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男装少女萌え【2】
- 1 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2005/08/06(土) 22:57:58 ID:lfNNCXYI
- 続き
- 2 名前:ナサ 投稿日:2005/08/06(土) 23:00:24 ID:lfNNCXYI
- では早速ですがイヴァン後半いきます
- 3 名前:イヴァン辛抱する9 投稿日:2005/08/06(土) 23:02:29 ID:lfNNCXYI
- 顔を離して見下ろすと、ナタリーは羞恥と陶酔と不審の入り交じった表情で、ゆっくりと睫をあげた。
最後の表情だけが余計だ。
「どうした」
「…本当に、『お仕事』でなさるの…?」
「ナタリー」
イヴァンは眉をしかめた。
ナタリーはほっとしたように吐息をついた。
「ああ良かった……陛下と王妃様なら本当にそう仰りそ…」
うっかり口を滑らせかけ、イヴァンと視線が合ったナタリーは大慌てで謝った。
「ごめんなさい」
「…いや」
やっぱり国王夫妻の言動は、嫁の目から見ても怪しいらしい。
「なにか言われたのか?」
「……いいえ」
躊躇いがほんのわずか長かったのでイヴァンはすかさず追及した。
「なにか言われたんだろう、あの老害物に」
「……」
ナタリーは視線を逸らした。
その眉が困惑に寄り、頬がぽっと染まっていくのを目の前に見ていると、いやな予想が胸に湧く。
「なにを言われたんだ?怒らないから正直に話せ」
「………」
ナタリーは軽く吐息をついて、イヴァンの頬を両手で挟んだ。
「…お聞きになっても、王陛下には何も仰らないでね。ただ心配なさっているだけなんだから…」
「いいから早く話せ」
「…あのね」
ナタリーはイヴァンの耳に唇を寄せて囁いた。
「…………」
聞いているイヴァンの眉があがり、こめかみにうっすらと血管が浮き上がった。
顔を戻したナタリーは心配そうにイヴァンの腕をおさえた。
「あの…私、そんなに気には…」
「……あの※◎◆の…×▲#☆◆めが…」
イヴァンは歯ぎしりし、ナタリーがこれまで耳にしたことのないような汚い言葉で父王を罵った。
時々彼女は思うのだが、イヴァンは王子という身分にありながら一体どんな場所でこういう言葉を覚えてくるのだろう。
そのへんはあまり追及しないほうがいいような気もするが。
*
彼女がイヴァンの無事を確認しようと王宮に押し掛けてきてかけあった際、王は世間話にかこつけて、
あまり夫を誘わないようにとなにげなく釘をさしたのだと言う。
どういう事か今ひとつわからなかったナタリーだが、軟禁に関するイヴァンのさきほどの説明でやっと発言の真意を悟ったらしい。
例の根拠不明の『薄くなる説』をナタリーにまでほのめかしたのかと思うと、そのへんはさすがにまともに伝えるのもなんだと思い、
適当に濁して語っていたイヴァンは怒りで腸が煮えくりかえるような心地だった。
それに。
それに、ナタリーは恥ずかしがり屋だから、普段決して自分からは誘ってはくれないのだ。
脅したりすかしたりして誘ってもらった事が今までに何度かあって(一般的にはこういうのは誘ったとは言わない)、
その時も最初やっぱり恥ずかしそうだったが、一旦火がつくと最高に淫らで可愛いかった。
あのおせっかいなじじいは、その彗星なみに珍しい貴重な機会まで、根こそぎイヴァンから奪おうというのか。
それだけはやめろと絶叫したい。
- 4 名前:10 投稿日:2005/08/06(土) 23:03:14 ID:lfNNCXYI
-
イヴァンはナタリーに視線を戻した。
「だがお前はそうオレを誘うわけじゃない」
「私もそう思います。ほとんどあなたよ」
ナタリーが、イヴァン的には悲しいほどきっぱりと言いきった。
「…そうか」
「そうよ」
ナタリーはちらりと周囲の羊皮紙の束を眺め、頬を膨らませた。
「少なくとも、私はこんな変な場所では絶対に、あなたを誘ったりしないわ。…陛下はなにか勘違いしていらっしゃるんです」
「そうか…」
イヴァンはたった今まで捕らわれていた激しい怒りをころりと忘れて、つい甘えたような口振りで彼の妃に問いかけた。
「…じゃあ、お前は例えばどんな時に誘いたくなるんだ?知っておきたいな」
「え…それは例えば、あなたが…」
ナタリーははっと気づいたように唇を噤んだ。
真っ赤になって彼女は低く囁いた。
「と、とにかくこんなとこだけはイヤ!お願い、放して頂戴、早く」
「却下したい」
イヴァンは指に挟んだままで忘れていた芥子色のスカーフに目をやった。
「十日間も閉じこめられてたんだぞ。少し運動をしたくなった」
ナタリーは目を伏せてまた赤くなり、イヴァンはそれを見て笑った。
「そらまた赤くなった……面白いなお前は」
「何が面白いの?」
ナタリーは顔を寄せてきたイヴァンに文句を言った。
「私、あなたのおもちゃじゃな…」
「おもちゃだよ」
イヴァンは囁いて顔を重ねた。
久しぶりにナタリーをからかっているとやはり楽しくて、時間が有り余るほどあるわけでもない今の状況にも関わらずなかなか事態が進展しそうにない。
いつも唇でイヴァンはごまかすと彼女は思うかもしれないが、こうでもしないと埒があかない。
ひらめく魚影のように逃げる舌を捉えて軽く吸い、柔らかな唇のかたちを舌先で辿りながら愛撫する。
喘ぎを隠そうとして呑み込むのを忘れかけた彼女の唾液を吸い取ってやり、自分のそれを舌を使って垂らし込む。
彼女の瞼がぴくんと揺れて、んく、と小さな声ともつかない声と一緒に白い喉がイヴァンの熱を抵抗なく呑み込む。
唇の柔らかい内側で彼女の唇を挟みこむと、安心した生き物のように彼女の唇が甘く綻び、うっすらと開いてゆく。
ナタリーとのキスは彼女と餌を与え合っているようだ。
やがて顔をずらし、イヴァンはくたりと背けたナタリーの頬を掌で押さえた。
「…」
ぼうっとした視線をイヴァンに向け、彼女は瞬きをした。
その細い喉に掌を動かして隠しボタンをはずす。
やっと三つだけついているボタンが外れたが、結局は頭から脱ぎ着する型なので、このままではそれ以上は脱がせることはできない。
「…まあいいか」
イヴァンは襟元をのぞき込み、白くて魅力的な谷間を確認するとあっさりと作業を中止した。
「え?」
脱がせるのだろうと予想していたらしいナタリーは不審げに彼を見上げた。
「ベルトをはずせば手は届く」
そう呟いて細くくびれた胴に巻いてあるベルトを引っこ抜いた夫の手を、ナタリーはおずおずと押さえた。
「何を考えてらっしゃるの?」
「これ」
イヴァンは、ベルトを置いて例のスカーフをつまみ上げた。
「これ?」
ナタリーの眉が寄った。
「両手を出せ」
ナタリーの華奢な手首を揃えて掴み、イヴァンは素早くスカーフでぐるぐる巻きにしてしまった。
さらに戒めたその両腕の肘を掴み、彼女の頭の上まで押し上げる。
「えっ、あの…」
ナタリーはもじもじして、自分の格好の異様さに言葉を詰まらせた。
「これ…」
「よし」
イヴァンは手を離した。
- 5 名前:11 投稿日:2005/08/06(土) 23:03:51 ID:lfNNCXYI
-
羊皮紙の束が散乱する執務机の上に横たえられ、胴衣のくつろげられた襟元から胸の谷間がほの見える男装の綺麗な女。
一見きっちり服を着込んでいるように見えるのだが両手は拘束され、ベルトがないため胴衣の裾から手を入れ放題の隙だらけの格好である。
「実に魅力的だ、『ナサニエル』君」
にやにやしていると、ナタリーがはっとしたように唇を開いた。
「イヤだ、まさか!」
「聞こえない」
イヴァンは彼女の上にのしかかった。
「イヤ!お願い、やめて…これだけはイヤ!……変質者!」
ナタリーの罵り言葉など可愛いものだが、さすがに変質者というのは気にくわない。
イヴァンはむっとして顔をあげた。
「誰がだ?」
「…あなたよ、最低の王子様」
怒りのためか、ナタリーのいつもは褐色の光彩の色が変わっていた。
灰か緑色のような細いすじが入っている。
口調もナイフの切っ先のようで、それまでまとわりついていたかすかな甘さなど微塵もなかった。
「こんな格好で、縛ったりなさって、なんのおつもり?」
イヴァンは途方に暮れた。
「…お前を最初に抱いた時みたいだ、と」
ナタリーは蹴り上げるようにして脚を持ち上げ、イヴァンの腕を逃れて机の上に起きあがった。
「あなたはどうだか知らないけれど、あれは私の最悪の記憶よ。
…わかってはいたけど、そんな方だって知ってはいたけど……それでもいいって思ったけど……
まさか、ここまで趣味の悪い方だったなんて、思っていませ……」
そこまで言ったナタリーの言葉が途切れたと思う間もなく、彼女の頬をなにやら大きなものが転がり落ちた。
磨き抜かれた机の表面に弾けたのを見ると涙である。
イヴァンはあわてふためき、ナタリーを抱きしめた。
嫌がったが、本能的にここで手を放したら最後のような気がして離れずにいると、
しばらく無言の攻防を演じたあげくナタリーはイヴァンの胸にすりより、さらに涙を流し始めた。
「…今は好きよ…優しいところだってちゃんとあるってわかったもの…
…でも、あの時の乱暴で恐ろしいあなたって、殺してやりたいくらい憎らしかった」
イヴァンは黙って彼女の艶やかな髪を撫でた。
わかっているつもりだったが、日頃彼女があまりに優しくて従順なのでつい忘れてしまうのだ。
ナタリーを手に入れたのは極悪非道な方法で、彼女自身が言うように、それは現在彼を赦しているのとはまた別に、
心の奥深くではいつまでも納得できない傷になってしまっているのだろう。
それからもいろいろ彼女を縛ったりいじめたりしてきたが(やはり彼にはそういう傾向があるらしい)、
恥ずかしがりつつもナタリーはこれほどには厭がらなかった。
どうやら、『男装で縛られる』のがいけないんじゃないかとイヴァンは察した。
全く自分というものを尊重されず、モノのように取り扱われた記憶をそのまま思い出してしまう状況なのだ。
その嫌悪感は、快楽を知り、彼の心を見つけた今でもどうしても克服しがたいものなのだろう。
イヴァンは日頃なにかを反省したりする性質ではないのだが、こればっかりはもっとどうにかすれば良かったと、
これからも何度も何度も後悔する事案になりそうだった。
つくづくと、自分のかつての情け無しの好き放題の行状が周囲にひいては自分に以下略。
*
- 6 名前:12 投稿日:2005/08/06(土) 23:04:31 ID:lfNNCXYI
-
どのくらいたったのか。
落ち着いたらしいナタリーが顔をあげた。
瞼がわずかに腫れているが、目もいつもの暖かみのある褐色に戻っている。
「……ごめんなさい」
驚くべきことにナタリーは謝った。
イヴァンは急いで遮った。
「いや、オレが悪い」
小さく付け加える。
「…悪い男をあまり甘やかすな。またつけあがる」
ナタリーは微笑した。
「でもね、イヴァン様。あなたは優しいキスもできるから、悪い人じゃないと思うわ…今では」
指先でイヴァンの頬を撫でる。
「…仲直りに、もう一度だけでいいから、あんなキスをしてくださる?」
イヴァンは妃に口づけた。
可能な限り、繊細で穏やかなキスを心がけた。
自分の欲望は今は忘れたほうが身のためだ。
イヴァンの反省と謝罪のこもった長い長いキスが終わって、ようやく顔が離れた時、ナタリーの目はすこし潤んでいた。
赦してもらえたのだろうかとイヴァンが考えていると、彼女はちらと扉に視線を投げた。
廊下で衛兵長が命令を待っているはずだ。
「…あの人、怪しんでないかしら?長すぎるって」
「それはない」
イヴァンは肩をすくめた。
机周辺の床の書類の散乱ぶりは凄まじく、簡単に拾い集めて仕分ける事ができないのは誰の目にも明かだろうと思われた。
「あの…」
ナタリーは濡れた唇になんとなく指先を置き、上目遣いにイヴァンを見上げた。
桜色の爪が縁をかすかにひっかいている。
意識してではないらしいが、妙に色気のあるしぐさだ。
「イヴァン様…」
イヴァンは黙って彼女を見つめた。
「さっき、どんな時に誘うんだってお尋ねになったでしょう?」
急に早まった鼓動を意識しつつ、イヴァンは目顔でかすかに頷いた。
だが、まさか。
今の今愁嘆場があったばかりなのに、そう簡単にこっちの都合のいい展開になるわけがない。
期待するなイヴァン、と彼は自分自身に命じた。
どうせナタリーの言うのは再来週館に戻ってからとか、いつかその気になったらねとか、そういったさしさわりのない慰めに過ぎないはず…。
ナタリーは腕の中で軽く伸び上がり、彼の耳に小さく囁いた。
「…今じゃだめ?」
彗星だ。
女心が分からない。
イヴァンは反射的に伸びようとする鼻の下を全力で押しとどめつつ、どうしようもなく隔絶した男女の溝をしみじみと意識した。
今の今あれだけ傷ついた姿を見せておいて、掌を返したようにその同じ相手を誘ってくる。
知る者全員から女好きと認められているものの、実際彼には女心はわからない。
自分の認識の甘さと、ナタリーに関しては紆余曲折しながらもこれからもこうやって観察を積み重ねていけるらしい、という事だけはわかるのだが。
- 7 名前:13 投稿日:2005/08/06(土) 23:05:57 ID:lfNNCXYI
-
「今後の参考に教えてくれ、ナタリー」
イヴァンは囁き返した。
「どうして今なんだ?」
ナタリーは首を振った。
「…教えてあげません」
なぜか頬に朱を散らして、彼女はもじもじした。
「イヴァン様は、そうやって時には悩んでいらっしゃればいいんです。いつもいつも勝手なんだから」
「仕方ないじゃないか」
イヴァンは彼女の背に回した腕に力をいれて引き寄せた。
「お前といると勝手にこうなるんだ」
彼女はため息をついた。
「…だから陛下が、私に誘ってはいけないとかなんとか仰るんだわ」
「あの※◎◆親父は思い出すな」
イヴァンは急いで言った。
「オレのことだけ考えてくれ」
ナタリーは、胴衣の上から乳房をまさぐるイヴァンの手を気にしながら囁いた。
「…そういえば、ご命令に背いてしまいました」
「忘れろと言うのに」
イヴァンは彼女の髪を片手で掻き上げ、細い首すじに吸い付いた。
ナタリーが小さな声をあげる。
彼の肩に絡みついて頬をすり寄せた。
そのうなじにまわりこむようにキスを降らせ、イヴァンは、古ぼけた羊皮紙とは全く別の、胸元から立ち上る甘い、ナタリーの匂いを肺に深々と吸い込んだ。
「…どこがいい?」
イヴァンは尋ねた。
「そこ…」
ナタリーは甘えるようなかすれた声で呟いた。
執務机はやめておこうかと彼女の希望の場所を尋ねたつもりだったのだが。
イヴァンはかすかに口元を緩めた。
彼女の気持ちのいい場所はとっくに承知している。だが応えた。
「わかった」
後ろから抱くように、うなじから紅潮した耳元に重ねて舌を這わせると、ナタリーは喘ぎを漏らして、小さく腰をくねらせた。
腕を解き、胴衣をたくしあげて抜き取った。
肌に滑らかにまとわりつくシャツを剥き、ズボンをするりと尻の曲線にそって押し下げる。
下着はつけていなかった。油断にもほどがあると彼は思ったが、考えてみればドレス姿の女性は通常は下着をつけない。
17の彼女を犯した時、彼女がちゃんと下着をつけていたかどうか、もう彼は覚えていない。どうだっただろう。
踝に掌を滑らせ、靴をふたつとも書類の間に放り投げる。
自分の服と同じ色気のない構造のものからナタリーの躯を解放していくのは意外に興奮する。
露になってくる彼女の姿が美しいだけに余計そんな気がした。
18の彼女の躯もしなやかで柔らかいが、もしかしたらあの頃よりほんの少し痩せたかもしれない。
それは目立つほどのものではなく、ふっくらしていた子犬が成長してほっそりしていくような変化なのだろう。
その証拠に、イヴァンがうなじを啄みながら背後から掬うように握りしめた乳房は一年前よりあまやかに充実した感触だった。
丹精こめてきただけあって美味そうに熟してきたな、と彼は、それこそ自分本位な感想を持つ。
ナタリーに知られたら怒られるだろうか。
「ん……ん…」
気付くと、金褐色の頭をのけぞるようにイヴァンの鎖骨に押し付け、ナタリーは目を閉じ頬を紅潮させ、必死で声を押し殺していた。
どうしていつものようにもっと声をあげないのだろう、と不満を覚えてイヴァンは握った指を乳房の先端に軽く食い込ませる。
「…っ…」
ナタリーはきゅっと眉をしかめて唇を開いたが、それでも声は漏らさなかった。
熱くて細い指が手に絡められた。イヴァンの手を引き離そうとしながら、彼女は早口に訴えた。
「…だめ………廊下に…」
「ああ」
イヴァンは納得した。衛兵に聞かれるのが恥ずかしいのだ。
もったいない気がするが、彼女が声を出したくないなら仕方なかろう。ゆっくりと両手を離した。
- 8 名前:14 投稿日:2005/08/06(土) 23:06:35 ID:lfNNCXYI
- ナタリーが片腕をイヴァンの首にかけて、身を捩るようにして振り向いた。
両方の腕を廻してぴったりとくっつき、夢でも見ているような視線で見上げてくる。
潤んだ瞳に切な気な眉、上気した頬、うっすらと開いて紅みを帯びた唇。
頭に巻き付けていた髪ももうほとんどが崩れ落ち、頬から耳朶、肩から背中、そして胸を絶妙のバランスでちらほらと隠している。
胴衣は床に滑り失せ、シャツの袖が片方、ほっそりした腕にひっかかっているのが妙にイヴァンを煽り立てた。
「…あなたの服も」
もっと躯をすり寄せてきたナタリーの甘い吐息が喉にかかった。すんなりとした腕が動く。
どうやら珍しくも彼女の手で脱がせてもらえるらしい。
今回の彗星は大きい、と彼はぞくぞくしつつ感動した。
「それは嬉しいんだが」
イヴァンは彼女に囁いた。
「聞かれたくないんだろう。我慢できるか?…手加減はできそうにない。二週間ぶりなんだ」
この女を愛したかった。あの時のような陵辱ではなく。
ナタリーの指が上着に潜り、器用にボタンを外していく。
「大丈夫よ…きっと」
上着を外し、シャツを肩から滑らせて、ナタリーはズボンにとりかかった。
「そうかな」
彼女に協力して腰を浮かせ、躯に触れる柔らかい指や髪を愉しんでいたイヴァンは息を呑んだ。
敏感な先端にいきなり、蕩けるくらいに官能的な感触。
熱い雫のような濡れた舌が触れ、幹に指が巻きついていく気配。
イヴァンはぎくしゃくと視線を下腹部に向けた。
細い肩がすっぽり太腿の間におさまり、金褐色に輝く髪が臍から下を覆っている。
その隙間から睫を伏せて上気した綺麗な顔がわずかに覗き、せっせと舌を動かしているかたちのいい唇も見えた。
結構開いたその間に挟まれて嬉しそうに屹立しているのは見慣れた我がモノであり、その情景を見ただけで腰から一気に力が抜けそうになった。
彼女のしなやかな背中からくびれた胴、小さめの尻が軽く揺れている。
「お」
イヴァンは呻いた。
お世辞にも上手とはいえない。だが、その下手くそさと懸命さ加減がたまらなく興奮と感動を呼ぶタイプの愛撫だ。
しかも、これをしているのはナタリー。
ナタリー。
ナタリー。
「う」
イヴァンは再び呻き、視線をこのあまりに扇情的な情景から離そうと試みた。見ているとそれだけでどうにかなりそうだ。
だがもったいなくて目が離せない。これを見ていなかったら一生後悔する、と思う。
ナタリーは加減がわからないようだった。強めに吸い付かれてイヴァンはまた短い声を漏らす。
彼女が顔をちらりとあげて、イヴァンの反応を見た。顔を歪めて見返すと、ひどく幸せそうに微笑する。
その唇には唾液とイヴァンのモノから垂れている液体がぬらぬらと輝いていて、淫猥というかけなげというか、もうどう考えていいのか彼にはわからない。
ただ、とにかく彼女が可愛かった。
- 9 名前:15 投稿日:2005/08/06(土) 23:07:06 ID:lfNNCXYI
- 「ナタリー……やめろ」
彼は命じた。
ナタリーは上半身を起こした。こくんとかすかな音をたてて口に溜まった液体を呑み込み、舌で唇をちょっと舐めて綺麗にした。
それを見ているだけで脊椎にざわざわと刺激が走る。これで上下運動でもされた暁にはあっけなく漏らしてしまいそうだと思う。
「…………おいや?」
「いやじゃない」
即答し、イヴァンは彼女の肩を捕まえてずるずると引き上げた。
「そのへんで勘弁してくれ、イきそうになる」
「それでもいいのに」
無邪気なほどあっさり彼女は囁いてイヴァンの胸に抱きついた。
イヴァンは溜め息をついた。
「いや…どうせならお前の中がいい」
ナタリーが顔をあげた。
「陛下のご命令だから?」
「違うと言うのに」
よっぽど厭な顔になったらしい。ナタリーが笑った。
「お前、どこで聞いたんだ、このやり方」
素朴な疑問を抱いたイヴァンは、彼女の躯をそっと横たえながら尋ねた。ナタリーにまだこれを仕込んだ覚えはない。
「あの本に、ちゃんと書いてありましたわ」
ナタリーは優等生めいた表情で答えた。イヴァンがいつぞや無理矢理一度だけ読ませた房事の指南書のことである。
だろうな、とイヴァンは納得する。
「よしよし、ちゃんと覚えていて偉いぞ」
褒めると彼女は得意そうな顔になり、イヴァンに抱きついてきてくれた。
そのほっそりした胴を抱いて、イヴァンは低く囁いた。
「……お礼にオレもしてやろうか…?」
「だめ!」
ナタリーは即座に拒絶してさっと腕を伸ばした。彼女の耳朶にしようとしていたキスが空振りに終わった。
「なぜだ」
尋ねるとナタリーは赤くなった。
「あ、あなたは…お上手、ですから……声…我慢できません」
にやにやと崩れそうな頬を危うくひきしめて、イヴァンは頷いた。
「そうか」
ナタリーは肘を折り、イヴァンを抱き寄せた。
抱き寄せられるままに密着して、彼は首すじや鎖骨にキスをはじめた。両手で感じやすい脇腹から腰のあたりを愛撫する。
「…それより、いらして…早く」
「ああ」
なんとなく、ナタリーの焦る気持ちがわかるような気がする。
この二週間というもの、イヴァンが戻らず、状況もわからず、きっと彼女はひどく寂しい思いをしたのだろう。
肌を触れ合わせることで、夫を確かに感じ取りたいに違いない。
たぶんそうだ。イヴァンも同じ気持ちだから。
- 10 名前:16 投稿日:2005/08/06(土) 23:07:43 ID:lfNNCXYI
-
イヴァンは彼女の腿に掌を滑らせ、膝をつくと滑らかなその間に割って入った。
「ナタリー」
名前を呼んでやると、彼女は潤んだ瞳をうっすらと閉じて、上気した頬を磨き抜かれた執務机の表面に背けた。
細い腰の下に掌を差し入れて浮かせ気味にし、彼は躯を押し入れた。
「あ…」
ナタリーの横顔の、柔らかそうな唇が開いて、彼女は小さく声を漏らした。
「しっ…」
イヴァンは小さく呟き、ゆっくりとした動きでさらに彼女の腰の奥に侵入した。
熱い、甘い、複雑な彼女の女の場所がイヴァンを拒みつつ迎え入れる。
潤いが溢れそうだった。
奥までおさめると、彼女の背に指を滑らせてきつく抱きしめた。
「ん」
彼の腕に押し付けていた指先をかるくまるめて、彼女は気を逸らそうと努力している様子を見せた。
顔を頼りなく反対側に巡らせて喘ぎ、その途中、イヴァンとかすかに視線があった。
ぴく、と彼女が反応したのがわかった。
「イヴァン様…」
「気持ちがいい、ナタリー……存分に、動きたいな」
イヴァンが呟くと、ナタリーは綺麗に染まった肩先をくねらせた。
「…廊下に……聞こえます……」
「…そんなに聞こえない気も、するぞ」
イヴァンは微笑した。
少し彼女が辛そうなので、クッションがわりに近くにあった年代物の書類の束を掴んで、しっとりと汗ばんだ腰の下に押し込んだ。
「…そんな事して…いいの…?」
「どうせ誰も読まない」
イヴァンは腰をゆっくりとひき、ナタリーを喘がせた。
密着していた上体を起こし、じれったいくらいに静かに動きつつ彼女を眺める。
彼が押し上げるたびにすんなりした躯ごと持ち上げられながら、イヴァンを見つめている上気したナタリーはとても可愛かった。
「んっ…ん…」
睫を震わせ、声を殺し、イヴァンの腕にしがみつくようにして応える。
片手を、動きに合わせて揺れている乳房に滑らせて先端を摘むと、ナタリーは小さくのけぞった。
「あっ…」
怒ろうか、それともどうしようかと迷ったような微妙な角度に眉を寄せて、彼女はイヴァンを甘く睨んだ。
「…だめよ……」
「そうだな」
するりと口に含んだ。びく、と彼女の背がはっきりと弓なりになった。
「……っ…」
それがつんと尖るまで責めておもむろに唇を離し、イヴァンは、必死で声を抑え、肩で息をしているナタリーを無責任に褒めた。
「ちゃんと我慢して偉いぞ。これなら、大丈夫だ…いいよな?」
「だ、だ…め、あっ、あああああっ!」
ナタリーはイヴァンにがっしり抱え込まれ、深々と貫かれて絶叫した。
細くて甘やかで、はっきりとそういう声だとわかるような艶めかしい啼き声である。
「…おい、聞こえたぞ今のは」
イヴァンは荒っぽく動きながら囁いた。
「…んっ、あ…し、知らな…っ、やっ、やっ…やぁ…」
うってかわった『いつものイヴァン』を、ナタリーは、だが押しやろうとはしなかった。
その背に腕を絡め、腰をうねらせて、喘ぎながら脚も巻き付ける。
- 11 名前:17 投稿日:2005/08/06(土) 23:08:25 ID:lfNNCXYI
-
「ナタリー…」
イヴァンは優しく囁いた。
「お前が大好きだ」
「私も…」
羊皮紙の匂い、汗の匂い、それからナタリーの匂い。
抽送を早め、ナタリーの艶かしい姿を見、その肌に溺れ、可愛い声を聞く。
ナタリーが彼にすがりつき、「ああ…」と、弱々しく喘いだ。
イヴァンを締め付けている襞肉が、幾度も幾度も、たまらなく気持ちよく収縮した。
「ナタリー」
くたくたと幸せそうに力が抜けてゆく妃の躯を力任せに抱きしめると、イヴァンは、二週間ぶりに、大満足の射精をした。
*
「だから」
元通りきりっとした小姓姿に戻ったナタリーに衣装を整えるのを手伝ってもらいながら、イヴァンは言った。
「気にするな、ナタリー」
ナタリーは頬を赤らめていたが、あきらめたように吐息をついて頷いた。
「…聞こえて…ないかも、しれませんものね…?」
「そうだ。聞こえていたとしてもあの親父にさえバレなければ心配はない」
そのへんが生まれついての王族のこの人とそうでない私の違いなのかしら、とナタリーは理解に苦しむ目つきでイヴァンを眺めた。
彼女は顔から火が出そうなほど恥ずかしいのだが、イヴァンは衛兵長がどう思おうが平気らしい。
ナタリーが思い悩んでいると、身繕いを終えたイヴァンは大声をあげた。
「おい!入れ」
ナタリーは、慌てて頭の帽子を確認し、書類箱を抱えた。中にはイヴァンが適当に選んだ決済済みの書類が入っている。
扉が開く寸前、イヴァンは彼女に低い声で囁いた。
「再来週までは、女の格好をしておとなしくしてろよ」
「はい」
たっぷり愛されたからか、不安な気持ちは消えていた。
「安心なさって、イヴァン様」
イヴァンはにやっと笑って扉に視線を向けた。
巨大な衛兵長が現れ、敬礼をした。
心なしかその指先が震えている。
ぎこちない敬礼である。
「し、失礼いたします…!」
帽子の下のいかつい顔は赤く、しかもあらぬ方角に視線を向けつつ、同じ側の手足をいっぺんに動かしながらぎくしゃくと机に近づいてくる。
「…………」
「…………」
イヴァンとナタリーは横目で互いの顔を見た。
あからさまに、たぶんそうだ。
「おい」
イヴァンが声をかけると衛兵長は飛び上がった。
「…はっ!」
「さっき、何か聞こえたか?」
衛兵長はナタリーに一瞬目をむけかけたが茹で上がるほどに赤くなり、風車の如く首を振った。
「いえ!私めは何も…!!おおおおお妃様のおおおおおおおおおお声など…!!」
「そーか」
ナタリーは死にたくなったが、イヴァンは平然と頷いた。
「その通り。お前は何も聞かなかった。男装までして忍んできたこれをけなげと思うなら、父にはそう報告しろ」
「はっ!」
- 12 名前:18 投稿日:2005/08/06(土) 23:09:09 ID:lfNNCXYI
- 「で」
イヴァンが声を潜めた。
「まさか覗いたりはしなかったろうな」
ナタリーが固まっていると、衛兵長は必死の面持ちで否定した。
「いいえ!漏れ聞こえましたのは、ななななんともいえぬお妃様のおおおお声だけ、あとは若い部下共を決して寄せ付けぬよう、
階段付近で頑張っておりましたので…!!決して、決してそのような恐れ多い、不敬な、不届きな……!!!」
緊張のあまり、自分が何をどう喋っているのかよくわかってないらしい。
「そーか」
イヴァンは偉そうにふんぞりかえった。
「貴婦人への配慮に感謝する。やはりお前は大物だな」
「も、もったいないお言葉…!!」
「その騎士道精神を見込んで、これを館まで警護してもらいたい」
イヴァンはちらりとナタリーを見た。
「少々無鉄砲でな。お前なら安心して任せられそうだ」
「ははっ!!」
なぜか感激している衛兵長の姿を呆れてみていたナタリーは、イヴァンが肩をすくめたのに気付いた。
「立派な男で、良かったな」
そんな単純な話なのだろうか。
深い疑惑を覚えるナタリーに、イヴァンはすっきりとした顔でひらひらと手を振った。
「愉しかった。再来週、また逢おう」
「…………………」
腫れ物に触るように緊張している衛兵長と、なんだか複雑な顔のナタリーを見送って、イヴァンは部屋の床に目を戻した。
散乱したままの決済待ちの羊皮紙の束は、さっきから我を失った衛兵長が巨体で踏みつけていたのでぐしゃぐしゃになっている。
あの男が戻って来たら責任をとらせようと彼はひどい事を考え、椅子に座って脚をあげ、
机の書類に靴の踵をおくと窓からいつの間にやら暮れかけている空に目をやった。
これで子供ができれば身勝手な父母は喜ぶだろうが、たとえできなくても仕方ない。
もう数年もすれば姉妹の誰かが結婚し、なんとか一人ぐらい子供を産むかもしれぬ。
ナタリーがいれば彼はそれでいい。
自分と妃が総計十一人の子供に恵まれる事など予測もつかないこの未来の国王は、にやにやしながらさっきの情事を反芻していた。
再来週にも彗星が来るといいが、などと考えているのだ。
重要書類に踵の痕がついているのも気にしていない。
父王が見たら泣くだろう。
だが信じられないだろうが、後世歴史を学んだ者は承知の通り、
実はこのいい加減な男であるイヴァンの治世の間が一番国は繁栄していたりする。
とある王国の平和な一日が今日も終わる。
これも王子の人徳のお陰かもしれない(違う)。
おわり
- 13 名前:中の人 投稿日:2005/08/06(土) 23:13:13 ID:lfNNCXYI
- そして投稿後。
なんだと27?これならなんとか入るんじゃん。
すんません。ケーブルで首をry
許してくれえええぇぇぇぇッ
- 14 名前:しかもテンプレ忘れorz 投稿日:2005/08/06(土) 23:18:47 ID:lfNNCXYI
- 男装してる美少女にハァハァするスレ
http://idol.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1020794488/
男装してる美少女にハァハァするスレ Part2
http://idol.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1103457853/
男装少女萌え2(前スレ)
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1114770971/
- 15 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2005/08/06(土) 23:23:45 ID:YyrTePVN
- 乙です。GJです。
どーもニヤニヤして読んでしまう(ノ∀`)
- 16 名前:ナサ 投稿日:2005/08/06(土) 23:24:01 ID:lfNNCXYI
- 前スレ2ってry
とりあえず逃亡する
探さないでください
- 17 名前:司 ◆aPPPu8oul. 投稿日:2005/08/06(土) 23:31:30 ID:SjsBP0ZB
- >16
スレ立て乙。
そしていろんな意味でニヤニヤ。
愛しさとか嬉しさとか、色々で。ニヤニヤ。
探しますよw
- 18 名前:司 ◆aPPPu8oul. 投稿日:2005/08/06(土) 23:32:00 ID:SjsBP0ZB
- そしてさっそくsage忘れorz
俺も一緒に逃亡します…
- 19 名前: ◆z1nMDKRu0s 投稿日:2005/08/07(日) 00:00:25 ID:AHS9dCmD
- いやいや逃亡しないでください
神職人がいなくなりバカなクソ職人しかいなくなる
- 20 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2005/08/07(日) 00:45:50 ID:jh6NopJM
- >>19
俺はあなたのぶっとんだノリも大好きだ
姫も待ってる
このスレ好きなんだよな
- 21 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2005/08/07(日) 09:33:40 ID:Ior4KQO9
- お、終わっちゃったよ・・・
ナタリータソにもう会えないのは悲しいけど、今回もとにかくとにかくとにかくGJ!
>>19
自分も続き待ってます
- 22 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2005/08/07(日) 12:24:02 ID:Upq9I+pd
- もーメチャクチャ萌萌&面白すぎるw
ナタリー&イヴァン大好きだー!
- 23 名前: ◆z1nMDKRu0s 投稿日:2005/08/07(日) 14:39:32 ID:hsxiCVf7
- ナタリーとイヴァン(半角失礼)にもう会えないのか……
サミシーよ〜(つД`)
- 24 名前: ◆z1nMDKRu0s 投稿日:2005/08/08(月) 01:54:51 ID:06Togo+4
- ようこそ、男装少女萌えスレへ
これから書くキャラ紹介はサービスだ、ひとまず読んで落ち着いて欲しい
なんだ、すまない
仏の顔もって言うしね、謝って許してもらおうなんて思っていない
でもここのSSを読んだとき、きっと言葉で言い表せない ときめき みたいなものを感じてくれたと思う
殺伐としたこの世の中でそういう気持ちを忘れないでほしい
そう思ってSSを書いたんだ
じゃあ、始めようか
- 25 名前: ◆z1nMDKRu0s 投稿日:2005/08/08(月) 01:55:47 ID:06Togo+4
- 高峰真
言わずと知れたゴッドファーザーズメンバーであり主人公
なんでもギャンブルで済ますアウトローな香具師
恐らくゴッドファーザーズの中では一番不幸なキャラ
横溝淳一
ゴッドファーザーズ体力バカ担当
マッチョ、とにかくマッチョ
簡単に言うなら聖なるプロテイン伝説とかいうゲームの黒いほう
三門昌平
いわゆるホモなオカマさん
このSSの元ネタの中にオカマがいたなーで生み出されたキャラ
オカマバーに勤務(違法)ある意味最強
立花ユウ
このSSのヒロイン
萌え属性はひんぬー、短髪、ツンデレ(挑戦し挫折)
作者もハッキリと性格決めてないからコロコロと口調が変わる
一応男装しとるがSS始まって3日でバレた
加藤義明
秀穂高校一のデブオタ
そーいや真性のクソアホ出して無いなといういい加減な理由で登場
ゴッドファーザーズのハンパなオタク知識にキツイツッコミを入れる
何気にヒロインのユウより人気があるっぽい
- 26 名前:キャラ紹介とあらすじ ◆z1nMDKRu0s 投稿日:2005/08/08(月) 02:06:37 ID:06Togo+4
- 海原(うみはら)
秀穂高校の堅物生徒指導
何故か常に和服、それもそのはず実は作者がアニメ版美味し〇ぼを見てからノリで登場
あらすじ
秀穂男子高等学校一のバカ、真、淳一、昌姉ぇの三人は
転校生 立花ユウが女の子だという史上最大級の秘密を知ってしまう
しかしことの重要ぶりをわかってない三人はユウを仲間として受け入れる
そして終業式、集まった三人は興味本意でユウ男装の秘密を探る
しかしユウ男装の秘密を暴け会議の途中にユウ登場
どうなるゴッドファーザーズ!!
- 27 名前: ◆z1nMDKRu0s 投稿日:2005/08/08(月) 02:08:49 ID:06Togo+4
- いちお新規参入者がわかりやすいようにキャラ紹介とあらすじ入れたが平気だろうか……
ちなみに今日は書く気力がない
本当に遅筆スマソ
- 28 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2005/08/08(月) 02:12:56 ID:xfSYLDW1
- >27
お疲れさん。気長に持ってる。
こういうのがあるとなんだか自分が古い馴染みのようで嬉しくなるなw
- 29 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2005/08/08(月) 11:45:26 ID:jv1kUcke
- >27
平気。
あなたの投下スタイルだとこうやってまとめがあったほうが分かりやすいと思う。
気力が出たらヨロ!
- 30 名前:司 ◆aPPPu8oul. 投稿日:2005/08/08(月) 13:02:00 ID:xfSYLDW1
- こんにちは、元ネタがアレなところ(キャラサロン)から発生したコテ職人です。
まだここでも何回か投下するだろうから真似して登場人物紹介書いてみた。
あと、意外にゆいが気に入ったので小ネタ。エロなし1レスのみ。
*****登場人物紹介*****
高槻司
高校2年生。165cm50kg・胸は小さめ。
本人の趣味で男装している。頼まれたら嫌とは言えない隙だらけの自称男前。
隆也に女であることがバレるが、実は前から好きだったので無問題。
そのままただれた関係(え)になり、現在夏休みにつき頻繁に隆也の部屋におしかけている。
うっすらMっ気があることを自覚してきた。
三宅隆也
司のクラスの担任。日本史を担当。さわやかに愉快な人気者。
自分の生徒に手を出してしまったことに、今はもう罪悪感のかけらも感じていない。
生活と愛を天秤にかけた結果、司とのことがバレてクビになってもいいと思ってしまった甘い大人。
クサイ台詞が得意。学生時代に鍛えた身体は司の羨望の的。
三崎ゆい
司のクラスのクラス委員。
司が女であることを知り、隣のクラスの彼氏との初体験を前に指導してほしいと言い出した。
そのまま司の実践指導を受け、天然攻めっぷりを開花させた。トンデモ発言で司を撃沈するのが得意。
- 31 名前:司4.5 ◆aPPPu8oul. 投稿日:2005/08/08(月) 13:03:25 ID:xfSYLDW1
- * * * * *
本当は、もう帰りたかった。もともと司には何の用もなくて、それこそ呼ばれたから出てきただけであって。
帰りたい。帰りたい。もう嫌だ。
そんな内心を顔ににじませながらも、大人しく付き合ってやるのが司の紳士マインドだった。
「それでね、最初はちゃんとそこをシてくれたんだけど、途中から興奮しすぎちゃったみたいで…」
とはいえ、こうあからさまな話を延々されると、紳士も淑女もあったものではない。
悪びれず、一応恥ずかしそうにはしているが、ゆいの口からは次々と赤面してしまうような表現が出てくる。
どうも先日、例の(司にはバレバレの)彼氏と初体験を済ませたらしく、またそれにひどく感激したらしく、
恩師(?)である司に報告してくれているのだ。しかも、あの時とおなじファーストフード店で。
迷惑この上ない。
司にとってはあの日のことはそれだけでも赤面してしまうほど恥ずかしく、さらにその後のお仕置きまで思い出すと、
顔をあげてもいられない。人の少ない時間で良かった。
「それでね、痛かったんだけど…ちょっとね、ちょっとだけど、気持ちよくて…ときどき自分のあそこがきゅうって
なるのがわかって…それで、なんかね、あたしも興奮しちゃって…よくわかんないうちに、終ってた」
ようやく終った。
「…そっか…うん…よかった、ね…」
女の子の初体験報告を聞いて肩を落としている司は、周囲にはどう見られているのだろう。
たぶんアレだ、目の前の女の子と昔付き合ってたとか、好きだけどあきらめてるとか、そんな男に見えるのだろう。
力ない司の様子に小首をかしげつつ、ゆいはうっとりとした表情でまだ続ける。
「それでね、あたしのことぎゅうって抱きしめてくれて…好きだよって…言ってくれたの…」
少し、司の表情がゆるむ。
「…良かったね」
「うん」
はにかんだ笑みは、やっぱり可愛い。
この可愛い笑みが小悪魔どころか悪魔の笑みであることを、司は一瞬すっかり忘れていた。
「ね、それで思ったんだけど。先生も、最後、ほんとは可愛いじゃなくて好きだよって言うんでしょ?」
ぶは。
「わ、ご、ごめん!あたし変なこと言っちゃった!?」
いや、と力なく言って口の周りを拭き、司は思う。
多分俺、三崎さんといると物食えない。つーか、飲めない。
この不思議な友情が、この後意外なほど長く続いたとか、続かなかったとか。
* * * * *
ゆいは需要があるのか脳…
- 32 名前:秀穂ゴッドファーザーズ ◆z1nMDKRu0s 投稿日:2005/08/08(月) 13:37:19 ID:06Togo+4
- 気力充電完了!!
ペルナちゃんからのプレゼントで〜す♪
さて、次スレに移ったから何から書こうか迷うな
前スレまだ落ちて無いと思うからこっち読む前に読んどいて
そのうちに書き上がるから
つーわけで現在ゴッド部こと軽音部部室
昌姉ぇこと昌平が持ってきたユウの戸籍謄本と
義明の男装少女画像をわたわたしながら隠して会話再開
「ユウちゃんどうしてここに?」
昌姉ぇ焦るな、相手はここでやってたことは何も知らない!!
はず……
「ん、真から軽音部やってるって聞いたから探しちゃったよ」
だからって来んなユウ
義明の暴走ぶりが見られんジャマイカ
「そ、そうか…
そろそろ鍵返さなきゃいけないからまた今度な」
と必死な言い訳かます真、かなりキョドってんぞ
「あれ?ここって軽音部だったっけ?」
義明テメェぶっ殺す!!!!
キサマはこのバクダン(ユウ)をここに留めるのがどんなに危険か分からんのか!!!!!!
2ちゃん風に言えば空気嫁だこのアニモー!!
- 33 名前:秀穂ゴッドファーザーズ ◆z1nMDKRu0s 投稿日:2005/08/08(月) 13:52:56 ID:06Togo+4
- 「で、ホントは何やってたの?
ってか義明って軽音部だったの?」
あーマズイ、ユウ完璧に疑ってやがる
「ちょっとアニソンでカッコイイのないか聞いてただけよね義ちゃん」
義明に向かって微笑む昌姉ぇの顔に書いてあること
テメェこれ以上逆らったら殺す!!!!
あーこわい
「そうそう例えば前深夜にやってたアドベンチャーのOP歌ってたALICE PROJECTとか……」
「アドベンチャーじゃねぇアヴェンジャーだ!!!!
しかもALICE PROJECTなんて存在しねぇよ!!!!
貴様天下のALI PROJECTを愚弄した罪は重いぞオラオラァ」
また始まった……
今度は昌姉ぇが首絞められてる
好きなバンドの名前間違えたからってここまで興奮するヤツも珍しいな。上の間違い言ったの真だけど
「かふっ、く…苦し……」
段々顔が真っ青になってくる昌姉ぇが死ぬのにあと10分
- 34 名前:秀穂ゴッドファーザーズ ◆z1nMDKRu0s 投稿日:2005/08/08(月) 14:15:34 ID:06Togo+4
- 「あぁ知ってる、アリプロの月蝕のグランギョルだっけ?」
おぉユウタン知ってましたか、しかもアリプロなんて略語まで……
「知ってんの?」
義明クン興味しんしんデスねぇ
隠れオタを発見したような顔してますよー
「うん、確か『極彩の楽園 独裁者の庭園
時は一千一夜 魔の都』って歌だよね」
「ちょい待ち、お前一旦全部歌ってみ」
真どうした? 何か引っかかるものがあったか?
「え? 覚えてんのここまで」
「だったらホイ歌詞カード」
ちょっとまて義明、お前歌詞カードどっから出した
見間違いしてなけりゃ股間からでたぞ
「あ、うんありがと
ってアレこんなにグロい歌詞だったの!?」
グランギョルの歌詞見ての一言
まあ確かに普通なら
『錆び付く短剣を拾い上げこの胸に
向けてかざすたび赤き血が生きる痛みにたぎる』なんて想像するだけでコワいよな
「はいミュージックスタート!!」
真クン義明が持ってたCDをステレオに入れてスタート!!
- 35 名前:秀穂ゴッドファーザーズ ◆z1nMDKRu0s 投稿日:2005/08/08(月) 15:12:24 ID:06Togo+4
- は〜いミュージックスタート!!
「え? え? 歌える自信無いよ」
「「いいから歌え!!」」
みんなの迫力に押されて仕方なく歌い始めるユウタン
「頭上には星屑 落ちるは奈落の底 幕開けし暗黒 グランギョル」
あのーすみません
今歌ってんのユウですよね
ホントにユウだよね
作者CDしか聞いたこと無いんですけどここに
ア リ プ ロ を 超 え た 香 具 師 が い ま す よ
なんか迫力が違い過ぎるんですけど……
なにこの歌唱力、ユウおまいこんな才能あったんですか?
「お〜い、曲終わったよ」
いつの間にか終わってたみたい、あんた何者だよユウ
「あ、終わったのか」
- 36 名前: ◆z1nMDKRu0s 投稿日:2005/08/08(月) 15:13:40 ID:06Togo+4
- とりあえず今日の分は終了
- 37 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2005/08/08(月) 19:08:10 ID:Q77WE4yS
- ゆいは天性の司いじり職人って感じでいいなぁ。
今後、どんなふうに絡んでくるかに期待。
キャラサロン板の方も覗いてるんで、これからも頑張って。応援してる。
- 38 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2005/08/08(月) 22:08:20 ID:KAuAPmYU
- GJ!まさか月蝕グランギニョルが出てくるとはw
ところで前スレ、このまま落とすにはもったいなさ過ぎるSSばかりだと
思うんだが、エロパロ板総合SS保管庫の管理人さんにお願いして
SS収蔵してもらうということはどうお考えでしょうか職人さんがた。
と、一住人が勝手に発言してみる。いや真面目な話。
- 39 名前: ◆z1nMDKRu0s 投稿日:2005/08/08(月) 22:16:10 ID:06Togo+4
- むしろやってほしい
司神も続けるらしいし、過去の経緯が分からんと話がわからない
そんな経験このスレ住人にさせたくない
- 40 名前:司 ◆aPPPu8oul. 投稿日:2005/08/08(月) 23:25:09 ID:xfSYLDW1
- 「晶と…」とか完結してない話もあるしまとめてほしいなーと思ってたとこです。
むろん自分のも格納していただけると嬉しい。
- 41 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2005/08/09(火) 00:33:46 ID:5lSEDbh9
- ナ、ナサ様も、
ナタリー話。お、終わりなんてこと
まだなななないですよね!?
お願いしますよォ〜!!(←切実)
- 42 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2005/08/09(火) 02:27:22 ID:YoM+vBxs
- ナサ神様、思い出したことがあります。
緊張するとどもりが出る騎士道精神にあふれた巨漢の衛兵長のことです。
衛兵長の同僚あるいは部下の中に、線は細いが腕が立ち、力は弱いが
技は切れ、口も悪けりゃ頭も回る、ふてぶてしい態度の一方で、何か
大きな秘密を隠すように神経質、そんな人物がいたような気がします。
彼は女のような顔(病気か呪いか、髭が無い)にコンプレックスがあり
それを指摘されると所構わず決闘を申し込み容赦なく叩き伏せるため、
常の隊員不足と他隊からの苦情が、衛兵長の目下の悩みとなっていた
ような気がします。
単純で人が良い衛兵長と、何を考えているか分からないと陰口を
たたかれる彼は何故か馬が合い、互いに互いを補いながら手柄をたて
昇進したり褒美を得たりしたような気がします。
戦場でか、くせ者を追ってか、彼が負傷した際、治療しようとお仕着せを
脱がせようとした衛兵長に、気軽に触んじゃねー大丈夫だっつってんだろ
などと言い放ったような気がします。
人に弱みを見せない彼の性格を知っている衛兵長は、苦痛に歪んだ顔から
傷が浅くないことを確信し、ボケカストンマとののしられながらも
手当のために無理矢理押さえ込んだような気がしますが・・・
えーと、その後が思い出せません。
当方の記憶違いでしたらお詫びいたします。
- 43 名前:ナサ(あっさり帰宅 投稿日:2005/08/09(火) 05:49:51 ID:O8QDteVY
- 北の酒場の酒は旨い
>42
あなたがあんまり上手に語るから読んでるうちに洗脳されてきた…
いっそのことあなたに書いていただきたry
真面目な話
とある王国外伝って感じでこのネタをアレンジして書いてもいいだろうか?
アレンジしてるうちに元ネタ展開が遵守できなくなるかもしれないけど
それから保管庫ですが、そうしていただくと俺も嬉しいです。
- 44 名前:38 投稿日:2005/08/09(火) 23:03:13 ID:BHHj4HdH
- よかった、現在の神職人なお三方に同意いただけたようだ。
では言いだしっぺの自分がひとっ走り管理人さんにお願いしてくる。
レス番抜き出さなきゃならないので多少時間は掛かるだろうが、
スレ落ちないうちにやらなきゃ…
- 45 名前:42 投稿日:2005/08/09(火) 23:13:25 ID:6aLAKMBg
- >>43
書いてください、お願いします!
実は書いて下さることを、あわよくばと期待していました。ニヤリ
自分の記憶違いも多くあるでしょうから、好き勝手に料理して下さい!
(´-`).。oO(衛兵長に萌えてしまったなんて、暑さのせいかな。
- 46 名前:38 投稿日:2005/08/10(水) 00:25:12 ID:5TuHttwy
- 行ってきた。
ただ、管理人さんもご多忙のようなので、管理人さんが収蔵してくれる前に
スレが落ちちゃったらもうどうしようもないので、そうなってしまったら許してくれ。
あとコテの職人様、かなり勝手にコテ名を略してあったりします。
申し訳ありませぬ。
- 47 名前:司5 ◆aPPPu8oul. 投稿日:2005/08/10(水) 01:34:58 ID:TZ3FZ67G
- >46
お疲れ様です。こっそりまとまるのを待ってます。
さて、もう五話目(間に百合を入れると六話目)となりました…
前スレでのご要望に自分でもビックリなスピードでお答えして、嫉妬話を投下。
例によって例の如く前半のみ。エロは待て次回。
* * * * *
「…先生、だ」
思わず口にした。周囲には誰もいないのに。
涼みに入ったデパートで、隆也が女子生徒に手を引かれていた。顔は知っているが名前は知らない。
たしか3年生だったと思う。
二人がいたのはよりによって水着売り場で、華やかな女性物の水着を物色している。
大胆な水着を体に当てて笑う女子生徒に、隆也も笑いながら何か言っている。
隆也がもてることは知っている。学校でも、男女問わず生徒に囲まれていることが多い。
「………」
足早に、逃げるようにその場から離れた。
隆也が笑っているのを見たくなかった。
これが学校の中でなら、きっと我慢できたのに。
苛立ちだけで家に帰ったが、自室に足を踏み入れた途端涙が溢れてきた。
バカだ、と自分を笑う。
きっと隆也は無理やり連れまわされているだけで、人が良いからああやってのん気に笑っているだけで。
きっとそうなんだ。それなのに。
「…ぅ…っ」
ベッドに倒れこむ。頭にくるくらい温かい布団に涙がしみこんで、こんなときだけ吸水性に感謝する。
わけがわからない。このくらいのことで泣くなんて。
携帯が鳴った。
隆也からの通話の着信音だ。この音が鳴るたびにドキリとする。
何度聞いても慣れなくて、心臓に悪いので普通の着信音にしようと思うのにできずにいる。
今は、出たくない。枕に顔を押し付ける。
十数回はコールがあっただろうか。着信音は鳴り止んだ。
「…馬鹿」
誰に対して言ったのかもわからない。そのくせ、言った途端にまた涙がこみあげてきた。
「………っ」
感傷的な気分なんてお構いなしに、外では蝉が鳴いている。
- 48 名前:司5 ◆aPPPu8oul. 投稿日:2005/08/10(水) 01:35:30 ID:TZ3FZ67G
- 気温は体温並で、まだ窓も開けていない部屋はサウナのように暑い。
それでも、温かすぎる布団に身を沈め、枕に涙をしみこませていた。
じわじわと、汗が噴出す。堪えきれずに顔を上げ、立ち上がった。
そうだ、暑いのに耐えられないからベッドから降りたんだ。そう自分に言い訳して、窓を開ける。
放り出したままの荷物を拾い上げ、”仕方なく”携帯を手に取る。
画面を見れば間違いなくそこには隆也の名前がある。
唐突に(携帯なんてものは大体がそうだが)携帯が鳴った。あの着信音で。
反射的に通話ボタンを押してしまう。しまった、と思ったが遅かった。
耳に持ってくる前に、慌てた声が聞こえてきた。
「司?お前いまどこにいる?」
「…え…」
自分の声が泣き声だったことに気付く。気持ちを落ち着けようと、ベッドに腰掛ける。
「…あ、家に、いますけど…」
「あぁ…そっか。うん。さっき鳴らしたんだけど気付かなかったか?」
罪悪感に胸が痛む。
「いえ…ちょっと、手が離せなくて」
「そうか。あのな、さっきお前のこと見かけたんだけど、探してもみつからなかったから…もう帰ってたんだな」
「…はい…」
司の声がいやに低く小さいことに、隆也はようやく気付いた。
「…あー、その、だな。暇ならこれからどっか行かないか、って誘うつもりだったんだけど…機嫌悪いのか?」
司が嫉妬に胸を痛めていたなんて、想像もつかないのだろう。それが当然かもしれないが、それでもカチンときた。
「いえ、別に」
今度は確実に声にトゲが含まれている。
「別に、って…怒ってるな。何かあったのか?」
てめぇのことだよ、といささか口汚く心の中で罵って、どうやってこの怒りを伝えようかと考える。
「別に何も。でもそうですね、俺、機嫌悪いみたいだから、これからどっか行ってもこのままかもしれない」
電話の向こうで隆也が頭を抱えているのがわかる。司がこんなに機嫌が悪いのは初めてのことだ。
もっと困ればいいんだ、と思う。こんなことをしてもどうにもならないと、本当はわかっているのに。
「…なぁ司…少し、話がしたい」
「してるじゃないですか。まだ何かあるなら、どうぞ」
我ながら人を馬鹿にした物言いだ。それでもイライラは収まらない。
「司」
- 49 名前:司5 ◆aPPPu8oul. 投稿日:2005/08/10(水) 01:36:03 ID:TZ3FZ67G
- ぐっと。
心臓を掴まれた気がした。
それが緩むと、また涙腺が緩んだようで、胸から何かがこみ上げてくる。
だめだ。こんなの。
「…せん、せい」
今度こそ本当に泣き声だ。
それこそ隆也は困惑しているだろう。さっきまで怒っていたのに、いきなり泣き出すなんて。
「ごめんなさい。先生…ごめんなさい」
「…な…泣くなよ、おい…俺がでかい声出したからか?…いや、あー…その、だな…
くそ…そこで泣かれても何もできないんだよな…」
がしがしと頭を掻いているのだろう。本当に困らせた。きちんと話さなければ、と司が口を開こうとしたとき。
「今から行くから、待ってろよ」
「え……」
一方的に切られた。
呆然としていた司は、はっとして洗面所に向かった。とりあえず顔を洗って、それから少し落ち着こう。
赤い目はなかなかもどりそうもなくて、途方にくれる。幸い両親は仕事に出ていて、夕方まで帰ってこない。
部屋に戻ってウロウロと歩き回りながら、何をどうやって話そうかと考える。
嫉妬しました、と言えばいいんだろうか。
たったあれだけのことで嫉妬して、怒って、泣きましたと言えばいいのだろうか。
笑われそうな気もする。それでもやっぱり、気持ちは収まらない。
もやもやを吹き飛ばすようにクラクションの音がして、窓から下を見下ろす。隆也の車が止まっていた。
降りてこないということは、これからどこかに行くつもり、なのだろう。
あわてて窓を閉めて荷物を手にとって、家を出る。
「先生」
迷わず助手席のドアを開けてすべりこむ。腰を落ち着けると同時に、隆也に抱き寄せられた。
「…もう、泣いてないな?」
優しい声を聞くと、かえって泣きたくなる。
「……はい」
背中をぽんぽん、と叩いて、隆也は手を離した。
「よし。じゃあ行くか」
にこりと笑う。なんというか、罪作りな人だ、と司は思う。
困ったことに今日の司は怒るか泣くかしかできないらしい。また嫉妬の怒りが復活して、ぐい、と隆也の肩を掴む。
- 50 名前:司5 ◆aPPPu8oul. 投稿日:2005/08/10(水) 01:36:34 ID:TZ3FZ67G
- 「待って。その前に」
運転席にまで身を乗り出して、キスをする。戸惑う隆也の頭を抱いて、深く深く。
「ん…む……ちゅ……」
舌を絡ませ、唾液を注ぐ。いつもとは逆に、少し上にある司の頭を掴んで、隆也は無理やり唇を離す。
「っは、ちょっ、待て待て。どうした?今日のお前変だぞ?」
「嫌?」
じっと見つめると、隆也の頬が少し染まった気がする。
「嫌って…嫌じゃないけどな…その、さっきから怒ったり泣いたり…俺もどうしたらいいかわからないよ」
「…俺もわかんないんです」
お互い答えようがない。
「……とりあえず、ちゃんと座れ。車出すから……」
「はい……」
揺らぐアスファルトの上を滑り出した車の中には、変な空気が漂っている。
耐え切れずに隆也がラジオをつけると、何年か前に流行ったテンションの高い夏の歌が聞こえてくる。
この空気にはじつに合わない。
『♪水着のあとの/ヤらしさに身悶えて…』
そしてその歌詞が、司の地雷を踏んでいる。
「……先生」
「ん、何だ?」
ほっとしたような隆也とは対照的に、司の声は硬い。
「俺も、先生見かけたんだ、今日」
「何だ、そうだったのか?なら声かけてくれれば―」
「女の子と一緒だったから。水着売り場で」
隆也が固まる。うっかりブレーキを踏まなかっただけまだ冷静だろう。
「そうか…あれはな、3年生の…」
「知ってます」
『♪ためらうことに慣れすぎた/素肌の上で事件を起こせ』
起こしたくない事件の予感がする。隆也は先を促したいような促したくないような気分でハンドルをきる。
ためらいがちに司が口を開く。
「…先生がもてることは知ってるけど…」
「いや、待て。俺のはアレだぞ?モテるとかじゃなくて人気があるっていうか…今日のもつき合わされただけで…」
「わかってます!」
- 51 名前:司5 ◆aPPPu8oul. 投稿日:2005/08/10(水) 01:37:08 ID:TZ3FZ67G
- どうも下手なことは言わない方がいいらしい。隆也は今度こそ黙りこむ。
「…わかってるけど…でもやっぱり、見てていい気分じゃなかった。頭に来て…泣きたくなった」
横目に司の表情を伺う。むくれたような、泣きそうな、声をかけにくい雰囲気をまとっている。
「…泣きたくなって…こんなことで、落ち着いてられない自分が嫌になって…」
また泣くかもしれない、と思わせるような声だ。この距離感がもどかしい。
「……俺の家でいいか?ちょっと…遊ぶ気分じゃないな」
ようやく明るすぎる曲が終る。司は何も言わない。ただ、頷いたような気がした。
次の曲は静かだった。この空気には似合いだが、少し物悲しすぎて、司が泣き出さないかとハラハラする。
美しい月夜の失恋を歌った歌が終るころには、隆也のマンションについた。
「…司」
車が止まっても降りようとしない司に声をかける。見ると、自分の拳をもう片方の手で握りしめている。
そして、痛々しいほど真剣に、何もないダッシュボードを見ていた。
「…いくぞ」
助手席のドアを開け、司の手を引く。
部屋は暑く蒸していた。冷房をつけて何か飲み物を出そうと台所に足を向けたら、司に止められた。
服の裾をつかんだ司の、真摯な瞳が隆也を捕まえる。
「…泣いたんだ…俺、何でか、わかんないまま…」
司の頭をゆっくりなでる。
「うん…座ろう。ちゃんと、聞くから」
さっきまでの距離を埋めるように、ソファに腰掛け、自分の膝の上に座らせる。
後ろから抱きしめると、腕に手を添えてきた。
「…車の中で、考えてたんだ。何で俺、こんなに不安になったんだろうって…」
「…うん」
「……それで……きっとまだ、自信がないんだろうって、思って。それと」
それも否定してやりたかった。けれど最後まで聞かなくては。隆也は黙って続きを待つ。
「…俺が……俺より先生のこと好きだって言う人がいたら、先生がそっちに行っちゃうんじゃないかって…」
思わず、抱きしめる腕に力が入る。
「……馬鹿なこと言うなよ…」
「だって」
司が腕の中でみじろぐ。
振り向こうとしているのだと気付いて腕を緩めてやると、あっという間に隆也の腰にまたがった。
泣きそうな顔をしているくせに、やることがいつになく大胆だ。
- 52 名前:司5 ◆aPPPu8oul. 投稿日:2005/08/10(水) 01:38:01 ID:TZ3FZ67G
- 「…俺、いっつも先生に言ってもらったり…して、もらったり…して、それを返してるだけで…
だから、ちゃんと伝わってないんじゃないかって思って」
たしかに司は受け身だが、別に隆也はそれが不満というわけではない。
苦笑してなだめてやろうと思ったら、口を塞がれた。
そういえばさっきも司は唐突にキスをしてきた。こういうことだったのかと納得しながら、キスに応えてやる。
「んふ…ん、ぅ……ん……」
応えてやる、つもりが結局は隆也のほうが上手で、力の抜け始めた司の背を支えて、存分に舌を貪る。
「…んは…先生」
とろんと惚けたような目で見つめられると、このままどうにでもしたくなる。
ひょっとしたら自分が性急すぎるのだろうか、と苦笑せざるをえない。
「俺は今のままでも構わないぞ?ちゃんと司の気持ちは伝わってるし…」
「…そんなの、わかんない…」
司の眉間に皺がよる。
「わかんない、って言われてもなぁ…こればっかりは」
頭を掻く隆也に、司はただでさえ近い顔をさらに近づける。
「だから俺が、ちゃんと先生のこと好きだって、わかってもらえるようにするから」
「……するからって、何を?」
司の口元がにやりと笑った、ように見えた。
「……色々」
言った司の唇が、耳を食む。
「っう!?」
間抜けな声をあげてしまった隆也にはおかまいなしに、耳の形を唇と舌でなぞり、吐息をふきかける。
「お、おい、ちょっと…」
待てと言われて止まるわけがない。そのまま舌は頚動脈をたどり、手はいつの間にかシャツのボタンを外している。
意外に手際がいい。などと感心している場合ではない。
「つ、司、気持ちは嬉しいんだけどな…」
ついでに少し気持ちいいのだが、そんなことを言ったら取り返しが付かないことになりそうな、気がする。
「…俺にされても、気持ちよくない?」
* * * * *
問題は司がどこまで攻めるのか、の一点w
- 53 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2005/08/10(水) 07:16:42 ID:BM70h5/q
- 蝶期待
>問題は司がどこまで攻めるのか、の一点w
「あなたが先行できるのは、最初のコーナーまでよっ」
ごめんなさい
- 54 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2005/08/10(水) 11:20:08 ID:INKBmX3p
- テーマ曲はhigh pressure?懐かしい・・
攻められるだけ攻めちゃってください。
でなきゃ1位は取れないぞ!
- 55 名前: ◆z1nMDKRu0s 投稿日:2005/08/10(水) 11:21:04 ID:3mLNsMcU
- クフゥ
あんたスゲーよ
泣く司タンに萌え萌えですがな
- 56 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2005/08/10(水) 17:06:01 ID:81WiYiIJ
- Mっ子だからなぁ司…
次の投下で責受転倒に500ペソ
- 57 名前: ◆z1nMDKRu0s 投稿日:2005/08/10(水) 19:44:00 ID:3mLNsMcU
- さぁ―――――ハったハった
今んトコ3課のオッズは16倍だよ
- 58 名前:司5 ◆aPPPu8oul. 投稿日:2005/08/10(水) 20:18:08 ID:TZ3FZ67G
- なんか盛り上がってくれてるようなのであえて後半を半分に割ってみようか。
とか、空気ぶち壊してみる。
* * * * *
下からこう、上目遣いで見上げられるのは、やはり男としてはぐっとくるものがあるわけで。
「いや…気持ちいい…」
言っちゃった。嬉しそうに歪んだ司の唇が鎖骨におとされ、舌が這う。丁寧に往復されるとぞくりと肌が粟立つ。
シャツは完璧に脱がされ、司の舌は胸へと降りる。
男には意味のない飾りを、柔らかな唇がねぶる。
「……は……」
思わず漏れた息に、司は満足げに目を細め、ざらざらとした舌で乳首を責める。
隆也は不思議なデジャヴュを感じる。おかしい。こんな経験はないはずなのに、と考えて、気付いた。
いつも隆也が司にするように、司はしているのだ。
また苦笑しそうになったが、それより先に司の手が股間にのびていた。
服の上から撫でられると、情けないことに半分立ち上がりかけていたモノが喜んでしまう。
「ん、先生……ふふ、興奮してる?」
悪戯っぽく笑った司の手が、服の上から竿を握る。
「お、おい……」
制止の声をふりきって、司は床に降りて隆也のファスナーを下ろす。
下着の中で硬くなってしまった肉棒を開放してやると、ぴくぴくと嬉しそうに震えている。
この状況はまさか、と隆也が本気で焦り始めたがもう遅い。
司の手が根元を掴んで、そのまま扱き始める。
「ちゅ…ぺろ…」
亀頭にキスをして、舐めあげる。
「…く…司、そんなこと…」
して欲しかったが、させたくなかった。
隆也なりに司のことを思って自制してきたことが、思いがけなく実現して、否応なしに反応してしまう。
「ん…ぺろ……んむ……」
裏筋を何度か往復していた舌の動きが止まると、今度は完全に咥えこまれて
柔らかな唇と唾液にまみれた舌が、強弱をつけながら刺激を与え続ける。
つたない動きだが、それでもやはり気持ちいい。刺激に反応して跳ねる肉棒の先から、先走りがにじむ。
「…は…司、もう……」
何度やめろと言っても、止めようとはしない。
この光景自体も、だいぶまずい。
- 59 名前:司5 ◆aPPPu8oul. 投稿日:2005/08/10(水) 20:19:03 ID:TZ3FZ67G
- シャツの胸元からは鎖骨やサラシにおさえつけられた胸元が見えるし、半ば伏せられた目が苦しげに潤んでいるのも、
柔らかな唇にグロテスクな自分が咥えられているのも、どれも興奮を誘う。
「んく…っむ、う……っ…」
強く吸い付いたかと思うと、そのまま大きく唇をスライドさせる。
最初は根元から先端まで、ただ往復するように繰り返していたのが、次第に首を傾け角度に変化をつけてくる。
快感が押さえきれなくなる。わきあがる射精感を押しとどめ、なんとか司の頭を離させようとするが。
「……」
じっと上目遣いにこちらを見上げた司は、どこか余裕を浮べた表情で隆也を挑発している。
びく、と肉棒が跳ねる。司の責めが再開され、一度湧き上がった射精間はこらえ切れないところまで発展していく。
「っく…つか、さ……もう……!」
情けない声をあげながら、力づくで頭を引き離す。それと同時に、司の顔に精液をぶちまけた。
「…は…悪い…」
この光景もそれなりに扇情的で、じっと見入ってしまいたくはなるのだが、
なんだか汚してしまったという意識が強くて、直視できない。
とりあえず手でぬぐってやると、司は非難がましい目で見上げてきた。
「…なんでちゃんと最後までさせてくれないの?」
「最後までって、お前…」
口内発射なんて、司相手にはまだ…まだ?そうだ、たしかに隆也もそのうちしたいとは思っていたのだが。
なんというか、やはり、17の少女相手にするのは少し罪悪感があったというかなんというか。
口ごもる隆也にはお構いなしに、司は不満の声を漏らす。
「…先生のだったら、ちゃんと飲んだのに」
「の、飲むって、お前な、その…俺はお前がしたくないだろうからって…」
床に座り込んでいた司が、隆也の上にまたがる。
「……だから。フツーならしたくないけど…」
どうしたものかと戸惑っていた隆也の汚れた手を取って、口をつける。
「先生のだったら、できるよ」
言って、せっかく顔からふき取ってやった精液を、きれいに舐め取っていく。
「司……も、もういいから、な?良くわかったよ…」
胸を締め付けられる思い、とでも言えばいいのだろうか。
こうも健気な素振りを見せられると、嬉しいと同時に戸惑ってしまう。
「だめ…最後まで、させて」
飲み下すのに時間をかけて、眉間に皺を寄せながらの作業だと言うのに、まだ退かない。
- 60 名前:司5 ◆aPPPu8oul. 投稿日:2005/08/10(水) 20:19:41 ID:TZ3FZ67G
- 「だめだ。こんなモン舐めるの嫌だろ?もう十分わかったから…」
「……わかってない……俺が、したいからしてるの。気が済むまでさせて」
言うと、指の股まで丁寧に舐めていく。もう、今日の司は止めようがない。本当に気が済むまでさせるしかない。
諦めた隆也の手を完璧に舌で掃除して、ようやく司は笑って見せた。
「はい、お終い。気持ちよかった?」
「…はは……あぁ、良かったよ……興奮して困った。どこで覚えたんだ?あんなこと」
こっそりと服を戻そうとした手を、司の手が止める。
「だめ。まだ終ってないよ。…まぁ、情報源は男だから、俺」
まだって、と嫌な予感に背筋を凍らせた隆也は、ぼんやりと考える。
あぁそっか、男子高校生だもんな、エロビデオなりDVDなり、見る機会もあるだろう…って。
「ま、待て、お前クラスの奴らとエロビデオ見たりするのか?」
司の視線が逃げる。かすかに頬を染めて。
「…まぁ、そういうこともあった」
「あった、って…」
それはけっこう、いやかなり、危険なことではないだろうか。
うっかり股間を触られたりしたらそれこそ一発でバレるし、下手をすれば貞操の危機という可能性も…
「それはもういいから!…それより先生、したくない?」
司の手が油断していた隆也の股間をまさぐる。
「いや、よくないぞ…って、おい。ま、待てって……っ」
鈴口に爪をひっかけるなんて、それこそ見て覚えた知識だろう。
「待ってもいいけど、止めないよ?」
強めに竿を握られると、うっかり反応してしまいそうになる。
「…う、いや、司、その前にちょっと話をしよう。
そのだな、お前が男としてエロビデオを見るのは別にいいんだが、その場に他の男がいるっていうのは…」
萎えた肉棒をいいように弄ばれながらの説教はあまり説得力がない。
我ながら情けないと肩を落とす隆也の上から、司が降りる。
「……もう、しないよ」
隆也の正面に立って、司はおもむろにシャツを脱ぎ捨てた。
「…司?」
「俺も危ないなって思ったから……ねぇ先生」
バックルをはずすと、男物のジーパンは腰骨の下まで落ちる。
細めのジーパンだと腰からの丸みのあるラインが見えてしまうのだ。
- 61 名前:司5 ◆aPPPu8oul. 投稿日:2005/08/10(水) 20:20:28 ID:TZ3FZ67G
- 「先生も、ヤキモチ焼いてくれるの?」
司の頬は朱に染まっている。ジーパンは足元に滑り落ち、日に焼けていない白い腿が目の前に現れる。
「…ヤキモチ、か。それもあるな…司のこんなかっこ、誰にも見せたくないしな…」
下着の一部が色が変わっているのが見える。
「…濡れてるな」
その一言に、司の下半身がうずく。
「…うん……したく、なっちゃったから…」
ゆっくりとさらしを巻き取っていく。おさえつけられていた白い胸が露になって、呼吸とともに上下する。
見れば頬は火照っていて、少し息が上がっているようだった。司も興奮しているのだ。
濡れた下着を下ろすと、愛液が糸を引く。
するすると下ろして足を引き抜くと、生まれたままの姿になった司が再び隆也の上にまたがった。
明るいところで見ると、体の陰影がよくわかる。
「…ね、先生、しよう…ううん、して、あげる」
司の唇が重なって、舌が差し入れられる。精液の匂いが鼻につく。
わずかに苦味の残る口内を貪ると、それに負けじと舌を絡めてくる。
まだ、気持ちを伝えきれていないと思っているのだろうか。
「…っは……司。何度も言うけどな…ちゃんと、お前の気持ちは伝わってるぞ……と、いうか」
司の腰を抱き寄せて、笑う。
「心配しなくても、俺はお前しか見えてないよ」
「…俺だって、先生しか見えてないもん……先生じゃなきゃ……こんなこと、できない」
火照った頬に口付けて頭を撫でてやると、拗ねたような顔がすこし緩む。
「うん…そうだな。嬉しいよ。ただな……無理はしなくていい。あと」
腰を強く抱き寄せ、司をソファに押し倒す。
「ひゃ、先生っ!?」
「…俺をリードしようなんて100年早い」
* * * * *
はい、こんな生殺し。
明日には終らせますのでしばしお待ちを。
- 62 名前: ◆z1nMDKRu0s 投稿日:2005/08/10(水) 20:30:18 ID:3mLNsMcU
- あんた酷いよ
こんなに酷い人だとは思わんかったよホント
生殺しはやめてぇぇぇ!!!!!!
- 63 名前:司 ◆aPPPu8oul. 投稿日:2005/08/10(水) 20:47:29 ID:TZ3FZ67G
- >62
くっくっく、こういうのが好きなんだろ?
嘘ですごめんなさい。力尽きただけです。
責めは書けんとです。
- 64 名前:秀穂ゴッドファーザーズ ◆z1nMDKRu0s 投稿日:2005/08/11(木) 00:10:03 ID:LzY258zD
- >>63
俺はMじゃない!!投下
あらあらあらあら
ユウが歌い終わったってのにみんなポカーンとしてますな
まぁあの歌唱力見せつけられたら普通唖然とする罠
「すげぇ、すげぇよユウ!!!!
