で続けた。

「あはは…お兄さん、凄く気にしてましたもんね、私の胸…」

胸を触らせながら笑って見上げる。男は苦笑しながら認めた。

「そりゃあ気になるよ。結構大きいみたいだったしな。それどころかあんな風にわざと見
せるなんて思いもしなかった」
「ふふふ、そうですよね。おっぱい好きですか?」

由貴は腕を組んで乳房を寄せてみせた。制服で隠されたバストのラインもこれで浮かび
上がる。

「ああ、好きだよ。お前みたいな巨乳は大好物だ」
「ですよね。私も胸を揉まれるのって好きですよ」

じりじりと胸先から伝わる快感を味わいながら、由貴は制服のファスナーを下ろした。
男もそれを見てセーラー服のスカーフを外してきた。寄せなくても刻まれる谷間が露わに
なり、男の目を釘付けにした。

「やっぱり巨乳なんだな、お前。サイズどのくらいだ?」
「ブラに書いてますから、脱がしたら見ていいですよ」

寝たふりでの誘惑から戻ったときと同じ――挑発的な笑みを浮かべてみせる。この顔が
男にはとても艶めかしく見えることを、由貴はもう知っていた。

にやけた笑みを浮かべて相手は制服を脱がし始めた。由貴も腕を上げて男の思惑に協力
する。セーラー服を脱ぎ捨てれば、由貴の上半身にはもう薄い水色のブラジャーだけだ。

魅せることを意識させるセクシーさはなく、装飾もカップの縁に彩られたわずかな刺繍
しかない。

「意外とおとなしいのつけてんだな」
「あはは、学校に行くときはこんなもんですよ。遊んでるって思われたくないんです」

誰よりも遊んでるけどね、と付け加えるのは心の中だけだ。派手な下着などいくらでも
持っているが、余り気合いを入れ過ぎても男は興醒めしてしまいやすい。日常はこんなも
のでいいのだ。

「ふーん、本当はかなり遊んでるんだろうになあ」

男の手がスカートを引き下ろしにかかった。されるがままに由貴も苦笑する。

「これでも学校では真面目で通ってますよ。授業だって予習してから受けてますし」

嘘ではない。一部の教員も手玉に取っているが、楽ができるのはテストだけだ。それ以
外はきちんと勉強もしている。おかしいのはセックスのハードルだけだ。

「そりゃたまんねえなあ、ますます興奮してきたよ。そんな真面目な子が裏ではこうして
金でヤリまくってんだからな」

ぱさっとスカートが床に落ちる。ブラと揃いのショーツが股間を覆っているのを見て、
男の顔は更ににやけた。

そのままブラの肩紐に手を伸ばしてきた男を見つめ、由貴は訊ねてみた。

「興奮してきたのなら……まずは一発出してすっきりしませんか?」

男が怪訝そうな顔になる。

由貴は男の顔を見据えたまま、小さく音を立てて舌舐めずりをしてみせる。

男の視線がそこに集まったのを確認した後、細い指を自分の唇にゆっくりと這わせ――
口を開けて、中にその指をくわえてみせた。

ジェスチャーが意味することは誰でもわかるはずだった。

「フェラしてくれるってのか?」

男の目が爛々と輝いている。

「ええ、得意なんですよ、私」

男の期待を是と受け取った由貴はベルトを外し、ズボンを慣れた手つきで脱がしていく。
程なくして下半身が下着だけになった男の股間は、果たして内側から持ち上げられていた。

「興奮してくれてるんですね。嬉しいですよ」

ぴくっと温い電流が下半身に走った。セックスへの予感に愛液が同時に染み出すのがわ
かる。いつ頃からか由貴は、ペニスを目の前に突きつけられるだけで興奮を覚えるように
なっていた。

〈まあ、濡れなかったら痛い思いをするのは私なんだしさ〉

これはこれで好都合なのだろう。期待に目をトロンと潤ませつつ、男の下着を手際よく
脱がせていった。

「うふふふ……」

ごくりと唾を呑みこんだのは由貴だった。硬く屹立した怒張が由貴の目の前に曝け出さ
れる。大きくも小さくもなく、彼女好みのサイズだった。

「これが今から、私を気持ち良くしてくれるんですね……」

美しい少女は下から男の顔とペニスを見上げつつ、そっとその手で包み込んだ。

「まずは私が感じさせてあげます……」

由貴は恍惚とした表情で男根をしごき始めた。柔らかなタッチでカリ首に指の輪を絡め、
いやらしい上目遣いで男を悦ばせていく。

最初は余裕と快感、そして売春婦に対する蔑みからニヤニヤ笑っていた男だったが、由
貴が手コキを始めてからわずか数十秒でその顔色を変えた。

由貴にはわかる。これは男がヤバいと思ったときに見せる共通の顔だ。自分の技巧の片
鱗を披露したところで、この淫らな女は愛撫の手を緩め、揺さぶりにかかる。

「気持ちいい、ですよね…?そんな顔ですよ…」

緩い愛撫を進め、快楽だけは途切れさせずにくすりと笑う。

「ふふふ…どうせ溜まってるんでしょう?」

こう笑うだけで男たちはプライドを傷つけられたと感じるはずだ。性欲を女で発散でき
ないと決めつけられることで、それはそのまま女との機会がないことを意味する。

許してもらわなければ女を抱けない。その事実だけで男は屈辱なのだ。

「このまま…指で出してしまいますか?」

早漏との罵りにも、魅力的な提案にも聞こえるように由貴は囁いてみた。

男の目が泳いでいる。逡巡しているのがよくわかった。手コキかフェラか、そして思わ
ず驚いてしまうほどに卓越した年下の女のテクニック――何に意識を向ければいいのかす
ぐには決められまい。

