「倉庫の整理が終わっていないんだったら手伝うけど・・・」
「あっ、もう終わりました」
「そう。ご苦労様、あがってくれていいわよ」
「はい」
「そうだ、私ももう少しで終わりだから一緒に帰りましょ」
「そうですね、ではそうしましょう」
「じゃあ、戸締りするから手伝ってね」
「はい、分かりました」
二人は四号店の戸締りの確認に向かった。
「そうだ、聞こうと思っていたんですけど」
「なにかしら?」
「四号店の24時間営業はいつからですか?」
ご多分に漏れず、Piaキャロットも他のファミリーレストランと同様24時間営業を
行っている。ただ、いきなり24時間営業を行うのではなく、新店舗開店当初は
朝の10時くらいから夜までという短い時間で営業し、スタッフが慣れてきてから
順次営業時間を延ばしていくという方式を取っていた。
現在、本店・2号店・3号店は24時間営業を行っており、5号店以後の店舗も
24時間営業に踏み切っていた。この4号店のみが早朝から深夜までの営業と
なっていた。
この質問をされた朱美は少しばかり難しい顔をした。
「あっ、すいません。答えにくいことでしたら結構です」
「う〜ん、実はね・・・この辺り、暴走族がいるの」
「暴走族・・・ですか?」
潤の答えには”今時?”という響きがあった。実際、本店や2号店周辺では
暴走族=珍走団として笑われる存在となっているためにほとんどいないので
ある。
「そう。で、いま治安が悪くなっててね・・・」
朱美は言葉を濁した。それを聞いた潤はたしかに思い当たるところが多かった。
このあたりのレストランなど本店や2号店周辺では24時間営業しているところが
4号店と同じように深夜になったら店じまいをすること、海岸通の大きな道を夜
歩かないように注意されたことなど。そう考えると意外と深刻な状況なのかも
しれなかった。
「いま、警察の人に対応をお願いしているから。それが済めば・・・」
24時間営業は暴走族がいなくなって安全になってから、ということらしい。
「じゃあ、戸締りは念入りにしないと」
そう言って裏口に歩みかけた潤に朱美が問いかけた。
「そうだ、潤くん」
「なんですか?」
「この制服、着てみない?」
「えっ!?」
潤は驚いた、朱美の着ている制服−トロピカル・タイプの制服を着てみないか、
ということである。この言葉に潤は大いに戸惑った。