お前なんでこんな才能隠してたんだよ!!!!」
「え? え?」
突然ハイテンションになる真、ちょっともちつけ
ユウタン何がなんだか良くわかりませんって顔してるぞ
「ユウちゃん……」
よろよろとゾンビみたくユウに近づく昌姉ぇ、なんか白い服着せれば貞子みたいだな
「なんで!! なんでこんなに巧いのよぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」
昌姉ぇ
流れる涙が
暴打フォン(字余り)
「これで秀穂祭出れんじゃね?」
ソレダ!! ソレダ淳一!!!!
ちなみに秀穂祭ってのは俗に言う学園祭な
- 65 名前:秀穂ゴッドファーザーズ ◆z1nMDKRu0s 投稿日:2005/08/11(木) 00:11:21 ID:LzY258zD
- 「こうしちゃいらんねぇ!!! 明日から練習だ!!
真ォ!昌姉ぇ!ギターとベース忘れんなよ!!!!」
気合が入ってますねぇ淳一!!
まぁ始めにこいつが軽音部作ったんだからそれもそうか
「おいユウ!! 明日暇か?」
「え?特に予定無いけど……」
「だったら明日駅に来い!!
みんなでやるぞぉぉぉぉぉぉ!!!!」
イケイケ真!!!!
イケイケゴッドファーザーズ!!!!!!!!
「「「じ・ご・く・が・な・け・れ・ば・て・ん・ご・く・も〜らい!!!!!!」」」
勢い良く解散してユウを除く四人(真・淳一・昌姉ぇ・義明)で下校
「で、結局何の為に集まったんだっけ?」
「「「あ……」」」
こういう風にバカだがなんとかしてくれるだろう
多分な
- 66 名前:秀穂ゴッドファーザーズ ◆z1nMDKRu0s 投稿日:2005/08/11(木) 00:24:49 ID:LzY258zD
- 「ふぃ〜」
自宅に帰ってきた真、なんか親父臭いのはキニシナイ
ちなみに自宅って言ってもアゴはずれ荘とかいうアパートだがな
きったない四畳半の部屋にギター置いてくつろぐ
しかし真よ、枕代わりにしてるその物体はなんだね
なんだかワイシャツにプリーツスカート着た女に見えるのだが……
まさか……
真、恐ろしい子!!!!
おまわりさーん!!
ここに殺人犯がぁぁぁぁぁ
こら呑気にechoなんざ吸ってんじゃねぇ殺人犯!!
まずその死体をなんとか汁!!!
って動いた? なんかもぞもぞ動いてるーーーっ!!
「あ、兄貴」
し、し、し、喋っターーーーーーー
くる〜きっとくる〜
亡霊がキタ━━(゚∀゚)━━!!
- 67 名前:秀穂ゴッドファーザーズ ◆z1nMDKRu0s 投稿日:2005/08/11(木) 00:51:11 ID:LzY258zD
- 「起きたか」
ま、ま、ま、ま、ま、真ーーーーーーーーっ!!
ナニ普通に死体と話してんだよぉぉぉぉぉ!!!!
まさかまさかまさか……
真!! 恐ろしい子!!!
霊感持ちなのか?そうなのかぁぁぁぁ!!!!
「疲れた……」
「だからって俺様の家に無断で上がり込むな」
「バレー部と帰宅部じゃ体力の使いっぷりが違うのよ」
「そうですか、わかったから早く帰れ」
「大会行ってた妹を痛めつける兄って最悪だね」
「わかったからとっとと帰れ」
「はいはい」
どうやら真の妹? らしき人物は生きてる模様
つーか真の妹デカっ。180はあるぞ絶対、兄貴よりも背高いぞおい
のそのそと立ち去る様はまるで熊
つーか熊だろ真の妹
「やっと邪魔者は去ったか」
時計を見れば7時36分、飯の時間で砂
- 68 名前:秀穂ゴッドファーザーズ ◆z1nMDKRu0s 投稿日:2005/08/11(木) 01:14:02 ID:LzY258zD
- 真、押し入れからラ王出して沸かしたお湯を入れて待つこと3分
食堂からパクッてきた箸で食べる、ついでにチンしたサトウのごはんも掻き込む
「お〜れ〜♪ お〜れ〜♪ チャカチャカチャ
ノグチヒデヨ
サンバァ〜〜〜♪」
なんだこの奇々怪々な着メロは
つってもこの部屋には真しかいないから真のケータイなんだけどな
「誰だよ」
なんかサブ画面には昌姉ぇと書いてありますな
真、ケータイを開いて新着メールを見る
コラコラ、箸をくわえたまんまケータイ見るな
えーっとメールの内容はなんでつか?
『もっしー
あのあとヨシちゃんに男装についてイイトコ無いかって聞いたの
そしたら2chのエロパロ板ってところに男装少女萌えってのがあるんですって
ちょっと行ってみて』
- 69 名前:秀穂ゴッドファーザーズ ◆z1nMDKRu0s 投稿日:2005/08/11(木) 01:20:42 ID:LzY258zD
- ほう、このスレも有名になったもんじゃのう。で真の返信
『昌姉ぇ自分で行けよ
何故オレ?』
『マコちゃんよく2chでよくエロ画像仕入れているじゃない
詳しいでしょ?
私のだと繋がんないのよねぇ』
『エロパロなんて行ったことねーよ
iMONAでも入れて見ろ』
『ほらマコちゃん詳しいじゃない
ってなわけでどんなところなのか確認よろしくね』
- 70 名前: ◆z1nMDKRu0s 投稿日:2005/08/11(木) 01:21:17 ID:LzY258zD
- とりあえずここまで
- 71 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2005/08/11(木) 01:40:08 ID:eMHfQMav
- すっげ
来てる来てるー
嫉妬する司タソ萌えー!!がんばって攻めてみたけど結局受けに戻っちゃうところも萌えー!!
ゴッドファーザーズの人面白いこといろいろ考えるなあ。熊妹ワラタよ。そして、
そして早くユウタソの艶姿を!!いつまでも待つから!!
でもってナサ氏、お気が向いたらまた書いてくれ。
- 72 名前:司5 ◆aPPPu8oul. 投稿日:2005/08/11(木) 14:38:53 ID:bI3vIHZv
- >>64-70
このスレキター!
真の反応が楽しみです。ニヤニヤしながら待ってます。
そして一日焦らして後半の後半投下しますよ。
* * * * *
にやりと笑って、胸の谷間に吸い付く。
「っふ、やっ…あ……」
じっくりと舐め回し、色付き立ち上がった乳首を口に含む。吸い付き、舌でこね、歯を立てる。
空いた手でもう片方の胸ももみしだき、指先で乳首をいじってやる。
「…っん、ひゃあ…んっ……」
やっぱりこちらの方が性にあっている。司にしてもそうだろう。
いつも最初は抑えてしまう高い声が、今日ははっきりと聞こえる。
存分に胸を弄んで顔を上げると、すっかり惚けた顔でこちらを見ている。
いい加減に服を脱ぎ捨てて、体を後ろにずらした、
「…お返しだ。もうちょっと我慢しろよ」
言って司の腿を持ち上げて、片足をソファの背もたれにかけさせる。大きく開かれた脚の間は、予想通り。
「や、せんせ…恥ずかしいっ……」
「…こんなにびしょびしょじゃ恥ずかしいよな…俺のをしてて、興奮した?」
花弁を開いてやると、膣口が愛液に濡れてひくついている。
「……う、ん……」
恥ずかしげに絞り出した声に満足げに笑って、次はどうしてやろうかと考える。まぁ、お返しだろう。
「ふ…やっぱ司はこっちの方が合ってるな」
「何言っ…ひゃっ……あ、や……は……」
上下線を舌でなぞり、愛液を舐め取る。膣口に口をつけてすすりあげると、びくりと腰が跳ねる。
「っや、あぁっ……っは、はぁ、はっ…はぁ…」
息が乱れているようだが、もう一押し。膣口を舌でつつきながら、陰核を指で弄ぶ。
「…あ、だめっ…や、やぁっ、せんせぇっ……!」
司の手が頭を抑える。快感に震える腰を引こうとするが、太ももを抱いて抑える。
「ん…舐めても舐めても出てくるな…」
口を離し司の羞恥心を煽って、指を入れる。膣壁を押し分けて、中をほぐすようにぐるりとかき回す。
「っ、や…ぁ…はぅ…んんっ…」
「……いい声だ……」
司の背がしなる。ソファにかけさせた腿の内側に舌を這わせて、責めを再開する。
- 73 名前:司5 ◆aPPPu8oul. 投稿日:2005/08/11(木) 14:39:23 ID:bI3vIHZv
- 水音をたてて抜き差しを繰り返し、親指では陰核を弄り続ける。
「ひ、やぁっ…あぁっ…だめ、だめぇっ……!」
苦しげな息の合間を縫うように喘ぎ続け、全身が小刻みに震える。
さらに激しく指を抜き差しし、陰核を強くつまむ。
「っあ、ひぁっ…あぁぁぁっ………!」
悲鳴のような声とともにびくびくと体が跳ね、膣が指を締め付けて、勢い良く愛液が零れる。
「は、はぁっ…はっ……ふ…せん、せぇ…」
指を抜いて目線を合わせるように体を伸び上がらせると、涙で潤んだ目に捕まった。
「せんせっ…も…やだ…」
泣き声を可愛いと思うあたり、自分の性癖も多少歪んでいるかもしれない。背に腕を回される。
「ん…やだって、何が嫌だった?」
朱に染まった首筋にキスをして、できる限り優しく、頭を撫でる。背もたれからずり落ちた足が、腰を挟む。
「だって、先生の顔も見えないし…指だけで…」
可愛いことを言ってくれる。それでもからかいたくなるのはどうしようもない。
「口も使ったんだけどな」
むっとした表情を浮べた司の手が、耳をひっぱる。
「いてててて。悪い、ごめん」
やっと耳を開放されて、羞恥に消え入りそうな司の言葉に耳を傾ける。
「…だけど…それだけで、い…っちゃう、のは…やだ」
「司も手と口でイかせてくれただろ?お返しだよ」
本当に、それだけのつもりでやったのだが。司にはどうも報復のようにとられたらしい。
「……う……先生は、嫌だった?」
思わず苦笑する。この顔の近さで見つめられて聞かれると、正直に答えるほかない。
「いや、嫌ってことはないけどな…その、おれもやっぱり司といっしょだよ。
一方的にされるよりは、一緒に気持ちよくなりたいな」
照れくさそうに笑いかけると、はにかんだ笑みを返してくれる。ついでに囁かれる言葉は、可愛くて仕方ない。
「うん……じゃあ、くれる?」
「もちろんですとも、姫」
笑って、再び力を取り戻した肉棒を膣口に押し当てる。
「…あ、今なら証明できるな。司しか見えてないって」
ぴく、と震えた司の潤んだ目が、不思議そうに隆也を見る。
「…正直、キスだけで勃っちまうんだよ……これは司が好きでしょうがないってことだよな」
- 74 名前:司5 ◆aPPPu8oul. 投稿日:2005/08/11(木) 14:39:57 ID:bI3vIHZv
- 照れ笑いばかりしていて、十代に戻ったようだ。
「…俺も、キスだけで……濡れちゃう…」
あぁ、もうどうしようもない。いくらでもキスしてやろう。
はにかんだ司の頬に手を添えて、唇を食む。そのままゆっくりと腰を進めて、熱い膣の中へと肉棒を押し込む。
膣内のぬめりと躍動は受け入れるようにも拒絶するようにも感じられる。ただそれが、たまらなく気持ちいい。
「…ん、んぅ…っ……んむ…」
「ん…んむ……ちゅ……」
声をあげたがる司の口を塞いだまま、根元まで押し込む。
「…っは、はぁ……は…んぅっ…」
口を離すと、すぐに鼻にかかった高い声が漏れる。
「ん…司の中、すごいな…絡み付いてくる…」
その肉壁を押し分け、腹側のざらざらしたところをこすり上げる。頭に突き抜けるような快感。
「…っく……は……」
「ん、あっ……は…はぁっ……あ…ん、せんせぇ……」
喘ぎ声に耳を傾け、しばしゆっくりと腰を振り続ける。
しかし絡みつく膣壁と、わずかに揺れ始めた司の腰の動きに快感が高まり、びくりと肉棒が跳ねる。
「司……は……いく、ぞ…」
しっかりと司を抱きしめて、徐々に腰の動きを速め、内部をえぐる様に突く。
「は…んっ、や…あ、あっ……ふ、くっ……あぁっ…!」
できる限りの力で持って腰を打ちつけ、押し開いても押し開いても締め付ける膣をえぐる。
それに応えるように膣はより激しく複雑に収縮を繰り返し、お互いの性感を高めていく。
「ひゃ、せんせっ…は、あっ…せんせぇっ…!」
がくがくと司の膝が震え、背に回された腕に力が入る。
「ん、司……一緒に……っ」
「ふ…うんっ…」
司の返答を待たずに腰を打ちつけ、絡みつく内部を犯しつくす。
快感が全身をかけめぐり、肉棒の膨張も限界に達する。
「あっ、だめっ…せんせっ…ひゃ、あっ…あぁぁぁぁぁっ!」
悲鳴とともに膣は暴力的な締め付けで精液をしぼりとろうとし、それに抗いきれず最奥に精を放つ。
「…っく……は…はぁ……」
びくびくと跳ね、蠢き続ける肉棒と膣に追い討ちをかけられながら、互いを抱きしめあい息を整える。
「はぁ、は…は……せんせ……」
- 75 名前:司5 ◆aPPPu8oul. 投稿日:2005/08/11(木) 14:41:13 ID:bI3vIHZv
- 濡れた目が隆也を見つめる。この顔は誰にも見せたくない。
「は……司……好きだ……」
頭を撫で、頬にキスをすると、同じように頬にキスを返される。
「ん、俺も…先生が好き……」
顔が緩むのを抑えきれない。ようやく落ち着いた肉棒を抜き、司の体を抱き起こして座らせる。
力なく体を預けてくる司を抱きしめてぼんやりと考える。
抱き心地のよい体はまだ火照っていて、重ねた肌の間を汗がつたっていく。
まだ外は明るい。冷房の効き始めた室内は涼しくて、このままでは風邪をひきそうだ。
「…一緒に風呂、入ろうか」
頭を撫でながら何の気なしに言うと、司に耳を引っ張られる。
「……やだ」
さて。どうやって納得させようか。
とりあえず謝って、なだめて、あとはいつものように真面目にお願いしたら、きっと聞いてくれるに違いない。
3Rは無理だろうが、今日は存分に可愛がってやらなければ。
でないと、いつまた今日のように「可愛がられ」るかわからない。
そのときは今日のように返り討ちにしてやろうと、腹の中では決まっているのだが。
とりあえずおしまい
* * * * *
次回は時間をかけて修学旅行準備編をお届けしたいと思います。
予定は未定。
- 76 名前:ナサの中の人 投稿日:2005/08/11(木) 14:52:33 ID:VmsK98D0
- ああ今日も美味しかった…ごちそうさま司タソ
500ペソどっから徴収すればいいの?
というか俺賭けに勝ったのか?まさか分割でくるとは。
そういうわけで再びコテに戻って投下開始。
原案42氏、脚色俺で参ります。
エロまでいくのに時間かかりそうな禿しい予感。
乞気長。
- 77 名前:衛兵長動揺する1 投稿日:2005/08/11(木) 14:55:05 ID:VmsK98D0
- 賓客のための長い長い宴がようやく果てて賑やかな灯火が落とされ二時間がたつ。
広大な王宮は冬も終わりの凍てついた星空のもとにひっそりと静まりかえっていた。
平和で静かな深夜である。
だが、よくよく見れば庭や城壁沿いの要所要所に、闇に同化した漆黒の制服を着た衛兵たちが、王家の紋の縫い取りの金糸と目を、
かがり火に小さく光らせている。
それも普段の当直の人員より、その数ははるかに多い。
非番の者もかり出された総動員態勢のようだ。
なぜか。
その理由は実はしばらく前のとある慶事にさかのぼる。
*
一週間前、王子妃の初めての懐妊の知らせが離宮より届けられた。
その報を告げるのに使者ではなくイヴァン王子本人が馬をとばして乗り込んできたあたりに、
この問題における王家の喜びようを知ることができるだろう。
最もその際、国王執務室内において父子の間でなにやら多少のイヤミの応酬が繰り広げられたらしい。
だがそれは扉の前を護る衛兵長しか知る事のないささやかな珍事であり、王都ではすぐに全ての教会の鐘が鳴らされて、
臣民は早くもお祭り騒ぎの前哨戦を繰り広げることになった。
世継ぎの王子は他の特質はどうあれ聡明なので人望があり、その若く美しい妃の人気は絶大で、
しかも王と王妃がかつてなかなか世継ぎに恵まれなかったことを知る年代の人々の記憶もまだ失せていなかったためである。
だがこの懐妊に誰よりも度外れた感激を示したのは、実は善良なる臣民でもなければ夫である王子でもなく、客観的に見て本人である王子妃ですらなかった。
誰かというと、当然というか意外というか、胎児の祖父である老王その人だったのである。
その喜びようは尋常ではなく、すぐに記念の大量恩赦を行い全ての物資の関税をひき下げ、王国中の全妊婦に見舞金を贈るという騒ぎにまで発展した。
周囲は必死で止めたのだが、国王の上に年寄りという二重苦のせいか人の言うことを聞くような人物ではない。
ついに王の感動は、父祖伝来、王朝始まって以来このかた門外不出の貴重な宝物群を、王宮の迎賓館にあたる正門に近い南棟の大広間に飾り、
これらを上は貴族から下は庶民まで誰彼構わず公開するという……太っ腹は太っ腹なのだが、
これで王子妃無事御出産の暁には一体どんな騒ぎになる事やらと関係者を恐怖に陥れる事間違いなしの大盤振る舞いに及んだのである。
それでも公開期間を一週間と限定できたのは、さすがに女性ならではの現実感覚で、王より一足早く理性を取り戻すことができた王妃の尽力に負うところ大だった。
そしてもちろん、この一週間というものの王宮付衛兵隊の苦労は並大抵のことではなかった。
これまでは北搭にある宝物倉だけ厳重に警護しておればよかったものを、実はこの一週間の間に国外からの賓客をもてなす晩餐会が三つあり、
その間も南館には例の貴重きわまりない宝物が鎮座しっぱなしなわけである。
本来の王室及び賓客の警護任務以外にも、その警護対象が出来心で泥棒に早変わりせぬかとその心配もせねばならず、
もちろんそれ意外の理由による宝物の紛失などあってはならぬので客の全員をそれとなくチェックしていなければならない。
王宮付衛兵長を務めるサディアス・ダジュールの心労は並大抵のものではなかった。
普段から任務一途の熱血な男なので、警護の陣頭に立ちっぱなしでこの一週間、ろくに眠ってもいないはずである。
おそらくこの任務が終わったら血反吐を吐いて倒れるのではないかというのが周囲の部下達の見解だ。
そして今宵が最後の一夜、やっと三つ目の宴が果て、貴重なる宝物は全て元通りに北搭の倉に戻され、このまま朝まで何事もなく無事に過ぎればこの臨時体制を解くことができるというところにまで事態は進んだ。
あと数時間で冬の終わりの弱々しい夜明けの光が、彼ら衛兵の疲れた顔を優しく照らすことだろう。
- 78 名前:2 投稿日:2005/08/11(木) 14:55:55 ID:VmsK98D0
- *
国王陛下にも困ったものだ……。
ふと浮かんだその感慨を不敬と気づいて慌てて脳裏から振り払い、サディアスは衛兵長だけに許されている派手な装飾帽をかぶりなおした。
だが実際のところ、こうして一緒に並んだ部下たちの疲れ果てた顔つきを見ているとその思いが胸をよぎらざるを得ない。
もちろん王子妃の懐妊はおめでたい限りである。
だが、今後長く苦しい妊娠期間を経てご出産になるのはあくまでもナタリー様なのである。
まだまだお妃様にはおつらいこともおありだろうに、現時点でここまで浮かれるだけ浮かれて舞い上がっている老王の無責任なはしゃぎようが、なぜかカンにさわってしかたないのだ。
…疲れているのだろう。
彼は片手をあげて目頭を揉みほぐした。
なんとなく、うっすらと、頭も痛いような気がする。
夜警続きで風邪でも引きこんだか。
自分はもう若くはないのだろうか、と彼はふと思った。
とはいうものの、実は彼は先日三十代に入ったばかりなのでそういう熟した感慨を持つには早すぎるのだが、最近、有り体に言ってどうもサディアスはやる気がでない。
あれだけ情熱を持っていたはずの王宮勤務の華であるこの衛兵長の仕事にも、これまでに感じたことのない索漠とした虚しさを覚えている。
この一週間の過酷な任務で燃え尽きたのかもしれない。
気まぐれな思いつきを本当に実行なさるとは、しかし国王陛下は全くのところ何を考えておられるのか…。
……どうも思考が空転している。
しばらく休暇をとるべきかな…、と彼は考え、自分で自分の気弱ぶりに辟易した。
踵をつけ、背筋に力をいれてサディアスは気合いを入れ直した。
あと数時間。
「もうすぐ夜明けだ。油断するな」
部下に声をかけ、今宵何度目かの巡回に向かおうとして歩き始めた彼の背中を、ぽんと誰かが軽く叩いた。
「おいおい待てよ。巡回に行くのにおまえ、一人でか?」
サディアスは巨体を半分巡らせてちらりと背後に目をやった。
「ああ。忘れてた」
「忘れてたぁ?」
その目線の先に、あからさまに意外げな口振りになった細身の男が顔をしかめて立っている。
サディアスと同じく衛兵の黒衣のお仕着せを身につけ、その色にも負けず劣らずの漆黒の、耳にやっとかけられる程度の短髪を持つ若い男だ。
「寝ぼけてんじゃねーかサディアス。巡回は一人じゃアブねぇっていつも俺たちに口を酸っぱくして言ってんのはてめぇだろ。自分だけは違うんじゃ、衛兵長ってないい加減な商売だぜ」
「そう思うなら変わってやってもいいぞ、クロード」
サディアスは体の向きを元に戻した。
歩き出した彼を追いながら、クロードと呼ばれた黒髪の青年はわずかに慌てたように言葉を継いだ。
「待て待て!冗談だ」
衛兵長は太いため息をついた。
「いや、本当に忘れておったのだ。いかんなどうも」
「…確かに妙だ、最近のあんたは」
クロードは肩に背負っている矢筒を揺すりあげてその横に並んだ。
横の巨漢とはかなり歩幅が違うので、早足になっている。
通り過ぎると衛兵たちが挙手の敬礼を彼らの長に対して行うが、その横のクロードに対する視線にもそこはかとなく畏れの光が見て取れる。
- 79 名前:3 投稿日:2005/08/11(木) 14:56:53 ID:VmsK98D0
- *
衛兵副長クロード・モリソンは若いながらも弓の名手である。
王都からかなり遠方の海に面した都市の出身であり、貿易商を営んでいる父親がいるらしい。
貿易船ばかりか海岸都市を略奪する海賊の脅威に対抗すべく自衛のため町に雇われた傭兵から、幼少時より弓の手ほどきを受けていたのがきっかけで才能が花開いた。
ついには退役した王軍の弓術の師範の元に通い始めて十代半ばにも満たぬうちに師範代を務めかねないまでの腕前となり、あまりの入れ込みように弓を捨てて家業を継げと迫る父と大喧嘩して家を飛び出し都に出てきた。
彼はすぐさま王宮の門を叩き、衛兵隊に志願した。
いきなり来るあたりが心臓だが、王宮付の衛兵隊といえば泣く子も黙るエリート集団であり、世間を知らぬ地方出身の才能あふれる青少年が憧れて目指すのも無理はない。
衛兵隊には貴族の子弟をあてるというのが不文律だったが、あまりに弓の手が鮮やかだったので偶然その光景を見ていた国王じきじきのお声がかりで見事見習いとして入隊したのが五年前。
当時ダジュール子爵家の四男坊サディアスはすでに副衛兵長として衛兵隊に在籍しており、面倒見のいい性格を見込まれて、この平民出身の少年の面倒を見ることになった。
…なったのだが、最初から、なかなか苦労しそうな相手だった。
*
宿舎の食堂で発見した時、少年クロードは他の見習いから離れた席で一人盆を抱え、まずそうに肉団子のスープを啜っていた。
「クロード・モリソンか?」
声をかけると、ぎょっとしたように黒髪の少年は顔をあげた。
目は碧かった。
「副衛兵長のサディアス・ダジュールだ。お前の指導の任を受けた」
うさんくさそうに匙を置き、少年はじろじろと上から下まで先輩衛兵を観察するとおもむろにこう言った。
「…驚いた。鐘楼が動いてるみたいだぜ。聞いていい?何食ったらそんなにでかくなれんの?」
「お前と変わらぬだろうと思うが」
偉丈夫揃いの衛兵隊にあってもひときわ巨漢のサディアスは自分の盆の上に並んだスープやパンを示してみせた。
無礼な子供だと思い彼は内心顔をしかめたが、傍のテーブルから会話を盗み聞きしていたらしい見習いが口を挟んだ。
「副長殿に生意気な物言いをするな。ちょっと弓ができるからって、汚らしい平民の癖に生意気だぞ!」
そのとたん少年が小さい拳を固めて身を乗り出し、目にも留まらぬ鋭いパンチを相手にお見舞いした。
見習いの鼻から鮮血が噴き出したが、あっけにとられていたサディアスが取り押さえようとすると少年は素早く身をかわし、鼻を押さえた見習いに叫んだ。
「それしか言えねぇのかよ!血の巡りが悪ぃ癖にいっぱしに鼻血出しやがって、汚ぇんだよこの穀潰しの臑齧りが!」
この会話であらかたの事情を察知したサディアスは椅子を退いて立ち上がり、むんずとクロードの襟首を掴むと食堂から引っ張り出した。
「放せよ!もっと殴ってやるんだ。あいついちいち絡んできやがって気にくわねぇ!」
少年がじたばたしたが、自分をつり下げた二の腕の硬い盛り上がりを見て、この副長に膂力でかなうはずがない、と悟ったらしい。
だらんと両腕を下げて猫の子のように運ばれたが、食堂からはるかに離れた馬舎の裏でようやくおろされ、地面に足の裏がつくとまたわめきだした。
「なんの用だよオッサン!じゃますんな」
サディアスは草地に腰を下ろした。
「まず座れ」
少年は並んだ副長の巨大な躯に改めて気付いたらしく、毒気を抜かれたようにぴくぴくと鼻をうごめかせた。
「…臭ぇんだけど、ここ」
馬糞の発酵した匂いが風に流されて、狭いはげちょろけた草地全体にもの悲しげに漂っている。
「そのうちに慣れる。しばらくは我慢するのだな」
サディアスはわずかな草の上に腰を下ろした。
「なんなんだよ…」
ぶつぶつ言いながらクロードもすこし離れた場所に座った。
座っていてもなお嵩高いサディアスにちょっと圧倒されているようにも見えた。
- 80 名前:4 投稿日:2005/08/11(木) 14:57:31 ID:VmsK98D0
- 「お前に言いたいことは二つある。まず、俺はオッサンではないと思う」
サディアスは帽子をとり、ふさふさと癖のある平凡な赤毛を示した。
「…あー。ま、その、だね。…禿げてねーよ」
少年は気まずそうにうなずいた。
…わりに素直な子供だな、とサディアスは内心頷いた。
口のききかたも知らず、なにやら肩肘はって非常にぴりぴりしてはいるが根は悪くないようだ。
「そう。まだ25だ。次に」
副衛兵長は空を見上げた。
「俺の叔父はジェイラス・ダジュールと言う」
クロードの口がぽかんと開いた。
「ジェイラス…?…まさかあの、ジェイラス・ダジュール将軍?…すっげえ!いいなあ!」
みるみる視線が尊敬のまなざしに変換される過程を見てとって、サディアスは苦笑した。
「現金な奴だ」
「だって!」
クロードは立ち上がった。興奮のままに、転びそうな足取りで狭い草地を歩き始める。
「去年のストラッド防衛戦でのジェイラス将軍、あ、その時はまだ将軍じゃなかったっけ…とにかくあの奮戦ぶりを知らねー奴はこの国にいねーよ。すげー。すげーよおい」
「昨年、功により次男ゆえ爵位を持たなかった叔父は一気に将軍の地位と新たな爵位を得た」
サディアスは続けた。
「今の国王陛下は戦場で勇猛な騎士というだけではなく明晰果断なお方だ。実力さえお見せすることができれば相応しい地位へと引き上げてくださる。…だがそう思っているのは本人とその一族だけでな。そして、俺が『偶然』24の若さで副長になったのも昨年だ」
少年がぴたりと足を止める。
「どういう事?」
サディアスは肩をすくめた。
「世の中にはそういう現象に腹が立つ人間がいるのだ。わかりやすい事例だろう」
「………」
クロードは草地に座り直した。
「あんたが将軍の引き立てで不正に出世したって思ってる人達がいるって事?」
「そうあからさまに要約されるとなんだが」
サディアスは眉を寄せた。
この子供はさほど頭も悪くないらしい。
「叔父が動いたかどうかは知らぬが、そういうやり方は我が一族の流儀ではない。それに、我々にも言わぬが、叔父も軍の中枢を占める門閥高官の中で苦労している。だから、俺は自分の忠誠と努力で今の地位をいただけたと信じている。なによりも、そう考えたほうが楽しい」
クロードは鋭く副長に視線を投げた。
黒髪に碧い目というのはなかなか負けん気が強そうに見えるものだが、この少年には似合っていることを副長は発見した。
サディアス自身は平凡な赤毛につきものの平凡な青い目である。
「貴族もいろいろあんだな。知らなかったぜ」
「同情してもらえて、大変嬉しい」
サディアスがいかつい顔を緩めると、少年は警戒するように目を細めた。
「…なんかオッサ…じゃねえや……あんたって、単純そうな奴だなぁ」
いかにも、気にくわない、といった口調で少年は呟いた。
「単純なんだろう。それなりに楽しくやっておる。それに俺の名前はサディアスだ」
サディアスは立ち上がった。
「志願して受け入れられたのだ、お前もここで楽しく過ごすように努力しろ。実力があるのだろう?」
「…王様の折り紙付きだぜ」
少年はにやっと笑い、巨漢の死角になって踏みつぶされるのをおそれたらしく、ぴょこんと慌てて立ち上がった。
- 81 名前:5 投稿日:2005/08/11(木) 14:58:07 ID:VmsK98D0
- *
それ以来、クロード少年は副長になんのかのとつきまとうようになった。
指導しされる間柄ということもあってなにかと行動を共にした事もあるだろうし、彼の叔父のジェイラス将軍という憧れの星の存在が、サディアスに対するクロードの生意気加減をぐっと和らげたのかもしれない。
それとも、単純だが包容力のあるらしい性質が気短な少年に気に入られたのか。
とにもかくにも日々の任務を重ねるうちに二人は互いの力量を認め──クロードの弓は国王の眼鏡にかなっただけあって、衛兵隊にあってもなお抜きん出ていた。
一方サディアスの剣は巨体に似合わず力押しだけではない確かな技術を誇っていた──共に過ごしているうちに意外にもウマのあうことも発見し、五年たった今では衛兵長とその副長としてなくてはならぬ名コンビとなっている。
巨漢のサディアスが衛兵長の要職に就いたのは一年半ほど前の夏である。
その夏、あれは国を揺るがす大きな叛乱の勃発前後だったが、使用人に紛した男が国王の唯一の世継ぎであるイヴァン王子の命を狙うという不祥事が起きた。
暗殺未遂犯は逮捕され監禁されたはずだったがある日を境にその行方はふっつりと絶え、その行方は今でもわかっていない。
もしかしたら闇から闇に葬られたのかもしれない。
その男の運命よりも衛兵隊にとって問題になったのは、刺客の潜入を許した王宮の警備体制である。
幸いにも暗殺の実行以前に不審を察知して容疑者を逮捕できたものの、長の立場に関わる重大な責任問題には変わりない。
そういうわけで叛乱終結後に衛兵長の交替がおこり、副長のサディアスが新しい長として就任することとなった。
サディアスは張り切った。
副長の後釜にクロードを指名して体制を整え、彼らしい真面目さで衛兵隊を再編成した。
衛兵隊は熱血男とその脇の斜に構えた男二人のもと、揺るぎない忠誠心と確かな技による選抜を行い、隊員の質も格段に向上した。
国王の実力主義に傾く治世への不満が爆発した叛乱鎮圧のあとだけに、衛兵隊の再編成がやりやすかったのは幸運だった。
護るべき王室メンバーもこの一年半で変化した。
イヴァン王子は妃を迎えて都南東部の離宮へ入り、それから二ヶ月後その姉にあたる王女が一人女子修道院長として王国北部の街に移った。
そして一週間前、未来の新たな王室の顔となる胎児の存在がめでたく判明した。
衛兵隊の責務はますます重く、彼ら精鋭の一層の団結と忠誠が発揮されることをさらに期待される今日この頃──。
しかし、このところおよそ三ヶ月の間。
───副長の見るところ、サディアスの様子はほんの少しおかしくなっているのである。
特にここ一週間ほど、任務に忙殺されている様子に紛れてはいるが、彼の不審な変化は変容しこそすれ治る気配がない。
*
「気付いてたぜ。……他のヤツはどうだか知んないけどよ、俺の目はごまかせねぇ」
クロードがぼそっと呟いた。
巡回の道のりはほとんど終わりに近づいている。かがり火に照らされた、裏門の詰め所が見えてきた。
- 82 名前:6 投稿日:2005/08/11(木) 14:58:40 ID:VmsK98D0
-
サディアスは足をとめなかったが、クロードから見上げる位置の顎から頬がうっすら赤くなったのが、行く手に焚かれてあるかがり火のおかげでわかった。
「副長だからな。悲しいことに常日頃から、あんたを観察する癖がついちまってンだよなぁ」
クロードは早足で回り込み、巨漢の前面に立ちはだかった。
しかたなく立ち止まり、サディアスは咳払いした。
「…あー。邪魔だ」
「バカ。邪魔してんだよ」
クロードは詰め所までまだ少し距離があることをちらりと確認し、腕を組んだ。いつも肩にかけている白いアシュの弓が軽く揺れた。
副長は普通のサイズの長弓は使わない。彼が使うのは一般には短すぎると思われるサイズの特注品ばかりだ。
「持ち歩きしにくいじゃねぇかよ」というのがその言である。
ひきにくいその手の弓でクロードのようなやせっぽちの優男がよく剛毅な矢を射るものだと衛兵長はいつも感心している。
そのあたりが名手と呼ばれ、この若さで副長就任した平民出が部下達に一目置かれる理由なのだと知ってはいるのだが。
「あのさあ…」
無礼で短気なクロードが珍しくいいづらそうだった。
「…聞くのも野暮なンだけど…あのさ……女…だろ」
「どけ」
サディアスは大きな手でクロードの肩を押しのけようとした。その腕につかまるようにして抵抗し、副長は続けた。
「困ンだよ、その態度。副長の俺に隠し事かよ?」
「…かかかか隠し事など、し、しておらん」
クロードは捕まえているでかい腕をぽんと平手で叩き、一瞬だけ口元を緩めた。
サディアスが極度に緊張したり照れたりするとこの癖が出ることなど百も承知だ。
「……その、女だけどよ」
いささか寂し気な口調なのは、苦楽を共にしてきた衛兵長が言い逃れようとしたせいか。
「その…もしかしたら、惚れちゃいけねぇ相手なんじゃねーの」
びくっ、と衛兵長の背中が揺れた。
開いているほうの片手で派手な装飾帽を素早く脱いで被り直し、サディアスは表情を隠した。
だが頬は真っ赤だ。
それが照れかそれとも心の秘密の場所に土足で入り込まれることへの怒りか、そこまでは副長にもわからない。
「ししししし知らぬ」
クロードのおさえている片腕にぐっと力が籠り、サディアスが逃れようとしている気配が伝わった。
「…誰かに惚れちまうのは仕方ねーけどさ、あんたそれ不毛だぜ」
「言うな!」
衛兵長は咆哮した。深夜の空気がびりびりと振動した。
思わず固まった副長の背後で、何事かと詰め所から衛兵たちが飛び出した気配がした。
クロードの手を簡単に振りほどき、サディアスは青い目で威圧するように彼を見据えた。
「…それ以上とぼけた詮索をすると許さんぞ、副長。話はこれで終わりだ」
わかりやすい癖は消えていた。
叫んだ直後にもう自制心を取り戻したらしい。
感心すると同時になんともいえぬ辛そうな目になって、副長は帽子をとった。
さらさらと短い黒髪が闇に溶けた。
「……すまねぇ。だが、サディアス…」
- 83 名前:7 投稿日:2005/08/11(木) 14:59:12 ID:VmsK98D0
-
言葉はそこで途切れた。
副長は帽子を放り出すと細い躯を丸めて思い切り衛兵長に体当たりし、巨漢ごと石畳に転がった。
後ろの闇から飛び出してきた男が、衛兵長のいたはずの空間を通り抜けてそのまま城壁へ駆けて行く。
その、前に構えて突き出した握りこぶしをかがり火が照らし、ナイフらしき刃物の煌めきが見えた。
「不審者だ!捕えよ!」
起き上がった衛兵長は叫んだ。
傍らで副長も素早く跳ね起きて片膝だちになり、弓を肩から掌まで滑らせようとして呻いた。
「…糞っ、弓筈が!」
体当たりでアシュ弓の下側の先端が折れ、弦がだらりと哀れにぶら下がって揺れている。
詰め所から飛び出してきていた衛兵たちが成り行きを理解したらしく、一斉にこちらに向かって走りはじめた。
その時にはもうサディアスは剣を抜きながら不審者に猛進していた。
詰め所の傍らを抜けようとするとはふてぶてしい賊だが、高い足がかりのない城壁に取り囲まれた内側の庭から外に出るには夜間この門しか隙間はない。
他に仲間がいる気配はない。
単独犯。
ということは大胆ではあるが考え無しの盗人だな、と彼は追いながら判断した。
宝物はすでに北塔に納められている。
昼間見物の群衆に紛れて王宮内部に侵入したものの、隙を見いだせぬまま宝物は納められて夜になり、今や意味のない事にやっと気付いて夜明け前の脱出をはかったというあたりだろう。
賊は門の横の木製の物見櫓にとびついた。
「あがるぞ!」
衛兵長の叫びに、頂上に詰めていた番兵が不用意に下を覗き込み、賊に襟首を掴まれてバランスを崩したのが見えた。
「門を開けろ!クロード、馬三頭!バトーユ!ジョン!ガデス!来い!」
城壁は外部からの侵入にはやたら頑丈に出来ているのだが、必死の風情で賊が物見櫓から飛び移り、みるみる越えていくのを見ていると内側からの攻略には脆いのがよくわかる。
サディアスは歯がみしながら、重い鋲打ちの扉を衛兵と番兵が渾身の力で押し開くのを手伝った。
蹄の音がして振り向くと、クロードが馬をひいた部下をひき連れて広場にかけこんできた。
すでに新しい弓を肩にかけている。
「俺と副長でヤツを追う。追いつけるだろう、ヤツは一人だ、人気のない方に向かう。つまりあっちだ」
サディアスは街外れに向かう道を指差した。
城壁の周囲を巡るように堀と街道と街が並んでいるが、こちら側は堀のために街にも壁があるから中に入ることはできまい。
「バトーユは西、ジョンは北、ガデスは城を回り込んで南だ。万が一のために街道をおさえて見張れ。いくぞ、クロード!」
了解した部下たちが馬上にあがってそれぞれに門から飛び出し、サディアスは残りの衛兵たちに二言三言指図をすると腰の鞘に剣をおさめて副長に向き直った。
「俺たちゃ走りかよ?」
クロードが叫んだ。
「馬だと見落とす」
そのまま走り始めた衛兵長の広い背中を肩を一瞬竦めてうんざりしたように眺め、気を取り直したようにクロードも駆け出した。
あっというまに闇の中に姿の消えた二人を見送ると、衛兵たちは急いでサディアスの指示通り、重い城門をきっちりと閉じた。
- 84 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2005/08/11(木) 15:00:41 ID:VmsK98D0
- >ゴッドファーザーズ
熊妹がめちゃくちゃ気になるよ…このスレ登場もだけど
- 85 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2005/08/11(木) 16:39:39 ID:mhg/AvGZ
- >司氏
よく出来た話で面白そう。続き期待
というか書くの早い・・・
- 86 名前:司 ◆aPPPu8oul. 投稿日:2005/08/11(木) 21:04:21 ID:bI3vIHZv
- >>76-83
お粗末様でしたーと言ってみる。
こっそりサディアスに惚れたとか、そんなこと言えない
続き楽しみにしてます。ツンデレの予感。ニヤニヤ。
>>85
ストーリーを褒めていただけるとは思ってませんでしたよ。嬉しいですよ頑張りますよ。
自分でもびっくりな勢いで書いてます。
失速する前に修学旅行の話だけでもと思ってますが……長い道のりです…
- 87 名前: ◆z1nMDKRu0s 投稿日:2005/08/12(金) 08:10:22 ID:BpjOiDAX
- >>76
今回も萌えさせてくれる予感
楽しみにしとります
- 88 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2005/08/12(金) 08:41:54 ID:9bSk2h1e
- このスレの神職人様がたに触発されて書きました。
突っ込みどころ満載ですがつっこまんといてやってください。
このスレの神々の影響をもろに受けてますがそこもつっこまんといて
やってください。
最初はただ、多少たち悪くからかってやるだけのつもりだった。
「よう。誰かと思えば瑞希じゃないか」
下町の界隈。時刻は夜半に近く、派手なネオンが人間を蛾のようにひきつけ始める時
間帯だった。
我妻龍司はよく見知った顔をみつけて声をかけた。白皙の若者はぱっと振り返ると、
目に見えて身を硬くした。け、と心中で毒づいて、龍司はにやにやと作り笑いを浮かべ
て近づいていった。若者はこちらを睨み付けるようにして見上げてきた。
彼は名前を瀬戸瑞希といった。
「龍司さん。何か用ですか」
冷たい声音に龍司は冷笑を返した。龍司は瑞希が自分に対してあまり良い感情を持っ
ていないことを知っていた。嫌いなのはお互い様だ。龍司は顔には出さずにそう思った。
「つれないな。かわいい親戚がこんな界隈にいるんで、ちょっと心配になったのさ」
瑞希は龍司の母の兄、つまり叔父の孫だ。ただし叔父の愛人の孫である。
叔父の大鐘征二郎は一代で莫大な富を築いた資産家だ。重工業の会社を設立し、大成
させたのである。死病を患った現在はすでに会社の経営から引退している。
その叔父のもとに、たった数ヶ月前、この瀬戸瑞希が現れた。
一人娘に子供が出来なかった叔父は、鑑定で実の孫であると判明するや否や、妻が既
に他界していたこともあり、すぐに瑞希を認知した。龍司にとってはそれが気に食わな
かった。叔父は死を目前にして、実孫を認知したのだ。
「仕事先の付き合いで、食事を」
目の前のいけすかないガキ――25の龍司にとっては18の瑞希などガキも同然だった
――は、すっとこちらを一瞥して言った。龍司は馬鹿にするように鼻を鳴らした。
「なんだ、仕事持ってんのか。知らなかったな。どこかの誰かさんは親戚にどこで何を
してるか明かしもしない」
「……親戚といっても三親等以上離れてますから、法律上は他人ですけど」
その言葉に、それまでのにやにや笑いを引っ込めると、龍司は忌々しく瑞希を見やった。
「俺とお前は他人でも、お前と叔父さんは直系なんだよ。俺にとってはそこが全部でな。
わかるな?」
声にドスをきかせて顔を近づけると瑞希はわずかに身を引いたが、恐がる様子は微塵も
見せなかった。
瑞希は一見して線の細い、小柄な青年だった。今は龍司と同様スーツ姿だった。白皙で
あるだけでなく顔立ちも中性的でおとなしそうに見える。そのくせこれまで一度も物怖じ
する様子を見せたことが無い。親戚たちの前に始めて彼が呼び出され、全員の視線を受け
て叔父から紹介されたときでさえ、この青年は堂々とし、親戚たちの様々な視線を正面か
ら受け止めた。それがまた龍司の神経を逆なでしていた。
- 89 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2005/08/12(金) 08:42:42 ID:9bSk2h1e
- 瑞希は険悪な空気を感じ取ったのだろう、細い眉をわずかにひそめた。形だけの礼を
すると静かに踵を返して歩き始める。龍司はその後を追った。
「叔父さんが女嫌いだって知ってるか?」
口火を切ると瑞希はあからさまにいやそうな顔をした。
「いや、女嫌いってのは正確じゃないな――男尊女卑主義者ってのが正しい。女は男の
三歩後ろを歩いてりゃいいっていう、典型的な石頭だ」
「……龍司さん、飲んでますね」
しつこく絡んでいると瑞希はうんざりしたように足を速めた。通りを外れ、脇道に入る。
両側が壁の狭い路地。ネオンの瞬きは後方へ遠ざかり、一気に人気がなくなる。ここを
通りぬければ先ほどの通りよりさらに大きな、明るい通りに出る。そこから駅へ向かう
つもりなのだろう。
「ああ。飲まなきゃやってられないんでね」
「俺のせいだというんでしょう」
「おや、わかってるじゃないか」
肩をすくめる。
「さらに言うと、うちの家系は女系でな。男は叔父さんと俺だけだった。つまりな」
龍司はそこで突然、前を行く瑞希の肩に手を掛けた。
瑞樹が反射的に振り返る。龍司はその肩を思い切り壁に押し付けた。ドンと鈍い音が
した。したたかに背中を打ちつけ、瑞樹が息を詰まらせた。
「叔父さんは財産のほとんどを、俺にくれるはずだったんだ!それが半分以上おじゃんに
なっちまったんだよ!あぁ!?」
ワイシャツの襟を掴んで揺さぶる。間近で怒声を浴びせるが、それでも瑞希はひるまな
かった。龍司の視線に、彼は目を丸くして睨み返した。
「……やめてください。人、呼びますよ」
冷徹とも言える声だった。
かっと頭に血が上った。シャツを掴んでいた手を力いっぱい引く。シャツのボタンが二、
三個弾け飛んだ。襟が大きく開き、鎖骨が見えた。
白い胸元が目に入った。
「――!」
瑞樹が初めて狼狽の表情を見せた。ぱっと赤面し、龍司の手からシャツの襟をひった
くるようにして取り返す。
息を切らせて龍司をにらみつける瑞希に対して、龍司は瑞希に対するものとしては非常
に珍しく、純粋な驚きの目を向けた。その目を見た瑞希はさらに、もう隠しようの無いほ
どはっきりと赤面し、だっと駆け出した。よろけながら、路地を抜けて明るい場所へと一
目散に走り出る。
「……」
- 90 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2005/08/12(金) 08:43:18 ID:9bSk2h1e
- 龍司は唖然としてその姿を見送った。
龍司はいわゆる伊達男だった。普段からブランドのスーツを身に着け、長身で女好きの
する顔をしている。ゆえに女遊びも激しく、夜まともに家に帰ることはほとんど無い。そ
してその龍司の目は、ひとつの厳然とした事実を彼の前に差し出していた。
肩の線と鎖骨、首筋、そして肌。それだけ見ればわかるが、何よりその表情が雄弁に物
語っていた。
瀬戸瑞希は女だ。
「は……」
思わず笑いがこぼれる。
「ははははは!」
思わぬところで面白い、しかも決定的なネタを手に入れてしまった。これで瑞希を処分
することが至極簡単になってしまった。これまであれほど瑞希に対して神経質になってい
たのが馬鹿らしい。たとえ叔父の実の孫であっても、女であれば財産を受け取れない。叔
父が女に財産を譲るはずが無いからだ。
しかし――龍司はふと思った。
あれはきれいな肌だった。
二週間後。
龍司はあるアパートの前で足を止めた。
そのアパートはお世辞にもあまり良い物件ではなさそうだった。線路が近く、十分おき
に電車の走る音がうるさい。彼が周囲の住人に未知を訊きがてら少し話を聞いた限りでは、
アパートの住人たちは何ヶ月も家賃を滞納しているような飲んだくれや、あるいは夜の仕
事に従事するような者ばかりのようだった。
時刻は夕方だった。西日が差し込んでいて眩しい。龍司は普段とは違う、地味なジャケ
ットとスラックスを着ていた。かけていたサングラスをはずし、気の無い足取りでアパー
トに入っていく。
さびた鉄骨が剥き出しの廊下を、部屋番号を数えながら奥へと進んでいく。結局一番奥
の部屋までたどり着くと、龍司は無意識に視線でインターホンを探し、ふとこんな物件に
はインターホンなど無いことに気付いてノックに切り替えた。
反応はすぐにあった。「どなたですか」という声とともに立て付けの悪そうな扉が開いて
部屋の主が顔を出した。その顔はすぐにこわばったものに変わった。
「よう。瑞希」
「……龍司さん」
その表情からすっと血の気が引いたのがわかった。龍司は構わず扉に手を掛けた。その
- 91 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2005/08/12(金) 08:43:51 ID:9bSk2h1e
- ため、瑞希は反射的にドアを閉じようとしたが出来なくなった。
「狭いな」
龍司の第一声はそれだった。
ぼろぼろのアパートは外見の見てくれに違わず、中も相当だった。六畳一間の部屋には
主のまめさからかほとんど物は置かれていなかったが、それでもしみの浮き出た低い天井
や粗末な木板の壁が長身の龍司に圧迫感を与えた。畳敷きの床の上には少しでも敷金を取
り戻そうという試みのあらわれか、安そうな茣蓙が敷かれており、さらに部屋への入り口
にはこれまた安物であろうラグが敷かれている。箪笥やちいさなクローゼットなど生活に
必要な家具はあるものの、それ以外のものは壊滅的に存在しない。それでもよく片付けら
れていて、貧乏生活に慣れてさえいれば居心地はよさそうと思える部屋ではあった。
「テレビも無いのか。つまんないだろ、こんなんじゃ」
「他人の部屋をじろじろ見るものじゃないでしょう」
睨めあげてくる視線を微風のように行き過ぎさせながら、龍司はぐるりと視線をめぐら
せた。床の間もあった。二畳弱といったところだろうか。
ロング袖のゆったりしたTシャツにジーンズといういでたちの瑞樹が釘を刺してきた。
「お茶は出しませんよ。招かれざる客ですからね」
「まともな葉も無いんだろ?要らねえよ」
普段ならば癇に障る憎まれ口だったが龍司は気にせず、客とは思えない横柄な態度で腰
を下ろした。続いて瑞希も向かい合って座る。
「俺がここに来た理由はわかるだろ?」
「……」
「双方にとって、最も良い形での解決方法を模索するためだ」
話を切り出すと、瑞希は案の定冷たい表情になった。
「何の解決?貴方だったらきっとお金のことしか言わないんでしょうね」
「お前、人のこと言えるのかよ」
龍司は眉を上げてその顔を見返した。
「女の癖に男と偽ってうちに潜り込むなんざ、金目当て以外の何でもないだろうが」
「――」
瑞希は大きな目を見開いて口を真一文字に引き結んだ。わかりやすい表情に、龍司は笑
い出しそうになった。それでも瑞希は間だけは置かずに言い返してきた。
「何のことですか」
「とぼけるなよ」
その受け答えはおそらく頭の中で何度もシミュレーションしてきた結果なのだろうが、
顔に出ていてはどうしようもなかった。龍司は硬い声に構わなかった。
「本当に男だって言うんなら証拠を見せてみろ。裸になれとは言わねえよ。二の腕まで
- 92 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2005/08/12(金) 08:44:28 ID:9bSk2h1e
- 見せればいい。俺にはそれでわかる」
「……目的は何っ」
瑞希の口調ががらりと変わった。言葉遣いだけではない、声音までが男のものから女の
ものに変わったのだ。中性的な声自体はまったく変わっていないのにまるで別人のようだ
った。
それは瑞樹が龍司の言葉を認めたことに他ならなかった。龍司はにやりと笑うと本題に
入った。
「男ってのは嘘だったが、じゃあ血筋はどうなんだ。お前は本当に叔父さんの孫か?」
「本当です。貴方だって知ってるはずです、私の髪の毛と爪で、お爺さまは私を本当の孫
だと認めてくださった」
「ならますます、金目当てってわけだな」
龍司は顎を持ち上げると部屋をもう一度見渡した。瑞希はすっと姿勢を改めた。
「こちらとしてもお話ししたいことはあります」
「女って事をばらして欲しくないんだろ?」
「そうです」
瑞希はまっすぐに龍司を見た。
「昨年祖母が亡くなりました。おじいさまと同じ病気で、それも同時期に発症したのに、
祖母は治療を受けられずに、随分と早く亡くなりました」
「なんだ。財産が欲しいってのは叔父さんに対する復讐か?」
「違います」
即答する。他人の感情を読むのが得意な龍司にも、それは本心のように見えた。
「祖母はおじいさまとの間に母を儲けました。祖母はおじいさまの立場をわかっていまし
たから、おじい様には何も言わず、女手ひとつで母を育てました。でもその母は結婚し私
を生んだすぐ後、父とともに交通事故で亡くなりました。そんなでしたから、祖母と私に
は終始、余計なお金は一切ありませんでした。私はいまだに父にも母にも祖母にもお墓を
立ててあげられていません。それに」
瑞希は膝の上に置いた両手をぎゅっと握り締めた。
「祖母はおじいさまと暮らしたちいさな家をとても大事にしていました。出来ればずっと
手元においておきたいけど、土地だけは借り物なので、その維持費も馬鹿にならないんで
す。祖母が亡くなった上私は就職の関係でこっちに引っ越してきましたから今は宙ぶらり
んの状態で、生活費のことも考えると、私の給料だけじゃどうしようもないんです。もう
何年かすれば維持費すら払いきれなくなってしまう。東京の地価は高騰し続けてるでしょ
う?今買わないと後々取り戻そうとしても無理だと思うんです。今、まとまったお金が欲
しいの」
「墓の土地と石の値段は目算つくが、土地の値段はどのくらいだ?」
瑞希の述べた金額を、龍司はなるほどと聞いた。一等地ではないだろうが、いい土地な
- 93 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2005/08/12(金) 08:45:42 ID:9bSk2h1e
- のだろう。結構な値だった。
「叔父さんには相談しなかったのか」
「……」
瑞希は静かにかぶりを振った。
「無駄ですよ。……おじいさまは実のところ、私には興味が無いのだと思います。おそら
く私が本当の子供だとわかったから認めたということに過ぎないんでしょう。仕事先すら
訊かれませんでしたから――就職には性別は偽れないでしょう?」
「随分危ない橋だな。仕事先がばれれば全部終わりだぞ。……いや、叔父さんが何も聞か
ないのであれば俺たちも聞けないな。お前の思う壺だってわけだ」
それでなくても叔父の言葉を鵜呑みにする親族たちだ。自分のように強い興味を持たな
ければこの住所を調べようともしないだろう。叔父が認めれば是、認めなければ否なのだ。
龍司自身は……まあ、毛色が違うので例外である。
「私、営業の仕事ですから、外に出るときはほとんどスーツで通しています。だから大体
の人は男と間違えるわ。でも、おじいさまが少しでも私に興味があるのであれば、とっく
に私の性別なんてわかっていると思います。それに……」
「それに?」
「……なんでもありません」
瑞希は話を打ち切った。龍司に向かい頭を下げる。
「だから、無理を承知でお願いします。私が女であることを、他の誰にも言わないでくだ
さい。それが駄目なら私は相続権を放棄してもいいから、少しでいい、貴方が得た財産を
私にも分けて欲しいの。それもだめと言うならせめて、私が女であることだけは言わない
で」
瑞希を除けば龍司がたったひとりの相続人であるにもかかわらず、瑞希がこんな頼みご
とをするには理由があった。古式ゆかしい大鐘家の女たちは叔父の言葉には無条件で従う
ところがある。瑞希が女だとわかれば絶対に財産の相続はできないだろう。それどころか
ただで済むとも思えない。
そしてここからは十八の少女の考えでは及びも付かないことだろうが、男尊女卑とは社
会的には女にとってマイナスの言葉ではあるが、逆に言えば男が女を保護することでもあ
る。彼女らは古式ゆかしいと同時に社会的な地位に対する意識も薄く、向上心も無かった。
よって、実際には内心財産が欲しい者もいるのだろうが――実は龍司の周囲にも一人いる
――ほとんど一人で身を立てている叔父の庇護に入ってきた立場としては、叔父の決定に
は少なくとも表立っては逆らえない。
龍司に非難の視線が集まらないのは、次の征二郎のポストに就くことがほぼ決まってい
るからだ。龍司は実質的に叔父のあとを継ぐ人間だった。現在すでに叔父の会社で重役を
務めている。
しかし瑞希の言葉振りにはそれだけでない理由があると龍司は直感的に思った。土地を
- 94 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2005/08/12(金) 08:46:12 ID:9bSk2h1e
- 買うのが目的と言いながら、実際には「女であること」をばらさないでくれと言っている。
龍司は気付かないふりをして言った。
「お前は肝心なことをひとつ忘れてるな」
「え……」
瑞希はきょとんとして龍司の目を見た。
「財産を相続するのであれば、お前も大鐘家に貢献しなきゃならないってことだ。財産を
得たなら、関係者全員からそういった無言の圧力が掛かるだろうな」
「……そんな。でも……」
本当に気付いていなかった様子で呆然とする。これほど古風な家柄もそうは無いから、
若い彼女にとってはまるで思いも付かなかった「家」というものの形なのだろう。
この女の気の強さなら「男として一生家に貢献する」くらい言いかねなかったが、一生
性別を偽り続けるのは不可能だろう。それは彼女もわかっているはずだ。
瑞希はうつむくと言葉を搾り出した。
「龍司さん。先ほどの答えをまだ聞いていません」
顔を上げると真剣な瞳を龍司に向ける。
「私をどうするつもりです?」
それによって身の振り方を決めるということなのだろう。つまり彼女は龍司の気持ちひ
とつに全てを委ねたことになる。――そしてそれでも、彼女の気概の強い瞳は失われてい
なかった。光を持って、じっと龍司を見つめている。
不愉快だった。
「……いいさ。黙っといてやるよ」
一瞬の間をおいて答える。瑞希の目が安堵にふっと緩んだ。そしてその最高のタイミン
グを見計らって、突然、龍司は彼女の両手首を掴んだ。
そのまま押し倒す。細い身体が倒れる軽い音とともに、短い黒髪が茣蓙の上に広がった。
「――」
事態についていけなかったのか、瑞希がぽかんとして龍司を見上げた。彼女の上にのし
かかり、龍司は薄い笑いを浮かべてその顔を見た。
「抱かせてくれれば、な」
「……!?」
瑞希の瞳が見開かれ、次いで『騙された』という怒りの感情が前面に押し出される。そ
の彼女の様は見ていて面白かったが、これからすることで更に彼女を貶めることが出来る
というのはそれ以上に魅力的だった。そんな思惑を知ってか知らずか、瑞希は龍司の下で
慌ててもがいた。
「ちょ……!やめてください!」
「あんまり声出すと聞こえるぞ?壁、薄いだろうしな」
「……っ」
- 95 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2005/08/12(金) 08:46:43 ID:9bSk2h1e
- 思わず沈黙した隙を付いて、その唇を奪う。
「――!」
瑞樹が目をまん丸に見開き抵抗した。その抵抗にキスを長く続けられず、龍司はすぐに
唇を離した。
「ふざけないで!放してくださいっ」
瑞希はじたばたと暴れた。こうも暴れられてはやりにくい。龍司はいったん手を離した。
瑞希はその下をさっと這い出す。彼女は背中が壁に当たるまで下がると身体を抱くように
して自分の二の腕を掴んだ。
「もう……もう帰ってください!」
わずかに震える声が逆に龍司の嗜虐心を刺激した。無視して立ち上がると大股で彼女に
歩み寄る。ポケットから大判のハンカチを抜き取り、口にくわえた。身をすくめた瑞希の
手首を再び掴む。当然のように抵抗されたが、男と女の膂力の差では結果はすぐに出た。
ハンカチで両手首を後ろ手に縛られた瑞希はせめて脚で龍司をけん制しようと躍起になっ
たが、部屋の隅まで追い詰められ、脚を押さえ込まれると全く身動きが取れなくなった。
「声は出すなよ。わかってるだろうが」
そう言うと、龍司は瑞希のシャツの隙間から手を差し入れた。胸には二つのふくらみを
押さえつけるためのサラシが巻かれていた。そのサラシがするすると解かれていく感触に
怯えたためか、解かれ終わるころには瑞希の腕にははっきりと鳥肌が立っていた。
胸をわしづかみにする。
「!」
びくんと跳ねる瑞希の身体を押さえつけるようにして双丘を揉み続ける。控えめだが弾
力のある胸が手の動きに合わせて形を変えた。
「い、嫌っ」
龍司も知っている上で言ったのだが、ここは瑞希が男として借りているアパートだった。
瑞希自身も大声ではわめけない。抗議の声はかすかなものだった。
彼女は逃れようとしてバランスを崩し、もたれていた壁から床に倒れこむ。ゆったりと
したシャツは既に鎖骨の辺りまで捲りあげられ、剥き出しの胸が西日にさらされて赤く染
まっていた。
馬乗りになり、龍司はもう一度彼女の唇を奪った。今度は逃げられないように顎を押さ
えつける。
「――!んっ、う」
瑞希が呻いた。その唇を舌で割り、顎を掴む手に力を入れて口を開かせる。歯の間から
入り込み貪るように舌を吸い上げると、その度に瑞希は面白いように反応を返してきた。
歯の裏を舐め、歯茎を犯す。口内をくまなく蹂躙してやると抵抗が弱まり、必死に抵抗し
ていた顎から力が抜けていった。その間にも片方の手で乳首を転がし続けると、そちらに
も意識が行っているのかそのつどびくびくと身体を震わせた。
- 96 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2005/08/12(金) 08:48:05 ID:9bSk2h1e
- 「んっ、くっ、ふ……」
やがて瑞希の口の端から一筋唾液が零れ落ちた。瞳がはたから見てもわかるほどに朦朧
としている。十分に楽しんだ後唇を離すと、彼女の身体は完全に力を失っていた。
「う……あ……」
濡れた唇を小さく動かすと、彼女はやっとそれだけ呻いた。薄く開いた目尻にわずかに
涙が光っている。キスだけで言葉が出ないほどに翻弄されている様子が、経験が無い、あ
るいは少ないことを証明していた。
これならば楽しめそうだ。龍司は身をたわめるとなめらかな肌に吸い付いた。
「ひっ――」
ひきつった悲鳴が聞こえた。暴れる脚を押さえつけ、わざとゆっくり舌を這わせる。わ
ずかに汗の味がして、その質感が舌に伝わってきた。
期待通り、綺麗な肌だった。鎖骨からへそまで抜けるように白く、しみひとつない。今
の女は少女でも平気でキャミソールなど露出の多い服を着ているから、白いしみの無い肌
は希少だ。男の格好をしているのが逆にいいのだろうか。
龍司はふと思いつき、鎖骨に唇を当てた。強く唇を合わせ、思い切り吸う。
「!」
瑞樹が全身をふるわせた。細い脚は龍司の腕力に対抗できず、龍司を止めることが出来
なかった。声も満足に出せず、それが余計に彼女を敏感にしているようだった。彼女は吸
い付かれている間中ずっと身を震わせ続けていた。
唇を離すと鎖骨のすぐ下、左寄りに、赤い花が咲いていた。
「所有権だ」
「――」
瑞希は声をなくしていた。言葉の意味がわかるということは少なくとも知識はあるのだ
ろう。瑞希の目線からはその印は見えなくても、彼女の表情は屈辱と怒りに染まっていた。
「やめて!もう嫌!放してっ」
小さく叫ぶように発話して再び抵抗を始める。逃れようとする小さな身体を、龍司はい
とも簡単に封じた。
「ここまで来てやめられるかよ。それに、いいのか?抵抗して。イニシアチブを取ってる
のは結局俺だ」
自分は彼女の弱みを掴んでいる。それは彼女もわかっている。未だに彼女が抵抗してい
るのは結局今の立場を享受することが出来ないからに過ぎない。できる出来ないにかかわ
らず、彼女は享受しなければならない。それを先延ばしにしている自覚はあるらしく、瑞
希は黙って唇を噛んだ。両肩がかたかたと震えている。きっと睨み付ける視線を心地よく
感じながら龍司は身を乗り出した。
「わかったらおとなしくしてろ。そうすりゃ痛くはしないさ。お前が処女だって言うんな
ら別だがな」
- 97 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2005/08/12(金) 08:48:52 ID:9bSk2h1e
- その言葉に瑞希の顔が一瞬凍った。わずかな変化だったが龍司は見逃さなかった。
「おい、本当に処女なのか?」
嘲るように言うと瑞希は頬を紅潮させて押し黙った。目を逸らし、横を向いて表情を隠
そうとしているが、この角度では無駄なことだった。彼女は叫んだ。
「あなたには関係ないわっ」
「ふうん」
笑い、両脚に手を掛ける。
「確かめてやるよ」
「!いやあっ」
叫びを無視してジーンズのファスナーを下ろす。
ちらりと覗いたショーツは流石に女性用だった。白いシンプルなデザインのものだ。
「――――っあ!」
恥辱に顔を逸らしていた瑞樹が厭いの表情で喘いだ。龍司がジーンズの下に手を差し込
んでいた。
龍司はすぐに彼女の中に押し入ることはしなかった。ショーツの外から、触れるか触れ
ないかのところで割れ目に沿って指を動かす。瑞樹が悲鳴を上げなかったのはそのためだ
ろうが、女にとってはある意味自分勝手に強姦されるよりよほどたちが悪い。あくまで女
が抵抗しにくくなるような、じわじわと弄び、ねぶるタイプのやり方だった。龍司はそれ
を理解したうえでやっていた。
「やだ、嫌、放して、放せえっ!」
瑞希は身悶えして龍司を跳ね除けようとした。龍司は彼女の身体に力が入らないよう巧
みに指を使った。時間をかけ、ゆっくりと彼女の身体を刺激に慣らしていく。乾いていた
ショーツが次第に湿り始め、最後にはくちゃくちゃという音が響くようになっていった。
「あっ、あっ、あ」
背中を反らし続ける瑞希の身体が次第に硬直していった。どれだけ嫌だと思ってもどう
しようもないのか、彼女の身体は朱色に染まり、秘密の場所が擦られるたびに何度も何度
も上下した。
「っ、ひ、駄目、だめ、ダメ――」
愛撫に耐えるだけで必死なのだろう、その身体にもう抵抗はない。ただ龍司の指に反応
して身体を振るわせるだけだ。龍司は彼女の絶頂が近い事を察してさらに指の動きを早め
た。生暖かい湿った感触が指先に絡み付く。秘所は今ではショーツの上からでもわかるほ
どはっきりと濡れていた。
「くっ、あっ、あん、あ、あ、あ、あ――――――――!」
龍司から必死に顔を逸らしながら――たぶん達する時の恥ずかしい顔を見られたくない
からなのだろう――彼女は細い悲鳴を上げた。
「――っ……」
- 98 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2005/08/12(金) 08:49:29 ID:9bSk2h1e
- 悲鳴の後の息を吸う音さえわずかに艶かしい。ふっつりと緊張が途切れたように、その
身体は張りを失い茣蓙の上に落ちた。
彼女は堰を切ったように痙攣し始めた。
「っ、は……あ……はっ」
「随分と早くイったもんだ。まあ、処女ならこんなもんか」
「――嘘……」
天井を眺めて愕然と彼女はつぶやいた。
「嘘、嘘……こんなの嘘」
繰り返しながら身を縮ませる。正気づいたと同時に彼女はぽろぽろと落涙を始めた。涙
は頬を伝って床へ落ちるとちいさな水たまりを作った。
龍司はびくつく肩を押さえ込んで次の段階に入った。ショーツをずらし、怯えた顔を見
せた彼女の秘窟に、彼は今度こそ指を差し込んだ。ぐちゅりとした感触が指を包み込む。
中は狭く、指一本でもきつかった。探るような動きで中を調べ尽くす。
「なるほど、確かに処女みたいだな」
「っ、やめて、やめてっ……」
好きなようにかき回されても、瑞希は先ほどまでのような強い抵抗を見せなかった。過
敏に反応して腰を跳ねさせていても、むちゃくちゃに暴れて逃げ出そうとか、龍司を蹴り
飛ばしてやろうといったこれまでのような気概が感じられなかった。
いささかのつまらなさに龍司は拍子抜けした。
「おいおい、さっきまでの威勢はどうしたんだ。噛み付いてくるくらいの根性見せろよ」
瑞希は答えなかった。涙を流しいやいやをするようにかぶりを振る。別人のような瑞希
に、流石の龍司もわずかに困惑した。
「もう少し抵抗されるもんだとばっかり思ってたんだがな」
その腰にまとわり付いたジーンズを一気に引き下ろす。瑞希の身体がびくりと震えた。
柔らかな茂みが露わになり、今度こそ彼女は悲鳴を上げようとしたが、その一瞬前、龍司
の手がその口を塞いでいた。
「ほら、噛んでろ」
たくし上げられていた彼女のシャツを顎を掴んで無理やり噛ませる。足首まで下げたジ
ーンズが彼女の脚の自由を奪っているのを利用してその膝を折らせた。
茂みの下の秘園は随分と苛めてやったせいかじんわりと蜜を吐き出し赤く色づき始めて
いた。一度も使われていないそれ特有の綺麗な色をして、これから受けるであろう暴虐を
予感してふるふると震えている。
「――……」
弱弱しい吐息が聞こえた。見ないで、とでも言ったのかもしれないが、押し込まれたシ
ャツの裾が彼女の言葉を封じていた。顎を掴む手はもうはずされているにもかかわらずそ
れを噛み締め続けているのは、いずれそれが無ければ悲鳴を上げてしまうような陵辱を受
- 99 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2005/08/12(金) 08:50:04 ID:9bSk2h1e
- けることを、彼女自身わかっているからだろう。
素直でいい。素直でいい、が――
なにか物足りなかった。
すでに取り出していた自分のモノを一息に突き立てる。
「――――!」
瑞希の白く細い裸体が折れそうなほどに反り返った。剥き出しの乳房がツンと上を向き、
挿入の衝撃に細かく震えた。
狭い膣内は龍司の想像以上に熱かった。締まりもすこぶるキツい。無理やり押し広げて
いるので抵抗が強い。円滑油の入る隙間も無いほど嵌まり込んでいる錯覚があった。
「っ、く……キツいな……」
余裕なく龍司は呻いた。彼がこれまでに合意の上で抱いた女の中にはもちろん処女もい
た。だがそれでもこれほどきつく締め付けてくる女はいなかった。一方的に犯しているた
めなのか、それとも瑞希の中がもともと狭いのか、侵入してきた龍司を逆に食いちぎりそ
うなほどだった。
それでもそのままでは射精することはできず、龍司はゆっくりと動き始めた。瑞希の声
にならない声が耳を打った。
「――――……!――――……」
瑞希の黒い瞳が涙で溢れかえった。彼女が仰け反るたびにかみ締められたシャツが強い
しわを作った。
龍司は腰を揺すりながらその表情を見続けていた。気丈だった彼女の面影は既に無かっ
た。縛られ、半裸にされ、犯されている生々しい姿には、陵辱されプライドを削ぎ落とさ
れた弱い女の表情しか見えなかった。
「……」
突然、龍司は攻め方を変えた。腰を引き、一気に叩きつける。
「!」
突き上げられた瑞希の身体が跳ねるように震えた。二度、三度と突き続けると、激しい
痛みを打ち込まれた彼女はびくりと肩を震わせ、わずかに首を傾けた。
ふとその瞳が龍司を見た。
瞳には痛みによって覚醒したわずかな光がぼんやりと点っていた。嫌悪と怒り。それら
がかすかながら龍司を捕らえ、くすぶるように復活を始めた。
それを見て取った龍司は低い笑い声を漏らした。
「――はは」
衝動的に、瑞希の咥えているシャツをむしり取る。酸素を求め大きくあえいだ彼女に龍
司は言った。
「こらえてみな」
言うが早いか、もう一度激しく突き上げる。瑞希は目を見開き背を仰け反らせたが声だ
- 100 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2005/08/12(金) 08:50:48 ID:9bSk2h1e
- けは上げなかった。歯を食いしばり、涙に濡れた瞳で睨み付けて来る。それは明らかな抵
抗の意思だった。
苦しげな、それでも敵愾心に濡れた強い声が耳朶を打った。
「……もう終わり?」
その言葉を聞いた時、龍司の中で何かが爆発した。
ぞくぞくした。自分の中でどうしようもない嗜虐心が頭をもたげ、眠っていた感覚が呼
び起こされていくのを感じた。サディスティックな笑みが唇を彩った。手を伸ばし彼女の
頬に触れる。暴力的な表情とは裏腹にその手つきは繊細だった。
「まさか!」
龍司は行為を再開した。加減も何も無く、飢えた獣のように彼女の中を貪り喰う。何度
も何度も突き上げ、自分の都合の良いように彼女を抉り続けた。
実にいい身体だった。弾力があり、抜けるように白く、陰部は狭く、その上何度突き上
げても強い抵抗を示す。
瑞希の抵抗は、不愉快でありながら、愉快だった。
先程付けた赤い印に指を這わせる。
愉しいと思った。彼女がこれほどまでに自分を満足させてくれるとは思わなかった。彼
女を男と思っていたころには想像も付かなかったが、いまなら彼女に好意を持ってもいい
とすら思う。
愉しさは快感に変わり、彼の背筋を這い登った。血が下半身に集まり膨張していく。抑
えきれずに龍司は言葉を発した。
「出すぞっ……」
かすれた声でつぶやくと、瑞希が痛み以上の嫌悪を顔にうかべて、彼の腕から逃れよう
と暴れた。それすら心地良かった。
最奥まで打ち込む。同時に射精した。
「う、あ―――――」
瑞希が小さく呻いて震える。迸った白い液体が身体の中を汚していくのをどうしようも
ない思いで感じているのだろう。それをこの上なく愉しく思いながら、龍司は自身をいつ
までも彼女の中に埋めたままにしていた。
窓の外を見ると既に夕闇が空を支配していた。
身繕いした龍司がジャケットを羽織り終わった時、瑞希はやっと身体を拭き終え、服を
着始めたところだった。背中に刺さる憎憎しげな視線を楽しみながら身を翻すと龍司は玄
関脇まで歩いていった。
玄関にもものはほとんど無く、玄関の隅に小さな靴の箱がいくつか並べられているだけ
- 101 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2005/08/12(金) 08:52:17 ID:9bSk2h1e
- だった。その中を探すと、目的のものはすぐに見つかった。
じゃらりと音を立てたそれに瑞希は目を剥いた。
「ちょっと!」
「貰ってく。スペアはすぐに作らせて、今日中には届けさせるからさ」
玄関の鍵を右手でもてあそんで龍司は言った。
「返してっ!」
素肌にシャツとショーツだけという格好で掴みかかってくる瑞希を軽くいなすと、龍司
はその腰を抱くようにして引き寄せた。
「毎週土曜、この時間。いいな?」
「嫌っ」
即答され、彼が返したものは微笑だった。龍司の腕から逃れられないことを彼女は知っ
ている。龍司にはそれで十分だった。
龍司は瑞希を解放した。そして来週も瑞希がこの快感を与えてくれることに期待しなが
ら玄関のドアをくぐった。
おわり。
…一レス六十行っていいもんですねえ…
- 102 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2005/08/12(金) 11:57:17 ID:eTYdwW7b
- GJ!!
