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ひとりとふたり 1

8_185氏

とある男子校の昼休み。旧校舎の空き教室。
聞こえてくるはずのない声が、微かに響いていた…
「ん…あぁ…そこ…は…」
その声に導かれるように、1人の生徒が空き教室へ向かっていく…
「なんだよ…女連れ込んでる奴がいんのか…?」
教室の戸を少し開け、覗き込む。
中では、学ラン姿の生徒2人がキスを交わしており、1人の生徒が
もう1人の生徒の学ランの中に手を入れている。
「あ…だめだ…よ、授業始まっちゃう…」
「あぁ?今更なんだよ…冷めるようなこと言うなよ」
言いながら、また唇を重ねる2人。
「なんだよ…ホモだったのか、あいつら…」
覗いていた生徒【和田 貴章・わだ たかあき】は少しの落胆と共に、
大きな好奇心に駆られていた。なぜなら、その2人はクラスメイトだったからだ。
「ふ〜ん。あいつらそういう関係だったのか…まぁありえなくはないか…」
貴章は、ある意味納得しながら2人の行為を眺めていた。
2人とは、【柴田 凌・しばた りょう】と【阿部 啓太・あべ けいた】
この2人は普段から仲が良く、よく一緒にいる。どうやら幼馴染らしい。
貴章とは、仲の良いグループが違うので、仲が良いわけでも悪いわけでもない。
柴田は、線が細く女顔で声も高い。しぐさもあまり男らしいとは言えず、女装
すれば女で十分通るだろう。逆に阿部は長身で筋肉質、いかにも「男」という感じ。
普段の仲の良さと、この2人の容姿。普段付き合いのない貴章でも、この2人なら
ありえない話ではないと思うのも無理はなかった。
「あぁ…だめぇ、声…でちゃ…あぁ!」
「ここなら少しぐらい平気だよ、な?」
「そ…んな…やっぱやめよ…ね?まずいって…」
阿部の体から、離れようとする柴田。しかし、がっちりとした腕がそれを許さない。
「んだよ、ここまで来てやめられねぇよ!いいだろ?」
言い終わると同時にまた、口付けを交わす。今度は先ほどより熱く、深いキスだ。
柴田の体から抵抗する力が抜けていく。貴章から見ても分かるほどだ。
「ん…もう…しょうがないなぁ…」
打って変わって従順になる柴田。自分から学ランを脱ぎ、Yシャツのボタンにも手を掛け始める。
「…すげぇ…」
貴章はいつの間にか2人に見入っていた。2人が男同士だということは理解していたが、
2人、特に柴田の醸し出している雰囲気が、貴章に妙な興奮とともに、1つの疑問を芽生えさせていた。
「あいつ、本当に男かよ…」
貴章が感じたその疑問はあっさりと解決してしまった。阿部が待ちきれずにYシャツを剥ぎ取った瞬間に。
「え?」
貴章の目に飛び込んできた柴田の体のラインは、明らかに男のものではなかった。
「あぁ…そういうこと…ね…」
貴章はその瞬間、意外なほど冷静に事態を受け止めた。しかし、数秒後、安心と衝撃の入り混じった
妙な気持ちに襲われ、興奮もいつの間にか冷めてしまっていた。
と同時に、今更ではあるが、見てはいけないものを見てしまった気がして、逃げるようにそこから去っていった…


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