「ひゃぁっ!」
舌を突き出し、秘所を舌先で舐めるとレンが子猫のように可愛い声を上げた。
汗と甘酸っぱい少女の匂いが混じり合った官能的な匂いがファンの鼻腔をくすぐる。
「や、やだ。そんなとこ汚いよっ」
「そんなことないぞ。すごく綺麗だ」
突き出した舌を上下に動かし、割れ目に沿って刺激する。ぬるぬるとした唾液を含んだ舌先は、肉襞を掻き分けて幼い秘所を存分に攻め立てていく。
舌が往復するたびに、レンは小さな身体を震わせてはじめて味わう舌の感覚に耐えていた。
「はぁ……はぁ……やんっ」
皮の被ったままの小陰茎を舌先でくりくりと弄び、器用に皮の奥の真珠のような陰核をつつくと一際大きくレンが身を震わせる。それが引き金となったのか、まだ舌を入れていない奥のほうからはだんだんと愛液が漏れ出してきた。
外側は唾液と愛液で濡れ、レンの白い肌にいっそうの艶を与えている。
なら今度は、とファンは舌先に力を入れ、硬くするとその舌を膣内へと差し込んだ。
蛞蝓のような舌は入り口をかき分け、未熟な蕾を押し広げながらレンの中へと侵入していく。
「んんっ、やぁっ……」
いつも入れられている指や陰茎よりも柔らかい分だけ自由に形を変え、膣内をさらに優しく繊細に刺激しながら侵入していく舌の感触に耐え切れず、思わずレンは顔をファンの身体に押し付ける。
お互いの敏感な粘膜が触れ合い、刺激しあう感覚はだんだんと性行為に慣れてきていたレンに更なる未知の快感を与えていた。
その下半身の刺激に必死に耐えながらも、ふとレンは自分で押し付けている鼻先に何か硬いものの感触があることに気付く。
そこはちょうど、ファンの下半身にあたるところであり、つまり自分が顔を押し付けているのは……と思い至ったところで、それが何か気付き慌てて顔を離すレン。
「んっ……どうかしたか?」
視界には可愛いレンの下半身しか見えなかったため、自分の下半身が軽くなったのを感触で知ったファンが訝しげに尋ねる。
「え? い、いやあの、その……お、おっきくなってるなー、って……」
「あ……ま、まあな」
レンの秘所を舐め続けていたおかげでファンの方もすっかり臨戦態勢に入っていた。道着の上からでも分かるくらいにそこは大きく膨らみ、隙あらばいつでも道着を破って屹立せんばかりであった。
「…………えいっ」
しばらくどうしていいか迷うような沈黙を見せていたレンだったが、やがて思い立ったように気合を入れて両手でファンのズボンを脱がす。
ズボンがずり下ろされた瞬間、それまで拘束されていたファンのモノが勢いよく飛び出てはレンの眼前に姿を現した。
「わ、わわっ」
「お、おい」
何度も自分の中に入れられたモノではあるが、これまでこんな間近で勃起した男性器を見るのははじめてのレン。その形と大きさに驚きながら、目は逸らさず真っ赤な顔でじっと凝視する。
外気に晒されながらもどんどんと熱を帯びていくファンの赤黒い陰茎は天を仰ぐかのように屹立しており、何かを求めるようにびくんびくんと大きく脈打っていた。
(うわ……こんなのが、いつもボクの中に入ってたんだ……よね?)
