邂逅
試合を終えて控え室に戻る途中、アキは一人の人間を見た。
腰の近くまで伸ばした銀髪を束ねたその男は、壁にもたれかかって目を閉じている。側を通り過ぎようとした時、唐突に声を発せられた。
「いいデュエルだったな」
周りには誰もいない。こちらに向かって呼びかけたのかと足を止めて見やれば、男は少し顔を上げ目を合わせて言った。
「今度相手してもらいたいものだ」
新手の軟派だろうか。
そんな思いが頭をよぎる。だが、深い蒼をした瞳は単なる興味以外を示しているように見えた。
「私とデュエルすれば死ぬぞ」
「そんな事―」
肩をすくめる仕草は今まで見てきた他の人間と同じ、だが続く言葉は意表をついていた。
「―飽きるくらい体験している」
「まさか…」
「破滅の光というものを知っているか」
唐突に投げ掛けられた質問に首を振る。彼は「だろうな」と呟くと勝手に説明を始めた。
聞いた話は荒唐無稽でとても信じられたものではなかった。自分という存在がなければ。
「―倒した相手はそのまま炎の中に消えた。…ボクを育てた人だった」
その言葉を口にする時、表情が少しだけ揺らいだ気がした。それもつかの間の事で、また淡々と話し始める。
「破滅の光に操られていたとはいえ、結果として死に追いやったのだと思っている。それは背負わなければいけない事だ」
感情がないかのような話し方なのに、心に響くものがある。魔法のようだと、ふと思った。
「闘う事を止めはしない。逃げるだけでは何も得られないと…」
そこまで言って彼は首を振った。
「…つまらない事を言った。忘れてくれ」
肯定の返事をすれば良かったのだと思う。でも、口にしたのは別の言葉。
「ありがとう」
どうして言ったのかは分からない。目の前の相手も同じように思ったのか、目を瞠った。
「礼など言われる覚えはないが…」
続く言葉に頷くと、彼は微かに笑った。
エドっ子とアキちゃんって過去の状況とか(アキちゃんは過去に色々酷い目(所謂十代のような)に合って心を閉ざしたんだと勝手に信じてる)見た目とか似合うんじゃないかと思って書いてみました。今は反省している(棒読み)。
何はともあれ、エドっ子がナンパしているようにしか見えない事に書いてる途中で気付きました。でも、それもアリかもしれないと続行。今は反省(略)。まあ、アレです、ナンパというよりは、辛そうな所が放っておけず元気付けようとしただけなんです。そんな感じで。