なんちゃって連載 その4

 事情を知った彼は、あまり理解出来ていない様子だった。
「うーん…」
『何か疑問でもある?』
「オレが二年前から来たっていうのはいいんだけど。なんで寮に誰もいないんだ?翔は?隼人は?皆はどうしたんだ?」
『そんな一度に聞かないでよ。えっと…翔ってあの眼鏡の坊やだよね。彼ならブルー寮にいるよ』
 予想外の台詞に、十代は思わずユベルの方に詰め寄った。
「えっ、なんで!?」
『さあ。ボクが知ってる時には、そうだったから』
「…頑張ったんだな、翔」
 彼がレッド寮にコンプレックスを持っていて、いつか兄のいるブルーに上がりたいと思っている事を知っていたから、それが叶って良かったと思う。
「じゃあ隼人は?翔と同じでブルー寮にいるのか?」
『隼人って名前は知らないね。どこか別の所にいるんじゃないかな』
「そっか…」
『どうしたの?』
「いやさ」
 未来の事とはいえ、自分の知ってる人達がすっかり変わってしまって。
「なんか色々あったんだなあって」
『当然だよ。時が経てば環境も変わるし人も変わる。何もない方がおかしいでしょ』
「そうだけど…」
 何だか少し寂しくなって、十代は俯いた。部屋が暗いせいもあるかもしれない。それを後ろから抱きしめるように、ユベルは腕を伸ばした。
『大丈夫。ボクはこれからもずっと側にいるから』
「…ユベルは?」
『ボク?』
 十代は声のした方を見上げて首を傾げる。腕の中は妙に懐かしくて、安心出来た。
「どうして、ここにいるんだ?」
『…ま、色々とね』
「色々って?」
『焦らなくてもその内分かるよ。もう少しすれば会えるんだから』
 今の彼に何かを話そうとは思わない。未来を知って彼が変わってしまうのはユベルの望む事ではなかった。
 誤解もあったけど、今まで十代と築いた思い出は全部大切なものだから。
『それより、十代の事を話してよ』
「オレの事を?」
『キミときたら―あ、未来のキミだけど―あんまり話してくれないし。ボクがいなかった頃のキミの事、もっと知りたいんだ』
「ああ、別にいいけど」
 軽い気持ちで請合った十代だったが、その後ユベルの質問責めに閉口する事になる。
「なあ、もういいだろ」
『ダメだよ。まだまだ聞き足りない。それで?その時十代はどうしたの?』
「…勘弁してくれよ」
 未来の自分があまり話したがらない理由を理解しつつ、十代はため息をついた。





思いの外しんみりとしてしまいました。やっぱり四期の初期は寂しいなあと今でも思います。

powered by HTML DWARF