暑さで熱を持ったあなたの爪先は夜明けの目の色のようだ
なくしてしまって、わすれてしまって、もうだれにも知られることのないはずだった
卵の形をしている、わたしの心が巡らす南、さいはての地熱のようだ
野原には兎もねずみもいない
ただ血液を埋めつくすように心がながれだすだけの夜を夢にみる
明度がしぜんと溶けだしていくような、この心地では
西の星座も見えない
神経を毒する砂糖の甘さにはついていけなくても
塗り込めた事情をそのままに、軽やかに、ふり返ってあげられるのは、まるで
出会った頃に描いた展望を思いだすから
あなたのために、死ぬであろう明日にさえも笑うことができるはずだ
弄するのに、あなたにはなにもいらない
歌う爪先があればいい
あげた前髪の額の奥にだれが息を殺していたとして、照らしだしはしない
吸いこまれるほどに暗い夜に、言葉だけで目を覚まさないように
似てもいない顔で、面影を見張らなくてはいけない
冷めない裸足、肌に密室は温くなる
笑むとは鮮やかな象りのことだから
もうそれがあればいい
わたしには還る島はあるが、どんな時にだって行先等はない
らんらんと光りつづけるために、と心臓に火を点す日々は彼方に過ぎてしまったから
兎の背をなでる、あなたは夜気を遠くにやる
凍えそうにもない河の岸辺で
とまりそうもない、この温かさもどうか殺してほしい
額のなかを跳びだして
電磁波を湛えた海を渡り土の墓所にては嘆かず過ぎて、星と線が転がる荒れ野をあなたは踏みつけて立っている
霧雨に遮られることもない見晴らしのいい、その場所からわたしがみえますか
瑠璃、瑠璃、深刻な瑠璃紺、雷鳥が死んだ、わたしたちを挟む夜が来る
はりつめた長い糸をたわますために
ずっと探していた、とは言わないのだ
だんだんとやってくる、骨のなかを通って近づいてくる熱の流れを断ち切り、わたしは……そしてあなたでさえも