だが、主導権を握るためにも由貴は先んじて動いた。

「大丈夫ですよ、約束は守りますから…」

毛先だけを緩く巻いた髪がふわりと揺れた。顔を下半身へと近づかせ、大きく口を開け
ると肉棒を一気にくわえ込んだ。

「口で…イカせて、あげ、んん…ますから…んぅ……」

今までで何人の、そして何度、男のペニスをこの口に頬張ってきたことか。少なくとも
数えることなどが馬鹿らしくなるくらいにはこなしてきている。

口内の柔らかな粘膜で亀頭全体を圧迫し、竿には巧みな手コキで悦楽を送り込み続ける。
ちょうど裏筋とくびれの交差する部位に舌が触れる状態だ。由貴はぴたりと舌をその陰茎
小帯に張りつかせ、休めることなく舌を動かし始めた。

「ん、んん……はぁっ…うぅん……」

淫乱な口はさながら女性器だ。荒い吐息も喘ぎ声に聞こえよう。

由貴はくわえたまま顔をゆっくりと前後させる。それとともに舌を裏筋から根元へと往
復させ、艶めかしく愛撫する範囲を広げていく。

〈気持ちいいでしょう…?〉

頃合いを見計らって口をもぎ放し、けれどもその分の快感は手コキできっちりと与え続
け――由貴は相手の高揚を見定めに入った。零れた唾液がうっすらと、由貴の口唇と肉の
柱に橋をかける。

フェラを始めてたった一、二分だが、「男」には変化が現れていた。口の中に苦みと塩
の濃さを感じるようになった。

男が意図せずに染み出させてしまう先走りの粘液が混じり始めたのだ。もうすっかり射
精の準備を整わせている。

「お、お前…すげえな、こんな気持ちいいフェラ初めてだよ」

すっかり余裕をなくし、驚くだけの男の前で由貴は笑顔を見せる。

「嬉しい……」

更に恍惚とした笑みを浮かべながら、由貴は更に股間を濡らしていくのを自覚していた。

「じゃあもう一つの初めても……味わってくださいね」

この程度のフェラが初めてならば、今からのテクも当然初めてのはずだ。

「気を張っていてくださいね……その方が気持ち良くなれますから。お兄さん、あなたは
今から射精します。確実にね」

更に戸惑いを見せる男の目には反発心も見て取れる――だが、由貴は有無を言わさぬ口
調で更に言い立てた。

「好きなように果てていいですよ……」

再び由貴はいやらしく口を開けてペニスをくわえ込む。

そこまでは同じだったが、次の瞬間、男はそれまでにない声を漏らした。

「うあっ!」

それまでとは比較にならない快感だったに違いない。

口の深奥――喉の奥にまでするするとペニスが呑み込まれていく。奥に進むに従って亀
頭への締め付けが強まっていき、粘膜による愛撫も先ほどとは比較になるまい。

陰毛の生え際まで肉棒を呑み込み、由貴はその先の陰嚢をも手で撫でさすりながら、竿
を巧みに喉で攻め立てる。一呼吸したところでくにゅくにゅと喉奥を開け閉めするように
締めつけていく……。

「うあ……う、おおっ!」

このテクニックに耐えた男など誰もいない。

男に残された反応は二つしかない。圧倒的な快感の前になす術なく射精へと追い立てら
れるか、それへの抵抗からかイラマチオへと移行すること――これしかない。

「はあっ、うわっ…なんだ、これ……!」

この男は後者だった。もう射精を我慢できなくなっていることは間違いない。

だがイカされるという事実が屈辱なのだろう。敢えて自分の意志で出したいという気持
ちなのか、それともただもっと気持ち良くなりたい意志がもたらす反応なのか、あるいは
ただの意地やプライドか――男は腰を動かし始めた。

「んぅぅ……くぅ…」

並の女なら確実にむせてしまい、ペニスを吐き出してしまうだろう。だが、由貴は男が
口の中でペニスを暴れさせても苦しげな表情ひとつ見せなかった。むしろ快感を与えるた
めには好都合であるかのように、そのまま喉奥をきゅっと締め上げてみせる。

「ああああっ!!」

男が目を閉じ、天を仰ぎながらついに腰の動きを止めたその瞬間、由貴の口の奥深くで
白い情熱が弾けた。生温かく苦いだけの液体がびゅくん、びゅくんと破裂するような勢い
で飛び散らされる。

「ん、ん……んんぅっ…!」

さすがに由貴も苦しげな吐息を漏らすが、それでもむせって欲望の柱を口から吐き出し
てしまうようなことはない。既に数え切れないほど経験してきた彼女にとってはもう慣れ
切ったものだ。奥でべったりと絡む精液をためらいなく飲み下し、より快感を引き出すた
めに射精後も締めつけ続ける……。