「こんなになってたんだ……痛くないの?」
そっといたわるように、ファンのモノを両手で包みながら尋ねるレン。触れたときに感じたその熱さと硬さに驚きながら、その形を確かめるようにその全体を両手で触っていく。
「うっ! ……あ、ああ大丈夫だ」
レンの思いがけない大胆な行為に、秘所を舐めるのもすっかり忘れながら答えるファン。彼としても過去六度の果し合い(逢引)でレンに自分のモノを触ってもらったことはなかったため、少女のそのふにふにとした柔らかく暖かい手の感触は予想以上の快感だった。
それを聞いて安心したのか、レンはもう少し大胆に手を動かす。
亀頭の先端を指先でこすってみたり、付け根の陰毛を撫でてみたり、袋の部分を興味深そうに揉んで見たりと、初めて触れる男性器をもっと知るかのようにその手で弄ぶ。
「一つ言っとくが……あまり力入れるなよ。そこが一応男の急所だから、力入れられるとものすごく痛いんだ」
ぴた、とレンの手が止まる。
「へー、ということは……今ならボク、ファンに簡単に勝てるってことだね♪」
急所を握りながらの悪戯っぽいレンの声に思わずファンの血の気が引く。ファンからは見えないはずだが、今のレンの顔は子猫のように悪戯心満載の表情をしていることは想像に難くなかった。
「ちょ、ちょ待ておま」
「えへへっ、冗談に決まってるでしょ♪ 勝負は正々堂々とだから、そんなことしないってば」
「……脅かすな」
「でも、優しくするんならいいんだよね。だったらボクもしてあげるよ」
何を、と言う前にファンの下半身に何か生物が這い回るようなむず痒い感触が走った。レンがその小さな舌を出し、それでファンの亀頭の先端を舐め上げたのだ。
「うおっ!?」
「れろっ……あれ、気持ちよくない?」
もちろんレンに口でする知識など無い。ただ、ファンが自分の性器を舐めてもらったのが気持ちよかったから自分もファンにしてあげよう、という想いでやってみたに過ぎない。
一度離したレンの舌先からは、唾液と先走り液が交じり合い亀頭との間に細く糸を引いていた。
「い、いや……気持ちよかった」
「よかった、じゃあ頑張るね」
えへへ、と笑いながら再びレンは舌でファンのモノを刺激し始める。最初はそれでも恐る恐る舌先でまるで毒見するかのように軽く舐めるだけだったが、慣れていくうちにだんだん舌を触れさせる面積を増やし、ねっとりと陰茎全体を舐め上げていく。
「うおっ……やべぇ、いい」
ぬるりとした舌が舐め上げていくたび、手や膣内とはまた違った感触が敏感な部分を刺激する。ややくすぐったくもあったが、慣れれば病み付きになりそうな快感だった。
しかしこのまましてもらいっぱなしでは主導権を握られてしまう。ファンは止めていた舌を再び突き出し、レンへの攻めを再開した。
「ふゃぁっ」
再び自分のほうを舐められ、思わず舌を離してしまうレン。とろけそうになる下半身の刺激に必死に耐えながら、それでもすぐにファンへの攻めを再開する。
レンがファンの上に乗った状態で、お互いがお互いの性器を舐めあっている体勢のまま時間が過ぎる。
静かな山中の大気の中で、互いに音を立てながら舐めあう二つの水音だけが淫らに鳴っていた。
「あんっ、んんっ……れろっ……」
レンの舌は亀頭から竿を伝って根元まで、飴を舐めるようにつつ、と這っていく。
硬くそびえ立つ陰茎に時折愛おしそうに頬ずりをすると、自らの唾液とあふれ出してくる先走り液でレンのリンゴのような頬がいやらしく濡れていく。
「んむっ……ふはいほ、へん、(上手いぞ、レン)」
ファンの舌も既に洪水のように濡れているレンの膣内を奥へ奥へと進み、その先端で中を縦横無尽に動かし刺激していく。
「はむっ」
それはまた、まったくの好奇心からだった。
(……舌でやるだけじゃなく、口に含んでみたら気持ちいいのかな?)
そう考え、舌での愛撫を止めて小さな口をいっぱいに開けたレンは、その口内に大きく膨らんでいる亀頭を包み込む。
大切な場所だということは分かっている。だから絶対に歯を立てないようにと気をつけながら、柔らかい唇と舌の両方を丁寧に使って愛撫を開始する。
「っあ……!」
更なる快楽に思わずファンが声を漏らす。己の陰茎だけがまるで別世界にいざなわれたかのような極上の感触に、思わず射精してしまいそうになる欲求を必死に堪えなる。
「んっ、んむっ、ちゅぷっ」
単純に陰茎を包んだ唇を上下に動かすだけの単純な口内愛撫だが、小さな口で健気に奉仕するその姿と、手とも舌とも違う口内のぬるりとした温かい感触はレンの想像以上の快楽をファンに与える。
