なんちゃって連載 その3
事情を知った彼等は、当然ながら戸惑った様子だった。
「つまり、アンタは未来のアニキって事ッスか」
「そう」
翔の問いかけに鷹揚に頷いた人物は、彼の知っている『アニキ』と髪の色とか共通点は多いけれど、雰囲気が全く違う。そもそも未来から来たという発言自体がおかしい。
「そんなの信用出来ないッス」
「なら、何かお前達の事について話してやろうか」
「例えば?」
「翔のアニキ…はややこしいな、兄ちゃんはカイザーだろ。サイバードラゴンがエースで、あと…」
「あと、何ッスか?」
「…いや、何でもない」
思わずヘルカイザーだとか裏サイバー流だとか言いそうになったのを、十代は首を振って止めた。ややこしくなるだけだ。とりあえず話を切り替えようと、隼人の方を向く。
「隼人、お前の父ちゃんは示現流の使い手だよな。ちゃぶ台返しが得意で、一回この島にやって来た。あのデュエル、楽しかったぜ」
ガッチャ!とポーズを決められて、隼人は目を瞬かせる。その特徴的なポーズも驚いたが、自分と父親のデュエルはごく限られた人間しか見ていないはずだ。
「十代?十代なのか?」
「隼人君、だまされちゃいけないよ。それぐらい調べたら分かるッス」
どうにも信用されていない様子に、十代は頬をかいた。この手はあまり使いたくなかったが。
「隼人、初めての試験の時、終わったら皆で食べようとしてたプリンあっただろ」
いきなり話題を振られて、戸惑いながらも隼人が頷く。
「ああ。いつの間にか誰かに食べられてたんだな。ファラオが食べたんじゃないかって事になったけど」
「あれ、食ったのは翔とオレだ」
「本当なのか!?翔」
隼人に詰め寄られながら、翔が十代に向かって叫ぶ。
「ぎゃああ!なんで知ってるんスか!?」
「そりゃ、オレもその時一緒にいたからだよ。あの時は悪かったな、隼人」
悪戯っぽい笑顔は彼等の知っている『十代』にそっくりで。
「本当に…アニキなんスね」
「だから、さっきからそう言ってるだろ」
いい加減うんざりしつつ、それでも納得してもらった事に安堵して、十代は息をついた。
「それで、アニキはどこに行ったんスか?」
「そのアニキってのは昔のオレの事だよな。…さあ?」
「さあって」
「そもそも、なんでここにいるんだかもさっぱりだしな」
そう言って何故か照れ笑いをする十代に、翔が怒り出す。
「笑ってる場合じゃないッス!」
「そう言われても。ま、なんとかなるんじゃないか」
「なんとかなんないと思うんだな」
のん気な態度に隼人もさすがに呆れ顔だ。
「まあまあ、これまでもそうだったし。じたばたしても始まらないって」
二人の非難の視線をものともせず、十代は伸びと共に大きなあくびをした。
「…なんか落ち着いたら眠くなってきたな。そういや最近寝てなかったし。って事で話の続きは後な」
「え、ちょっ…」
「おやすみー」
そう言ってさっさと布団にもぐると、間を置かずに元気そうないびきが聞えてきた。マイペースというか脳天気というか。
「…間違いなくアニキッス」
「…だな」
翔と隼人は揃ってため息をついた。
二十代さんがひどくノー天気キャラになってしまいましたが、書いてて楽しかったです。