「す、すげえ!こんなの、今まで……」

白濁液を出し切った後も男性器がひくん、ひくんと痙攣するのとタイミングを同じくし
て、由貴は喉奥で締めつけてやった。その度に男は由貴の頭を抑えて快感に悶え、男らし
からぬ喘ぎ声をもう隠そうともしなかった。

男の絶頂が収まったところで、ようやく由貴はペニスを口から抜いた。

ようやく――といっても経過した時間は驚くほどに短い。特に喉奥にくわえ込んでから、
一分も経過していないのは確実だ。

口を男根に触れさせてからわずか三、四分……しかし、目の前の男もこれほど濃密な時
間を味わったことはないだろう。

「気持ち良かったんですね…?あんなに激しい射精……好きですよ、私……」

一滴も精液を口から逃さず、男から一発抜く前と変わらぬ顔で由貴は微笑んでみせた。

いや、口で男を転がしながらも股を濡らしていた由貴の顔は、前よりも艶然と見えるこ
とだろう。

これまでの男たちにもよく言われてきた。ロリっぽいと思っていたのに突然大人びて見
えるようになった、何歳なのかわからない、普段とのギャップが凄い……由貴自身にはよ
くわからないが、複数の男たちが言うのだからきっとそうなのだろう。

「お、お前……すげえよ、なんだあのフェラは?タマまで引きずり出されるかと思っち
まった。あんなに気持ちいいの初めてだよ」
「今のがディープスロートです。聞いたことありますよね?」

男はその言葉に目を剥いた。噂には聞いていたが体験したのは初めてだろうし、何より
こんな女子高生が何なくやってのけたことに驚いているのだろう。

「風俗嬢でも滅多にこんなテクできねえぞ。普段からどんなことやってんだ、あんた…」

圧倒されたのか呆れたのか、男は脱力したように腰を下ろした。これだけの技巧と快感
を味わって、平然としていられる男などいるはずがない。

「あはは、時々言われますけどね、それ。この前は『嫁の中よりずっと気持ちいい口だ』
って言われましたよ」

勿論、援交相手の中年男性のことだ。

「でも、嬉しいでしょう?」

由貴は足を広げてへたり込む男の股間に目を移した。射精を終えた後に染み出てきた精
液が、亀頭の先に雫を作っていた。

「今からお掃除してあげますね」

ぺろっと軽く舌舐めずりをすると、由貴は再び男の股間に顔を埋め、先ほどより柔らか
くなったモノを口にくわえた。男は一瞬だけ顔を強張らせたが、先ほどよりは強く吸いつ
かない。舌先でペニス全体を軽く撫で回すようなフェラだった。

特に亀頭の周りを舌で念入りに愛撫していく。くちゅくちゅと音を立てながら、時に精
液を吸っていく。射精直後の男がペニスに鈍痛を覚えぬ程度の力加減で舐め回し、這い回
り、吸い上げるのだ。

苦みのある雫を吸い取ったところで、口とペニスの交わりに別れを告げた。いわゆるお
掃除フェラで陰茎に残った精液を吸い尽くすと、男に「どう?」と挑発的な表情を突きつ
けながら――背に手を回し、水色のブラを外しにかかる。

ホックを外し、胸を突き出しながら肩紐を抜き、はらりと落ちそうになるブラを手で押
さえながら、そこで由貴は脱ぐのを止めた。

電車の中でのように、男の視線は切れ込みの深い谷間に集まっている。あのときと同じ
ような視線で由貴は男と目を合わせ、その先を促すように笑ってみせた。

男の手が伸びてきて由貴の手に押さえられたブラを掴む。抵抗することもなく、腕の間
からその布切れはするりと抜け出、男の手に渡った。

タグに書かれたサイズは"G70"――それを見て男はまた驚く。

「大きいんですよ、私の胸って」
「ああ、すげえな。Gカップなんて初めて見るよ」
「でも、大きいだけじゃないんですよ。胸の形、自信あるんです」

由貴は上半身だけ全裸になった姿を晒す。前面に突出した美乳だ。垂れそうな気配など
微塵もない豊かな膨らみが二つ、男の情欲を煽るために並んでいた。ピンクの乳首も上向
きに勃起し、美しいバストに花を添えている。

谷間を見せつけるように腕を組む。男の視線が更に釘付けになった。

「何してもいいですよ。電車で見てたときからしたかったこと、何でも」

今度は掌をバストの下に添えて持ち上げる。

「揉む、舐める、吸う、挟む……何でもできますよ、私の胸なら」

由貴はそういって相手の横に移動し、男の手を胸元へと導きながら、熱い吐息とともに
囁いた。

「今度はたっぷり私を楽しませてくださいね……」

服を脱いだ男に抱きすくめられ、そのままベッドへと押し倒された。乳首を舐められな
がらショーツを脱がされ、生まれたままの姿になった後は、男にむしゃぶりつかれるだけ
となった。

「ああん……ああっ…ん、ん……」

余程乳房が好きなのだろう。既に由貴の股間は前戯など必要のないくらいに濡れていて、
いつ欲望を挿入されても差し支えなかった。それを間近で見たはずなのに、男が執着した
のは胸だった。

「ずっと触りたかったんですよね…あぁん……ふあっ…」
「ああ、その通りだよ。女子高生の巨乳なんて俺の大好物だからな。まさかあんな風に挑
発されるとは思ってなかったが、楽しませてもらうぞ」