どうやらこのスレには神様がいるらしいな
- 103 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2005/08/12(金) 12:39:42 ID:3jpT68W0
- 改行くらいは整えて欲しいな・・
せっかくの作品が読みにくくてもったいない
- 104 名前: ◆z1nMDKRu0s 投稿日:2005/08/12(金) 12:58:40 ID:BpjOiDAX
- 携帯だとそれほどきにナラナイ
だけど改行整えるとすごく読みやすくなる
目指せ第二のナサ神司神!!!!
- 105 名前:ナサの中 投稿日:2005/08/12(金) 13:11:00 ID:5iRmI6dk
- 悪い男キタ━━(゚∀゚)━━ !!!
講談社新書のようなこの湿度がたまらない
土曜日のこの時間にだな
次も待ってる!!
このスレいいなあ
ゴッドファーザーズ氏も司氏もマメだし
見る気もやる気も湧く
それからやっとエロパロ総合SS保管庫を見つけたが
38氏、依頼のためにめちゃくちゃ面倒な努力をしてくださったんだな…
感謝の気持ちで一杯だ、ありがとうございます
いつもよか短いけどキリのいいとこで投下
- 106 名前:衛兵長動揺する8 投稿日:2005/08/12(金) 13:12:11 ID:5iRmI6dk
- *
予測は的中した。
闇の中のしばしの無言の追跡の果て、町外れ、夜明け前の微妙な陰影を刻んだ空を背景に、
石切り場へ向かう坂の頂上近くを逃げて行く人影を衛兵コンビは発見した。
一言も声を交わさないまま、疾走しながら衛兵長が剣の鞘に手をかけ、副長が矢筒に片手をあげた。
だがその足音と気配を察したらしく、足を止めた人影は振り返り、急な角度で突然に、街道から脇の荒れ地へ飛び込んだ。
「ちっ!」
でこぼこの荒れ地に低い灌木がいくつも伏せている複雑な地形に、副長が片手をおろして舌打ちした。
「追いたてる。坂の底の茂みへ廻れ」
言い捨てた巨体が荒れ地に飛び込み、クロードは弓を握りしめてたたらを踏んだ。
「気ィつけろよ、サディアス!」
サディアスは薄い闇の中地形を読んだ。
もはや賊との距離はない。焦る心で走り続けたヤツにはもはや余裕もないはずだ。
わざと起伏が上昇する方面に回り込んでみせると、賊は簡単に目論みにひっかかった。
だらだらと石切り場へと降りる斜面を駆け下りていく。
軌道を修正して一気に加速したサディアスは顔をあげ、喉の奥でくぐもった呻きを漏らした。
払暁にはまだ早いがそれでも星明かりでぼんやりと浮かび上がった黒い坂の途中に、細い影が立っていた。
少し早い、と衛兵長は胸に叫んだがクロードの頼りないほどの痩身は弓を構え、一直線に近づいてくる賊にぴたりと狙いを定めた。
坂道で足をとられ、止まれないままの賊が意味の聞き取れない叫びを放ち、刃物を握ったままだった手を振り上げた。
クロードとの間を糸よりも鋭い光が結び、次の瞬間よろりと副長の影が揺れたのをサディアスは見た。
弓が手を離れ、矢筒から黒い矢が散らばるのも見えた。
悲鳴のような、笑いのような叫びをあげながら空手の賊はその横を走り抜け、街道をひょろひょろと横切ってそのまま西の斜面へと逃げていった。
「クロード!!」
辛うじて足をとどめたサディアスがほとんどぶつかるように抱きとめた躯は恐ろしく細かった。
「…ってぇよ!……俺はいい、早く追え!」
クロードが叫んだが、衛兵長は賊の背中に目をちらとやっただけで、すぐに腕の中の副長にかがみ込んだ。
「どこを、やられた」
「足だ。情けねぇ」
副長は顔をしかめたが、はっと気付いたように、自分を抱きとめている太い腕に視線を止めた。
「傷を見せろ」
眉をよせたサディアスに、彼はわめいた。
「大したこたねーよ!それよかヤツだ!このままとんずらかよ、けったくそ悪ィ!」
「ヤツは、西に逃げた」
衛兵長は諭すように声を低めた。流石にさきほどからの疾走の連続で息があがっている。
「バトーユ、がいる……もし、街の城壁をまわって北へ向かえば、ジョンだ……ヤツは空手だ。逃げられぬ」
「ああ…」
クロードは顔を歪めて笑った。
賊の投げたナイフが血に塗れた刃を剥き出しに、傍らに転がっている。
衛兵長はそれを拾い上げ、星明かりに斜めにすかすようにその刃を眺めた。
- 107 名前:9 投稿日:2005/08/12(金) 13:12:45 ID:5iRmI6dk
-
サディアスが指名した三人の衛兵の顔を思い浮かべたらしく、クロードは納得した。
「剣が得意な奴らばっかだしな…」
そこまで呟き、小さく呻く。
衛兵長の大きな掌が靴ごと足首を掴み、引っ張ったからだ。
「平気だっつってんだろ…!いてて、引っ張るな、馬鹿野郎!」
「黙れ」
サディアスは抵抗するクロードの腕をうるさそうに払いのけ、膝に手を滑らせると引き寄せて、太腿に視線をやった。
ズボンの布地がおよそ掌ぶんの長さほど切り裂かれ、漆黒なのでわからないがかなり出血している様子だった。
ほの白い素肌がわずかに見えたが、傷口の詳細は夜明け前の星明かりが頼りではよく確認できない。
サディアスは眉を寄せた。
「暗くてわからん」
「手当は戻ってからでいい。いい加減、放せよ衛兵…」
長、の言葉がクロードの喉で消えた。
いきなり広い背中を丸めたサディアスが傷口に口をつけたのだ。
「……あ、おいっ!!何の真似だよ!」
一瞬呆然としていた副長が顔を真っ赤にしていきり立ち、巨漢の肩をこづいて帽子を払い落とした。
だががっちりと固定されている足はびくとも動けない。
「やめろ!やめ…」
クロードは、ぎくりと、赤毛の頭に目を据えたまま固まった。
舌に傷口を覆われ、強く吸われる感触に驚いたのだろう。
衛兵長はむくりと身を起こし、地面に、唾と一緒に黒いものを吐き捨てた。
吸いとったクロードの血だ。
袖口で汚れた口元を拭い、サディアスは放り出したナイフをちらと眺めて呟いた。
「刃に何か塗ってある。匂いからしておそらくただの油だろうが、用心はしておかぬとな」
「………あー。なるほど」
クロードは、あっさりと解放された足を眺めた。
「だが思ったより出血している。とりあえず、どこかで応急処置だな」
衛兵長は首をぼきぼき鳴らすと、また身を屈めて副長の背に掌をあてた。
クロードは不吉な予感に顔を顰めたが、案の定膝の下にもう片方の腕が入り込んできた。
両腕に痩身を抱いた衛兵長が立ち上がると、抱かれた男は喚き始めた。
「や・め・ろ、つってんだろ!!こんな恥さらしな格好を部下どもに見られてみろ、もう二度と睨みがきかねぇ!」
「…副長、ちゃんと食事をとっておるのだろうな?」
拳を振り回して暴れる副長を危なげもなく運びながら、サディアスはやや心配そうに尋ねた。
「細いとは思っておったが、こうしてみるとあまりにも軽い」
「あんたに比べりゃ熊でも軽いぜ。いーから!肩だけ貸してくれりゃ歩けンだよ!はなせよーっ!!!!」
「何か巻くまでは動かぬほうがいい。…それと、耳元で喚くな」
何をやっても無駄とわかったクロードは黙り、ずんずんと歩いてゆくサディアスの行く手に目をやった。
凍てつく夜気に沈む石切り場を越えた斜面の途中に、荒れ果てたかつての修道院の跡が不気味なシルエットになって浮かんでいる。
クロードは喉の奥でなにごとか罵った。
「おいおい…よりによって、夜の石切り場の坊主のすみかの廃墟かよぉ。おあつらえ向きの怪談の舞台じゃねぇか」
「夜が明ければ部下達がこのあたりを探しに来る。目印には格好だ。…少しは黙れ」
ちっ、と舌を鳴らし、副長は実に居心地悪げにサディアスの腕の中で躯を硬直させた。
「了解、衛兵長」
- 108 名前:10 投稿日:2005/08/12(金) 13:13:28 ID:5iRmI6dk
- *
古くさい廃墟にもいいところはある。
目印になることもその一つだが、そのへんを適当に探すと、吹き寄せられた枯れ葉や枝やゴミが雨に濡れない場所に転がっていることなどだ。
その上、早く、怪我をした副長を暖めてやらねばならないサディアスにとってはおあつらえむきなことに、
石切り場の職人が休憩時間に入り込んで作ったらしき、たき火に格好の石組みまで見つけることができた。
この過酷な一週間の締めくくりとしては悪くない。
炎が安定して伸び上がり始めると、サディアスは抜け落ちた梁のような灰色の太い丸太を真ん中に渡した。
これで放っておいても消えることはない。
振り返ると、がれきの山を背に横たわっていたクロードがあからさまに警戒した顔つきになって口を開いた。
「ここまでしてもらえりゃ安心だ、すまねぇ…手当なら、あとで、自分でするからよ。あんたは休んでくれないか」
「何を言っておる」
衛兵長は漆黒の上着を脱ぎ始めた。お仕着せのブラウスも脱ぎ、前合わせのシャツをめくる。
みるみる分厚い躯が露になっていくのを目の当たりにしたクロードが喉に息が詰まったような声をあげた。
「な、何だ、その真似は」
「こんなものですまぬが、他に適当な布地がないのだ」
サディアスは上半身裸になり、短剣をとると、その刃を脱いだばかりのシャツにあてた。
細く裂き、幾条もの包帯もどきをでっちあげ、彼はそれを丁寧に掌に掬い上げると副長に見せて笑いかけた。
「さあ、脱げ。下だけでいい」
「待ーてーよー!」
クロードは跳ね起きた。
「いちちち」
サディアスは慌てて片手をつき、膝を進めて近づいた。
「馬鹿者、動くな。傷口が開くぞ」
「お、俺はなあ!」
クロードが痛みをものともせず、近づいてくる衛兵長にくってかかった。
「俺はこう見えてめちゃくちゃ丈夫なんだよ!いいから、頼むから、放っといてくれってば」
「うむ。怪我さえしておらねばこうも人の親切を無にしたがる小僧など、放っておきたいのは山々だがな」
サディアスはむんずとクロードの腕を掴んだ。クロードが激怒した。
「小僧だと。いつまでもガキ扱いすんな、俺はもうすぐハタチだぜ。気安く触んなって!」
衛兵長は、掌から伝わるなんとなく頼りない感触に顔を顰めた。
「こうしてみるとやはり細い。何か悩み事でもあるのではないか?」
「へっ」
なんとか振り払い、クロードはいかついくせに人のよさそうな上官の顔を眺めて、いささか毒のこもった口調で呟いた。
「あんたじゃあるまいしよ…」
- 109 名前:11 投稿日:2005/08/12(金) 13:14:31 ID:5iRmI6dk
-
腕を放し、衛兵長は何も聞かなかったような顔でクロードの前にしゃがみ込んだ。
「たまたま今日は一番いいシャツを着ていた。それを犠牲にしたのだ。恩を着せるつもりはないが、有効に利用させてもらうぞ、副長」
「よせ!!」
サディアスはにこりと笑った。
「お前が衛兵長なら命令として聞いてもいいのだがな」
否応無しにクロードは、鋼のような腕で引き寄せられた。
クロードの頭をがれきの下にずり落とし、その躯を脇に挟むように抑えつけた衛兵長は、彼の上着をめくりあげ、ベルトを外し始めた。
「よせよっ」
両手を固めて殴りつけようとしたが、殴れる場所は背中しかない。
「お前、なんだこの生っ白い腹は」
逞しい背中越しに、呆れたようなサディアスの声がする。
「痩せっぽちにも限度がある」
「よせよ…!」
副長の声がふいに弱々しくなった。ズボンが腰に沿って引き下げられ、下着がそれにつれてめくれたのがわかった。
クロードは拳で顔を覆い、上半身を丸めるようにして縮こまった。
「ふむ」
サディアスの声がする。傷の付近を、指先が軽く抑える感触。
「…派手には見えるが、浅い。すっぱりいったな。傷口も荒れておらん。これなら包帯をしておけば大したことはない」
衛兵長が肩越しに振り向く気配がした。
「安心しろ、副長…」
サディアスは言葉を止めた。
「クロード?どうした」
「……………」
慌てたように衛兵長はおさえていたクロードの腰から手を放し、向き直ってきた。
「どうした。気分が悪くなったのではないか?」
肩に手を置こうとして、彼は躊躇った。
その肩が小刻みに揺れていた。その揺れは段々大きくなり、ついには声まで漏れ出した。
「……っ、くっ、く…あ、あははは!」
クロードは両手をぐいと顔から外し、大笑いを始めた。
「あははは、はははっ、うあーっはっはっはぁ!!」
これ以上もう我慢できないといった風情で、笑い過ぎで目尻には涙まで滲んでいる。
「…副長」
サディアスの顔は反対に深刻な影を刻んだ。
「お前、変だぞ」
「変なのはあんたさ、サディアス」
にやりと笑って副長は片腕を伸ばすと素早く、下着ごとズボンを引き上げた。
「いいなぁ、あんた。信じらンねーけどそういうとこがいいんだよなぁ」
衛兵長は眉間に深い溝を作ったが、副長が元通りに傷を隠したのに気付いて口の端を曲げた。
「手当だ、副長」
「自分でする。浅いんだろ」
きっぱりとクロードは宣言し、よろよろと立ち上がった。
「男同士で裸になってる趣味はねぇんでな。悪いがあっちでさせてもらうぜ」
親指で崩れ落ちた壁を指し、クロードは衛兵長の手から包帯を奪うと、危なっかしく歩き始めた。
「肩を貸そう」
見かねて立ち上がったサディアスの申し出を、今回彼は断らなかった。
面白くてたまらないといった表情を一瞬みせて、クロードは碧い目に笑みを浮かべた。
「悪りぃな」
- 110 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2005/08/12(金) 13:34:36 ID:Rpfca1Vc
- 何このネ申様たち。
ナサ神、司神、ゴッドファーザー神の三柱に、さらに新たな神様が集まってきている。
このスレ最高だ。
- 111 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2005/08/12(金) 13:35:16 ID:pFi+8AJV
- ワクテカしつつリアルタイムに感謝
- 112 名前:司6 ◆aPPPu8oul. 投稿日:2005/08/12(金) 19:45:44 ID:xs1QPlO6
- ネ申とか言われるとビビりはじめる小心者ですこんばんは。
スレの消費が早くてまたビビってます。嬉しい悲鳴だなぁ。
それでも予告しちまったもんはしょーがない。
修学旅行準備編と思わせておいてお盆帰省前編、リアルタイムに投下。
ごめん。前編だからまたエロないや…
* * * * *
ふわぁぁ、と色気のないあくびをしている司が、ソファにうつぶせに転がっている。
手にしているのは三国志…の漫画だ。一人暮らしの隆也の部屋を圧迫している漫画のひとつである。
両親が家にいない日中(行き先を聞かれるから)。友人からも誘われなかった日。加えて、司にその気がある。
この条件が揃うと、司は勝手に、何の連絡もなしにやってくる。
携帯の番号もメアドも交換したが、ほとんど連絡してこないし、こちらからもしない。
この年頃の女の子なら、それこそ絵文字顔文字満載のメールを頻繁に送ってきそうなものだが、
やはりそのあたりの感覚が違うのだろう。
とはいえ。
「……司。胸見えてるぞ」
暑いから、といって早々にサラシを解いてシャツを脱いで、タンクトップ一枚で転がっていると、
日に焼けていない白い胸元がだいぶ見えてしまう。いまさらだが、目のやりどころに困る。
「え……まぁ、いいじゃん。先生しかいないんだし」
悪びれもせずに言う司には、羞恥心がないのか、油断しているのか。
ため息をついて、不本意ながら教師らしい説教を始めなければならない。
「あのな、普段男のかっこしててもお前は女なんだから、もうすこし恥じらいを持てって。無防備すぎるぞ。
その、な…俺も心配なんだよ。お前が女だってバレたらと思うと…な」
最初はむくれていた司も、最後の方を聞くと困ったような顔をする。
「俺だって、いっつもこんなんじゃないよ?確かに、学校にいるときは自分が女だって忘れてることもあるけど…」
忘れてるのか。いやたしかに、忘れていなければ男子生徒と下ネタで馬鹿笑いなんてできないだろうが。
「バレないようには、頑張ってるし…実際俺が女だって知ってるのは、先生と三崎さんと、あいつだけだし」
あいつというのは司の親友で、最初の相手である男子生徒のことだ。
「…でもあいつにはバレたんだろ?……結局、そのまま…」
抱かれたんだろう、と口にすると、隆也にはやはり、おもしろくない。
「あー、あれ、は…不慮の事故というか、あいつだからバレたというか…とにかく大丈夫、だと思う。多分」
体を起こしながら言った最後の方は、だいぶ自信がなさそうだ。
多分では困るのだ。司自身がどこまで自覚しているかわからないが、中性的な外見は男女どちらから見ても魅力的だ。
加えて男気にあふれていて、女の細やかな心配りもできるとなれば、それなりに人気も出る。
これで女だとわかったら、この年頃の男なら間違いなく意識してしまう。そのまま本気になられたら問題だ。
- 113 名前:司6 ◆aPPPu8oul. 投稿日:2005/08/12(金) 19:46:17 ID:xs1QPlO6
- 思わず口を開こうとした隆也より先に、司の口が動く。
「こう、恥ずかしくなったりとかっていうのは、自分が女だって自覚してるときだけで…
だから、先生の前でだけだから…体触られても、普段はなんとも思わないし…」
「あ…そうか……そうなんだな……」
自分が触れたときの司の反応しか思い浮かばなかった隆也は、思わず頬をかく。
「いや、どうもここで一緒にいるときのイメージが強くなってて…あんな可愛い反応してたらばれるだろうって…」
司の頬が赤く染まる。
「だから、そんなんじゃとっくにバレてるって…俺は、先生の前でだけこうなの!」
上体を乗り出して、触れるというよりはぶつける、といった感じで唇を押し当てる。
その頭をなでてやって、にこりと笑う。
「…そっか。そうなんだな…ありがとう、っつーのも変か…はは」
正座のような姿勢だった司が膝を抱えて体育座りをする。
そのすぐ横に腰を落ち着けて頭を撫でてやっていると、何故か司は黙り込む。
「………」
何か機嫌を損ねるようなことを言っただろうか。
「…先生。相談があるんだけど」
「うん?なんだ?」
司は正面を向いたまま、何かいいにくそうにしている。
「…その、バレないように、ってことで」
「うん」
「……修学旅行の、話」
隆也が固まった。
そうだ。10月には修学旅行がある。修学旅行といえば観光と枕投げとちょっと浮かれてしまった思い出と…
「いや、待てよ。ちょっと待て?修学旅行…って、あれだよな、そうだよ、風呂とかどうするんだ?
いや、風呂がどうとか言う前にそもそも男の中に一人で行動して、しかも同じ部屋で寝るなんて…」
慌てる隆也の様子に、司もため息をつく。
「そう、だから…まぁ、部屋とかはどうにでもなるとして、風呂だけなんとかなんないかなって…」
「どうにでも…ってわけにはいかないだろう。同じ部屋で寝るのも十分マズイぞ…うーん…」
本気で考え込む隆也が担任でよかったと、司はのんびり考える。
こういう関係になっていなかったら、それこそ自分でどうにかするか、修学旅行をあきらめるしかなかった。
「そうだ、お前身体測定のときとかどうしてたんだ?というか、そろそろお前が男子生徒として通用してる
からくりを教えてくれないか?」
- 114 名前:司6 ◆aPPPu8oul. 投稿日:2005/08/12(金) 19:46:50 ID:xs1QPlO6
- 司は膝を抱えたままこちらを見上げて、そのままぐるりと天井まで視線を巡らせて、しばし考える。
流石に世間を欺くだけのからくりなので、慎重にならざるをえない。
「んー…まぁ、いいか…うちの理事長ね、俺の大叔父さんなんだ」
いきなり大物がきた。隆也でも年に数回しかお目にかかれないが、確かにあの理事長なら許しそうだ。
「トップダウンかよ…いや、確かに安全だな。…あれ、待てよ?たしか…」
「うん。保健の高木先生は理事長の姪で、俺の叔母さん」
磐石だ。これでだいぶ納得がいった。たしかに学校行事で服を脱ぐ場合、保健の先生が関わることが多い。
納得のため息をついて、次の瞬間には違うため息をつきたくなった。
「…しっかし担任やってて気付かないとはなぁ…可愛い顔してるとは思ってたが…俺もまだまだだな」
頭を撫でながら苦笑すると、なんだか微妙な表情でこちらを見ている。
「ん、なんだ?」
「…ね、先生…やっぱ俺、学校で女に見えること、ある?」
その質問の意図がどこにあるのかわからないが、とりあえず正直に答えておこう。
「そうだな……女っていうか、可愛いと思うことはあるな。女子にも言われないか?
でも、普通性別は疑わないだろ。だから大丈夫じゃないか?」
「ん…そっか、うん。えへへ。正直見えるって言われても見えないって言われてもちょっとヤだったんだ…」
取り扱いにくいことこの上ない。それでもはにかんだ笑みを見るとこちらも笑みがこぼれる。
「ま、俺にはもう可愛くしか見えないけどなw」
可愛いを連呼していると、司の頬がほんのり染まって、それを隠すようにむくれた顔をする。
そろそろ慣れてもいい頃だと思うのだが、そうはいかないらしい。
「……先生、学校では前の通り接してよ?俺、まだ学生生活楽しみたいんだから」
「あぁ、わかってるって。と、そうだそうだ、修学旅行の話だったな。風呂は絶対何とかしなきゃいけないな。
ちょっと待て、宿泊施設の資料持ってくる」
資料を探しに立ち上がった隆也の背を見て、司はぼんやりと再確認する。ほんとに隆也でよかった。
言い方は悪いが、やっぱり便利だ。
「あったあった。えーと…一日目は広島のホテルだな。夕食の前に被爆者の体験談を聞いて…か
ここは部屋ごとに風呂ついてるから大丈夫だな。心配なら夜中にこっそり入るとか…」
司の横に腰を下ろした隆也の手にはプリントの束がある。
職員の間ではもうほとんどの日程が決まっているのだろう。司は興味津々といった様子でそれをのぞきこむ。
「うん。大丈夫そう、だね。二日目からは京都だよね」
「あぁ。ここは…女子は部屋ごとに風呂あるんだけどな。男子の部屋になると…いや、待てよ?」
隆也はいつになく真面目な表情で考え込んでいる。
- 115 名前:司6 ◆aPPPu8oul. 投稿日:2005/08/12(金) 19:47:23 ID:xs1QPlO6
- 「……やっぱりだめだ。男子と同室はまずい。着替えもあるし雑魚寝上等だし脱がされるかもしれないし」
「脱が…どんな状況ですかソレ…」
「いやあるんだよ。大体。女子が恋愛トークをするのと同じような状況で男は下ネタトークをするんだ。
そしてそこには教師にバレないように調達した酒があったりなかったりで、酔っ払った奴らは裸になって
騒ぎまくり、結局見つかってホテルの廊下に正座させられるという…」
それは教師としての経験談なのか生徒としての経験談なのか。ちょっと司が退いているがそのへんはご愛敬。
「…でも、だからって男子と同室じゃなく、ってわけにもいかないでしょ?…疲れたとか言ってさっさと寝ちゃう
とかすればなんとか…」
「ダメだ」
すっぱり否定。
「さっきも言ったろ?もうちょっと危機感持ってくれよ、頼むから…」
本当に、危機感がない。よっぽど自分が女だとバレない自信があるのか、読みが甘いのか。
どちらにせよ隆也には頭が痛い話だ。
不満そうな司の顔を両手で挟んで、ぐぅ、と潰してやる。
「む。だってしょうがないじゃん…先生にどうにかできるの?」
「まだ言うか。俺をなめるなよ?これでも大学時代は段取りの鬼と呼ばれた男だ」
「…何ソレ」
うん、ナメられてる。
ナメられているのは気に入らないが、こう、潰した顔もなんとなく可愛く見えるのはやっぱり惚れた欲目だろうか。
「先生、顔変形する」
「ん、ああ、悪い。まぁつぶれてても可愛いから安心しろって」
笑って言ってやると、またむくれたような顔をする。こういう子供っぽい反応をみていると、やはり心配になる。
「…そういえば、班はもう決まってたよな。えーと、お前の班は…」
「あ、別に、班は問題ないから!」
何故か慌てる司の反応に、嫌なものを感じながら、クラスの修学旅行の情報をまとめてあるノートをめくる。
「だからいいってば…」
腕をつかんでまで止めようとする司の反応は確実におかしい。
班分けについて書かれたページを開いて、隆也の表情が固まる。
「…問題ないから…って…」
予想はできていたことだが、例の司の親友が同じ班になっている。
「……いや…問題ない、と思う…んだけど…」
くちごもる司に、思わず眉をしかめる。
- 116 名前:司6 ◆aPPPu8oul. 投稿日:2005/08/12(金) 19:47:56 ID:xs1QPlO6
- 「お前の言うことを信じないわけじゃないけどな…やっぱり俺としては…」
司の肩を抱き寄せ、少し気恥ずかしそうに呟く。
「心配だし…嫉妬も、するぞ」
「うん……」
大人しい司の肩を抱きながら、想像してみる。
親友とはいえ一度は男と女の関係になったわけで、司の気持ちが固まっていても相手はどうだかわからない。
ひょっとしたらずっと司のことを女として思い続けていて、修学旅行で一緒に行動しているうちによりを戻そう
とする…可能性もある。その手段が告白であるとか説得であるならまだいいが、もし強硬手段に出られたら…
と思うと、やはり黙ってはいられない。
自分の生徒を疑うのは本意ではないが、どうも警戒心の薄い司にはよく言って聞かせなければ…
「でもあいつは、協力してくれるよ?」
まさに警戒心が薄い。というか、その全幅の信頼がやはり気に食わない。
眉間に皺を刻んで、ため息をつく。
「……司。俺も自分の生徒を疑いたくはない。けどな、お前のことになったら話は別だ」
じっと目を見つめて言うが、司は困った表情のままだ。
「…あのね、先生。嬉しいんだけどちょっと俺の話聞いてくれる?」
「ん?」
「あいつはもう俺と先生のことも知ってて、協力してくれてるの。だから大丈夫」
今までの思考をひっくりかえされるような事実である。
「…そうなの?」
「そうなの。俺がここに遊びに来るときのアリバイ工作もしてくれてるし。あいつは信頼していいよ」
それが事実なら、まぁ大丈夫だろう。
…司のことが好きなのに涙を飲んで協力しているとか、こっちも泣きたくなるような事態になっていなければ。
しかしそうなると、司が班分けの話を嫌がった理由がわからない。
「じゃあなんで班の話を嫌がったんだ?」
「う……」
口ごもった司の視線がノートに落ちる。そっと指差したのは、同じ班の、男子ではなく女子の名前。
「…三崎ゆい、か」
なんなんだ、この班は。色々と危険すぎるぞ。なんなんだ。なんで司はこんな班なんだ。
いや、あのときは妥当だと思ったんだ。とくに危険なことをしそうな奴もいなくていい班だと…
「せ、先生、今意識が飛んでた」
目の前をひらひらと司の手が動いている。なんというか、頭が痛い。とりあえず抱きしめておこう。
- 117 名前:司6 ◆aPPPu8oul. 投稿日:2005/08/12(金) 19:52:02 ID:xs1QPlO6
- 「…先生?」
「…いや、な。司が悪くないのもわかってるし別にこの班が悪いってわけでもないんだが……落ち着かないな…」
少々無理な体勢で司を抱きしめてため息をつくと、膝の上に乗せていた資料が退けられた。
空いた腿の上をまたいで、司が正面に回りこんで抱きついてくる。
「……これで落ち着く?」
「…うん…落ち着くな」
しばらくそのまま司の頭や背をなでている。そうだ、決まったことは仕方ない。
ゆいやあいつの協力が得られればやりやすくなるだろう。前向きに考えなくては。
ふと視線がカレンダーに移った。
「そうだ司、もうすぐ…」
声をかけようとして、司が寝息を立てているのに気付く。だから油断しすぎだと言っているのに。
油断しきった寝顔が可愛いので、起こすつもりはないが。
「…やっぱり男子と同室はよくないな、うん」
前髪をよけて額に口付けて、じっくりと寝顔を観察する。半開きの口からよだれがこぼれそうだ。
本当に無防備で…そういえばシャツ一枚隔てて胸に胸があたっている。
本人は普段はこんなに無防備ではないと言っていたが、実際どうなのか妖しい。
「…あ。そうかそうか」
司を起こさないよう小声で呟きそっと抱き上げて、ソファに横たえた。
「…ん……ふぁ……」
数十分後、司は寝たときと同じ姿勢で目を覚ました。
わざわざ担ぎ上げた隆也の努力が実って、司は何事もなかったと信じ込んでいる。
「ん、起きたか?」
「うん…ごめんなさい。重かったでしょ」
むしろこっちが謝らなければいけないのだが。
笑い出しそうになる口元をひきしめて、いつもの調子で話しかける。
「いや?それよりさっき言い忘れたんだけどな、俺もうすぐお盆で実家に帰るから、
その間はちゃんと用心して生活しろよ?」
「あ、そっか…俺もお父さんの実家行くんだった。大丈夫だって、先生は心配しすぎ」
笑う司の胸元に、さっきの悪戯が見える。そろそろ教えてやろうか。
「そうか?まぁ用心に越したことはないからな。ちゃんと虫除けのマークつけといてやったぞ」
* * * * *
そしてちょっとアンケート。
お盆帰省中の司がうっかり従兄弟と…という話も考えているのですが
先生への操を貫くべきか否かについて意見を頂戴したく。
…そんなことより伏線張りすぎて修学旅行本編が収拾つかなくなりそうだがorz
- 118 名前: ◆z1nMDKRu0s 投稿日:2005/08/12(金) 20:42:26 ID:BpjOiDAX
- 相変わらず司タン可愛いのはその無防備さだと気付きますた
従兄弟とやるのも良いとは思いますがあの調子だと既に気づいているんじゃ……
我願う
司神の思うがままに……(ヘヘェーーーーっ!!!!
- 119 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2005/08/12(金) 20:47:29 ID:pFi+8AJV
- 神来たよ。神来たよ。ハァハァしすぎて三点倒立しそうになったよ。
ちなみに私は個人的には従兄弟といたしちゃうのはちょっと……。なんか鬱展開が待ってそうでイヤン。
ゆいタソはともかく、男性の相手は先生と例の親友くんくらいがいいかなあ……
ただ、最終的には司神の脳味噌にお任せ致します。
- 120 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2005/08/12(金) 21:00:57 ID:MQbETmM9
- 先生以外とはしないって約束しちゃったわけだしねえ。
従兄弟としちゃったら司が軽い女になっちゃうような……。
エロパロ的にはいいんですがね。
ふむ。
その従兄弟も実は男装美少女で、司と一緒に先生を取り合う……なんて
ことになったら面白そうだなあ、と無責任に再び司殿にネタを提案してみる。
- 121 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2005/08/12(金) 21:46:38 ID:MQbETmM9
- ダブル男装少女……。
自分で提案しといてなんですが、ほんとに面白そうなので一つ書いてみます。
提案しっぱなし、ってのもアレなので。
あんまり、期待はしないでくだはい。では、後日。
- 122 名前:88で38だったりする… 投稿日:2005/08/12(金) 22:56:49 ID:9bSk2h1e
- 読みにくかったですか?スマソ。いや改行は整えてあるつもりなのですこれでも。
ただこういう文字の寿司詰め状態が好きで…ごめ、結局自分の好みorz
自分なりに直してみます。d。
複数の方々にレスいただけてありがたやありがたや。
ナサ神様ありがとうございます、せいぜい数時間の作業でしたから大丈夫。
自分の頭の中でも神々のSSが整理できて良かったですし。
でもって、サディアスキター!!!司キター!!!やばい鼻血が。
いや男装美少女が無理やり司タソを襲(ry
- 123 名前:ナサの中の人 投稿日:2005/08/12(金) 23:04:15 ID:5iRmI6dk
- >121
来て来て来て!!
楽しみに待ってる!
38氏は88氏だったのか!
いやぁ楽しい。
この狂瀾怒濤っていうか欣喜雀躍っていうか(意味不明)、
活気に満ちあふれている様を見てると俺本気で我慢できない。
めちゃくちゃ書きたい。書いて書いて書きまくりたい。
もう短くてもいいや。
逐次投下するわ。
- 124 名前:衛兵長動揺する12 投稿日:2005/08/12(金) 23:05:11 ID:5iRmI6dk
- 壁の向こうは吹きっさらしの青天井…いや、夜だから黒天井…だった。冷え冷えと石を敷き詰めた床しかない。
「こんなところでは風邪をひく」
サディアスは顔をしかめて、副長の胴を支える掌に力をこめた。
「やはり、火の傍に戻ろう」
言い終えた途端、大きなくしゃみをした巨漢を見上げて、クロードは声を潜めた。
「あんたが風邪ひいてんじゃねえの」
「それは…」
衛兵長は鼻水をすすり上げた。そういえば、このところ風邪気味だった事をすっかり忘れていた。
「…今、服を着ていないからだ」
クロードは俯いて、うんざりしたように額を押さえた。
「面倒見がいいのも考えモンだな…先に服くらい着てくれよ、頼むぜ衛兵長」
「うむ」
二人は引き返し、再び火の傍らに落ち着いた。
サディアスが服を着るのを、副長は火に枯れ草を放って勢いをつけながら、疲れた顔で見ていた。
が、その右手が反対側の肋の上をしきりに撫でていることに衛兵長は気がついた。
「そこはどうした」
「ああ…これか」
クロードは舌打ちした。
「詰め所ンとこで俺の弓がいかれただろ。折れた弓筈が突きこんできた痕がちっとな」
サディアスはじっと副長を見た。
「そういえば礼がまだだった。感謝する、副長」
「よせよ」
クロードは笑った。
「俺があんたを護るのは当然だろ」
「いや。すまぬ」
上着を羽織り、副長の傍に腰を降ろしたサディアスは彼に言った。
「一応そこも見ておいてやろうか」
「またかよ」
クロードは、ぱっと飛び退…きかけ、太腿の例の傷を抑えて呻いた。
「いちちち」
「満身創痍なのだ。遠慮するな」
「遠慮じゃねえんだよ!…あっ、この馬鹿」
あっさり巨体に押さえ込まれて、クロードは顔を真っ赤にして叫んだ。
サディアスは笑った。
「世話をやかれたくなければもう少し肉をつけろ、副長」
「やめろよ!イヤなんだよ、男に触られるのはっ」
「………それはすまぬが。おや?」
サディアスは間近で、優男の副長の顔をまじまじと眺めた。
その、男にしておくのはもったいないようなどこか線の細い容貌には、確かに嫌悪と、それからよくわからない表情が浮かんでいる。
「お前。なかなか女にもてそうな男前だったのだな、クロード」
「うげっ」
副長は呻いた。
「よせやい、今さら。五年もつき合わせてた面だぜ。まさかそんな趣味があンじゃねえだろうな、あんた!」
「ない。俺とて顔を近づけるのは女性のほうが楽しい」
サディアスは身をおこし、クロードの襟首を引っ張り上げた。
そのまま骨太い指でボタンを外し出すと、クロードは両腕をつっぱって逃れようとした。
「女?……女ってな、例えばあれか。確か、アンヌっつったっけかな──金褐色の綺麗な髪の?」
- 125 名前:13 投稿日:2005/08/12(金) 23:05:55 ID:5iRmI6dk
- サディアスの指の動きが止まった。
それはわずかの間だったが、クロードはその間に素早く言い添えた。
「あんたの惚れてる娼婦だよ。え、身分違いもいいとこじゃねーか?──ダジュール子爵家のお坊ちゃま」
ぎくしゃくと、衛兵長は躯を起こした。その口を突いて、例の癖が出た。
「どどど…ど、どこでそそそれを」
クロードも斜めに身を起こし、憎々し気に言い捨てた。
「誰でも同じだろ。二ヶ月前だっけな。あんたを娼館に誘った部下からバッチリ聞いたさ」
「ち、違う」
サディアスは、やや頬を赤らめたがきっぱりと言った。
「たた、確かにいかがわしい場所に行った。その女とも寝た──が、が──惚れてはおらぬ」
「へえぇぇぇ」
クロードは碧い目を細め、信用していないことが丸判りの抑揚を声に効かせた。
「その女とは一度じゃなかったって聞いてるぜ。先月か?そン時もわざわざ同じ女を指名したんだってな」
衛兵長は大きな図体を縮めるように座り直した。
「ししし、指名はしたが…それは、その女だから、じゃない。…他には一人として居なかったのだ、あのような豪華な、金──」
黙り込み、サディアスは顔をうつむけた。
頭の毛を同じくらい、その顔が赤く茹で上がっていた。
クロードはゆっくりと言った。
「──金褐色の髪か?」
「………」
サディアスは返事をしなかった。
副長の顔が複雑に変化した。
身をゆっくりと乗り出した。太腿の傷も、肋を撫でるのも忘れている。
「おい」
衛兵長は巨体を揺らした。その頭の天辺に、クロードは不審も露に問いかけた。
「…まさかよ」
サディアスは無言だった。
「あんたの惚れてる相手ってのは、本当に、その女じゃねーんだな?」
「………ち、違う……」
衛兵長は顔をあげた。嘘の吐けない青い目が怯んでいた。
いつも剛毅で単純な衛兵長を見慣れたクロードの目に、それはひどく弱々しく、だからこそかえって恐ろしいものに映った。
- 126 名前:14 投稿日:2005/08/12(金) 23:06:37 ID:5iRmI6dk
-
「…そのへんには転がってないような、豪華な金褐色の、綺麗な髪──」
クロードはのろのろと呟いた。
「あんたがおかしくなったのは──そうだ、イヴァン様が王陛下に閉じ込められて『あの方』がいらっしゃった、丁度三ヶ月前からだ──」
「やめろ」
衛兵長が叫んだ。
副長に飛びかかり、口を塞ごうと掌を押し付けた。
「いいい言うな、クロード!」
「…娼婦どころの騒ぎじゃねぇや!」
それより早くクロードが大声をあげた。
「てめぇ、何考えてんだ!!!」
「だだ、黙れ!!」
口元を歪めた衛兵長に押し拉がれたクロードは悲鳴をあげた。肋と太腿をいっしょくたに庇って可能な限りに躯を丸める。
その声にわずかに正気を取り戻したサディアスは、自分が副長の細っこい躯に体重をかけている事に気付いた。
だが重みをのけようとはしない。
青い目をぎらぎらさせて、サディアスは迫った。
「いいい、い言うな。言うな。だ、誰にも言うな!!」
「言えるかよっ」
クロードが叫んだ。
「バレたら、よくてあんたは追放だ──下手すりゃ殺されちまう。殿下の『あの方』への寵愛は知ってるだろう!」
渾身の力でそこまで言うと、副長は激しく咳き込んだ。
衛兵長の巨体から力が抜けた。
クロードの上からよろりと離れて、彼は尻餅をつくようにへたり込んだ。
しばらくの間、副長の咳き込む声と、たき火が弾ける音だけが夜の静寂を埋めた。
「…知っている」
やがて衛兵長はぼそりと呟いた。
「判っている。イヴァン様の溺愛ぶりも、あのお方がご主人様を心底慕っていらっしゃるのも。俺は──」
いかつい顔が歪み、クロードは信じられないものを見た。
青い目が激情に潤んでいる。
「俺は──聞いたのだ」
ふつ、とサディアスは口を噤んだ。
何を、とは聞けなかった。
この男が、漏らさぬと決めた事は口が裂けようが漏らすことはないと、クロードもまたよく判っていた。
衛兵長の首が深く俯くのを、クロードは深い胸の痛みとともに見守った。
見守ることしか、できなかった。
- 127 名前:ナサの中の人 投稿日:2005/08/12(金) 23:07:39 ID:5iRmI6dk
- さあ、お前ら!
どんどんいこーぜ、どんどん!
- 128 名前:司 ◆aPPPu8oul. 投稿日:2005/08/12(金) 23:27:51 ID:xs1QPlO6
- 色々コメントどもー
ぶっちゃけ従兄弟は男でも女でも年上でも年下でも良いやーとかってアバウトな感じだったのでボツ。
エチー(本番)なしでいいなら書こうかなぁとか。
とりあえずはお盆帰省前編のエチーと修学旅行準備編に集中します。
>>121
楽しみにしてます。期待します。
>ナサ神
なんかノってきてますね!やっほう!はやくクロードを剥いてくださry
逐次投下でお願いします。ここをのぞくのがさらに楽しみになる。
- 129 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2005/08/13(土) 00:54:57 ID:KnPs6vsw
- サディアス(*´д`)ハァハァ
クロード、泣かせ甲斐ありそうw
王子殿下、まさにイヴァンのb(ry
- 130 名前: ◆z1nMDKRu0s 投稿日:2005/08/13(土) 01:43:59 ID:5ZbfTnOT
- 神の行進に続けーー!!投下
なんだかんだ言いつつも結局来ちゃったエロパロ板
「確か男装少女萌えってスレだよな」
真、検索して見つけたこのスレを選択して決定ボタンを押す
やっぱり携帯でエロパロ見るよりもパソで見た方がいいんじゃねぇか
文字ばっかで読みづらいだろ
それでも我慢して読み進める、首と瞼が不安定になっても読む
で、見つけた文章
伊集院レイ
「義明がいってたのはコイツか、どきメモのキャラだったのか」
チッガーーーーウゥ!!!!!!!!!!
どきメモは左近寺のハマってる恋愛ゲーム!!!!
これはときメモ!!ときめきメモリアル!!!!
言い慣れるとどきメモの方が言いやすいけどこれはときメモですから!!
残念!!!
で伊集院のやつ読み終わったらスレをざーっと読み流す
でその間に真が気になった単語「イヴァン(半角失礼)」
確か、学校で真がやってるエンドレスバトルのハンネがイヴァンだったよな
煮本丸とかいうサイトでやってるからそれの知り合いか?
ムーミn……失敗、真がこのスレに興味を持ったようです
- 131 名前: ◆z1nMDKRu0s 投稿日:2005/08/13(土) 02:02:02 ID:5ZbfTnOT
- 真がナサ神のSSを読み始めて約30分、ようやく最初のやつ読み終わりますた
いや〜真は活字を読むとのび太並の速度で眠っちまうのによくここまで耐えられましたな
今日はお赤飯炊かなきゃ
結局真はやってるエンバトと関係無いことがわかるとすぐに切っちまった
だけどすぐに繋ぎ直す
ははーん、おにーさんわかっちゃったー♪
こいつ続きを探し始めたな、ほらやっぱり♪
またスレを読み流し始めた
エロ小説の魅力に取り付かれやがって、どうなってもしらんぞぉー♪
- 132 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2005/08/13(土) 07:03:37 ID:D5dgoTYl
- クロードがもしや男装した女で本名はクローディアじゃないかと思っていた俺ガイル
- 133 名前: ◆z1nMDKRu0s 投稿日:2005/08/13(土) 07:37:49 ID:5ZbfTnOT
- 今度は司神のSSかい
男装少女萌えスレでナサ神と双壁を成す神だぞ〜
抜け出せなくなっても知らんぞ〜
あとさぁ真、お前妄想しながら見るのは別に構わんとおもうのだが……
真ビジョンの司がサラシ巻いていないのは何故?
そういえばナサ神のSSの時もナタリータン黒髪でしたな
文中に堂々と金髪って書いてあるのにねぇ
ダメだよ真、自分でキャラのイメージ変えたら
「……っ!!」
あ、いきなり顔が真っ赤になった、何だよこいつ
行動読めねー
しかも今度はふて寝しやがった、ほんとどうしちゃったの真?
- 134 名前: ◆z1nMDKRu0s 投稿日:2005/08/13(土) 07:39:23 ID:5ZbfTnOT
- 途中寝過ごしてここまで
ホントは今日ユウタンの艶姿が入るはずなのだが……
無念
- 135 名前:司 ◆aPPPu8oul. 投稿日:2005/08/13(土) 15:18:03 ID:c486VDeT
- 真可愛いな。ニヤニヤ。
ユウタソの艶姿を正座して待ってます。
かくいう自分も今晩投下するぞー、と自分を追い詰める。
- 136 名前:衛兵長動揺する15 投稿日:2005/08/13(土) 17:52:17 ID:shwpo+wC
-
どのくらい沈黙が続いたのか。
灼き折れた丸太がごとん、と短く落ちて熱い灰をふきあげた。
その小さな音に我を取り戻したように、衛兵長が顔をぐいとあげた。
クロードに向けた青い目は、ぬぐったように不穏な気配が失せ、いつもの平凡な色をしていた。
「…副長。肋を出せ。足もだ」
「…あー、あー、あー、あー」
クロードは苛立たし気に吐き捨てた。
「忘れてくれたとばかり思ったのによ」
衛兵長はきっぱりと言った。
「俺は、忘れん」
一瞬クロードの碧の目がいかつい顔の奥を探るように鋭くなった。
が、それ以上余計な口を叩かず向き直ったサディアスの巨体から身を避けようとして彼は立ち上がりかけ、足をかばって転倒した。
「ってぇっ!」
クロードは喚いた。
「おい、大丈夫か」
サディアスが腰を浮かせた。
「さ、さっきから、あんたがよけいな事さえしなきゃな。こら、触んな」
「傷が開いたのか?」
衛兵長は部下の身を案じるいつもの面倒見のいい表情を浮かべ、ぐいと痩身に近づいた。
*
衛兵長の顎に右の掌をあて、根限り乱暴に押しやる。
クロードは必死だった。
「た、頼む。これだけは俺の好きにさせてくれ、サディアス!」
「包帯を巻いたらな」
ぐい、とその手首を握って引き離そうとして、サディアスの眉尻が跳ね上がった。
ぎこちなく首を傾け、握った副長の拳を横目で見た。巨大な掌にすっぽりと隠れて見えない。
「……?」
「放せ!重い、死ぬ!」
暴れるクロードをちらと見下ろし、衛兵長は頭を振った。
自分の全体的なサイズを考えたのだろう。
「…クロード、そう暴れるな、傷に良くない」
「あ、暴れずにいられるかっ」
クロードは青ざめていた。
その青白い顔に嵌った目が、サディアスの厳しい目とあった。
「副長、そう我侭を言うものではない。おとなしくしておれ。これは命令だ」
おさえつけたサディアスの指がボタンを機械的な速さで外していく。
クロードは漆黒の髪を散らして逆らった。
「こればっかりは、聞けねぇ!!」
「聞け!」
至近距離で咆哮が轟き、炎が揺れた。
衛兵長に正面から睨みつけられ、クロードは碧い目を見開いて硬直した。
「いい加減にせよ、副長。思い上がるな」
- 137 名前:16 投稿日:2005/08/13(土) 17:52:55 ID:shwpo+wC
-
「…………………………………。ここまで、か」
その声が、目の前の男の喉から出たものだと、サディアスはわからずうろたえた。
いつもの皮肉をきかせたハリのあるものではなく、暗い、低い声だった。
「わかった。──好きにしろ」
クロードは、いきなり全ての力を抜いて床に手足を落とした。
碧の目だけが、じろりと衛兵長を下からねめあげた。
「…ただでさえ気苦労が多いのによ、気の毒にな。……腰抜かすンじゃねーぞ」
それっきり、クロードはふてくされたように目を閉じてしまった。
「気の毒?……」
衛兵長は口を閉じた。なにはともあれ、手当をさせる気にはなったらしい。
この機を逃しては、この気難しい副長はまたいつ了承を撤回するやらわかったものではない。
急いでボタンを全て外し、上着の前を開いた。
ブラウスも開き、自分と同様前合わせのシャツの紐をほどいて、サディアスは手を止めた。
「なんだ、これは?」
すぐにも裸の胸が現れると思っていたのに、痩身の薄い胸板は、幅広の、それこそ包帯のような布で厳重に巻かれている。
「副長、怪我をしていたのか?」
「………」
クロードは耳が聞こえなくなったようにぴくりとも動かず、反応を返さなかった。
サディアスはその表面を観察した。
固く巻き付けた布には血は滲んでおらず、凝固してもいない。まっさらの麻のようだった。
下端はちょうどあばらの下までを覆っていて、これを解かねば確認はできないと理解したサディアスは、布の端を探した。
丁度胸正面の上にたくし込んであった。そこに指をつっこみ、クロードの背に反対側の掌を差し込む。
クロードがかすかにびくりとしたのが掌に伝わったが、眉を寄せ、きっちりと目を閉じたままなのは変わらない。
解いてもいいのだろう、とサディアスは丁寧に布を外し始めた。
何度もクロードの背を潜らせて布を外していくうちに、衛兵長の青い目は、徐々に薄く、いぶかしげな色へと変わっていった。
掌に載せた背中は薄かった。
もともと痩身なのはわかっていたが、お仕着せなしで目の当たりにすると、この背中は男にしては狭くはないか。
「………」
サディアスはクロードを支える掌をわずかに滑らせた。
肩甲骨がそっくりそのまま掌の窪みにおさまり、それで肩幅のだいたいの予測がついた。
狭い。
目と鼻の下の鎖骨を見下ろした。
副長の鎖骨など、これまで五年の付き合いでも、そういえば見ることなどなかった。
クロードは夏でも身だしなみを崩すことはなかったし、隊のどの洒落者よりも漆黒のお仕着せをかっちりと着こなしていた。
優男でそれではさぞかしもてるのだろうな、とからかった事もあるのだが、そういえばクロードに女がいるという話を耳にしたことは一度たりともなかった。
その時、クロードはどう返しただろう。
思い出せない。
目の下の、白い肌に覆われた鎖骨はすぐにも折れそうなほどに細かった。
「どうしたんだよ」
いきなり頭の上でクロードが呟いた。慌てて顔をあげると、碧い目が開いて、皮肉げにサディアスを眺めている。
「何か珍しいのか」
「………」
自分は何を考えておるのだ、と衛兵長は恥じた。
この、衛兵隊一の弓の名手で、やや斜めに構える癖はあるものの最も信頼すべき副長相手に、一瞬とんでもない疑惑を抱くところだった。
クロードの皮膚が滑らかすぎるからだ。
自分の背がどのような手触りかは知らないが、おそらくこんなに肌理が細かいという事だけはないだろう。
同じ男でも、いろんな人間がいるものだ──。
サディアスは作業を再開した。
- 138 名前:ナサの中の人 投稿日:2005/08/13(土) 17:56:14 ID:shwpo+wC
- >ゴッドファーザーズ氏
真の目にはゴッドファーザーズ話はスルーなのか
勿体ない
ユウ艶姿待ち
>司氏
今夜?やったー!
俺も今夜轟沈しなければまた来たい。
- 139 名前: ◆z1nMDKRu0s 投稿日:2005/08/13(土) 18:10:12 ID:5ZbfTnOT
- ナサ神相変わらず丁寧な描写GJです
ゴッドファーザーズ話スルー>さすがに自分のSSに出すのはちょっと……
司神待ちきれませぬ!!!!かーいい司タンを想像しつつ全裸で待っております
- 140 名前:司6 ◆aPPPu8oul. 投稿日:2005/08/13(土) 20:17:22 ID:c486VDeT
- >ナサ神
どこまでも鈍感で実直で面倒見のいい衛兵長に惚れました。
次回投下が待ちきれません…!
>>139
全裸は風邪をひくので是非パンツは履いて下さい。
大事な職人さんに風邪をひかせるわけにはいかないので>>112-117の続きいきまーす。
* * * * *
一瞬キョトンとした司が、はっとして自分の体を確かめる。
鎖骨に一つ、それより少し下の胸元に二つ。わきばらに一つ。まだ司は気付いていないが、内腿にも一つずつ。
くっきりとキスマークがついている。
「せ、先生っ!これっ…何して…!」
真っ赤になって抗議する司の様子がおかしくてたまらない。笑って抱き寄せて、耳たぶを甘く噛む。
「これで数日は安心だな?」
「……ぐ……」
修学旅行もこれで通そうか、などと馬鹿なことを考えながら、首筋に舌を這わせる。
「んっ…せ、先生?ちょっと…」
服を引っ張られて顔を離し、にこりと笑いかける。
「ついでに俺にもつけてくれるか?虫除けのマーク」
ちゅ、と唇を重ねてやれば、わざと鹿爪らしい顔をしてみせる。
「…それが人にお願いする態度ですか」
「申し訳ございません姫君。どうぞ私にも愛のお印を賜りたく候」
ふざけた返答がお気に召さなかったのか、司は隆也の喉元に吸い付く。
「っお、おい、そこは…」
「……んはっ…先生は見えるとこにつけなきゃ意味ないでしょ?
俺のは肌を見せるなってことだろうけど、先生の場合はそのまんま虫除けなんだし」
どうやらこちらの意図は完璧に把握していたらしい。できのいい生徒だ。
…とはいえ数日後には親族の集まる席に出るのに、こんな目立つところにキスマークがあるのは困る。
「…わかっててやってるのか?」
ほんの少し怒気をはらませた声で問いかけると、司も怒ったような口調で返してくる。
「俺だって家族の前でもくつろげないじゃないですか。…それに」
そういえば鎖骨はちょっとやりすぎたかもしれない。それより喉元のほうがよっぽど目立つが。
「先生はいい歳だから、親戚集まったら絶対聞かれるでしょ?結婚しないのかーって」
よくよく見れば怒ったような顔も赤く染まっていて、照れているのがわかる。
「……わかってたんだな」
「わかってます」
つまりはそうか、これも司なりの愛情表現、ということか。
困るには困るが、可愛い。言い換えれば、可愛いことは可愛いが、やっぱり困る。
「その気持ちは嬉しいがな、司。だからってここまで目立つとこにつけられると俺も困るんだよ…」
- 141 名前:司6 ◆aPPPu8oul. 投稿日:2005/08/13(土) 20:17:53 ID:c486VDeT
- 「それは先生だって……」
言いかけた司の両腿を押さえつけ尻に手を回して、気合を入れて腰を持ち上げる。
抱っこというよりは駅弁の姿勢で、慌てて首に腕を回した司をベッドに運ぶ。
「せっ、先生!?」
「…困るから、お仕置きだ」
だからそれは、と言い返そうとする司をベッドに横たえ、覆いかぶさって口を塞ぐ。
逃れようとする頭を押さえて唇を啄ばみ舌を絡ませると、次第に抵抗が弱まってくる。
見開かれていた目は力なく伏せられて、胸を押し返していた手は服を掴んだまま止まり、やがて背に回された。
「んちゅ…ん……む……」
「…ん、んぅ………」
司の舌が絡み付いてくる。それをしばらく楽しんで、口を離すと銀の糸が引いて、消えた。
「…っは……先生……」
うっとりと開かれた目で見つめて、背に回した腕に力を込める。司もその気がなければここにはこない。
「ん……司……」
耳を甘噛みしながら、片手を胸に伸ばす。タンクトップの上からそっと撫で、脇から円を描いてよせるように揉む。
「…は、あ……ん……は……」
切なげな吐息を間近に聞きながら、乳輪、乳首を存分に弄る。
硬く立ち上がりかけた乳首を少し強くつまんでやると、その硬さが増す。
「んっ…やぁ、せんせ……ちゃんと、触って…」
耳を舐めまわしていた舌をうなじに滑らせてから顔を上げ、司の頭を撫でる。
「……だめだな。お仕置きだって言っただろ?」
優しそうに笑って言うのは、だいぶ性質が悪い。司の顔が歪む。
あまり見ているとかわいそうになるので、さっさと鎖骨に吸い付いて赤い印を舌先でくすぐる。
その間も手は相変わらず服の上から胸を弄んでいる。
「ふ、やぁっ……は…せん、せぇっ……」
背に回された腕が服を掴んだのがわかる。抵抗はしないが甘えはするのが、一種の才能だと思う。
大きく開かれた胸元に舌を滑らせて、また赤い印をくすぐる。
胸を責めていた手を腰に滑らせ、わきばらを―服の上から―撫で、軽く揉む。
「ひ、や…せんせぇ…やだ……」
「…ちゅ、ん……これだと気持ちよくないか?」
なだめるように頭をなでて言ってやると、また甘え声が耳をくすぐる。
「気持ちいい、けど……先生の手…感じたい」
- 142 名前:司6 ◆aPPPu8oul. 投稿日:2005/08/13(土) 20:18:25 ID:c486VDeT
- これが本当に本心らしいからたまらない。
「…ほんとに…可愛いな、お前は…」
頬に口付け、額をくっつける。
「……それでも……お仕置き、なの?」
言う声が、どこかに期待を含んでいる、気がする。
「……どうかな。司は意地悪された方が感じるんだろ?」
顔を離して笑ってやると、すでに染まっている頬をさらに染めて、ふいと横を向く。
「んなこと、ない…もん……」
語尾が消えかけているのは、自覚があるからだろう。
「ふーん…そうかそうか…じゃあ確かめるか、うん」
ズボンの上から股間をにぎると、司の体が跳ねる。それにかまわず揉み続ける。
「っひゃ…や、やぁっ…やだっ…」
「…どうだ、濡れてるか?」
なんというか、自分もこういう性癖を自覚しなければいけないのかもしれない。
「……っく……や…ぁ……ひゃぁっ……」
小刻みに体が震える。服の上からでもこんなに感じるとは思わなかった。やはり興奮しているのだろう。
「…やだ……いやぁ……」
声も震えている。はっとして見ると、目が潤んでる。
「わ、悪い。やりすぎた…ごめん。ごめんな…」
慌てて手を離し、頭を撫でキスをしてやってなだめすかし、なんとかご機嫌を取る。
「ほんとにごめ…」
「濡れてる……」
今なんて言った。
「……え?」
間抜けな声をあげて、顔も目も赤くしている司を見つめる。
「…キスだけで濡れちゃうって……この間言ったじゃん……」
そういえばそんなことも言っていた。
「一方的にされるのはやだから、一緒にって…言ったのに」
すいません、そうは言ってもお前さんは完全にMで受けっ子です。やられる側です。スレ全体で認知されてます。
とはいえ隆也も完全にSの血に目覚めたわけでもなく、結局泣きつかれると弱いわけで。
「ん、そうだな……じゃあ一緒に、するか」
にっこり笑って(そして司はこの笑顔に弱い)やれば司の泣き顔も少しはマシになる。
- 143 名前:司6 ◆aPPPu8oul. 投稿日:2005/08/13(土) 20:18:55 ID:c486VDeT
- 「…うん…」
むくれた頬を両手で包んで、とがらせた唇をふさぐ。
「ん……む……ふぁ……」
とりあえずはタンクトップをたくしあげ、直に胸に触れ、滑らかな感触を楽しみながら側面を撫でる。
その柔らかさを味わいたくて、文字通り口をつける。ぱくりと乳首を口に含んで、唇で食んでから舌を這わす。
「んっ、やぁっ……はぁ……あ……」
「んちゅ……ぺろ……」
わざとらしく音を立てて吸い付き舐めて、手を下に伸ばす。
毎度の事ながら男物の服の中から細い腰や白い腿が現れると、不思議な興奮が呼び起こされる。
顔を離して体を起こしてじっと見つめると、司が枕を顔に押し付けて恥じ入っている。
「……まだ恥ずかしいか?」
「……うん……」
初心さを失ってくれないのは嬉しいが、苦笑せざるをえない。
下着は辛うじて女物だが、無地のヒップハンガーという色気のなさが司らしい。
ただその下着の一部がぐっしょりと濡れそぼっているのを見ると、
この体を味わい尽くしたいという欲求につきうごかされる。
「…ちょっと腰、浮かせてくれ」
言葉どおり持ち上がった腰を抱えて、ぐいと持ち上げ四つんばいにさせる。
「っひゃ…ちょ、せんせっ…」
次に言いたい言葉は"恥ずかしい"だろう。かまわず下着をずり下げる。
「…っ……」
司が枕に顔を押し付ける。頭かくしてなんとやらだ。
花弁を指先で押し開いてやれば、濡れそぼった膣口がひくついている。生々しい肉の色に誘われて、口を寄せる。
ちろちろと舌を這わせ、差し入れ、愛液を吸い上げる。
「……っ!」
ぴくぴくと体を跳ねさせるが、声が聞こえない。枕に顔を押し付けて、息を飲んでいるらしい。
少し物足りなく思いながら上着を脱ぎ捨て、硬くはりつめた肉棒を取り出す。
濡れた秘裂を見せ付けるように尻を突き出したまま、司は肩を上下させている。
その肩に顔を寄せるように覆いかぶさり、耳元で囁く。
「……司……いくぞ」
押し当てられたモノの感触に、背が跳ねる。
それでも確かに頷いたのを確認して、腰を押し出し、今にも暴れだしそうな肉棒を膣内へと侵入させる。
- 144 名前:司6 ◆aPPPu8oul. 投稿日:2005/08/13(土) 20:19:27 ID:c486VDeT
- 「んんっ……っふ……ん……」
鼻から漏れる息だけが聞こえる。
乳房を撫でながら腰を進め、柔らかく締め付ける膣内を押し開き、根元まで埋める。
「は…やっぱり……いいな、司の中……」
上がり始めた息を耳に吹き込んで、ゆっくりと腰をスライドさせる。絡みつく膣壁が与える快感に、肉棒が跳ねる。
「ふ…ん、んぅっ…」
「…司…声……聞かせてくれよ……」
乳房を優しく撫でながら囁くと、司が震える。僅かに顔を背けて枕から離れた口が、薄く開かれている。
「…ん…は…」
僅かにしか見えないが、目も半ば伏せられていて…そそる表情だ。
思わず腰を止めても、お互いの下半身は勝手に蠢き、跳ねる。
「……く……やばい、な……」
徐々にピストンの速度を上げ、乳房と乳首を責める手の動きも激しくなってくる。
「ん、あっ……や、やぁっ…だめ……っ」
枕を握る手に力が入ったがわかる。しかし言葉とは裏腹に、腰は快感を求めて揺れはじめる。
腰の揺れと膣内の躍動に、いっきに快感が高まる。
「…司っ……」
たまらず激しく腰を振り、膣内を抉るように突く。水音と肌のぶつかる音が響く。
「ひゃ、あっ…だめ、だめっ……は…あ、あぁぁぁぁっ…!」
悲鳴とともに緊張した体を抱きしめ、締め付ける膣に逆らわず精液をぶちまける。
「…うぁ……は…はっ……」
びくびくと跳ねて精液を吐き出し続ける肉棒を奥深くに突きこんだまま、
崩れ落ちそうな司の体を抱えて無理やり横に倒れる。
「は…はぁ、はっ……せん、せ……」
抱きしめた腕に手が添えられる。どうしようもない脱力感に逆らって強く抱きしめて、耳に口付ける。
「は…ん、司……」
そのまましばらく休もうと目を閉じるが、司がみじろぐ。
「先生、そっち向きたい……」
「ん…あぁ、そうか……」
腕の力を緩めて肉棒を引き抜くと、一瞬震えた肩がくるりと反転する。
「…印、一個しかつけてない」
なんのことだっけ。本気で失念していた隆也の胸に、司が吸い付く。
- 145 名前:司6 ◆aPPPu8oul. 投稿日:2005/08/13(土) 20:20:32 ID:c486VDeT
- 「…あと、わき腹だっけ?」
隆也が口を開く前に、司はもぞもぞと腰に顔を近づけて、赤い印を落としていた。
自分がつけた印を満足げに眺めて、司はまた隆也の腕の中に落ちつく。
「はい、愛の印」
にこりと笑う司の表情が、どう変るか楽しみだ。頭をなでてやりながら、さわやかに言い放つ。
「いや…他にもつけてあるぞ。太ももの内側に一個ずつ」
固まった。
「…嘘…」
「ついてどうする」
固まっていた司はするりと腕の中から抜けだして、愛の印を確認している。
確認したまま凹んでいる。
「…俺、全然気付かなかった…」
「うん、途中で起きたらどうしようかと思ったんだが…全然起きなかったな」
寝つきがいいのも考え物だ。本当は多少反応したのだが、このくらい言ってやらないと危機感を煽れないだろう。
「脱がされても痕つけられても起きないんだしな、ちゃんと用心しろよ?」
「……はい……」
これで自分がいない間も大丈夫だろう。ついでに修学旅行中も少しは警戒してくれるだろう。
そんな希望的観測が、わりとすぐにぶち壊されることになろうとは、隆也も司も思ってもいなかった。
* * * * *
百合なら書けるかも!と思い立ったので従姉妹話考えるだけ考えてみますよ。
考えたらきっとそのまま書くんだろうけどな!
- 146 名前:ナサの中の人 投稿日:2005/08/13(土) 23:00:58 ID:shwpo+wC
- >司
あああ溶けそうだ。
しっかし可愛いよああ司。
希望的観測がぶち壊されるのが心配だ…。
投下続行。
- 147 名前:衛兵長動揺する17 投稿日:2005/08/13(土) 23:01:46 ID:shwpo+wC
- 五度か六度、衛兵長は麻布を巻き取った。
おそらく胸にひどく醜い古い傷か、あるいは痣でもあるのかもしれぬと彼は思った。
そっと見ると、クロードは相変わらずふてくされたような目を崩れた暗い天井に向けて、されるがままになっている。
その目の縁がうっすらと赤らんでいた。
「副……」
胸の奥がざわつくような妙な感覚を覚え、サディアスは呼びかけを中断させた。
きつく層を成していた麻布が緩み、もう巻き取らなくても良さそうだった。
サディアスは俯き、やや乱暴に最後の残りをひき抜いた。
「……………」
下顎がかすかに下がった。
青い目がまじまじと、布を取り去った胸に注がれた。
*
だがそれもほんの数秒、サディアスは麻布を床に落とすと副長のはだけていたブラウスを合わせ、二番目と三番目のボタンを閉じた。
裾の間から見え隠れする左の肋を確認し、変色している場所を見つけると重ねた二本の指先で軽く押す。
クロードがかすかに呻いたが、さほど急激な反応はない。
衛兵長はブラウスの裾を合わせて、細っこいその腹を隠すように閉じた。
わずかにためらったが、彼は、クロードの腰に掌を廻してズボンの胴回りをぎこちなく、だが静かに掴んだ。
クロードが腰を浮かせたので、ズボンは足首までするすると楽に降りた。
衛兵長が、手製の包帯を床から探り当てると、クロードはやはり無言で、左の膝を軽くたてた。
きっちりと傷口に包帯が巻かれた。
サディアスはズボンを持ち、包帯の巻かれた部分にあたらないよう気を使いながらひきあげ、再びクロードの腰に両腕をまわし、着付けさせようとして──。
───固まった。
太い首すじから続く陽に灼けたうなじに、胴と同じく細い腕が二本、巻かれていた。
目をあげると、碧い目が鋭く、間近から彼に注がれていた。
「……で」
クロードは唇を開いた。
もうその顔は青白くはない。むしろ赤い。
目の縁だけではなく、頬全体が上気している。
副長に唇があることすら普段は意識したことがなかったが、それがなかなか綺麗なかたちをしている事に、今のサディアスは気付かざるを得なかった。
「……何か言いたいことがあるんじゃねぇのか」
- 148 名前:18 投稿日:2005/08/13(土) 23:02:25 ID:shwpo+wC
-
「………」
サディアスは首に手をあげて、その腕を解こうとした。クロードは放さなかった。
じっと、衛兵長の目を見つめている。
その視線も解きようがなく、サディアスは呟いた。
「──わ、わ悪かった」
「悪かったって?」
クロードは噛み付くような勢いで応じた。
「五年間だぜ。あんたを五年も騙くらかしてきた俺に、『悪かった』?……なんでそこまでお人好しなんだよ、サディアス!」
「おお、お『俺』はよせ。そ、その言葉使いもな」
サディアスはその追求を断ち切った。
クロードは傷ついたように口を噤んだ。
「お、お前は──おまえ、ク……い、いや、あー…」
「クロード。──偽名じゃ、ない」
『クロード』は男の名前にも女の名前にも使われることを思い出し、サディアスは納得した。
「……ななな、なぜ?」
「なぜって…」
碧い目が一瞬伏せられ、すぐに青い目までまたあがった。
「…俺──いや──私が」
クロードの口からこんな一人称がするすると出てくるのを聞く日がこようなどと想像すらしていなかった衛兵長の顔が、段々赤くなってきた。
「私が…故郷から家出してきたのは、知っている……だろ」
本人も喋りにくいようだった。
これまで四六時中荒い男言葉で喋っていた相手に、いきなり五年前の言葉に戻れといわれても難しいのかもしれない。
サディアスは頷いた。
首に巻かれた滑らかな腕を解いてほしかったが、クロードはここで放したら衛兵長は話を聞いてくれないと確信しているが如く断固として腕の力を緩めなかった。
力任せに解くのは簡単だったが、そうもしかねるのがこの衛兵長がお人好しであるという証拠かもしれない。
「親父、いや、ち、父は貿易商だったんだけど、子どもには女姉妹しかいなくて、私は…その長女だったんだ」
クロードはかすかに俯いた。
「あのさ…そういう時って、婿、とるだろ。うちも、俺、いや、私が十四になったときにさっさと父が探して来た。乱暴な船員あがりの、目端のきく男」
「………」
黙って聞くしかないようだ、と諦めた衛兵長は、副長に負担をかけないように肘をつき直してはっと気付いた。
自分が敷いているのは副長ではない。
いや、副長なのだが、確かに同一人物には違いないのだが、やはり、違う。
自分より十歳も離れた若い女性なのだ。
しかも半裸で、ちょっと──可愛い。
躊躇い勝ちに、サディアスはその事実を自分の心に認めた。
「私はその相手は嫌いだったんだ──でも、うちの父、せっかちでさ──さっさと既成事実作れば、私が言うこと聞くだろうってんで──その」
クロードは目を伏せた。
さらに紅潮した頬の線が悔しそうに歪んだ。
「……夜這い、かけさせやがんの。もう、冗談じゃないってんで…ランプの台でそいつの頭ぶん殴って、店の有り金攫って、逃げた」
綺麗とか美人とかいうのとはちょっと違うかもしれない。
顔は整っているが、それはどこか年齢としては未発達で風情というものが欠落した、すがすがしいような愛嬌のなさだ。
男所帯のなかで性別を偽ってきたから、その途切れのない緊張がそのまま現れているのかもしれないとも思う。
だが、今のクロードは、初対面の時にも感じた、肩肘はった固さだけは薄れていた。
- 149 名前:19 投稿日:2005/08/13(土) 23:04:25 ID:shwpo+wC
-
「……聞いてるのか?」
我知らずその顔に見蕩れていたサディアスは、我を取り戻して目の焦点を碧い目に向けた。
「あ、あ、ああ。ひ、ひどい父親だ」
「だろ?だよな?そうだよな!」
クロードは我が意を得たりとばかりの勢いでサディアスに巻いた腕に力をこめた。
「あ…」
衛兵長は度を失った。
ぐいと彼──いや、彼女の躯を引き離そうとして、自分の握ったものが半裸の肩だと云うことに気付き、慌ててまた手を放す。
「あ、ああ。ひどい、じじじ実に──だだだが、その時お前──その──」
「安心しな。未遂だから」
クロードはさも不愉快げに眉をひそめた。
「あんな野郎にヤられてたら、頭割るくらいじゃ済まさねぇ。目隠ししないで矢の練習台にしてやってたとこだ……いや、とこ、さ」
「…そ、そうか。よよよ良かったな」
クロードは、サディアスを見上げて少し恥ずかしそうに頷いた。
「………うん」
『うん』?
ああ、だの、当然だろ馬鹿野郎、だのといった相づちに馴れているサディアスは、やけにしおらしげなそのたった一言にますます狼狽した。
「あんたなら笑ってくれてもいいんだけどさ…な、なんか…らしくねーから」
顔を赤くしたクロードが、聞き取りにくく声を小さくしたのまでが心臓に堪える。
巨大な躯全体の血流が激しく脈打っていて、その熱に気付かないらしいクロードが、まるで異世界の生き物のようにサディアスには思えた。
「…どーせなら、好きな相手とヤりたいじゃないか…。そんなもんじゃねぇか…?」
「そそそ、そんなものかもしれぬな…あ、まあ、そうだな」
クロードはまたちらりとサディアスを見上げた。
碧の目は、男としても綺麗だが女の目としても魅力的だということを衛兵長は知った。
「……男は違うんだろ」
少し口調に棘がある。
こいつはやはり副長だ、と彼は思い、そこでなぜだか安心した。
「あんた、惚れてない女でも二度も抱いたってさっき言ったじゃねーか」
「……おおおお前な」
サディアスは呟いた。
「まさか、じゅ、十四のときにもその調子だったのか?」
「まさか。……いくらお上品な伝統が売りの衛兵隊でもさ、男の真似ばっかやってて五年も経つとこうなンだよ」
ぱっ、と頬をまた赤らめてクロードは顔をしかめた。
なぜクロードは彼の首を抱いたまま放してくれないのか。
いい加減に離れたい。
離れなければまずい。
- 150 名前:20 投稿日:2005/08/13(土) 23:05:03 ID:shwpo+wC
-
「……、クロード」
なんとか、サディアスは緊張したときの呪わしい癖を抑えつけた。
「なに?」
白い肌と碧の目を間近に見ればまた心臓が不吉に高鳴った。
──さっきまでは、無二の仲間というだけだったのに。
なぜこいつはよりによってこういうややこしい女になるのだ。
理不尽すぎる。
「は、放して──くれぬか」
「……………やだ」
耳を疑い、サディアスは呆然とクロードを眺めた。
『彼女』は唇を歪めた。
サディアスの胸に額を埋めるように、彼女は腕を引き寄せた。
潰さぬように、衛兵長は慌てて腕と腹筋に力を入れ直した。
「…衛兵隊に入ったのは確かに弓の腕を活かしたかったからだけど、余計な苦労してここに五年もいたのは、弓のためだけじゃない」
「……………」
異様に心臓が高鳴っていることに気付いたサディアスは、クロードにそれが聞こえているのではないかとうろたえた。
本当はクロードの頭を胸から離したい。
…だが、このままであと少しだけ、この言葉の続きを聞くまでは我慢しなければ。
誰にともなく、彼は胸の奥で言い訳をした。
クロードの腕が滑り、サディアスの肩を、それから脇の下をくぐって、分厚い背中に半端に廻された。
全部は届かないらしい。
躯の幅も厚みも圧倒的に違う。
「……単純でお人好しの衛兵長がいたから」
ぽつりと消えそうな声が言い、まわされた腕に力がこもった。
なぜ、クロードがこんなに近くに自分を引き寄せたがるのか、サディアスはそれにやっと気がついた。
拒絶されはしないかと、それが心配でたまらないのだ。
- 151 名前:ナサ 投稿日:2005/08/13(土) 23:06:37 ID:shwpo+wC
- こんな調子でじわじわ。
今回展開がやたらに遅くてごめんなー。
- 152 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2005/08/14(日) 00:43:03 ID:g0XJ1rVs
- いいですよー、丁寧でいい!
