マルアイのえっちぃSSです。
18歳未満の方及び高校生以下の方は閲覧をご遠慮下さい。
















































何故だろう。いくら考えてみても、理由なんかあるとは思えない。
どれだけ問いかけても、満足のいく答えなんか出ない。
けれどその行為を、止めることは出来なかった。
 
『檻の中』
 
薄暗い部屋には仄かなランプが一つ、申し訳程度に揺れている。
その前に跪いて随分と長い間、アイクは自らの額をごりごりと床にこすり付けていた。
いや、その表現は少しだけ違う。
確かにランプの前に居はすれど、跪く相手はそんな暖かく柔らかなものなんかじゃない。
「どうしたの?もう行っていいんだよ?」
冷たく響く声は、折角灯っているささやかな光さえ、アイクの心から消し去ってしまいそうだ。
土足で歩く室内は当然の様に砂礫が床に居座って、そこにこすり付けられる額からは鮮血が流れる。
何故こんなことをしているのだろう。そう自問する。
だが一向に答えが出る気配は無い。
自分でも自分の行動に説明がつかない。
どうしてこんなことになったのか見当すら付かないまま、アイクはひたすらに自分を抱いてくれと懇願していた。
 
初めて彼に抱かれたのがいったいどういう経緯だったか定かではない。
互いに酒を飲み交わし、ほろ酔いを少し過ぎた所で、初めてアイクは自分の体がベルトで固定されていることに気付いた。
最初は何かの冗談かと思った。
だが、楽しそうに笑いながら胸の突起を吸う様や。
体中至る所を奇妙な手つきで這い回る指。
それらを見たとき、今まさに行われている行為が、どういう意味合いの物なのかを理解した。
同時に感じた底無しの恐怖を、的確に言い表せる言葉を、アイクは持っていない。
兎に角解っているのは只一つ。
目の前が真っ暗になるような恐怖と絶望と混乱の中で、アイクは親友と思っていた男に抱かれたのだ。
それから二度三度同じ様にして抱かれ、いつしか抵抗する気力すら沸かなくなった。
求められれば応え、嬲られれば容易に体は反応した。
声を抑える気力すら削がれ、自分より華奢な男の肩にしがみついて、涙ながらに腰を振ることも少なくなかった。
背徳感にも似た劣情と、惨めなほど快楽を求める欲望に支配され、アイクの心はボロボロだった。
まるで最初から、自分は彼に抱かれる為に存在していたのではないか?なんて、愚かで意味の無い考えにさえ至って。
初めてアイクは、自分がどれだけ病んでしまっているかに気付いた。
このままではいけない。
このまま、彼の欲望の通りに抱かれるだけの存在でしかないなど、自分自身が許せない。
そう思ってようやく勇気を振り絞って。
「もうお前には抱かれない」と宣言した結果が、今現在の状態だ。
今まで反抗した事の無かった相手である。
ひょっとしたら怒られでもするか。もしくはまた痛めつけられるだろうか。
純粋な力勝負なら兎も角、剣を持った彼を相手にするのは、腕に覚えのあるアイクでも自信が無い。
ならば剣を出す前に押さえてしまおうか。
そんな事を考えていたアイクに、彼が掛けた言葉は、とても意外なものだった。
「あっそう。じゃあもう君、いらないよ」
空と同じ澄み切った色の瞳が、とんでもない冷たさをたたえて、揺ぎ無くこちらを見ていた。
その顔には一分の後悔も未練もなくて、むしろ完全に興味を失った様に、なんの感情も浮かびはしない。
ああ、自分は彼に飽きられたのだ。
彼に抱かれない自分には、価値が無いのだ。
それこそ、そんな簡単にいらないといわれてしまうほど。
なんの未練も抱かせない程に。
あんなにも冷たい目を向けられてしまうほどに。
そう思った時、アイクは自分でもわけが解らないまま、床に突っ伏して頭を下げていた。
「すまん!今のは無かったことにしてくれ!!」
あらん限りの声で叫んだつもりだったが、実際に喉から出たのはかすれ声だけ。
全身から嫌な汗が噴出し、胃がねじ切れそうに重くなり。
気付けばみっともなくボロボロと涙を流していた。
「聞こえなかったの?君、いらないの。僕にはもう君は全然必要ないの。解った?」
滔々と諭すように、優しく教えるような口調でで、毒と棘に満ちた言葉を、彼はアイクに浴びせた。
それでもアイクはその場から動こうとはしなかった。
 
「ねぇ、いい加減止めてくれない?」
痺れを切らしたように発する声には、この数時間に放ったどの声よりも感情を込めた。
怒りや苛立ちと呼ばれる感情を。
その声がまるで電流でも流したかのように、アイクの体は大きく震え、脊髄反射の様な速さで頭が上がる。
普段なら朴訥で、一見落ち着きのある顔が、涙と苦しみでボロボロだ。
生気を失った目を見て、自然、自分の顔がほころぶのが解る。
カタカタと小刻みに震える肩にそっと手を置いて、細い顎のラインを乱暴に掴んで目を合わさせて。
「今度は君が望んだんだよ…可愛いアイク?」
酷く満足げな表情で、マルスは微笑んだ。
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友人との絵茶中にリクエストされ、勢いで30分くらいで仕上げたモノに加筆したモノです。
確かSMの話で、「体傷つけるより精神的に苛める方が好み」とか「追い詰められたアイク萌」とか言ってた弊害だと思います。
なんかもう色々酷すぎてごめんなさい。すっごく楽しかったです!(やりきった笑顔で