愛撫が優れているとは言い難い。少なくとも由貴の様子をうかがいながら快感のツボを
探し当て、こちらを狂わせてくれるタイプではなさそうだ。

「気持ちいい……あ…ああんっ!」

テクニックはさほどでもないが、欲望のままに激しいプレイしてくるわけではなさそう
だ。少なくとも苦痛がないのは好感が持てる。男の手が触れたところから体を走り巡る信
号は、確かに快感を脳に送ってくれていた。

〈まあ…普通の男ならこんなもんかな〉

数々の男と快感を知り尽くした由貴の偽らざる感想だ。決して男のテク不足を嘲笑って
いるわけではない。技巧で得られる快感と性交の満足度は違うというだけの話だ。

男は掌に余るほどの乳房を軽く握り、円を描くように揉み始めた。なかなかの快感に口
の端から喘ぎ声がこぼれ出す。

「あん……はあっ…ん、ん……」

反射的に出る反応に身を任せ、由貴は身を走る電流に悶えた。胸が好きだというだけは
ある、なかなかの執着だ。揉み解されているうちに感度が増してきた。

見上げると男の顔も満足そうだ。巨乳の女子高生が好物ならば、由貴の身体などは最高
なのだろう。大きく揉みしだいたかと思えば、次は小さく肌の上をさするように、しかし
乳首には触れぬようにして焦らし始める。

「あっっっ!!!」

途端に由貴は官能の刺激に悶えた。快感の喘ぎが跳ね上がった。

指の動きでいよいよ敏感な突起を愛撫される、きっととても気持ち良くなれる――そん
な予感が見事に外された。体の疼きが急に高まり、物足りなさと同時に快感への希求から、
肉体の感度が突然増幅されたように感じた。この焦らしは上手い。

「あ……嫌っ!んんぅ、あふ……」

早く乳首を撫で回して欲しい。身悶えするような強い快感が欲しい。けれども男は更に
焦らし続けたいのか、唇を奪って由貴の興奮だけを高めてきた。

「……ん、……はぁっ…」

この男だって本当は私の胸をもっと触りたいはずなんだと、キスから逃げるように背を
逸らしながら胸を突き出してみせるが、男は意に介さぬようにして太股を更に撫で回して
きた。

「ああっ!ああん…!」

まるで不意打ちのように予想外の場所を愛撫された。思わぬ感触にそれまでとは違う反
応を見せてしまう。体を捩じらせながら快感にもがく由貴のそれは、決して過剰な反応で
も演技でもない。

そうして心を高鳴らせていたら、今度は男の手が滑るように首筋をつつーっと這った。
触れるか触れないかといった微妙なタッチが、むしろ激しく由貴の官能を煽る。

「ああん…気持ちいいよ……」

テクが凄いとは思わなかったが、これはなかなかいい。この男は意外な掘り出し物だっ
たかもしれない。一度だけで終わらせるには勿体ないかな――と思った瞬間、由貴のその
思考は快感の前に弾き飛ばされた。

「あああっ!ああん!はあああっ!」

焦らしに焦らさせて、じんじんと熱を帯びて快感を待っていた乳首に、男の舌が絡みつ
いた。しかも強烈に吸いついて来ようとはせず、あくまで柔らかなタッチで、艶めかしい
突起を口の中で転がしてみせる……。

「あああん……いい…感じちゃう…!!」

刺激的な快感に、正直な感想を吐息とともに吐き出した。男はその反応にニッと笑うと、
手で乳房を揉みしだき、指に乳首を挟み、片方の乳首を舌先で舐めながら軽く吸い上げて
きた。

「はあ………!」

声にならない声だけが、抑えようもなく男の耳を悦ばせる。こんな声を出したら男は我
慢できなくなるに決まっている。

案の定、胸だけで由貴を悶えさせた男は乳房に口を触れさせたまま、左手を下半身へと
伸ばし始めた。

「あっ、ああああっ!ああん…はあああっ……」

くびれたウエストから下ってくる男の手を快感の軌跡として実感しながら、由貴は男に
されるがまま悶えた。くちゅりと淫らな水音が鳴るほどに下半身は潤み切っている。

太股や陰唇に触れられただけでひくひくと体を痙攣させては悶え、バストと股間からの
快楽に身を委ね、更なる快感を由貴は求めた。

「はぁん…駄目、もう……駄目…」

まだ入れてもいないのに、準備を整えた肉体は痺れるような絶頂へと迫っていた。クリ
トリスを優しく丁寧に撫でられ、由貴は忘我の淵にまで追い込まれていた。これ以上何か
されたらオーガズムへと一直線だろう。

けれども男はそこでまた焦らし始める。乳首からも陰部からも手を離したのだ。

テクニシャンではないが女の悦ばせ方を心得ている――男のそんな技巧は由貴の興奮を
着実に高めていた。百戦錬磨の彼女が感心するほどにだ。

〈なかなか…やるじゃん……〉

はあはあと呼吸を乱れさせながら、由貴は薄らと目を開けた。すると目の前には男の性
器が突きつけられていた。由貴はそのことを認識し、改めて恍惚とした表情を浮かべる。
これが今から入ってくるのか――と。

由貴は仰向けに寝たまま、男のペニスに舌を伸ばした。辛うじて届く裏筋に舌先を這わ
せ、男の期待に応えるように舐め上げてみせる。吸いついて一気に射精へ導くような技で
はないが、男ならば少なからず快感は得ているはずだ。