気づけば最近このスレに日参してます。
- 153 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2005/08/14(日) 01:43:09 ID:NTeRy44m
- >司神さま、ナサ神さま
巧すぎて悔しくなります。今日は枕とシーツを濡らして寝ます。
- 154 名前: ◆z1nMDKRu0s 投稿日:2005/08/14(日) 08:56:10 ID:fg4PNePf
- みんな巧くてペルナぴ〜んち投下
「ああっ!あっあっ…んあぁっ!!んくぅ……」
おいおいいきなり何だねこの光景
何の脈絡もなくHシーンやったらスレ住人混乱するだろまったく
で、今、刀と鞘よろしく抜いたり挿したりしてんのは誰だ?
女の方は……かわうい童顔だけど男って言っても通用しそうな中性的な女のこ
小学生並のペチャパイと成長した体のギャップに萌える人は何人いるやら
まさかユウじゃねぇよなま さ か
いや、その可能性はなきにしもあらず
とりあえず今は女って書いとくか
で男の方はっと
やっぱり真っと
「んっ んあっ ふくぅ……」
え〜と、只今正常位でDキスしながら抱き合ってますねぇ
あ、真の腰動き始めた
正常位なのは変わってないけど真が布団に手をついたスタイルに変わりますた
「んあっ!? ぁあっ! あっ! んくっぅ!!」
角度が変わってより深くチンコが刺さったこの女あえぎまくってます!!
シーツがもう愛液とか先走りとかでぐっちょり
- 155 名前: ◆z1nMDKRu0s 投稿日:2005/08/14(日) 09:32:08 ID:fg4PNePf
- 「あっ!ああぁっ!!んくぁ!!ふあぁっ!!!」
おーおーあえぐあえぐ
真の方もだんだんと腰が速くなってきてます
「あっ!?あっ?あっ??」
おいおいどうした女
いきなり体がビクンってひきつったぞ
「うあああ!!!ああっ!!んはあぁっ!!い…いっちゃ……
うあぁっ!!」
あぁなるヘソ、イクのかこの女
「はぁ……はぁ……俺も……イキそう」
真までイクっぽ
「ああぁんっ!!真ォ……来てぇ……」
そんな甘ったるい口調でいわれたらこない男はハードなゲイだけだ
「あんっ!!あああああっ!!!!ふぁ!くぅん!!んあぁ!!」
だんだんとあえぐ声までデカくなっていきますな
なんか腰もガンガン乱暴に速くなってくし
そろそろ二人とも潮時か?
「んあぁ!ああああああぁっ!!イクっ!!イッちゃうぅぅぅぅっ」
「うぅあ……ユ、ユウ!ユウ!!」
「「くああああああああああああああぁ!!!!!!」」
…………………………………………………
「はっ!」
お、起きたか真
どうした? 寝てるだけで息切らすほど体力なかったっけ?
「なんなんだよあの夢」
あーやっぱり夢か
そうだよな、あのユウがそんな簡単にマンコ晒け出すかってんだ
しっかし災難なヤローだな、今日ユウに会うんだろ
そのザーメンついたパンツで平気かよ
「あ、やっべー……」
- 156 名前:秀穂ゴッドファーザーズ ◆z1nMDKRu0s 投稿日:2005/08/14(日) 09:34:17 ID:fg4PNePf
- 名前にこれいれわすれたよorz
あとエロって難しいね、神が神といわれる由縁を知った(つД`)
これで中断
- 157 名前:ナサの中 投稿日:2005/08/14(日) 11:43:50 ID:Hmpa5mmi
- >ゴッドファーザーズ
真、御主ユウで夢精しおったか…羨ましいぞ畜生
中断…ああ、そういえば世間は今お盆か。
再開を楽しみにしております!
本日も投下続行。
- 158 名前:衛兵長動揺する21 投稿日:2005/08/14(日) 11:45:11 ID:Hmpa5mmi
-
顔の見えないクロードが囁いた。
「でも」
無言で聞く。
サディアスはそれしかできない。
「…そろそろ家に戻るかと、思ってるんだ」
言葉とは関係なく、ぎゅっ、と掌に一瞬力が籠った。
熱い掌だった。
クロードの熱を彼は感じ取り、それでも一心に、耳に神経を集中させた。
「…もうさ、無理だよ。ハタチになるんだ」
副長の肩はこんなに頼りなかったか。
「胸だって、この二年くらいで急にこんなになりやがるしさ」
薄い胸板とだけ思っていたのに、サディアスは急にみぞおちあたりに、押しつぶされたささやかな温もりを意識する。
「あんたはここんとこ、もうずっと変だし……潮時だろ」
「──辞めるつもりなのか」
クロードは黙った。
その沈黙が質問への答えだ。
衛兵長は言った。
「長女だと言ったな。──居場所はあるのか」
そんな強引な父親なら、とうに年頃になった妹に婿を押し付けて跡取りにしている筈である。
クロードは低く笑った。
「上の妹のマリーとは、時々だけど、こっそり手紙のやりとりしてたんだ。……一昨年だったかな、俺…じゃないや…私の時と同じ男が夜這に来たって」
「…怪しからん父親だ」
サディアスはわずかに頬に血を登らせた。これは照れではなく怒りだった。
クロードは顔をあげた。
そのすがすがしいほどに愛嬌のないそれでも奇妙に愛らしい顔に、してやったりという微笑がわずかに浮かんでいた。
「心配すんなよ。額の傷跡、…つまり三年前と同じ所を燭台で思いっきり割ってやったって、マリーの奴、得意そうに書いてきた」
今度はランプではなく燭台か。
吹き出しそうな口元を引き締め、目を逸らして、流石は副長の妹だけある、とサディアスはかすかに感心した。
「その男、うちの女にはこりごりしたらしくてやっとのこと逃げ出してよ…町中の噂になったんで、モリソン貿易商会は未だに深刻な後継者不在のままさ」
クロードは話を結んだ。
見つめられている気配がしたので、衛兵長は首を巡らせた。
そのまま、その青い目は、魅いられたかのように彼女の視線に溶け込んだ。
「…だから、家に戻ったら、もう自分で好きな男が選べる」
隊員同士で笑い話をしている時の皮肉屋の表情はどこにもなく、碧の目は真剣そのものだった。
「この五年でいろいろな奴を見てきたから──少しは、いい男が選べると、思う」
「………」
掌が、というよりもほっそりとした指先にまた熱い力が入る。
サディアスを見つめているクロードの顔がわずかに歪んだ。
- 159 名前:22 投稿日:2005/08/14(日) 11:45:46 ID:Hmpa5mmi
-
「…もう決めてるんだ…選ぶなら…できるだけ、操縦しやすい、間抜けな奴さ。…信じられねぇくらい単純で……鈍感で……」
「…………」
「…できればお人好しでさ。…でも、贅沢いえるなら、それで正義漢で面倒見がよくて、できたら腕もたって……他の奴らから尊敬されるような…」
「…………」
「……いるかどうかわかんないけど。でも、そんな男を探すんだ」
クロードの碧の目に透明なものがじんわりと湧き出したが、彼女は乱暴に瞼をぱちぱちと瞬かせてそれを散らした。
その量に驚いたような顔になり、クロードは急いで首を振ってサディアスに、泣く寸前のような顔で笑いかけた。
「へっ、将来設計バッチリだろ?」
サディアスは頷いた。
「ああ。いい男が、見つかるといい」
「……………」
目の碧が紺のように暗くなり、笑顔はそのままに固まり、クロードは人形のようにサディアスを見つめ続けた。
その腕を掴み、サディアスはうつぶせるようにいかつい顔を寄せた。
固まっていた顔が呼吸を取り戻すよりも早く、衛兵長はその、愛嬌のないくせに整った顔の女に口づけをした。
「…………」
顔が離れると、クロードはしゃくりあげるように深く息を吸った。
胸を浅く上下させ、白い顔に赤みがさした。
吸われてかすかに光る唇の両端が緩み、彼女はゆっくりと微笑んだ。
魔法が解かれたようだった。
それまでのぎこちなさが嘘のように、愛嬌のなかった表情が鮮やかさを『取り戻した』。
一気に開いた花のように微笑が整った顔を彩り、みるみるうちに艶めいた。
固く閉じていたドアが解放されたような、それは心躍る眺めだった。
閉じ込められてきたクロード・モリソンが五年を経て、やっと彼女の中に戻ってきたのだろう。
「あ…」
何か言おうとするクロードの背に掌を差し込んで、サディアスは再び唇を重ねた。
「ふ」
クロードは目を閉じ、広すぎる背を抱いた指を軽く食い込ませた。
サディアスの口づけは思いがけないほど激しくて深かった。
精一杯、それに応えながら、彼女はじんと痺れるほどの痛みを左の肋に感じた。
弓筈の食い込んだ痕だろうが、その痛みももう彼女には何の影響も及ばさなかった。
圧倒的な幸福にクロードは酔い、口腔に感じるサディアスの濡れた舌のひたすら情熱的な動きにその酔いを深めた。
「…あ…ふぁ……んっ…ぅん…」
背中を、大きな掌が這っている。
それがブラウスの裾をたくしあげている事に気付いたが、彼女は厭がらなかった。
背骨に沿った素肌にサディアスの指が触れ、その熱さにクロードは、重なった唇の合間から声を漏らした。
「は…」
ふいに唇が離れた。
すがるように目を開けると、青い目が酔った表情を浮かべて見つめていた。
その唇はかすかに赤くなり、どちらのものともわからぬ唾液に濡れていた。
自分のも同じような色をしているに違いない、とクロードは思った。
「…その、幸せな男には悪いのだが」
サディアスが口を開いた。
あの癖は出ていない。
「それより先にお前が欲しい、副長」
「………」
「嫌なら殴れ。そこの瓦礫ででも」
クロードはかぶりをふった。耳朶まで赤くなっただろうと思うほど、頭がかあっと熱くなった。
「…緊張、してないの?」
指摘されて、自分がスムーズに喋っている事に、衛兵長はやっと気付いたらしかった。
「…緊張……は、しておらぬな」
クロードは微笑した。
サディアスの頬に両手を滑らせ、彼女は自分から、甘く深いキスをした。
- 160 名前:ナサ 投稿日:2005/08/14(日) 11:47:40 ID:Hmpa5mmi
- やっとここまでこぎつけたぜ衛兵長。
次の出前は(寝入らなければ)深夜予定。
- 161 名前: ◆z1nMDKRu0s 投稿日:2005/08/14(日) 15:05:10 ID:fg4PNePf
- 隊長いいですねぇ
王子とは違った魅力がありますな
- 162 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2005/08/14(日) 16:19:11 ID:NC3QTViW
- (つД`)切ねえ……クロードたん切ねえよ……
- 163 名前:121 投稿日:2005/08/14(日) 19:05:47 ID:ITUmlWil
- >160 萌えました。サディアスもやはり男ですな!猪突猛進ですな!で、自分も投下したいのですがアク禁に…。携帯でしか書き込めません(涙) また後日、投下させていただきます。
- 164 名前:司7 ◆aPPPu8oul. 投稿日:2005/08/14(日) 19:28:59 ID:3BCo8bnu
- 怒涛の投下ラッシュに乗り遅れてはなりませんな!
なによりタイムリーなネタは鮮度が命!
お盆帰省編投下いたします。
(8で修学旅行準備編、9で修学旅行編、10で締めって綺麗じゃね?)
* * * * *
「司はいくつになったんだ?」
親戚が集まったらかならず聞かれるこの文句。司は愛想良く笑っている。
「17です」
「もうけ。早ぇーなぁ。ついこないだまでこんなちっちゃかったのによぉ」
よっぱらった叔父の台詞に、笑ってみせる。幼いころからの自分を知っているこの親戚達は、いい人ばかりだ。
加えて無理なく自分でいられるこの空間は、とても心地よい。
父方の祖母の家に来ている司は、いつになくのびのびとしている。
「どうなんだ、高校は?男としてやってるって聞いたけど」
聞いてくるのは今年大学生になった従兄弟の春樹だ。ここにいる親族は、司が女で、ここ二年は男として生活していることを知っている。
もう眠いと言って早々に部屋にひっこんだ祖母と、その弟である学園理事を引っ張り出しての大騒動があったのが二年前。
強情な司の説得に両親が折れて、三年間だけという約束で男として生活することを許されたのだ。
「ん、楽しくやってるよ」
「そーかそーか。でもアレだな、悪い虫が付かなくて叔父さんは安心でしょ」
内心ギクリとした司の横で父が苦笑し、親族の話題はもうすぐ結婚する別の従兄弟の話になる。
そろそろ酒の入っていない司には入り込めないテンションになってきている。
司には兄がいるが、兄は遠方の大学に通っていて今日は来ていない。母に耳打ちして、宴会の輪から抜ける。
今日来ている従兄弟はあまり顔をあわせたことのない中学生が二人と春樹だけで、仲の良い高校生の従兄弟はいない。
明日には帰らなければならないので少し残念だが、かといって叔父叔母の話は何年もループしているので飽きている。
風呂から出て縁側に腰掛けると、蝉の声と鈴虫の音が風に乗ってくる。農家を営んでいる家は広く、宴会の笑い声も遠くに聞こえる。
田んぼを渡ってくる涼しい風を頬に受けて、静かに虫の音に聞き入る。
「おい」
ふとかけられた声に振り向くと、春樹が手に缶ビールを持っている。
「春にいちゃん。どしたの?」
「いや、俺も流石にあの手の話にはついていけなくてさ。ほい、一本くらいいけるだろ?」
横に腰掛けた春樹は、どこか隆也に似ている。ずっと昔の話だが、司は春樹に憧れていたのだ。
年上の、面倒見の良いかっこいいお兄ちゃん。それは今でもかわらない。
「ん。いただきます」
プシュ、と缶ビールを開けて口をつける。この苦味は苦手だが、せっかくだから空けておこう。
「はー…しっかしお前が男として生活するなんてな…昔っから男勝りだったけどよ」
- 165 名前:司7 ◆aPPPu8oul. 投稿日:2005/08/14(日) 19:29:33 ID:3BCo8bnu
- 「はは、まぁ性別間違えて生まれてきた、ってとこまでいってないからいいじゃん?あと一年ちょっとしたら女に戻るしさ…」
つい最近までは、その日が来ることが嫌でしょうがなかった。けれど今は、少し楽しみになっている。
女として生きていくのもそんなに悪いことではないかもしれないと、やっと思えるようになったのだ。
隆也の顔が浮かぶ。緩みそうになる口元を隠すように、ビールを飲み下す。
「そっか…まぁ…そうだな。しっかし男前だよなぁ、お前。女の子に告白されたりしないか?」
「まぁ…あるようなないような?春にいちゃんは?大学で彼女できた?」
春樹は顔立ちが整っていて、いかにもモテそうなのだが。
「…うるせーよ。さ、お子様はもー寝た寝た」
空いた缶をとりあげて立ち上がった春樹の表情は、影になっていて良く見えない。
「なんだよ自分も未成年のくせに……じゃあね、おやすみ」
「ん、おやすみ」
笑う春樹に手を振って、司の家族に宛がわれた部屋に戻る。両親はあと二時間は話しこむのだろう。
畳の上にのべられた布団にごろりと寝転ぶ。少し酔いが回っていて、気持ちいい。
いつもならこの心地よさのままに眠れるのだが、今日は少しわけが違っていた。ノスタルジックな思い出がぐるぐると頭を回る。
カブトムシを採りにいったとき、足を怪我した司を背負ってくれたのは、祖父ではなく春樹だった。
この家の近所の悪ガキと喧嘩して、親に叱られたときに司をかばってくれたのも春樹だった。
他の従兄弟より、春樹は面倒見が良かった。特に問題を起こしがちな勝気な司には、気をかけてくれていたように思う。
だからずっと、ずっと好きだった。大好きなお兄ちゃんだった。その憧れは、だいぶ大人になった今も変らない。
どこかでその憧れは、隆也にも通じているのかなと思う。人にいわせれば、全く似ていないだろうが、司にとっては似ているのだ。
「……せんせ……」
呟いて、枕を抱く。数日前につけられたキスマークは消えてしまった。
けれどいつも頭を撫でて、抱きしめて、可愛がってくれる手の感触は消えない。ぞく、と下半身がうずいた。
「……大丈夫…だよね……」
隣の部屋はいつも最後まで飲んでいる叔父たちが寝る予定で、空いている。多少の物音は誰にも聞かれない。
「………」
そっと、服の上から胸を触る。隆也の手つきを思い出して、ゆっくりと揉んで、乳首をこねる。
「……ん……は……」
自分でするのは、されるのほど気持ちよくない。というか、多分、興奮が違うのだろう。服の中に手をしのばせ、もう一度揉みしだく。
性感帯は自覚しているから、後は妄想だ。耳元で囁いて、うなじを舐める隆也を想像して心拍数をあげる。
「…っふ……は……」
下腹部をなでる。下着の中に手を忍ばせて、恥丘をくすぐり、秘裂に触れる。びらびらを指の間に挟んで揉んで、押し開く。
「は……ん…せん、せ…」
わずかににじんだ愛液を隔てて秘裂を擦る。まだほぐれきっていない膣内に指を差し入れて、ゆっくりと膣壁をなぞる。
じわじわと溢れてくる愛液をすくって、陰核を撫でる。撫でるだけでは足りない。押しつぶして、こねて、挟んで、擦る。
- 166 名前:司7 ◆aPPPu8oul. 投稿日:2005/08/14(日) 19:30:05 ID:3BCo8bnu
- 「んっ、は…あ……せんせぇっ……」
ぞくぞくと走る快感に体を震わせて、陰核を擦りながら指を抜き差しする。隆也は何を囁くだろう…
「…何やってんだ、こんなとこで」
心臓が跳ねた。体が硬直する。そっと手を服から抜いて…顔を上げられない。顔が熱い。そのくせ背筋には冷たいものが走る。
いつの間にか開けられていた障子のこちら側に、足を踏み入れる気配がする。
「……司。こっち向け」
大好きな。
大好きな春樹の声が、こんなに冷たく聞こえる日が来るとは思っていなかった。
隆也の忠告が頭の中をぐるぐると回る。唐突に泣き出したくなった。けれど、今は泣いたところでどうにもならない。
ゆっくりと、ぎこちなく首を動かす。暗闇の中、月明かりでシルエットだけが浮かんでいる。ぱき、と膝を折る音がする。
「…まぁ、この歳ならオナニーの一つもするだろうけどよ…ちょっと放っておけないよな……」
春樹の手が伸びる。司は固まったまま動けない。動けないまま、愛液に汚れた手を取られた。
「……お前、先生、って言ってたよな。なんだ?学校の先生オカズにしてやってたのか?」
「………」
答えられない司の表情を見て、春樹は何を思ったのだろう。声にはいらだちがみてとれる。
「答えられないってことは図星か。…やめとけよ、そういう思い込みだけで突っ走るような片思いは…」
手首をつかむ腕に力が込められる。その痛みを、司は受け入れるしかない。
「お前が辛いだけだろ?どうあがいたって叶わないのはわかってるじゃないか。そんなの…」
ふと、手を離された。司はその意図をさぐろうとするが、春樹は黙り込み、その表情は相変わらず影になっていて良く見えない。
司は恐る恐る体を起こして、じっと春樹の言葉を待つ。絞り出すような声が、ひどく胸に痛い。
「…そんなの……見てられるかよ……」
「春にいちゃん……」
本当のことを言わなければ、と言う自分がいる。もう一方で、事実はさらに春樹を傷つけると言う自分がいる。
きっと今は、何を言っても春樹を傷つけることになる。どうしようもない切なさが胸を満たして、言葉を紡ぐことができない。
ただじっと、静かな虫の音を遠くに聞いている。
「司」
反応する前に、抱きしめられた。
春樹の腕は細かったが、その力強さはしっかりとしたものだった。耳元で呟かれる言葉は、すべてが胸にささる。
「俺はお前が大事なんだ。兄弟みたいに…それ以上に。だからこんな……」
ぴく、と司の手が動く。この手を背に回したい。そして、自分もだ、と告げたい。ずっと好きだった。今でも好きだ。けれど。
「……春にいちゃん……ごめん……」
他に言葉が見つからなくて、結局そう呟く他ない。春樹の体から立ち上る体臭は、わずかにアルコールの香りを帯びている。
春樹の体が離れる。その瞬間に感じた切なさを、必死で飲み込む。
「…いや…俺も悪かった。こんなこと言われても、どうしようもないよな……」
- 167 名前:司7 ◆aPPPu8oul. 投稿日:2005/08/14(日) 19:30:38 ID:3BCo8bnu
- 初めて聞く、どうしようもなく弱気な春樹の声に、思わず声をかける。
「ううん……俺もずっと、春にいちゃんのこと好きだったし、今も好きだから……でも……」
けれどそれ以上を続けることができない。つぐんだ口を開けずに、ただぎゅっと手を握り締める。
求愛のための虫の音が、やけに寂しい。
「…恋、したことがないんだよ、俺。」
苦笑したらしい春樹が、司を戸惑わせるようなことを言う。
「ちゃんと好きだって意識したのは、司くらいだよ」
どうしろというのだろう、そんなことを聞かせて。
「…あぁ、困るよな、また……だからな、俺にとっては司はすごく特別な存在だったんだよ…司が男として高校生活送るって聞いて
心のどっかでほっとしてたしな…」
それもまた、反応に困る話だ。司はただぼんやりと話を聞くほかない。春樹の心情を探ろうとも思ったのだが、探りきれそうもない。
「多分だけどな、勝手に司のこと自分のものだと思ってたんだよ、ガキのころ。だから従兄弟連中の中でも一番可愛かったし、司も……」
「……うん。春にいちゃんにはなんか憧れてて、くっついてまわってた……」
「そう、だから…司を誰かにとられるのが嫌だったんだな……いや、今でも嫌だ。できることなら司を幸せにしてやりたいと思う」
飛躍しすぎだ。ぶっちゃけ退く。
「というか、司を泣かせるような男にひっかかってほしくない……親に近い心境かもしれないな」
「…そ、そっか…」
ようやくなんとか落ち着いて、さてどうしようかと再び思案を巡らす。
真実を伝えることで春樹が傷つくと言うか、怒るのは目に見えている。
だが、隆也との関係をまるで悪事のように押し隠さなければならないのが、辛い。
ただお互いを愛しく思って一緒にいることが、どうして世間に責められなければならないのかと、若い司は憤りを感じてしまう。
「…だから司。余計なお世話だろうけど、その…先生、ってのは諦めた方が良い。遅かれ早かれ辛い思いをするのは司…」
「春にいちゃん」
聞いていられない。叶わぬ恋だという全否定も、それを口にしている春樹の辛さも、司の胸をざわつかせる。
「俺……先生と付き合ってるんだ。ちゃんと愛し合ってる」
突発的に口にしてしまったが、じっと春樹を見つめる目に迷いはなく、どんな反応をされても動じはしないという意思が見て取れる。
春樹は息を飲み、静かに声を絞り出した。
「…司、それ本気で言ってるのか?」
少し声が震えていたような気がする。それはそうだろう。しかし今は春樹への気遣いよりも、自分の持つ真実と心情を伝えたい。
「うん。本気で言ってる。もちろん親にはまだ言ってないけど…」
唐突に、春樹の体が司を組み敷いた。
「春にいちゃ…」
口を塞がれ、下着の中に手を入れられる。自分を守ってくれた春樹の手だ。なのに、怖い。
「声出すな。気付かれるぞ」
- 168 名前:司7 ◆aPPPu8oul. 投稿日:2005/08/14(日) 19:31:10 ID:3BCo8bnu
- 息を飲んだ瞬間、春樹の指が秘裂をなぞり膣口を探り当てる。
「…っ…」
怖い。心臓が早鐘を打つ。体全体が緊張して、春樹を拒絶している。
わずかに湿ったそこに、無理矢理指が埋め込まれる。節くれ立った指が中で曲げられて、丁寧に膣壁をなぞり何かを確認している。
「…処女じゃ、ないな」
ざくりと、心臓を貫かれたようだった。たったそれだけのために、自分は強引に秘部を弄られねばならないのだろうか。
処女ではないということは、こんなに冷たい声で指摘されなければならないほど悪いことなのだろうか。
春樹の声は冷たく、どうしようもなく遠く感じる。
「そうか……やったらそれで愛が確認できると思ってんのか……司がそんなに馬鹿だとは思わなかったな…」
一瞬で、恐怖が吹き飛んだ。
「春にいちゃん。俺と先生は本気だよ。馬鹿じゃない。思い込みでもない。俺は先生が好きなんだ」
強く胸を押し返して、口と膣口を塞いでいた手をのけさせ、はっきりと言う。
これだけは譲れないと、決意を込めて。
春樹はどんな顔をしているのだろう。ずっと暗闇でしか見ていない。きっと司が見たことがないような顔をしているのだろう。
「……司」
その声は、どこか悲しくて、勢いに身を任せていた司の表情も歪む。
「……ごめん」
その意味を問うより早く、唇が重ねられる。
押し返そうとする手を押さえられ、ゆっくりと唇を舐められ、唇に挟まれ、丁寧にキスを続ける。優しいキスはとても気持ちがいい。
けれどこれは、司の望むキスではない。奥歯を噛む。
「…んは……ごめん、司……どうしても……俺は」
春樹の体が離れる。春樹の本気が、嫌が応にも伝わってくる。ただ、それにどう答えれば良いのかがわからない。
「ごめん……この気持ちはどうしようもないんだ……どうしようもなく、司を自分の物にしたいんだ」
「……春にいちゃん……」
こんなに激しく、誰かに求められたことが今まであっただろうか。
隆也とはお互いが望んで寄り添うようになったから、こんなに激しい感情をぶつけられたことはない。
おびえた目をしていたのだろう、司の表情を見た春樹はため息をついて、体を起こす。
「だけど、司は本当にその先生のことが好きなんだな。良くわかった……」
春樹は立ち上がって、ゆっくりと部屋を後にする。敷居をまたいだ春樹の横顔は、笑っていた。
「幸せになれよ。その先生に泣かされるようなことになったら、俺に連絡してこい。一発ブン殴ってやる」
春樹は春樹だ。その事実に、熱いものがこみ上げてきて、声が震える。
「春にいちゃん……ありがとう……」
ふい、と春樹は顔をそらす。
「…よせよ。俺が泣かしてどーすんだ」
- 169 名前:司7 ◆aPPPu8oul. 投稿日:2005/08/14(日) 19:34:17 ID:3BCo8bnu
- 「……うん」
そうだ。春樹はいつも、司が泣かないように守ってくれたのだ。喧嘩っ早くておてんばで、強情で、そのくせすぐに泣くから。
無理矢理、笑顔を作る。
「……おやすみ。司」
「おやすみ、春にいちゃん……」
翌日早朝、司は春樹にたたき起こされ、童心に返ってカブトムシ採りを楽しんだ。
あの頃に戻ったような二人の姿に、親戚一同の微笑が向けられる。それを快く受け取って、二人は笑って別れた。
次に会うのは年始だろう。そのときには凧揚げでもしようと、約束をして。
* * * * *
百合でもなければエロもないという体たらく。
いやごめん、昨日酔っ払ってた…
>ナサ氏
やっとキター!
意外にどもらなかった衛兵長!
今夜は張り付いて待ってます!
>ゴッドファーザー氏
あぁやっぱり夢オチ…でもいいもん読ませていただきました。
若いっていいなぁ。
>121氏
こっそり待ってますから…
- 170 名前: ◆z1nMDKRu0s 投稿日:2005/08/14(日) 21:31:01 ID:fg4PNePf
- なにこのカコイイ従兄弟
なんか切ない(つД`)
ナサ神>隊長、あんたやっぱり隊長だ(つД`)
クロードを幸せにしてやれ
いかん、切ない話が続いて俺も切なくなってきた
- 171 名前:ナサの中の人 投稿日:2005/08/15(月) 01:08:17 ID:++lOCtQK
- 出来たー
あああ終わった
42氏、かなり設定と展開が趣味に走っちまったが、本当にネタ提供をありがとう。
俺も、この衛兵長好きだよ(笑)
>司氏
凄いな、このタイムリーさ。
この兄ちゃん相当危ないがでも切ない話で胸がじん。
司、可愛いよ司…
俺はこれが済んだからロムに戻るけど、次も楽しみにしてます。
>121氏
楽しみだー!早く規制解除になーれっ(アブない魔法)
- 172 名前:衛兵長動揺する23 投稿日:2005/08/15(月) 01:09:25 ID:++lOCtQK
- 静かで優しく、そして裏腹に、危ういところでぎりぎりに留まっているような口づけだった。
「──ひとつだけ聞いていい…?」
唇を離し、衛兵長の見慣れた、そして初めて見る、漆黒の髪の綺麗な女は尋ねた。
「…できるから、抱くの?……それとも、欲しいから抱くの?……正直に言って」
間近で眺める海に似た碧い目は、答えがどちらでも構わないと暗に赦している深い色合いだったが。
衛兵長は、吐息をつき、不器用な間合いで囁いた。
「…たぶん、欲しいから、だろう。──その、いつかお前の夫になる男などに、先に抱かせたくないと思ったからだ」
この男に相応しい、真っ正直すぎる答えだった。
クロードは幸せそうな──おそらく知り合ってからのこの五年間で、初めて素直な、幸せそうな潤んだ色をその碧い目に浮かべた。
「あんたにしては上出来だ。……いいよ…サディアス」
「殴らないのか」
彼女は目に笑いを浮かべた。
「…殴らない。絶対……あ…」
サディアスがその躯を腕で抱きしめると、クロードは感極まったように、小さく喘いだ。
「待って、服、着た、まま──」
「余計な心配はいらぬ、副長。…俺の制服と同じだ」
サディアスは身をわずかに起こし、クロードのブラウスの、わずか二つだけとまっているボタンに指をかけた。
「『副長』はやめてく──やめて──よ」
クロードは恥ずかし気に肩をよじった。
ボタンが外れるとサディアスの躯の重みで前がはだけ、大きくはないがかたちのいい膨らみが露になった。
痩身とはいってもそれは男に比べるからで、女として見ると造りの美しいすらりとした体つきだった。
「サディアス……あまり、見ない…」
「見られたくないのなら、女に戻るな」
柔らかな肌にサディアスが吸い付くと、彼女は言葉をとぎらせ、赤毛の頭に指を絡ませた。
「──あのまま、俺の傍らにおれば良かったのだ」
「…そんなの、いやだ…」
クロードが喘いだ。
「他の女のこと、考えてるあんたを……黙って見てるのはいやだ──」
「……」
サディアスはクロードの腰に手をおろした。腰にひっかかったままのズボンに指をかける。
下着ごとおし下げた。包帯を巻いた太腿の部分だけには気をつけているらしいのに、組み敷かれながら彼女は気付いた。
ブラウスを白い腕から引き抜き、サディアスは熱を帯びた青い目を彼女の顔に据えたまま、太い溜め息を漏らした。
「…俺と同じだ、クロード」
なにか答えようとした唇を塞いだ。
クロードの、開きかけていた唇をこじ開け、サディアスはその味に溺れた。
舌は柔らかく熱く甘く、クロードの剥き出しの腕が肩にすがりつき、脚が遠慮勝ちに衛兵長の腰にからみついている。
自分の躯が大きいのは知っていたから、サディアスは彼女を抱いたまま仰向けに転がった。
クロードは傷だらけなのだ…いくらそれを彼女が望んでいるとしても、あまりに無茶な事だけはできなかった。
彼女が怪我をしたのは自分のせいだとサディアスは知らなかった。
刃物を持っている賊を一人で追った衛兵長が心配で、クロードは早めに姿をあらわしてしまったのだ。
- 173 名前:24 投稿日:2005/08/15(月) 01:09:56 ID:++lOCtQK
- *
彼女はサディアスの頬を両の掌で挟むと、何度も何度も、喘ぎながら唇を押し付けてきた。
舌を入れるには入れるのだが、動かすやり方はよくわからないか、もしくは戸惑っているようだった。
それでも歯茎を優しく嬲り、クロードはこれでいいのかと問うように、舌を歯の縁に沿って動かした。
その舌先を引き入れて捏ねると、彼女の腕が震える。
鳥肌のようなものが浮かんだその腕を擦り、サディアスは曲線を確かめるように掌を移動させた。
二の腕から肩、降りて脇の下の窪みに泳がせた親指を、そのまま乳房の膨らみに沿わせて撫で下ろす。
「ん」
合わせた白い顔の眉がより、碧い目が薄く開いた。
サディアスが自分を見つめていることを知り、その目に溢れたのは喜びだった。
彼女は掌に力をこめ、顔を離した。
漆黒の髪がぱらりと視界をよぎり、サディアスの首すじにクロードは顔を伏せた。
「クロード…?」
尋ねかけた衛兵長は、股間を探る細い指先の感触に我知らず、かすかに赤くなった。
片手を逞しい胸につき、顔を伏せて、クロードは静かにサディアスのズボンのボタンを外した。
さらりと短い髪の毛をかきあげ、彼女は少し顔をあげると、緩んだズボンを下着ごと両手でおしさげた。
さっきのクロードのように、サディアスは腰を浮かせて協力した。
ズボンをすっかり引き抜いてしまうと、彼女は一瞬、そこに目をやった。
頬を赤らめたが何も言わず、両手を広げて黒い上着に取りかかった。
羽織っただけの衛兵服はすぐに床にひろがり、ブラウスも同様に丸まると、クロードはうっとりと上半身を持ち上げた。
「サディアス……」
二人は、余計なものが一切取り払われた互いの姿をじっと見ていた。
「……好きよ」
クロードの唇が聞こえないくらいの細さでそう囁き、胸の厚みを辿るように動きかけたその手首を、サディアスは掴んだ。
「…このままで大丈夫か…?」
クロードは戸惑ったように、潤んだ瞳で彼を眺めた。
「…教えて……どうすれば?」
「いや」
サディアスは微笑した。
「俺がする」
彼女の手首をまとめて肩から背に掌を置き、サディアスは肩肘ついて起き上がった。
「──無理はさせたくない」
クロードは、上気した顔で、少し不満げに頷いた。
微笑を頬に残したままでサディアスは横抱きに彼女の胴を抱きしめ、片方の手を、その引き締まったなだらかな腰に置いた。
すべすべとした腹を指先で探りながら、髪と同じく漆黒の茂みに触れる。
びくりと肩を震わせたクロードは抗わなかった。
サディアスの指の侵入を拒まず、太腿にかかっていた力を抜いていく。
クロードが初めてなのはサディアスにはわかっていた。
彼女が耐えているこれだけの事が、この短時間にどれだけの羞恥心を抑えつけた結果かも。
指先だけで、彼は静かにそこに触れた。
滑らかな毛の上から狭間に沿って滑らせ、彼女の恥ずかし気な息遣いを計りながらゆっくりとかきわける。
谷間にしずめた指先に、柔らかな花びらがほぐされて纏わりついた。
その複雑な熱い襞からつるつるとした感触の谷間が収束するその上の小さな蕾まで、穏やかに撫で上げた。
何度も──何度も、彼の鎖骨に当たる彼女の唇がそのたびに小さく歪み、小さな甘い喘ぎを漏らし始めるまで、サディアスは待った。
「あ……あ………サ…ディ…」
花びらにいつの間にか露が重く溜まり、指を濡らす。
その芯の奥で慎重に指先を軽く曲げ、くちゅり、と水音がたつのを彼は聴いた。
「あ…」
ぼう、とした顔をクロードはあげた。
- 174 名前:25 投稿日:2005/08/15(月) 01:10:30 ID:++lOCtQK
-
彼は指を引き抜くと躯をまわし、彼女の背を下に横たえた。
「…遠慮しなくても…いいのに」
ほっそりした躯の両脇で掌をついたサディアスの重みを感じることができないのを、彼女はひどく悲しく感じているらしかった。
「そうもいかぬ」
サディアスは肋と太腿に怪我をしている彼女の左側の躯には絶対に重みをかけないつもりだった。
「……私は、そうして欲しいのに」
クロードは、怪我をしているほうの脚を持ち上げられながら囁いた。
「あんたがくれる事なら、どんなに痛いことでもたぶん……平気だ」
「そそのかすな」
サディアスは、青い目で漆黒の髪の女を見下ろした。
クロードがこの五年の間に数えきれないほどに見知った、切なくなるほど優しい目だった。
「いくぞ。──泣くなよ」
その広い肩に腕を巻き付けて、顔を伏せ、彼女は呟いた。
「……泣かないよ」
その大きな躯が、精一杯開いていた太腿の間をさらに押し開くと、クロードは上気した顔を傾けて眉を寄せた。
初めて感じる太腿への摩擦、濡れているとはいえまだ未熟に開きかけただけの花の間に入ってくるモノは予想以上に熱く、固かった。
「…は…」
クロードは喘ぎかけ、内蔵を押し上げられそうな重さを躯の内側に感じて呼吸を詰まらせた。
両脚が、遠慮しているとはいえ強い、男の侵入の勢いを受け止めかねて、膝から折れてさらに開いた。
「あー………」
自分が短く喘いでいることにクロードは気付かず、長い時間をかけて奥までおさまったそれがじっと動かなくなってから、やっと碧い目を見開いた。
サディアスが心配そうに覗きこんでいた。
その、もの懐かしい顔の男と自分が繋がっているという事実が、クロードの目の奥を刺激する。
だが彼女は、潤んだ瞳から涙を溢れさせる事はしなかった。
口元に柔らかい笑みを浮かべ、彼女は囁いた。
「…大丈夫…いい、感じ」
「そうか」
ほっとしたらしいサディアスの、単純そのものの口調さえ愛しかった。
どうしよう。
こんなに、こんなにも、この人を好きだ。
クロードは、サディアスを見つめた。
抱かれる事を密かに望んできたのだが、こうして繋がっていると、例えようもなく辛かった。
この男以外の男になど、誰だろうと抱かれたくなかった。
だが、互いに知っているとおり、これが最初で最後なのだ。
クロードははるか北部の家に戻り、サディアスはこれからも衛兵長として都に留まるのだから。
- 175 名前:26 投稿日:2005/08/15(月) 01:11:02 ID:++lOCtQK
- *
彼はクロードの肩を掴んで大きな躯をおこし、床に掌をついた。
クロードは、衝撃を逃すために軽く開いたままだったかたちのいい唇をきゅっと閉じた。
鈍い痛みがゆっくりと、躯の奥で動き始めた。
「ん…」
かすれた喘ぎを押し殺しながら、クロードはそれに耐えた。
サディアスの頭を抱き、彼女は、その動きが段々速さを増していく様子をつぶさに感じ取った。
喘ぎではこらえきれず、彼女は呻いた。
痛く、でもその痛みが幸せだった。
「…ん……うぅ………」
はぁ、と息をつき、彼女は両脚を抱え込まれて小さくのけぞった。
それでも辛うじて包帯を避け、サディアスは彼女のすらりとした脚を跳ね上げた。逞しい肩に載せ、かける体重をそらすようにして再び動き出す。
「あっ…、あっ、あっ…」
クロードはその格好を恥ずかしく思ったが、それよりも密着できない寂しさについに声をあげた。
「サディアス…」
上気して汗ばんだいかつい顔の、もう半ばは冷静でない青い目が彼女の目を見た。
「サディアス…お願い………こんなの、いやだ……」
訴える彼女の声に、その目は薄く理解の色を刷いた。
サディアスは脚をおろし、クロードにのしかかった。
全体重をかけたその動作に、肋も包帯も押しつぶされた。
彼女は思わず悲鳴をあげたが、それが苦痛なのか歓喜なのか、クロード自身にもわからなかった。
必死でその汗にまみれた躯に腕を絡め、彼女は揺さぶられながら喘ぎはじめた。
「サディアス……あ、あ……」
その喘ぎは悲鳴とは違って完全に甘く、女があげられる声のうちで一番優しいものにサディアスには聞こえる。
「サディアス……サディアス……」
うねるようにその細い腰に躯を打ち付けながら、サディアスの中にわずかに残っている醒めた理性が警告の声を漏らす。
──もう、危ない。
このままぶちまけたら、クロードのためにならない。
サディアスはぐいと歯を食いしばり、未練を断ち切った。
男をひきつけてやまない隘路から腰を退き、引き抜こうとして──ふと顔をあげた彼はクロードの碧い目を見た。
目を逸らせず、サディアスは思わず見惚けた。
次の瞬間、どくん、と弾けた。
「あ───」
彼は大きく喘ぎ、胸を波打たせた。
クロードの綺麗な目が何かを悟ったように閉じられ、上気した首筋もあらわに顔が、添えられていたサディアスの掌に投げ出された。
柔らかな頬の感触に、背筋が震えた。
何度も脈打ちながら、彼は、彼女の中で完全に果ててしまった。
甘美さと、それを上回る情けなさで、彼はクロードの上に突っ伏した。
- 176 名前:27 投稿日:2005/08/15(月) 01:11:39 ID:++lOCtQK
- *
「サディアス…」
小さな声がする。
目を開けると、喘ぎを閉じ込めようとしている彼女がじっと、サディアスを見つめていた。
「…終わったの…?」
「………」
サディアスは大きな掌をあげて、その頬に指の背をあてた。
撫でると、クロードが微笑した。
その顔はもう美しいといっても全く違和感がなく見えた。
こいつは女なんだな、と今更ながらに衛兵長は納得した。
つい数分前まで貪っていたのに、今さら納得するというのも妙な話ではあるが。
「…だめだ」
サディアスは、怠い口を開いて呟いた。
「そんな顔をするのはいかん……離したく、なくなる」
クロードの唇がひく、と震えた。
「……え…?」
「……俺は」
サディアスは続けた。
情事の後だからというだけではない。
ここのところの、ろくに睡眠もとらなかった一週間分の疲れが一気に出てきたような、ひどく気怠い気分だった。
「お前の言うとおり、単純で……間抜けの、どうしようもない男だ」
「サディアス」
「いいから聞け」
指の背で唇を塞ぐと、クロードは少しふくれたような頬になって黙った。
サディアスは彼女の上から降りて、ごろりとうつぶせになると少し離れたたき火を眺めた。
もう熾き火に変わっていたが、まだ充分暖かった。
「クロード……どうしても衛兵隊を辞めるのか?」
かすかに衛兵長の声で彼は呟いた。
クロードは俯いて、ふっと笑った。
しどけない姿のくせに、副長の声で彼女は答えた。
「……全部あんたにバレちまったのに、平気で男として居座るほど、神経が太くないんでね」
「では決まりだ」
サディアスは眠そうに呟いた。
「俺も辞める」
クロードは跳ね起きた。
「何言ってんだ、サディアス!」
完全に副長の声になっている。眉を逆立てて彼女は続けた。
「やめられるわけないだろ!あんた、あんなに衛兵の仕事──」
「エデュの街に」
サディアスは無視して続けた。
クロードは目をぱちぱちさせた。話の変わりようについていけない。
「…コリーヌ様のお入りになった、女子修道院のある?」
王家の一番上の王女だ。
穏やかで美貌だがやや病弱の気のあるその王女は、格式あるその修道院の院長として、弟にあたるイヴァン王子の婚礼を機に王宮からその街に移っていた。
「修道院だけではない。大きな駐屯軍がある…あそこは北部の防御の要だからな…秋口から叔父に、そこの連隊長にと誘われている」
「ジェイラス将軍に?」
「うむ。陛下に忠誠を尽くすには変わらぬ。悪い話ではないだろう?」
初耳だ。
「決心がついたらお前も誘う気でいたのだ……その、決心が……なかなかつかなくてな」
「………ああ。そうだよね。都には、気になるお方もいらっしゃるしね」
やや無表情な声になったクロードを、サディアスはちらりと、憚るような横目で眺めた。
「…衛兵隊にはお前と俺の後釜を狙ってうずうずしている奴もいる。特に俺は、もう十五年も勤めた事だし──」
サディアスは言葉を止めた。
- 177 名前:28 投稿日:2005/08/15(月) 01:12:12 ID:++lOCtQK
- がば、と起き上がり、彼は崩れた壁の向こうの曙光の気配が薄め始めた闇をすかして、王都方面を窺った。
「迎えが来た」
「え!」
慌ててクロードは傍らのブラウスを掴んだ。
部下たちが迎えに来たなら急いで副長に戻らなければならない。
すでにブラウスの袖に腕を通し始めたサディアスが、彼女の太腿の包帯に目をくれた。
「…ああ…少し血が滲んだな」
「平気さ」
クロードはその視線から隠すようにそそくさと身繕いをすませ、漆黒のさらりとした髪を耳にかけて衛兵長に振り返った。
「ほら、愚図だな!トロトロしてないで急げよ!」
「……こ、困った」
サディアスは、本当に困ったように、上着のボタンを止めないまま呟いた。
「……どどどどんな乱暴な口を叩いても、おおお前が男に見えぬのだが」
「………」
かぁっ、と、クロードは頬を紅潮させた。
サディアスも赤くなった。
「……ほら、外で待とうぜ」
クロードは衛兵長の広い背中を押し、廃墟の外に連れ出した。
*
火から離れると夜明けの風は寒く、サディアスは大きなくしゃみを二回した。
「大丈夫かよ」
疲れ気味の衛兵長が風邪をひきかけていたことを思い出す。
その彼が大汗をかいたままシャツなしでお仕着せを着ているという間抜けな事態に陥っていることに、クロードは思い至った。
その原因を思い出すと、また頬に血が集まる気配がした。
黒髪を掻きむしり、クロードはきっと衛兵長を睨みつけた。
「…あー!!もう!…もう俺は明日にでも家に戻るからな!あんたもいない衛兵隊じゃ、こんなんじゃこの先やってけねえや」
「……お、おおお前の故郷はどこだと言ったかな」
サディアスは、都の方角に顔を向け、鼻を擦りながら呟いた。
「サラシュ」
北部の、貿易の盛んな海岸都市である。
クロードは、ふとサディアスに視線をむけた。
なぜ衛兵長はどもっているのだろう。
「エ、エデュから馬でどのくらいだ」
「………」
クロードは碧の目を見開いた。
「…ど、どのくらいなんだ?」
「……一時間半」
「………よよ、よし」
衛兵長は巨大な躯を縮めて、肺が空になるのではないかと思われるような深い溜め息をついた。
背筋を伸ばすと、いかつい顔をクロードに向けた。
青い目は緊張でいつもよりも薄い色になっている。
「お、俺が、立候補してもいいか」
「……何に?」
「れ、連隊長の退役後だが………モ、モモ、モリソン貿易商会の、む、婿にだ」
「………………」
- 178 名前:29 投稿日:2005/08/15(月) 01:13:47 ID:++lOCtQK
-
しばらくして、クロードは声を絞り出した。
「………子爵家の坊ちゃんじゃんかよあんた」
「お、俺は、四番目だから。そのあたりの息子の身の振り方など、誰も気にせん」
呆然と、クロードは明るくなってきた空に浮かび上がる衛兵長の姿を眺めた。
「う、う腕がたつとか、尊敬されるというあたりは、あ、あてはまらぬと思うが、い、一応、いつもお前に単純だ間抜けだお人好しだと罵られ───」
抱きついてきた副長の細い躯を受け止めて、衛兵長はたたらを踏んだ。
「………あんた、馬鹿だろ」
やがて顔をあげた副長が、碧い目を登り始めた朝日に眩しそうにしかめながらぼそりと言った。
「……うむ。それもよく言われるな」
自分の言ったことが半分かたこの単純極まる衛兵長には伝わっていないというこの事実に、クロードはげんなりした顔をした。
「…いーよもう。戻ってさっさと服着替えて寝ろよ」
その胸を押しやって無理矢理に街道に向け、クロードは顔を開けはじめた空に向けた。
──あなたのご存知ない事ではあるけれど、どうやら、ナタリー様をお恨みせずにすみそう、ですよ。
澄んだ空に浮かぶ王子妃の清楚な面影に、クロードは微笑んだ。
*
「ああ、来たぞ。あれはジョンとフィリップだ。──い、今言ったことは考えてくれるのか、副長…?」
心配そうに振り向いた平凡な青い目に映ったのは、空を見上げている、とてつもなく綺麗な19の娘の姿だった。
おわり
- 179 名前:ナサの中の人 投稿日:2005/08/15(月) 01:15:53 ID:++lOCtQK
- そういうわけで衛兵長のお話は終わりです。
42氏、そしてコメントくれた皆、同時期に書いてくれてた職人各氏、本当にありがと
ものすごく楽しかったです。
ではまたいつか。名無しに戻るな。
さらばー
- 180 名前:司 ◆aPPPu8oul. 投稿日:2005/08/15(月) 01:26:49 ID:SKzP4njj
- >ナサ氏
予告どおり張り付いてた甲斐があったー!
抱くときは緊張しなくて紳士なのに立候補でどもる衛兵長素敵すぎる…
どうかまた近いうちに戻ってきてください。待ってます…!
- 181 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2005/08/15(月) 02:05:35 ID:io7hrUVB
- 後味の良い話でしたな。
乙!
- 182 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2005/08/15(月) 03:25:42 ID:AWe3tXBq
- 初々しくも美しい話でした。描写も非常に丁寧で、非常によかったですこういうの。
- 183 名前: ◆z1nMDKRu0s 投稿日:2005/08/15(月) 06:16:15 ID:iF/zjpaA
- ちっくしょう……
寝ちまった自分が恥ずかしい
やっぱりどもる隊長とやっぱり男言葉のクロード萌え
あんたのことは死んでも忘れんよ
こんな丁寧なSSと共に……
ナサ職人!!!
SSの神クロンの追い風を!!!!
- 184 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2005/08/15(月) 20:25:32 ID:AWe3tXBq
- >>183
なんか風来のシレンを思い出しますね。
最近の神の皆さんに触発され、自分も書いてみようと挑戦しているとこなのですが難しいですね思った以上に。
一時間で3kbしか書けず、しかも18禁展開にもっていくには相当かかりそうなためまだまだ投稿に至らず。
改めてみなさんの実力は並外れているのだと思いました…。
- 185 名前: ◆z1nMDKRu0s 投稿日:2005/08/15(月) 21:01:27 ID:iF/zjpaA
- 元ネタばれたか……
あとエロに持ってけないなんてキニスルナ
俺は何ヶ月もかかってエロ一つだ!!!!
だから関係ない!!!! 必要なのはソウルだ!!
- 186 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2005/08/15(月) 22:31:18 ID:WsPaVSGK
- ナサ神様どうもありがとうございます、42です。
存っっっっっ分に萌えさせていただきました。
肩肘はっている女の子テラモエス
デカ男ウホッという新たな分野も開拓しちまったですよ・・・。
衛兵長、本人は気づいていなくてもアレで結構女に人気ありそう。
でクロードのことだから先回りして、衛兵長が浮気しないように
色々技術向上に努めてそうw
心の底から、ごちそうさまでした。
- 187 名前:司8 ◆aPPPu8oul. 投稿日:2005/08/16(火) 20:49:41 ID:csGyI4/T
- >>184
そう、ソウルですとも。
拙作などは速さだけが売りですが、速さがすべてじゃありませんから!
タイムリーさをアピールしてきたけどフライング投下。
毎度の事ながらエロは待て次回、です。
「修学旅行準備編1」
* * * * *
「先生。エロビデオ貸して。それかDVD。コピーでもいいから」
「…は?」
8月31日、午後一時半。20日ぶりに会った司の第一声に、隆也は思わずどうしようもなく間抜けな声をあげた。
もっとこう、感動的なというか、恋人同士らしい再会を期待していたのだが。
ズカズカと遠慮なくあがりこんできた司は、そのままベッド周辺を探索し始める。
「いやおい、ちょっと待て。何だいきなり…」
慌てて近寄る隆也に、司は至極簡単な説明。
「昨日みんなで宿題やっててさ、終ったからカラオケ行ったんだけど、
そこで修学旅行に一人一本持ち寄ろうって話になって。俺持ってないし。兄ちゃんのも全部持ってかれたし」
そう言えば、男子高校生モードの司はこんなもんだった。
会えない間に思い出していたのは可愛らしい司ばかりだったので、すっかり忘れていた。
「持ち寄ろうってお前…」
「大丈夫。鑑賞会の前にトンズラするから。それよりなんかマニアックなのない?熟女モンとかスカとか」
言うことにも少女の恥じらいというものがまったくない。というか、自分を何だと思っているのだろう。
「おいおいちょっと待て。お前は聖職者たる教師の家にそんなもんがあると思ってるのか?」
「うん」
しばしの沈黙。
「…あ、ひょっとしてそこにある?」
司が指差したのは、デスクトップのパソコン。ノート型は仕事で使っているので、こちらは完全に私用だ。
というか、図星だ。
「ファイルあるんならそれ焼いて。ノーパソ持って来るって言ってたし」
さっさと起動させようとしている司はなんだかとっても恐ろしい子に見えます。
そのブラックボックスの中身は未成年が見ちゃいけないものがいっぱいだよ?
「ま、待てって。ソレより何よりお前、言うことがあるだろ?」
肩を掴んで止めようとすると、するりと逃げられる。逃げて、そのまま抱きついてくる。
「…会いたかった」
言う声のトーンは今までとは打って変わってしおらしいもので、どうやらスイッチが切り替わったらしい。
ここからは隆也が主導権を握れる…はずだ。
「…うん、会いたかった…」
抱きしめる腕に力がこもる。この細い肩を、抱きしめたくて仕方がなかった。
司の体調が悪かったり、隆也が急遽地元の祭りに引っ張り出されたり、そのまま地元の友人と飲み歩いていたり
ここ一週間は司が学生の本分を片付けなければならなかったりで、ずっと会えなかった。
- 188 名前:司8 ◆aPPPu8oul. 投稿日:2005/08/16(火) 20:50:29 ID:csGyI4/T
- 「…会いたかった……司……」
愛しさを込めて呼んで、顔を寄せる。
「…先生」
唇を塞ぐ。その柔らかな感触をしばらく味わって、ようやく唇を動かす。
下唇を挟み、角度を変えて何度も啄ばみ、舌を差し入れて歯茎をなぞり、舌をつつき、根元から絡めとる。
いつまでもこうしていたいと思わせる快感が体中を満たす。
「んふ……ん……む……」
控えめながら舌を絡ませてくる司の、伏せられた目をじっと見る。長い睫毛が影を落としている。
目の綺麗な少女だ。意志の強そうな眉と目が、色々な表情を作ることを隆也は知っている。
「…ん…は……は……せんせ……」
甘い声が呼ぶ。もっと声が聞きたい。
頭を撫でる。この短い黒髪をシーツの上に散らしたい。
背に回された腕が服を掴む。その腕を首に絡ませて、喘がせたい。
「…なんか……我慢できそうに、ないな……」
湧き上がる衝動はどうしようもなくて、照れも隠しきれずに苦笑する。
「……だから先に、用事済ませようと思ったのに……」
むくれた司の頭を撫でる。たしかにこう可愛らしくなってしまった司では、なかなか言い出しにくいだろう。
「ん…そうか。でも別に今日じゃなくてもいいだろ?修学旅行まであと一ヶ月以上あるんだし…」
「いや、どうせならネタを厳選してカブらないようにしたい」
唐突にスイッチが切り替わる。というか、発言が芸人なのはどうしたものか。
「いや、ネタってな、お前……」
「先生、一介の男子高校生たるものこのくらいのことはしないと。つうかついでに先生の趣味も探らないと」
腕の中から抜け出した司はさらりと恐ろしいことを言う。
司が男だと信じて疑わなかった頃なら、笑って付き合ってやったかもしれないが、今はそうもいかない。
すでに起動音がして、パスワードの入力画面になっている。念のため設定しておいてよかった。
「…まぁアレだ、俺の許可なく開けられるもんじゃないんだから。落ち着いて俺の話を聞け」
余裕を取り戻してベッドに腰を下ろした隆也には目もくれず、司はパスワードを当てようとやっきになっている。
「いや、話聞いてたら貸してくれなさそうだから聞かない」
「……まぁそれも正論だけどな……」
多分開けられないだろうという余裕も、やけに真剣にパソコンに向かう司の表情を見ているとちょっと揺らぐ。
「先生誕生日いつだっけ?」
まぁその辺から攻めるだろう。しかし浅はかだ。人生経験10年の差は大きい。
「………ノーコメント」
口元に余裕を浮べる隆也の反応を見た司は、むっとした表情でディスプレイに向きなおる。
その顔をこっちに向けたまま、笑ってくれればもう少し優しくもしてやるのだけれど。
- 189 名前:司8 ◆aPPPu8oul. 投稿日:2005/08/16(火) 20:51:24 ID:csGyI4/T
- 意地になった司をどうすれば止められるのか、残念ながらまだその辺は把握していない。
汗のにじんだ男物のシャツの中には細くて滑らかな背中と細い腰が潜んでいて、
そこに巻かれたサラシを解けば柔らかな丸みが姿を現して…それを、久々に見たい。
「……司。いい加減諦めろって。それよりもう少しこの時間を有効に使お……」
「解けた」
嘘をつけ、と言おうと思って腰を上げると、本当に解けている。
三国志のお気に入りの武将三人の名前を盛り込んでいた隆也はまさか解けるはずがないと思っていたのだが、
前回司はこの部屋で三国志を読んでいる。人生経験10年の差は漫画三国志で埋まってしまったらしい。
これはちょっと、いや本気で、マズイ。
「ま、待て待て待て!いいからちょっと待て!」
隆也は慌ててマウスとキーボードを取り上げようとするが、どうにもキツイ目つきでにらまれる。
「よくない。待たない。何?俺に見られちゃ困るモンでも入ってるの?」
「お前がっつーかそもそもエロ動画なんで未成年が見るもんじゃ……」
珍しく隆也の方が正論を持ち出すが、司は間髪入れずに反撃してくる。
「嘘つき。俺が男なら何だかんだ言っても見せたでしょ」
ぐうの音も出ない。
その間に司は着々とフォルダを開いていく。
流石に主電源を落としたりするのは大人気ないだろう。そこまで必死になるのもみっともないし。
しかし画像や動画の入っている重いフォルダだけ開いていくあたり、けっこう慣れているようだ。
このままではすぐに見つかる。ここは人生経験10年の差を活かさねば。
とはいえ隆也は急所を突かれている身、焦りは実力を半減させる。というか、まとまった考えが出てこない。
「……司」
結局強硬手段にでることにした。後ろから司を抱きしめて、耳を噛む。
ぴくん、と体を跳ねさせた司の手が一瞬止まる。たたみかけるようにもう一度。
「……司が欲しい」
「……俺も、先生が欲しい、けど」
司の手が動く。
「こういうのは卑怯です」
開いたフォルダには動画ファイルの山。題名は微妙にカモフラージュしてあるが、司は迷わず一つを開く。
よりによって女子高生モノか。あぁそうか。巨乳の可愛い女子高生が半裸でアンアン言い始めましたよ。
「…………」
司を抱きしめていた手が力なく解かれて、諦めと恥ずかしさと情けなさをないまぜにした視線が送られる。
何と言われるだろう。モノがモノだけに、怒るのを通り越して呆れられたりするのかもしれない。
思わず少し距離を置いた隆也の気分などおかまいなしに、司は冷淡な一言を口にする。
「……没。無難すぎる」
「な……ぶ、無難ってお前……」
- 190 名前:司8 ◆aPPPu8oul. 投稿日:2005/08/16(火) 20:52:00 ID:csGyI4/T
- 抱きしめられていたときは頬を染めていたくせに、エロ動画を見ても表情一つ変えない。
この精神構造はいったいどうなっているのだろう。
「だからネタがカブらないようにしたいんですってば。俺に見られるのが嫌なら自分で開いてください」
「いや……そもそもお前の期待に沿えるようなモンはないぞ……」
「えー…。なんか無いんですか?
宇宙人に監禁されてーとか着ぐるみでーとか、笑っちゃうようなのでもいいんですけど」
どうも司は諦めてくれないらしい。期待に添えないのは本当なのでどうにか諦めさせなければならないのだが。
言いながら司は二本目、三本目を開いている。
二本目も女子高生モノで、三本目は綺麗なお姉さんがバイブで喘がされている。音量が小さめで良かった。
しかしなんだか持ち主のほうが恥ずかしくなってしまうのはどうしたものか。
「…じゃあどっかで拾ってきて焼いてやるから、とりあえず今日は諦めてくれないか?」
「んー……じゃあ、妥協します。キッツイSMモノでも焼いてください」
ほとんど無表情でディスプレイを見つめていた司が、またさらりと言い放って顔をこちらに向ける。
「……わかった。もう何も言うな……こっち、こい」
ベッドに腰掛けた隆也が力なく答えて膝を叩くと、さっさとフォルダを閉じて足の間に腰を下ろす。
どうにも手がかかる。思いながらしっかりと抱きしめると、甘えた声がかかる。
「……せんせ」
現金な話だが、こういう司が手の中にいると、それだけで表情が緩む。
「うん?」
「……会いたかったよ」
さっき一度確認したはずだが、それでも足りないらしい。それは隆也も同じだ。
「うん。俺も会いたかった。会いたくて会いたくて……電話しようとも思ったんだけどな」
「うん…俺も、しようと思ったけど……先生実家だったしね。でも、夏休みが終わったら
次はいつ来れるかわかんないし…だからわざわざ、昨日のうちに皆集めて、宿題終らせたんだよ」
自分たちの面倒な関係を再確認するのは少しせつないが、それでもお互いを想いあっているのがわかると、
なんともいえず優しくて温かな気分になれる。
首筋に口付けて、司が待っているだろう言葉をかける。
「そうか。ありがとうな……学校始まっても、暇だったら来いよ。どうせ俺も暇だしな」
「……だめだよ。ウチの親も怪しむし。週に一回来れたらいいかなぁ」
それもそうだ。司には保護者がいて、しかも自分は堂々と会いにいける立場ではない。
そもそも、こうして家に上げて、あれやこれやをしているなど、社会から見たら犯罪に近いだろう。
「……それでも、できるだけ。俺はこうしたいな」
すっかり腕になじんでしまったこの体を、この20日間どれだけ待ち望んだことか。
それを思うと、たまにはこちらが我侭を言いたくなる。
「俺も、だけど…いいじゃん、毎日会えるんだし。俺はそれでも嬉しいよ。前は……辛かったけど」
- 191 名前:司8 ◆aPPPu8oul. 投稿日:2005/08/16(火) 20:53:00 ID:csGyI4/T
- そのせつなさが自分に向けられていた数ヶ月間を思うと、どうしようもなく愛しさが募る。
「そうか。そうだな……それでもこうしたい、っていうのは俺の我侭か?」
耳たぶを甘く噛んで、そのまま首筋に舌を這わせる。
「…っ……せん、せ……」
高い声。この声を聞きたかった。服の中に手をしのばせながら、初めて司を抱いた日のことを思い出す。
「……たまには、先生の我侭もきいてあげるよ」
笑ってしまうのは仕方がないだろう。司とこんな会話をするようになるとは、思ってもいなかった。
「それは光栄の至り……待ってるぞ。司の好きなチョコでも用意してさ」
「うん……」
やっぱり顔が見たい。ここしばらくの欲求を満たすには、声も表情も、すべてを自分の物にしなければ。
* * * * *
はい、八月中には後半投下します。
- 192 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2005/08/16(火) 21:06:48 ID:3nVHqpLE
- 真くんパンツはきれいに洗いましたか?
司ちゃん渋滞でまだお家に戻ってないのでしょうか?
88氏の土曜日の情事の続きはありますか?
121氏の規制解除はどうなりましたか?
184氏のお話はどこまで進んだのかしら?
ママン(誰)心配だわ
皆様の投下、パンツだけはいてとても楽しみにしてます
>186
こちらこそ本当に本当にありがとう
衛兵長、たとえ密かにモテても本人があそこまで鈍感じゃry
うん、副長って奴のために一所懸命テクニック磨きそうw
- 193 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2005/08/16(火) 21:07:33 ID:3nVHqpLE
- リアルタイムきたー!
お帰りーっ
- 194 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2005/08/16(火) 21:16:48 ID:3nVHqpLE
- 男子高校生モードの司もカコイイ。
女のコモードとの落差がまた…
うむ天然の魔性だな魔性
- 195 名前: ◆z1nMDKRu0s 投稿日:2005/08/16(火) 21:58:01 ID:D6RpOntS
- さすが自分の意思で男装した女、こういうことも平然とかますか
畜生、明日投下しようとしたのにこんな萌え投下されちゃ影に隠れちまう
だが甘いな司タン、キツイSMモノだと?
時代は大阪小学生援交とカメラレッスンぐるー
うわなにをするおまいらくあえdrftgyつかさ……………
- 196 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2005/08/16(火) 23:43:45 ID:b41Sob3i
- tesuto
- 197 名前:121 投稿日:2005/08/17(水) 00:21:40 ID:5gbtMMe+
- >187
執筆お早くてうらやましい限りです。
それでいて完成度の高い作品を作れるとは、いやはや凄い。
今回も萌えさせていただきましたよ。
>192
ようやく規制解除されましたよorz
ご心配ありがとうございます。
>195
投下、楽しみにしてます。大丈夫、自分の後だから影に隠れる心配はないですよ?
では、作品投下させていただきます。
予想外に長くなったので、ちょくちょく投下する予定です。
お暇な方はどうぞ。
- 198 名前:おれとぼくの彼氏争奪戦1 投稿日:2005/08/17(水) 00:27:01 ID:5gbtMMe+
- 「シャケ弁、シャケ弁……っと」
深夜0時。
佐伯武志は、いきつけのコンビニでいつものように弁当の品定めをしていた。
仕事柄、深夜を回ることも少なくない。世界で最初に二十四時間営業の商売を考えた人物には感謝してもしきれない。
わずかなシャケの大きさやご飯の大盛り加減などを見極めながら、ようやく一つに決めるとレジへ。
「おんや?」
武志の視界に、あからさまに怪しい少年が映りこんだ。帽子を深くかぶり、用心深く辺りを見回している。その手に持っているのは、安物のクシ。
盗む気、まんまんらしい。
店員を見てみると、相方と楽しそうにお喋りをしている。
大きめの咳払いをしてみるが、気にも止めやがらない。
ぼりぼりと頭を掻く武志。
「めんどくさいな…・・・」
呟き、もう一度少年を見ればクシは手から消え、代わりに別の小物が握られていた。巧みな手つきで、いろいろとポケットに突っ込んでいる。それも中々巧妙な手つきで、初心者……ではないようだ。
「ま、現一般市民の俺には関係ないっと」
武志は手っ取り早くレジで会計を済ませ、コンビニを後にした。
コンビニから離れた帽子の少年は、本日の戦利品をポケットから出した。
そして、深夜だというのに頻繁に通る都会の車の光に顔を照らされながら、誰かを小馬鹿にしたような笑みをみせる。
と。
ぐっ、とその腕を掴まれた。
「窃盗の現行犯だぜ? 少年」
「よく見破ったな。おれが捕まったの、あんたが初めてだ」
「親御さんが悲しむだろ。今からでも遅くないから、それ返して謝ってこい。俺も一緒に謝ってやるから。見たトコ、常習犯みたいだしな」
「ふん。正義気取りの馬鹿な大人か」
「おーおー、大層な物言いだな。だがこれが俺の仕事なんでな。捜査第三課、盗犯捜査係ってやつさ。せっかくの休みに仕事増やさんでくれ」
「警、察……っ!?」
少年は武志の腕を振りほどき、一目散に道路へ飛び出した。
そこへ、タイミングよくトラック登場。
「あ……」
少年、足がすくむ。
徐々に迫るトラックのライトが、少年を眩しく包む。
「お、おいおい! なんだそのお約束展開っ!」
尋問した人間を、目の前で死なせるほど後味の悪いものはない。こうなりゃヤケだ! と、武志は反射的に駆け出した。周囲の光景が、やけにスローモーションになる。
少年の帽子が、トラックに轢かれた。
「――っと!」
武志は少年を腕に抱え、道端に転がった。
トラックは逃げるようにスピードを上げ、一直線の道路の闇に消えてゆく。
- 199 名前:おれとぼくの彼氏争奪戦2 投稿日:2005/08/17(水) 00:29:36 ID:5gbtMMe+
- 「ふー。死ぬかと思った。俺は一課じゃないんだぞ……にしても、様子見に来るのが筋だろうが。こっちがいくら悪かろうが交通弱者なのは人なんだし、なあ?」
「……」
幾分体の小さかった少年はがくがくと震えて、ぎゅ〜っと武志の服の袖を掴んだままだ。
「……もう大丈夫だ」
優しく背中を叩いてやると、潤む瞳で見上げてきた。
むにゅ。
武志の体に触れた、妙な感触。
帽子が取れ、月明かりに照らされたショートカットの少年の顔は、多少吊り目で生意気そうだが、男にしてはやけにふっくらとしていて可愛らしい。
「ん? 少年。おまえ――」
ばちん!
強烈な衝撃が武志の頬に伝わった。
少年はもがくようにして武志の腕から抜け出し、距離を取った。
武志は頬をさすりながら、ゆっくりと立ち上がる。
「ったく、助けてやったってのにその仕打ちかよ」
「これ、なにかわかるか?」
少年がひらひらとさせているもの、それは財布だった。
わざわざ確認せずともわかる。アレは、武志のものだ。
「……はっはっは。そろそろ、温厚な俺も怒るぞ」
少年は財布の中から免許書を引き抜き、凝視している。
「佐伯武志。……武志。うん、たけしっ」
「こらこら、いきなり呼び捨てかよ」
少年は免許書を財布に戻すと、武志に放り投げた。武志がキャッチしたのを見届けると、少年は視線を逸らしながら言った。
「今日はおれ、帰らなくちゃいけない。だからまた来週、あのコンビニにこい」
「はあ?」
「絶対来い。これ、返してやるから」
盗品を地面にばら撒き、今度は命令。
もうわけがわからなかった。
「あのな、少年」
「おれの名前は了だ」
- 200 名前:おれとぼくの彼氏争奪戦3 投稿日:2005/08/17(水) 00:31:45 ID:5gbtMMe+
- 「そうか。なら了くん、交渉としてそれはおかしい。これはお前が盗んだものなんだから、お前が返さなきゃならないんだ。本当なら署で補導のところを、心優しい俺は見逃してやろうと言っているんだよ? わかるかい?」
「では、そういうことだ。来ないとまた盗む」
「俺の話を聞けっ!」
べーっ、と可愛らしく舌を出し、了はくるっと踵を返して走り去って行ってしまった。
「意味わかんねえって……」
武志は追いかける気力さえなくし、深いため息とともにぼりぼりと頭を掻いていた。
翌日の深夜。
ぼりぼりと頭を掻く。
また同じコンビニで、またまた不審者を発見してしまった。
今度は大人しそうな少年だった。少し大きめの学ランを纏い、辛うじて袖から出る手でお菓子を持っている。くるくるっと、ところどころパーマがかっている栗色の髪。くりっとした瞳。動物に例えると、犬のようだ。
忙しなく顔を動かし、周囲を窺っていた。
ごほん! と咳払いを試みるが昨日と同じように店員はお喋りに夢中だった。
(……またかよ)
ふと、少年と武志の視線がぶつかった。少年は目を見開き、しかしすぐに逸らした。
横目で少年の動向を見守っていると、不器用な手つきでお菓子を学ランの中へ隠していた。窃盗は、初心者らしい。
「そうだ。俺には関係ない関係ない……」
昨日、犯人には逃げられたと称した窃盗品を返しに来た件でこのコンビニとはかなり気まずい雰囲気になってしまっているのだ。これ以上、近場のコンビニと気まずい関係にはなりたくない。
武志は手っ取り早くレジで会計を済ませ、コンビニを後にした。
「窃盗の現行犯だぜ? 少年」
デジャヴを感じながらも、武志は少年を呼び止めていた。
「あ、わ、あの……」
昨日の生意気坊主とは違い、彼はかなり狼狽していた。
「す、すみませんでしたっ!」
声が上ずっている。
「いや、俺に謝るんじゃなくてな、きみが謝るべき相手は他にいるだろう?」
「こ、こここれっ! お、お返しします!」
「だから」
「じゃ、じゃじゃ、じゃあ、ぼくはこれでっ!」
慌てて逃げ出した少年だが、どんっ、と誰かに衝突してしまった。
そのお相手は、見るからに「そっち系」の方。
はわわ〜、とおびえた声を出しながら、少年は既に胸倉を掴まれて持ち上げられている。
「……やれやれ。またお約束」
武志は頭を掻きながら、三人組の「そっち系」の方々に歩み寄ってゆく。
「あのー、すいません。そいつ、俺の連れでして。離してやってくれませんかねえ。まだ子どもじゃないっすか。ね?」
問答無用に、殴られた。
少年がなにか口走ったが、武志の耳には届かなかった。ここ数日のイライラを、一気に爆発させるチャンス。
切れた口の中から血を吐き出すと、武志はにやりと笑った。
「正当防衛。自己または他人の権利を防衛するためやむを得ずする加害行為。刑法上は処罰されず、民法上も不法行為としての賠償責任を負わない……って、習ったよな?」
一通り暗唱して、殴りかかった。
- 201 名前:おれとぼくの彼氏争奪戦4 投稿日:2005/08/17(水) 00:34:38 ID:5gbtMMe+
- 「ふー、スッキリした」
「あ、あの。ありがとう、ございました」
「気にするな。俺もいい憂さ晴らしになった」
くしゃくしゃと頭を撫でてやると、恥ずかしそうに俯く。
昨日の坊主もこれだけ素直だったらなー、と武志は心の中で呟き、最後にぽんぽん、と軽く少年の頭を叩いた。
「じゃあな。盗んだものはちゃんと店に返しとけよ」
「あのっ! ……お、お名前……教えて……くれませんか?」
名前を教える必要があるのは、また出会う機会のある場合だけだ。
ひらひらと横に手を振ると、少年に背を向けた。
「ぼ、ぼくの名前、晶っていいます! ほ、ほんとに、ほんとにありがとうございました!」
深くお辞儀しているであろう少年に、我ながらいいことしたなー、と一人自画自賛しながら武志は帰路についた。
後に喧嘩したときに財布を落としたことに気付き、えらく凹む羽目になるのだが。
六日後、深夜。
連日の徹夜で、へとへとになった武志はベッドに倒れこんだ。既に日にちの感覚はなくなり、眠気で思考が働かない。
ようやく眠れる……。
そう思った矢先、チャイムが鳴った。
当然、無視。
けれどチャイムは連続で鳴り続け、更にドアを激しく叩く音。もはや騒音に近い。枕を上からかぶっての防音は意味を成さず、武志はベッドから起き上がると、どすどすと大股で玄関まで歩き、勢いよくドアを開けた。
「……んー?」
そこに突っ立っていたのは、仏頂面の……確か、了と名乗った少年だ。
「絶対こいって、いったのに」
武志は呑気に大欠伸をしつつ、脳をなんとか回転させる。そういえば、ちょうど一週間目だった。
了はかなり拗ねているようで、下唇を噛み、武志を上目遣いに睨んでいる。
「って、どうしてお前がこの場所知ってんだ?」
「前、免許書見た。……この、大嘘つきめ」
たった一瞬の間の面識しかないクセに、なんたる言い草。
「約束した覚えはないしなあ。生憎、俺だって暇じゃないんだよ。とにかく今の俺は死ぬほど眠い。さ、帰った帰った」
しっしっ、と手で追い払う。
了は真剣な表情で武志を見つめたまま、
「ちょっと、確かめるぞ」
「は? なにを――」
いきなり、抱きついてきた。
不意打ちのタックルに武志のバランスは崩れ、そのまま後ろにすっ転んだ挙句に後頭部を打ち付ける。
「ぐはっ!?」
「やっぱりだ……どきどきする。信じられない……」
ぴくぴく痙攣する武志をよそに、夢見心地の了は武志の匂いを堪能するかのように顔を左右にぐりぐりと押し付け、強く、強くすがり付いていた。
- 202 名前:おれとぼくの彼氏争奪戦5 投稿日:2005/08/17(水) 00:40:12 ID:5gbtMMe+
- 「退け……」
「ん。照れているのか、武志。安心しろ。おれも、なんだかすごく、照れくさい」
「だあああっ! そうじゃない! 退けってんだよ気色悪い!」
ぴったりと親に抱きつく小猿のようにくっつく了の体を無理矢理引き剥がし、武志はわさわさと後ずさった。
「……武志」
男にしておくには勿体ないほどに整った顔が、悲痛に歪む。
罪悪感がちくちくと武志の胸を痛めつけるが、あまりに理不尽なのは了なのだ。それに、深夜のマンションで騒ぐことほど住人の迷惑になることはない。
「生憎だが、俺は男に興味はないんだ。お前を構ってやる暇もない。どっか他当たってくれ」
「ああ、問題ないぞ。そのことなら――」
了の背中を押し、強制退去させる。無駄なあがきを見せるも、武志の力には敵わない。
「悪いな、了くん」
外に放り出すとドアを閉め、鍵を掛けた。
しばらくはドアを叩き続けていたが、ようやく諦めたのか音はしなくなった。
(やっと、眠れる……)
ベッドの柔らかさに身を任せ、武志は至福の睡眠へ落ちていった。
ゆさ、ゆさ。
「ん……むぅ」
心地よい、揺れ。
ゆさ、ゆさ。
「うぅ……ぐぅ」
ゆさ、ゆさ。
「すぅ……ぴぃ……」
ゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさささささ。
「んごっ!?」
心地よい揺れは突如として震度六強の地震へ変わり、武志はベッドから飛び起きた。
「あ、やっと起きてくれました」
「……」
ぼりぼりと頭を掻き、脳の覚醒を待つ。
「きみ、は」
ちょこんとベッドの上に正座していたのは、確か……晶と名乗った少年だ。
「おはようございます。もう朝ですよ? ほら、今日もいい天気です」
晶がカーテンを開けると、眩しいぐらいの太陽の光が部屋に差し込んでくる。ちゅんちゅん、と小鳥のさえずりも聞こえ、実にすがすがしい朝だ。
「はい、これ。コーヒーと、あと冷蔵庫借りて軽い朝ごはん作っちゃいました。冷めないうちにどうぞ」
「お、ありがとう。気が利くね」
コーヒーは苦くもなく甘くもなく適度な味で――ぶーっ! と勢いよく吐き出した。
「わ。駄目じゃないですか。後片付けが大変……」
「な、な、な……っ!」
震える指先で、晶を指す。
「き、きみっ! きみは!?」
「はい? ぼくがなにか?」
「どうしてきみがここにいるんだ!」
- 203 名前:おれとぼくの彼氏争奪戦6 投稿日:2005/08/17(水) 00:41:35 ID:5gbtMMe+
- 「あ、はい。これっ」
晶が手渡してきたのは、一週間前に落とした武志の財布だ。
「あの、これ、前に落としましたよね? だからぼく、いつか返さなきゃと思ってたんですけど、中々その機会がなくて、それで、お礼も兼ねて今日お邪魔したんです。学校行く前に」
言葉もない、とは正にこのことだ。
「でも、ぼくがチャイム鳴らしても武志さんちっとも出てくれないから、勝手に入っちゃいました」
てへへっ、と愛嬌のある笑顔。
武志ははっとした。
「鍵は? ちゃ、ちゃんと掛かってたはずなんだけど」
「ぼく結構手先が起用で、鍵とかなら簡単に外せるんです。ほら、早く食べてくれなくちゃスープも冷めちゃいます」
「……」
(意味が、意味がわからん。なんなんだ? なんなんだこの子は? なにが目的なんだ?)
