呼吸さえ聞こえないしずかな市街地で
まほろばが姿と質量とを消したあとの話をしよう
蜃気楼の王国、そのすべてがぼくの恋し愛したものだけれど
もちろん誰も、そしてあなたも
ここへは帰ってこない
そんなぼくが
もしもあなたに今までの色々なことへの言い訳をできるとして
後悔の緑色に染まった意識の片隅のぼくの手のひらの上で
声をちゃんと出すことができるのだろうか
薄い水滴の膜で覆われたまま凍った眼には
どんな魔法も解き明かす理性が光る
あなたが諦めたように笑うかも知れない、それが
ほんとうに怖いんだ
嗚咽など聞こえないしずかなあなたと
あなたの支配した永遠が終ったあとの話をしよう
こぼれた目眩、そのすべてがあなたとの諸々のことだけれど
もちろん誰も、そしてあなたも
ここへは戻ってこない
そんなぼくの
あなたがもしも途方もない現実の只中で力尽きて倒れたとして
絶望の青色に染まった本能の片端のぼくの手のひらの上で
抱き起こしてやることができるのだろうか
甘い過去の日差しの色に目を奪われたまま
全部が全部元に還ることを夢想する
ただ立ちつくしているだけなんて、それが一番に
ほんとうに怖いんだ