きちんと挨拶をね?あなたと出会えたのだから。
隠すならあなたの唇
「そなたは鬼じゃ」
炎の向こうで姫が言う。憎悪に顔はどす黒く歪み、それでもなお変わることなく美しい。
「御免」
静かな声で彼は言う。
鳩尾をつかれて崩れ落ちた躯を抱きかかえ、振り返る。既に火が迫っていた。逃げられるだろうか。
もし逃げられるなら
これは夢です、お父さん。
「退屈だわ」
「しょうがない」
「もう少し気のきいたこと言えないの」
「おれが知るか」
だって雨の中ふたり
手を伸ばす 届かないけれど 祖父の恋した時間
ああもうさっきから鳴りっぱなしでうるさいったら
大体遅いのよ甘いのよあれだけで許してなんかあげないんだから
「もう!」
「今どこだ!」
D線上で、あなたとワルツを ― Walz on the Deadline.
くださいください 乞う声が聞こえて
「駄目ですか」
「駄目ですね」
「本当にですか」
「本当にです」
「くそうあのヤブ医者め!」
この体温のとき、あなたのてのひらがいつもより恋しい。
まるで傷口に静かに差しこまれるナイフのような
落ちるでなく沈むでなく。ただ、滑り落ちる。
ぽ―・・・ん 小石がとぶ
気がつけばそこは渦の中
「…巻き込まれた!!」
届かなかった悲鳴のかわりに
「三日寝つづけようやく目開けたと思ったら開口一番がそれかー!!」
白くてきれい 何てすてき
「誰だ砂糖と塩間違えたの!」
だって似てたんだ。
「あのなぁ」
「何よ」
「何で」
「どうして」
「「せっかくの休日にあんたと顔合わす羽目に」」
…ため息。
昔世界は単色だったの。
「それでどうなったの?」
神様の絵描き職人が絵の具箱を落としていったのよ。
だからあなたの瞳を知ることが出来る
あいでなく愛で泣く愛で無く
手をつなぎどこまでも
そんなものいらないから返してほしい
カッコいい金髪のカレシ
指からは血。刺したのは薔薇。同化してしまう。助けてと呼ぶのは私。
私の名はケガレ
一番初めに世界を見たモノ
だから世界の美しさを私だけが知っている
はやくかえりなさい。でないとおばけがたべにくる。
寝てたら夢見たんだ。会えた気がするのに覚えてない。どうしてかなあ。
「ただいま」
帰りを待って、欲しいのはその言葉
それじゃあね
格好をつけて去るんじゃないよ。納得いくわけないだろう。
「どこまでも追いかけるから覚悟しろ」
書いた時期…2002年12月ごろ?
チャット中、ノリと勢いだけで二時間かけて書ききった30のお題のログ(別名、高速劇場 / 笑)。30題完走、ということで恥をしのんで二年越しのアップ。