知らない嘘も無慈悲な涙も
すべてはあなたのためにあった

もう一度ふたり産まれたなら
海じゃなく心の隔たりが見えただろうかと思ってしまう、思わなくていい
裸にされてしまう頭で考えなくていい
毛布も額も何もかもがあたたかすぎる
たやすく壊れてしまえたらと思ってしまう、思わなくていい
とろけるような涙なんてぼくにはふさわしくなかった

爪が折れたゆびさきの在りかに困る
触れてもその先にあなただけしかいないと、解りきっていたせいだった
この生はいつか海に沈む
どちらがより早くに難破船を視界にかすめるだろう
ゆびさきがあなたにたどり着くはるか未来のこと

見るも無残に現実的でおかしな夜が今日過ぎていってしまっても、賢い歴史書は何も感じない
愚かな理由や恋は外へ逃げない
ひとりだけでよかったのに、いつのまにか、西方がうす暗い夜あけ
ふたり知っていた

汚された血もただここに居るぼくも
すべてはあなたのためにあった