「ん、ん……」

やや苦しい姿勢と興奮から色づいた吐息が出てしまう。男はその姿を堪能すると、腰を
引いて乳房を内側に寄せ、その谷間に男根を挟みこんだ。

「入れる前にもう一発イカせてもらうぞ」
「うん…いいですよ」

馬乗りになった男が谷間でのピストンを楽しめるよう、替わりに乳房を支える。だがこ
こで悪戯心が湧いてきた由貴は、男が腰を振り始める前に、ペニスを挟んだ左右の乳房を
交互に動かし、年齢離れしたテクニックで悦楽を送り込んでやった。

「どうですか?結構上手でしょ、私」

言いながら巧みに男のモノを胸で愛撫し続ける。張りのある乳房が肉棒を隙間なく包み、
強すぎず弱すぎず、快楽だけが伝わる乳房の膨らみの刺激。左右の肉壁が交互にしごくペ
ニスは、着実に高みへと昇り詰めていく。

「お兄さんも腰を振っていいんですよ…?」

けれども男は動かなかった。馬乗りになったままペニスを挟み、後は好きなように動く
だけでいいのに動かない。

いや、動く必要がないのだろう。由貴に任せていても間違いなく射精できると思ったに
違いない。これで動いたりしたらあっという間に果ててしまうのだ。

「ふふっ……どうしたんですか?もしかして、このくらいでイッちゃいそうですか?」

挑発的な微笑だった。その艶めかしさに男はごくりと唾を呑んでしまう。

「いいんですよ…好きなだけ果てて」

けれどもその笑いは一瞬で消え、むしろ射精を促すような優しい顔になる。

「私で興奮してくれるのが嬉しいんですから……」

由貴は更に肉棒への愛撫を続けた。巨乳好きにパイズリはこたえられまい。加えてこん
なテクを披露されたら、男はもう悦ぶことしかできないのだろう。

「うふふふ…気持ちいいみたいですね?」

乳房でしごく度に男の顔から余裕が消えていく。逆に由貴の顔は得意気に、そして妖艶
な色に染まっていく。

ぬるりとした感触が胸元に生まれた。先走りの粘液が男根から染み出したのだ。もうい
つでも出していいという合図のようなものである。

「もう出す用意はできてますか…?」

艶っぽく笑い、この淫乱な女はパイズリの愛撫を更に強めた。胸の谷間にしっかりと収
めた男根を弄ぶかのように圧迫し、こすり上げ、そして柔らかい感触に溺れさせる……。

「も、もうイくぞっ!」

男が限界を迎えた。由貴はその瞬間に亀頭部を谷間に埋めさせ、肉棒全体を乳房で包み
込むようにしごき、忍耐にとどめを刺した。

「おおっ!」

次の瞬間、男が目を閉じて体を硬直させる。活発なのは乳房の谷間に収められた陰茎だ
けだった。小刻みに痙攣しながらびゅくっ、びゅくっと白い情熱を流し込んできた。

吐き出される精子の勢いが凄い。谷間だけで受け止め切れなかった粘液が、鎖骨や首筋
の肌にぶちまけられた。

脱力して荒い息を吐き続ける男がペニスを谷間から抜き、馬乗りから体勢を崩す。ベッ
ドの上に膝立ちで佇み、体の中で消化し切れない快感の余韻と疲労感に浸っていた。

由貴は白い粘液を拭き取ろうともせず、男の下から抜け出して体を起こした。寄せた谷
間を腕の圧力から解放し、突き出すように胸を張った。

注ぎ込まれた欲望と絶頂の証を見せつけ、由貴は淫蕩な囁きを放つ。

「ふふふ、二発目……」

生温い白濁の垂れた後がぬらぬらと光を照り返す。粘りつつも膨らみの斜面を下る精液
を指先ですくい取ると、由貴はためらうことなく、男の目の前でそれをいやらしく舐め取
ってみせた。こくんと喉を鳴らし、呑み込んだことも見せつけてやると――

「もう元気になってますね……」

男の興奮を煽り立てる光景だったのだろう。短時間で二度の絶頂を迎えたというのに、
むくりと男根が鋭角に天を向いた。

由貴はまだ精液が微かに染み出るペニスを指先で包み、すりすりとしごきながら男の興
奮を確かめる。由貴好みの硬度を認識すると再び口に含み、舌で亀頭を掃除しつつ唾液の
音をじゅるじゅると鳴らし、その一方で管の奥から残った精液を吸い上げてやった。

「く、う…あ……」

出したばかりで敏感な亀頭には辛さもあろうが、これは男をイカせるフェラではない。
童貞ならばこれだけでも暴発してしまうが、ただのお掃除フェラだ。果てるほどの快楽を
送り込むつもりはなかった。

余裕の微笑みを浮かべて唇と肉棒を離した由貴は、男の肩に両手を置いて微かに力を込
める。それだけで脱力した男はベッドの上に倒れ込んだ。

「今度は…私が上の番ですね……」

横たわった男の身体で唯一その存在を主張する勃起。

にじり寄るようにして下半身をペニスへと触れさせ、指で位置を整えながらゆっくりと、
由貴は自らの中へと男の象徴を沈み込ませていった。

「ん、ん……ああ…」

男根が膣を埋めていく圧力と実感が心地いい。虚ろな瞳と、頬を赤らめて宙を仰ぐおと
がいの角度、冬でもないのに白く染まりそうなほど熱い吐息……男にとって都合のいい男
根主義を満たすのがこの顔だと、由貴はよく知っていた。

