はじまりは、雨に沈んだ町角を通りすぎて
取替えたばかりの骨を更に凍えさせた日に
野のはてで、薊色の血液が染みついた襟を
解いた糸と挿した針とで繕った、その時

私が墜とした鋏と螺子を、あなたが拾った
ひとりで旋回を続けていただけの心と生活
その扉に鍵を挿しこみ、この錆びた機関を
詳らかにしてしまう魔法使いを追いかける

はじまりは、リラを植えた魔法をたずねて
騒がしい呼吸も雨晒しの胸も無視したまま
言葉を頼りに、銀河を道標に、鳩を案内に
血の通わない身体で巡り巡った、この時

眠りさえ、この鼓動を殺すことはできない
きしむ踵や肘が、たとえ外れてしまっても
すべてを抑えこみ巡り終えたマグノリアを
紫陽花にしてしまう魔法使いを追いかける