口を上下に動かすたびに、搾り出されるように滲んでくる先走り液がレンの唾液と混じって口内に溜まっていく。そのほんのりと苦いような塩辛いような不思議な味が口いっぱいに広がる。
(ヘンな味……でも、イヤじゃないかも……)
自分の膣内をファンの舌が這い回る刺激に必死に耐えながら、一心不乱に口を動かし続ける。
もっと味わおうと舌先で尿道を刺激し、唾液を絡ませた唇をすぼめて吸い出すように動かす。
口内いっぱいに溜まった唾液が絡み合い、じゅぷじゅぷと淫猥な音を立てながらファンの陰茎を愛していく。
「ちょ、待った……限界」
レンの膣内に突っ込んでいた舌を引き抜き、慌ててファンが止める。夢中になっていたレンも自分への攻撃が止まったことでなんとかそれに気付き、口を離す。
ちゅぽ、という水音と共に唾液まみれでさらに大きさを増したファンの陰茎が口から出てくる。
「はぁ、はぁ……どう……したの?」
口が自由になって、初めてレンは息苦しさを思い出す。それまで息をするのも忘れてしゃぶっていたのだから酸素不足で息苦しくなるのも無理は無い。
溜まったままの、先走り液が混じってちょっと味のついた唾液をごくん、と飲み込むと、レンはようやく思い出したかのように息を吸いながら尋ねた。
「いや、あまり気持ちよくて……あのままだと出ちまいそうだったから」
あと一瞬遅ければ、ファンはレンの口内に大量の精液を発射していたところであった。個人的にはそれも魅力的ではあったが、さすがにあんなモノをレンに飲ませるのはファンとしても罪悪感を感じる。
「そうなんだ……えへへー」
なぜかそれを聞いて嬉しそうに笑うレンにファンが疑問符を浮かべる。
「珍しいね、ボクよりファンのほうが先に降参するなんて」
「……そういやそうだな」
こういうところでも微妙にファンへの対抗心があるのか、ちょっと勝ち誇ったような声のレン。
しかし相変わらず下半身を丸出しにしてファンに覆いかぶさったままの体勢では説得力はないのだが……。
「じゃ、そろそろいいか」
「ふえ?」
両手でレンの腰を掴むと、そのまま身体をまた持ち上げる。レンの軽い身体は簡単に持ち上げられ、くるり、とまた逆の方向を向かされる。
レンはファンと向き合いながら、ファンの上に馬乗りになるように持ち変えられた。どうするのかな、とレンはそのままちょこんとお腹の上にまたがっている。
「もう入れてもいいか?」
「……うん」
お互いに舐められた二人の秘所は既に十分に濡れ、お互いがお互いを求めるように熱すぎるほどの熱を帯びていた。
もじもじと内股をこすり合わせながら、緊張と期待の入り混じった目でファンを見つめるレン。
「じゃあ、自分で入れてみな」
「え? う、うん……こう?」
最初は戸惑うように目を瞬かせるレンだが、やがて気合を入れるように両手をぐっと握り締めると、膝を立たせて腰を浮かす。
やや後ろに下がり、天を向くファンの陰茎の上に自分の秘所がくるようにすると、チャイナ服の脇のスリットから手を入れて位置を調節する。
「あ、ちょっと待った。邪魔だからこれ咥えてよく見せてくれ」
チャイナ服の長い裾に隠され、寝転がったファンからはレンの秘所も自分の陰茎も見えない。
そんなつまらんことがあるか、とばかりにファンは裾を持ち上げる。
今にもレンの中に入ろうとする自分の陰茎と、まだ産毛も生えていない小さなレンの割れ目がよく見えた。
「ええー」
「ええーじゃない。その長い裾避難させないと、するときに汚しちまうだろ。主に俺の汁とかお前の汁とかで」
「わ、わかったからそんな卑猥な言い方は止めてよっ」
わざとらしく言った言葉に、顔を真っ赤にしながらも観念したように服の裾を持ち上げるレン。上質の布で作られたチャイナ服の裾を口に含むと、捲り上げられたチャイナ服の向こうにはレンの白い肌が小さなおへそまで露わになる。
「ほへひゃあ……ひふほ(それじゃあいくよ)……」
既に入れる準備は万端とばかりにひくつかせる入り口に、手でファンの陰茎を導く。お互いの性器の先端が触れ合う。それだけで既に気持ちのいい感触がお互いの性器から全身に伝わる。
「ん――――っ」
ゆっくりと、レンが腰を落としていく。狭い入り口を押し広げ、ゆっくりとファンの陰茎が幼い膣内へ埋没していく。
初めてのときのような痛みはもうほとんどない。だが、やはりまだ未成熟なレンの中に成人のファンのが入っていくのはちょっとした圧迫感があった。