根元まで肉棒を呑み込んで見下ろすと、男が体を硬くしてじっとこちらを見ていた。

その顔には淫乱な女を辱めてやろうという征服欲も余裕もなく、あるのは沸き上がる興
奮を押し殺そうとする、追い詰められた虚構の冷静……

〈ああ、なるほどね〉

由貴はその意味を一目で悟った。もうこの男は限界なのだ。

そのまま腰を動かさない。腕を組んで谷間と乳房を見せつけつつ、自らの意志で膣を収
縮させたその途端――

「うっ!」

男の呻き、そして歪む表情とともに膣内で精液が弾けた。小刻みに震える欲の柱が男の
絶頂を告げている。

挿入してから明らかに一分も経っていない。二発も出しておいたのにこの早漏ぶりだ。

「くふふふ……三発目、ですね?」

男のモノを入れたまま、膣の収縮を繰り返してやった。締めては緩め、やはり腰を動か
さずに男根への刺激を巧みに加えていく。

「なんで…なんで中が動いてんだよ、腰も振ってないのに……」

由貴はその反応に満足そうな笑顔を見せ、けれども無言のまま、今度はゆっくりと腰を
動かし始めた。

膝をついて巧みに下半身だけをグラインドさせる。ウエストから下だけを振る性運動に
切れ目がない。揺れる髪の毛を両手でまとめて頭の後ろに誘導すれば、乳房からくびれた
ウエストへの美しい曲線がどうしても強調される。

それだけでも充分に男の股間を熱くするに違いない。加えて挑発するような笑みが、更
なる淫乱さを男の心象に刻みつけていくだろう。

ただ巧みな腰使いの騎乗位というだけではない。膣壁の締まりが強烈な緩急と落差を編
みながら、男根へ確実に快感を注入していっているはずだ。

「や、やめてくれ、そんなにされたらまた……」
「四発目ですか?」

くすくすと笑いながら腰のグラインドを更に加速させる。ただの楕円運動から男にとど
めを刺す腰使いへと移行するスイッチを入れた。

下半身だけで円を描きつつ、上下への運動も加えながら速度を上げた途端、男の顔色が
変わった。肉の打ちつけ合いと淫液が混じり合う、くちゃくちゃとした音がいやらしい。

「あはははっ、女子高生に負けたくなかったら耐えてくださいね…!」

この螺旋を描くような高速の腰振りには絶対の自信がある。別に特別な腰使いだとは思
わないが、どんなだって耐えられやしないのだ。

案の定、この男も――

「あ、あああああっ!」

本気での腰振りからわずか数秒でオーガズムに達し、精液が限界の壁を決壊させる。

必死の抵抗なのか、ただの欲望とフェティシズムのなせる行為なのか、男はGカップの
乳房を揉みしだきながら、由貴の中で精液を弾けさせていた。

四発目だというのに衰えない性の奔流。中に出された液を感じることなどできないが、
由貴の膣内に収まった男性器の激しい痙攣から男の昂りを実感することはできる。

男が息を荒げる中、由貴は腰を振り続けていた。相手から搾り取るようなグラインドで
はなく、自らが快感を貪るための性運動だ。

短時間で四度も出した早漏男は由貴の下でもうぐったりとしている。快感の余韻と疲労
感の中で、途轍もない性の技巧を持った女子高生に何を思っているだろう。

「ん、ああん……」

適した角度で由貴の中をこすり上げる肉棒のくびれが気持ちいい。期せずして喘ぐ由貴
の姿はとても艶めかしいはずだが、真下の男にその姿を楽しむ余裕はないようだ。

「はうっ……んん…ああん!ああ…!」

力尽きたのか、男は下から突き上げてくることもない。ただ屹立する欲望を下の口でく
わえ込むだけで、由貴は勝手に快感を貪っていた。もうこれはセックスではなく男の身体
を使った自慰に過ぎない。

「あんっ、ああん…ああ……」

由貴の手が自らの乳房と股間にするすると伸びていった。並外れた豊かなバストを自ら
揉み始め、肉棒を呑み込んでいる口の周囲を艶めかしい指使いで愛撫し始める。

「はあ……あん…あぁん!」

どうすれば感じるかは自分がよく知っている。由貴自身が悶えられる位置に男根を当て、
乳房の愛撫も理想通り。股間をまさぐる指先も快感だけを導き出す柔らかさ。快感の喘ぎ
が甲高くなるのも無理はない。

