(浮かんでいくんだ)
みえないガラス板にかこまれた水中で
魔女のしるしにおびえて きみの顔だけ覚えて瓦礫のあいだを泳いでゆくんだ
ヤーヤーと聞こえるかん声が どうかぼくを殺すものでありませんようにと
ただ ただただぼくは願い 途中で転んだ
ぼくはお辞儀もせず ただ開幕のベルがじりじりとうなった
ベルの音はあまりに煩く その音の翳にぼくは歪んだ
(うまってゆくんだ)
空気のような水がぼくを砂礫に沈めてゆく
そしてそのまま透明な膜がぼくを包んで ごぼごぼと音をたてながら殺してゆくんだ
さらさらと聞こえる歌声は どうかぼくの大切なきみのものであってほしいと
ただ ただただぼくは最期に願うことにした
だれの喝采もなくカーテンフォール 閉幕はやってきた
それはあまりに静かで それきりぼくは終わった