唖然としている武志を尻目に、晶はにこやかにスープをスプーンにすくい、口に近付けてくる。
そこへ。
「たけ、しぃ〜〜〜〜〜っ!」
ドアを蹴破り、器物損壊罪を犯して部屋に乗り込んできたのは、了だった。
衝撃の揺れで、スープが武志の服の中にダイビングする。
「うゎちぃっ!」
「武志ぃっ。ひどいぞ。おれの話を最後まで聞かないうちに……む?」
「え……?」
二人の不法侵入者は、互いを見つめ合う。
「晶?」
「ね……兄さん!?」
やたら熱かったスープに一人悶え苦しむ武志を挟み、意外な場所での再会に、二人は固まっていた。
- 204 名前:121 投稿日:2005/08/17(水) 00:45:05 ID:5gbtMMe+
- 一応、ここまでで。
いやー、長くてエロもなくてすみませぬ。
まだストックはあるんですが、これ以上張ると迷惑になるかと。
お目汚し、失礼しました。では、後日。
- 205 名前:司8 ◆aPPPu8oul. 投稿日:2005/08/17(水) 00:51:24 ID:wJoPuT1Z
- >>194
天然なんだと思います、きっと。
やっとギャップを書けました…
>>195
このあとさらに男らしい要求を突きつける予定ですのでお楽しみに
むしろこっちが楽しみにしてますのでどうぞどんどん投下してください。
>>121氏
リアルタイムで楽しませていただきました!
一粒で二度美味しい!しかも兄弟!
そしてこっそり振り回されそうな武志も気になってしまいましたw
今後の展開を楽しみにしております。
- 206 名前:白雀 ◆T2r0Kg7rmQ 投稿日:2005/08/17(水) 00:51:56 ID:nZnqa5JD
- わ、投稿しようと思ったら>>121さんが書き込んでる……ダブル男装…しかも兄弟(姉妹)…激しく期待できそうです。
この後に私なんかの、初回から萌えも何もない作品投下してしまっていいのだろうか。
というわけで改めてはじめまして。>>184でこのスレに書き込んだものです。>>185氏、>>187氏、励ましの言葉ありがとうございます。
まだ途中なのですが、明日から仕事の関係で五日ほど不在になるので今のうちに出来たとこまで投下しようと思います。
いいタイトル思いつかないので、暫定的に『萌拳(ほーけん)演技』とでもしておきます。
ちなみに前編ではエロは皆無です。というか無駄に長いくせに描写力の欠片もない決闘シーンは、ちょっと書きすぎたかもしれません。
それではこの場をお借りします故、よろしくお願い申し上げます。
「おまえが天和流の師範・緑風(リューファン)だな?」
待ち伏せしていたかのようにそこに立っていた相手に名前を呼ばれ、緑風と呼ばれた男は目線を下げた。
大柄ながら、余分な筋肉はついていないためどちらかというと細身な印象を与えるその男は、ボサボサの髪をかき回しながら不思議そうに目を二、三度瞬かせる。
自分が生活しているこの山の中で人に会うのも珍しかったのに、その相手が自分を知っているなどと言う体験は初めてだったのだから無理も無い。
「……ああ。まあ、字名(あざな)なんてのは俺にはもともと無くて便座上つけたもんだから、普通はファン、って名で呼ばれることが多いけどよ」
相手の気配に穏やかならざるものを感じ取り、ファンは声こそ親しげなものを出すものの慎重に背後に背負っていた薪拾い用の籠を地に下ろした。
「やっと見つけた……」
その相手は、どう見ても友好的とは思えない声でつぶやくと、ゆっくりと拳法の構えをとる。
まるで知らない相手に、まるで身に覚えの無いことでいきなり戦闘態勢を取られたとしたら。
しかも相手が、まだ十代前半くらいにしか見えない小柄な少年の姿だったとしたら。これでも人よりは呑気な性格を自覚していて多少のことでは動じないファンといえど、さすがに戸惑ってしまう。
(なんで俺、いきなりこんな子供に狙われてんだ? 俺なんかしたっけか神様?)
と心の中で信じてもいない神に問いかけながら、ファンは首を捻った。
「あのよ、話が見えねぇんだけど……俺お前になんかしたっけ?」
できるだけ穏やかに質問したつもりだったが、ファンを呼び止めた相手――見た目十代前半の小柄な少年はキッ、とファンをにらみつけた。
短い黒髪は綺麗にまとめられ、活発な印象を与える。少年のボサボサ髪というよりは少女のボーイッシュなショートカットに近い。
ややサイズが大きめなためか袖や裾を捲くってサイズを合わせている道着は見た目からして古臭く、おそらく彼自身のものではなくお下がりなのだろうと思わせる。
少年特有の大き目の瞳には強い決意の光が満ちていて、殺気で汚れた目と言うよりは目標に向かって真っ直ぐ進む清らかな目をしている。しかしその視線は射殺すかのようにファンを鋭く凝視している。
少年少女問わず周囲からは人気がありそうな中世的な顔立ちは可愛らしく、しかし身にまとう気配は一流の武道家にもひけをとらない。
「ボクの父は牙心流の師範代だった……そう言えば分かるだろ?」
構えを解かないままで少年が言う。その出された流派の名前にファンは聞き覚えがあった。
- 207 名前:萌拳演技前編2 投稿日:2005/08/17(水) 00:57:32 ID:nZnqa5JD
- ファンは天和流という拳法の師範だ、と目の前の少年は認識しているようだが、実は少し違う。ファンは元々捨て子であり、親の顔を知らない。
そんな彼が23年前、山に捨てられていたのを拾ったのが、当時世を捨てて山の中で隠居していた高名な拳法の達人だった。
ファンはその男に育てられ、また彼が住んでいた山の中で自然と共に生きるうちに天然で身に着けた野生の身体能力と自然と共にある戦い方。それが彼にとっての生き方であると同時に彼の使う拳法となった。
だから彼の使う拳法に名前は無い。彼の育ての親であり師である拳法家も既に流派は廃していたため、師の後を継いだわけでもない。もちろん、彼は自分の拳法を世に広めるつもりも弟子を取るつもりもなく、
自分が生まれ育ったこの山の中で生きていくための生活術の一つに過ぎないと思っていた。
その唯一の例外が三年前だった。既に高齢に達していた彼の師が病にかかり、山に生えている薬草では治しようが無かった。しかし時々訪れる町に下りて薬を買うにしても大金は無い。
そんな折、都合よくその町で腕自慢の拳法家たちが集う格闘大会が開かれるのを知った。
彼は便座上、天和流を名乗り、リュ―という字名をつけその大会に出場し、優勝した。その時決勝戦で戦った相手の流派がたしか牙心流といったな、とファンは思い出す。さすがに決勝に残った相手だけあってかなりの腕。
それまでの相手が弱かったため(実際はファンが強すぎたわけだが)型にはまった町の道場拳法を内心馬鹿にしていたファンだったが、その認識を改めざるを得ないほどの相手だった。
もちろん、その時の相手は目の前にいるまだ幼さの抜けきらない少年ではなく、虎中(フーチュン)という名の熟練した達人の雰囲気を持つ30代後半ほどの男だったが。
ちなみにその際、ファンは優勝して病に効く薬を買って帰った。それで一時的にはよくなったがやはり年波には勝てず、その翌年、つまり今から二年前にファンの師は亡くなっている。
それからはファンは一人、彼の父であり師が住んでいた小屋を守りながらたまに薪や果実や獣を町に売りに行くという生活を続けながら山に生きている。
「あのときのオッサンの流派か……あの人はマジで強かったな。で、お前はなんだ? あの人の子供か?」
同意するように、目の前の少年は小さく頷いた。
「けど、俺になんの用だ? あの時は別にお前の親父さんを殺したわけじゃないし、正々堂々と戦っての勝負だった。少なくとも、そんな怖い顔して睨まれるような覚えはねぇんだけどなぁ?」
「……かもしれない。けど、ボクはどうしてもお前を倒さないといけないんだ!
ボクの名は牙心流師範代・虎蓮(フーレン)! ファン! いざ尋常に勝負だ!」
問答無用、話は終わりだと言わんばかりにレン、と名乗った少年が駆け出す。ファンとの間合いを数歩で一気につめると、ファンの顔面めがけて飛び蹴りを放った。
無駄の無い動きで的確にダメージの大きな箇所を狙う、悪くない動きだとファンは瞬時に判断する。
その一撃を左腕で受けるファン。右手に一瞬電流が走ったかのように痺れが来る。
そのまま右手でレンの足を捕まえようと思ったところに二段目の蹴りが放たれる。ファンは捕まえるのを諦めて回避せざるをえない。後退したところに今度は追撃の裏拳が来る。
小柄な身体の弱点であるリーチの短さをレンはスピードで補い、ファンの懐に飛び込んで一撃を加えようという戦法を取っている。
「っと、待て、っての!」
「待つもんかっ!」
理由も分からず攻撃してくるレンに戸惑うファン。しかしレンはそんなファンの様子などお構いなしに攻撃を続ける。こりゃ話し合いとかって状況じゃねぇな、と一人ため息をつきながらファンは神経を研ぎ澄ませる。
怒涛の連続攻撃がレンの小柄な身体から繰り出される。突き、蹴り、肘打ち、裏拳。ファンの制空圏をかいくぐってのスピードのあるラッシュにファンは内心関心しながらもダメージを受けないようにかわしていく。ファンがだんだんと後退していくうちに、
二人が最初に出会った道からは離れ、木々が生い茂り日の光がささない山奥へと勝負の舞台が移っていく。
レンの攻撃を身体を捻ってかわし、時には風に舞う木の葉のように受け流し、けっして自然に逆らわない柔軟な動きでファンはレンの攻撃をいなしていく。
なるべく距離をとろうとするファンに対してこのままでは決め手を欠く、と判断したのかレンの身から放たれる気がさらに増した。
- 208 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2005/08/17(水) 00:59:53 ID:nZnqa5JD
- 「はあぁっ!!」
レンは地を蹴って跳躍する。10メートルはあったファンとの距離を一瞬で縮める驚異的な瞬発力で接近したレンは、そのまま止まることなく拳を繰り出す。
牙心流の基本技にして最強クラスの技・連牙。左右の拳から驚異的なスピードで繰り出される二連激の突きは、まさに獲物を仕留める獣の二本の牙が如く。
まともな相手ならこれだけで倒されるほどの攻撃を、ファンはこれまたレンの跳躍に負けない速度でとっさに背後に飛んで回避する。レンの両の拳が空を切り裂き、大気をかき鳴らす。
そのまま距離を置こうと後方に跳び続けるファンを追うように、二歩三歩とレンも前へと飛ぶ。足場の整備されていない山道を、レンは平らな道場の床の上を歩くかのように平気で支配する。
ファンの左側にレンが回りこんだ。一瞬立ち木が二人の間に立ちふさがり、ファンの視界を塞いだ瞬間に仕掛ける。
「てやぁーっ!!」
体をひねりながら、遠心力を利用して加速のついた跳び蹴りを三発、ファンへと叩き込むように放つ。上段・中段・下段を同時に攻撃する高速の足技・散牙。
まともにガードしきれないと判断したファンはこれも前方へと体を投げ出すように跳んで回避する。
空を切ったレンの散牙の生み出した衝撃の刃で、ファンが立っていた先にあった木に三本の傷跡が刻まれる。
これも常人ならばガードどころか回避すら不可能の必殺の一撃。それを無傷でかわせるのはひとえにファンの超人的な動体視力と反射神経の賜物である。
自然の中で磨かれたその身体能力と観察力で、相手の攻撃の軌道を読み切りとっさの回避行動を可能にする。
それこそがファンの、いや彼が身につけた天和流の一番の武器でもあった。
「やるねぇ、伊達に牙心流の師範代を名乗っちゃいない、ってワケか」
口元を緩めながら楽しげに声を漏らすファン。しかし目は笑っていない。子供の一撃、と侮っては致命的な一撃を食らうであろうことは彼もよく分かっている。
「だったら少しは反撃したらどうだ!? 逃げてばかりじゃボクには勝てないよ!」
生い茂る木々の間を器用に潜り抜けながらレンはファンを追いかける。
「そうしたいんだけどなぁ…いいのかい? 本気でやっても」
「っ!? ば、馬鹿にするな! 本気のお前を倒さないと、意味が無いじゃないか!」
自分の実力を過小評価されたと思ったのか、レンの声に怒気が混じる。さらに追いかける速度を上げ、死角を突き一撃を繰り返してはまた離れ、を繰り返したヒットアンドアウェイ戦法で四方八方からファンへと襲い掛かる。
(……小柄だが、その分スピードは親父さんより上だな。余計な筋肉がついてないのもいい。野生の猛獣をイメージし、柔軟な筋肉を用いて全身のバネで瞬発力を生み出し猛攻を仕掛ける牙心流を使うなら、ああいう身体のほうが理想的だ)
ファンはそう判断していた。彼は決してレンを過小評価していない。それどころかスピードなら自分より上。うまくまこうとしても逃げ切れはしないだろう、と仕方なく振り切るのをあきらめ、構えをとった。
それでも彼が本気を出すかどうかためらっていたのは、やはりレンが150cm程度と小柄な体つきだったせいだろう。もともと彼の拳法は戦うために身に着けたものではない。
恩師と一緒に暮らすうちに自然と身についたものであり、自分の身を守り、必要最小限の獣や魚を取るときにしか使わないような物である。それこそ人を相手にするほうが例外中の例外だ。
だから、彼は自分の拳で人を、しかも子供を叩きのめすことには抵抗があった。
それでも向こうが自分の流派の誇りを持って全力で戦いを挑んできている以上、それを裏切ることこそ失礼に値するだろう。ファンはそう判断すると全神経を研ぎ澄まし、自然の気配と己の存在を一体化させる。
次第にファンはファンであって、しかしファン自身のみではない大きな気で身体を包む。
- 209 名前:間違えてageてしまった…すみません 投稿日:2005/08/17(水) 01:02:44 ID:nZnqa5JD
- 周囲の木を利用しながら、巧みに死角から襲い掛かるレン。突き、蹴り、手刀、疾風怒濤に繰り出されるその攻撃全てが乾坤一擲、必殺の域。
そのことごとくをファンはかわし、避けきれない攻撃は流水の如き無為自然の動きで受け流し、ダメージを受けることなくレンの攻撃を裁いていく。
「くっ――!」
カマイタチを髣髴とさせる強烈なレンの回し蹴りが右後方から飛ぶ。だがそれを僅かな気配と空気の流れで読んでいたファンは、一歩先んじてレンの懐にもぐりこむ。そのままカウンターであわせるように、レンの脇腹に膝を入れる。
「うぐっ」
肺の中の空気が無くなったのではと思うほどに強烈な衝撃がレンを襲う。苦痛で歯を噛み締めながら後ずさると、再び距離を置いては攻撃をしかけるタイミングを待つ。
しかし序盤こそ休む間もなく攻撃を繰り出していたレンだったが、そのことごとくがいなされ続け次第に攻めが慎重になってきていた。
それだけではなく、やはり大人と比べたら見劣りする体格のレンにはまだスタミナが十分ではなかった。そして戦闘においてスタミナ配分を考えられるほどにはまだ至っていない実勢経験の少なさもあって、次第にレンの顔には疲労の色がにじみ始めていた。
自然、二人の攻守は逆転する。
レンの仕掛けた足払いをファンが高く跳躍してかわす。即座に上を見上げるレンだが、ファンの姿が見えない。しまった見失った、と精神を研ぎ澄ましファンの攻撃に備えるレン。一瞬の気配を感じたときにはすでに、ファンの手刀が背後から迫っていた。
「う、うわっ―――!?」
首筋を狙った一撃をなんとか紙一重でかわすレン。しかし反撃に移ろうかと体制を整えた時には、既にファンの姿は生い茂る木々の中に隠れてしまい再び姿を見失う。
それからは待っていたかのようにファンの反撃が始まる。矢継ぎ早に繰り出されるファンの連続した攻撃の前にレンは防戦一方。攻撃をなんとかかわすのが精一杯で、反撃する間もなくまたファンの姿を見失い、体力を消耗していく。
なんのことはない、自然を利用して姿と気配を隠しての攻撃は先ほどレンが仕掛けた戦法と同じである。
しかしレンほどのスピードもなければ姿を隠すにはやや不都合なファンの大柄な体だが、それでも自然と己の波長を一体化させて気配を消す技術においてはファンのレベルはレンを遥かに凌駕する。
その上後先を考えない先ほどの連続攻撃で消耗したスタミナと、焦りから生まれる精神の乱れがレンの状況を悪化させていた。
自分が反撃される立場に立ってレンは初めて、姿の見えない相手に死角から攻撃される戦法の恐ろしさを肌で感じた。ファンの一撃はレンのような鋭さこそないものの、ファンとの体格差を考えれば一撃まともにくらっただけでも大ダメージは必至である。
「な……ならっ!」
肩で息をし始めたレンが大木を背にして構える。三百六十度を空けていた先ほどとは違い、それなら背後からの死角は無くなる。気を配るのは特に木の上からの奇襲に集中すればいい。
(ふぅん、やるねぇ……なら、)
レンの頭上でかすかに音がした。カサカサと葉が擦り合うような音を常人以上の聴覚で捕らえたレンはひそかに笑う。
(やっぱりこうすると上から来るんだな。見てろ、油断したお前に一撃食らわせてやる)
僅かな空気の乱れ。上から何かが落ちてくる気配を察し、ギリギリまでひきつけて身体を反転。よけると同時に回避の暇も与えない正拳突きをそれに向かって放つ――!
「なっ――!?」
確かに手ごたえはあった。だがそれは、鍛え抜かれた人体を打ち抜いたときとはまるで違うもの。それは――そのあたりにいくらでも落ちている、ただの太目の枯れ木だった。
(しまっ、ハメられ――!)
気付いたときには、背後からファンが接近しているのが見えた。その名のとおり、風のように速く。上から仕掛けると見せかけ枯れ枝を頭上に放り投げたフェイントに見事にひっかかったレンにかわす余裕はない。
「うわあぁぁっ!」
それでも必死でファンの一撃をかわそうと、軸足で思いっきり地を蹴り、その反動で身体を捻りながら倒れこむように反対側に跳ぶレン。ファンが振り下ろした手刀が眼前をスレスレで通り過ぎていく。
首筋に打ち込み、気絶させて終わらせようと目論んだファンの一撃は空を切る。だがその先端がわずかにレンの道着の胸元をかすり、切り裂いた。
半ば転んだような体勢から急いで次の攻撃に備え、起き上がるレン。しかしファンは先ほどまでレンが立っていた大木の前から、追い討ちをかけるでも再び姿を消すでもなく立っていた。「どーしたもんかねぇ」とでも言わんばかりに頭を掻きながら。
- 210 名前:萌拳演技・前編5 投稿日:2005/08/17(水) 01:05:55 ID:nZnqa5JD
- 「すまんすまん、大丈夫かお前」
(……?)
一瞬その言葉の真意を図りかねたレンだが、妙に右胸のあたりがスースーするのに気付く。不意打ちを食らわぬように神経は前方に向けたまま、胸元に視線を落とす。
瞬間、レンの張り詰めていた集中力が一気に崩れた。
先ほどの一撃の勢いで斬られた道着の胸元が破れ、右胸がその白い素肌を完全に晒していた。
(……っ!!!!)
ばっ、と左腕でかばうように胸元を隠す。しかし口元を決意を決めたように硬く締めると、すぐに隠していた胸元を露わにして再び戦闘の構えを取った。
筋肉のついていない、柔らかそうでいて皿のように平らな胸はレンがまだ見た目相応の年齢であることを如実に物語っている。
「まだやる気かい?」
「こ、これくらいでいい気になるなよ。ちょっと服が破れたくらいでなんだ。それともお前、男の胸なんか見たがる変態なのかよ」
若干顔を赤くしながらレンは言い返す。
「いや、そんな趣味はないけどよ……もういいだろ。お前もなかなかやるけど、まだ実力の差は大きいってことくらい分かるだろ。お前にはまだ早ぇ」
「ふざけるなっ! ボクはお前を倒すために今日まで修行して来たんだ! 今のでボクを倒しておかなかったこと後悔させてやる!」
レンが拳に力を込める。やや大きめの真っ直ぐな瞳が、射るようにファンを睨む。
「……分かった。なら、やってみな」
ファンは正面を向き、左手をズボンのポケットに入れる。右腕も、だらしなく腰の横に垂れ下がったままだ。
「――――――!?」
一見して勝負を放棄したかのようにやる気の無いファンの姿勢だが、その全身から滲み出る気配にレンは戦慄した。動物が本能で逆らわぬべき強い相手を感じるように、レンはファンという男が見せたその本気を武道家の本能で察した。
強い。
こいつは、猛獣を模倣した牙心流どころじゃない。本物の猛獣、虎や熊すら人間の身で打ち倒すほどの闘気。
さっきまでの攻防が戯れに思えるほどに、ファンの気配から感じる実力は桁が違っていた。
その気から伝わる、それまで感じたことの無い恐怖と、ここに来て本気を出したということはそれまで手を抜いて自分を相手にすらしていなかったファンへの怒りが半々でレンの中に湧き上がる。
足が震える。凍りつく背筋に生暖かい一筋の汗が流れる。今すぐにでもここから逃げ出したくなるファンの闘気。だがレンは父の顔を思い出し、絶対にファンを倒す、という決意を思い出し必死にその恐怖に打ち勝とうとする。
縮こまろうとする闘争心を奮い立たせ、四散しようとする気を体内に集中させる。
「行くぞ――!」
ファンから見ても、レンの気は並みのものではなかった。まだ功夫(クンフー)が浅いとはいえ、並の拳法家とは比較にならない修行を積んできたのだろう。
そんなレンの成長、そして覚悟など自分とは何の関係も無いはずなのに、ファンはなぜか少しだけ嬉しくなった。
ファンとレンの気に怯えたかのように木々がざわめき、葉が細波のような音を立てて揺れる。
その音が止んだその瞬間。
レンが動いた。
- 211 名前:萌拳演技・前編6 投稿日:2005/08/17(水) 01:07:50 ID:nZnqa5JD
- 闘争心を野生の獣の如く極限まで高め、体内の気を足元に集中させて目にも止まらぬロケットスタートを切る。それこそが牙心流奥義の初動。
弾丸のように飛び出したレンは、そのままイナズマのように加速する。大地を蹴っている感触は既にほとんどなく、まるで空を高速で駆けているかのよう。
真っ直ぐに、ひたすら打ち負かすべき敵へと。高速はやがて光速へ。自分以外の全てが止まって見える世界で、レンは光の流星となって突撃する。
牙心流奥義・閃牙。失敗すれば、いや例え相手に命中しても自らもダメージを負う危険のある両刃の剣だが、その高速が生み出す破壊力はあらゆる敵を打ち砕き、その光速の突撃をかわせる者などまずいない。
「わあぁぁぁぁぁぁっ!」
幼さを残したレンの声が咆哮を上げる。そして拳を振りかぶり、最後の一歩を踏み出す。全ての気を拳の先に賭けて、ファンの胸元へと正拳の一撃を叩き込む――――!!
命中したときに身体にかかる衝撃に備え、当たる寸前に目を瞑って自分自身の防御力を高めていたレンは、なにが起こったのかわからなかった。
タイミングは間違いなかったはず。当たる寸前までファンはよけようともしていなかった。あれから回避行動を取ったところで間に合うはずは無い。
ではなぜ、自分も相手も共に無傷なのか。
なぜ、自分の拳は外れ、空を切っているのか。
なぜ、自分はまるであやされる子供のように、ファンに抱き止められているのか。
なにが起こったのかレンには皆目わからなかった。
「……どう、して」
「あー、つまりだな、なんていうか……」
困ったようにファンが口を開く。
「あれをくらったらさすがに俺も痛い。で、お前も痛い。かといってあれをかわしたらお前が向こうにそのまま飛んでって木にぶつかってお前が痛い。
じゃあ両方痛くないように、ってんでお前の突っ込んでくる勢いを弱めて受け止める、それが一番いい。だからそうしたってことだ」
「ウソだ……」
簡単に言ってくれるが、奥義は破られないから奥義と言う。しかも父はあの勝負では観衆の前での勝負と言うこともあり奥義を出さなかった。奥義とは人に見せるものではない、というのが父の持論だったからだ。
つまりファンにとっては初めて見る回避不能の奥義を、完全に無効化したのだ。レンの中で、それまで積み上げてきた自信と厳しい鍛錬に耐えてきた自分自身が崩れ去っていく。
「ウソ……だ……んっ」
レンを抱き止めた姿勢のまま、ファンはレンの背中に回していた右腕をそっと持ち上げると、手刀でレンの首筋を軽く打った。自分になにが起こったのかを把握するヒマもなく、レンの目の前は真っ暗になり、意識は深い闇へと落ちていった。
「……悪りぃな」
崩れ落ちるレンを両手で支え、右手はレンの膝の裏に、左手はレンの背中にまわして両の腕でレンを支えて持ち上げる。いわゆるお姫様抱っこのような姿勢でレンを運んだまま、ファンはとりあえず我が家へと歩き出した。
痛みのせいか悔しさのせいか、閉じられたレンの瞼からかすかに滲んでいた涙をファンはそっと指先で拭き取った。
- 212 名前:萌拳演技・前編7 投稿日:2005/08/17(水) 01:10:08 ID:nZnqa5JD
- 「……ん」
靄がかかったような視界の先に知らない天井を見ながらレンは意識を取り戻した。壁に空けられた窓から差し込む紅い日差しが眩しい。気絶したまま時間がたち、夕刻になったんだなとレンは判断する。
意識が覚醒してくると共に自分の状況もだんだんと理解していく。身体へのダメージはほとんど回復。けど無茶をしすぎた反動か全身の筋肉が少し痛む。
自分が寝ているのは木で組まれた簡単な寝具と粗末な布団。そして自分がいるのは知らない家の中。
「ここは……」
「俺の家」
「っ!?」
独り言のように呟いたレンだったが、その言葉に返事するように聞こえてきた男の声に思わず身構えて振り向く。その先には果物を乗せた盆を持ったファンが立っていた。
一瞬闘志を燃え上がらせたレンだが、先ほどの完膚なきまでの敗北を思い出す。風船のようにレンの闘志はしぼんでいき、ファンから視線をそらすようにうなだれた。
「……あのさ」
「ん?」
ぽつり、とレンが小さな声で言う。
「どうやってボクの奥義、破ったの?」
自分は負けた。けれどどうしてもそれだけは納得しておきたかった。悔しさと理不尽さを押さえ込むようにレンは布団の上に置かれた両の拳を握り締める。
既にレンに拳法家としての気合は無く、まるで悪戯を見つかってこってり怒られた子供のように落ち込んでいた。
「……まあ、説明するのは難しいけどよ……お前も俺の戦い方が自己を自然と一体化するように精神、肉体を集中させるってのは分かるだろ。それを最大限に発揮させてだな、
足は大地に深く根付く大木のように地面を踏みしめ、身体は風に揺れる柳のようにお前がぶつかる衝撃を受け流し、腕は水を吸い込む土のようにしっかりとお前を捕まえる、というイメージでお前の攻撃を正面から受けて防いだだけだ」
「そんなこと……あの一瞬で?」
奥義・閃牙は相手に反撃も回避もさせぬ刹那の一撃を放つ技のはず。そもそも破った理屈は理解できても、その技を防ぐ間などどこにあったというのか。
「ま、お前が技を出してから準備したんじゃ当然間に合わないさ。けど、俺は元々他人を倒すためにこの拳身につけたわけじゃねぇから、俺の奥義が完全に防御用の奥義だっただけでな。
だから俺は全力出したときから相手がどんな技使おうが防げるよう、奥義のための呼吸をお前が奥義使う前から始めてただけの話だよ。
あ、言っとくが自信持てよ。お前のあの技、普通なら絶対回避も反撃も防御も不能のすげぇ技だと思うぜ」
勝ち誇るでもなく淡々と告げるファンの口調は、しかしだからこそ本気でレンの奥義を賞賛していることは分かる。だがレンの表情は曇ったままで晴れることは無い。
「んじゃ、今度は俺からの質問な」
「……いいよ、なんでも聞けば」
どうせボクは負けたんだから、とファンに聞こえないような小声で付け足す。それはレンなりに、敵にこれ以上借りは作らない、という気持の表れであったが、同時に完全敗北によって半ば自棄になっていることの表れでもあった。
自然の中で育ったがために聴覚のいいファンはそれを聞き、少し困ったように眉を顰(ひそ)める。
「んじゃ、二つな。
まず一つ。なんで三年前のお前の親父さんとの勝負のことでお前が俺を狙ったのか。
んでもう一つ。なんで女のお前が男の格好して拳法やってんのか」
「……!!」
二つ目の質問が発せられた瞬間、レンの顔色がハッキリと変わったのをファンは見逃さなかった。
- 213 名前:白雀 ◆T2r0Kg7rmQ 投稿日:2005/08/17(水) 01:14:46 ID:nZnqa5JD
- とりあえず一度sage忘れてしまって本当にすみません。
下手な文章の上、エロ無し、意味無しな展開ですみません。
あとタイトルも間違ってました。『萌拳演技』→『萌拳演義』が正しい感じです。すみません。
今回はここまで。
とりあえず中華風の世界を舞台にした話にしてみました。エロはもう少し進んでからになりますが、お時間がありましたらどうかしばしお待ちください。
良作の後でお目汚し失礼いたしました。それでは、5日間の不在から帰ってきた後、後編(中篇になるかも?)が出来上がりましたらまたお会いしましょう。
- 214 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2005/08/17(水) 01:28:32 ID:GmtfUO4B
- >121氏
バイオレンス&ピカレスクですね
- 215 名前: ◆z1nMDKRu0s 投稿日:2005/08/17(水) 01:54:08 ID:u1U40Qtl
- 正直、あんな過疎スレがこんな神の巣窟になるとは思わなんだ
二人とも読んでて楽しいし、萌えはきっちり入っているし
ホントなんなんだろうねここ
しっかーーし!! 古株を忘れては困るぞ!!!!
天下第一刀の真の力を見せてやる!!
朝に驚いて腰抜かすんじゃねーぞコンチクショゥ(負けおしみ)投下
とうとうやってきました夏休み
パルプンテもメテオも効かない夏休みの敵に翻弄される夏
夏のマシンガンを聞いて「夏が呼んでるぅぁ――――――――――!!!!!!!!」と叫ぶ夏
あぁNATU!!!! 唯一青姦がナマで見れる夏!!
そろそろスレ住人がゲシュタルト崩壊起こし始めたその夏休み初日を夢精で飾った真クン
なにパンツ見てため息ついてんだよ!!
レッツ人生!! カレルはマッパ人生!!
「あとでピーターに持ってくか」
そんなことより時間!!
約束の時間まであと2分! 辿り着けるか真!!
だからそんなにダラダラやるなよ
可愛い女で抜くぐらい誰でもするだろ!?
だからキニスルナ
ってダメだこりゃ、完璧欝モード入ってやがる
「洗うか……」
うっわー、なんだこのオーラ
マンガ家の山田花子よりひでぇ
- 216 名前:秀穂ゴッドファーザーズ ◆z1nMDKRu0s 投稿日:2005/08/17(水) 02:22:17 ID:u1U40Qtl
- あのときの熊妹みたいにのそのそと台所にむかう真
銭湯から無断拝借した木の桶の中に洗濯板がある
そこだけモダンな空気を漂わせてます
つーか何処に売ってたんだ洗濯板、近くのスーパーにもなかったぞ
しかもその中で昭和のおっかさんよろしくシャコシャコ
なぁ真、まさかそのための洗濯板じゃあるまいな
突如聞こえるコンクリの地面を叩く足音、別に幽霊ではない
このボロアパートの一階の廊下がコンクリなだけだ。こんな時間に誰かが来たか、珍しいな
再びパンツに目を落とす真、で洗濯板に擦りつけられるパンツ
真の部屋の前で止まる足音、蹴り飛ばされてぶっ飛ぶ扉
こんなアクロバティックなことが出来るのは真が知る中ではただ一人
「淳一か……」
「オラオラ真ぉ!!!!
テメェ何十分も遅れて連絡無しかぁ!!」
「わかったからキレんな」
- 217 名前: ◆z1nMDKRu0s 投稿日:2005/08/17(水) 02:23:34 ID:u1U40Qtl
- 今日はこれくらいにしてやる
訳
ヤバい、新人にすらレベルが追いついてねぇ……
- 218 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2005/08/17(水) 10:49:17 ID:sO28a75Y
- 盆明けで一挙投下か!
活気があっていいねェ
皆さま乙!
どれも続きが楽しみ
- 219 名前:司8 ◆aPPPu8oul. 投稿日:2005/08/17(水) 16:54:44 ID:wJoPuT1Z
- 怒涛の投下ラッシュはやみそうもないな…とホクホクしつつ。
まだ夏休みはあるけど、>>187-191の続きいきます。
レスより作品数が多いなんて、なんて素敵なスレ。
* * * * *
「司……」
膝をすくって抱きかかえ、恥ずかしそうな頬に口付ける。はにかんだ笑みを見つめてベッドに横たえる。
久々の高揚感にまかせて、貪り尽くしたい。
「ちょっと、抑えが利きそうにないんだけど……」
苦笑しながらの告白に、司も中途半端な笑いを浮べてみせる。
「大丈夫…俺もちょっと、暴走しそう、だから」
「……たまんないな」
噛み付いて、唇を貪る。自分のがむしゃらさがおかしい。
息をするのも忘れて、舌を絡ませ、唇を食んで、吸いついて、唾液を注ぎ、すする。
「……んむっ……っは……ん……」
それに必死で答えてくれる司にもっと触れたくて、普段よりいくぶん乱暴に服を脱がす。
「…んは、はぁっ…」
口を離すと銀の糸がひいて、それも惜しく感じて舐めとる。
体を起こした隆也が服を脱ぎ始めると、しばらくぼんやりしていた司もはっとしてサラシを巻き取る。
隆也はズボンを下着ごと脱ぎ捨てて蹴り飛ばす。どうも今日の自分は年甲斐もなく焦っているようだ。
その焦りもどこか嬉しい。
司が少し躊躇して下着を脱ぎ捨てる。濡れていた。
少し見ない間に日に焼けた首から視線を下ろしていくと、肌がグラデーションになっている。
まったく日に焼けていない胸は静かに上下して、隆也の手を待っている。
「……司」
覆いかぶさってもう一度、唇を重ね舌を絡める。
掌に吸い付くような胸をなで、撫で回す。
「…ふ……んぅっ……」
鼻にかかった息が漏れる。さらに胸を揉み立ち上がった乳首をこねると、司の舌の動きが止まる。
「……ふぁ…ん……はぁ……」
ぴくぴくと震える体が可愛い。苦しげな息を漏らす司の腕が首に回っている。この重みも久しぶりだ。
「は……可愛いな、司……もう…」
「ひゃ…せんせぇっ……」
耳元で囁くと、また声をあげてぴくりと体を震わせる。
太ももを擦り合わせるように腰をくねらせているのに気付いて、茂みの奥に手を差し入れる。
「や、あ……」
花弁に触れる前からそこはすっかり濡れていて、ひくつく膣口から溢れた愛液はすでにシーツを汚していた。
- 220 名前:司8 ◆aPPPu8oul. 投稿日:2005/08/17(水) 16:55:20 ID:wJoPuT1Z
- 「びしょびしょだな……」
秘裂に指を滑らせると、愛液が絡みつく。卑猥な水音を立ててやると、司が首を振る。
「あ…あぁ、んっ……やぁ…」
「……いい声だ……」
首筋に唇を落とし、膣口をなぞり指先を埋める。
「あっ……やぁ……」
逃れるようにくねる腰とは裏腹に、膣は快感を求めて蠢いている。
「……いくぞ」
返事を待たずに指を押し込み、絡みつく愛液と膣壁を押しわけて奥へと進む。
身をよじる司の口から漏れる声を聞きながら、指先を曲げて中をかき回す。
抉るように抜き差しすると、いやらしい音をたてて愛液が溢れる。
「だめ、やだぁっ……せんせ…せんせぇの……っ」
首を横に振ってよがっていた司の目が、じっと隆也を見つめる。
「……司……」
喘ぎながらも自分を求める司の腕が無理矢理首を抱き寄せる。
「は……もう、待てないよっ……」
ぷつんと、理性が焼き切れてしまいそうだ。
腹に付きそうなほど立ち上がった肉棒を司の下腹部に押し付けて、指を引き抜く。
「…俺もだ……いくぞ」
腰を引いてぬめる膣口に先端を押し当てる。一瞬体を強張らせた司の目が潤んでいる。
「は、い……」
暴れだしそうな肉棒を押し込むと、生々しい水音と膣壁が絡みついてくる。
快感に喜んでびくんと跳ねた肉棒を、じりじりと押し込んでいく。
「ふぁ……あ、は……あぁっ……」
すでに言葉や理性を捨ててただ貪りたかったが、小刻みに震える体を押しつぶして、耳元に顔をよせる。
「…すごく…いいぞ、司の中……」
囁いて耳たぶを噛めば、ぴくんと震えた司の声が耳をくすぐる。
「あ……ん、嬉しい…せんせぇ……」
もう、言葉はいらない。収縮と弛緩を繰り返す膣内をえぐるように、いきなり激しく腰を打ち付ける。
「ふぁ、あっ……あぁっ……やぁっ……!」
身をよじり逃げようとする腰を押さえつけて、何度も何度も、激しくつきあげ、中をかき乱す。
「せんせっ……や、あぁっ……だめ、だめぇっ……!」
何度押し開いても絡み付いてくる膣は理性をどこかへ追いやってしまう。
「は…司……司っ……!」
- 221 名前:司8 ◆aPPPu8oul. 投稿日:2005/08/17(水) 16:55:50 ID:wJoPuT1Z
- 息を上げながら名前を呼び、何度も唇を落とす。
「せんせ…せんせぇっ……いっちゃう、よぉっ……!」
震える司の泣き出しそうな声が、はっきりと耳に届く。
「んっ…いいぞ、俺も……っ」
あらん限りの力で腰を打ちつけ、中を抉る。
「あ、あぁぁぁぁぁっ……!」
司の絶叫とともに膣は肉棒を締め付け、その最奥にたまった熱い精液をぶちまける。
勢いは止むことなく、何度も何度も、この20日間の欲情を注ぎ込む。
びくびくと震える司の体を抱きしめて、息を整える。
「ふぁ……は…せんせぇ……」
「は……司……良かったぞ……」
頭を撫でて、体を横にずらし肉棒を引き抜こうとすると、何故か止められる。
「……だめ。まだ……こうしてて」
少しでも長くつながっていたいと、そう思ってくれているのだとしたら。
…焦りすぎたというか、早すぎただろうか。
いずれにせよ今は激しすぎた交わりの反動で、全身がだるくて仕方がない。
「ん……わかった。少し、休もうな……」
熱い体を抱きしめて目を閉じると、倦怠感と睡魔が襲ってくる。
司も同じように目を閉じて、二人はほどなく眠りについた。
はずだった。
「…司、何してるんだ?」
目を覚ました隆也の腕の中に司はいなかった。
汚れたシーツを目にして洗濯の苦労を思ってため息をつき頭を巡らすと、司はまたパソコンの前にいる。
「あ、おはようございます。勝手にネットしてますよ」
この敬語の使い方は男子高校生モードだろうか。
どうせならあそこでもう一頑張りして、今日はもう動けないぐらいに犯してやればよかったかもしれない。
「…そうか……なんだ、自分で探すのか?」
のろのろと衣服を整える隆也の予想は当たっていた。
「うん……でもやっぱネットは需要が多いのばっかで、あんまりおもしろいのは見つかんない」
見ると司はTシャツと下着だけを身につけているらしい。大き目のシャツから伸びる脚は艶かしい。
「まぁそうだろーな…で、何探してるんだ?」
しかし出てくる単語はどうしようもなく女の子らしくない。
「エッジプレイの動画」
- 222 名前:司8 ◆aPPPu8oul. 投稿日:2005/08/17(水) 16:56:51 ID:wJoPuT1Z
- 「……エ…エッジ……?」
そんな単語、うっかり聞いたことはあるけど女の子の口から聞くのは初めてですよ?
「そう。束縛とかフィストファックとかの見た目いかにもなやつじゃなくて、もっとこう、"この世界にいないと
理解できない"みたいなディープなのがいいから」
それを堂々と口にするお前を俺はどうすればいいんだ。脱力した隆也の口からは正論しかでてこない。
「……それはあれじゃないか……やっぱり法律に抵触しそうだからそのへんには転がってないんじゃないか…?」
「んー。やっぱそーか…でもフツーの持ってってもなぁ」
フツーのって、その基準はどこにあるんだ。いやそれよりなにより。
「なんでそんなにマニアックなもんにこだわるんだ?どうせ見ないんだろう?」
まさかほんとにそっちの趣味が、と言う隆也にむくれて赤面して、司は意外なことを言ってくる。
「違います……普通の奴には理解できないようなモン持ってけば、俺に下ネタ振りにくくなるでしょ?」
たしかにエッジプレイをするような奴に、普通の下ネタは振れない。
「…あー、そこまで考えてたのか。なるほどなるほど。だったらもっと簡単な方法があるだろ」
隆也は身を乗り出して、カチカチとマウスをすべらせ検索ワードを入力する。
『ゲイ 動画』
がつんと、頭を横から殴られる。
「ほんとにソッチの人に求愛されたらどーするんですか!」
「いや、そんときゃそんときだろ。俺を道連れにしてもいいんだぞ?」
半笑いで言う隆也に、司はむっとした表情。
「……ダメです。俺が卒業するまでは平穏無事に生活してください」
「つってもなぁ……」
ぽりぽりと頬をかく。それはさっきの行為と矛盾しているだろうと言外に匂わせると、司はおもむろに立ち上がる。
「そのへんは大丈夫……ほら」
かがんで荷物を拾うと、いいアングルでお尻が見えるのだがそれは黙っておこう。
司がかばんから取り出したのはピルケースだった。
「……え……お前ピルなんて飲んでたのか?」
「うん。叔母さん…保健の先生が、俺が男子生徒として入学する条件だって言って。
ホルモンバランスが崩れるし何かあったら大変だからって…」
こう生々しい話をされると、自分の認識の甘さを考えさせられる。気の抜けた返事しか出てこない。
「そっか……まぁ……そうだろうな」
「うん。じゃなきゃいくら先生がいいっていっても中出しなんてさせません。俺、ちゃんと高校出たいもん」
ぎゅう、と司が抱きついてくる。用心深いわりにこうして無邪気に、無防備に笑うから心配なのだ。
「だからまずは、修学旅行。よろしくお願いします」
笑って言う司を、これからどのくらい愛していられるのかわからないが、やはりとりあえずは修学旅行だ。
- 223 名前:司8 ◆aPPPu8oul. 投稿日:2005/08/17(水) 16:57:59 ID:wJoPuT1Z
- 「…だな。そうそう、いい考えがあるんだ……」
でもその前にちゃんと服を着ろ、と指導して、この日は日暮れまで修学旅行の打ち合わせをしていた。
この打ち合わせが全て成功するかどうかは、まだ誰にもわからない。
* * * * *
修学旅行までしばらくおやすみ予定。でもネタがあったらまた来ます。
ネタがなくても読みには来ますよノシ
- 224 名前: ◆z1nMDKRu0s 投稿日:2005/08/17(水) 17:33:15 ID:u1U40Qtl
- あんた本当にいい人だ(つД`)
ここまで可愛い司タンに好きって言ってもらえる先生は正直……
竹槍で刺したいほど憎いぃぃぃぃぃぃぃ!!!!
あぁ…この調子だと年末年始はバラ撒く爆竹の量が増えそうだ……
神奈川県警のみなさん、今年もお世話になります
- 225 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2005/08/17(水) 21:37:11 ID:rIhz6bl1
- http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1122706289/214
こんなシチュエーションはだめか?
- 226 名前: ◆z1nMDKRu0s 投稿日:2005/08/17(水) 22:07:59 ID:u1U40Qtl
- 前スレでも出てたな、女体化
とりあえずスレ違いってことになってたがいいんでない?
俺は歓迎する
だから>>225よ
頼む、それで一本書いてくれ
- 227 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2005/08/17(水) 22:11:53 ID:O3odKvzh
- 俺はだめだああ
つか元が男と思うと到底萌えられん
だが絶対に投下すんぢゃねぇよとも思わんな
好きな奴は書いてみればどうだろう
賑やかなほうがたのしいしな
- 228 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2005/08/17(水) 22:23:55 ID:EikhhO4/
- ここは神の集まるスレだ……
自分女だけどめさ萌える。
ヅカとかはだめなんだけど。
すごすぎる、神々。
- 229 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2005/08/17(水) 23:23:59 ID:wJoPuT1Z
- >>225
好き嫌いが激しいだろうから注意書き入れてくれれば無問題。
同じく陵辱系も注意書き入れて欲しい…
>>228
書き手も男女半々のような気がするな
いや、勘だけどw
- 230 名前: ◆z1nMDKRu0s 投稿日:2005/08/17(水) 23:29:50 ID:u1U40Qtl
- いやーとうとう女の方までいらっしゃったか
賑やかになったな〜このスレ
- 231 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2005/08/17(水) 23:31:26 ID:O3odKvzh
- >>228
いやー…、
だがな、勘って当てにならないもんだぞ
自分、他のスレで絶対この女側の表現描写は男じゃないだろうと思ってた職人がサイトバレした時正真正銘の男だと分かって仰天した記憶あり
- 232 名前:231 投稿日:2005/08/17(水) 23:34:02 ID:O3odKvzh
- 間違えた
>>229だ
- 233 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2005/08/17(水) 23:36:23 ID:ok9iBcv3
- あるあるwwwwwwwwwwww
- 234 名前:121 投稿日:2005/08/17(水) 23:53:24 ID:XlOTOUz0
- さて、本日も投下します。
んー、盛り上がるのはいいことだ。
一読者としてここを覗くのが楽しみになってますよ。
では、前回に引き続きお暇な方はどうぞ。
- 235 名前:ぼくとおれの彼氏争奪戦7 投稿日:2005/08/17(水) 23:55:41 ID:XlOTOUz0
- 勘弁してくれ、と武志は誰にともなく呟いた。
腕を組み、しかめっ面の了と、俯き、もじもじと忙しなく指を動かしている晶。
「ここ最近、様子がおかしいと思ったらそういうことだったのか、晶」
「兄さんだって、様子おかしかったくせに……」
「ふふ……おれに口答えするとは、えらくなったものだな」
なにが悲しくて、男同士の修羅場に遭遇しなきゃならないのだろう。二人揃ってかなりの容姿端麗だが、残念なことに武士にそっちのケはない。そもそも、了は見たところ十六、七歳。晶はそれより更に年下のはずだ。
「武志と最初に出会ったのは、いつだ?」
「先週の、木曜日……だけど」
「勝った。おれは水曜だぞ。ということで、早いもの順だ。おまえが諦めろ」
「た、たった一日違いじゃないか!」
「あれから初めて、大丈夫そうな相手を見つけたんだ。ここはおれに譲ろうとは思わないのか?」
「ぼくだって同じだよ! これだけは譲れないもん!」
武志の意思は無視に、話は進んでいる。
「あー、きみたち。お取り込み中悪いんだが、この際はっきり言っとく。二人の需要は俺にはない」
「「……」」
訪れる静寂。
のどを掻きむしりたくなるような非常にきまずい雰囲気が辺りを包む。いや、しかしこれは大前提であって、これが尊敬だの信頼だのの類だと助かるのだが、どうやら別の感情を持つらしい二人には諦めてもらう他はない。
やがて、了が口を開いた。
- 236 名前:おれとぼくの彼氏争奪戦8 投稿日:2005/08/17(水) 23:58:02 ID:XlOTOUz0
- 「……確か、武志は男が嫌いだったな」
「嫌いなわけじゃないが、俺の恋愛の対象ではないことは確かだな。もういいだろ? 帰ってくれ。きみたちは法律を犯してるんだぞ?」
了と晶は再び見つめ合い、それぞれが身に纏っている学生服に目を落とした。了は男物のブレザーで、晶は学ランだ。
「晶、どれだけおれが本気か、おまえに見せてやる」
「ぼ、ぼくも本気だもん!」
「二人とも、人の話を聞かないプロだな……」
頭を悩ませる武志を横目に、二人は同時に自らの学生服に手をかけ、そして一気に脱ぎさった。
上半身が露になる二人の身体。
太陽の贈り物、日に焼けた健康的な肌の了。対するは、雪のような白い肌の晶である。晶の方は、なにやら胸にサラシを巻いているようだった。
(……今度はいきなり脱ぎだして、なにがしたいんだ?)
晶は恥らいを見せながらも、するするとサラシを巻き取ってゆく。
ぷるん、とそのサラシの呪縛から解き放たれたのは、二つの柔らかそうな膨らみ。緊張の面持ちの晶の呼吸と一緒に、ふるふる震えている。
「え、な、なに? き、きみ……」
晶の性別に気付いたとき、慌てて武志が顔を背けた。
「は、ははは。び、びっくりしちゃいました、よね? え、えっと、これにはいろいろ事情がありまして……」
頭が更に混乱する。男だと思っていた人間に、それもあまり面識のない人間に、その上不法侵入者の人間に、唐突に女の子になられても、困る。なにも言いようがない。
武志が顔を背けた先には、同じく上半身裸の了がもじもじと恥ずかしそうに立っていた。
しかし、身体に丸みはあるものの、これといって特に変わった点は見られない。
「な、なんだ? まさか、お前にもなにか秘密があるってのか?」
「た、武志! お、お、おまえ、おまえの目は節穴か!?」
了は必死になにかを主張しようとしている。心なしか、胸を突っ張っているようだ。
武志は、目を凝らして了の胸を見つめた。
「う……。そ、そんなに、見るな」
顔を真っ赤に染めている了の胸には、本当に、本当に申し訳ないていどに、わずかな膨らみがある。
「こりゃ大変だ。了くんの胸、そこそこ腫れてるじゃないか。そういえば、助けたときにおかしいと思ってたんだよ。俺の家なんかに来るより、さっさと病院行ったほうが――」
了の拳が腹にめりこみ、ぐふぁと情けない声を上げて武志は地べたに沈んだ。
「ド近眼め。生物学的に言えば、おれも女だ。……バカ」
- 237 名前:おれとぼくの彼氏争奪戦9 投稿日:2005/08/17(水) 23:59:26 ID:XlOTOUz0
- とりあえず、晶が用意してくれた朝食をもしゃもしゃと頬張りながら、互いをけん制している目の前の少年たち――もとい、男子学生服の少女たちを観察する。
「うん。うまいよ」
武志の一言に、ぱあっと晶が顔を明るくした。
武志の一言に、むすっと了の顔がむくれた。
「武志に料理を作るなんて、ずるいぞ。……それはともかく、どうしておまえが盗みなんてしようとしたんだ」
「兄さ、じゃなかった、姉さんが盗みをしてとっても嬉しそうにするなんて初めてだったから、なにか、あったのかなって思って……」
「ではあれだな。武志と運命的な出逢いをしたおれのおかげで、おまえも武志と会ったわけなのか」
「ぼくも、十分運命的だったもん」
「ふん。悪いことは言わない。武志は諦めろ。小さい頃から、なにかを賭けた勝負ではいつもおれの勝ちだったろう。今回もそれは変わらない。おれが勝つ」
朝食を食べ終わり、一息つくと武志は立ち上がった。
「さて、きみたち。俺と一緒に警察行こうか」
二人は目を丸くした。一体何の冗談を、という表情だ。
「きみたちがなんの経緯で男装してるなんてのは、赤の他人の俺が聞けることじゃないし、聞くつもりもない。それに、興味がない。それよりも今の会話から、常習犯だってことがはっきり分かった。見過ごした俺が甘かったんだな。社会の常識ってやつをそこで教えてやる」
了と晶の手首を掴むと、武志は無理矢理引き摺り始めた。
「ま、待ってください。け、警察なんて、そんな、行きたくない。警察なんか、嫌いです!」
「そういえば晶くんは知らなかったっけか。俺、刑事」
「え!?」
いささか、失望の声色だった。
「知ってたの? 姉さんは……」
「ああ。……武志、離してくれないか。おれ、武志に頼みがある」
「そりゃ無理な相談だ」
「そう、か」
急に、武志の世界が反転した。
- 238 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2005/08/17(水) 23:59:52 ID:kv3ZtM92
- 神だ・・・・このスレには神がたくさんいる!!
とにかくGJ!!です。
- 239 名前:おれとぼくの彼氏争奪戦10 投稿日:2005/08/18(木) 00:01:22 ID:XlOTOUz0
- 「……参ったね、どーも」
頭を掻こうとして、掻けなかった。腕と、足。見事に布でベッドに縛られていた。
確か、自分よりも小さな人間に綺麗に投げ飛ばされたところまでは記憶に残っている。
油断したとはいえ、これでも柔術の心得はあるほうなのだが。
「すまない、武志。だが、警察に行くわけにはいかない」
「ごめんなさい、武志さん」
「ったく、罪状を追加しとかなきゃいけないな」
投げ飛ばしたのは、了のほうだったと体が覚えていた。
「おれたち、警察は嫌いだ。あいつらはなにも助けてくれなかった。でも、武志は別だ」
「そうだよ。武志さんは、助けてくれた」
なにやら彼女たちは自分を過大評価しているようだ。助けたといっても衝動的なものだし、もともと正義感溢れる人間というわけでもない。あんなのは、ただの気まぐれだ。
他人に好かれるのは嬉しいことだが、はた迷惑な好意は好きではなかった。
「盗むっていっても、ちゃんと店に盗んだ分のお金は返してる。おれが壊したドアも、弁償する」
「返す? どうやって?」
「郵送で」
「律儀な泥棒さんなこった……」
かなり厄介な事情がありそうだな、と武志は思った。
余計なことに首を突っ込みたくはないのに。
「……晶がここに来た理由も、どうせおれと同じなんだろう?」
「うん。……たぶん、そう」
「やっぱり姉妹なんだな、おれたちは」
手首や足を動かしてみるが、入念に縛られていて抜け出せそうにない。完全にお手上げだ。今やその手も上げられない。
- 240 名前:おれとぼくの彼氏争奪戦11 投稿日:2005/08/18(木) 00:04:18 ID:XlOTOUz0
- 「仕方ないねえ。要求を聞くしかないってか。ま、言ってみろよ」
ちらりと交互に視線を交わし、男装姉妹は真顔で武志に向き直った。
「……おれと」
「……ぼくと」
そこからは、同時だった。
「「付き合って、くれませんか」」
抱いてくれだの、一緒に盗みを働いてくれだの、無理難題を予想していた武士にとって、少し拍子抜けするような要求だった。
しかし、答えは変わらない。
「断る」
簡潔に言っても、二人に動揺は見られなかった。
「理由を言ってやろうか? まず第一に、俺ときみたちとじゃ年齢に差がありすぎる。第二に、俺にその気がない。明確かつ単純な理由だろ? ……俺なんかが汚していいもんじゃない。いきなり裸になるとかするんじゃない。もっと自分を大切にしろ」
了と晶は笑った。淋しそうな、笑顔だった。
「その心配なら大丈夫ですよ」
「おれたちは、もう汚れている」
「どういう、ことなんだ?」
聞いてから、しまったと武士が口をつむぐ。
悪い癖が出てしまった。他人が抱えている悩みや問題の理由を聞くときは、自分が出来るだけ協力するという「自分ルール」があるからだ。
他人の心に介入するということは、それなりの義務が生じる。
「初めてだった。男に、どきどきしたのは。もう一生そんなことはないと思っていたのに」
「……ぼくたち、男性恐怖症なんです。ちょっと、理由があって。男のカッコしてるのに、変ですよね」
「だから、武士ならって、思ったんだ」
まずい。ここにきて、いろいろと揺らぎ始めている。だから他人に感情移入しやすいこの性格は嫌いなのだ。
「だけど、武士がイヤなら強制はしない。嫌々付き合ってもらっても意味はないからな。その気がないのなら、その気にさせるまでだ」
「まさか姉さん、あれ……するの?」
非常に、嫌な予感がする。
たいてい、こういったときの予感は当たってしまうもので。
「おれは男という生き物の勉強はかなりしたつもりだ。男というものは、欲望に忠実なのだろう? 付き合うしかないように、既成事実を作ってやる。シたくなるように、してやる」
了が自分よりプロポーションのいい妹を突然抱き寄せ、唇を奪った。
「ん……むぅ……ふ……」
晶も事情が呑み込めているのか、目を閉じて姉の行動に身を任せている。
我慢大会の、始まりだった。
- 241 名前:121 投稿日:2005/08/18(木) 00:09:06 ID:qC4MoKE1
- 今日はここまでです。
やっと今度は微エロ。お目汚し失礼しました。
では、後日。
- 242 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2005/08/18(木) 00:09:19 ID:eW/4Gv3b
- 直情径行の姉妹GJ!!
いやぁいい展開だ 続きを早く
- 243 名前: ◆z1nMDKRu0s 投稿日:2005/08/18(木) 00:23:16 ID:8BFM56NG
- こんなに早く新人様に文章力追い抜かれたか……
オニーサンちょっと欝……
もう構わない。
もっと、もっと俺に欝をくれぇ!!!!
GJだこのヤロウ!!!!!!
- 244 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2005/08/18(木) 00:43:09 ID:HoX4pWm8
- GJ!
しかし悲しい過去の予感。
過去話(があるなら)辛くて読めないかもしれない…
- 245 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2005/08/18(木) 01:56:24 ID:+XEmJ3Wz
- GJ!もうなんといっていいかわかなないほど、GJ!
- 246 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2005/08/18(木) 02:45:43 ID:prj3ha3a
- 激しくGJと叫びたいです。
スレ内の小説、みんな読ませていただきました。
ナタリーとイヴァン、イイです!
イヴァンがオトメの夢見る都合のいい「王子様」ってだけじゃなかったのがかえって萌えでした。
司くん、私の中ではわりと最近の金八先生に出てた男装の女の子のイメージです。
連載の続きみんなすごい楽しみです。
- 247 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2005/08/18(木) 02:58:06 ID:prj3ha3a
- 男装の女の子>調べたら第六シリーズの上戸彩だった。
- 248 名前:121 投稿日:2005/08/18(木) 18:29:14 ID:F+CQt9KR
- レスくれた皆様ありがとうございます。
>司殿
いいネタは浮かびましたでしょうか? 楽しみにしてます。
>白雀様
エロ展開楽しみにしております。続き待ってますよ。
>243
オニーサン、ガンバッテ、ツヅキ、カイテクダサイ。
>244
過去話は今のところ予定していません。需要があれば別ですが…。
では、投下します。前々回に引き続き、お暇な方はどうぞ。
- 249 名前:おれとぼくの彼氏争奪戦12 投稿日:2005/08/18(木) 18:31:44 ID:F+CQt9KR
- 男装の少女と同じく男装の少女が、絡み合っている。装いは男なのに、女同士の絡み。
妙な感じだった。
了は晶の学ランをはだけさせ、武志に見せつけるように、いや、実際見せつけているのだが、一度巻いたサラシも丁寧に巻き取ってゆく。その様は、晶が自分でサラシを巻き取ったときよりも官能的だった。
ズボンも脱がせて、そのまま流れるような手つきで晶の股間に手を押し付けた。
「あ……っ」
ここで感心すべき点は、下着さえも男物だったということ。
どれだけの覚悟で、彼女たちは男装に臨んでいたのだろう。
了は晶の秘部への愛撫を続けながら、豊かで形のいい乳房に舌を這わせ、ぺろぺろと舐めている。
「へえ。随分と、慣れてんだな」
余裕を残した声で、武志が言った。
ちゅぱぁっ、といやらしく唾液の糸を引きながら、了が乳房から唇を離した。
「言ったろう? おれたちは男の勉強をかなり積んだ。男としての、女の快感の与え方も然りだ」
「ね、姉さん……なんだか、前より凄く感じる。やっぱり、武志さんに見られてるからかなあ」
晶の快感は、ぷくっと硬く尖った乳首に表れていた。
「……我慢できなくなったら、いつでも言え。武志」
その乳首に、わざとらしく音を立てて了が吸い付く。
「あうっ」
「んむ……ちゅっ……」
トランクスというのが少し萎えるが、そこが濡れそぼってきているのはよく分かった。了はトランクスの中に手を滑り込ませると、女の子のもっとも敏感な部分へと指を当てた。
「あっ!?」
- 250 名前:おれとぼくの彼氏争奪戦13 投稿日:2005/08/18(木) 18:33:14 ID:F+CQt9KR
- 「本当だ……。凄く感じているんだな、晶。淫乱なやつだ」
「そ、そんなこと……武志さんの前……でっ! ひゃっ……言わないで、よぉ……」
「ふふ……、女、みたいだぞ? あんなに、女らしくするのを嫌がっていたのに」
ちゅくっ。
「っ!」
びくん、と晶の脚が大きく揺れた。
了が、晶の中へ指を進入させたのだ。
「あっ! はぁっん! んんっ、あぁんっ!」
くちゅくちゅと膣の中をかき混ぜる淫らな音が、部屋に高く響く。
ここまでの絡みから判断するに、了がサドで晶がマゾといったところか、と武志は思った。
「どうだ? そろそろ、シたくなったんじゃないのか?」
最中に、聞いてくる。
「ガキのレズごっこに俺が興奮すると思ってたのか? そんなもん、エロビデオで何回も見てんだよ。自意識過剰もいいとこだ」
なんて、強がりだろう。
既にジーパンの中のものはとんでもないことになっているのに。そもそも、この状況で興奮するなということが無理な話なのだ。逆に興奮しない男の精神を疑ってしまう。
よほど自信があったと見える了は手を止め、頬を膨らませた。
そのときだ。
きらり、と晶の目が光った気がした。
「……今度は、ぼくの番ね」
「え……わぁっ!」
攻守一転。攻めていた了を晶が逆に押し倒し、了の顔を両手で挟み、深く、深く口付ける。
舌を絡める、吸う、舐める。晶の意のままに、了の舌を弄ぶ。
「んん……! ん……むぅっ!」
「ぷはぁっ……はあっ、はあっ。……あはっ、姉さんも、一緒だね。初めてだよ? こんなに濡れてるの……」
「い、言うなっ!」
ズボンの中に片手を入れられ、もう片方の手でブレザーのボタンを外されながら、なされるがままの了が叫ぶ。
「こ、こら……はぁん……! や、止め……んんぅっ!」
- 251 名前:おれとぼくの彼氏争奪戦14 投稿日:2005/08/18(木) 18:35:03 ID:F+CQt9KR
- (前言撤回だな、こりゃ……)
二人の真性の性癖は、正反対だったらしい。
やがてブレザーの中から表れた小さな胸に、晶はくすっと笑った。
「姉さんの胸、ちっちゃいよね。胸なんて邪魔で、サラシも面倒だったから姉さんが羨ましかったけど、今はなんか、優越感。男の人って、胸が大きいほうが喜ぶもんね」
「……」
武志も、やはり胸は大きいほうがいいのだろうか。晶より身体も性格も女らしくない自分は、拒絶されるだろうか。
すぐ近くにいる男を見やる。それだけで、こんなにも切なく胸が締め付けられるのはなぜなのだろう。あいつは、大嫌いな男なのに。女は捨てたはずなのに。感情の制御が利かない。
胸の苦しさに目を細めると、涙が出てきそうになって、必死に堪えた。
「気分的にはこのまま姉さんと本番……したいけど、それじゃさすがに武志さんがかわいそうだし、そろそろ、混ざってもらおっか?」
ぎくり、と武志の体が揺れる。
やばい。やばいなんてもんじゃない。貞操の危機だ。このままシてしまうとなれば、いろいろと心に刺さるレッテルが貼られることになってしまう。
了にのしかかっていた晶がゆっくりと立った。
「あ……見て、姉さん」
たった一瞬の晶の行為で骨抜きにされていた了が、激しい呼吸を繰り返しながらも肩を起こし、晶の視線を追った。
武志の股間は……ジーパンの上からでも、見ていて痛々しかった。
「わ、わはは。きょ、今日は体の調子が……悪いというか、好調というか……」
これを見られたら、無駄な言い訳は意味を成さない。
仕事が忙しくて、ここ最近性欲処理をしていなかった、というのもある。
「ぼくたちで、興奮してくれたんですね……? 嬉しい」
まだ立ち上がれない了を置いて、晶はベッドの上の武志に歩み寄った。
んく、と晶が唾を呑み込む音が武志の耳に入る。
「も、もうこんなことは止めにしようじゃないか。な? きみたちの感情は、きっと一時の気の迷いなんだよ。だから」
「それでも、一時でも感じたなら、嘘じゃない本当の感情だとぼくは思います」
乱れた学ランから覗く、艶かしい晶の胸。
理性と本能の争いの中、武志はくらくらと眩暈がしそうになった。
白く細い腕が、武志のジーパンに伸ばされる。
- 252 名前:おれとぼくの彼氏争奪戦15 投稿日:2005/08/18(木) 18:37:36 ID:F+CQt9KR
- 「……待っ――」
た、と武志が言う前に、チャックが下ろされた。それを言うのを少し躊躇ったのは、やはり心のどこかで望んでいたということなのか。
「わ……」
おずおずと、晶が束縛から解放された浅黒い性器を見ている。見て、怯えているように見えた。ようやく立ち上がっていた了に至っては、瞳に恐怖の色が浮かんでいるのさえ分かった。
彼女らは男性恐怖症だと言っていたのを、武志は思い出した。
「無理、するな。所詮、俺はこんな汚い大人なんだよ」
「これは、武志さんの。……武志さんの。……武志さんの」
晶は目をつむり、自分に何度も言い聞かせている。
そして、なにかを決心したように目を開くと、今度は硬く躍動するペニスに手を近づけ……そっと、触れた。
ぴくっと反応したペニスに驚き、晶はいったん手を離すも、害がないかを確かめるようにして、しっかり握った。
「あ、晶くん……!? よ、止しなさいっ! だ、駄目だ!」
「あったかい……これが、武志さんの……」
自分自身の行動に、晶は驚いていた。まさか、武志のものと思うだけで、こんなにも簡単に恐れていた男性の性器を握れるとは。
この衝動を、逃がすまいとした。
小さく、ふっくらとして、柔らかな唇がペニスの亀頭を含んだ。
「う……っ!?」
ちゅっ、ちゅっ、と愛おしそうに舐め上げ、吸い上げる。
その光景をじっと見ていた了は、ただ固まっていた。自分には、あんなことできない。あんな、汚らわしい男のものを……。
自分から誘うような行動をしておいて、いざ前にして、情けなかった。
ふと、ペニスを舐めている晶と目が合った。
その瞳は勝ち誇ったような、了をあざ笑うかのような、女を自覚した色をしていた。
あんな妹を見るのは、初めてだった。
(おれが、負ける? ……そんなのは、イヤだ。イヤだ。イヤだ……!)
武志を奪われたくない。失いたくない。
了の足は、自然と冷蔵庫に向かっていた。
- 253 名前:おれとぼくの彼氏争奪戦16 投稿日:2005/08/18(木) 18:38:45 ID:F+CQt9KR
- そろそろ、限界だった。決して晶に技術があるわけではない。しかし、それに勝るなにかがあるのだ。
こんな年下の少女に射精してしまうなんて、と失笑する。頭が快感でぼんやりとして、どういった経緯でこうなったのかさえすっぽりと抜けてしまっていた。
「んちゅっ……っはぁ。いいですよ? いっぱい、ください。はむっ……」
(もう、いいや……。もうどうにでも……)
「たぁけぇしぃーっ」
甘ったるい声に呼ばれ、射精の快楽が一瞬吹き飛んだ。
「んふ、んふっ、んふふふふっ」
満面の笑顔の了が、部屋の入り口に立っていた。
足元に、何本もの空の缶ビールが転がっている。風呂上りの一杯に武志が買い占めていたものだ。
笑い上戸。それが今の彼女を表す言葉だった。
「……ね、晶なんかよりもぉ、わたしといいこと、しよ?」
低くクールだった口調とは一変し、えらく明るく、そして妖しい輝きをその目に灯していた。
- 254 名前:121 投稿日:2005/08/18(木) 18:41:27 ID:F+CQt9KR
- 以上です。
次回、姉の反撃。ようやく本番にいけそうですよ。
暇な時間がなくなってきたので、今度は少し時間がかかるかもです。
では、後日。
- 255 名前:121 投稿日:2005/08/18(木) 18:50:56 ID:F+CQt9KR
- あと、誤字脱字すみません。
前回の投下の間違いは武士→武志です。
タイトルも微妙に違ってるものがありましたね。
お目汚し、失礼しました。
- 256 名前: ◆z1nMDKRu0s 投稿日:2005/08/18(木) 19:43:13 ID:8BFM56NG
- 畜生…121の野郎……
もう見えないところまで行っちめぇやがって……
激しくGJだコノヤロウ!!
それに引き換え俺というヤツは……orz
- 257 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2005/08/18(木) 20:21:38 ID:eW/4Gv3b
- >>256
ええい!しっかりしやがれ
俺は昔からお前のSS大好きなんだぞ!
お前にしかかけないんだぞ、あーゆーノリのかっとんだ話は!
真もユウもマッチョもオネエもヲタも熊妹も凛姫も
続きの活躍をしたくてお前の指先でうずうずしてるんだよ
楽しみに待ってる読者がちゃんとモニターのこっちに存在するんだ
これも一種のノリだろうがお前は自信を持ってつっ走れよ!
正直毎回楽しみにしています
今後もがんばれ
- 258 名前: ◆z1nMDKRu0s 投稿日:2005/08/18(木) 20:57:03 ID:8BFM56NG
- >>257
貴様俺をおだてたな!!
おだてに乗りやすい俺をおだてたな!!
貴様責任はきっかしとれよ!!!!
書いてやる書いてやる書いてやるぅ―――――――――――――!!!!!!!!!!
- 259 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2005/08/18(木) 21:01:01 ID:yWvY57ss
- >>121氏
GJ!
