ユベルといっしょ☆迷子編
久々のオフ、エドは買い物をしていた。目的の物を購入し、帰ろうとした所でヨハンを見かけた。何かを探している様子で、なんとなく気になって声をかけてみた。
振り返った彼は少し感じが違う。特徴的な眼の色を見て、思い出した。
「ユベル…」
十代の精霊の名だ。
エドはリーグで十代と会った時の事を思いだした。最近ユベルが出てくるようになって毎日大変だけど楽しいと、そんな話を聞いた覚えがある。その時は意味が良く分からなかったのだが、こういう事か。
「キミは確か…エド・フェニックス、だっけ」
ユベルはそう言って、ふと、エドの持っていた物に目をとめた。
「それ、何?十代に似合いそう」
「ああ、斎王と美寿知さんへプレゼントを」
「斎王…ってアルカナデッキを使う人?」
的確な指摘にエドは少し驚いた。目の前の人物は(体の持ち主も含めて)斎王と面識はなかったはずだ。
「そうだが…よく知ってるな」
「十代が言ってた。面白いデュエルをしたんだって」
世界の滅亡やら色々と懸かっていた割にあっさりとした感想だ。
「それで、十代が勝ったんだよね」
その言葉に、エドは眉を上げた。
「あれは破滅の光に囚われていたのだから無効だ。今は斎王が勝つに決まっている」
「そんなはずはないよ。だって十代にはボクがいるもの。傷つけさせなんてしない」
身長差を利用して、見下し気味にふふんと笑うユベル。
「だったら、確かめるか」
「望む所だよ」
二人の間に火花が散ったが、実際にデュエルをするのは別の人間だ。そこに思い至って、エドは疑問を口にした。
「…そういえば、十代はどうした?」
「そうだ!十代達が道に迷ってたから探してたんだ」
どちらが迷っているのかは主観の問題だ。
「待てばそのうち向こうから来るんじゃないか」
「でも、心配だよ。十代が危険な目にあってるかもしれないじゃないか!」
その時、館内放送が聞こえてきた。
「迷子のお呼び出しを申し上げます。〜からお越しの、ユベルくん。保護者の方がお待ちですので…」
「…ボク、迷子じゃないのに」
「まあ、居場所がわかったのだからいいんじゃないか」
「そっか!待っててね、十代」
「待て、そっちは逆方向だ!」
成り行きでエドはユベルの後を追った。
それから紆余曲折を経て、エドはなんとかユベルを保護者の元へ連れて行く事に成功した。
「ユベル!大丈夫か!」
「十代!」
感動の再会よろしく抱き合う二人。それを少し離れた所で見やって、ヨハンは小言を言った。
『全く、今度から気をつけろよ』
「十代達が迷子になるからいけないんだよ」
『お前の方が迷ってたんだ!』
「まあまあ」
「…何を話してるんだ?」
ヨハンの声が聞こえないので、かみ合わない会話に疑問符を浮かべるエドに十代が解説した。
「ああ、このへんにヨハンがいるんだ」
示された所でエドにとっては何もない空間だったが、十代達の奇抜な言動には慣れている。
「…まあ、いい。用は済んだから帰らせてもらうよ」
「エド、サンキュー。助かった」
「貸し一つだ」
立ち去ろうとするエドにユベルが呼びかけた。
「エド、勝負はまた今度ね」
「そうだな。日時は後で連絡しよう」
「約束だよ」
そのままエドを見送った後、十代がユベルに話しかけた。
「お前、随分エドと仲良くなったんだな」
「仲良くなんかなってないよ。十代の為に勝負するんだから」
「俺の為?」
よく分からない。
「そう。今度、斎王とデュエルしてね」
「…斎王と?別にいいけど」
ますます意味が分からない。十代はヨハンと顔を見合わせて首を傾げた。
その後迷子の呼び出しをされたと噂になって、ヨハンはしばらくひきこもりました。買い物に行くと彼が必ず可愛そうな目にあう不思議。
それは置いといて、事の発端は私が「エドとユベルって愛に対する考え方が似てそうだよね」という突拍子もない思い付きからでした。仲がいいかはともかく、波長はわりと合いそうです。