シチュエーション
![]() 私の名は神道麗奈。 かの神道財閥の令嬢にして学園一の知力と運動神経を持つ才女にして、他を圧倒する完璧な美貌まで兼ね備えた、神が気紛れに生み出したとしか思えない、至高の存在… あぁ…自分で自分が恨めしい… 午前八時、学園前、私はいつもの様にリムジンから颯爽と現われた。 「おい、見ろよ…」 「朝からついてる〜」 「あぁ…いつ見ても美しい…」 通学中の愚民供が足を止め、私に対する尊敬のまなざしと称賛の言葉をかける。 私が歩き出すと、まるでモーセが海を割るが如く、愚民供が学園までの道程を開ける。 「し、神道先輩おはようございます!」 まぁ!なんてこと…恐れ多くも愚民が私に話しかけるなんて… 「ええ。ごきげんよう」 しかし、慈悲深い私は愚民に与えるには勿体ないぐらいの言葉をくれてやる。 「せ、先輩が…ぐはぁ!!」 愚民は下品な声を上げて、倒れこんでしまった。 あぁ…美しいとは罪ね… 存在そのものが宇宙が生み出した神秘のような私に欠点や悩みなど存在しない。 つい、この前まで… 「おはよ!神道さん!」 こいつが現われるまでは。 この男の名は斎藤祐樹。 私の輝かしき人生に唯一の汚点を付けた男。 忌々しい。憎しみで人が殺せるなら、私はこの男をとっくに墓石の下に送り込んでいただろう。 「あら。斎藤君、おはよう」 クソが。朝からこいつに話しかけられるなんて、最悪だ。 「もうすぐで中間テストだね。神道さんの調子はどう?」 「まずまずと言ったところかしら。斎藤君は?」 「僕?僕は全然駄目だよ。部活が忙しくて。それに、神道さんみたいに真面目じゃないし」 それは私に対するイヤミか?そうなのか? 「前回は学年一だったじゃない。今回も大丈夫よ」 心にもない言葉を吐いて更に気分が悪くなる。 さっさと私の視界から消えてくれ。 「ありがとう。でも前回は偶然みたいなものだったし、今回は神道さんにはかなわないよ」 白々しい。上っ面だけで内心では私を馬鹿にしてるに決まっている。 「そう?それなら私も本気を出そうかしら」 「あはは。お手柔らかに。それじゃあ先に行くね」 斎藤はそう言い残し走って行った。 願わくばそこで転けて死ね。 ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() |