しかし男装少女同志の百合って百合というより801っぽい感じもしないでもないなw
男×男装少女でも微妙に801っぽいのに同性同士の絡みだから余計そう見えるのかもな・・・
でも男装少女は普段の男っぽさとHの時の女っぽさとのギャップがたまらんから好きだ
これからも期待してます
- 260 名前: ◆z1nMDKRu0s 投稿日:2005/08/18(木) 21:51:12 ID:8BFM56NG
- あ、ちなみに今忙しいから深夜投下ね
- 261 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2005/08/18(木) 22:01:31 ID:An/bqXyO
- 神様イパーイ ワッショイワッショイ
>260
お待ち申し上げております。
ところで、あのー・・・。
>>38=46で話題が出ていますが、エロパロ板SS保管庫収納が無理だったら
自分がまとめサイト作っても良いでしょうか?
- 262 名前:8838 投稿日:2005/08/18(木) 22:33:43 ID:YwViD326
- >>261氏
自分はとてもとてもありがたいと思います!
よろしければぜひ!
ところでみんな書くの早すぎるyo!
- 263 名前:司 ◆aPPPu8oul. 投稿日:2005/08/19(金) 00:55:20 ID:/ByEMgCj
- >>261
まとめサイトとか夢のようだ…是非是非!
ところで修学旅行編を書き始めたわけだが、一日目のエロまでで18kbとかなんだが…
そして二日目、三日目はエロがあるかどうかすら微妙なんだが…
ゆいや親友君を書くのが楽しくてしょうがないんだが、やはりエロを主体にした方がいいよな?
いや、投下は九月になってからのつもりだからまだ先の話ですよ?
- 264 名前:秀穂ゴッドファーザーズ ◆z1nMDKRu0s 投稿日:2005/08/19(金) 01:08:55 ID:9ACeoVwM
- 深夜ぴったしに投稿が止まるおまいらが好きだ投下
「何パンツなんか洗ってんだよノロマが!!
今何時だと思ってんだよスカタン」
おーおー淳一容赦無いねぇ、口も拳も
「ってぇな!!
やんのかあぁ!?」
真、ケンカ腰になるのは良いけどフルチンでやるなよ
「そんな威勢があるんだったら早くしろ!!!!」
出てった淳一を見て怒りのやり場に困る真、とりあえず側の柱でも殴っとけ
着替えてギター持った真は半ば淳一に引きずられるように駅に到着
あらら、もう昌姉ぇとユウ来てるよ
で二人からの一言
「まったく、時間にルーズなんだから」
「正直待ちくたびれたよ
何してたらこんなに遅れるんだか」
言葉自体は文字で表すとそんなに怖くない
だけど、う、後ろのオーラがメチャメチャ怖いとです!!
「す、スイマセンデシターーーー!!!!」
思わず土下座の真、恥ずかしくないのか
でその後タリーズの喫煙室に陣取り、コーヒーをすする
コーヒー代全部真の奢りなのは当然の仕打ち
- 265 名前:秀穂ゴッドファーザーズ ◆z1nMDKRu0s 投稿日:2005/08/19(金) 01:28:18 ID:9ACeoVwM
- 「で、バンドのことなんだけどさ…
ユウちゃん楽器触ったことある?」
KENT独特のキツイメンソールの香りをさせながら昌姉ぇが聞く
今日は全員私服だからタバコ吸ってたって文句言う人いないな
「リコーダー以外はなんにも触ったことない」
ユウタン周りがみんなタバコ吸ってるから落ち着かない様子
「リコーダーってなんだ?」
マジ? 淳一知らないの!? ありえねー
「俺も思った」
真まで……おまいら一旦小学生からやり直せ
「なんだったっけ?
リコーダーって聞いたことあるはずなんだけど……」
オンドゥルリコーダーシラナイデバンドヤッテタンディスカーーー!!!!
椅子からずり落ちる唯一の常識人ユウ
「なんで知らないんだよ……」
ユウ、こいつらに一般常識求めちゃダメだ、どんな切り返し来るかワカランぞ
「リコーダーっていうのは笛のこと!!
小学校でやったでしょ?」
「あー、そういやあったなぁ
放課後に好きな人と関節キスするためのヤツ」
真、貴様そんな偏った覚え方するでない
確かにリコーダーってそういうモンだけどな
「ということはユウちゃんはギターもキーボードもやったことが無いのね」
「そうだけど……
え? ボクボーカルじゃないの?」
- 266 名前:秀穂ゴッドファーザーズ ◆z1nMDKRu0s 投稿日:2005/08/19(金) 01:50:57 ID:9ACeoVwM
- 「それも含めて説明するわ
じゃあまずは楽器屋いきましょ」
てきぱきと後片付けをする三人に呆気に取られる一人、その名はユウ
「え? え? 何?」
訳が分からん三人の行動に従いながらも戸惑うユウタン
安心汁、語り部にも何なのか分かってない
「ホラ行くぞユウ」
ゴッドファーザーズの面々が散らかした食器回収棚を整理しているユウの手を引っ張る真
でユウの細くてしっとりとした手を握った時にあの夢がフラッシュバァァァァァック!!
あーあーあーあー真の顔が赤くなってやがる
はたから見たら完璧フォモ野郎だな真
ユウの格好は休日でも男だしな
あーららら、おらしーらね♪
- 267 名前: ◆z1nMDKRu0s 投稿日:2005/08/19(金) 01:51:41 ID:9ACeoVwM
- 今日はここまで!!
続きは待て!!次回
- 268 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2005/08/19(金) 01:57:27 ID:iDvWRObP
- >>263
好きに書いてくれればおk
- 269 名前: ◆z1nMDKRu0s 投稿日:2005/08/19(金) 02:01:54 ID:9ACeoVwM
- >>263
>>268の言う通りです
俺なんかここまできてやっとエロ一つですぞ
キニシナイキニシナイ
- 270 名前:司 ◆aPPPu8oul. 投稿日:2005/08/19(金) 12:05:22 ID:/ByEMgCj
- >>267,269
真の青臭さがなんともいえない…!そしてユウタソはどうなってしまうのか。
いつも楽しみにしてますよー。
ゴッドファーザーズはエロなくてもおもしろいからなぁ…
でもありがとう。なんとかがんがる。
>>268
d。ほんとに好きに書くとエライことになるのでやや自重しつつ書いてみるわw
- 271 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2005/08/19(金) 23:16:33 ID:Bv4TZEfv
- こちらからSS保管庫への収納をお願いしておいて
スレ独自のまとめサイトを作るのは、エロパロ板SS保管庫管理人さんに
失礼かとは思ったのですが、
|
| ∧∧
|(´・ω・`)
|o ヾ そ〜〜・・・
|―u'
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
|
|
|
| ミ ピャッ!
| http://dansou.atspace.com/
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
- 272 名前: ◆z1nMDKRu0s 投稿日:2005/08/20(土) 00:18:36 ID:+A9WtYk1
- >>271
あんた最高だマジで
どうもありがとうございます!!!!!!
- 273 名前:8838 投稿日:2005/08/20(土) 00:27:48 ID:XL2hnDVL
- >>271氏
GJ!!お疲れ様です!ありがとう!そしてこれからもお世話になります。
そこで皆さんに窺いたいのですが
総合保管庫の管理人様からぼちぼち収納してくださるとの
お返事をいただきましたが、どうするべきなんでしょか。
管理人様けっこうお忙しいようなので辞退するべきですか?
辞退するなら早いほうが良いよね。
ところでやっとこさ続きができましたんで投下しようと思います。
皆様にぜんぜんついていけません。
つかもーみんなGJ過ぎだ!!その上早い。なんて恐ろしいスレ。
- 274 名前:8838 投稿日:2005/08/20(土) 00:35:32 ID:XL2hnDVL
- 祖父は微動だにせず、窓の外から病院の広い庭を眺めていた。斜めに射した陽が窓から入り込んで白い床に落ちていた。
「お爺様」
瑞希が呼びかけると祖父はゆっくりとこちらを見た。
小さな老人だった。病院の白いベッドに腰掛けて、痩せ細った身体をそれでもまっすぐに伸ばしていた。
大鐘征二郎は開口一番こう言った。
「くどいぞ、瑞希」
「これだけは譲るわけに参りません」
瑞希は静かだが強い口調で訴えた。
「今は小康状態でいらっしゃるでしょう。主治医から外出許可は出るはずです。お願いです」
頭を下げる。
「たった一度でかまいません。祖母のお骨に手を合わせに来てくださいませんか」
老人は答えなかった。そのままじっとそうしていると、突然個室の扉が開き、老婦人が顔を出した。瑞希ははたと会話を打ち切る。
「あら、瑞希さん。いらっしゃいまし」
「妙さま。お邪魔しています」
会釈をし顔を上げると瑞希は瞠目した。
婦人は大きな花束を抱えていた。一抱えもある巨大な束には瑞希の見たことも無いような種類の大輪の花が、おそらく最も美しいであろう状態で咲き誇っている。
足元の見えない婦人がよたよたと危なっかしい足取りになっているのを見て瑞希は駆け寄った。
「お手伝いします」
「まあ、ありがとう。なら私は花瓶を出します」
瑞樹が花束を受け取ると生花特有のいい香りが鼻をくすぐった。様々に表情を見せている花々は間近で見ると圧倒的な存在感があった。
「この花束、どうされたんですか」
婦人はにっこりと笑った。
「龍司さんよ」
「えっ……」
今度こそ瞠目して、瑞希は鸚鵡返しに尋ねた。あの、
「龍司……さんがですか?」
「そうよ。二週間に一度、必ずこうして届けてくれるの。この人の仕事をかなりの量継いでくれていて忙しいのにねえ。それをこの人ったら」
この人とは祖父、征二郎のことだ。妙は彼の妻である。
たおやかで上品な老婦人で、事実上大鐘の女たちを取り仕切っている存在でもあった。頑固な征二郎と正反対の性格をしていたが、人に対して公平であるところは同様だった。
愛人の孫である瑞希にもわけへだてなく優しい。この女性がいなければ瑞希はおそらくこうしてここにいることは無かっただろう。
征二郎は妙の言葉に鼻を鳴らした。
「花なぞなんの役に立つ」
「こうだもの」
妙は苦笑して瑞希に目を向けた。
「男の子にこう言うのもなんですけど」
妙は瑞希から花束を受け取った。
「瑞希さんも、見捨てないでやってね」
「……」
ぎこちなく微笑んで瑞希は重い気分を追いやった。
今日は土曜日だ。
- 275 名前:8838 投稿日:2005/08/20(土) 00:44:54 ID:XL2hnDVL
-
龍司は車窓から窓の外を流れる景色を眺めていた。
龍司には基本的に休日は無い。取締役としての業務は当たり前だが日を選ばない。会社の高い地位にいる人間の常として、龍司も自身の限界まで仕事を詰め込んでいた。
それでも土曜の夕方には何とか空き時間をねじ込むことができた。これでも執行役員のころよりは時間が取れるようになっているのだ。
第一遊ぶ時間も無ければ、とてもではないがやっていけない。どれだけ偉くなってもやることは基本的には事務仕事だからだ。
龍司にとって遊びとは女と遊ぶことだった。
龍司に決まった女はいない。継続的に付き合っている女はいるが複数人で、そのほとんどとは(少なくとも龍司にとっては)金と身体だけの関係だ。
例外もいるものの、それとて愛し合っているかというとそうではない。せいぜいセフレといった間柄に過ぎない。友人と会って仕事の愚痴をぶつけ合って、
ついでにちょっとした快楽を得る、そんな程度の認識だ。おそらく相手もそうだろう。
だから龍司は彼女らに対して我をぶつけることは無い。相手の嫌がることはしない。無茶な要求もしない。互いにそれなりに楽しめればそれでよい。
そういうスタンスでやってきた。今の生活で特に不満は無いはずだった。
しかし、ならば俺はあのたった十八の少女の何を欲しかったのか。
龍司は無言でひたすら窓の外を眺めていたが、ある通りを横切った瞬間、即時運転手に車を止めさせた。
帰り道、瑞希はとぼとぼと街路樹が規則正しく並ぶ歩道を歩いていた。周囲は閑静な商店街で、端的に言うとセレブと呼ばれる人々が入りそうな高級な店が軒を連ねている。
自分の安普請はここを抜けてやっとたどり着いた駅から電車で幾つか先の駅で降りてさらに何キロか先だ。
歩くごとに足が鉛のように重くなっていくことを自覚しながら、それでも時間までにはアパートへ戻らなければならない。
家へ戻りたくないと思うその理由――つまり先週の出来事は、ありていに言ってひどいものだった。
その後は丸一日何も喉を通らなかった。正直もう思い出したくも無い。
それでも彼女は結局、その原因を作った龍司を恨みきるには至らなかった。いっそのことそうできてしまえばどんなに楽だったかもしれない。
しかし育ての親である祖母が根っから明るかった所為か、彼女はこれまで恨みつらみといった感情を知ること無く生きてきた。
祖母はどんなにつらい事があっても最後には結局笑って済ませてしまうような人だった。瑞希はそれを見て育ってきたし、その祖母に人生とは何たるかを教わってきた。
だから十八にもなって今更そういった感情を持つことのほうが、彼女にとってはかえって難しいことだったのだ。
だがもちろん、それと龍司への嫌悪とは別だ。しかもその嫌悪感を嫌でも増幅させることには、これから週に一度の割合で、その大嫌いな龍司と逢わねばならないということだった。
瑞希は着ているスーツの端をぎゅっと掴んだ。こうなったら意地でも耐えてやる。この逆境を乗り越えて絶対に目的を果たすのだ。
女二人、しかも年配の女性と子供での暮らしは大変なもので、国からの援助と祖母のパートでやっと食いつないでいた状態だった。だから瑞希としては一刻も早く働きたかった。
だから最初は高校へも行かないつもりだった。しかし女で中卒となると、働き口は皆無だった。仕方なく高校へ進学し、バイト漬けの日々を送った。
高校なんてとっとと卒業して、さっさと就職して、祖母に楽をさせてやるのが彼女の人生最初の目標だった。
- 276 名前:8838 投稿日:2005/08/20(土) 00:46:34 ID:XL2hnDVL
- そしてそれをかなえる前に祖母が死んだ。
瑞希の落胆は相当なものだった。祖母の遺骨を前に、これから先、私は何を目標にして生きていけばいいのだろうと、そんなことばかり考えた。
そんな折、一通の手紙を受け取った。宛名は祖母で、宛先は祖母のとても古い住所で、これでよく届いたな、と感心した。
中を読むと手紙の主は祖母に子供ができたことすら知らない様子だった。手紙は妙からのものだった。
それは祖父が病気で余命いくばくもない、会ってやってほしいと言う手紙だった。祖母の経歴は知っていたから、あまり驚かなかった。
祖母を失っていくらも経っていなかったので、会ったこともない祖父が病気だと言われても実感がわかなかった。
しかし瑞希はほとんど発作的に返信していた――自分は男であると偽って。
昔から負けん気が強く、小学校のころは男友達から『男女』などと呼ばれていた類の、絵に描いたようなお転婆だった。
加えて前述のような理由もあって、昔から「自分が男だったら良かったのに」と思い続けていた。そしてこの時、祖父の男女に関する考え方も手紙の内容から推測した。
龍司に言った、祖母のお墓と土地が欲しいというのは本当だった。しかしそれ以上に、祖母の事を認めて欲しいと思った。認めて、祖母の墓前に出向いて欲しかった。
そして出来るなら、少しでいい、自分のことも認めて欲しい。それには自分が男のほうが都合がいいと思った。
幸い、自分の名前は男の名前だった。昔は、同じみずきなら『美月』の方が良かったと訴えたこともあったが、そんな時祖母は決まって「希望の『希』が入ってるんだからこっちのほうがいいじゃないの」と答えたものだ。
その祖母に何か一言言って欲しい。謝って欲しいとは言わないが、祖母にもう一度会って欲しいと思うのだ。
復讐ではないが、もしかしたらそれに近い感情なのかもしれない。自分でも意固地になっていると思う。だが、出来るところまでやってみたいと思った――
ぱっと目を開けると目前にディスプレイウインドウが迫っていた。
「うわっ」
思わず声を上げて大仰によけてしまう。赤面して辺りを見回すが幸い人はいなかった。考え事をしながら歩いていたため、通りの角に差し掛かったのに気付かずぶつかってしまいそうになったのだ。
ここはいったい何の店だったかと目の前のディスプレイを見る。きらびやかなアクセサリー類が並んでいた。宝石店とわかる。
それから店の名前を確認し、瑞希はああ、この通りか、と自分のいる位置を見当付ける事ができた。
しかしそれはそれとして、
「あ、これいいな」
と思わず目の前のアクセサリーを眺めてしまうのは、男の格好をしていても女であることを捨てきれない人間の性というものか。
宝石類のディスプレイなのでウインドウの中は何段かに仕切られており、ちょうど彼女の目線の位置に飾られているペンダントがあった。
思わずじっと見入る。素材はシルバーで、小さな凝ったデザインの二連リングがトップに据えられたものだった。
鎖は短めで、ペンダントトップがちょうど鎖骨の下あたりに収まるだろう長さだ。
「……はっ」
気がつくとウインドウに手まで添えてべったりと張り付いている自分がいる。
瑞希は渋い顔をした。
「駄目駄目。どうせ買えないもん」
かぶりを振って歩き出す。瑞希にはこういった本物のシルバーアクセサリーはもちろん、露天で売っているような安物でさえ手が出せない。
ただでさえ切り詰めた生活をしている上にわずかながらも貯金をしているのだ。必要のないものは一切買わない。彼女の黄金ルールだった。
- 277 名前:8838 投稿日:2005/08/20(土) 00:47:30 ID:XL2hnDVL
- しかし、
「いらっしゃいませ。何かお探しですか?」
店員らしき若い女性が入り口の前に立っていた。手荷物を見るに、買い出しにでも行っていたらしい。
社交的な性格らしく、ただディスプレイを見ているだけの瑞希にも積極的に声をかけてきた。
「よろしければどうぞ中へ。あ」
瑞希の見ていたペンダントに目を留めて笑う。
「そちら、新作ですよ。いかがです?」
「え、いえ、わ……いや、俺は」
慌てて半歩下がると、瑞希はわたわたと応対した。にこやかに、だがさりげなくこちらを観察してくる店員に、居心地の悪い思いで頬を掻いた。
店員はそのペンダントが女性ものと気付くとにっこり微笑んだ。
「彼女へのプレゼントですか?いいですね、うらやましいわ。素敵な彼氏がいて」
「はあ」
愛想笑いを浮かべると瑞希は言い訳をするように両掌をさっと上げて相手の台詞を遮った。
「あの、今ちょっと持ち合わせが無くて。またの機会にします」
店員は残念そうに肩をすくめた。
「そうですか?またお越しくださいね」
「は、はいっ」
くるりと向きを変えて歩き出す。何とかその場を逃げ出すと、瑞希はため息をついた。目を伏せる。少年じみた表情がふと憂鬱に染まった。
その想いに呼応するように日が沈み始めた。
龍司が六畳間へ上がりこんで来たとき、瑞希は六畳間の真ん中に置いてある卓袱台の脇で、龍司に背を向け、黙って座っていた。
正直、顔も見たくないし、声も聞きたくない。が、
「逃げなかったか。偉い偉い」
その台詞に瑞樹はぱっと振り返った。
「誰の所為ですか!?」
「俺の所為だって言うんだろう」
「そうよっ」
龍司は敵意剥き出しの視線に肩をすくめると、ポケットから何かを取り出した。掌に収まるほどの小さな箱を、彼は手の内でもてあそんだ。
「ほら」
龍司はその箱をぽんと放り投げてきた。
「――――」
反射的に瑞希はそれを受け取った。素材は厚い紙で、中は重いとも軽いともいえない、なんとも手にしっくりなじむ程度の重量だった。
なんだろうと軽く振ってみるとわずかに何かの揺れる音が聞こえた。
「やるよ。馬鹿正直に待ってたご褒美だ」
その一言に瑞希はむっとした。開けずに卓袱台の上へ置く。
「お返しします。いらないわ」
「開けてみろよ」
「いりません」
「驚くからさ」
「いりませんってば」
応酬はしばらく続いたが、最終的には龍司の「開けなきゃばらすぞ」の一言で決着がついた。
しぶしぶ箱を開けた瑞希は、中に更に小さな箱が入っているのを見た。ジュエリーを納める類の、角が丸く表面がビロードのような質感のあれだ。
- 278 名前:8838 投稿日:2005/08/20(土) 00:48:11 ID:XL2hnDVL
- 「……?」
何かを予感してその中身を見た瑞希は、果たして龍司の言ったとおり、驚いて一瞬固まった。
「…………どうしてこれを」
中には昼間瑞希が宝石店で見入っていたペンダントが入っていた。店で見ていたものに間違いない、色も形も寸分違わないそれだ。思わず手に取って見る。
龍司がからかうような口調になった。
「仕事中に車で移動してたら、店のガラスに張り付いてるお前を見つけたんだよ。店員と話してたからその店員に話聞いたらまあ、だいたい予想がついてな」
「いつの間にっ」
耳まで赤くなって瑞希は呻いた。あんな姿を見られていたとは屈辱だ。
実際手に触れた感触に瑞希は心ならずも感動してしまったが、これが龍司から与えられたものとなれば話は別だった。未練を断って箱を元の通りに収める。
「……いりません」
「強情だな」
「好きでもない人に物をもらっていい気分はしません!」
ことさらはっきりと発音してみせる。それを聞いても龍司は特に気分を悪くした様子は無かった。部屋を横切り、押入れの前に立つ。
「ふむ」
龍司は勝手にその扉を開けた。上段に敷布団が仕舞ってあるのを見つけると手をかけて引っ張り出そうとする。
「ちょっと、何するのっ」
勝手に家内を捜索された怒りと戸惑いで叫ぶ。彼は良質の敷布団であればありえない布団の重さにいささか驚いたようで、結局敷布団は出さずにその上にたたまれてあったシーツだけを引き出した。
「畳の上でやりたいのか?先週みたいに」
「――」
龍司の言うとおりだった。先週は結局茣蓙を新しいものに取り替えなければならなくなったのだ。
「……もう勝手にしてっ」
毒づくと、それきり口出しせずにそっぽを向く。ちらりと見るとシーツがばさりと音を立てて畳の上に広がったところだった。
そのままネクタイを解き始めた龍司は実にあっさりとこう言った。
「お前は脱がないのか?嫌だって言うんなら俺が脱がせてやってもいいが」
「……!」
憤死しそうになりながらも瑞希は彼に倣うしかなかった。ただでさえ手持ちの衣服は少ないのに不必要に汚すわけにはいかないし、何より龍司に脱がされるのだけは我慢ならなかった。
男物のシャツの、胸元のボタンをはずしたところで龍司の視線に気付き睨み付けると、彼は肩をすくめて向こうを向いた。
シャツを脱ぎ、次にズボンを脱ぐかサラシを取るかで少し迷ったが、意を決してサラシを解き始める。
彼女はもともとスレンダーな体型で胸の発育も良くはなかったが、それでもサラシが無ければ男の真似はできない。サラシがするすると地面に降りていく。
ぱさりと音を立てて端まで落ちると、上半身が露わになった。嫌でも顔に血が上る。龍司がまだ向こうを向いていることを確かめて、彼女はズボンにも手を掛けた。
裸になるのは嫌だが、脱ぐところを見られるよりはるかにましだ。しわになったズボンが足元から抜かれる。
- 279 名前:8838 投稿日:2005/08/20(土) 00:49:02 ID:XL2hnDVL
- 「……」
最後の一枚だけは流石に躊躇った。何秒かかけて羞恥を押さえ込んでからやっと、彼女はショーツを取り去った。
顔を上げると龍司は既に全部脱ぎ終わり、シーツに腰を下ろしてこちらを見ていた。慌てて胸と茂みを手で隠す。
見られたのと見てしまったのと両方で頬を真っ赤に染めて瑞希は立ちすくんだ。
「来いよ」
横柄な命令にそれでも逆らうことはできず、瑞希はのろのろと動き出した。卓袱台を回り込み、シーツの前まで来て足を止める。
それ以上踏み出せずにいると手を掴まれて引き寄せられた。
「あっ」
バランスを崩してシーツの上に手をつく。間抜けな声を出してしまったことを恥じながらまた胸を隠そうと手を上げたが、その前に龍司の手がそれを押しとどめた。
押し倒される。
龍司は瑞希の首筋に顔を埋めた。龍司の髪が喉元を這う感触に瑞希は震えた。
「やめて」
瑞樹は硬い声で言った。さっと横を向いて唇を開く。
「余計なことはしないで……っ」
語尾が鋭く龍司にぶつけられた。その声はわずかに震えていた。龍司がわずかにあきれた様子で言う。
「お前が痛いだけだぞ?」
「その方がずっとましだわ」
頑なに横を向いたまま、ぎゅっと目をつぶって瑞希は一息に言った。緊張した肌が外気に熱を取られてほんのりと赤く染まっていた。
「貴方みたいな人は、自分が気持ちよくなれればそれでいいんでしょ?好きにさせてあげるから、さっさと終わらせて……」
言い終わらないうちに首筋を舐められ、瑞希は「ひっ」と声を上げた。
「な、何でっ」
「好きにさせてくれるんだよな?え?瑞希」
龍司は唇を歪めて笑った。
「他はどうだか知らないが、俺はどっちかというとその余計な事をしたがる方なんだ。それに」
龍司は彼女の耳朶に顔を寄せてささやいた。
「結局お前は俺の言いなりになるしかないんだ。わかってるな?」
「……っ」
かっと赤面し、瑞希は叫んだ。
「卑怯者っ」
罵声を浴びせた彼女の唇を塞いだキスは、先週のものより更に深く執拗だった。
歯を割り開く。口蓋をくまなく犯す。舌を絡める。唾液を流し込む。責められているのは口内だけなのに、戦慄は彼女の神経を伝ってあっという間に全身に広がった。
「ん……くふ……」
我知らず瞼をぴくぴくと震わせる。瑞希は懸命に息を継いだ。流されてはいけない。流されては駄目だ。気をしっかり持て。気を……
だがその思いとは裏腹に、脳裏には徐々に靄が掛かり始めた。身体に力が入らない。意識がどこか知らないところへ引きずり込まれていく――
「…………っ!」
駄目だ!すんでのところで彼女は失いかけた理性を引き戻した。されるがままだった舌を引っ込め、舌が抜かれた隙に口を閉じて無言の抵抗を示す。
舌を噛んだほうが早かったのだろうが、それはためらわれた。
- 280 名前:8838 投稿日:2005/08/20(土) 00:49:54 ID:XL2hnDVL
- 唇を離した隆二は多少残念そうな顔をしたが、非難はしなかった。
その代わりとでも言いたげに、今度は先ほど顔を埋めていた首筋にキスを落とす。彼はそれを一度だけで無く何度も同じところへ繰り返した。
瑞希は震えた。そのキスは徐々に彼女の身体を降下し始めた。
「――」
目をぎゅっと瞑って視界を閉じる。意識して聴覚から音を締め出す。身体を硬くして触感を断つ。全力でそこまでしてもなお、身体は敏感に反応していた。
くらくらと目が回るような錯覚を覚えた。
いつの間にか、龍司の唇は下腹部にまで達していた。瑞希は知らず知らずシーツの端を握り締めていた。縋るものが何も無い手は薄いシーツだけを拠り所として震え続ける。
二度目の今、龍司以外の男を知らない瑞希にも、龍司がこの手の行為に関してよほど手馴れているのだろうということだけは推測できた。
相手の弱みを突こうとする手は嫌味な程正確だった。瑞希のわずかなリアクションに対しても即座に応じてくる。
下腹部に舌を這わせたときの反応を見て、龍司はそこを重点的に責め始めた。
「く、うっ」
彼女は身じろぎして耐えようとしたが、腰を押さえ込まれて動けなくなった。ああ、この男を今すぐ張り倒したい――しかしそう思うたびに脳裏に祖母の顔がちらつき何もできなくなる。
膝頭を掴まれる。彼女は嫌な予感に脚を閉じて抵抗したが、自分より頭二つも背の高い男の力には適わなかった。あっさりと脚を拡げさせられる。
ぐっと顔を背ける。見られている――彼女は目を閉じてその現実を頭から締め出そうとした。
その時、未知の感覚に襲われた。
「……!」
ぞわりと背筋に悪寒が走った。何事かと視線を下げてそれを見てしまったとき、彼女は危うく自失しそうになった。
龍司が自分の秘所を平然と舐めていた。気が遠くなった。知識としては知ってはいたが、実際にされるとひどくショックだった。
キスはどんどんと深くなっていった。最初は入り口を舐めるだけだったものが、次第にエスカレートしていった。
ぬるぬるとしたそれに媚肉を割り開かれ、何度も何度も愛液をすくわれる。まるで別の生き物が自分の中に入り込んで好き勝手に暴れているような錯覚に陥る。
あまりのことに悲鳴すら上げられない。今すぐにでも失神してしまいたかった。気絶してしまえばこれ以上の羞恥は味あわずに済むだろう。
しかしそのすぐ後には現実的な攻撃が待っていた。
舌が離れ、代わりに指が入り込む。
「っ、は!?」
舌に較べて刺激の強い指はたちまち彼女を正気づかせた。シーツを握り締める手が震える。
「な……やっ……」
嫌、と言いかけた口から零れたのはわずかな吐息だけだった。入れられた指はあくまで優しく内部をかき回した。痛くないよう、より彼女に敗北感を感じさせるように、指は動いた。
- 281 名前:8838 投稿日:2005/08/20(土) 00:50:30 ID:XL2hnDVL
- それを延々と続けられれば嫌でも緊張を途切れさせてしまうことになる。意思の力だけではどうにもならなかった。
耐え切れず、彼女は腰をくねらせた。自分でもいやらしい動きだと思った。
「舐めてやったせいか、随分感じやすくなってるみたいだな」
「……!ちが……ん、う……っ」
震える唇から声が漏れ、彼女は羞恥で真っ赤に染まった。身体から勝手に力が抜ける。何かがおかしい。そう思った時には既に変化が訪れていた。
「――」
身体が熱かった。気がつくと、鳩尾の辺りが発熱したように熱を持っていた。
彼女は戦慄した。
「……っ……あ……」
腕に鳥肌を立てて彼女は呻いた。
「やめてっ……!」
悲鳴のようにささやいた。龍司はやめない。自分は支配されている側なのだということを痛感する。戒められてもいないのに自分は動けず、相手は好きに自分を弄ぶ。
どうしようもなく濡れているのが自分でもわかる。前回より更に潤んで、指の動きに合わせて泡すら立てて零れ落ちていた。
自分の身体がこんなことに慣れていくなんて信じられなかった。
「やだ……やだ、やだ、やだあっ」
子供のようにかぶりを振って、彼女は全力でその恐怖から逃げ出そうとした。脚が言うことを利かず暴れだしている。
龍司はそれを、彼女の片脚を上げさせて封じた。指をくんと曲げる。
「っ……ひぃっ」
瑞希は最も弱い一点を突かれてあえいだ。その衝撃にまた愛液があふれ出す。この上ない屈辱だった。
「お願い……もう、やめて……」
彼女は涙声で懇願した。こんな台詞を言ってしまう事自体が屈辱だったが、他にどうすることもできない。これ以上は精神が耐えられそうに無かった。
と、不意に指が抜かれた。
「あ……」
全身から力が抜けた。くたりとシーツに身を預ける。
やめてくれた……?彼女は朦朧とした視線を上に向け、そこで急激に強い刺激を受けて白い喉を仰け反らせた。
「……ん……くぅ……!」
膣内に異物が進入してきた。
指よりもはるかに太いそれは、前回よりもはっきりとした形を伴って彼女の中に入り込んでくる。
前回と正反対の驚くほどゆっくりとした挿入に、彼女の腰は小さく何度もびくびくと跳ねた。
「あ……く……」
押し広げられて喘ぐ。前回に較べて痛みは少ない。しかしどうせ同じことだ。またあの乱暴な行為が始まる。
しかし瑞希はかえって安堵した。痛みになら耐えられる。恥ずかしい反応をしてしまうことも無い。瑞希はむしろ穏やかな気分でそれを受けた。
しかし龍司の次の行動は彼女の予想を完全に裏切った。
挿入した時と同じくらいゆっくりと、龍司は抽送を開始した。ぎりぎりまで抜き、また挿入する。押し込み、引き抜く。それら全てがひどいスローペースで行われた。
彼女は、挿入後は龍司が前回のように彼女を激しく貪り尽くすのだとばかり思っていた。
もしも自分に感じさせることで龍司が優越感を得ようとしているのだとしても、挿入してしまえば自分自身の快楽に負けてただ好き勝手に陵辱すると思った。
だからもう、彼女にとっての屈辱は終わったと思った。
だからまだ痛みはあれど彼女が他の感覚も伴うようなこのやりかたに、彼女はひどく困惑した。
- 282 名前:8838 投稿日:2005/08/20(土) 00:51:14 ID:XL2hnDVL
- 「……っ……は……あ……!」
瑞希は掻き回され、混乱させられた。この男はいったい何をしようとしているのか。
瑞希は翻弄されながらうっすらと目を開いたが、龍司の顔色からは何も窺い知ることはできなかった。
そして急に、瑞希はあることに気がついた。
龍司は自分勝手に動いているのではなかった。瑞樹が喘いで背を仰け反らせると動きを止め、息をついて我を取り戻した途端また動き始める。
また、瑞樹が痛みに声を上げたときには、更にペースを落とす。龍司はそれらを執拗に繰り返していた。
明らかにこちらの反応を窺っている。
――瑞希は怖気を覚えた。
「やあっ……嫌……こんな……っ……」
ともすれば漏れそうになる喘ぎ声を抑えながら、瑞希は必死に声を絞り出した。何故こんなことをするのか。
自分が楽しみたいならこの前のように、それこそこちらのことなど構わず好きに動けばいいだけのことだ。それをどうしてこんな風に私を追い詰めるのか。これでは、このままでは、私は――
龍司がこちらを見ていた。冷たい目で注視されていることに悪寒が背筋を這い登ってくる。同時に恥ずかしさで体中が熱くなった。彼女は絶望感に喘いだ。
ゆるやかで不規則な抽送に無理やり身体が高められていくのをどうすることもできない。痛みはまだあったが、それを上回る圧倒的な性感が彼女を苛んだ。これでは愛撫されていたときと同じだ。
「はあ……っ……ひぁ……」
また腰を引かれる。またゆっくりと挿入される。内壁の擦れる感触が回を重ねるごとにクリアになっていくような気すらした。瑞希はせめて声だけは聞かせまいと唇を噛んだ。
スローペースな抽送は続いた。恐ろしいまでに徹底された間隔で彼女を責め立てる。瑞希は為す術も無く高みへ押し上げられていった。
「んん……!ん――――…………!」
駄目……駄目!髪を振り乱して彼女は耐えた。
龍司が何故自分の快楽を捨てるような真似をしてまでこんなやり方をしているのか、瑞希には全くわからなかった。
ただ、龍司が彼女の中の大切な砦をまたひとつ崩壊させようとしていることだけはわかった。嫌だ。嫌だ。嫌だ――彼女は心の中で叫んだ。もうこれ以上、私の中に入ってこないで!
次の瞬間、突然動きを変えた龍司の肉棒が、彼女の最奥に叩きつけられていた。
空白が訪れた。
「――――っ!」
瑞希は仰け反った。突然の衝撃に肌が粟立った。同時に、彼女は達していた。
自分でもわからないうちに身体がびくびくと痙攣し、叫びが喉を突いた。そしてその直前、その唇は大きな掌に塞がれていた。
「――――――」
叫びはくぐもった声に変わった。長く続く喉の震え、そして膣に注ぎ込まれる大量の精液に、瑞希は深い喪失感を味わった。
喪失感がゼロになった瞬間、その代わりに爆発するような怒りが胸を灼いた。
気がつくと、瑞希は自分の口に当てられていた掌に、思い切り歯を立てていた。
がり
と嫌な歯応えがして、口の中に血の味が広がった。自分が脅迫されていて本来ならこんなことをしてはいけないということは、瞬間的に頭から吹き飛んでいた。
- 283 名前:8838 投稿日:2005/08/20(土) 00:52:00 ID:XL2hnDVL
- ぼろぼろと涙を零しながら、瑞希は必死に龍司から身体を離した。シーツをかき抱いて身体を隠す。麻痺したようにけだるい下半身を否応無く意識し、彼女は泣いた。
「どうしてっ……」
しゃくりあげながら瑞希は言った。涙のフィルターを通して龍司をねめつける。
「どうしてこんなこと――」
言葉はそこで止まった。
龍司は自分の右手に絡みついた赤い血を無表情に見下ろしていた。やがて顔を上げる。
「自分の唇まで噛んだのか」
言われて初めて、瑞希は自分の下唇がぴりぴりと痛んでいることに気がついた。手で触れると指に血がついてきた。意外に深い傷らしく、かなり痛みを感じる。
「馬鹿だな」
龍司が言った。何気ない言い方だった。だがその響きは何故か無性に瑞希を切なくさせた。
龍司は無造作に手を伸ばしてきた。肩をすくませた瑞希の顎を持ち上げ上向かせる。そのまま引き寄せるようにして、龍司は唇を重ねてきた。
龍司の舌が瑞希の唇の端、傷のある部分に触れた。
「っ……」
生々しい感触と痛み。龍司の舌は丁寧に瑞希の唇から流れる血を舐め取った。ともすれば逃げ出しそうになる身体を必死で押さえつけ、瑞希はその手当てが終わるのを待った。
十秒ほどで龍司は舌を退いた。瑞希の唇を解放すると、龍司はいつの間にか血が滴るほど出血した自分の右手に、今初めて気付いたような顔をした。
「救急箱は無いか?」
「……」
瑞希は答えられなかった。その傷を見て急に、自分は人を傷つけたのだという実感が襲ってきた。相手が誰であれ、瑞希はそれを恐ろしく思った。
「……あ」
口をパクパクさせているうちに、龍司は散らかした衣類の中から自分の上着を探し出してそのポケットからハンカチを取り出し、左手と口を使って巻こうとした。
しかし聞き手を怪我しているため上手く巻く事ができない。
瑞希はしばらくの間何もできず、それを見つめていた。しかし龍司が三度目の玉結びを失敗した時、自分でも気がつかないうちに、瑞希は声を上げていた。
「貸してっ」
ハンカチをひったくると手早く折りたたみ、巻きつける。龍司の手を取りさっと結んだ後、巻きつけたハンカチの端を整えた。
- 284 名前:8838 投稿日:2005/08/20(土) 00:52:31 ID:XL2hnDVL
- 瑞希はそこではっと手を退いた。
「……」
急に恐くなり、瑞希はわずかに身を引いた。私は何をしているんだろう。こんな男に対して――彼女が再び沈黙すると、無表情だった龍司がそこでようやく頬を緩めた。
「サンキュ」
と言うと、返礼のつもりか、彼は瑞希の服を拾ってよこした。瑞希はまた困惑した。服にすぐには手をつけずにいると、龍司は置いてあった時計に目を留めて立ち上がった。
少し慌てた様子で、
「今日はちょっと忙しくてな。もう行く」
手早く服を着込むと彼は座り込んだ瑞希の髪を左手でぎこちなく梳いた。振り払う気力も無かった。
傷ついた右手が視界に入った。
「じゃあな。また来る」
「もう来ないで……」
俯いてつぶやく。龍司の苦笑したような声が聞こえた。目の前の足音は遠ざかって、やがて玄関の扉が開いて、閉まる音がした。
静かになった部屋で、瑞希は虚ろな瞳を上げた。卓袱台の上に目が止まる。
龍司の置いていった小箱があった。
それを見たとき、瑞希は突然、己の内側から急激な怒りが噴出するのを感じた。
それが龍司に対するものなのか、目の前のそれに対するものなのか、あるいは他の何かに対するものなのか、自分でもわからなかった。
目の前の小箱を力任せに掴み、全力で振りかぶる。床に叩きつけようとし――
結局そうすることができず、彼女はのろのろと腕を下ろした。今度こそ気力を使い果たして肩を落とす。
まるで全身の力が吸い取られたようだった。彼女は呆然とその場に座り続けた。
あまりに強く握り締めたせいで少ししわになった小箱は、彼女の憤りなど知らぬげに、その手の中で静かに沈黙していた。
- 285 名前:8838 投稿日:2005/08/20(土) 00:57:02 ID:XL2hnDVL
- 一応文面を適当に変えてみましたが、はて読みやすくなったのかどうか…
余計変になっただけのような気も。
- 286 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2005/08/20(土) 01:10:32 ID:y5gcP0JT
- GJ!
前より読みやすくなった…かな?
自分はあまり気にしない方だからな。
- 287 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2005/08/20(土) 01:14:13 ID:LppQ6S5a
- 起きててよかった―――!
まさに神の仕事だ!
GJ!
- 288 名前: ◆z1nMDKRu0s 投稿日:2005/08/20(土) 01:23:23 ID:+A9WtYk1
- 悪い人キタ━━(゚∀゚)━━!!
文体は読みやすくなったというより臨場感が出てる
もうGJ!!
- 289 名前:SS保管人 投稿日:2005/08/20(土) 02:19:53 ID:OI2auyJ9
- 2chエロパロ板SS保管庫
http://sslibrary.arings2.com/
遅くなりましたが収蔵させてもらいました。
- 290 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2005/08/20(土) 02:27:24 ID:imHa+6VF
- >>289
乙。
前スレいつのまにか落ちたな。これだけ神いるのに・・
和風ものマダー。
- 291 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2005/08/20(土) 02:48:04 ID:LA/tn0Ex
- >>289
乙です。お忙しい中ありがとうございます。
>>290
前スレは容量オーバーだ。寿命はまっとうした。
- 292 名前:ナサ 投稿日:2005/08/20(土) 05:48:15 ID:WX8QsWzW
- ちょっと連絡ありなので今回だけコテ
>龍司
いやいやしながら達しちゃう瑞希たん萌え
段々と悪い男にほだされてゆくのですね
GJ、次の土曜日が楽しみ(イレギュラーも期待)!
>男装少女保管仮サイト管理人様
おつかれさまです!
大変面倒な仕事を引き受けてくださってありがとうございます
直したいところがあれば連絡というお言葉ですが
気になるとこ、という可愛いものどころか
『てにをは』『誤字』『変換ミス』『うっかり』の
オンパレードな俺はもう諦めています
多過ぎるので
多大な労力を費やしていただくのもなんだかなーですので
読んでもらった人に「ここはこうなんじゃないの」と
つっこまれつつニヤニヤされる羞恥プレイを楽しみたいと思います。
ご親切なお言葉ありがとう、どうか無理をせず管理していってください。
>総合保管管理人様
お忙しい中、いいタイミングでありがとうございます
前スレ落ちる直前でしたな
ついでに
ここを覗くのいつも楽しみだ!
- 293 名前: ◆z1nMDKRu0s 投稿日:2005/08/20(土) 07:54:35 ID:+A9WtYk1
- 何? 総合保管庫にまで保存されたの?
なんかもう嬉しくて泣きそう
- 294 名前:実験屋 投稿日:2005/08/20(土) 08:32:58 ID:VfmwPtKB
- 「職人様GJ!!!・・・・・っと。」
今日も日課であるエロパロ板の閲覧を堪能し”グゥレイト”な職人様方に
感謝のGJ!!を送る。
俺の名前は山崎狂介(17)。ケンカと萌えをこよなく愛し、同性愛にも
多大な理解のある健全なオヤジ系高校生である。
今晩も沢庵をツマミにし麦茶を片手にネットサーフィンと洒落込もうと思ったその時・・・。
「なにやってんの?」
「!!どぅわぁぁぁぁ!!!!ビックリした。・・・・有紀!!」
俺の真後ろに幼馴染みでマブダチの南有紀が立っていた。
「そんなに驚かなくても。」
「黙れこのカスボケ!!死ぬかと思ったじぇ。つーかなんでココにいるのだ?」
「えっ?普通に玄関から入って・・・」
「そーじゃねえ!!何で勝手に人のウチに入って来てるかを聞いてんの。」
「インターホンを何十回も押しても返事が無かったけど何か問題でも?」
「・・・・・スイマセンデシタ。」
「わかればよろしい。」
そう言うと有紀はニコッと男にしては可愛過ぎる笑顔を俺に見せた。
- 295 名前:実験屋 投稿日:2005/08/20(土) 08:34:31 ID:VfmwPtKB
- 「!!」
「狂介?・・・どうかした?」
急に顔をそらした俺に不安そうになる有紀。
これがココ最近同性愛に理解をもってしまった原因である。
『男である有紀に惚れてしまったのだ。』
有紀との付き合いは結構長い。俺が五歳の頃に有紀の家族が隣に引っ越してきて
それからの付き合いである。しかも、父親同士が大学時代にイケメンツートップ
でニャンニャンなキャンパスライフを送っていた親友らしく、家族ぐるみの付き合いが
多く、有紀と俺はマブダチと呼べる間柄になっていった。
しかも、幼稚園、小学校、中学校、高校と15年近く同じクラスでもある
腐れ縁である。ここまで来ると何かの陰謀を感じる・・・恐らくは政府の陰謀に違いない。
- 296 名前:実験屋 投稿日:2005/08/20(土) 08:36:01 ID:VfmwPtKB
- 『何故に有紀?男だぞ?』
『おれってそういう趣味があったのか?』
『801・・・・・矢追・・・UFOスペシャル・・・』
ってなカンジでしばらくは、この訳の分かんない気持ちを
どう落ち着かせるかで悩みに悩んだ。結果、アレ系のコミックアンソロジーに
手を出して『愛に性別は関係ない』の境地にたどり着いた。
・・・・分かってますよ。危険な橋を壊しながら歩いた事くらい。
「大丈夫?もしかして具合悪い?」
「あっ・・いや・・・何でも無いから。」
「そう。ならいいんだけど。」
完全に呆けていた事を思い出し俺は我に返った。アブネェ×2なんか誰かに
俺の自己紹介や過去の話をしてた気分だ。
「ところで狂介、パソコンつけて何見てんの?」
そういいながら四つん這いでこちらを覗き込んでくる有紀。
オイオイなんて無防備なんだ。俺が良識あるティーンエイジャーじゃ
なかったら今頃お前はキズモノだぞ。
そのきれいな黒髪、潤みがかった瞳、華奢な身体。タマランっすわ。
そういやパソコンでなにしてたっけ・・・ってづfぎdヴfかくバッホォォォィィィ!!!!
- 297 名前:実験屋 投稿日:2005/08/20(土) 08:37:18 ID:VfmwPtKB
- 「なになに・・・エロパロ・・・男装・・・・・・。」
「見るなぁぁぁ!!!」
慌てて有紀をパソコンから遠ざける俺。そのスピードたるやシャアの3倍はあった。
「こ・・これはだな・・その・・・・なんていうか・・・・保健体育?」
たとえ同性であっても好きだと自覚した相手にこのような自分を見せるのは
抵抗があった。
一応は硬派で通してたんですよ俺も。
「・・・・・・・・・。」
有紀は何も言わずにただ俯いていた。
(お前もエロいな〜)
(こういう趣味があんのか。夢の見過ぎだよ!!)
とかからかわれる物とばかり思っていた俺は有紀に声をかけてみることにした。
「おい、ゆう・・・」
「狂介。」
「はいなんでしょう!?」
逆に声をかけられ敬礼しながら返事をしてしまう俺。俺って自覚してる以上にヘタレなのか?
しかし、次の有紀の一言に俺はヘタレの自問自答を解除した。
「こういうの・・・・スキ?」
はい?
- 298 名前:実験屋 投稿日:2005/08/20(土) 08:38:53 ID:VfmwPtKB
- 「あの有紀さん?それはどういった意味でしょうか?」
なぜか敬語で質問してる俺。無様だな。
「その・・・だから//////」
「だから?」
「男装してる・・・女の子に・・・・興味?//////////」
顔を真っ赤にして話しかけてくる有紀。
有紀って下ネタとか苦手じゃなかったはずなのに?
他の友達と「近未来警察072のオカズは何か?」について話していたとき
(誰でもイケます)
と爆弾発言かましてくれたんだけどなぁ。なにかあったのか?
「興味というか・・・そそられる物はあるよな。なんかグッっとくるっていうか。」
なんか力説してるし俺。バカだな〜我ながら。
「///////////////」
「・・・・・・・・」
このままじゃ埒があかない。そう思った俺は再度声をかけてみることにした。
「ゆ・・・・!!」
声をかけようとした瞬間、有紀は俺の手首をいきなり掴んできた。
「おい有紀?ほんとどうしたんだ?」
有紀は上着のボタンを外し開いた隙間から掴んでいた俺の手を押し込んでった。
- 299 名前:実験屋 投稿日:2005/08/20(土) 08:40:31 ID:VfmwPtKB
- 「ちょ・・おま・・・」
いくらなんでもおかしいぞ。もしかして有紀にもその気が・・・・なんていってる場合じゃない。
この状態から抜け出すために掴まれた手を動かし出した。
しかし、手首から掴まれてる今の状態では胸を揉むような動きしか出来ずに・・・・
ムニュ
「ムニュ?」
何だこの暖かくて柔らかい物体は?待て待てこの感触、思い当たるものが
あるけど、それってもしかすて・・・・・・えぇぇぇーーーーーーー!!
「お・・・・・おっぱい?」
「ウン・・・・僕、女の子なんだ。」
「なんディすっトゥェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェ!!!!!!」
ふんだんにオンドゥル語が使われた俺の絶叫が夏の夜空に鳴り響いた。
- 300 名前:実験屋 投稿日:2005/08/20(土) 08:42:20 ID:VfmwPtKB
- 「女って・・・あの女だよな?」
「そうだよ。狂介国語がおかしいよ。」
「んなのどうでもいい、お前が女なんて聞いてねぇぞ!!」
「//////だって言ってなかったもん。」
そう言うと有紀はプゥっと頬を膨らませて訴えるような視線を向けてきた。
「グハッ!!」
その視線に完全に俺は打ちのめされた。鼻の奥から鉄分の香りがする。
よくよく考えてみた。有紀は小さい頃から皮膚病とか言ってプールには
絶対入らなかった。身体測定だって欠席者が受ける予備日にいつも受けていた。
中2くらいから周囲の男子に比べて成長というものが見られず女のような体つきと
よくからかわれてた。(実際女だったわけだし。)
気づこうと思えば気づけたよな、特に最近は釘付けだったのに・・・・。
あぁ・・・・・・・俺ってバカじゃん。17年生きてて初めて知ったよ。
「イタッ!!」
「あっ!!悪りぃつい・・・」
「ううん・・・・いいよ。」
考え事していた俺はつい強く有紀の胸を掴んでしまっていた。
「でも、何で男装なんて・・・しかも俺に言って・・・良いのか?」
俺は思ったことを口にした。男装してる理由もだけど、ガキの頃から
してるくらいだしよほどの事情があるんだろう。
そんな秘密、男装スレを見ていたとはいえ話すか普通。
- 301 名前:実験屋 投稿日:2005/08/20(土) 08:43:57 ID:VfmwPtKB
- 「男の子の格好してたのは・・・・・昔、狂介の隣に引っ越して来る前
に住んでいた町でヘンなオジサンに襲われそうになった事があったから・・・。」
「何?」
さっきとはうって変わって青ざめた顔をする有紀の話は聞きながら
俺はかすかな、しかし激しい怒りがこみ上げてきた。
「その人、その町でもかなりの危険人物で気に入った子を見つけては
乱暴したり、・・・・その・・イヤらしい事をしたりして・・・」
「有紀も何かされたのか?」
「・・・僕は大丈夫。通りかかった人に助けてもらったから。」
「・・・そうか。良かった。」
本当に安心した。イヤらしい事をするということは有紀にだって・・・・
そんな考えが頭をよぎったからだ。
「でも・・・僕、怖くなっちゃったんだ男の人の事。」
「え?」
「乱暴してくる男の人は嫌い。見たくない。近づきたくない。そう思うようになったの。
パパもママも心配してパパの友達だって言う狂介のオジさんのいる町に引っ越して
僕の為に・・・僕があの事を忘れられるようにしてくれたの。
男の子の格好したのも女子のよりは安全だろうと思って・・・・。」
そういえば始めてあった頃、有紀は俺やオヤジに対してかなり怯えていた。
徐々に消えていったが俺が近づくたびにガタガタと震えていた。
「そういうワケね・・・。」
「ゴメンね・・・・黙っててゴメンね。」
有紀を見る。有紀はまるで始めてあった頃のように怯え震えていた。
- 302 名前:実験屋 投稿日:2005/08/20(土) 08:45:18 ID:VfmwPtKB
- 「怖かったんだ・・・・狂介のことも・・・ゴメンナサイ。」
「イヤ構わんさ。事情が事情だし。」
「ありがとう。」
有紀の顔に少し元気が戻ってきたようだ。
「でもね!!僕が男の人を怖く無くしてくれたのは狂介なんだよ。」
「え・・・。」
「狂介はいつも優しかった。僕と遊んでくれた。狂介から逃げてばかりいたのに
狂介は怒らなかった・・・・嫌いにならならないでいてくれた////////」
「有紀・・・。」
言っていて恥ずかしいのだろう顔が赤い、ユデダコもびつくりだ。
「本当は女だってもっと早く言いたかった。でも、言ったら嫌われると思ったから。」
「なぬ?」
「『何で黙ってたんだ!!』、『騙してたのか?』って。狂介は・・・・優しいけど
隠してた事言ったら今度こ・・・そ嫌われる・・・と思っ・・・・て」
最後の方は会話になっていなかった。・・・・・有紀が泣いてる。
「ヒック・・男装してるの・・・スキだって言うから・・・・ヒック
言っても良いか・・なって・・・。お願い狂介・・・・・。」
「 キライにならないで 」
- 303 名前:実験屋 投稿日:2005/08/20(土) 08:47:08 ID:VfmwPtKB
- 「有紀!!」
俺は有紀を抱きしめていた。そうしないと有紀が消えてしまいそうだったから。
「狂介。」
「嫌いになるはず無いだろ。・・・・俺はお前が好きだ!!愛してる!!」
「狂介・・・ホントに?」
「ウソ言ってどうするよ。ただ男を好きになるなんて変態扱いされそうでさ・・。」
「俺だって怖かったんだよ。」
「狂介・・・・・ウレシイ。」
「ちなみにお前はどうなんだよ?俺の事どう思ってるんだ?」
まぁ分かりきってるけど確認の意味も込めて聞いてみる事にした。
「スキ・・・・僕、狂介のこと大好きだよ!!」
「有紀!!もうゼッテェ放さねぇからな。」
「キョウスケェェ・・・クッ・・フェェェェェェン!!!」
大声を上げて泣きじゃくる有紀を抱きしめて俺は思った。
前略オフクロ様・・・・・・・・・俺ホモじゃなかったっす。
しかも両思い。
おまけにラブラブ。
- 304 名前:実験屋 投稿日:2005/08/20(土) 08:55:30 ID:VfmwPtKB
- はじめまして実験屋と申します。
結論から言いますと、スイマセンデシタ。
初書きで汚いし、内容が破綻していると思いますので
スルーしていただければ幸いです。
エロは次回から投下します。どうも、スレ汚しスンマセンでした。
- 305 名前: ◆z1nMDKRu0s 投稿日:2005/08/20(土) 09:23:59 ID:+A9WtYk1
- なにこのかわいい幼馴染み
つーかあんた何故俺のツボを知ってる?
いやぁ、最近は神が良く来るなぁというわけでGJ!!
- 306 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2005/08/20(土) 09:40:35 ID:YDhFnIPi
- >>304 ごめんね。最初に謝っとく。
アナタの場合、文章をもうちょっと勉強してから投下してくれたほうがいい気がするな。
>初書きで汚いし、内容が破綻していると思いますのでスルーしていただければ幸いです。
って、分かってるならちゃんとした文章を作ってから投下して欲しい。
じゃないと、言い方は悪いけどスレの無駄遣い。
書きたいから書くってのも大いにいいのですが、人に見せるために書くっていうのも忘れないでください。
- 307 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2005/08/20(土) 09:49:59 ID:Uvm2l2+q
- キターーーーーーー!
GJGJGJーーー!
- 308 名前: ◆z1nMDKRu0s 投稿日:2005/08/20(土) 11:39:46 ID:+A9WtYk1
- >>306
まぁ初めてだしそんなに追求しない方が良いとオモ
多くの人に読んでもらいたいからここに投稿してるんだと思うし
そのうち良くなっていくでしょう
ただもうちょっと文章慣れた方が良いと思う
以上推敲しないバカ職人のチラシの裏
- 309 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2005/08/20(土) 14:05:13 ID:TCSQT1Ah
- 話自体は面白そうだと思う。
でも「////////////」はやめてほしい。
- 310 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2005/08/20(土) 17:59:06 ID:LppQ6S5a
- 導入部分なんかうまいよ。
一瞬感想のレスかと思ったw
この軽さ、すきですよーGJ!
- 311 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2005/08/20(土) 18:10:48 ID:lbA6TiAq
- うわ、続々と神が…。皆さんGJです。
しかも保管庫までとはまた凄いです。この流れに乗れないのが口惜しい…。
私も明日の夜には帰れるので、それまでこの携帯で少しでも続きを書かないと…。
保管庫に載せられるにふさわしい職人目指して、私も次こそは萌えエロ展開目指して頑張ります。
- 312 名前: ◆z1nMDKRu0s 投稿日:2005/08/20(土) 18:22:42 ID:+A9WtYk1
- 前スレで一番印象に残った言葉を>>311に捧げる
当店は誰でもウェルカム
- 313 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2005/08/20(土) 18:35:22 ID:PsAhaqWC
- でもマンセー感想やGJだけの反応じゃなくて、どこがよくてどこが悪かったのかも書けば職人も切磋琢磨できるのにね。個人の好みは別にして。
- 314 名前:実験屋 投稿日:2005/08/20(土) 18:45:01 ID:VfmwPtKB
- ご意見いろいろ頂き本当に感謝です。
努力して精進してまいります。
エロ編の続きが6割方出来ているのですがご期待にそえるよう
修正し投下させていただきたいと思います。
- 315 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2005/08/20(土) 19:41:56 ID:ecFzP5cE
- 隣の若奥さんが肉じゃがのお裾分けを持って来てくれて、
それを批評するのかい?
- 316 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2005/08/20(土) 19:56:26 ID:Yb+qQvDn
- まあ、肉じゃがとはまったくの別物だろうがなw
好きくない作品はスルーってことでいいのかも。
煽りは荒れる原因になるしね。
- 317 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2005/08/20(土) 20:02:00 ID:ZW7X0HV4
- >>315 食えた物じゃないなら次から断っても仕方ないと思うが。
- 318 名前: ◆aPPPu8oul. 投稿日:2005/08/20(土) 20:40:00 ID:LA/tn0Ex
- >>314
ノリは楽しく萌えもあって楽しく読ませていただきました。
エロ編楽しみにしてますよ。
>>315
ありがたくいただくが次回は遠慮するな。
本来は断り方に大人の処世術が活きるんだろうが、スレ住人はお隣さんではないからいくらでも好きなように言える。
ただ断り方によって疎遠になるのは同じかなw
マンセーレスだけでは成長しないっつーのは事実だろうな。
というか、批評は是非いただきたい。
…とか言っておいて次の投下がいつになるかわからないコテでしたノシ
- 319 名前:ナサ 投稿日:2005/08/20(土) 22:47:47 ID:WX8QsWzW
- >312
>当店は誰でもウェルカム
同意
そういうわけで空気を読むのが面倒な俺が前半を投下。以下次号。
- 320 名前:婚前旅行1 投稿日:2005/08/20(土) 22:48:46 ID:WX8QsWzW
- 夕闇には、春よりも残りの冬の気配が強かった。
新しい季節の香気濃厚な王都に比べ北の街のそれは、ほんの顔見せ、といった油断のなさを抱えている。
街の門も閉じたというのに大通りを行き交う衣装は様々で、その中には裕福そうな市民の姿が幾人も目につく。
王国の北部南に位置するここグノールは、商業の発達した交通の要衝の街だ。
*
すり減った石畳に硬く響く蹄鉄の音もさして耳にたたぬ雑然とした狭い通りだった。
駆けていく子供、荷物を抱えて急ぐ女、どこかに戻るか行くかしている、肩を並べて談笑している男たち。
彼らの一部が吸い込まれていく、灯りの漏れる、酒場を兼ねているらしき食堂、地下の厨房から漂いのぼってくる旨そうな匂い。
店じまいをしている花屋からほのかに流れる饐えた水と傷んだ花の匂い、目立たぬ路地への壁に背をもたせかけている早出の街娼らしき女たち。
たぶん、もう少しすれば饐えた酒や新鮮な吐瀉物の匂い、酔っぱらいの言い争いや歌などである意味もっと賑やかになりそうな裏通りである。
横切ってきた表通りからも、建物の厚みを抜けて人いきれと賑わいがうっすらと届いてくる。
この先に本当に宿屋があるのだろうかと訝しく思いながらも前を行く騎手にあわせて手綱を緩める。
と、ゆるい曲がりの途中に穿たれた路地の手前に、小さな灯火を出した入り口が見えた。
馬を停止させ、その背で振り向いた若い男──に、一見、みえる──がサディアスに笑いかけて来た。
「あァ、あったあった。五年たってもまだ潰れちゃいなかったぜ」
「うむ、たいした記憶力だ」
さすがに副長は頼りになる、──と考えかけてサディアスは苦笑した。
もうクロードは副長ではないし、かくいう自分とて三日前、隊長を辞してきたはずなのに長年の習慣とは根強いものだ。
北部駐屯軍連隊長を拝命した彼が、任地エデュに向かうために王都を発ったのが昨日の朝。
同じく北部の故郷サラシュの街に戻って家業を継ぐという副長と重なった衛兵長の辞任を、複雑(?)な事情を何も知らない衛兵たちはさかんに惜しんでくれた。
サディアスの推薦で新衛兵長になったジョンが、自ら都の外れまで見送ってきた。
「連隊長に、とは非常におめでたい限りなのですが──今後都でお見かけすることが少なくなると思うと、ひどく寂しくなりますよ」
その言葉とは裏腹にやる気満々に顔を輝かせるジョンの肩を、サディアスは大きな拳でこづいた。
「嘘を吐け。これで都が広くなると皆が祝杯をあげたのを、俺はちゃんと知っているのだ」
傍らの元副長はぷっと吹き出し、こづかれた当のジョンも、すかさず顔をひきしめたが口元は緩んでいた。
背の高いジョンを、サディアスはさらに上回っている。
たぶん、彼ほど巨漢の衛兵長は今後もなかなか王都には現れない事だろう。
*
馬の背から飛び降りたクロードが扉を叩いて、宿の主人とてきぱきと交渉を始めた。
「──そう、一晩だけだ。食事は──」
振り返った。
「何か特に注文したいモンあるか?衛…、じゃねえや。サディアス?」
「適当に見繕ってもらえればそれで良い」
馬から降りたサディアスを見あげ、さらにもう少しだけ見上げて、宿の主人は驚いた顔になった。
心なしかクロードへの物腰も一段丁寧なものに変化した。
元衛兵長の巨体を初めて見た大概の善良な一般市民の典型的な反応である。
いつもの事だから気にもならない。
サディアスは二頭の馬の手綱を馬繋ぎに纏め、見るともなく前金を払っているクロードを眺めた。
彼、いや彼女の横顔はきりりとしていてどう見ても若い男のはずだったが、小さな戸口の灯りに浮かび上がったその輪郭はいつもより柔らかく見えた。
正体を知っているサディアスが見るからそうなのか、それともクロードの表情そのものが穏やかになったのか。
だが、宿の主人は何の不審も感じてはいない素振りで腰の鍵束を探った。
「ではこれを──二階の階段をあがって左手の突き当たりでございます。お馬はご安心ください、裏庭の馬小屋へ──」
「水と飼葉をたっぷり頼むぜ」
クロードが念を押した。
「明日も走ってもらうんだから」
- 321 名前:婚前旅行2 投稿日:2005/08/20(土) 22:50:48 ID:WX8QsWzW
-
宿の食堂で野菜と肉のごった煮とパンに安いワインという簡単な食事を摂り、元衛兵の二人は部屋を出た。
階段までの狭い廊下で、食堂や外に向かうらしき商人や学生のような若い男たちにすれ違う。
あちこちの部屋の木の扉越しに声高に喋る会話の断片が響く。
小さな宿だが、なかなかはやっているらしい。
「俺が泊まった時よか繁盛してらぁ」
クロードが呟いた。
「よく子供一人だけのお前を泊めてくれたな」
サディアスが言う。家出して都に向かう五年前なら、クロードはまだ13か14のはずだ。
「金は持ってたからな──そういや、家戻ったら、親爺にあの金返さなきゃ」
彼女は笑った。
サディアスが踏む一足ごとにわずかに軋む階段をあがって行き着いた部屋は、掃除は行き届いてはいるものの、特に特徴というもののない、平凡な造りの部屋だった。
…というと少しだけ嘘になる。
部屋そのものはごくごくありふれた見栄えなのだが、奥にひとつだけ据え付けてある木製の寝台は広々とした贅沢な面積を誇っていた。
大の大人が四人一緒に寝転んでも、おそらく悠々と眠る事ができるだろう。
こういう宿に泊まる旅人は、たとえ見ず知らずでも同室になった場合は同じ寝台に眠る事を、貴族出身のサディアスでも知っている。
その事自体は常識であり、だからこんなばかでかい寝台があっても不思議でもなんでもない。
ただ───。
「……す、すごい寝台だ、クロード」
サディアスが振り向くと、入り口脇の壁の窪みに蝋燭の皿を置いていたクロードは口を尖らせた。
「代金も高かったぜ──いっとくがな、俺が頼んだんじゃねぇよ。あんたの図体見て、宿の親爺が気ィきかせたんだ」
さもあらんと納得し、サディアスはマントを外した。
衛兵の頃とは違い、漆黒の上着ではなく灰色の旅装束を着ている。
「だが。──俺と同じ部屋で良かったのか。や、やはり一応結婚前は別の部屋──」
クロードは顔を顰めた。顰めてもやはり整った顔立ちである。
「勘弁しろよ、子爵家の坊ちゃん。どう見ても男二人連れなのに、わざわざ、ンな変わった注文つけられるわけねぇだろ」
確かに、かえって怪しまれるかもしれない。
細身で白い綺麗な顔だちだが、短い黒髪の、頭のてっぺんからつま先まで男のいでたちの彼女を眺めてサディアスはまた納得した。
かつてのサディアスが全く違和感を感じなかったように、先入観というものは恐ろしいほど観察力を奪うものだから──
───いや、彼の場合はそれ以上に、個人的にも単純で鈍感という弱点を抱えているのだが。
「それも、そ、そうだな」
クロードが王都を出た今でも男の格好をしているのは、そのほうが旅がしやすいからという彼女の主張による。
双方ともに元衛兵で腕に覚えはあるものの、面倒を避けるのにはいいと思って同意したのがまずかった。
……………いや、良かったのだろうか。
昨日は初日だという事もあってついついと距離を欲張り、うっかり予定の街を過ぎて夕刻を迎えたため、次の街から閉め出されて野宿した。
一日中馬を走らせて疲れた二人はマントを躯に巻き付けるやいなや熟睡し、きちんと宿に泊まるのは今夜が最初である。
今日もよく馬を走らせ、疲れた。
疲れるには疲れたが──。
だが、
早晩ちゃんとした宿に泊まることは旅に出る前から判っていたことであり、
しかもサディアスは元副長の彼女とは二ヶ月ほど前から密かに婚約をしていることでもあり、
単純だろうが鈍感だろうがお人好しだろうが間抜けと呼ばれようが立派に男であるということもあり、
正直この宿についてから、サディアスはわくわくとしっぱなしである。
もともと、いかつい顔に感情を出さない性質の上、王室付き衛兵隊の長というお固い職についていたためなおのことその技倆には自信があった。
しかしこうして好きな女と同じ部屋に入って、おあつらえむきの寝台を目の当たりにすると早くも興奮がピークに達しそうである。
……だが、部屋に入って三分とたっていないだろうにいきなり押し倒すのも女性に対していかがなものか。
クロードだってその気だろうし、自分だってもちろんだが、あまりにもがっつくと罵られそうだし、かといって──。
でかい図体に似合わず一旦悩み始めると妙に考えこんでしまう傾向のある元衛兵長は眉をよせた。
- 322 名前:婚前旅行3 投稿日:2005/08/20(土) 22:51:19 ID:WX8QsWzW
- 横目で窺うと、クロードはふわふわと、あくびをしている。
「つ、疲れたか?」
「ああ、うん。一日中馬に乗ってたし。それに夕べ野宿だったろ、あちこち躯痛くてさぁ」
クロードは首を傾け、拳でとんとんと肩との境を叩いた。
マントと襟の隙間から短い黒髪のこぼれる柔らかそうな肌が覗き、それを見たサディアスはこっそりと唾を呑んだ。
…ここで、では自分が肩を叩いてやろうと申し出るのはあまりにも下心があからさまであろうか、と彼は考えた。
「あー、痛て」
知ってか知らずかクロードは反対側も同じように叩いて腕をあげ、両肩を何度も上下させた。
サディアスを見上げてにこっと笑う。
笑うといつも、いきなり花が咲いたような鮮やかな彩りが白い顔にうまれて、彼女は、実に『綺麗な娘』になる。
サディアスはまた、こっそりと唾を呑み込んだ。
「あんたも躯、痛くない?ちょっとだけ揉んでやろっか」
「う、うううう、……いや、うむ」
サディアスは顔色を変えず、重々しく頷いた。
「じゃ、その上着脱いでうつぶせになりな」
クロードが指差した先はサディアスが部屋に入った瞬間からそればかり気にしていた、ばかでかい寝台だ。
「あ、ああ。わわ、わかった」
クロードに背を向け、彼は急いで寝台に向かった。図体に比して脚も長いので部屋の奥まで数歩で到着する。
腕に巻いていたマントを放り、衛兵になる以前から持っている剣を帯ごと外し、そそくさと上着を脱いでおとなしくうつ伏せになる。
さすがは特大の寝台、彼が上に載ってもびくとも揺るがない。場違いにも少し感心する。
うつぶせということは、最初に肩を揉んでくれるのか。それとも腰か。
クロードがさっさと近づくかと思っていたが、なかなか来ない。
「クロード、ま、ままだ、こここ来ない、のか?」
「…あんたってさ」
部屋の隅からクロードの、少し疲れたような声がする。
「ほんっと、正直にその癖が出るよなぁ…」
「す、すまん…ああ、え、な、なにが?」
自分が緊張したり照れたりするとどもる癖は知っている彼だが、今現在そうである事には気付いていない。
気付く余裕がない。
「…ううん」
急にクロードの声が柔らかくなった。
「ちょっと待ってて」
部屋の隅の椅子の傍らで彼女はそっとマントを外し、上着を腕から滑らせてブラウスのボタンに手を置いた。
うつぶせたままのサディアスの背中に微笑みかけて、繊細な指でボタンを次々に外していく。
鎖骨から胸への肌が見えかけてきたその時。
扉を叩く音がした。
- 323 名前:婚前旅行4 投稿日:2005/08/20(土) 22:51:58 ID:WX8QsWzW
- *
クロードはびくんとして固まった。
一旦静かになった扉は、続いて少し苛立たし気に何度も叩かれた。小さいが、間隔の狭い鋭い音だ。
彼女は急いで喉元までボタンをかけ直した。
「……だ、誰…かな?」
この街に知り合いはいないし、宿の主人ならば宿代はすでに払っている。迷惑行為もしていない。
「待て、クロード。俺が出る」
いずれにしても、強面の自分のほうが対処も楽なはずだと彼は思った。
サディアスは身軽く寝台から降り、部屋を横切ると扉を細く開けた。
わずかに開けた隙間からにゅっと、白く細い腕が差し込まれた。
床の近くには細く尖った靴のつま先が同時に割り込み、それを潰すわけにもいかなくなったサディアスが押し込まれるままに扉を開くと、そこには一目で世界最古の商いをしているとわかる女が立っていた。
脱色したと思しき渦巻く髪の襟もとをスカーフでまとめ、豊かげな胸を申し訳程度に覆っている外套。
おそらく外套の下も、布地よりは肌の露出が多いに違いない。
年はサディアスより少し下くらいか。街の女にしてはなかなかの美形だ。
女はいかつい顔の巨漢を挑発的に首を傾げて見上げると、赤く塗った唇に微笑を浮かべた。
「…まだ宵の口なのに、もうお休みかい?随分おとなしい旦那だこと」
女は片足にかけていた体重を移動させ、部屋の中に入りたげにした。
だがサディアスが微動だにしないのでそれはうまくいかなかった。
「長旅で疲れておるのだ。扉を閉めさせてくれ」
サディアスは平坦な声で言った。
何の用だとは聞かない。話がややこしくなるだけだ。
女は不満げに、濃くひいた眉をあげた。
容姿に相応しい自信があるのに、馬小屋の柱でも相手にするようなサディアスの声が気に入らないらしい。
「疲れててもやるこたできるだろ、……ああ、ほぅらね」
ちら、と視線をサディアスの股間におとし、女は余裕とわずかな蔑みの笑みを浮かべた。
ズボン越しにでもわかる徴を見つけたらしい。
ただ、これはクロードをすでに頭の中で組み伏せていたための結果に過ぎないのだが。
「その躯に似合う立派な品かどうか、あたしにゆっくり品定めさせておくれよ」
「生憎だが、それはできぬ」
サディアスは眉をしかめて大きな掌をあげ、股間へのぶしつけな視線を遮ろうとした。
「申し訳ないのだが、早々にひきとってくれ」
「なんだい、かっこつけやがって。もういいよ。ちぇ、見てくれだけの不能野郎」
唇を歪めて吐き捨てると女は伸び上がった。
部屋の中を覗こうとしている。
「邪魔だよ、どきな。もう一人の若い騎士さんはどこさ。ほら、一緒に馬できた、顔の綺麗な」
クロードのことを知っているという事は、ここに来る途中、通りにたむろしていた女たちのうちの一人らしい。
こういう裏通りの宿ではたまにこういう事がある。
客を物色し、成立次第で宿の主人に金を払う女はどの街にもいた。
「女」
サディアスは言った。
「悪いが今は──」
「出てけ」
後ろからぴんと張った糸のような声がした。
- 324 名前:婚前旅行5 投稿日:2005/08/20(土) 22:52:50 ID:WX8QsWzW
- 振り向くと、ブラウス姿のクロードが頬を赤くして女を睨んでいる。
腕を躯の前で組み、彼女は続けた。
「出てけよ、早く」
「な、なんだよ。つれないね」
女は少々ひきつった笑みを見せた。どうもこの部屋の男は冷たいとでも思っているのかもしれない。
クロードはかすかに顎をあげ、目を細めて微笑を浮かべた。
サディアスはこの微笑を何度も何度も見たことがある。
副長時代、使えない、もしくは気に入らない部下に皮肉を言う時、よくクロードはこんな顔をした。
「間に合ってるよ」
クロードがゆっくりと言った。
「え?」
女が瞬きをした。
クロードは、突っ立ったままの元衛兵長を目顔で指してみせた。
「今、そいつが言っただろ。……取り込み中なんだよ。わかるか?」
サディアスは天井を仰いだ。
「…………え」
女は目を丸くして、サディアスとクロードに忙しく視線を動かした。
最後に、目の前の巨漢の股間をじっと眺め、彼女は顔を赤くした。
「…………………。……邪魔したわね」
女は外套の襟をしっかりと合わせると、急いで扉の向こう側に足をひっこめた。
サディアスが閉じると、扉の向こうで小さく「変態!」と毒づく声が聞こえた。
*
念のために扉の差し込み錠を入れたサディアスが振り向くと、クロードの頬は一段と赤くなった。
「なんだよ。文句あるのかよ」
「ない。ないが……。完全に誤解をされたようにも思える」
「別にいいよ。どーでも」
クロードは腕を解き、巨漢の表情をじろじろと眺めた。
サディアスは溜め息をついた。
「それはそうだが」
「それともさ。あーゆー顔、好みかよ」
「いや」
サディアスは今の女の顔を思い出そうとしたが、なかなか美形だったという事以外は思い出せなかった。
「…覚えてない」
「嘘吐け。…………金髪だったな」
サディアスは慎重に彼女を眺めた。どうも金褐色もしくは金色の髪の女とサディアスが関わると、クロードの機嫌は微妙に悪くなる。
「あれは、おそらく脱色したもののように見えたが」
「きっちり見てやがンじゃねーかよ」
クロードは眉を吊り上げた。サディアスの視界から見えるのは女の頭が主だという点を忘れている。
- 325 名前:婚前旅行6 投稿日:2005/08/20(土) 22:53:50 ID:WX8QsWzW
- サディアスのズボンに視線を落とし、クロードは視線をちょっと逸らした。
「…………ふぅーん」
はっと気付いてサディアスは慌てた。
「ち、違う。これは」
「いいんだよ。金髪の美形の、いかにも女って感じの女はいいよなぁ」
とんでもない誤解をされているような危険を、いかな鈍感なサディアスでもひしひしと身に感じる口調である。
「肩揉んでやるのやーめた」
クロードは膨れっ面で呟き、さっさと寝台に向かうと毛布を跳ね上げた。
きっ、とサディアスに向かい、反対側の端っこを指差して言い捨てる。
「俺、こっちで寝るから。あんたは向こう。絶対に近づいてくんなよな」
「ふ、服を着たまま眠るのか?」
サディアスは情けない声で言った。
クロードはじろりと彼を睨んだ。
「当たり前だろ。男同士なんだから」
そのまま毛布の中に潜ってしまったクロードの背を眺め、サディアスは股間を見下ろした。
「………………」
深い溜め息をつき、のそのそと寝台に向かう。
いっそのこと床にでもふて寝したいが、野宿の後の寝台の魅力は捨てがたい──というよりも。
クロードの気が変わる事を願いつつ、彼は寝台の端っこに図体を縮めて丸まった。
どうやら今夜は眠れそうにもなかった。
- 326 名前:ナサ 投稿日:2005/08/20(土) 22:55:21 ID:WX8QsWzW
- じゃあまた後日!