おそるおそる、といった感じで少しづつ腰を落としていくため、敏感になっている膣内はファンのモノが入っていく感触はその形まではっきりと分かってしまう。
自分で男性のものを挿れている、という初めてのことがよりレンの羞恥心に火をつけ、狭い膣口はファンのモノをいつもより強く締め付けながら飲み込んでいく。
ファンとしても、幼い少女の中に自分のモノが少しずつ沈み込んでいく様が目の前で進行していくのは非常にそそるものがあった。
それがいつもよりさらにファンのモノを大きくし、その大きいモノで貫かれる刺激に身を震わせてレンの膣口はさらに締め付けを強くする。
「ふぁんふぁ……ほっひーふぉ……(なんか……大きいよぉ……)」
「レンこそ……いつもよりキツいな」
ようやくファンのモノが全て埋まったときには、既に二人とも果ててしまいそうなほどの気持ちよさを味わっていた。
このままでは気持ちよすぎて長く持たないであろう、と二人は察する。
「動けるか?」
「(こくん)」
無言で頷いたのを合図に、レンが腰を浮かせる。亀頭の部分が入り口付近まで来ると、抜けないうちにまたレンは一気に腰を下ろした。
「んんっ!」
今度は一気に幼い膣口をファンの陰茎が貫く。
快楽の余韻に浸る間もなく、また腰を浮かせ、また落とす。
どう動けばいいのか分からないので、とりあえず上下に一生懸命動くレン。
狭い膣内を何度も何度も貫かれながら健気に腰を振るたび、じゅぷっ、じゅぷっ、と淫猥な音を立てながらファンの陰茎がレンの秘所を出入りする。
「ふっ、んっ、むーっ、」
チャイナ服の裾を咥えたままのレンの口からは、快楽に耐える声もくぐもったものしか出てこない。それでもファンの言いつけを守り、必死に口に咥えたまま大声を上げるのを我慢する。
「くっ……分かるかレン。繋がってるとこ、丸見えだぞ」
「ん、んん――っ!(ば、ばか――っ!)」
実際、二人の結合部分はファンからは丸見えだった。
毛の生えていない綺麗な股間の間に、やや不気味ともいえるファンの大きな陰茎が何度も何度も出入りしている様はまるで無垢な少女を犯しているようで、ファンの背徳心を巧みにくすぐる。
入り口をいっぱいに押し広げ、その狭い中にファンの大きなモノを受け入れていく様子が何度も何度も繰り返されると、それに反応してさらにファンの陰茎は硬さを増していく。
「んんっ、んっ、うんっ」
入れるたびに、そして引き抜くたびに、入るのと出るのとで違った気持ちよさを感じながらレンの腰の動きは少しずつ速度を上げていく。
「んっ……おおっ」
きつく締め付けるレンの膣口に吸い込まれるように入っていく感触。そしてまるで陰茎全体を引きちぎられて持っていかれるかのように抜かれようとする感触。その二つの感触に早くもファンも限界が近づく。
限界が近づいたと感じたファンは、レンが腰を下ろしたタイミングを見計らって一気に自分の腰を突き上げた。
「んう――――っ!!」
ファンの陰茎が、レンの一番奥を突く。たまらずレンが弓なりに背をのけぞらせる。
今までのツケを払うかのように、ファンは激しく下からレンを何度も突き上げる。騎乗位の姿勢は、すんなりとファンの陰茎をレンの一番奥まで導く。
(ふ、深いよぉ……こんなの、はじめて……)
子宮口まで突かれるのはレンも初めてのことだった。未知の刺激が身体の奥の奥まで届き、そのまま口から出ていくかとさえ思えた。
気持ちよかった。痛みや圧迫感がないわけではないが、一番深くまでファンが届いているということが嬉しかった。
しかしその反面、あまりの気持ちよさにいったいどうなってしまうのかとちょっと怖くもあった。
自分が自分でなくなってしまいそうで、戻れないところに飛んでいってしまいそうで、終わりを迎えるのが不安になった。
と、何か温かい感触が両手を包む。
レンの両手を、ファンの左右の手が強く握り締めていた。どんなに遠くに行っても決してお前を離さない、と言わんばかりに。
「ふぁ…ふぁふ……」
「大丈夫……だ……! 俺はここにいるから、安心して、二人で……!」
「(こくこく!)」
強く頷くレン。快楽か嬉しさかは分からないが、その目にはかすかに涙が滲んでいた。
ファンが突き上げるのにあわせてレンも腰を振る。二人はまるで一つになったかのように互いに息の合った動きで、終わりのときを近付けていく。