「ああっ…あん……う、あ…ふあっ!」

たちまちのうちに由貴の肌が桜色に上気していった。この日の欲求不満と快楽への切望
が花開くように悶え始め、性感がぐんぐんと高められていく。

「…あん……はああっ…ああん…も、もう……」

強烈な快感に由貴の身体がふるっと震えた。乳首から、膣内から、そして指先が誘導す
る股間から耐え難いまでの悦楽が導き出され、由貴の恵まれた肢体を翻弄していく。

「んんぅ……あ…ああ……」

あと一息で絶頂だ。痺れるような快感が高揚を導き、喘ぎ声を放つ反応すらも認識から
遠くなり、自分の意志から着実に遊離していく。

「イク、イッちゃう……もうイッちゃう……!」

意志ある言葉はこれが最後だ。既に圧倒的な快楽の中、この声も途切れそうなほどにか
すれている。

自分の快楽よりもむしろ、男の目を惹きつけるための宣言に近い。

男は何よりも女が昇り詰める姿を見たがるものだ。悶えながらも、そんな宣言で男を釘
づけにするのは嫌いではなかった。男の欲望が結実する最も無防備な瞬間を晒すことで、
より強く男に自分の存在を刻み込み、虜にできるだから。

「あっ、ああっ…あああっ……」

体の痙攣が由貴の意志とは無関係に激しくなる。脳が下す電撃のような快楽信号の強烈
さを受け止めるには、たかが人間の肉体など器が小さ過ぎる。

持て余しても決してこぼれない皿の中、悦びは隅々まで行きわたった程度では勢いを失
わない。体の端に行き着いてはまた内側に跳ね返り、性感の因子はその活動を止めるまで、
狭苦しい女の肉体の中で反射し続け、走り巡るしかない。

その度に撒き散らされる快楽は女の理性を蝕み――表現し難い真っ白な世界へと肉体の
主を昇らせていく。

「あ、ああっ……ああんっ!く、うぅ……ああああ―――――っ!!」

慣れてはいるけど飽きることもない絶頂。肉体を本能のままに震わせながら昇り詰め、
由貴はどんな瞬間よりも男をそそらせる痴態を見せつけた。

勿論、昇天した女の締め付けに、下で横たわる早漏男が耐え切れるはずもなく――

「うわ…す、すげえ…っ!」

悩ましい姿を目に焼きつかせているに違いない。きゅうきゅうと激しい収縮を見せる膣
の中に、由貴は五度目の白濁を注ぎ込ませた。

今日セックスした男の中では一番満足できた。テクニックもではマシな方だし、何より
男のよがり狂う表情が由貴の悦びを満たしてくれた。

「お前って凄いな。こんな気持ちいいセックスできるとは思ってなかったよ」
「ありがとう。お兄さん、また私とヤりたい?」
「そりゃあな。俺、巨乳の女子高生が大好きなんだし」
「ふふ、そうですか?なら、お礼さえくれればいつでも来ますけど?」
「ああ、そうだったな。お前、援交やってんだっけ」

男は机に置いた財布に手を伸ばした。

「どのくらい払えばいいんだ?相場やっぱ三万とか五万?」
「お兄さんが払いたい金額でいいですよ」

笑顔を浮かべて由貴は言う。金よりも男との関係作りが狙いなのだから、相手が渋るよ
うな数字は要求しない。

「んじゃこんなもんでいいのか?」

男が出したのは一万円札と五千円札が一枚ずつ。

「はい、ありがとうございます。毎度ありぃ、なんつってみたりして」
「拒否されるかと思ったけどな…こんなんでいいのか?」

お前ならもっと高く売れるだろ――そんな意味合いを含んだ問いだった。

「もっと出せるなら出して欲しいですけど?」

由貴は笑顔を崩さずにそう答えてみせる。

「いや、ちょっと辛いけどなあ……」
「いいですよ、これで。高く買うって人は別にいますから」

由貴なりの計算もある。見知らぬ男との出会いや援交を巡るトラブルの噂が尽きること
はない。しかしこれらは大抵が、ヤラせるかどうかや金の支払いを巡ってのものだろう。
ならばこの二つをクリアしていれば、性を巡る犯罪には巻き込まれにくい。

金が目当てではないから安売りで構わないし、むしろ安全なリピーターになってもらっ
たほうがいい。金なら数をこなせばいいのだから、誰とでも寝る由貴には大したハードル
でもない。

今日のこの男が五千円しか出さなかったとしても構わないのだ。勝手に相場とやらを推
定してくれればいいし、由貴はただ出された金を受け取るだけだ。

「どうします?下着も欲しいなら売りますけど?」

からかうような笑みを浮かべて由貴は訊ねた。半ば本気でもあるが。

「あー、いらねえよ。欲しいって奴に売ってやれ。俺そんな趣味ねえからさ」
「じゃあ、今度はすご〜くエロい下着で来ましょうか?そしたら欲しくなるかもしれま
せんよね」

くすくすと笑い、けれど目だけは男を見据え続ける。相手は答えなかったが、一瞬だけ
目を泳がせた。迷ったのだろう。ますます由貴は面白がるしかない。

「……なあ、お前、下着売った後はどうしてんの?」
「あ、今どんな想像しました?」

敢えて答えずに由貴はまた唇の端を持ち上げて笑う。

「ノーパン、ノーブラで帰ってるのかと思ってもおかしくねーだろ?」
「あははは、やっぱりそんな想像しますよね。折角お金もらってるんですし、近くの店か
ホテルの中で買ってから帰りますよ」
「……だよな」
「今日だったら駅前のパレコで買ったでしょうね。まあ、何もつけないで帰ったことも
ありますけど」
「やっぱりそういうこともあんのか。まあ納得するが……」
「あははは、それじゃシャワー貸してくださいね」

