拍手第二弾でした。
お題は「創作者さんに50未満のお題」にお借りしてます。
基本的にアイマルでたまにマルアイだったり、女体化だったり寮設定だったりします。
 
 
 
 
 
『溺愛・01 猫かわいがり』
 
「猫はないんだな。」
そう呟くアイクを振り返る。
藍色のパサパサとした髪から『にょーん』と伸びるウサミミ。
武骨で無愛想なイメージの彼がつけると、こう云っては申し訳ないが、驚くほど滑稽だ。
「猫耳が良かったのかい?」
どちらも可愛いと思うよ?と続けると、しかめっ面で首を振った。
振られる首の動きに合わせてふるふると揺れるウサミミ。真っ白でもこもこで、やはり可愛いと思う。
白い毛の先端を思わず追う目線に気付いて、訂正するようにアイクは、マルスの肩を掴んで向き直らせた。
「俺がつけるんじゃない、お前の話だ。」
「?僕?…うーん、実は元々結構足が速いから…ソレをつけると落ちてしまいそうで怖いんだよね…」
最後の切り札の発動でさえ、常に足場を確認しなければ出来ないマルスだ。
元々身軽で上背の割に体重の軽い彼が、ウサミミ一つで墜落死の危機に陥るのは致仕方有るまい。
「いや、そういう事じゃなくてだな…」
そのまま戦略の話になりそうなマルスの興味を引き戻そうと、必死に否定の言葉を呟く。
が、既に時遅し。
彼の口からは体重別トーナメントだとか、ハンデ制だとか、そういったアイディアが生まれ出る。
「そうなると…君はどちらかといえば重量級だから…キャプテン・ファルコンとかクッパとかと一緒に…。」
「そうじゃなくて!」
荒げた声にびっくりしたのか、きょとんとした目が見返してくる。
その青に映る自分が驚くほど真剣そのもので、いっそ笑えた。
「…うん?」
すぐに平静に戻ってにこやかに先を促すマルス。
余裕のある態度。それが年齢の差によるものと解っていても、少しばかりむっとしてしまう。
「だから…お前が付けたら…可愛いだろうと思ってだな…。」
そう云いながらマルスの空色の頭に、ネコミミを思い描く。
ぴんと立った耳。
触れると少し縮こまったり。
撫でるとぴくくっと震えたり。
それはそれは、可愛いだろうと思う。
だが、そんな事を思っていたアイクの頭を、マルスの手がふわりと撫でた。
「うん、凄く可愛いと思うよ!君にネコミミ!!」
「いや、だから、俺じゃなくて…。」
何処からどう見てもお前の方が可愛いだろう!
そう云おうとしたが「でもウサミミも可愛いよ。」と微笑まれ。
結局その笑顔にアイクは、何も云えずに黙って頬を染めた。
 
 
「あいつら二人きりでどっか行ってくれないかな…。」
「同感です…。」
乱闘のことなど放り出して、互いを可愛いと言い合う二人。
そんな解りやすい彼らに、対戦相手のリンクとピットは、ため息をつくばかりだった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
『溺愛・02 上目遣い』
 
折しもそれは戦闘終了後。
記念撮影をするからという理由で右手袋に引き止められ、その日戦った4人は横一列に並んだ。
ゼルダとスネーク、キャプテン・ファルコン。そしてアイク。
写真など撮るのも撮られるのも慣れないアイクは、いつもの仏頂面でゼルダの横に立つ。
「はい、チーズ!」
何故其処で発酵乳製品の製品名を叫ぶのだろう。
そんな事を考えながら儀式の様なそれを終えた時である。
 
「貴方って、思った程大きくなかったのね。」
右下あたりから聞こえた声に反応できず、最初はどういう意味だろうと考え込んでしまった。
右隣に立つゼルダの顔を見る。
彼女の言葉が自分の身長を表すものだと知り、アイクの表情は更に険しいものになる。
それを見て慌ててゼルダは手を振って云った。
「あ、気を悪くしたらごめんなさい。もっと背が高い印象だったから…。」
「そういわれればそうだな。」
「ふーむ?確かに!」
反論しようとして、いつの間にか後ろから背を比べる二人の男に肯定され、そのタイミングを失う。
なるほど、確かにこの二人よりは背は低い。しかし、だ。
「一般的な平均値から外れているとは思わんのだが…。」
背比べに忙しいデカブツ二人を無視して、むっとした表情でそう言い返す。
確かに望んでいた程には伸びなかったのは事実だが、小さいといわれるほどではないと思っていた。
だが。
「ごめんなさい…。その、マルスと並ぶと…驚くというか…。」
躊躇いがちにそういわれて、ぐっと言葉に詰まってしまう。
確かにマルスと並ぶと、その背丈は殆ど変わらない。
自分の方が高いと無言の主張をしているし、マルスも自分を立ててくれはする、が。
実際の所、自分の方が髪を立てている分、実丈は小さいのではないかと思っている。
別に外見に拘るタチではないし、背が高いか低いかで自分の価値が決まるとは思わない。
思わない、が。
それでも恋人より背が低いかも知れないというのは、男としてかなり大きな問題だった。
「オゥ、それじゃあアレやってもらえないじゃないか。」
「確かにそうだな。アレはいいぞ、性欲を持て余す。」
二人の男は邪な笑みを浮かべて囃し立てる。
どうせお前らは常に持て余し続けてるじゃないかと思わなくもないが、アイクとて男だ。
そんな顔とタイミングで『アレ』と云われて気にならない訳がない。
「…アレとはなんだ?俺には出来ないことなのか?」
そう尋ねてみると、ニヤニヤと笑いながら二人は顔を見合わせて。
「よし、まず少し不安げな顔をしろ。」
「ふ、ふあんげ…?解った。」
どうすればそんな顔になるのかは解らない。考えた末に眉を少し寄せた。
「オーケィ、それから少し顎を引くんだ。」
何故かは解らないが、とにかく云われたとおりにする。
「「それだ!そのまま目線だけこっちを向け!!」」
興奮した声にせかされて、訳の解らないまま目線だけでなんとか背の高い二人を見上げた。
形良く歪められた眉。不安げに見上げる青い瞳。
事態が把握出来ないのだろう、演技ではなく本当に困惑した表情。
はぁ、と息を漏らしてアイクは云った。
「これでいいか…?正直、アンタらがでか過ぎて辛いんだが…。」
「それだ!右手!!カメラを寄越せ!!」
「エクセレント!!」
何が、と聞く暇もなく写真を撮られ、仕方無しにゼルダに説明を求めると呆れたような顔を向けられる。
「だから、つまり…その、あんなふうに見上げられたら可愛い、って事じゃないかしら?」
「そうなのか…。」
可愛い仕草だったなら、それは勿論自分がやったら笑いの種だろう。
だからあいつらは写真まで撮っていたのか。納得だ。
そんなに可愛いなら、今度マルスを椅子にでも座らせてやってもらおう。
そう云ったら、ゼルダは何故か苦笑してため息をついた。
 
 
その時撮られた写真が高値で取引されて居るのが別のお話なら。
取引を一目見ただけで理解したマルスに、二人が切り刻まれたのもまた別のお話。

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より一層ボケに磨きが掛かった感が否めません。
私は彼らをなんだと思っているんだろう…。