ドラマCDネタバレ2*10(2+10?)になります。
未聴の方はお気をつけ下さい。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
先にお断りしておきますが、私は頭悪い上に鈍い残念な大人な為、
2Gの病気についての知識や理解度はネットや医学書で調べられる程度しかありません。
不快に思われた方がいらっしゃいましたら心から謝ります。
それでは、いきまーす。
 
 
 
 
 
時々訪れるその苦しさが、どうしようもないのは解っていた。
薬やら気の持ちようやらで軽減はされるかも知れない。
けれど、結局そんなものも一時しのぎだ。
長い目で見れば十分に完治するものだと思う。
でも、実際たった今この瞬間に訪れる発作的なそれに対しては、あまりに無力だ。
 
『フタリノ夜』
 
薄暗い部屋に荒い息が響く。
窓の外はとっくに綺麗な星空で、細い月が存在を主張し過ぎないように浮かぶ。
淡い色で幾何学模様が刺繍されたベッドに腰掛けて、自嘲に近い笑みを浮かべて辻は一人ごちた。
「あ〜…タルい…」
悪態をつくのは自分を落ち着ける為の一つの手段みたいなものだ。
いつ現れるか解らないこの発作を、例えば恐れてみたり。
はたまた不安がってみたり。
そんな事をすればきっと自分は、家から一歩も出られなくなってしまうだろう。
そうすれば多分色々と面倒だ。
何より自分がそんな生活を受け入れがたい。
そんな自分を、受け入れがたい。
それでも、その方が楽だという思いが、いつまでも辻の頭を捕らえて離さない。
やばいかな?と思う。
反面、すぐ治まるからと宥める声が自分の中から聞こえる。
そんな相反する言葉がぐるぐると響き、辻はベッドにごろりと横になった。
象牙色の壁紙の張られた天井。鈍い金色のシャンデリアが目に入る。
窓も大きく取られているし、先ほどちらりと覗いた風呂も結城が絶句する程度には広かった。
急遽取ったにしては、中々の部屋だ。
そう思いながら辻は、こんな所で結城の使うシャワーの音を聞いている理由を思い返していた。

「作戦会議だよ」
などという意味不明な名目で関東某所の某ホテルに呼ばれたのは余りに急だった。
自分だけじゃない、結城もわざわざ京都から呼びつけられていた。
最も、面倒だという態度を隠す気もない自分と違い、彼は嬉々として物部の誘いに応えていたのだが。
全く、他人事ながら難儀な性格だと思う。
議題は今後の予定の確認や、現在の他セレソンの動向について。
物部さんが接触したという4の事など、作戦会議というだけあってそれなりに中身は充実していて。
気付けばとっくに夜も更けていた。
 
「じゃあ私は帰るから」
一通り仕事を終えた、という満足げな表情で、物部さんはヘリで空に消えた。
後に残されたのは自分と結城だけである。
別に自分だけならリムジンを呼んで帰っても良い。
だが、時間は既に深夜である。京都在住の彼に帰宅する術はない。
案の定オロオロと路頭に迷う彼を放って帰れるほど、辻は人でなしではなかった。
「仕方ないからホテルでも取ろう」
そう声を掛けると、目を丸くしてきょとんとしていた。
普段行動を共にしている彼なら、あっさり路上に捨て置いて自分だけ高級ホテルにでも泊まるんだろう。
そんな扱いに慣れきった彼の事だ、それは勿論驚きもするだろうな。
などとつらつらと考えながら、戸惑う結城を置いてさっさとチェックインした。
 
「あいにくですが…」
と最大限まで眉根を寄せて困った顔を作るのはカウンターの女性。
どうやら今夜泊まれる部屋はツインの一部屋のみらしい。
折りしも世間は秋の大連休。むしろ一部屋でも空いていた事が驚きだ。
二人とも大の男とはいえ細身同士。ツインでも泊まれない事はないだろう。
何より日付も変わろうというこの時間に、他のホテルを探して出歩くのは得策ではない。
諦めて「じゃあそこで」といったのが今から30分ほど前。
しきりに金の事を気にする結城を丸め込んで風呂に押し込んで。
ウエルカムドリンクとして用意されたシャンパンを飲んでいた時だ。
不意に手の痺れに気付いて、辻はしまったと思った。
ここの所忙しかったからか。
はたまたセレソンとしての活動だのなんだのと考えすぎたせいか。
時折波のようにやってきては辻を悩ますそれがやってきた。
よりによって、この時に。
 
「お風呂…上がったけど…」
声を掛けても返事は無かった。
もう寝たのだろうか、見たところだいぶ疲れているようだったけど。
そう思って寝室へ向かう。
安価なビジネスホテルくらいしか泊まった事がない結城にとって、ツインとはいえ高級ホテルだ。
支払いは辻くんが勝手にやってくれてしまったけれど、せめて金額位は聞き出しておこう。
そう思って意気込んでいただけに拍子抜けだった。
と、ベッドの方を向いて。
思わず結城は息を呑んだ。
苦しそうに歪んだ顔にはうっすらと冷や汗が浮いている。
息は荒く上がり、白いリネンの皺がそれを掴む手に込められた力の強さをあらわしていた。
薄く開けた目でちらりとこちらを見た辻は、ふっと薄い笑みを漏らして。
「…見てんなよ」
と小さく呟いて目を閉じた。
時々訪れるというその苦しみが、どうしようもないのは知っていた。
薬やら気の持ちようやらで軽減はされるらしいと聞いた。
知識が全くないわけでもない程度には、メジャーな症状だと思う。
でも、実際たった今この瞬間に訪れる発作的なそれに対して、自分はあまりに無力だった。
ほんの少し躊躇って、それから。
ベッドの傍の床に腰を下ろして、握られた手をほどかせて、逆に握ってやる。
辻の手入れの行き届いた手は、一瞬だけびくりとして、それから強く握り返す。
長い爪が食い込むのを感じたけれど、結城は黙ってその手にもう一方の手を重ねた。
 
「…介護士つーか看護師じゃね?」
むしろナース、出来ればミニスカ制服つきでwなどという軽口を言う辻に、思わずため息が漏れる。
照れ隠しか何かだろうか、落ち着いたと思ったらすぐコレだ。
「別に、これくらい誰でもするよ…てゆうか辻君」
「…何?」
少しだけバツが悪そうにしながら聞き返す辻に、説教がましい顔で結城は言った。
「そういうのにお酒、良くないんでしょ?呑んじゃ駄目だよ!」
 
真剣な言い方に噴き出した辻が「年上っぽいなー」と笑うと、「年上だよ!」と返された。

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意味不明でごめんなさい。でもこの二人の微妙な距離感が好きです。
実は2GのドラマCDを聴いてすぐ思いついたんですが、頭パーンしすぎで書けてませんでした。
で、ブログに書くには長いかなーと思い、久しぶりにマトモに更新を…。

始まる前にも書きましたが、知識も経験も無いのでこんなんでほんとすみません。
こんなんじゃねーよ!というお叱りなどございましたら直しますので、遠慮なく仰って下さい!!

てゆうか私は辻君の爪が食い込むのが好き過ぎると思います。