等価交換
シチュエーション


「ねぇ、見せてよ」
「は?今なんつった?」
「ねぇ、アンタの…………見せてって言ったのよ!」
「へ、……はぁ?」

言いにくそうに、俺の幼馴染で腐女子の由耶(ゆや)がそういった。
手にはシャーペンを持ち、机の上にはやばそうなBL原稿が散らばっている。
俺はというと、由耶の部屋には毎週、週刊少年漫画を読みに来ていた。
借りればいいんだけどさ、重いよな、雑誌って。という面倒、もとい正当な理由。

「やっぱり本物を見ないと、リアリティが書けないって気が付いたのよ!」
「なんだよその理屈、やだよ」
「ほらほら〜、男は見せあいっことかしてるんでしょ、大きさとか競い合ってるんでしょ!それで……」
「なんだよ、そのマンガみたいな妄想」
その先の妄想は、はっきり言って聞きたくないので、言葉をかぶせる。
「さぁ、男なんだから、ばばーんと見せなさいよ、上半身はよく見せてるじゃない!」
「ちょ、上半身と下半身は全く違うだろ!」

よく、クロッキーさせてくれと言われ、いろんな角度から上半身を素描されたが、どんなシーンに使われているかは考えたくもない。
ぐいっと、まるでキスでも誘うように由耶は体と顔を近づけてくる。
やばい。
今の状況でもやばいのに、由耶の前で下半身丸出しになんかしたら、俺は……絶対、勃つ。
好きな女に見つめられるなんて、視姦プレイというか拷問だ。

由耶は外見に頓着しない、いわゆるモサオタというか猛者オタというか。
だが、近くでよく見ると、可愛いく見えるのは惚れた弱みじゃないと断言できる。
オタク趣味に使うお金の十分の一でもファッションに使ったら、クラスで由耶をバカにしてる連中もびっくりするだろう。
由耶にいったら、「はん!自分にお金使うぐらいだったら愛俺の初回限定特捜版に…ry」とBLについて熱く語りだしたので、俺はその話題をそれ以来振ってない。

「じゃ、じゃあ。お前がおっぱい見せてくれるなら考えてもいい」

目視したところ、D近くはある胸が……じゃなかった、こんな無茶振りしたら、さすがの由耶もあきらめるだろうって軽い気持ちだった。
由耶は怒り出すだろうと思ってた。それでこの会話も終わると思ってた……だが、俺の耳に聞こえたのは幻聴か。

「……わ、私の胸見たいの?」

もしかして、脈ありですか?
スゲー、真っ赤になって、胸を両腕で隠して恥ずかしがってる。
なんだ、これ、スゲー言ったこっちが恥ずかしいじゃないか。
っていうか、本当に見たいけど。むしろ揉みしだきたいんだけど。
という本音をストレートに言うわけにもいかず、かといって、この状況で冗談だよと撤回するもったいないこともしたくない。

「と、等価交換ってやつだろ」

由耶の好きな某漫画のセリフをすかさず言ってみた。びくり、と由耶の体が震える。何か考えているようだ。
時計の針の進む音が、やけに大きく聞こえる。
由耶の答えは?






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