それは指先を凍らせ、あなたの存在を梳っていく
乾いた毛先が背中を、頬を、こうして打つけれど
時計を壊してきてしまった
だから、もう埋まった銃弾を取りだすことはできない
星は墜ちない、ここは風化しない、傷痕は消えない
いつか誰かが、憐れな燃えかすを見つけるだろう
金緑のように移ろいゆく天蓋の真下で、耳をすました
いつか誰かが、溢れさせた嘆きを覚えている
鏡色の匙ですくいあげた水は、あなたの姿を歪める
荒れはてた棘の森も、我が家を覆った青い氷河も
やがては動きを止めていった
それなら、記憶が次々に断絶されていくのはなぜだろう
海は枯れない、鉄塔は錆びない、まぼろしは孵らない
いつか誰かが、焦れた骨の化石を見つけるだろう
真珠色の丘に息づくものはなく、ただ灰と風だけが吹いていた
いつか誰かが、強く抱いた祈りを覚えている