拍手第一弾でした。
アイマル基本で女体化だったりふぉもだったりします。注意。
 
 
 
 
 
 
『コノツキアカリノシタデ』
 
窓から差し込む月灯りに起こされて、アイクはそっと身を起こす。
珍しく腕枕をしてやった事を忘れた彼の腕から、マルスの頭が落ちた。
「…っ」
しまった、と焦るが、幸い熟睡した彼女は目を覚ます事は無かった。
そっと顔を覗き込む。涙の跡がくっきりと残った頬。泣きはらした瞼。
強がりな彼女の弱音を聞き出すのは難しい。
幼い頃から一人で頑張って来たせいか、他人に心配を掛ける事を極端に嫌う。
だから何があっても「大丈夫」と笑うばかりだ。
そんな彼女が自分に心を許し、涙を見せてくれるようになったのはつい最近の事。
だが、その内容までは、彼女の口から語られることは無い。
いつだって自分の中に押しとどめて、押し隠して、けれども忘れられずに抱えているばかりだ。
かつては、涙も見せずに気丈に振舞われていた頃もあったのだ。
その頃から見れば、泣き場所になれただけまだ負担を軽くしてやれているだろう。
それを不満に思うのは、身勝手だろうか。望みすぎだろうか。
本当は悩みを全て取り払ってやりたい。何も痛みの無い生活をさせたい。
笑っていてくれるだけで、こんなにも幸せをもらえるのに。
この国の事、政事の類のわからない自分には、彼女を真に助ける事など出来ないのだ。
 
けれど。
自分の前でだけ、見せる涙。縋るような危なげな手付き。
普段の強い王の姿からは想像も付かない儚さで、アイクの胸の中で震えていた彼女。
涙を見せる場所に、マルスが俺を選ぶなら。
その為に傍に居るだけで、今はいい。
 
「いつか、…必ず守るから」
全てから。
そう呟いて、まだ残る微かな涙を、そっと指で拭った。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
『日常風景』
 
「可愛いな」
いつも通りの真面目な顔でそう評される。
その顔つきの通り、至極真面目な発言なのだろう。彼にとっては。
その言葉は子供の頃から散々言われているので、云われてもそこまで抵抗を感じない。
勿論恥ずかしくはあるけれど。
だが、年下の彼氏に言われて素直に受け取れる程、簡単な言葉とは思えなかった。
「あのね、一応僕の方が年上なのだし、そう何度も可愛いといわれるのは抵抗があるよ」
あまりに何度も云われて、流石に気恥ずかしくなったマルスはふるふると手を振る。
だが、そんなマルスの細い腕をひょいと捕まえて、アイクは云った。
 
「じゃあ、綺麗だ」
 
元々口が上手い方ではなかったが、順応力もあるアイクだ。
照れが無い分こちらが不利に決まっている。
顔が赤くなった時点で負けだなと、マルスは苦笑して下を向いた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
『悩み事』
 
「なぁ、俺ずっと悩んでることが有るんだが」
「うん、なんだいアイク」
いつになく真剣な悩み声を上げるルームメイトに、マルスはにこやかに聞いた。
夕食も終わり、各自自由時間を楽しんでいる頃。
アイクは早めの風呂を済まして豪快に髪を乾かしており、マルスはベッドに腰掛けて本を読んでいた。
部屋の中央に置かれた衝立の向こうから聞こえた言葉に、本を置いてそちら側へ回る。
「僕に聞かせて問題ないことなら、何でも聞くよ?」
そういって微笑む。
その笑顔に促されて「お前の体の事なんだが…」と切り出すと、マルスの笑顔が少しひきつった。
「……?」
「あ、いや、続けて?」
怪訝そうに覗き込まれて、マルスはなんでもないと手を振った。
そうか、と答えたアイクは、実に真剣そのものな顔で云う。
 
「実は、最近気付いたんだが…お前の胸が膨らんでいる様にみえるんだ…」
「へ?」
「しかもほそっこいし…むしろ女に見える…」
「はぁ…」
「これは、その、…大会中も支障をきたすと思って、…聞きたいんだが。」
そう告げるアイクの目は、チラチラと自分を見ている。
これは、いよいよばれたかな?
そう思っても慌てる気持ちが起きないのは、多分ばれたくないという気持ちが前ほどないのだろう。
もしかしたら、知って貰いたいなんて、そんな事を思ってやしないだろうか。
そんな馬鹿な事。でも、アイクなら自分が女性と知ったところで悪いようにはしないだろう。
大会が始まって数週、既にその信頼はマルスの中に築かれていた。
もしも、真実を言い当てられたなら。
隠さずに全てを話そう。
そう決意したマルスは、アイクに先を促した。
僅かな緊張の中、アイクはそっと重い口を開いた。
 
「なぁもしかして……俺は目が悪いのか!?」
「……悪いのは頭だよアイク」
アイクの「何故!?」という問いは、勿論答えを貰えなかった。


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ボケ同士の微妙な関係を描こうとして失敗した様子がありありと…っ!