両手を強く握り締め、さらに早く。全身に電流が流れるような快楽が二人を襲い、頭は真っ白になっていく。
「くっ……! 出、出るぞレンっ!!」
限界まで大きくなったファンの陰茎を、レンの膣が限界まで強く締め付ける。レンの一番奥深くまで届いた瞬間、ファンのモノがはぜる様に大きく脈動した。
「んっ! んああああ――――っ!!」
レンの一番奥に、勢いよく迸ったファンの精液が叩きつけられる。熱く、強く、激しいその射精が最後の引き金となり、レンも全身を大きく震わせて果てた。
やがて糸の切れた人形のように、力が抜けてくたっとファンの上に倒れこむレン。その間もファンの長い射精は続いており、レンの小さな膣内に収まりきらない白濁液が結合部からゆっくりと漏れ出してきていた。
限界に達し気を失ったレンを、ファンは両手でそっと抱きしめる。本人お気に入りのチャイナ服の上質の手触りと、汗の混じった少女の甘い匂いが心地よかった。
「うん、たいした汚れはなくてよかったよ」
一時間後、ようやく目覚めたレン。今は元の男用の道着に戻り、お気に入りのチャイナ服の汚れや皺をチェックしている。
一部に僅かな汚れはあるものの、洗えばすぐに落ちる程度でありレンは安堵の息をつく。
「痛まないように気をつけて洗えよ」
「うん。せっかく父様がくれたものだもん。一回着ただけで終わらせるわけにいかないからね」
「……まさか、またそれもってくるつもりか?」
「え? うん。ファンが好きならいつでも着てあげるよ」
「……っ! あ、ああ」
なぜか顔を背けるファンに、レンは不思議そうな顔をする。
(……やべぇ、今素直に可愛いと思っちまった)
頬を染めながら無邪気に微笑むレンに、思わず惚れ直しかけたのは内緒である。
「こ、今度来るときは、その服が似合うくらいに成長してるといいな」
「あー、言ったなっ! ふんだ、今度こそボクが勝ってみせるんだから! これで勝ったと思うなよっ!」
虎……ではなく子猫の気合を背景に、燃えながら次の勝利を誓うレンを見ながら、ファンは照れ隠しに一つ、大欠伸をするのであった。
その頃、町のとある道場。
『牙心流』という看板が置かれた大きな道場の一室で、そこの師範と思われる屈強そうな男が弟子らしき男とお茶を飲んでいた。
「そういえば先生、レンちゃんは今日も例のところですか?」
「うむ。今頃は一戦終わり、二人でよろしくやってるとこじゃないかな、はっはっはっ」
もちろんここはレンの実家である。弟子のほうはレンが子供の頃から顔見知りの兄弟子であり、師範はレンの実の父、虎中(フーチュン)である。
レンはファンとのことは上手く周囲には隠している……つもりであったが、実はけっこうバレバレだったりする。気付いてないのは本人だけだったり。
「はぁ……でもいいんですか? まだ嫁入り前の娘さんが男の元に通ってるというのは父親としては」
「なに、レンには拳法家として大きくなって欲しい気持ちもあるが、それと同じくらい女としての幸せを掴んでもらいたいとうい気持ちもあるからね。
レンが望むのなら私はそれを温かく見守っていくさ」
まだ若々しい精気にあふれた顔を綻ばせながら愉快そうに笑う父。稽古のときの猛獣のような激しさは面影も無く、今の彼は親馬鹿なただのオッサンである。
言葉遣いも、弟子にと言うよりはまるで友達に接するかのような軽い口調である。もっともこれは普段から彼の地の話し方であるが。
「なるほど。それでレンちゃんにあんな贈り物を」
「うん。レンにはちょっと早かったかもしれないけど、あの服ならどんな男でも必殺だからね。
彼のような真面目な男でもきっとレンを襲いたくてしょうがなくなるに決まってるよ。というか襲わなきゃ男じゃないよね」
「はい?」
「いやいやなんでもない」
誰が知ろうか。この下手すればファン以上にぶっ飛んだ父・チュンが最近のレンの様子から、既にレンとファンが男女の関係になってることも知っているということを。
そして、レンの恋を応援するために影ながら協力しようと考えてることを。
チャイナ服を誕生日に贈ったのも、真の目的はレンに萌えさせてファンとレンが燃える逢引をさせるためであることなどレンもファンも知るよしも無い。
(頑張るんだよレン……早く父に孫の顔を見せておくれ。女の子なら……いや男の子でも、きっとレンに似て可愛い子供だろうなー)
「師範? もしもし師範? おーい、そろそろ夕方の稽古始まりますよー?」
何気にこの親父が最強であるということを、レンもファンもまだ知らない。
劇終