>狂介
後半がんばろーぜ!
エロに入ると楽しいよな
- 327 名前: ◆z1nMDKRu0s 投稿日:2005/08/20(土) 23:09:36 ID:+A9WtYk1
- うぉぉぉぉぉぉぉ!!!!
ナサ神キタ――――(゚∀゚)―――!!!
ヘタレサディアスがクロードと心も体も棒一本でつながることは出来るのか!!?
楽しみにしております!!
- 328 名前:8838 投稿日:2005/08/20(土) 23:56:57 ID:XL2hnDVL
- 遅くなりましたが、エロパロ総合保管庫の管理人様
大変ありがとうございました!ほんとうに感謝です。
>>実験屋さん
GJ!かわいくていい。続き待ちー。
そしてナサ氏キター
また氏のSSが読めるとは幸せです!サディアス……orz
- 329 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2005/08/21(日) 00:05:20 ID:IP1ZdwZ/
- ナサ神様が帰ってきたー!
期待通りのヘタレ衛兵長3段活用。モエス ワロス カワイソス
男装倉庫管理人より業務連絡。
狂介有紀タン実験屋さまと>>38=88の土曜日エロリ作者さま、
今のところタイトル不明で収容していますが、仮でもいいので
(後からいくらでも変更に応じます)タイトルキボン。
1作品だけならそれも特徴としてアリかと思うのですが、
お二方とも作者カラーが強い作品だけに、ダブリはもったいねっす。
それと>>328=38=88さまの名前は、「8838」に変えた方がいいですか?
- 330 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2005/08/21(日) 00:15:20 ID:QZJ5sQSU
- クロード (*´Д`) '`ァ,、ァ
- 331 名前:実験屋 投稿日:2005/08/21(日) 00:17:00 ID:U5czsPnf
- 続きが完成したので投下します。
−−−−−−−−−−−−−−−
「もう大丈夫か?」
「ウン。」
10分以上泣きはらした後、嗚咽も収まった有紀は
赤く上気した頬を俺の胸に擦り付けてきた。
「ねえ、狂介。」
「どうした?」
「あのね・・・・僕のコト抱いてくれない?」
「えっ!!」
突然の大胆宣言に俺はうろたえた。肝心な時にノミの心臓な自分に
腹ただしく思いながらも意を決し答えた。
「いいのか・・・俺で?」
「狂介じゃなきゃイヤだ。狂介がいい。」
その言葉に俺の心臓が高鳴り頭から理性を奪った。
「有紀!」
俺は有紀を抱き締め押し倒した。
- 332 名前:実験屋 投稿日:2005/08/21(日) 00:18:39 ID:U5czsPnf
- 「狂介ぇ・・・・」
か細く震える有紀の唇に自分の唇を重ねる。しっかりと有紀を味わう為に
荒々しく舌を絡ませるように吸い立てた。
有紀は始め軽くうめきのけぞったものの、次第にうっとりとした表情を浮かべ
俺に身をゆだねた。
「有紀、スッゲエ可愛い。」
赤く上気し喘ぎ声をあげる有紀の表情は、男と思っていたときとは違い
女性特有のはかなさを醸し出していた。
「有紀・・・・・」
俺は有紀の服を脱がせにかかった。キスで身体の力が抜けた有紀は多少の抵抗を
見せるものの俺に敵うはずなく服を剥ぎ取られていく。
「あぁ・・・恥ずかしいよ。狂介・・・・。」
青いワイシャツとジーパンを取り去り、サラシを巻いた胸と
小さなショーツのみの姿を見て俺は呟いた。
「・・・ホントに女なんだな。」
- 333 名前:実験屋 投稿日:2005/08/21(日) 00:19:44 ID:U5czsPnf
- サラシで押さえ付けられているものの、有紀の胸はかなり大きく
小さめのサイズの服を着ていたならば男装していようとも無駄といえるサイズだった。
(有紀の全てが見たい。)
未知の興奮に取り付かれた俺はサラシとショーツをいとも簡単に取り去る。
「これが・・・・・」
有紀の身体は無駄な肉など一切なく、陶器のように白く洗練された肌に
瑞々しい果実のような乳房。まだ幼さの残るくびれに、まるでカモシカのような
太腿とヒップのラインは極上級の一品だ。
「綺麗だぜ有紀。」
初めてお目にかかる有紀の裸身は、もはや男と思えない女の色香を匂わせている。
こんな芸術品に触れる事ができ満身の笑み浮かべた俺は有紀の首筋から
胸元にかけて優しく愛撫した。
うっすらと汗ばんでいるもののキメ細かく、俺の手を包み込むような有紀の肌は
俺を一瞬にして虜にした。
「はぁぁ・・・狂介ぇ・・・身体が熱いよ・・・」
有紀は既に全身に力が入らず俺の思うが侭となっていた。
「心配すんな・・・俺に任せとけって。」
そういいながら俺は有紀の胸にむしゃぶりついた。
「ヤッ!!・・・そんな・・・赤ちゃんみたいにぃぃ・・」
舌で乳首をころがしながら口全体で乳房全体に吸い付き
舐めまわす。
- 334 名前:実験屋 投稿日:2005/08/21(日) 00:20:51 ID:U5czsPnf
- 「あぁん!!」
胸を刺激され、有紀は甘い声を出す。俺は目標を乳首に定め
乳房そのものは両手を使い責め立てていった。
乳房が心地よく愛撫されていくのと同時に有紀の股間からは愛液がとめどなく
流れていた。乳房から徐々に腹部、腰部へと吸いまわす箇所を下半身に下っていった俺は
両足の間へとその目標を定めフトモモを大きくはだけだした。
(美しい・・・ここが有紀の・・・・・。)
「いやぁん!!・・・見ないで・・・お願い・・・・」
大切な部分を俺に見られ有紀は目に涙を浮かべながら哀願する。
有紀の泣き顔に罪悪感が痛んだが、ここで退いたら男の恥よ。
後で謝り倒す覚悟でうっすらと恥毛の生えた割れ目へと舌を伸ばしていった。
「あんっ・・・あっ・・・・そんなトコ・・・汚いよぉ・・・あぁぁん!!」
誰にも触られず見られたことすらない部分を舐め回された有紀は大きく身体をのけぞらせる。
(あぁ・・狂介が僕のアソコを・・・気持ち良いよぉ)
羞恥を感じながらもそれを上回る快感に有紀は声を荒げた。
- 335 名前:実験屋 投稿日:2005/08/21(日) 00:23:14 ID:U5czsPnf
- 自分を受け入れ愛してくれる狂介に有紀は愛しさと切なさがあふれ出し狂介を求める。
「狂介ぇ・・・お願い・・・ギュッってしてぇぇ・・・」
虚ろになりながらも哀願する有紀に狂介は股間から顔をあげその願いに答える。
「お望みのままに。」
強く、しかし優しく包み込むように抱き締めてくれる狂介。有紀は狂介の暖かさを
全身で感じながら快感に酔いしれた。
ジュ・・・クチュ
そんな有紀の快感に呼応するかのように秘唇からは愛液が耐えることなくあふれ出ていた。
「さて・・・・」
その音を聞き逃さなかった狂介は片手を秘唇に伸ばした。
「ダメェ!!・・・ソコは・・・気持ちよすぎるのぉ〜・・・」
「だったらいいジャン。もっとしてやるよ。」
狂介は有紀のソコを優しくまさぐり、硬く勃起したクリトリスを撫でまわした。
「ひぃぃん!!痛い・・・痛いよ!!」
快感を通り越し純粋な痛みに有紀は身体を大きくのけぞらせる。
「!!悪りぃ、調子に乗りすぎた。ゴメンな・・・。」
「あ・・・大丈夫・・だよ・・・」
息を荒げながらも消え入りそうな笑顔を向ける有紀。
- 336 名前:実験屋 投稿日:2005/08/21(日) 00:24:05 ID:U5czsPnf
- (反則だ・・・可愛すぎる!!)
有紀の笑顔に俺は興奮とときめきを感じた。
「・・・今度は優しくするから。」
「うん・・・ありがとう。」
そう感謝の言葉を口にする有紀の唇に俺はキスをする。
「ふぅむ・・・ん・・・あむ・・・」
舌をねじ込み有紀の口腔を弄ぶ俺。有紀は俺の下から逃れるように
舌を動かすが俺はそれを逃がさない。ジックリと時間をかけて
有紀の舌を堪能する。
そのうちに俺の昂ぶりも限界に差し掛かった。下を除けば
俺の股間は痛いくらいに腫れ上がり、ズボンを突き破りそうだった。
俺は服を脱ぎ捨て有紀に覆いかぶさる。
「そろそろいいか?・・・俺限界なんだけど。」
「うん・・・・・でも・・・」
「でも?」
「優しくしてね。」
期待と不安の入り混じった顔を浮べ有紀は俺にしがみつく。
- 337 名前:実験屋 投稿日:2005/08/21(日) 00:24:54 ID:U5czsPnf
- 「あぁ・・・有紀、愛してるよ。」
耳元でそうささやいた俺は自分の分身を有紀の秘唇に押し当てた。
溢れんばかりの愛液で入りづらそうだったソコは俺のモノだけは
別物といわんばかりに喰らい付いてきた。
そのまま俺の肉棒が底までたどり着いた瞬間、プッ!!と言う音と共に
鮮血が飛び散った。
「おい!!大丈夫か?」
「うっ・・・うん。・・・大丈夫・・・気にしないで・・・きて」
俺には分かんないだろうがかなりの激痛のハズだ。『ここでやめてしまおうか』
そんな気持ちに苛まれた。しかし、
「あぁ・・・狂介が僕の中に・・・やっと・・・やっと一つになれた・・・」
痛みに耐え、涙を流しながらも笑みを浮べる有紀。
「ずっと・・ずっと決めてたんだ・・・初めては狂介にって・・・
狂介に僕の初めての人に・・・なって・・・もらいたかったから。」
あぁ・・・俺はバカだ。性別を隠し男として生きてきた有紀。でもその心の
中には本当の、女としての有紀がちゃんと居たんだ。
俺は今彼女を裏切るとこだった。
- 338 名前:実験屋 投稿日:2005/08/21(日) 00:26:53 ID:U5czsPnf
- 有紀の身体から緊張が薄れていくと同時にゆっくりと、しかし大きく
肉棒を子宮の奥まで突き上げた。
「あぁ!!んっ・・・熱い・・・狂介の熱くて灼けちゃうよ・・・」
「有紀の中も温かい・・・・気持ちいいよ。」
俺の分身の熱と動きを感じていくうちに有紀の顔から痛みの表情が
徐々にではあったが消えていった。
「ん・・・ん・・・どうだ・・・有紀・・・気持ちいいか?」
「あぅ・・・・んっ!!気持ちいい・・・気持ちいいよぉ・・・狂介。」
有紀の中は絡みつくように収縮を繰り返し、俺の分身を咥えて離そうとしなかった。
「狂介・・・僕・・・もう・・・もう・・・・」
有紀に絶頂の兆しが見える。俺も限界に近い。ガクガクと震える有紀を
俺は抱き締めた。
「俺も行きたい。・・・・中で出してもイイか?」
「きて・・・・狂介の全部を感じたいから・・・きて・・・」
震えながらも俺にしっかりとしがみつく有紀。
「狂介・・・・・狂介・・・・狂介ぇぇ!!!!」
絶頂に達し今まで以上に秘口が俺の分身を締め付ける。
「くっ・・・有紀!!」
その締め付けに抗いきれず俺は有紀の中に全てを解き放った。
「あぁ・・・狂介ぇ・・・・熱いよぉ・・・・」
子宮に精液が注ぎ込まれる感覚に全身を痙攣させながらも
有紀は最愛の相手に愛され、女としての悦びを堪能できた
充実感でいっぱいだった。
「有紀・・・・」
息も絶え絶えに全てを出し切った狂介は余韻も冷めえぬうちに有紀と口付け交わし
裸身と吐息を絡ませながら眠りについていった。
- 339 名前:実験屋 投稿日:2005/08/21(日) 00:28:23 ID:U5czsPnf
- 「なぬ!?じゃあオヤジとオフクロは。」
「ウン、知ってたよ。僕が男の人を怖がらないようになるためにって
協力してくれてたんだ。」
「し・・知らなかった・・・チクショー・・・あいつ等ーーー!!」
俺だけが知らないで両親だけが有紀の秘密を知っていたことに、はらわたが煮えくり返った。
裸のまま布団に包まり抱き合っている今の状態ではどんな事をしても情けない姿にしか
見えないだろうがこの悔しさを抑えることは出来ない。
「でも、今日ちゃんと知ったんから良しとしようよ・・・ね?」
そう言ってコテっと首をかしげる有紀の姿に
「はい。いいですよ〜。」
と返してしまう俺。もう完全に打ちのめされてるんだな。願ったりだけど。
「ところで女に戻る気はあるのか?」
「ん?・・・そりゃモチロンあるよ。」
「そうか。」
「とりあえず、卒業まではこのままで・・・その後なんだけど・・・・」
「なんかするのか?」
「狂介・・・・・」
「なんじゃらほい?」
「・・・・・僕を・・・狂介のお嫁さんにして!!」
〜おしまい〜
- 340 名前:実験屋 投稿日:2005/08/21(日) 00:35:37 ID:U5czsPnf
- 以上です。指摘してもらった文章の汚さを
今の自分で出来るとこまで直してみました。
気に入りましたらどうぞご賞味ください。
>>329
どうも、恐悦至極です。タイトルなんて考えてなかったので
差し障りなく「狂介と有紀」見たいな感じでお願いしたいです。
- 341 名前:388 投稿日:2005/08/21(日) 01:10:32 ID:wOCmCaOF
- 前スレで伊集院の話を書いた者です。
久々に覗いて見たら凄い綺麗な形で倉庫に収蔵して下さってて
感動しました。有難うございました。>倉庫管理人さん
ここに投下した後に、ときメモの本スレ見つけたorz
ので、今後伊集院の話はそちらに投下させて頂くつもりです。
どうしてもお礼を言いたかったので。
前スレでご感想頂けた方も有難うございました。
凄く嬉しかったです。
所で>>実験屋タン
腹の底からGJ!!!有紀が可愛くて萌え萌えっす。
ユキタン(;´Д`)ハァハァハァハァハァハァ
- 342 名前: ◆aPPPu8oul. 投稿日:2005/08/21(日) 01:28:24 ID:f8NXVB3j
- >>ナサ氏
お帰りなさい!
サディアスがどうしようもなく愛しいんですがこのパッションはどうすればいいんでしょうか…
ワクテカしつつお待ちしております。
>>実験屋サン
有紀タソ可愛いよ有紀タソ…
こんな幼馴染欲しいよ…
>>倉庫管理人サン
改訂したい箇所は数え切れないのであきらめてますが、
誤字・変換ミスが六ヶ所ほどあったので後ほどメールを送らせていただきます。
改めて収納ありがとうございました。
- 343 名前:”管理”人 投稿日:2005/08/21(日) 01:55:22 ID:pYJTL4bb
- >>340
有紀萌えー
タイトル、こちらの都合で申し訳ないです。感謝。
インパクトある字面なので、そのままキャラ名使って正解ですね!
>>341
いかないでー。映画デートの続きをー。
ときメモ知らなかったのに、あの伊集院を読んで中古ファミコン買いました。
ちなみに執事からも告られました・・・。
>>342
了解しました。何度でも修正改訂します。щ(゚д゚щ)カモーン
こちらが忙しいときはお時間いただきますが、現在暇期なので
こき使ってやってください。
職人さんに感謝しているのは俺らのほうです。本当にありがとうございます。
- 344 名前: ◆z1nMDKRu0s 投稿日:2005/08/21(日) 02:14:47 ID:qLRlzU+L
- あぁまた欝が戻ってきやがった……
GJ!! ホント萌えた
- 345 名前:121 投稿日:2005/08/21(日) 09:34:27 ID:xl2da+Dt
- 久しぶりに覗いてみたら、相変わらず大盛況ですな。
作品が投下されない日はないというか。
で、うちの作品も保管庫に収納してくれたようで大喜びですよ。
>326
お帰りなさいー! いや、この二人いいですねー。いい夫婦になりそうです。
完全に夫が尻に敷かれるでしょうが。
>340
いいですな。王道展開大好きな自分としては。
また気が向いたら投下してくだせえ。
>344
それぞれの作品にいろいろ違った面白さがあるので、無問題。
欝になることはなかろうて。
作品投下はまだ後日になりそうです。
次回で完結予定なので、また暇な方は見てやってください。
では。
- 346 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2005/08/21(日) 14:17:23 ID:UPdnlm+k
- 婚前旅行、イイ!
文頭の臭いにまつわる表現がすげーリアルで(花屋とか)
一気にあっちの世界に連れてかれたよ。
やっぱあなたは職人を通り越して神だ。
GJ!
- 347 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2005/08/21(日) 20:05:31 ID:Azlh6qIC
- 某エロゲーを思い出すスレだ
- 348 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2005/08/21(日) 21:03:54 ID:qV2Cnzd+
- なんかこのスレ見てたら妄想が広がっていくw
街の小さな道場、そこの長子である青年は24という若さで師範代の腕を持っていた。
細い腕、足、体つき。中性的な顔立ちで、一見優男に見られるが、その実力は相当のものであった。
その門弟である主人公(17)はそんな師範代に憧れて入門してきた一人。
しかしあまりの修行の厳しさに一人、また一人と道場に来なくなり、主人公一人だけが残る。
師範代えらく落ち込む。それを慰めながらも主人公はずっといると告げた。
涙目で主人公を見上げて感極まる師範代。思わず主人公に抱きつく。
そこで初めて師範代の胸の柔らかさに気付き―――
なんて妄想が止まりません先生!ちなみに師範代は丁寧な口調と脳内設定しています!
- 349 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2005/08/21(日) 21:44:14 ID:IIjampH1
- >>348
ちょwwww前半3行同じな話書こうと思ってたwwwwww
- 350 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2005/08/21(日) 22:35:56 ID:Azlh6qIC
- シンクロニティ
- 351 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2005/08/21(日) 22:41:15 ID:/a7qCleH
- >>348
男装のお姉さま師範代(・∀・)イイ!!
でも何の道場やってるのか気になるな
- 352 名前:白雀 ◆T2r0Kg7rmQ 投稿日:2005/08/21(日) 22:52:00 ID:SXNiRqS7
- 個人的には男装の王道の一つだと思いますからね。人気なのかも>男装師範代
同じ道場の師範代でも、うちのはつるぺたロリっ子師範代です。はははっ。
……設定間違えたかな……orz
というわけで自宅に帰ってきました。出張中も携帯で書いた分と合わせて中編投下します。
萌拳演義・中編1
「なっ、なんで……ぼ、ボクは男だっ」
威嚇するように大声を張り上げるレンだが、その声には明らかな動揺があった。
正確な年齢はファンにはわからなかったが、見た目どおりの年齢だとすればまだ少女と言っていい年代。
想定外のことに動揺せずに切り返せるだけの度胸と経験はまだ無いんだな、とファンは納得しながら盆を机の上に置く。
「証拠は、その胸」
「…………っ!?」
身を乗り出した際に布団が上半身から離れていた。ファンが指差す先には、先ほどの決闘で敗れたレンの胸元が隠すものをなくして露わになっていた。
それに気が付き、慌てて右手で少年のような平らな胸元と、その先にちょこんとついているまだ豆粒のような小さな乳首を隠すレン。
「さっきの決闘で、お前一瞬だけそうやって隠したろ。まあ、決闘の最中だったし、女だってバレないようにすぐ隠すのやめたけど、男だったら胸が見えたって一瞬でも隠したりはしねぇさ。
一瞬といえど隠すのは、見られて恥ずかしいから。つまり女だからだ。違うか?」
胸を隠したままでレンは押し黙る。必死に否定したかった。だが、否定の言葉が口から出てこない。あの一瞬でバレるとはレンも想像していなかった。
あの時は胸が見えようと、そんなことより男として、いや牙心流の師範代としてファンを倒すという強い目的があったからこそ女としての恥ずかしさを忘れ、戦いを続けることが出来た。
だというのに、どうして今はこんなにもこの姿が恥ずかしいと思えてしまうのか。
目の前に男がいて、しかもその男が自分を女だと認めている。状況はたったそれだけしか変わっていないのに、今はたとえ自分の胸が男のような平らな胸であろうとも、見られることにすごく抵抗がある。
と同時に、すでに目の前の男に胸を見られたんだっけという事実を認識し、レンの顔は差し込む夕日よりも赤くなっていく。
それは、レンが男ではなく女としての自覚を持ったからに他ならないのだが、まだレンにはそこまで自覚するだけの余裕は無かった。
- 353 名前:萌拳演義中編2 投稿日:2005/08/21(日) 22:54:21 ID:SXNiRqS7
- 「……ひとつめの、答え」
口を固く結び、沈黙すること数十秒。手で胸元は隠したまま、観念したかのようにレンが口を開く。
「……ボクは、小さいころから父様に憧れていたんだ」
レンが物心ついた時には、すでに彼女の父・チュンは近所では名を知らぬ者は無き拳法家だった。
父の構える道場に遊びに行っては、多くの門下生たちに稽古をつける父の勇姿を見つつ自分も稽古の真似事をする。
そんな自分を、苦笑しながらも暖かく見守り、時には稽古をつけてくれる優しい父や門下生。
彼女にとって父は幼い頃からの英雄であり、師であり、目標であった。
「でも、そんな父様が初めてボクの目の前で破れた……」
悲しそうにレンが言う。それがレンの父と自分が戦った、あの武闘大会のことだろうとファンは理解する。
(そういえば、あの時客席でオッサンを応援してたチビっ子がいたっけな)
その当時はまだ幼女と言ってもいい外見でしかも髪を伸ばしていたため、レンと再会したファンにはその時の幼女だとは最初は気がつかなかった。
「で……オッサンはどうしてるんだ?」
一番気になる事をファンは尋ねてみた。
「元気だよ……。今もピンピンしてるし、負けたからって酒に溺れたりもしてない。今日も道場で豪快に門下生のみんなをしごいてるんじゃないかな」
父の様子を想像したのだろう。ここでようやく、子供らしい笑みをレンが垣間見せる。
「じゃあいいじゃねぇか、別に恨まれるような事じゃ……」
「恨みじゃないよっ!」
垣間見せた笑みは、すぐに悲壮な表情に変わってしまい、ファンはしまった、と後悔した。
「ボクはただ、父様が……父様が完成させた最強の拳法が、負けたなんて認めたくなかったんだ!」
大会が終わり、負けたことを悔しがりながらも勝者のファンを称えながら笑っていた父。
そんな父の姿を安心しながらも、それを傍らで見ている少女の胸の中には父以上の悔しさが渦を巻いていた。
父様が負けたのは、実力のせいじゃない。
あんなお遊びみたいな大会で、父様が全力を出せるもんか。
父様は世界一強いんだ。全力を出せば、誰にも負けない。
……証明してやる。 父様に勝ったあいつを倒して、父様の牙心流が世界最強だって!
- 354 名前:萌拳演義中編3 投稿日:2005/08/21(日) 22:57:46 ID:SXNiRqS7
- 「だからボクは……お前を倒して、父様が……父様の牙心流が最強だって……証明したくて……」
最後のほうは聞き取りにくいほど声が小さくなっていった。
話していくうちにまた敗北の悔しさを思い出したのだろう、とファンは察する。
それでも健気に顔を上げ、レンは言葉を続ける。
「ボクは強くなろうとした。けど、父様の道場は男しか弟子になれなかった。
小さい頃は娘として遊びに行っていたから父様も許してくれたけど、本気で拳を学ぶつもりなら娘といえど例外は許さないって……」
「……お前、兄弟は?」
「弟が一人。でも、まだ四年前に産まれたばかりで……」
まだ拳法をやれるほどの歳じゃないってことか、と納得する。
「でも、父様はお前に再挑戦する気は全然なかったから、どうしてもボクがやらないと、って思って……」
伸びていた髪を切り、父が昔使っていた古い男子用の動着に身を包み、言葉遣いも女らしさを捨てた。それから一晩かけて説得して、ようやく父が折れレンは本格的に父の跡を継ぐ形で拳法の道に入った。
拳を身に付けて初めて分かる父の強さ、師の厳しさ、修行の過酷さ。
何度もボロボロになり、何度も倒れながらも三年間、一度も涙を流すことなくレンは常人の倍以上の修行に耐え抜き、驚くべき早さで牙心流の師範代として父に認められた。
「それが二つ目の答え。でも父様は、ボクが修行をするのは認めてくれたけど、お前を探して挑戦するのはやめておけって言った。
それでもボクは反対を押し切ってお前を探して、やっとこの山にお前が住んでるって噂を聞いたんだ」
「で、今日、俺を見つけて挑戦して負けたわけだな」
「……うん」
気を遣おうと努力しても、つい素直に突っ込んでしまうのがファンの悪い癖である。
落ち込んでうつ向いてしまったレンを見て、内心しまったと頭を掻く。
「……まあ、お前の事情は分かったが、だからって俺も痛い目にあいたくはないからよ……」
「分かってるよ……。
ボクよりお前が強かった。勝負の世界はそれが全てだから……」
レンは力なく声のトーンをさらに落とし、両膝を抱えこむ。
お互い何も言わないまま、数分が過ぎた。女性経験の無いファンには、こういうときどう声をかけていいのか分からない。
途方にくれたまま、去るわけにも行かずレンのそばに突っ立っている。
「……すっ、ぐすっ」
沈黙を破ったのはレンのほうだった。だが、ファンの聞く限りそれは……会話の糸口になりそうな話ではなく、緊張の糸が切れたがためにそれまで耐えてきた感情が一気に噴き出しての涙声であった。
「っく…悔しい……悔しいよ……父様の強さは本当なのに……ボクは……父様の息子として、負けちゃいけなかったのに……
ボクじゃ……ダメだった……うっ、うあっ……」
膝を抱える両手が震えていた。
- 355 名前:萌拳演義中編4 投稿日:2005/08/21(日) 23:01:19 ID:SXNiRqS7
- 「どうして……? やっぱりボクが女の子だから……? だからボクは弱いの……?
ねぇ、教えてよ……ボクがホントの男の子だったら、こんな想いはしなくてすんだの……?」
藁をもすがるように、布団の上についていたファンの左手の袖口をレンが掴む。レンの大きめの瞳から流れる涙が一滴二滴と零れ落ちてはファンの袖口を濡らした。
反射的に、ファンは空いている右手でレンの頭を撫でた。
「うう……えうっ……」
「そんなの俺には分からねぇけどよ……たぶんお前の親父さんは、お前が俺に勝ったからって喜んだりはしなかったと思うぜ。
もちろん、お前が俺に負けたからって、そのことで失望したりなんかしねぇよ。
お前はたぶん、親父さんが予想していた以上に努力して、予想以上に強く頼もしく成長した。
そこには男も女も流派も関係なく、おまえ自身の問題だけのもので、それだけで十分だ、って俺なら思うけどよ……」
大切なのは、誰に勝ったかでもどれだけ強くなったかでもない。誰と比べるものでもない。どれだけ己自身が、己の信ずるままに正しく成長できたか。
それだけのこと、というのが彼の師の最後の教えであった。
「でもっ……でもっ……! ボクの……気持ちは……そう、簡単には、割り切れなっ……」
さっきまで果し合いをしていた相手ということも忘れ、レンはひたすらファンの胸の中で子供のように泣きじゃくった。
ようやくレンが落ち着きを取り戻した頃には、既に日は暮れ、山頂には黒い帳を淡々と彩る月が鎮座している時刻となっていた。
すっかり皺(しわ)になってしまった粗末な寝具の上で、ファンの身体にもたれかかりながらレンが意を決したように呟く。
「ねぇ、一つ……お願いしてもいいかな」
「ああ、何だ?」
その声には殺気や闘気は微塵も感じられない。暗闇の中で何かにすがろうとする子供みたいだな、と思いながらファンは優しい口調で答える。
「あのさ、その……」
だが、どこか言いにくそうに言いよどむ。緊張で身体が強張っているのが使い古された男性用の道着を通してファンにも伝わる。
「ぼ、ボクを……今だけ女の子として、お、犯して欲しいんだっ!」
子供が懸命に懇願するような強い意思を持ったレンの頼み。しかしその内容にどう考えても子供らしからぬ単語が混じっているように聞こえて、ファンはハニワのような顔になった。
「…………悪い、ちょっと俺の耳がおかしくなったみたいだ。もう一度頼む」
「あ、あんな恥ずかしいこと二度と言えるか――っ!」
ファンに背を預けたまま振り回したレンの肘がファンのわき腹に直撃する。思わず悶絶するそれなりの常識人ファン君。
「ぐふっ!? い……いや待て、何のつもりか知らないが、嫁入り前の女の子がそんなこと頼むもんじゃないっての」
そりゃそうだ。世の中どこに、今日果たしあった相手に犯してくれと頼む少女がいようか。
- 356 名前:萌拳演義中編5 投稿日:2005/08/21(日) 23:04:42 ID:SXNiRqS7
- 「わ、分かってるよ……」
「いいや分かってない。いいからゆっくり寝て冷静になれ」
「お願い……これでも一生懸命考えたボクなりのけじめなんだ」
「けじめ?」
「上手く言えないんだけどさ、いまボクの頭、すごくぐるぐる混乱してて、ぜんぜんスッキリしなくて、このまま帰りたくなくて、これからどうしていいか分かんなくて、って感じなんだ。
だから一度……一度でいいから、ボクの持ってるもの何もかも捨てて、滅茶苦茶にされて、その、気持ちを生まれ変わらせたいというか、全部忘れたいというか……それしか、ボクがこれから前に進むにはない、って思って。
それに、ボクは……お前のこと、もっと知ってみたいと思ったから。戦いだけじゃなくて、他のことでも……お前のこと、知りたい」
言ってることは理解は出来るが共感はできないな、とファンは思う。
気持ちの整理をつけるためとはいえ、普通そんな方法で上手くいくという保障があるはずもない。下手すればさらに一生立ち直れない心の傷を負う可能性だってある。
だが、『馬鹿なこと言うな』と一蹴することがどうしてもファンには出来なかった。
あのままでは、レンは自分が女であることを理由に全てを諦めてしまっていたかもしれなかった。
それをレンがどれだけ不器用に、真剣に考え抜き、一度つまづきかけた壁を越え、引き篭りかけた殻を破るためにその方法を決意したか。
ファンにはそれが分からないわけでも、その勇気を無下にできるわけでもなかった。
「本当に後悔しないな?」
「うん。後悔しないためにしてもらう……ううん、されるんだもん」
これからなにをされるか分からないわけではないだろうに、今日会ったばかりのファンを信頼して澄み切った目をしている、目の前の少年の姿をした少女を、ファンはゆっくりと寝具の上に押し倒した。
やや緊張気味に手を伸ばしながら、ファンはレンの動着の帯に触れる。
白色の細い帯の先を引くと、しゅるっという軽い音を上げながらレンの腰から帯が引き抜かれた。
完全に帯が外れると、その時にめくれた動着の奥にレンの白くて引き締まったお腹が、そしてその中央には小さく窪んだ可愛いへそが見えた。
昼の果し合いで破れた胸元はまだ破れたままで、その奥からはちらちらとレンの白い胸元が覗かせていた。
力無く体の両脇に投げ出された両腕をファンが掴むと、レンは一瞬体をびく、と震わせたが直ぐに力を抜く。
一度確認するようにレンの顔を覗き込み、ファンはレンの両腕をレンの頭上に持ってくると抜き取ったばかりの帯で両の手首を固めに縛った。
「……あのよ、ホントにいいのか?」
「……うん」
手を縛るのはやりすぎかな、と思わないでもなかったが、レンがとくに嫌な顔はしなかったのでそのまま続ける。
- 357 名前:萌拳演義中編6 投稿日:2005/08/21(日) 23:08:24 ID:SXNiRqS7
- レンの華奢な身体にのしかかるような体勢で顔を近付ける。すぐ目と鼻の先にお互いの顔があった。
小動物のように顔に不安な色を浮かべながら、レンはファンから視線をそらさずに言う。
「んっ……」
不意打ちとも言えるファンの口付けだった。熱を帯びたファンの唇が、何か言おうとするレンの口を塞ぐ。
息をするのも忘れ、レンは初めての口付けの感触を半ば放心しながら味わっていた。
「んんっ!?」
またも不意打ちのように肌に直に触れられる感覚に、レンの意識は現実に引き戻される。
帯を解かれ、前面をさらけ出された動着の中に差し込まれたファンの右手。それがお腹の辺りを愛しそうに撫でる。
くすぐったさと羞恥心で身をよじらせるレン。
そこから徐々に、ファンの大きく硬い手はレンを求めて上へと上っていく。
可愛いへその中を指先で愛撫しながら、肋骨の上を撫でるように滑らせていく。
逃げるように体をくねらせるレンだが、両腕を頭の上で縛られていてはどうしようもない。
必死に耐えるレンの顔を見ながら、ファンは離れていた唇をもう一度レンの唇に重ねた。
くちゅ、と互いの唾液が混じり合う音を立てながら、やや乱暴にファンはレンの唇を求める。
(やだ……ボク……なんでこんな、恥ずかしい、こと……)
レンはその音や行為を、気持ちいいとも悪いとも感じない。
感じるのは、ただ唇を重ね合わせるというだけのこの行為にひどく胸が高鳴っていく自分への戸惑い。
そんな今までの自分とは違う自分がここにいることに、理由も知らずひどく恥ずかしいような気がした。
(……!!)
ついにファンの右手が胸へと到達した。
肝心の胸の中心には触れず、まずはまだ微妙に胸元にひっかかっている動着を払って脱がせる。
サラシもしていない、というよりも必要のない、まだ膨らみの無い平坦な胸が露にされる。
「や……」
一度見られているとはいえど、やはり偶然見られただけなのと故意にじっくりと見られるのとではその意味もまるで違う。
羞恥心で顔を真っ赤に染めながら、レンは耐えるように目を瞑る。
不安がるレンを安心させるように、そっとファンの右手が胸に触れる。
ぴくん、と体を浮かせて初々しく反応するレン。まだ未成熟な果実を潰さないように、優しく撫でるように手の平を動かす。
(見られてる……触られてる……ボクの胸……)
まだ膨らみの無い胸や、申し訳程度にしか育っていない乳首はファンが攻めてもあまり快感を生じさせない。
それでもレンは、ファンが胸の上に置いた手を動かすたび、そして手の平が胸の先端の小さな乳首を擦るたび、胸元から全身に広がる奇妙な感覚に身を震わせる。
「痛くないか?」
「……わかんない」
声を押し殺して耐えるレンを気遣いファンが尋ねる。それにレンは正直なところを答えた。
まだ性感帯の未発達なレンにとっては、その感覚が痛みなのか快感なのかも区別がつかなかった。
「やめるか?」
「やめなくていいよ……ボクは大丈夫だからお前の好きにしてよ」
それも本音だった。 いやらしい、という嫌悪感はなかったし、恥ずかしいけれどこの行為をやめられるのは後でもっと嫌な感じになる気がした。
「……んっ……はっ」
円を描くようにファンは広く手の平を滑らせる。空いていた左手も加え、両手でレンの平原の双丘を大きく愛撫する。
右と左、時には交互に、時には同時に襲い来る胸への刺激にレンは必死に漏れてくる声を押し殺す。
- 358 名前:萌拳演義中編7 投稿日:2005/08/21(日) 23:13:04 ID:SXNiRqS7
- (……やべ、気持ちいい)
未知の感覚に戸惑っているのはファンも同じだった。恩師からの話や書物、森で見た獣の行為などで知識はあるが、彼も自分の手で女体に触れるのは初めてのことである。
自分の体とはまるで違う、力を入れれば壊れてしまいそうなその体の柔らかさ。
まるで天女が着る羽衣に使われている天上の絹糸のような、手にぴったりさらさらと吸い付く肌の滑らかさ。
仙人を気取るつもりは無いが、女に溺れる俗人の気持ちが少しだけ分かったような気がした。
やがて手の平で感じる感触の中に、一際硬いものが感じられるようになってきた。
二、三度手の平でその硬い部分を擦ると、レンが切なそうに声を漏らす。
見ると、それまで平らだった胸先に申し訳程度についていた乳首が、それなりの固さを持って勃っているのが見えた。
色もさっきまではあまり周囲の肌色と変わらなかったのが、いつの間にか花が可愛らしく咲き誇るが如く淡い桃色に色づいている。。
試しに指で摘まんでみると、レンがそれまでに増して大きく体をのけぞらせる。頭上でレンの両手を拘束している帯が苦しそうにギリギリと音を立てた。
悪いかな、と思いつつファンがその立派に自己主張している乳首をこね回したり引っ張ったりする度に、
レンが体を跳ねるように反応しながら、声を出すのを必死に耐える姿が見えた。
「ここ、気持ちいいのか?」
「……はっ……はっ……違う……そんなこと」
一生懸命瞑っていた目をうっすらと開け、弱々しい声で否定するレン。
それなら、とファンは顔を胸元に近付ける。半人前に勃起したレンの乳首を間近でよく観察した後、口をさらに近付けるとレンの乳首を唐突に吸った。
「あああああっ!?」
レンの我慢が限界に達し、それまで溜めてきた声を一気に出すように大きな声で鳴いた。
充血して感度が上がっていた乳首への口での責めのもたらした感覚は、経験の無いレンの防波堤を一気に打ち破った。
「ひゃあっ……くふっ……あんっ!」
口の中に含んだ乳首を舌で転がすたび、そして赤ん坊のように音を立てて強く吸うたび、もはや完全に快感と認められるほどの大きな刺激が胸いっぱいに広がる。
全身に力を入れて耐えようにも、未知の快感で完全にとろけさせられた体には思うように力が入らない。
(ボク……気持ちいいの? こんな、男の子と変わらないような小さな胸で……)
女であることなど、父の跡を継ぐと決めた時から捨てたはずだった。
思春期を迎えても一向に膨らまなかった胸や、まだ生えてこない性毛、未だに来ていない生理。
それらは男として牙心流を継ぎ、いつか父を破った相手を倒して牙心流が最強だと認めさせるために神様がくれた理想の体だと思っていた。
それがまさか、その相手の男によって女であることを自覚させられるなんてなんという運命の悪戯だろうか。
レンの頭の中は次第に真っ白になっていく。小さな口から漏れる声も切なそうな溜め息から、次第に荒い喘ぎ声へと変わっていく。
- 359 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2005/08/21(日) 23:22:17 ID:SXNiRqS7
- お目汚し失礼いたしました。
中編はここまでです。
話の展開上ちょっとだけ犯すとか縛るとか出てますが、後編は基本的にほとんど和姦的なエロになるのでご安心ください。
しかしエロ展開にもってくのに20kb以上か……エロ初挑戦の壁は厚いです。次回どれだけの長さになるかは分かりませんが、後編で完結予定。
レン「というわけで突然ですが、ちょっとしたおまけのリーチ一発特別コーナー♪」
ファン「いきなり思いつきで始まった特別編だな。さて上の方では24歳の姉系男装師範代の話が出てたが、お前は何歳なんだ?」
レン「え? 言っちゃっていいの?」
ファン「……やめとく。お前の年齢知った上で後編入っちまったら、俺は犯罪者としてお前の親父さんに腹斬って詫びなければいけなくなりそうだからな」
レン「失礼だよっ。 ボクはこう見えても、あの世界だとあと一年ちょっとでお嫁にいける年になるんだから」
ファン(……とてもそうは見え)
レン「今とても失礼なこと考えたでしょ」
ファン「……気のせいだ。じゃあ、また後編でな」
レン「お、お手柔らかにねっ」
>>271氏
>>289氏
保管作業お疲れ様でした。
まだエロ展開に入っていなかった私の作品まで……! ありがとうございます。
- 360 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2005/08/21(日) 23:31:11 ID:UPdnlm+k
- やっほう一番乗りっ
萌拳演技、たのしかったです。GJ!
特別編笑えますたw
- 361 名前:8838 投稿日:2005/08/22(月) 00:08:22 ID:guXy72Xo
- 今日も元気だご飯が美味い。そしてスレの流れは速い。善きことでございます。
くそういいスレだなあここ。
>>実験屋氏
萌えたー!アリガトウ!
有紀タソかわいいなあ。そして狂介いいキャラしとるw
>>白雀氏
やたーエロ突入!ロリっ子上等!
レン切ねえぇ。続きもしかと読ませていただきます。
>>男装倉庫管理人様
お世話になります!
はい、8838でよろしくお願いいたします。
タイトルはナサ氏ご命名の「土曜日の情事」で。オードリー・ヘップバーン好きだし。
- 362 名前: ◆z1nMDKRu0s 投稿日:2005/08/22(月) 01:03:04 ID:p+bVLfi2
- >>352
ぅゎょぅι゙ょっょぃ
白雀さんの作品読んだ後、気が付けばケータイにはロリ画像がわんさかと……
俺ロリコンになってしまったか……
最近は新人様のSS読んだ時の欝が快感に変わって来てるし……
もうだめぽ……
でもGJ
- 363 名前:司8.5 ◆aPPPu8oul. 投稿日:2005/08/22(月) 01:12:39 ID:ZXOcLqwm
- >>352
つるぺたイイ!
ひたむきなお嬢さんにあんなことこんなことできるなんて、なんて…!
続き楽しみにしてます。
>>362
そんなあなたに捧げよう。
男装まったく関係ない内容だがエロさ10%増し(当社比)なんで許して。
* * * * *
「せーんーせー。おかえりー」
油断した。隆也の表情がさっと変った。それも悪い方に。
赤い顔で、トロンとした目で、舌の回らない司の足元には、ビールの空き缶が二つ転がっている。
ついでに手にも一つ。中身が半分ほどの缶チューハイが握られて、いや、なんとなく手に持たれている。
ソファやカーペットの上にこぼされると後々厄介だ。
とりあえず缶を取り上げてテーブルの上に置き、ため息をつく。
「…司。お前今いくつだ?言ってみろ」
缶を取り上げられた司は少々気を悪くしたようで、真面目に答えない。
胡坐をかいて足首を掴んでいるのだが、腕で寄せられた胸が(ちいさいなりに)強調されている。
またサラシをほどいたらしい。Tシャツの下の乳首が浮いているのに本人は気付いていないのだろう。
「ん〜、はたち、まであと二、三年くらい〜」
へらへらと笑って、ソファからずり落ちそうになる。いつもなら支えてやるところだが、隆也は動かない。
「未成年ってことだよな。そのお前が!なんで俺のいない間に勝手に俺の酒を飲んでるんだ?」
そう、ちょっとコンビニまで行くからと留守にした10分ほどの間に、司はこの缶三つを空けたのだ。
勝手に人のものに口を付けるのはもちろん、17歳での飲酒は違法である。
それをまがりなりにも教師である自分の前で堂々とやられれば、それは説教の一つもしなくては。
しかし勢い込んで詰問する隆也とは対照的に、司の返答は要領を得ない。
「なんででしょー?」
へらへら笑いに毒気を抜かれそうになるが、なんとか大人の体面を保つ。
「正直に言ってみろ。場合によっては怒らんから」
正面に立って、あくまで上からものを言う。こうでもしないと伝わらないと感じたからだ。
その意図が通じたのか、司の視線は下に落ちる。
「………先生が」
その切り出し方は意外だった。自分が司の前で酒の話などしたことがあっただろうか。
「うん」
続きを待つと、今度こそ意外な台詞が出てきた。
「もうちょっと素直になれ、って言ったから」
確かに、この間司がやってきたときに、言った覚えはあるが。
それはつまり、"行為"の最中にイヤイヤ言うのがちょっと気になってからかっただけであって。
「…………だから?」
「だから」
どこかむくれた調子で返される。
原因は自分にあったが、それだけでこういう行動(軽犯罪)に出たのは司の浅はかさのせいだ。
- 364 名前:司8.5 ◆aPPPu8oul. 投稿日:2005/08/22(月) 01:13:09 ID:ZXOcLqwm
- しかしそれが、自分への好意だけからくるものだと思うと、苦笑するしかない。
「……で、酔っ払った司はどうなってるんだ?」
横に腰を落ち着けた隆也の声に怒りのかけらも見出せなかった司は、また頬を緩ませる。
「んーとね、暑くてなんか頭の中が変な感じ。んっと…感覚がつながんない、っていうか…
わかってるけどズレてる。音とか、触覚とか、敏感になってるけど、鈍くなってるみたいにも感じる」
発音はやや不明瞭だが、わりあい言葉には統制がとれている。酒には強い体質なのかもしれない。
頭を撫でて、耳から首筋に触れていくと、笑って首をすくめる。熱い。
「それで、素直にはなれたのか?」
「うん。先生、好き。大好き。ずっといっしょにいて」
熱い体が寄りかかってきて、酒の匂いが鼻をつく。酒に弱い隆也はそれだけでも酔ってしまいそうだ。
「うん……それから?」
肩を抱いて顔を寄せる。どこか色っぽい瞳がじっと覗き込んでくる。
そして囁かれるのは、どうしようもなく甘い言葉。
「それから、エッチなこともいっぱいしたい。きもちよくして?」
「っ……」
だきついてきた司の胸があたる。大きくはないが、その弾力はしっかりと手と舌が記憶している。
「だめ?」
首をかしげる仕草は、この年頃の少女にはとても似合いだ。
「……だめなわけないだろ……」
動悸が少し激しくなったのは、臭いだけで酒に酔ってしまったからだろうか。
いや、わかってはいるのだが、認めると年上としての威厳が失墜しそうなのでこれ以上は考えないことにした。
ふにゃ、とでも効果音をつけたいような笑みをこぼして、司が頬をすり寄せる。
「ん…よかった。ねぇ、先生も飲んで!」
「ん?…そうだな。俺も素直になるか」
残った缶チューハイを流し込む。残りは缶半分にも満たないが、今ならこれだけでも酔えそうだ。
「すなおになった?」
いたずらっぽい笑みに、似たような笑顔を返す。
「あぁ……司。好きだ。大好きだ。ずっとこうしてたい」
熱い頬を両手で挟んで、口付ける。何度か唇を啄ばんで離すと、とろりとした視線を絡ませる。
「それからもちろん、司を抱きたい。犯したい。あえがせて、エッチな司をいっぱい見たい。感じたい」
こう率直に口にするのは…いや、普段もわりと言っている気がするが、それでもやはり恥ずかしい。
けれど司の表情は、何処までも穏やかに、とろけそうに甘い。
「うん、素直でよろしい。……抱いて、気持ちよくして。それから……いっぱいキスして」
ちゅ、と頬に唇が押し当てられると、堪える理由がなくなってしまう。
ついでに飲酒を叱る気もすっかり消えてしまう。
たまには飲ませてみようか…などと悪い考えが浮かんでくるほど、酔った司は可愛い。
- 365 名前:司8.5 ◆aPPPu8oul. 投稿日:2005/08/22(月) 01:13:42 ID:ZXOcLqwm
- 「……可愛いな……可愛いな、司は……」
自分も酔っているに違いない。
同じ単語を繰り返しているだけだとはわかっているが、他の言葉がでてこないのだから仕方ない。
司のほうがよっぽどしっかりしゃべっている。
飲酒量とか年齢とか、その辺を考えると色々おかしいのだろうが、今はどうでもいいことだ。
ちゅ、ちゅ、と、額や頬や鼻の頭や唇や首筋や…とにかくあちこちにキスしていく。
「……ん、せんせ……もっと……」
自分も(わずかばかり)飲んだせいか、酒の匂いが気にならなくなった。
酔いに思考を投げ出したくなるのをこらえて、頭を働かせる。このままソファで寝て大丈夫だろうか?
いや、すぐに答えが出てこない時点でまずい。とりあえずベッドのほうがいいだろう。
「うん……ベッド、行くか」
「うん。……わ、なんか頭ぐらぐらする……」
ふらついても笑っている司を支えてやろうと立ち上がるが、自分も足元がおぼつかない。
こんなことでまともにできるのか、という危機感もおぼろげに頭をかすめるが、思考は継続しない。
今はわかりやすい欲求を満たすためだけに動いている。
「俺もやばい…司、ほら」
手をひいて、ふらふらとベッドに向かう。
腕に絡み付いてくる司の体重を支えきれずに何度か体勢を崩すが、それを情けないと思う余裕もない。
「……司……司」
ベッドに押し倒して、また妖しげな呪文のように名前を呼びながらキスを繰り返す。
「ん…。せんせ……せんせぇ……」
気持ち良さそうに呼び返して、隆也の頭を抱く。
髪を指で梳かれるのはくすぐったい。これが司は好きなんだと思い出して、同じように髪を梳いてやる。
「は……司、するぞ……いっぱい、えっちなこと……」
「うん……して……いっぱい、して」
顔を近づけるというよりは重力に逆らわずに頭を落として、唇を重ねたまま司のシャツを捲り上げる。
胸を撫でて、それだけで乳首が立ち上がってしまう感度の良さに興奮する。
「ふぅ……ん、むぅ……」
苦しげな息を漏らす司の手はただ頭や背を撫でるだけで、服をひっぱろうとか脱がそうとかいう意志がみられない。
ただ無抵抗に横たわって、快感を待っている。
酒が入って素直になった状態がこれというのなら、普段の司はあれでも頑張っているのだろう。
「んむ……ちゅ……は…司……」
汗ばんで身体に張り付いたシャツを脱ぎ捨て、いつもより手間取りながらズボンを脱ぐ。
司はそれこそ寝入ってしまいそうに気だるげに体を投げ出してこちらを見ている。
「司、眠いのか?」
「……うん……でも、その前に……先生と気持ちよくなりたい……」
- 366 名前:司8.5 ◆aPPPu8oul. 投稿日:2005/08/22(月) 01:14:14 ID:ZXOcLqwm
- せっかくのこの空気で寝落ちはもったいなさ過ぎる。取り急ぎ司のズボンを脱がせにかかる。
近頃はもう、男物の服を脱がせるのにも抵抗がなくなった。
それ以前に、今日は何にも驚かず受け入れてしまいそうだが。
露にされた秘部を覆う陰毛を掻き分け、花弁を割ってみる。
期待していたわけではないが、そこはわずかにではあるがすでに湿っていた。
「…ダメ、先生……そこはまだ……」
「ん、わかってる……けどもう、濡れてるんだな……」
お互い表情が緩みっぱなしだ。恥ずかしさではなく酔いのせいで血の回った頬に口付ける。
「いっぱいキスしてもらったもん……それに、これからえっちなことするんだなぁ、って思ったら、濡れちゃった」
頭から足の先まで、いや主に股間に、言葉の甘さが染み渡って、血が巡る。
「そうだ。するぞ……司のして欲しいこともして欲しくないことも、いっぱいするからな」
おどかすように言いながら、首筋に舌を這わせ、胸を弄ぶ。
揉みしだき、乳首をこね、ときおりつまみあげる。
「は、うぅ……ん……ひゃ……」
かすかに身をよじりながら声を漏らす司の耳をかじると、一際高い声が漏れる。
「司……ここ好きだよな」
ささやいて、耳の後ろからまた首筋を舐める。
「ふぅ……ん、気持ち、いい……ぞくぞくする……ん」
ぴくぴくと震える体をどう可愛がってやろう。
「あと、ここも好きだよな……」
強めに乳首を摘んで、そのままぐりぐりと刺激する。
「ひゃ、あっ……だめ、せんせっ……」
高い声で発せられた"だめ"という単語は、この間からかったばかりだ。
「だめ?気持ちよくない?」
言いながらも乳首を責め続けると、司の腰がくねる。
「あ、ふっ……気持ちいい、けどっ……んっ、なんか……我慢できない……」
太ももを擦り合わせる動作は、早く触れて欲しいという意思表示なのだろう。
「ん…ここがいいんだな?」
ぴたりと閉じられた太もものと恥丘の間には三角形の隙間があって、迷わずそこに手を滑らせる。
先ほどはわずかにしか濡れていなかったそこが、べったりと愛液で濡れている。
「んぅ……そこ、触って……」
「あぁ……」
秘裂を指で往復して、花弁を揉み会陰をくすぐる。身をよじり声をあげる姿は、どうしようもなく淫らだ。
「ふぁ、ん……あ、あっ……せんせ、あぅ……もっとぉ……」
「うん……すごく可愛いぞ、司……」
ぴくぴくと、肉棒が震えている。すぐにでも入れたいが、まだだ。まだもう少し、焦らしてやろう。
- 367 名前:司8.5 ◆aPPPu8oul. 投稿日:2005/08/22(月) 01:14:47 ID:ZXOcLqwm
- 「…っあ、あ……」
せまい膣口に指を押し込んで、陰核をはさんで軽く揉む。
「は……ぁ……んんっ……やぁ……」
腰が動くが、引こうとしているのか揺らそうとしているのか、判然としない。
ただ、存分に感じていることだけはわかる。
ゆっくりとした膣内の躍動にあわせた速度で抜き差しし、ときおり指を曲げて強くこすってやる。
「んふ……んぁ……は、あ……あっ……」
厭らしい水音を立てる隆也の指に、蜜壷はすっかりほぐされてしまった。
司はただ快感に息を漏らし声をあげて、それに喜んでいる。
「司のここ、俺の指ですごく喜んでるぞ……」
「あ、は……やぁっ……」
陰核を挟む指に力を加えると、ぴくんと身体が跳ねる。
「は……はぁ、せんせ……もう、きて……」
「ん……そうだな……」
指を引き抜き脚を開かせ、露になった秘裂に猛りきった肉棒を押し当てる。
しかしそのまま挿入はせずに、腰を振って秘裂に肉棒を当て擦り、さらに焦らす。
「あっ……やぁ、あんっ……ふぁ……や、やだ、早くいれてっ……」
陰核まで擦ったせいか、涙を浮べて首を横に振る。
「…ふ……司、気持いいか……?」
その仕草に興奮しながら、変らず腰を振りぬめる秘裂に肉棒をこすり付ける。
「ん、うんっ……気持ちいい、けど、んっ……はぁ、早く、先生の……っふ…ちょうだいっ」
「あぁ……俺ももう、限界だ……」
頭がぐらぐらしているくせに、よくここまで責められたものだ。
いや、ひょっとしたらこの行為そのものに酔っているのかも知れない。
愛液を溢れさせている膣口に先端を宛がって、ゆっくりと進める。
「……っく……ふ、あ……」
せまい膣口を通り抜ける瞬間の気持ちよさはたまらない。
「……んっ……すごい、溶けそうだ……」
思わずそうもらして、奥まで届くといったん動きを止める。
「……ん……はぁ……は……」
肩で息をしている司の腰をなで、そのまま腿の後ろに手を滑らせて脚を持ち上げる。
力のない両脚を抱えあげると、挿入の角度が変る。
「あ……先生、恥ずかしい……」
熱っぽい目でそう言われても、喜んでいるようにしか見えない。
「大丈夫、すぐ……そんなこと、わからなくなる」
ゆっくりと抜き差しし、徐々に快感を高めていく。
- 368 名前:司8.5 ◆aPPPu8oul. 投稿日:2005/08/22(月) 01:15:20 ID:ZXOcLqwm
- 「ふぁ、んっ……はぁ……」
没頭しそうになると、ぴたりと腰を止める。そしてまたもどかしい速度で動き始める。
隆也の動きが遅い分、司は自分の中が蠢いているのを自覚せざるをえない。
「あ……せん、せ……もっと……」
「……もっと……どうしようか……」
さっきから射精感が襲ってきて仕方がないのだが、それを開放してこの快感を手放すのは惜しい。
もっともっと喘がせて、求めさせて、狂いよがる様を見たい。
「もっと、して……気持ちいい、から……」
「うん……俺も、気持ちいい……」
言葉にすると、余計に神経が研ぎ澄まされる気がする。
膣を押し開き最奥に打ちつける、その動きが早まる。
「んっ、あっ……はぁっ……は」
少し苦しげな表情の司の声と交合の音だけが、聴覚を支配する。酒と興奮のせいで、身体が燃えそうだ。
びくりと跳ねる肉棒を、膣が締め付ける。
「…っく……は……」
隆也のうめき声を聞くと、司は少し安心する。
「せんせ……あ、先生の…っ気持ち、いいっ……」
「うん……は……司の中も、だ……」
収縮と弛緩をくりかえす膣と、抽出を繰り返し跳ねる肉棒。
愛液を隔ててこすれあう度に、息が漏れ、愛液が滴り、快感が走る。
「ふぁ、あっ……いい、よぉっ……んぅっ……」
「…は……司…っ……」
一度動きをやめて落ち着こう―などという考えはもう浮かばなかった。
これだけ素直に反応する司は初めてで、もっとじっくり味わいたいとは思ったのだが。
「司……いく、ぞ」
答えを待たずに、一気に腰を引き、突き立てる。
「っひぁ…っ……あぁ……んっ」
びくりと背が跳ねる。構わず、激しく突き立てる。
「あ、あぁっ…せ、せんせっ…せんせぇっ……」
足を抱えられ抱きつくことのできない司の手は、シーツをにぎる。
「司……司……っ」
隆也に突き上げられて背が跳ねているのか、快感に身体が反応しているのかもわからない。
ただどうしようもなく気持ちよくて、声をあげることしかできない。その声も、もう声と呼べるものではない。
「せんせ……あ、は……はぁっ……ひ、あっ……!」
息と悲鳴の混じった声。快感の波がいっきに押し寄せてくる。
「だめ、あっ……イっちゃ……ひゃあぁぁんっ!」
- 369 名前:司8.5 ◆aPPPu8oul. 投稿日:2005/08/22(月) 01:16:39 ID:ZXOcLqwm
- 声と同時に締め付ける膣。その最奥につきたてた肉棒から、熱い精液が迸る。
「っく、う……は……はぁ……司……」
深く繋がり精液を注ぎ続けながら、抱えていた足を下ろし身体を重ねる。
身体が熱すぎて、境目がわからなくなりそうだ。
「…ふ……は……はぁ……せんせ……」
背に回された腕は力が入らないようで、ずり落ちそうになるのをなんとか耐えている。
重いだろうか、と気遣う程度には頭が働いているので、身体を横にして抱き合う。
息と下半身が落ち着くまで、しばらく抱き合って、何度か唇を落とした。
汗で濡れた髪を梳いてやると、焦点の合っていなかった目が細くなる。
「せんせ……」
「うん?」
ようやく息の整い始めた司の頬はまだ真っ赤だ。繋がったままだった肉棒をひきぬくと、僅かに震える。
「んっ……すっごく、気持ちよかった……」
「ん……俺も気持ちよかったし……司も、すごくえっちで可愛かったぞ……」
笑って頭をなでてやると、気持ち良さそうに目を閉じてすりよってくる。
いつもなら恥ずかしがってむくれるところだろう。こちらもだらしなく頬を緩めて、目を閉じた。
酔いと疲れの相乗効果か、いつもよりも強烈に眠りへとひきこまれていった。
目を覚ますと、まだ多少酔いが残っているようだった。
司がぐっすり寝ている間にとタバコを探して、きらしていたことに気付く。
「……ま、いいか……」
一人で呟いて、もう一度身体を横たえる。あと少ししたら司を起こしてやろう。
酒が抜けないうちに家に返すわけには行かないから、まずは水を飲ませて、それからシャワーを浴びさせて。
酔っ払ったままの隆也は、そのタバコを買いにコンビニに行ったのだということもすっかり忘れていた。
* * * * *
あれ、盛り込みたいネタはもっとあったはずなんだけどな……
つうかほんとに男装関係ないorz
- 370 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2005/08/22(月) 01:28:08 ID:cIO9O/34
- GJ!だがネタが>>121さんと微妙に被ってるな。そこが残念。
- 371 名前: ◆z1nMDKRu0s 投稿日:2005/08/22(月) 02:51:36 ID:p+bVLfi2
- 酒飲んでもカワユいな司タンは(*´Д`)ハァハァ
大酒のみの素質に完敗
>>370
え?
ドコ?
- 372 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2005/08/22(月) 04:31:29 ID:cIO9O/34
- 酒で性格変わるトコ
- 373 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2005/08/22(月) 09:59:40 ID:cQYKauS/
- いやいや、この程度のかぶりは普通にあること
特に酒酔いは魅力的なネタだし
気にするよりは書き手それぞれの料理法や味の個性を楽しむべし
おお、たくさんの話が!!
>狂介
けなげ有紀タソ ハアハア裏山ry 王道展開大好きだぜGJ
>萌拳
なんつー美味しい展開。あっさり流されるハニワ男イイヨイイヨ- 後編も期待
>司タソ
酔うと隙に磨きがかかりまするな!こりゃ酒席に一人では出せん!
今日も期待していいかなハアハア
- 374 名前:121 投稿日:2005/08/22(月) 10:29:38 ID:QIoheOL2
- >373に凄く同意。
>◆aPPPu8oul様
司くん、可愛すぎですよ。もう反則です私にくだ(ry
>白雀様
うわ、すごい自分好み展開。は、早く、早く続きを書いてそしてレンを(ry
では、最後の投下です。
- 375 名前:おれとぼくの彼氏争奪戦17 投稿日:2005/08/22(月) 10:32:05 ID:QIoheOL2
- 危なかった。危うく、人生最悪の醜態を晒してしまうところだった。
姉の豹変ぶりに妹が口を離してくれたので、些細な余裕が生まれる。もはや、理性は風前の灯だが。
「こんな羞恥プレイ、初めてだぜ? とっとと、これ外してくれよ。っつーか、こういうのは反則だろうがっ! 頼むから外してくれえっ!」
ジタバタ暴れるも、ぎしぎしとベッドを鳴かせるだけだ。
「ふふっ。たけし余裕なくなってる〜」
了がベッドに上がりこみ、身を乗りだして深く武志を覗き込む。至近距離の了の息は、アルコール臭かった。
「姉さん、ずるい。ビール飲んだでしょ。都合が悪くなったら、いっつもそうなんだから……」
自分の陣地に侵入してきた了に、ジト目の晶が講義の声を上げた。
了はまったく意に介さず、乱れたブレザーの中にぱたぱたと手で空気を送っている。
「なんかあついー。晶も脱ぎなさいよぉ〜」
「ちょっ、ね、姉さ……っ!?」
自分のブレザーを乱暴に脱ぎつつも、器用に晶の学ランを剥ぎ取ってゆく。本来の性別とは異なる服を取り払ったとき、そこにいたのは正真正銘の少女たちだった。
改めて目の当たりにすると、今更ながら本当に女だったんだなあと武志は実感する。
晶は両腕で胸を隠しながら、恥ずかしそうに武志から目を伏せた。
「もう……ほんと、姉さんってばアルコール入ると人格変わっちゃうんだから」
「これで仲間外れはぁ、た、け、し、だけっ」
突発的に了から発せられた言葉。武志は身の毛がよだった。晶はにやっとした。
「……だね」
「や、止めろ! 本当に逮捕するぞおい! それに縛られたままじゃ脱げやしないっての!」
簡単に服をたくし上げられ、ズボンを下ろされ、中途半端に裸というみっともない姿にさせられた。
この展開はなんなのだろう。
泣きたい。泣いて、全てを忘れたかった。記憶から抹消したかった。
こういうのは、性分ではないのに。数々の女性経験はあれど、こんな醜態は初めてだ。
「わ〜い、たけしの裸だー♪」
「わぁ、武志さん鍛えてるんだあ」
二人が武志の胸板に寄り添ってくる。
豊かな胸と、わずかな胸の感触。
「……遊びでも、いいのか? こんな簡単に、こんな軽い男に、処女をやっても」
「わたしたち、たくさんの男にレイプされたんだよぉ。だからぁ、そんな心配いりませぇーん」
さらっと。
今、了はなんと言ったのか。
「そうなの、か? 晶くん」
「は、はい……。で、でもでもっ、武志さんが気にすることじゃありませんよ?」
(いや、気にするだろ、普通……)
武志の顔が明らかに暗くなったので、晶は口をきゅっとつぐんだ。
姉さんのバカ、と小さく口にする。
了は甘えた仕草で、武志に抱きついたままだった。
「……やっぱり、抵抗ありますか。やっぱり嫌ですよね。こんな、汚れた身体じゃ」
「そ、そうじゃないんだ。ただ……」
彼女たちは、無理をしている。焦っている。ようやく抵抗を感じない男を見つけ、はやく男性恐怖症を治したい一心で。
たった一回の出会いで、身体を見知らぬ男に委ねるなど、普通ならしない。してはいけない。
ふいに胸板に顔を押し付けていた了が顔を上げ、上目遣いに武志を見た。
「ねえ。わたしたちじゃ、不満?」
「順番、逆だろ。セックスってのは、男女が付き合って、お互いをよく知って、それから、その……愛を確かめる行為のはずだ」
よくこんな臭いセリフが吐けるな、と思った。
「……セックス、怖いの」
了が武志の身体を人差し指でなぞりながら言った。
少し、くすぐったかった。
- 376 名前:おれとぼくの彼氏争奪戦18 投稿日:2005/08/22(月) 10:34:08 ID:QIoheOL2
- sage忘れすみませんorz
「だからね、わたしたちも克服しなきゃいけないの。そうしなきゃ、付き合えない」
やけにスムーズな言葉。これが了の本性に見える。本当に、了は酔っているのだろうか。
「ぼくと姉さん、どっちか選べなんていいません。少なくても、今は」
「……たけし。わたしたちを、気持ちよく、して?」
参った。
彼女たちは、必死に武志を求めている。重い、想いだ。
セックスをしてしまえば、後戻りはできない。今後、ずっとこの姉妹と関わっていくことになるのは確実だろう。
(俺は、ロリコンだったのかな)
そんな健気な彼女たちが、愛おしくなった。自分なら、彼女たちの枷を解放できる。それはただの都合のいい理由に過ぎないが。
「降参だ。俺の負けだよ。だから、自由にしてくれ」
二人の顔から、不安の色が消えた。
了がもたついた手つきで武志の手首の布を解いている途中で、晶も足首の布を解いてゆく。
しばらくぶりに開放された手首は、赤く染まっていた。
「ふう。ほんっとに、強引な姉妹だよな」
開放された武志の手は、即座に二人の股間へ伸びた。
「あっ!?」
「ひゃうっ!?」
十分に、秘所は濡れていた。愛撫など不要だった。愛撫など、する間も惜しかった。
覚悟したからには、一刻も早くこの猛りを鎮めたい。彼女たちに、快感を与えてやりたい。
「俺は覚悟した。こうなりゃ、とことん付き合ってやるよ。お前らも、覚悟しろよ?」
「か、覚悟なら最初から……っ! ……ん……」
了の手を引いて身体ごと引き寄せ、口付ける。お前たちのしていたキスは外見だけの見せかけのキスだった、そう教えてやる。
せっかくのキスの味は、ビールの味しかしなかった。
(未成年のくせして、かなり飲んだな……)
しかし、武志の巧みな舌使いは了の力を抜かせ、瞳も、酔いのソレとは異なるとろんとしたものへ変わらせた。
その目が、幸せそうに微笑んでいるのが分かる。
と、そこへ晶の唇が割り込んできた。了の不満がもれた声がした。
仕方ないので、次は晶に本当のキスの仕方を教える。しばらくして、負けじとばかりに再び了の唇が双方の接吻の間にもぐりこむ。
了と晶は、武志の唇の奪い合いをしていた。もはや、誰が誰にキスしているかさえわからない。
3Pというものはしたことはなかったが、こう、二人の美少女の争奪戦の目標が自分なんて、少しばかりの優越感が芽生えた。
自分から口を離すと、了と晶はまだ名残惜しそうにキスを求めてくる。
「そんなにしちゃ、ふやけちゃうだろ。こっからは俺に任せな」
了に両手をつかせ、後ろを向かせる。綺麗な形の尻が更に武志の欲情を掻き立てる。晶は、了を見上げるような姿勢の仰向きに寝かせた。この体勢は、武志が前々から興味があったものだ。
二人の秘所からは、とろとろとした愛液が溢れ、ぐっしょりとシーツを濡らし、武志を誘っていた。
「た、たけしぃ……」
「武志さん……」
やはり、恐れている。男たちに犯されたときの恐怖が蘇っているのだろうか。どれほど怖く、どれほど痛かったろう。心も、身体も、武志の想像を絶する痛みだったはずだ。
- 377 名前:おれとぼくの彼氏争奪戦19 投稿日:2005/08/22(月) 10:35:34 ID:QIoheOL2
- 「……いくぞ」
了の秘所にペニスをあてがうと、ゆっくり、ゆっくり、慎重に腰を進める。
彼女たちは、処女なのだ。例え処女膜などはなくとも。
「う……あっ!? あっ、はぁぁっ、っんんぅ……」
武志の進入を阻むかのように、了の膣内がきつく締め付けてくる。了のペニスはそれを押し広げてゆき、遂に根元まで埋め込んだ。
「んんぅ……はっ、はっ、はっ……たけしの、ぜ、ぜんぶ、入っちゃった、の……っ?」
答える余裕はなかった。それほどに、了の中は気持ちいい。骨の髄まで快感で支配されてしまいそうだった。まるで、初めてのセックスのときのような新鮮さがあった。
このまま欲望に従い、この少女の中を思う存分荒らしてしまいたかった。だがそれでは意味がない。
乱暴に動きたくなる衝動を抑えながら、相変わらずのゆっくりした動きで出し入れを繰り返す。
「あっ、あぁっ、あっ」
このあえぎ声は、間違いなく快感に染まった声だ。
未知の快楽に、了は必死に首を振っていた。
「う、うそ、うそうそっ……こ、こんな……セックスがこんな気持ちいいなんて……っ! 信じられない……反則、だよお……!」
「姉さん……すごい、エッチな顔してる……」
了の尖った乳首に触れ、こりこりと指に挟んでいじる。これからはこの可愛らしすぎる胸を攻め、成長させてやらねばならない。
「たけし……っ! たけし……っ! たけしぃ……!」
愛しそうに自分の名を呼ぶ了は、遂に自分から腰を振り始める。
けれど、ようやく波に乗れた了の中から武志はペニスを引き抜いた。
「ふえ……っ?」
「悪いな。次は、晶の番だ」
自分と了の体液でねっとりと濡れたペニスを、今度は晶の秘所に添えた。
「あ……。熱い、です」
了にしたときと同じように、ゆっくりペニスをねじ込ませてゆく。
「あっ! ああっ! あぅんっ!」
晶の中は了の中とは少し感じが違っていた。言葉では言い表せないが、それぞれに違った良さがある。
最奥まで到達し、前後の挿入を開始した。
「わ……んぅっ! ほ、ほんとだ……。あのときとは、ぜんぜん……んっ!」
少々揉みにくい体勢だが、それでも晶の胸を揉みしだくと、形のいい乳房が面白いほどに歪む。
「た、たけしさ……だめぇっ!」
了と晶。二人の少女に交互の挿入を繰り返す。それぞれの少女は自分のものだと主張せんばかりに、身体に吸い付いて証を残していく。
いい子たちだ、と武志は感心した。
本当はずっと自分だけに挿入して欲しいだろうに、お互いがお互いを気遣い、そして武志の行為を素直に受け止めている。身を委ねている。
動きは次第に激しさを増し、空いた手や口は片方の秘所を愛撫した。ぐちゅぐちゅと淫らな水音、肌のぶつかりあう乾いた音が室内に響く。
「んっ、あっ、んっんっ、あっ、ああっ!」
「あっ、あっ、あっ、た、けっ……あっ、あぁんっ!」
もはや、どちらがどちらの声なのか。
思考や感情は消え失せて、ただただ求め合う。むさぼり合う。そこにいる三人の人間は、ただの獣になっていた。
イク直前に辛うじてペニスを引き抜き、限界に限界を重ねた射精を繰り返す。そこから先はよく覚えていなかった。ただ、まどろみの中、二人の囁きが聞こえた気がした。
「「……大好き」」
- 378 名前:おれとぼくの彼氏争奪戦20 投稿日:2005/08/22(月) 10:36:58 ID:QIoheOL2
- 「よお。悪かったな、急に呼び出したりして」
「ん。大丈夫だ」
「武志さんに会うんだから、悪いなんて思わないよ」
学校からの帰宅途中の二人の服装は、やはり男物の学生服だ。
あの日から一ヶ月、結局、この「二人」と付き合うことになってしまった。世間的には二股、というやつなのだろうが、これは了と晶の公認済みだ。
以来、ちょくちょくと武志のマンションに来ては……すっかり気に入ってしまったらしい行為を続けている。無論デートも、だ。
やはり武志を独占したいのか、曜日を決めて一人ずつ。
ただ、外出するときは二人とも男の格好をしているので周囲の人間からは変な目で見られているかも知れない。けれど、武志は別に気にしかった。
そう簡単に男性恐怖症は治らなかった。男としての生活も急に女として変えられるわけもなく、学校生活は今まで通り男でいくらしい。
二人の過去の記憶は消さないだろう。
少しずつ、時間をかけて解決していくつもりだ。
会うときは大抵一人ずつの二人を呼び出したのは他でもない。この日、武志は二人に重大な発表があったのだ。
「捕まえたぞ。お前らに性的暴行をした上、そのビデオをネタに盗みを強要してた奴ら、全員」
「……ご苦労。よくやってくれた。さすがはおれの見込んだ男だ」
なぜか腕っぷしの強い了は実践犯担当、手先の器用な晶は鍵空け担当。このように役割分担され、彼女たちは盗みを働いていた。
「姉さん……やっと、やっと終わったんだね……」
「……うん」
逮捕するときに抵抗を見せたので、ちょっとばかし歯をへし折ってやったのは内緒にしておく。
「ま、その……なんだ。これからも、俺が守ってやるから安心しろよな」
了が武志の右腕に絡みつき、晶が左腕に絡みついた。心底嬉しそうな表情に、武志は頭を掻いた。
こんなとき、つくづくやられたと思う。
自分は、すっかりこの少女たちに骨抜きにされている。
「これでやっと、武志をおれたちの家に招待できる」
「そうだね、姉さん」
「家?」
そういえば、彼女らの口から家庭の話が持ち上がったのは初めてだ。それとなくその話題を出しても、うまくはぐらかされていたのに。
「さ、行くぞ武志」
「お、おいおい、今からなのか? 俺みたいな大人を家族に紹介したら驚かれるんじゃないか? それにまだ仕事が残って……」
そのまま二人に腕を引っ張られ、武志は連行されていった。
- 379 名前:おれとぼくの彼氏争奪戦21 投稿日:2005/08/22(月) 10:38:07 ID:QIoheOL2
- 途中、ポケットからタバコを取り出し、口にくわえたところで晶に取り上げられた。
「タバコは駄目って、言ったでしょ? ぼくたちの健康も考えてください」
「おれは構わないぞ。そこまで武志の自由を奪おうとは思わない。ただし、浮気をすれば半殺しだがな」
二人と付き合ってわかったことだが、了は非常に嫉妬深く、晶はとにかく身の回りのことにうるさい。
「ここは……」
しばらく歩いているうちに、なにやら見覚えがある場所だな、と武志は周囲を見回した。
そして思い出した。
冷や汗が、流れ出た。
「……そういや、お前たちの苗字、まだ教えてもらってなかったな。なんて、いうんだ?」
「――西明寺、だ」
二人の足が止まった。
武志は心臓が止まりそうになった。
目の前にそびえ立つは、豪邸も豪邸。家の入り口までは何十メートルあるだろうか。ここは、あの世界的に有名な西明寺コーポレーションの社長宅なのだ。
もはや口をぱくぱくとさせるしかなかった武志に、男装姉妹は振り返った。
「もう、なんの気兼ねなく武志をお父様に紹介できる」
「父様喜ぶだろうなー。なんたって、こんなに立派な跡取りができるんだもん」
コノコタチハ、ナニヲイッテイルノデスカ?
