栗鼠が尾を忘れていくようには私のことを忘れないでほしい
理解をこえた範疇のことをどうか、だれかれなしに喋らないで
円形の、悪天候のドームのなかで、落としたものは何か
食べてしまえたらいいのに、いらないものを指の数だけ
ああ何かが心音を伝えてくる
ルシフェルの仄暗い夜明けに包まれて、あなたが今日も動かす
はじめての回帰に、幾らかの感情を
言ってしまえばいいことが、せまい胸のなか以外にも溢れていた
聞いてほしいことがあると二つの目が、二十の指が、二百の本が教えてくる
手伝いなどは必要ないから、端正に静かな夜をくれ
言いそびれたことに注視するのが、私の仕事ではないはずだからだ
ルピナスの種を蒔くのを終えて、醜い思考を抱えて、ただただそう思った
ユートピアは心に巣食っている、どこでもなくどこにもないのだ
目覚めたのか目を閉じたのか判らない、但しどれもあなたのことを
仮面はとても清冽のようで、いつも仄明るくて、未完成の交響曲がまだあったはずだと思い出させる
楽なほうへと考えるばかりの私の前だけで、似合わない運命論を口ずさんで、窓の端で笑う
冷めた夜に生きはじめたものが、三角錐の闇をまとって影を現わす
眩暈は暗がりでこそ恐ろしい
手の触れる場所にだれかが待っているよと魔術を呼びこむ
意識が摩天楼をも焦がすような熱を持って、秋を葬送する曲はそれらを奪っていく
雨だれをこぼさずにいれば猫のひげにもウサギの足にも、ソロどころか出番もない
いつまで居座り続けるのだろう金星に投影された夜に
だれかが窓の外を通りかかっては、動かない天蓋をみやり蒸気をくゆらせては、どこかへといくが
けれども、だれもが死んでいる夜だから