苦笑したままの男を尻目にシャワーで体の汚れを落とす。出た後は携帯電話の番号と
メールアドレスを交換し、由貴は男のアパートを出た。

府調駅から再び京八線に乗って由貴は帰宅した。自室のパソコンの電源を入れて私服に
着替え、下着をネットに入れて洗濯機の中に放り込んだ。

部屋に戻って起動したパソコンのブラウザを起動。表示されたポータルサイトのフリー
メールを受信チェックする。相当な数のメールが届いており、受信するだけでも時間がか
かった。その数、六二件。

その数にもまったく動じず、すぐにメール配信元となっている出会い系サイトへとログ
インし、マイページのメッセージボックスを確認――同様に六二件だった。

このメッセージボックスには、送信者名の隣に居住している都道府県も掲載されていた。
サイトにプロフィールを登録したときのデータから反映されるのだ。

由貴はまずそこだけを見て、遠方からのメッセージは読まずに削除。次いで話にならな
い文面を送りつけてきた馬鹿どものメッセージをためらいなく削除した。

〈なーにが「割り切ったお付き合いをしましょう」だよ……誰が考えた定型句なんだろ、
これ。ほんとにもう、どいつもこいつも〉

そうして残ったのは十件ほど。この中からマシなのを更に絞ったら三件にまで減った。
残ったのは冴えない中年の会社員二人と大学院生だ。

〈ま、今日はこんなとこかな。金と男に発情したメスのお誘いですよっと〉

適当に返信を書いて三人に送る。コナかければ喜んで食いついてくるだろう。もっとも、
由貴を本物の女と見抜ければだが。

業者側のサクラと思って無視されることもあり得るが、こんな膨大な数が殺到するのだ
から、それくらいでちょうどいい。若い女とヤリたい男などいくらでもいるのだ。

「う〜ん……!」

椅子の背もたれに寄りかかりながら由貴は体を伸ばした。溜まっていた疲労感が心地良
くその身を満たしていく。

「今日は…五人、だったな」

登校したら「溜まってるから抜いてくれ」と先輩からメールが来た。いつものように校
舎のはずれにある部室棟に赴き、フェラで一発イカせてやった。朝から制服を汚されても
困るので、出された精液は一滴も逃さず飲んだ。

昼休みには同じ学年の男。屋上へと続く階段の影に隠れ、手コキで追い詰めてフィニッ
シュは口の中へ。いつも三分と持たずに果てる早漏だから楽だった。

放課後、昨日から約束していた化学教師の樫原と理科準備室で二発。

それを隠れて覗いていたマゾ男の高橋先輩を嬲り、公園で手コキ一発。

帰る途中でナンパしてきた男と陸橋の下で三発。

そして電車内で胸を覗いてきたさっきの男で五発――うーん、刺激的な一日でした。

思えば最後の二人は名前も知らなかった。五人目の会社員はリピーターになるから家を
出る前に名前も聞いたが、陸橋の下でヤッた男はもう会うこともなさそうだし、別に知ら
ないままでもいいだろう。

まあ、今更気にするようなことでもないし、こんなことはとっくに日常茶飯事だが。

「結構疲れたなあ……」

体を起こすと椅子が軋む。そろそろ夕飯でも食べようかと思ったら、携帯電話の着信音
が鳴った。待ち受け画面に表示される発信者は、友人の中里リサだった。

「はい、早川です」
『ああ、由貴?リサです。ちょっとお願いがあってさ』
「ん、何?」

この時点で大体の予想はついていた。

「明日さあ、わたしバイト急に休みになったんだ。暇になっちゃったから小遣い稼ぎした
いんだけど、適当な男、紹介してくれない?」
「うん、いいよ。明日は夕方から一人と予定入れてるからさ。一応確認してみるけど多分
大丈夫でしょ。女子高生と3Pだなんて、向こうも喜ぶだけだと思うよ?」

中里リサ――彼女も星創学園に通う一年生だ。何かと目立つ由貴の影には隠れているが、
彼女も相当な淫乱である。ヤリマン仲間として由貴とつるみ、女を売り物にすることにも
抵抗がない。二人で男漁りや援交に臨むことも珍しくなかった。

『OK、わかった。それじゃ明日また学校でよろしくね』
「うん、それじゃあまた明日ね。バイバイ」

ピッと小さな音が鳴り、電話が切れた。

由貴は知らない。かつて女を遊郭などに売った者や、男に商売女を紹介する仲介業者を
「女衒(ぜげん)」と呼ぶことを。

出会い系サイトで売買春のために男女を紹介する――この言葉が生きていた頃とは大き
く形態が違うが、行為はまさに女衒そのものである。

そんな言葉も意味も知らぬまま、まだ高校一年生に過ぎぬ小娘でも、顔が見えぬが故に
女衒の真似事は果たせていた。

時代は変われど男が女を求める性のシステムは変わらない。しかし現代では、ネットに
よって肥大化した匿名性が幸い(災い?)し、故にこそ大の大人を簡単に手玉に取ること
など、誰にでもできてしまう。"現代の女衒"はそれが大きな特徴だった。

それどころか随分と手慣れた様子を見る限り、つい最近になって興味本位から手を染め
てしまった――とは到底考えられないだろう。中学の頃から手を出していたことは容易に
想像がつく。

自分の身体と魅力、そして技巧を駆使して男の性欲と快感を貪る淫らな十代の宴は、ま
だまだ始まったばかりである。






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