「お父様は門限が厳しいからな。だから武志の家には泊まれなかった。だが、これからはその心配も無用になるだろう」
「父様、ぼくたちが男の人と結婚するの諦めてたもんね。多分、すっごく応援してくれると思うよ」
回れ右。
全力疾走しようとした武志の服の襟を、にこやかな姉妹がしっかりと掴む。
「は、離せっ! 離してくれえ! こんなこと聞いちゃいないっ!」
「さ、お父様に挨拶だ」
「でも、武志さんがぼくたち二人と同時に付き合ってるなんて言ったら怒られないかなあ」
「問題はなかろう。付き合うということは、お互いをよく知る為にするものだ。だから、おまえと正々堂々勝負する為に武志との付き合いを認めた。おれと晶、武志はどっちを選ぶのか」
「ぼく、絶対負けないから」
「ふん、それはこちらのセリフだ」
了と晶。
なんて大物の娘たちの争奪戦の対象になってしまったのか。
武志は澄み切った青空をぼんやりと眺める。のんびりと浮かぶ雲も、太陽も、この哀れな子羊を助けてくれそうにはない。
「もう、困ったときにお酒飲むのは反則だからね」
「あ、当たり前だ! あんなエッチなの……おれじゃないし、武志からも禁止された」
「それじゃ、ぼくの圧勝じゃん」
「そ、そんなことはない! さ、最近は、何も頼らずにちゃんとできるようになった。た、武志も、か、可愛いって、言ってくれる」
「ぼくにも言ってくれるもーん」
「ぐ……むぅ!」
武志は観念して、項垂れる。
自分はなにもかも覚悟して、二人を抱いてしまった。今更引き返せるわけもない。
(こうなりゃヤケだ。こいつらのなにもかも、背負ってやる!)
硬く拳を握り締めるも、ずるずると引き摺られてゆくその様はなんとも情けなかった。
「ぜったい、おれが勝つからな!」
「そっくりそのまま、お返ししますー」
当分、「おれ」と「ぼく」の争奪戦は続くようだった。
- 380 名前:121 投稿日:2005/08/22(月) 10:45:14 ID:QIoheOL2
- 以上終了です。
いやー、無駄に長い上に時間もかかってしまい、申し訳ありませんでした。
読んでくれた皆様ありがとうございました。
自分自身、すごく楽しかったです。感想くれた皆様ありがとうございました。
これでただの名無しに戻りますが、こんなにもいい職人様たちに恵まれたスレなら安泰でしょう。
これからは一読者として、ちょくちょく来させてもらいます。
では、拙い作品ではありましたが、お付き合いありがとうございました。
- 381 名前: ◆aPPPu8oul. 投稿日:2005/08/22(月) 13:07:14 ID:ZXOcLqwm
- レスいただいた皆さんありがとう。
可愛がってもらえるうちは司に頑張ってもらいます。
>>121氏
今か今かと待ってましたよ!えろかわイイ!
GJ!
そしてネタかぶりすいませんでした…
姉をいただけるなら司とトレーd(ry
どうぞネタができたらまた来てください。ノシ
- 382 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2005/08/22(月) 15:14:44 ID:nroWQWyO
- 姉妹に挟まれてこのあといったいどうするんだろう……
結婚は一人としか出来ないしね……
ひょっとして武士、双子の兄弟がいるとか(笑)と
ひとしきり考えてしまったが
コメディコメディ♪と自分を納得させる。
どちらかというとお姉さんのほうが好みでしたー
楽しかったです。GJ!
- 383 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2005/08/22(月) 16:18:35 ID:cQYKauS/
- >争奪戦
お、俺ももしつきあうとしたら姉かな…
成長させてやらなきゃなんないしな…ハァハァ
いや妹も可愛いんだけど
とても面白かったです、またぜひ投下を!
- 384 名前:ナサ 投稿日:2005/08/22(月) 22:16:44 ID:OCFSab5n
- 今日もよく働いたなぁ
やっと家に戻れタ−
早速後編投下。
- 385 名前:婚前旅行7 投稿日:2005/08/22(月) 22:17:12 ID:OCFSab5n
- 「……クロード」
落ち着かず、しばらくごそごそと身じろぎを続け、やがて大きく寝返りをうったサディアスはクロードの様子を窺った。
まだ宵の口でもあり、生殺しのような状態になったままでもあるので、案の定全然眠くない。
近づくなと彼女は言ったが、近づきたい。
近づいて引き寄せたい。
柔らかい腕に抱かれ、細い腰を抱いて、挿れて、啼かせて、わかりきっているので以下省略。
王宮の衛兵宿舎ではさすがに無理だったが、慎重に示し合わせてこれまでに数回は都の下町で逢い引きしている。
その逢瀬時の、いつもの態度とは隔絶の感のある甘い反応の記憶が細い後ろ姿に重なって、サディアスはたまらない。
だが壁際に消し忘れたままの蝋燭に照らされた彼女の背はぴくりともしなかった。
「もう寝たのか?」
サディアスはそろそろと起き上がった。
いくらなんでも、この状況はちょっと耐えられない。
彼女の意思はできるだけ尊重したいが、ものごとには我慢の限界というものがある。
女は怒ればあっさり状況を忘れる事ができるのかもしれない。
だが、男には無理だ。
クロードがどんなに怒ろうと厭味を言おうと聞き流そう。
いや、憎まれ口を叩こうとしたらその前に唇を塞いでやる。
彼は決心した。
「──そっちに行くぞ」
上半身を傾けて毛布に掌を滑らせ、広い寝台の半ばを一気に越境しようと試みかけたその途端、いきなり彼女が飛び起きて叫んだ。
「………あっ!!!」
度肝を抜かれてサディアスは尋ねた。
「ど、どうし」
クロードはふんふんと自分の両腕を鼻先に寄せ、小さく呟いた。
「…やべぇ…!あー、良かった……あの女が来てくれて助かったぜ!」
彼女は勢いよく彼に顔を向けた。
「サディアス!」
「なんだ」
「風呂屋に行け」
「風呂?」
あっけにとられてサディアスはクロードの顔を見た。
「今から?」
「そうだよ。来る途中にあっただろ。鍛冶屋の近く」
確かに、やたら温い湯気の吹き出ている界隈があったことをサディアスは思い出した。
「だが、なぜ今なのだ?」
クロードの、薄暗いので紺味のかった碧い目がきらりと光った。
「とっとと行かないと閉まるじゃねーか。ほら、行った行った」
「おまえは?」
「俺は無理だ、見た目と中身が違う。行く時、食堂で盥と湯を頼んでくれよ。湯はたっぷりだぜ」
矢継ぎ早に言うとクロードはすばやく床に降り立った。サディアスが動かないのを見て眉をよせた。
「なにしてんだ?急げよ」
「いや、それより俺は、おまえと──」
クロードはサディアスの荷物に突進すると、それを抱えて投げてよこした。
思わず両手で受け取ると、彼女はいらいらと掌を振った。
「ほらそれ持って。急げってば!」
忙し気にせきたてられるままに、気付けばサディアスは上着を着、革ブーツの紐を結んでいた。
マントを羽織っている最中、無情にも、部屋を追い出された。
- 386 名前:婚前旅行8 投稿日:2005/08/22(月) 22:18:09 ID:OCFSab5n
- *
サディアスはとぼとぼと未だ人影の多い通りを歩き、営業終了間際の風呂屋に入れてもらうことに成功した。
こういう時、特に何も言わずとも生まれついての強面と大きな躯は役に立つ…ただこの特質は、元副長である婚約者に対してはもはや何の効力も有しないが。
ほかに客はもう二・三人しかいなかった。
天井の低い小さな室の壁際に並べられた熱した堅レンガの上に、係の男が瓶から水を振っている。
残っている客のためというよりはレンガを完全にさますのが目的だろう。
それを横目で見ながら室の外でマントを外し、上着とズボンをとり、さらに下着を脱ぎ──、彼ははたと気付いた。
レンガから立ち上る新鮮な湯気に誘われて、もわりと滲み、たちのぼる自分自身の汗の臭いに。
それもそのはず都を出てからの丸二日間、街道を馬で駆けっぱなしだったのだ。
それに昨夜は野宿のため当然ながら身ぎれいになどできなかった。
室に入り、他の客に遠慮しながら作りつけられた座の端っこに座る。
顎を撫でてみるとざらつくひげが掌に痛い。
湯気でふやけるまで待ち、試しに腕を親指の腹で何度かこすると埃と垢が丸まった。
「…………」
サディアスは、壁に広い背をもたせながら考えた。
女はきれい好きだというが、これが自分を追い出した理由なのか?
臭いと彼女は思ったのだろうか。
クロードも湯浴みすると言っていたが──。
───彼女はいつマントと上着を脱いだのだろう。
寝台の果てで跳ね起きたときの彼女の格好を、サディアスはようやく思い出した。
ブラウスだった。あれは確かに上着ではなかった。
いつの間に?
どうも、あの脱色した髪の女が来た時にはもうすでにブラウス姿だったような気がする。
肩を揉んでやろうと申し出てくれた時か?
違う。その後だ。
うつぶせになっていろと言われた。
あの時に脱いだのか?
見られるのは恥ずかしいから?それとも驚かそうとして?
いや、それはどうでもいい。
あの女さえこなければ、もしかしたら物事が非常にうまく進んでいたのか?
───そうなのだ。
その前の『妙に可愛らしいあくび』に『これ見よがしの肩こり宣言』に、『視線をあわせての甘えた微笑』。
サディアスはがばと躯を起こすと、室に備え付けの粗布をでかい掌で鷲掴みにした。
くどくど考えずさっさと行動に移っておれば、今はとうに彼女を抱いておれたに違いない。
なんと自分は…もう我ながら突っ込み飽きたのだが、間抜けで鈍感な弱腰男なのだろう。
彼女に言わせれば、たぶんいろいろ慮かりすぎて建前ばっかり言っている自分が悪い。
自分に言わせればいろいろひねくれていてさっさと本音を言わない彼女が悪い。
お互い様ではあるのだが。
結果的に風呂に入れてよかったのだろうが、なにはともあれこの有様でよくぞクロードは愛想をつかすことなく傍にいてくれるものだ。
急がねば。
- 387 名前:婚前旅行9 投稿日:2005/08/22(月) 22:18:45 ID:OCFSab5n
- *
出たときとは別人の勢いでサディアスは、腕に抱えたマントの裾を翻しながら宿屋に駆け込んだ。
狭い廊下を抜け、重量に文句を言う階段を二段飛ばしに踏みつけると左に曲がり、部屋の扉の取っ手を掴む。
開かない。
そして彼は鍵を持っていない。
「クロード!」
サディアスは肺活量全開で呼びかけた。
「クロード、俺だ!」
部屋の中から軽い足音がしたかと思うとガチャガチャと、錠をいじる音がたつ。
いきなり扉が開き、まさにその表面を拳で叩こうとしていたサディアスはもんどりうって部屋に転がり込んだ。
「…静かにしろって、馬鹿!でかい声出すんじゃねぇ!」
床から顔を上げ、サディアスは謝ろうとした。
「すまん。だが──」
喉に空気が通らなくなり、彼は青い目を丸くした。
ほっそりした片足ごとに五本ずつ、合計十本の指が並んでいる。
サディアスの足と比べると細工物じみた小ささで、どこか同じ人間のものとは思えない。
きちんと指の先ひとつひとつに爪が並んでいて、肌の白さにはめ込まれたそれは健康な血色を映した桃色だ。
きゅっと引き締まった足首へ、そこから滑らかな脛へ、歪みのない線が続いている。
その線は遮られることなく可愛らしい膝に這いのぼり、そこで機能美を描いたあと、弾力の強いしなやかさを得てさらに上へと続いていた。
太腿の上半分を覆っているのは着替えらしき白のブラウスで、脚の線は裾で断ち切ったようなすとんとした直線で途切れている。
だがそのそっけなさが、かえって、衣服の内側で華奢な躯が脚と同様、細身ながらも魅力的なラインを形作っていることを容易に想像させてしまっている。
クロードが靴もズボンも履いてない事がサディアスにはわかった。
…たぶん、下着も。
もっともそれすら予想できないとなるともはや、人としてすら不合格になってしまうだろうが。
「大丈夫?」
クロードが床に両膝をついた。
サディアスは差し出されたその手を掴み、引いた。
ささやかな重さが容易く腕の中に納まり、そのしっとりと潤ったような躯を彼は夢中で引き寄せた。
湯浴みをしたばかりの肌と石鹸の匂いが入り交じり、サディアスの記憶の中でクロードの匂いとして認識されているそれに重なっている。
「風呂に入ってきた」
「そう」
クロードはまだ濡れている黒髪の頭を傾け、サディアスの首に腕を巻いた。
「さっぱりした?」
「うむ。……おまえも、いい匂いだ」
「そう」
クロードの声に安堵が滲んだ。
「良かった。クサイって思われんの、やだもん」
サディアスは呟いた。
「おまえがどうでも、俺は構わなかったのだが」
クロードはちょっと黙り、彼の見える範囲の首すじが赤くなった気配がした。
腕をほどいた彼女は、サディアスの青い目を憎たらし気に見た──つもりだろうが、視線が柔らかいのでたぶん意図どおりの迫力はない。
「……そんなの、恥ずかしい。ばか」
サディアスは頷いた。今回ははっきりと自覚がある。
「それでも本当に、それで良かったのだが」
「あのな……。ま、いいや。ほら、立って」
クロードは身をくねらせるようにして腕から抜け出し、サディアスの腕を引っ張った。
立ち上がった巨漢と手を繋いだ彼女は、綺麗な碧い目で彼を見上げた。
「じゃあ約束どおり、肩、揉んであげるね」
「いらぬ。それより俺が揉んでやろう」
クロードを宙に引っ張りながらサディアスは、部屋の奥の寝台に向かった。
- 388 名前:婚前旅行10 投稿日:2005/08/22(月) 22:19:31 ID:OCFSab5n
- *
「揉むって…」
寝台にクロードをひっくりかえし、サディアスはその横にあがりこんだ。
「肩が痛いのだろう」
「……ううん」
クロードは赤くなった。
「あれ、嘘」
「遠慮するな」
サディアスは笑った。素早く彼女を転がして、うつぶせにしてしまう。
「え、あの…でも、悪いし」
じたばたするクロードの首根っこをおさえつけた。力は加減している───つもりだ。
そのまま大きな掌で首すじから肩へのなだらかな線をおさえ、柔らかく揉み始めた。
窓の下の街路で、酔っぱらいが何人かあやしげな歌をがなり始めた。
とても聞けたものではない。
どこか別の建物で窓を開けた誰かがなにかを叫んでいるが、サディアスの耳には聞こえない。
「…あ。気持ちいいや…上手」
クロードのくぐもった声がした。
揉みながら、サディアスは答える。
「だろう?……『遠慮するな』」
彼女は幸せそうに小さな溜め息をついて毛布の合間に沈みこんだ。
リラックスしている様子だ。
こんな時が、彼がクロードをしみじみと女性だと実感する瞬間だったりする。
その気があるとわかっている男相手に、そして自分もそれがイヤではないくせに、同じ寝台の上で、ほのぼのとした平和な状態にすぐ頭が切り替わるらしいのが不可解だ。
それはサディアスが、一旦欲望に囚われるとそれを吐きおえるまでは弛緩することができない男という種族だからなのだろう。
女は「あなたに抱きしめられているだけで幸せ」とよくのたまうが男にはそうは思えない。
もちろんしっかり抱きしめてはやるがそれは通常その先の目的のためなのだ。
女式の快楽につきあってやりたいのはやまやまだが、サディアスだって我慢してきた。
いい加減、自分の側に彼女を引きずり込んでも文句を言われる筋合いはない。
肩から二の腕に掌を滑らせ、その細い危うさを堪能しながらサディアスはまだ真面目に揉むふりをしていた。
矢を引く右腕が左にくらべると多少かたい。
だが、その腕前は男並か男をしのぐほどなのに、筋肉はあからさまな発達のしかたはしてはいない。しなやかな腕である。
柔らかくしまった背中の、肩甲骨から背骨に沿ってを指でほぐしてみる。
指先に伝わる弾力も、染み込んでくるような皮膚の柔らかさもそれだけで彼を誘っているようだ。
躯を覆っているのが薄いブラウスだけなのはとっくにわかっているので、あまり胴から下に手を置かないように気をつけている。
クロードの安心しきったような横顔に喜びと満足を感じるが、穏やかなそれは今はあまりにも弱い感情だった。
そろそろ、裏切りはじめることにする。
*
サディアスの掌が離れた気配に、クロードは薄く碧い目を開けた。
なかなか次の感触が訪れないので、これで終わりなのだと彼女は思った。
躰をほぐされる快感に本当にうっとりしていた。
こうなると、やはり相手の躰もほぐしてやりたくなるのが人情というものだ。
「ありがとう、サディアス。じゃ、次は交替」
肘をついて起きあがろうとしたところをおさえつけられた。
背中から腰に滑った大きな掌が上から圧している。
「遠慮するな、と言っておるのだ」
「あ、でももう…」
いいよ、と言いかけた言葉は尻窄みに消えた。
腰に降りた指先が、ブラウスの裾にするりと潜った。
- 389 名前:婚前旅行11 投稿日:2005/08/22(月) 22:20:04 ID:OCFSab5n
- 「あっ」
「うむ?」
肩をねじって振り向いたが、サディアスは至極真面目ないつもの顔をしていた。
「……ううん…」
すぐに背中に戻った指が背骨の下側をおさえはじめたので、クロードは今のは自分の勘違いかもしれないと思った。
多少裾があがってしまったのが気になるが、過剰に反応するのも大人げない。…お尻が見えそうですこし恥ずかしいと彼女は思いながら、それでもおとなしく毛布に顎を埋めてみる。
いきなり寝台が揺れた。
その揺れはさほどでもなかったが、背の大部分にサディアスが覆い被さった気配がして、彼の匂いが流れた。
体重はかけてこないが、温もりが伝わって圧迫感を感じる。
クロードは慌てて毛布の上に掌をついたが、うなじの付近にまた、平穏な声が落ちた。
「手が届かぬからな」
「そ、そう…」
サディアスの掌が、親指を背骨にあてひろげたようなかたちで彼女の躰をあがっていく。細さを確認されているようで、クロードはかなり落ち着かない。
どこに手が届かないのだろうと考えていると、するりと乳房と毛布の間に、その厚い掌は潜り込んできた。
これではっきりした。
「サディアス!そこは凝ってないから!」
クロードは跳ね起きようとしたが、同時に落下してきた重量に呻いて諦めた。
すぐにそれは退いたので、サディアスには彼女を圧死させるつもりはないらしい。
「いや。気づかぬだけで、本当はひどく凝っているかもしれぬぞ」
その声に、どことなく愉しんでいるような、興奮しているような軽みがある。口調は全く変わらないのだが。
さすがに元衛兵長だよなぁ、とクロードはどうでもいい感心をする。
この男が表面上、感情を隠すことが得意なのは知っているが、緊張するとどもる癖までが彼女と致す場合に限って姿を消すのが不思議である。
せっぱつまってくると緊張も照れも薄れるらしい。
これはこれでやはり単純な男だと、言っていえないこともない。
*
ごつごつ節くれ立った彼の指や関節を押しつぶしていると自分の躯のほうが痛いので、クロードは仕方なく肘をついた。
あまり躯を浮かせると今度は背中が分厚い胸にあたってしまうので、どこまで力をいれればいいか、迷う。
迷っていると、乳房を柔らかく握られた。
「……」
は、とも、あ、とも違う吐息をかみ殺し、クロードは躰を丸めるようにして、赤くなった顔を伏せた。
首を曲げすぎたのか、きっちり閉じていないブラウスの胸元から、内側がぼんやりと見えた。
- 390 名前:婚前旅行12 投稿日:2005/08/22(月) 22:21:55 ID:OCFSab5n
-
あまり大きくない、白い乳房が目の前にある。
ブラウスの裾をはねあげた逞しい腕が脇腹をまわり、指をひろげた掌が乳房を焦らすような弱さで揉んでいる。
いつもはかたちがいいのに、もうその面影などはない。めまぐるしくかたちが変わる。
下を向いているので余すことなく掌におさまった重量が思いのままに捏ねられていた。
そうこうしているうちに、もう片方の腕も反対側から潜り込んでくる。
彼女は小さく喘いだ。
「…ぁ……」
自分の躰を愉しんでいる彼を見る余裕はいつもはあまりないので、クロードの頭の芯はそのエロティックな眺めにすっかり占領されてしまった。
薄い闇の隠微な眺めから目を離せずにいた彼女の肩がびくりと跳ねた。
その勢いで、サディアスの肩の後ろにとどまっていたマントがばさりと流れ落ちた。
うなじに吸い付いた軟体動物の正体は明らかで、それが濡れた音をたてつつ細い首すじに動きはじめるとクロードはついに声をあげた。
「そっ、それ、揉むって言わない!」
「……」
顔をあげる気配。
「…では、何と言うのだ」
「舐め…てるんだろ」
「そうとも言う」
それきり言葉はやみ、そうもなにも、舐めるのは舐めるってだけじゃねぇか!と叫びたいのに、現実にクロードの唇を割るのは情けない喘ぎだけだ。
いつも逢瀬の時には時間がなかった。
二人とも熱心だったが、いつもあわただしく時間を気にしていた。
だから、サディアスがこんなにけろっと『遊び』をしかけてくる事もなかった。
「サディアス…ねえ…」
耳のあたりを咬まれながら、クロードは細々と呼びかけた。
彼が愛撫をするたびに躰を叩くマントが気になっている。
「ねぇ、あの…」
いつまでサディアスはこんな格好をしているのだろう。
自分だけ湯上がりのままの適当なブラウス姿(しかも胸ははだけているし裾はまきあがっている)なのに、サディアスだけきっちり服を着込んでいるのが、恥ずかしいというか羨ましいというか、つまり恨めしい。
「やはり凝っているようだぞ」
サディアスの指は、乳房の先端をさっきからつついてくる。
掌におさめたまま動けなくして、といういかにも憎たらしいやり方である。
逃げられない。
クロードは染まったままの顔を振る。逃げるつもりもないが、すこしは抵抗のそぶりだけでもさせてくれればいいのにと思う。
彼のする事に一直線に反応してしまう様子を見られているのはひどく恥ずかしい。
「サディアス、ったら……あぅ…」
返事をしない彼に苛立ち、声が大きくなったところですっかり目覚めた乳首をピンと弾かれた。
軽くのけぞり、その事自体が照れくさくて彼女はまた肩をすくめる。
「なんだ?」
「は……あ、あの、服…脱が、ないの?」
サディアスの躰がずしりと腰にかかる。
乳房ごと上半身を絡め取るように腕を胸の前で交差され、耳に声が響いた。
「脱いだほうがいいか?」
内心では、当たり前だ!と叫びたい。
だが元副長の威勢の良さはどこに行ってしまったのか、今の半裸の躰には喘ぎや吐息しか詰まっていないようだった。
クロードは仕方なく、辛うじて出せる声で呟いた。
「うん…お願い」
「わかった」
サディアスの躰が離れた。
ふう、とクロードは小さな息をつく。
彼の重みは嫌いではないが、なにせ大きな躰なので、長い時間はきつい。
- 391 名前:婚前旅行13 投稿日:2005/08/22(月) 22:22:44 ID:OCFSab5n
-
彼女はころりと転がって身を起こした。
マントの留め金に手をかけながらサディアスが、いかつい顔をほころばせて彼女を見ている。
その目の青さがいつもよりわずかに薄い事に気づくと、彼女はとっさに前をあわせた。
ブラウスのボタンが、いつの間にか全て外されている。
「いっ、いつの間に外したんだよ!」
男の躰の下から離れると、いつも通りの口調が口をついて出た。
サディアスはどんどん服を脱ぎながら言った。
「さあ」
「さあじゃねぇよ!」
サディアスは服も下着も広い寝台の片隅に放り出し、のそりとクロードに近づいた。
ブラウスを気にしている彼女の胴を捕まえて引っ張り寄せた。
「要らぬだろう」
「そりゃ……」
碧い目が、困惑の表情を隠して見上げてきた。
「……そう、だけど」
「クロード」
「え?」
「手を貸せ」
*
彼女がサディアスの顔ばかり見ているには理由がある。
服を脱いだ彼の股間を目の当たりにするのを避けているのだ。
通常の状態ならまだしも興奮したそれはおそらく造形的にもこっけいというか間抜けなものであろうから、女の恥じらいを別にしてもしかたないといえば仕方ない。
だが、見て欲しいわけではないが、無視されるのは困る。
他の男は別に困らないのかもしれないが、サディアスは困る。
というのもクロードの指は、比べるも愚かだが彼の指などよりはるかに細くてしなやかだ。
本人は矢だこがあるんだぜと主張するが、気になるほどではない。
逢瀬の時にその指を絡めてもらった時の快楽が忘れられない。
ゆっくりできるときにぜひとももう一度してもらおうという密かな決意を一方的に固めていたのだが、今こそがその絶好の機会だ。
- 392 名前:婚前旅行14 投稿日:2005/08/22(月) 22:23:36 ID:OCFSab5n
-
彼の拳に握られてそこまで導かれると、クロードの目元は赤く染まった。
「えっ、あ…」
見ないわけにはいかないし、でもまじまじと見るには抵抗があるらしい。
躰の奥深く沈められるのは気にならないくせに、女とは不思議なものである。
背中を引き寄せて、困惑から解放してやることにする。
ブラウスがまといついてはいるがもう裸も同然の姿で、クロードはサディアスの肩に顎をかける格好になった。
裾のはしから尻が出ている。
白い、可愛い尻だ。
浮かせたその尻に続く腹に隠されてみえないあたりに、勘でクロードの手を押しつけた。
耳元で、クロードが小さく息を漏らした。
「………すご」
かなり硬くなっている事に触れられて気づく。
ずっと気分が盛り上がっていたので慣れてしまっていたのかも知れぬ。
先端を、指先がすぅっと撫でた。
もう一度撫でた指先が濡れている。その指で輪郭を辿るように、クロードはモノを撫でた。茂みをおさえ、幹の長さをあらわにする。
その下の実を軽くつつく。厚ぼったい皮をひっかくようになで上げて、彼女はだらりとした重みを掌に載せた。
だんだん、クロードが愛撫に力を入れ始めたのがわかった。
彼女が小さく呟くのが聞こえた。
「……面白い、ここ…」
最初はいやいやという気配もあったが、さわっているうちに興味を覚えたのだろう。
袋は袋で嬉しいが、どちらかというとずばりそのものの棒に触れて欲しいのだが。
どうやらこりこりした楕円の玉が、触れるとにゅるりと逃げていく独特の感触の虜になったらしい。
クロードの愛撫がいつのまにやら実験をしている気配を漂わせはじめたのを感知して、彼は憮然とした。
「待て。……もういい」
「待ってよ」
クロードは躰を起こした。きらきらした碧の目は魅力的だがなんだか雰囲気がいつもと違う。
「どうしてこうなんだろう」
もうほとんど乾いたらしい、短い黒髪が宙を舞った。
呆然としているサディアスの膝に手をついて、顔を近寄せた彼女はじっとモノを見つめた。
「おい」
サディアスはもじもじした。
無視されると傷つくが、注目されると結構恥ずかしい事を発見する。
「…そう、じろじろと見るな」
持ち主は照れくさいのに、珍しくも綺麗な女性に注目されて張り切ったのか、モノは萎える気配もなく誇らしげに勃ちあがって揺れている。
「クロード」
「…ねぇ」
クロードは邪魔なのか、前髪をかきあげた。
「ここも洗ってるよね?」
当然である。サディアスは頷いた。
「洗った」
「じゃ、平気かな」
「なに」
が、と言いかけてサディアスはくぐもった声を漏らした。
- 393 名前:婚前旅行15 投稿日:2005/08/22(月) 22:24:22 ID:OCFSab5n
-
ぱく。
そういう擬音が聞こえそうな邪気のなさで、彼女がそれを銜えたからだ。
一口に銜えられたわけではなくほんの先のことではあるが、モノがモノであるだけにその刺激は凄まじかった。
唇の内側に熱い舌に小さな鋭い歯の先端に口腔の内側の濡れた暖かさが一気に先端を包み込む。
「うお」
変な声を出したサディアスを気にもせず、彼女は口を離した。
「…大きいんだ」
感心したように彼女は呟いた。
「そ、そうか」
なんだか襲われているような気がする。サディアスは襲撃に喜び勇んでびくびくと震えているそれにちらりと目をやった。
クロードがまたかがみこんだ。
今度はなんだ。
ぺろ。
舐めた。
「うおっ」
サディアスは、また驚きの声をあげてしまった。
いや、今回ここまでさせるつもりは。
クロードは今度はすぐにはやめなかった。
先の、広い部分をつるつると舐め、先っぽの孔から滲み出る液体まで丁寧に舐めとっている。
「……変な味…」
こもった声が幹にぶつかる。サディアスは必死でその肩を掴んだ。
「そ、そうか。もういい。無理をするな」
クロードは顔をあげた。
荒げた息で上下する分厚い胸板を眺めている。
「……サディアス、…なんだかすごく気持ち良さそうだな…」
見上げてくる目の碧がこれほど危険な色に思えた事はない。
「いや、クロード、もういい。いいから顔を…」
サディアスは元衛兵長の威厳を身に纏おうと努力したが、こんな状況でそれができる男はおそらく世界広しといえども一人としていないだろう。
はむ。
「うわ」
ついにクロードはそれを含むと、口の中で飴玉でも舐めるようにくまなくしゃぶり始めた。
時々歯がぶつかるが、それでも気持ちいい。
それなのに気持ちいい。
なぜだ。
ぺちゃぺちゃと、腰が抜けそうな唾液だかなんだかの音がたつ。
「クロード、頼む。やめろ、このままではイく」
見栄もなにもなく、サディアスは渾身の力でクロードをひっぱがした。
彼女のしわくちゃになった男仕立てのブラウスは、もはや本来の用途である、躰を隠す役には立ってはいなかった。
その上の白く整った顔は不満そうである。
呼吸が少々乱れているのがその淫らさを増幅させている。
「……なんだよ。すごく気持ち良さそうだったのに」
「それが困る!肝心の事ができなくなるではないか」
- 394 名前:婚前旅行16 投稿日:2005/08/22(月) 22:25:15 ID:OCFSab5n
- 「肝心…あ」
勢いよく押し倒されたクロードは、すぐに上に載ってきたサディアスの下で身をよじった。
「待って、まだブラウス脱いでない」
「着ていても同じだ」
「でも……あっ」
クロードは唇を開いて小さな声をあげた。
太股の間に割り込んできた彼のモノが当たっている。
碧の目が不安そうに瞬いた。
「あの、む、無理じゃない…!?い、今、凄い事になってるのに」
サディアスは囁いた。
「これまでも入った」
「今まではちゃんと見てなかったから!」
クロードは言い返した。
「見たら…その…なんか……」
「舐めてくれた」
サディアスは面倒そうに、さらに低く囁いた。
「……………か、可愛かったんだもの。ぴくぴく揺れてて」
クロードは赤くなり、サディアスに抱きついた。
「では、怖くはないだろう」
「………うん」
その腰の後ろを抱きとり、ゆっくりと太腿の間に入り込む。
「…んっ…」
細い躯がかすかにのけぞった。
「あ……あん……」
おしいられた花の芯から熱い蜜が溢れてサディアスにたっぷりとまつわりつく。
これ以上ないほど硬く充血した幹のこわばりも充分滑らかに入り込めるほどの濡れかただった。
「クロード……」
反応を見ながら、これ以上進めなくなるところまで入り込む。
「……んん……」
クロードが顔を反対側に背けて喘ぐ。
おそらく苦しいわけではなかろうが、自分の内側に男を迎え入れるのがどんな感覚なのかサディアスには想像もつかない。
ただただひたすら、彼女の中は熱くてきつくてぬるぬるしていてとてつもなく気持ちいい。
「…ちゃんと、入ったぞ」
「…はぁ……」
クロードは、いつの間にか瞑っていた碧い目を開けた。
「…ほんとだ…あ…すごいね…」
サディアスの肩にまわしていた腕をおろし、自分のなめらかな下腹部をそっと指先でおさえる。
「……ここ…らへん、かな……?」
この感覚のもとがさっき見たものなのだと納得しているらしい。
やっと挿入できて軽く満足したサディアスは、そこですかさず提案した。
「動かしてみるか」
クロードは顔をあげて微笑した。
「…うん」
- 395 名前:婚前旅行17 投稿日:2005/08/22(月) 22:26:24 ID:OCFSab5n
-
その躰をしっかと抱きしめる。
彼女の腰はたしかに細い。
男女の違いというだけでなく、サディアス自身の躰の大きさが人よりも違うので、なにやらひどい事をしている気分に、たまになる。
それでもクロードはいやがらないし、サディアスのその大きい躰すら好ましいらしい。
それが、彼も嬉しい。
愛されているような気がする。
ゆっくりと始めた動きが早くなっていくのに、さして時間はかからなかった。
サディアスがこれまで辛抱していたせいもあるし、クロードの反応が良かったせいもある。
「ん…あ、はぁ…ねぇ、だめ……だめだよ、そんな……」
何度もサディアスの名を呼び、彼が突き上げる時々に漏らす喘ぎも声も、切羽詰まって切な気でとても可愛かった。
「あ、あ…あっ、サディアス、だめっ……もう…!…」
熱く叫んで全身をしならせ、震えながら、彼女の中がサディアスを絞った。
これまでにも軽く波のきたことはあったらしいが、彼にもはっきりとわかるほどの反応を彼女が与えたのはたぶんこれが初めてだった。
「あ…っ、あっ、あ…あ…!…………」
大きく息を吐き、緊張していた躯の力を全て手放して彼女はサディアスの腕の中に崩れ込んだ。
「は……あ……ぁん……」
潤んだ碧がぼんやりと彼の顔に視線を這わせた。
「ん…っ……」
まだひくひくと震えている。
彼女は囁いた。
「…今のが、そうなんだ……」
「…は、……あ、良かったか……?」
「すっごく」
甘い吐息をついて、クロードはサディアスの動きが変わらないのに気付いた様子で小さく呻いた。
腰をくねらせて啼き声をあげる。
「……そんなに、しないで…あ、んっ…なんだか、…また変に、なっちゃう…」
「まだ、だ」
「え?」
「俺は、まだなんだ」
散々妙な状態が続いたためか、いつもとペースが違ってサディアスは少し焦っている。
クロードの頬にまた赤みがのぼった。
しどけなげに腕を伸ばして彼の躯を抱き直す。
「……ごめんね」
クロードが謝る筋合いではない。
「サディアスも、はやくきて…」
彼女は、彼の動きにあわせるように腰を優しく応えさせはじめた。
しばらくそれに耐えたあと、柔らかな背を力一杯抱きすくめ、サディアスは歯を食いしばって呻いた。
「く…!」
「サディアス……」
やっと訪れた射精の間、彼女は彼の頭を抱いて細い喉元に置かせてくれていた。
こんな女が抱けるのなら、すこしぐらい理不尽だろうが焦らされようがなにほどの事はない。
深い疲労と満足の中、サディアスはそう思った。
- 396 名前:婚前旅行18 投稿日:2005/08/22(月) 22:27:31 ID:OCFSab5n
- *
広い寝台に敷かれていた毛布のあちこちに服が散らばり、ブラウスが枕元に放り出されている。
裸のままの二人は互いの腕にそれぞれの黒髪と赤毛を預けてぐっすりと寝入っていた。
部屋の気温は低いのだが、毛布と互いの温もりのおかげで、たぶん風邪をひくことはないだろう。
宿の下の街路でしつこく歌っていた最後の酔っぱらいも、いつの間にやら退散したようである。
静かに更けていく夜は、まだかすかに冬の名残をとどめていた。
おわり
- 397 名前:ナサ 投稿日:2005/08/22(月) 22:28:27 ID:OCFSab5n
- ええそれではおあとがよろしいようで…(ちゃんちゃん
- 398 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2005/08/22(月) 23:04:09 ID:nroWQWyO
- イイ、イイ、すんごくよかったです。
なんか露骨な話でなんだけど
女がイケるようになるのって少し慣れたころからだよね。
それもただの挿入時じゃなくて騎乗位とか座位のほうがいきやすいようなきがする。
(奥まで入るからだと思う)
こういう細かい描写がリアル(あくまで自分にとってだけど)な話は
めさめさ感情移入できる。萌える。
微妙に遠距離恋愛になった二人もみてみたい!
麗の親父さんとどう付き合ってくのか、
クロード、サディアスのところに家出してこないかなーwと
期待してみたり。
いい作品ありがとうでした!
- 399 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2005/08/22(月) 23:39:49 ID:nroWQWyO
- スレの流れが速くて遅レスだけど
「土曜日の情事」続き気になって寝れんとです……
第一回はぼんぼんのえろえろのやなやつかと思ってた龍司が
第二回でかなりポイント上がってるんですけどっ!
瑞希はなんかかっこいいですね。
いろんなことを我慢して生きてる彼女、凛々しいです。
スーツなんかも安物だろうけど
ちゃんと手入れしてきてるんだろうなーと想像してしまいます。
で、ちょっと話題は変わるんですが。
お忙しい方はスルーよろしく。
私ときどき着物を着るんですが補正のためにさらしを巻きます。
胸がいい具合に収まるんですよ。
でも背中とかウェストとかさらしだけだと寸胴に出来ないので
タオルを巻いたりしますけど。
なので
男装が一気に女装、もとい振袖とか着るようになったとき
さらしの感覚を懐かしむもと男装の女の子っていいかも、なんて思ったりしたのでした。
ネタ未満の長話すんまそん。
- 400 名前:白雀 ◆T2r0Kg7rmQ 投稿日:2005/08/22(月) 23:51:59 ID:n9lqL8LY
- >>司氏
うわ、エロ可愛いです。
キャラに愛着持ってくると、男装とか関係なくどんな話でも魅力的ですからよかったですよー。
>>121氏
読後感のいい終わり方でよかったです。
二人とも可愛かったです。ダブルだと萌度も跳ね上がりますね〜。
後編が期待にそえられるか分かりませんが、私も頑張らせていただきます。
>>ナサ氏
相変わらず、見事としか言いようの無い描写力。お見事です。
これだけ事細かに書き込めるには、よほどの努力をなさったのでしょうね。
この二人もかなり好きです。
さすがに一日では後編完成せず……。毎日のように投稿していらっしゃる方の執筆スピードには戦慄すら覚えます。
待っていてくださる皆さん、私のはもう少しお待ちください。
- 401 名前:狂介と有紀 投稿日:2005/08/22(月) 23:54:35 ID:U9ud5zcP
- 『朝のご奉仕』
ジリリリリリリリリリリリリリリリリ
「やかましいわぁぁぁ!!!!」
俺の右フックが目覚まし時計にヒットした。そのまま壁に激突し
音が鳴り止む。
「・・・・目が覚めるだろ・・・・ZZZ」
目覚まし時計の存在理由を根本から否定し再び惰眠を貪る。
一般に二度寝のほうが意識がはっきりと覚醒する。俺のこの行為は間違っていない、
むしろ正しい行いだ・・・・・ZZZ
股間から感じる何とも言えないむず痒い刺激に再び覚醒する。
男の朝の生理現象だろうか、この快感に酔いしれてしまう。しかし、
微眠みが消え意識が完全に覚醒するにつれ、それが間違いだった事を自覚する。
誰かいる。
よく見るとソレは俺と同じ学校の制服を着ていて俺の股間にうずくまり
俺のアレを咥えて・・・・・・・アラ?・・・・えぇぇ!!
「有紀!!」
- 402 名前:狂介と有紀 投稿日:2005/08/22(月) 23:56:14 ID:U9ud5zcP
- 「ふぅん・・・ん?・・・おふぁよう・・狂介・・・んむ」
有紀は肉棒を咥えながら、その可愛らしい顔を俺に向け挨拶する。
「どうもおはようございます・・って違う!!何やってんだよ!?」
肉棒を咥えられたまま俺は問い詰める。
「んっ・・・ぷは。・・・何って朝のご奉仕。」
満面の笑みを浮べ有紀は答える。そしてそのままご奉仕を再開する。
「ごっ・・ご奉・・仕って・・・うっ!!」
再び何とも言えない快感が股間に襲い掛かる。
「ひょうすけぇ・・・・ふぃもちいい・・・?」
気持ちいい?と聞かれているらしい。しかし、その口の中で
舌がうねる度にただ舐め回されるのとは違う快感が攻撃してくる。
「あ・・あぁ・・気持ちいい・・・」
どうやら理性がぶっ飛んだらしい、有紀の奉仕に身を任せてしまう俺。
「ふぉんとぉに?・・・よかったぁ・・・・んむ・・・」
応えながらも、有紀は口と舌の動きを止めようとはしなかった。
舌先を器用に使いエラの部分をチロチロ舐め回しながら舌全体は
亀頭をくわえ込む。進行方向を確認した唇はそのまま沈み込み
根元まで丹念に往復する。
- 403 名前:狂介と有紀 投稿日:2005/08/22(月) 23:57:21 ID:U9ud5zcP
- 「あぁ・・・・ん!!」
限界まで張り詰めた己の分身を暖かい口腔で包み込まれ、舐め回される快感に
腰を震わせ身悶えてしまう。時折強烈に締め付けるその妙技に
腰から全身へと自分が解けてしまうような感覚が生まれる。
「くっ・・・有紀・・・イッちまう!!」
あえなく限界に達した俺は有紀の口腔に大量の精液をぶちまけてしまった。
「んん!!ぐ・・・ふぅ・・・ん・・ん・・・」
有紀はその白い喉を鳴らし、時たまむせ返りながらもその全てを飲み干していった。
「ぐっ・・・ん・・・・・・・ふぅ・・・・終わった・・・」
肉棒から口を引き抜いた有紀の唇の端からは残った精液が糸を引いていた。
- 404 名前:狂介と有紀 投稿日:2005/08/22(月) 23:58:31 ID:U9ud5zcP
- 「・・・・で?何でこんなことしたんだよ?」
コトを終えた後、俺はあぐらをかき俯いたまま有紀に問いかけた。
有紀の顔がまともに見れない。当たり前だ、軽く犯されたような物だから
・・・・まぁ、それを受け入れた自分が言うのもなんだが。
「だって、何度起こしても狂介ったら全然起きないんだもん。」
「ハァ?それだけで、こんな・・・」
言い方がきつかったのか徐々に有紀の顔が暗くなっていった。
「イヤ・・・怒ってるわけじゃ無くて・・・その・・・つまり・・・」
「それに・・・・」
「ん?」
「・・・・狂介に気持ちよくなって欲しかったんだもん・・・」
有紀の消え入りそうな大胆告白に俺は全身を殴られるような衝撃を受けた。
そうだ、有紀を俺のためを思ってやってくれたんだ。有紀が俺の嫌がることを
するはずが無い。それなのに・・・・
「ゴメンね狂介・・・迷惑だった・・・・キャア!!」
俺は有紀を抱き締めた。
- 405 名前:狂介と有紀 投稿日:2005/08/22(月) 23:59:41 ID:U9ud5zcP
- 「俺の方こそゴメン。いきなりだったからビックリしただけだ。」
「ホントに?・・・怒ってない?」
「当たり前だろ。・・・言うのが遅くなったな、ありがとう。」
「狂介・・・・ん。」
俺は有紀の頬に顔を寄せ口付けた。
「しばらくこのままでいさせてくれ・・・。」
「・・・・ウン。」
俺が抱き締める力を強くすると有紀は俺の腕に手を当て
軽く握り締めてきた。
モチロンこの後、学校は遅刻しました。
〜おしまい〜
- 406 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2005/08/23(火) 00:11:47 ID:CPb7v6bz
- 「やだもん」
クロード、俺を萌え殺す気ですか
- 407 名前:実験屋 投稿日:2005/08/23(火) 00:14:07 ID:Mz4Hnx4O
- 以上です。もうワンパターン作ってたんですけど
話がまとまらなかったので、そっちは修正後
投下したいです。
>>白雀様
ものすごくGJ!!でございます。格闘モノは大好きなので
ツボをつかれまくりました。
>>司様
キャラが魅力的でエロかわくて最高です!!
>>121様
了と晶、二人で二倍おいしいです。
ぜひまた作品を堪能させてください。
>>ナサ神様
待ってました!!自分ナサ神様の初投下でこのスレの虜にされました。
そのくせ大した事ない内容しか自分は書けませんが・・・。
そんなことは別にして、乙です!!ご馳走様でした。
- 408 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2005/08/23(火) 13:22:46 ID:CyvnPXB/
- 目覚ましにシャウトする狂介……
わかいっていいなー(トオイメ)
だんだん500Kに近づいてきましたね。
次スレテンプレには
男装少女萌え仮倉庫
ttp://dansou.atspace.com/
2chエロパロ板SS保管庫
ttp://sslibrary.arings2.com/
のURLも加えた方がいいよね。
- 409 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2005/08/23(火) 14:12:57 ID:hNjCEi8I
- すごい勢いだなw
次スレまでにあと何作品読めるんだろうか。容量考えると一本がいいとこか?
>>408
そうだな。
まとめサイトがあるって素晴らしいな……
- 410 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2005/08/23(火) 14:13:45 ID:f0beLQsD
- もう500k?
500レスもいってないのに早すぎw
これも神々の競演のおかげか・・
- 411 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2005/08/24(水) 14:34:33 ID:SN/3bjPF
- では、次レスを。
移動ヨロシコ
男装少女萌え【3】
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1124861558/
- 412 名前:ナサ 投稿日:2005/08/24(水) 14:35:20 ID:SN/3bjPF
- そしてすかさずスペースget。
小ネタ。
- 413 名前:晴天の日1 投稿日:2005/08/24(水) 14:36:17 ID:SN/3bjPF
- イヴァンの離宮は、王都の南東、深い森を控えた静かな場所にある。
狩猟や遠駆けの好きな彼やその妃にとっては絶好のロケーションだが都中心部の王宮からは結構離れているから、辺鄙といえば辺鄙でもある。
いつもはひっそりとしたその宮が、本日はやけに慌ただしい。
実は朝から微行で、イヴァンの父母である老王と王妃が訪れているのである。
たまには離宮の美しい景色を眺めつつのんびりとお茶を飲みたいという主張だったが、彼らの本音をイヴァンは知っている。
目的は茶会などではない。
彼らの興味の焦点は離宮にでも風景にでも息子にでもなく、妊娠三ヶ月目の終わりに入ったナタリーとそのお腹の赤ん坊だけに集中しているのだ。
週に一度は様子を知らせろと煩いので毎週使者をたてている。
そのたびにナタリーが義父母にむけて手ずから手紙を書いている。
イヴァンも宮廷に出るため王宮に行くと、必ず母の居室に引っ張り込まれナタリーの体調についてあれこれ質問攻めにあう。
その上、彼女の悪阻がかなり収まってきたと知ると、ついにはこうして押し掛けてくる。
いくら微行とはいえ従者は多いし、父母とはいえど仮にも国王と王妃である。そう無下に扱うわけにもいかない。
迷惑極まりない。
*
森に背をむけた離宮の正面は斜面になっていてその先には小さな湖があった。
すこぶるよい天気なので、眺望を望める二階のテラスにテーブルを出し、ロイヤルファミリーは水入らずでにこやかに雑談していた。
国王は自席に落ち着かず、なんのかのと嫁に果物をとってやったり椅子の傍をうろうろしては嬉しげに両手を軽く打ち合わせている。
きっと許しさえ出れば即座に、彼女のまだふくらみの目立たないお腹を撫でるに違いない。
王子妃手作りのゼラチン菓子を気に入った王妃が、一人だけ仏頂面をしている息子に声をかけた。
「美味しいお菓子ね。おや、イヴァン。食べないの?」
イヴァンはぶっきらぼうに答えた。
「後で残りを死ぬほど食べます。お気遣いなく」
王妃はナタリーに躯を寄せて囁いた。
「どうしたの、あの子」
編み込んだ金褐色の髪の輝く頭を傾けて、ナタリーは曖昧に微笑した。
彼女の夫はたまたま今日は時間のある日で、王と王妃が突然来るという知らせを寄越さなければ妃を連れて春の湖で小舟遊びをする予定だったのだ。お腹の子のため現在は乗馬を控えている彼女も、実はそれをかなり楽しみにしていた。
だが小舟遊びだとて、まだ生まれぬうちから孫馬鹿と化している王と王妃が知れば震え上がってやめさせるに決まっている。
今王妃が次から次へとつまんでいる色とりどりのお菓子も、みなその久々の気晴らしのために彼女が作ったものなのだ。
イヴァンの気持ちもわからぬではないが、平和のためにはとりあえず黙っているほうがいい。
それでなくともイヴァンの機嫌はこのところあまりいいとはいえない。
安定期に入るまでは絶対にあれこれ複雑な事を致してはならぬと侍医から厳しい指示が出た上、悪阻のためにナタリーにそのほかの愉しい事もしてもらえなくなってからというもの、彼はなにやらイライラしている。
彼女も夫を少し可哀相だとは思うが、少しでも変な匂いを嗅ぐと吐いてしまうのだから仕方ない。
やっと悪阻がおさまってそろそろ大丈夫かもという今、彼女の気分を盛り上げる手始めに予定していた小舟遊びが孫馬鹿の二人のせいでご破算になったのだから、今日のイヴァンを咎めるのは酷というものである。
- 414 名前:晴天の日2 投稿日:2005/08/24(水) 14:36:51 ID:SN/3bjPF
-
「イヴァン、おい、イヴァンや」
老王が素っ頓狂な声をあげた。
白いレースのショールに覆われたナタリーの腹部を指差して目尻の皺をだらしなく下げている。
「見たか、今、孫が動きおったぞ」
「そんな馬鹿な」
王妃がさすがに経験者の貫禄を見せて窘めた。
「御子が動くのはまだまだ先ですよ。このテラスは湖からの風が吹いてきますでしょう、それでショールがそよいだだけですわ」
「風」
王の眉が不安げにひそめられた。
「ナタリーや。お前はそろそろ部屋に戻ったほうがよいのではないかな。躯を厭わねばならぬぞ」
イヴァンが、ぶすっとした口調で割り込んだ。
「今日は春先にしては珍しいくらいいい天気ですよ」
「いや、確かに良い天気じゃがそれでもまだ風は寒いからな。油断してもしものことがあったらどうする」
イヴァンはちらと、悪阻もおさまったためにこのところ青白かった頬にもいつもの艶を取り戻した彼女に視線をやった。
「オレの子ですから、丈夫に決まっています」
「お前だけは確かに昔から丈夫だったが」
王は溜め息をつき、ナタリーの可憐な姿を眺めて目を潤ませた。
孫と嫁可愛さに、最近非常に涙腺が緩くなっている。
「お前は、夫として、これをもっと案じてやらねばならんぞ、イヴァン」
「そうよ」
王妃が頷いた。
「殿方の優しさが、こういう時にこそ妻に伝わるのですよ。その点王陛下は良き夫でいらっしゃいましたね」
王はにっこりした。
「そちには苦労をかけたからのう」
「陛下」
なぜだか二人は片手と片手を握り合い、顔見合わせて来し方の記憶に胸を詰まらせている気配である。
基本的に仲がいい父母ではあるが、そういう事はわざわざここでなく王宮でやれと言いたい。
イヴァンは胸くそが悪くなって立ち上がった。
「茶ももうなくなったようですな。そろそろ従者を呼びましょう」
暗に帰れと言っているようなものである。
王は無造作に空いているほうの手を振った。
「よいよい、イヴァン。わしが呼ぶ。これ、誰か。茶の代わりを持って参れ!」
イヴァンのこめかみに筋が浮いたが、テーブルの影でナタリーが必死に上着の裾を引っ張っているので口の端をぐいと下げる。
「……………」
どさりと乱暴に椅子に腰掛けた息子を眺め、王妃だけは雰囲気の悪さに気付いたらしい。
召使いたちが熱い茶のおかわりを注ぎ終わり、皿を整えてひっこむと彼女は優雅に話題を変えた。
「そういえばイヴァン、以前から尋ねてみたかったのだけれど」
ナタリーが盛んに目配せするのでイヴァンはカップを掴みながら億劫げに、母の方角に顔を向けた。
「何ですか」
「あなたとナタリーとのなれそめよ。詳しく聞いた事がなかったわ」
- 415 名前:晴天の日3 投稿日:2005/08/24(水) 14:37:58 ID:SN/3bjPF
- *
かたっ。
がちゃ。
と、陶器がぶつかる音が同時に二つした。
ナタリーが指を滑らせて菓子の皿を取り落とし、イヴァンの手が緩んでカップが受け皿に触れた音である。
王がナタリーの皿を素早く取り上げ、慌ててその手を確かめた。
「危ない、気をつけい、ナタリー!大事な躯なのだぞ!」
「あらあら、どうしたの」
王妃は上品な眉をしかめたが、気を取り直して続けた。
「あなたがナタリーを見初めたのだと聞いたけど。細かな事情は教えてもらっていないわね」
「事情もなにも、特にこれといったものはありませんな」
イヴァンは、こぼれた茶の中にカップの底をつけた。
彼が動揺したのは一瞬だけで、口を開けばいつも通りの調子である事にナタリーは気付いた。
頼もしいというか憎たらしいというか。
「わしも聞いてはおらん」
王も身を乗り出してきた。
「どこで知り合ったのだ?どこかの晩餐会か?それとも狩猟の会かなにかか」
ナタリーが、飲んでいるふりをしている茶を今にも吹き出すのではないかとイヴァンは思った。
「王宮です。奥の庭で」
ナタリーはまだ吹き出してはいなかったが、急にこほこほと咳き込みはじめた。
むせてしまったらしい。
イヴァンは続けた。
「噴水のところでこれが涼んでおり──その、水に濡れたこれが──あまりに美しかったので」
俯いているナタリーの首すじが赤くなった。
彼が、顔だけではなく、水に濡れた衣装の上から窺えた躯の線のことを言っていることに気付いている。
「まあ……」
王妃がうっとりと視線を息子に向けた。
「実際に逢って見初める事ができたなんて、あなたがたは幸せね。私など、お話があってそのまま輿入れだったわ」
「わしは肖像画で初めて王妃を見たのだった」
王もなにやら羨まし気である。
「だから、これの到着まで、その肖像画に嘘偽りがないよう祈ったものじゃ。して、ナタリーや」
興味津々に国王夫妻は王子とその妃に迫った。
「イヴァンの印象はどうだった?」
「イヴァン、ナタリーにどうプロポーズしたの?」
- 416 名前:晴天の日4 投稿日:2005/08/24(水) 14:39:03 ID:SN/3bjPF
-
「…………………」
「…………………それは、ですな」
言えぬ。
このお気楽夫妻に『印象は最低最悪、死ねばいいのにと思いました』とか、『弱みにつけこんで陵辱した挙げ句、自分勝手に求婚しました』とかの真実を言う事はできぬ。
そもそも、ナタリーがかつて叛乱側の刺客だったという事を彼らは知らないのである。
包み隠さず言ったとて、いや、かえって言えば言うほどに、冗談だと思われてさらなる追求を受けるに違いない。
それに、いくら息子の女癖の悪さを認識していたらしい両親でも、現在お気に入りの嫁であるナタリーにここまで悪辣非道な振る舞いをしていたと知ればその心証が悪くなるのは避けられない。
イヴァンとしても王位の後継者として、そういう事態はできれば避けたい。
イヴァンは腹を括った。
ここは嘘を並べてしのぐしかない。
「あれは舞踏会のあった晩だったかと。な。ナタリー」
「…そ、そうでしたわね。私…人いきれで、気分が悪くなって、涼んでいましたの」
イヴァンはナタリーに視線を走らせた。
多少こわばった笑顔だが、しっかりついてきている。
「噴水でこれが休んでいたので、どうしたのかと近寄り、声をかけたのです。だったな」
「そうよ。優しく介抱してくださったわね」
まさに嘘八百である。
王妃はロマンスを満喫している表情で頷いた。
「素敵だわ。その出逢いの時、お互いに好意を持ったのね」
違う。
彼が持ったのは助平心と好奇心、彼女が持ったのは警戒心だけである。
二人は共犯めいた視線を交わした。
「そうです」
イヴァンが答えると、王が吐息を漏らして首を振った。
「若いというのは良いものじゃの。で、それから?狩猟の会にでも誘ったか、イヴァン」
「いや…」
イヴァンは突如、話に意外な展開をさせた。
「微行で街に出ましたら、偶然、馬車で買い物に出ておりましたこれに逢いまして…乗せてもらいました」
ナタリーに同意を求めるように明るい色の目をむけるので、彼女も急いで頷いた。
「そ、そうなんです。……お乗りに、なりませんかって」
王妃が感心して頬を染めた。
「まあ、ナタリー、それはよっぽどイヴァンを気に入ってくれたのね?自分から誘うなんて」
「そ、そうですわね。あまり嬉しかったので、つい……は、はしたなかったかも…しれませんわね…」
ナタリーはひくつく頬を典雅なショールで抑えて隠した。
提案もなにも、馬車どころかナタリーの躯に勝手にお乗りになったのは彼であって、誘った記憶はかけらもない。
王妃は熱心にかぶりを振った。
自分の息子が魅力的だという話を聞くのは、母親にとっては微妙に愉しいものらしい。
「そんな事はないわ!ねえ、イヴァンや、あなたも嬉しかったでしょう」
イヴァンがしれっと頷いた。
「それはもう。まるで天国に居るようで、実に乗り心地のよい極上の品でした。……それで、一層想いが募りまして」
「うむ。馬や馬車は良いものに限るからのう」
老王がさかんに納得している。
もっとも王もイヴァンの言葉を額面通りにしか受け取っておらず、ナタリーが赤くなったり青くなったり、非常に居心地の悪そうな顔をしていることには気付いていない。
「そうでしょう。重要な問題ですからな。…それで、その経験が忘れられず、つぎにはこちらから訪ねていきました」
イヴァンは、この『遊び』を楽しみはじめたらしい。
これまでの不機嫌そうな喋り方が、いつもと同じものに変化している。
ナタリーは密かに歯ぎしりしつつ、このお調子乗りの男が次に一体何を言い出すかと段々心配になってくる。
- 417 名前:晴天の日5 投稿日:2005/08/24(水) 14:39:53 ID:SN/3bjPF
-
ナタリーの実家が当時叛乱軍側についていた事を知っている国王は、大胆な息子の所業に目を丸くした。
「よく無事で戻ってきおったな」
「ああ、でもわかるような気もするわ。恋とはそのようなものでしょう」
王妃は首を振り、納得している様子である。
「常識の裏をかき、真っ昼間に参りましたから。これは驚いたようでしたが」
イヴァンはちらりとナタリーを見てほくそ笑んだ。
彼女は聞こえないふりをしてすっかり綺麗な人形のようなポーズになり、無感動に湖を眺めている。
だが頬と目のふちが赤い。
「だが、お前が来たと知られればただでは済むまい。危ない橋を渡ったものだ」
咎めるような王に、イヴァンはにこやかな顔を向けた。
「いえいえ。これも協力してくれましたので、愛を囁く声は誰にも聞かれることはありませんでした」
協力=厭がるのを脅して無理矢理、愛を囁く=エロく苛めた、と補正と変換を行えばイヴァンの言葉は嘘では──いや、やはり嘘の皮だ。
ナタリーは立ち上がった。我慢できない。
「私、ちょっと気分が……少しのあいだ、部屋に戻らせていただいてよろしゅうございますか」
「おお、それはいかん。ささ、送ってやろう」
老王は慌てて立ち上がり、嫁に駆け寄ろうとした。
イヴァンがその動きを遮った。
「それは私の役目です。父上はどうぞこのまま母上とおくつろぎを」
「そうですわよ、陛下」
息子と妻に引き戻されて残念そうな顔で、国王はナタリーに声をかけた。
「無理してこちらに戻ろうとするのではないぞ。しっかり休むのじゃ」
「ありがとうございます」
ナタリーは王と王妃に礼をして、イヴァンの腕に優雅につかまりテラスを後にした。
*
テラスから見えない場所に入るとすぐさま、ナタリーは夫の腕を振り放した。
そのまま憤然と歩いていこうとするので、イヴァンはその肘を掴んだ。
「待てまて、一緒についていってやるから」
彼女は前を向いたまま断った。
「付き添いは結構よ。それよりはあちらで私も知らないなれそめ話をしてらっしゃい」
「おまえがいないと面白くない」
ナタリーが勢いよく振り向いた。
来るぞ、と彼が思った通り、彼女は眉を吊り上げてイヴァンを罵り始めた。
「あなたって方は、よくまあ一秒も考えず、ああも口からでまかせに大嘘ばかりお喋りになるわね。しかも両陛下に向けて」
イヴァンは神妙に答えた。
「本当の事を言えば叱られるじゃないか」
「叱られて当然よ」
ナタリーは、ぷっと頬をふくらませた。
「一度くらい、こっぴどく叱られてみればいいんだわ」
「おまえにいつも叱られているじゃないか。これ以上は遠慮したい」
- 418 名前:晴天の日6 投稿日:2005/08/24(水) 14:40:49 ID:SN/3bjPF
-
ふくれた頬に顔を寄せ、彼は素早くキスをした。
頬を抑えてナタリーはとびすさった。
「なにするの」
イヴァンはにやにやした。
「可愛い顔をしている」
「私、怒っているのよ。見てわからないの」
「あまり怒ると腹の子に触るぞ」
「……………」
ああいえばこういうのがこの男の特徴である。
ナタリーは言い争いが不毛な事に気付いたようだった。
黙って歩き、階段をゆっくりあがって自室の前に到着する。
ナタリーはイヴァンを見上げた。
「もういいわ。ありがとう」
イヴァンは立ち去ろうとしない。
ナタリーは促した。
「…もう大丈夫よ」
イヴァンは全く動かなかった。
仕方なく、ナタリーは尋ねた。
「どうなさったの」
彼は彼女を見下ろし、なぜかとてつもなく偉そうに目を細めて言った。
「キスをしてくれたら、行く。──頬じゃなくて」
「…………」
ナタリーは廊下の左右に視線を走らせ、イヴァンの腕を掴んで軽く伸び上がった。
唇が触れ、それから離れようとした彼女の躯をひっつかんでイヴァンは引き寄せた。
ぷっくりと柔らかな下側のふくらみを挟み、舌を軽く滑り込ませる。
蕩けそうな感触の口腔には、さきほど飲んだ茶の香りがした。
顔の角度を変えてもう少しだけ深く舌を差し込む。
小さな舌先を捕まえて吸いとり、自分のそれを絡めて優しく擦り、彼女の唾液を味わった。
すこし甘い。
ゼラチン菓子と彼女が重なった味。
イヴァンは唐突に顔を離した。
ナタリーを抱えたまま、彼はさっさと扉に手をかけた。
「…お戻りに、なるんじゃないの」
「ここではなく、落ち着いた場所でじっくりとしたい」
彼女はちょっと赤くなった。
「もうしばらくはだめだってお医者様が仰ったわ」
「…キスだけだ。このところキスすらまともにしてない」
- 419 名前:晴天の日7 投稿日:2005/08/24(水) 14:41:25 ID:SN/3bjPF
-
ナタリーは、甘いキスでかすかに潤んだ目を伏せて、ぼんやりと考えた。
確かに、イヴァンと最後にまともなキスをしたのはかなり前のことになる。
悪阻だったから仕方ないとは言え、そう言われると無下にも断れない。
「……ほんとに、キスだけ?」
「…ん?他も期待していいのかな?」
イヴァンの声が嬉しそうになったので、彼女は失言に気付いた。
「でも、お医者様が」
切り札を持ち出すと、イヴァンはひどく狡猾な目つきで彼女を見た。
「安心しろ。絶対大丈夫なように優しくしてやる。挿れないし」
そういう問題ではない。
イヴァンはナタリーの輝く髪にキスをして活き活きと喋り始めた。
「愉しんだら一緒に戻ろう、な。オレ一人であの夫婦の相手はキツい」
それまで両陛下がおとなしくしていてくださればいいけれど、とナタリーは思った。
「ほら、早く入れ、ナタリー。鍵はかけとけよ」
やる気満々の夫を見ていると、どうもあまり早く戻れそうにはなかった。
扉が閉まり、廊下は再び静けさを取り戻した。
テラスから誰かが呼びに来る事がないよう祈るばかりである。
今日の晴天はまだしばらくは続きそうだ。
おわり
- 420 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2005/08/24(水) 14:44:20 ID:NREPQdYf
- リアルタイムではじめて見た。
あー。
神のいる生活。
- 421 名前:ナサ 投稿日:2005/08/24(水) 14:44:21 ID:SN/3bjPF
- 現在約494KB。
いい頃合いではないだろうか。
たまたま連続でたてる事になったがお許しを。
それでは次スレでまたいい話が読める事を楽しみにしとります。
- 422 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2005/08/24(水) 21:11:24 ID:oZmGFIFH
- >>421
そんなあなたの話が読めることを楽しみにしとります。
ほんまにええスレや……
- 423 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2005/08/28(日) 06:04:55 ID:lEogxSyR
- 昔某雑誌の見たいものコーナーで「ヒロインが全員男装女性のギャルゲー」ってあったけど
マジで激しく見てぇ!!でもどんな設定だろ。ギャルゲーといえばやっぱ学園もの?
それなら男子校の方がよさげだが、女子を何人も入学させる男子校って無茶苦茶だな(笑)。
学園ものじゃなくても騎士団とか道場とかどっかに所属してる設定だとやりやすそう。
ほんとにそんなギャルゲーでないかな。このスレでそーいうシチュの小説無理かな。
登場人物ほとんど男装キャラ・・・。
- 424 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2005/08/28(日) 20:19:59 ID:lEogxSyR
- 小説のネタ提供を兼ねた雑談スレにしよう。埋め。
- 425 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2005/08/28(日) 23:18:45 ID:lEogxSyR
- オール男装ヒロイン学園編
1 メインヒロイン。お金持ちで文武両道の完璧タイプ。男装の理由は家督。優しい性格で男女問わずもてる。
2 秀才型。男装の理由は苦学生で奨学生だから。その為人を近づかせない態度に徹している。
3 野球(もしくはサッカー部)のエース。男装の理由は部活の為。とにかく活発系。
4 剣道部の主将。男装の理由は家が道場だから。柔道とか空手とかでもいいかもしれんが
流石にばれるかなぁ・・。性格は古風で生真面目。
5 ロリ系(笑)。男装の理由は好きな男を追っかける為。元々入学前から男として接してたって設定だと
なお説得力があるかも。性格は陽気で無邪気。
6 不良。腕っ節が強い。男装の理由は・・難しいな。家庭の事情とか?とにかくガラが悪いが根は純粋。
7 応援団長。もちろん学ランがトレードマーク。男装の理由は兄の跡を継ぐ為。一本木な性格。
- 426 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2005/08/28(日) 23:54:27 ID:wP9xBZpJ
- >>425
素晴らしい!!!
- 427 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2005/08/29(月) 00:06:30 ID:LPRAuNHN
- >>425
6の男装の理由は親が男児を欲しがってたため男として育てられたってのはどうだろう。
1とややかぶるけど・・・
あとこういうのも付け加えてみたがどうだろ。
8 委員長。男装の理由は男子と対等に張り合いたいため。男嫌いで何かにつけ男子に対抗意識を燃やす。
性格は勝ち気で高飛車。
9 レズ。男装の理由は女子にモテたいため。性格はナンパ気味だが気さくでさっぱりしているため
男友達も多い。
- 428 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2005/08/29(月) 00:12:21 ID:SsNFL97G
- しかし萌えるとはいえ9人も男装娘が入学してるなんてなんちゅー設定や(笑)。
男子校だったら尚更だな。でも9が使えないか。
- 429 名前: ◆z1nMDKRu0s 投稿日:2005/08/29(月) 00:21:20 ID:iMPcADl7
- 志村ー、分岐分岐
あるところまで書いた後、どのルートを書いて欲しいか投票というのはどうかな?
頼むぞ>>425 !!!!
- 430 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2005/08/29(月) 01:20:40 ID:SsNFL97G
- 全部・・・は駄目かな(笑)。
- 431 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2005/08/29(月) 03:31:21 ID:SsNFL97G
- オール男装ヒロイン騎士団編
1 団長。20代の女性。たまには少女以外も。かなりの重装備で実力ももち1。生真面目な性格で慕われている。
2 副団長。18、9。団長程ではないが重装備で団長と比べて細身の剣を使う。クールで無表情な雰囲気。
3 とにかく明るいムードメーカー。主役っぽいタイプ。16、7。ちょっと軽装備で剣の素質はあるけどまだ未熟。
4 騎士とは思えないくらい幼い少女。13、4。家族の敵を倒す為入隊。気弱でおとなしいか、極端に無感情かのどっちか。
子供だから鎧は着れず軽装備。剣の腕前は年齢の割に強い。
5 異国から来たサムライ。17〜19。もちろん袴姿でさらしを巻いて胸を隠している。もちろん刀装備で
素早い剣さばきが特徴。古風で融通が利かないところも。
6 中国人。16〜18。ちゃっかり者でお金好き。中華服で青龍刀(槍でも可)。身のこなしが軽い。
7 お忍びの姫。15、6。身分を隠して入隊。わがままで気が強いか内気で純粋かのどっちか。城で密かに剣の稽古を
受けてたため以外と強い。
- 432 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2005/08/29(月) 05:06:45 ID:SsNFL97G
- オール男装ヒロイン時代物編
1 お忍びのお姫様。16、7。元々家督の為男装してた。薙刀使いでそこそこ強い。明るく前向き。
2 ↑の従者。18、9。その正体はやはり姫で1のお姫様の家に実家を滅ぼされ復讐の為に近づくも
姫の純粋さに惹かれ内心戸惑っている。武器は刀でかなり強い。真面目で寡黙な性格。
3 剣術道場の跡取り。17〜19。正義感が強く町にはこびる悪党を倒し、町人から慕われている。
もちろん刀使い。真面目すぎて恋愛沙汰とかには疎い。
4 忍者。15〜17。首領の娘で跡継ぎの為くのいちとしてではなく男忍者として育てられる。
忍者としての実力は確か。かなり無感情。
5 神社の娘。14〜16。家の都合で巫女としてではなく男性神官として育てられる。占いや術が得意。
控えめでおとなしい。
6 盗賊。18、9。義賊で悪徳な庄屋や武家屋敷しか狙わず、貧しい農民や町人に慕われている。
勝気で豪快な性格。
- 433 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2005/08/29(月) 09:31:39 ID:j/WdjOWy
- >428
リアリティ追及は不要だよ
もともと男装少女そのものがファンタジー
- 434 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2005/08/29(月) 13:03:48 ID:AbKm6KMF
- これで主人公が女装してたら完璧だな。
- 435 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2005/08/29(月) 19:34:17 ID:SsNFL97G
- >>434
確かに(笑)。特に騎士。男装女性オンリーの騎士団に女として入隊する主人公。
逆ハーレムに見えて実はハーレム(笑)。
- 436 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2005/08/29(月) 21:03:25 ID:mnIlKw7u
- そこまでいくとわけがわからんな
そもそもおれたちは男装少女に何を求めているんだろうか
- 437 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2005/08/29(月) 21:19:47 ID:SsNFL97G
- 確かになんだろ。男としての凛々しさや強さ、女としての可愛さ、エロさのギャップってところか。
男装キャラって425+427、431、432みたいに1つの作品の主要登場人物全部そうってことないからな。
当たり前だけど。でもたまにはこれでもかって程男装娘オンリーてのも見てみたい。
なんでギャルゲーとかでこないんだろうか。
- 438 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:2005/08/29(月) 21:35:29 ID:mnIlKw7u
- 迷うぞ、全員男装少女だと。
ギャルゲの場合にはできれば方法が選べるといいんだが。
この娘にはこれだろって自分なりの妄想が生かせたらと思う。
みんな決まってるのがなぁ。
だが全員ものがないってのはやはり特殊な嗜好なのかもしれんな。
マニアックつーか。