「思ってたより広いね。」
「そうだな。」
俺は生まれて初めてラブホテルに入った。まぁ、相手がいなかったわけだし、
一人で入ったら、それはそれで・・・・・淋しいね。
「すごいよ狂介!!ホントに天井にミラーボールがある。」
「マジだ、今時のラブホにもあんだな。」
これ見よがしに回るミラーボール、丸見えのバスルーム。どうやら
この部屋を設計した人物は古風なスキモンなんだろう。
「とりあえず有紀、先に風呂入れ。」
「うん。」
有紀を促しバスルームへと送り出す。
「さて・・・どうしたものかねぇ〜。」
雰囲気を変えてラブホに来たのはいいが肝心の内容を考えていなかった。
いつもみたいにイチャイチャニャンニャンするだけなら自分ん家でも有紀の家でも
問題ナッシングだ。でも折角ラブホに来たんだから・・・
「あぁ!!早くしないと有紀が風呂から上がっちまう・・・・・・ん?風呂か・・・。」
善からぬ事を考えてる悪役みたいに俺の口が歪んだ笑みを作った。
「きゃあ!!狂介なんで入ってきてるの!?」
前も隠さず堂々とバスルームに参上した俺に胸を隠して悲鳴を上げる有紀。
「オホォォ〜裸はいつも見てるけど濡れた身体もまた一興・・。」
「狂介聞いてるの!!」
「聞いてません!!」
有紀は顔を真っ赤にして訴える。しかし、そんなもん俺の息子さんの血行良くする
お手伝いにしかならないっつーの。
「狂介ってばいいかげ・・・んっ!!」
怒りをあらわにする有紀の唇をキスで塞ぐ。
不意打ちだったので簡単に舌を差し込めた。先にシャワーを浴びていた所為か
有紀の口の中は物凄く熱くなっていた。有紀の舌を自分に舌で絡めとり翻弄する。
その直後、有紀の身体から力が抜けるのを感じ口付けから開放した。
有紀の身体は軽く震えながら俺にもたれかかってきた。
「はぁ、はぁ、はぁ・・・・狂介・・なんで・・・?」
上ずった声で有紀が尋ねてくる。
「風呂でヤるってのもありだろ?」
泡プレイ・・・それは男なら一度はやってみたい夢のプレイ。
「うぅ〜〜。いきなりなんてヒドイよぉ〜。」
不意打ちに気分を害したのか有紀の目じりに涙が溜まっていく。
「いっ、いや、今思いついたからさ・・・時間も勿体無いし。」
有紀を泣かせてしまった罪悪感から言い訳もドモってしまう。
「うぅ〜〜〜〜〜〜〜〜・・・・・。」
「ゴメン俺が悪かった!!この通り。なっ?」
有紀を抱きしめ、許しを請う。こんな事になるなら普通にベッドでヤればよかった。
「・・・・狂介。」
「な・・・・・なんでしょう?」
まさか、別れるとかじゃないだろうな。最悪の結末に俺の背筋は凍った。
「下・・・あたってる。」
「へっ?」
有紀が何を言ってるのかわからず、とりあえず下を向いた。
「あっ!!!!」
見れば俺の反り起った逸物が有紀の腰部の密着していた。
「悪りぃ。」
抱きしめていた両腕を放し有紀を解放する。
「・・・・言えばやってあげたのに。」
「ん?」
「だから、言えばやってあげたよ!!」
有紀はこれ以上にないほどに顔を真っ赤にして叫んだ。
「・・・マジで?」
「マジで!!それなのに、狂介、イキナリ襲ってくるから・・・・。」
有紀はその場にへたり込んでしまった。
「有紀!!」
俺は再び有紀を抱きしめる。いくら俺は大丈夫とはいえ男に恐怖感を
持っている有紀が怯える様な真似をしてしまった事を後悔する。
考えてみればさっきの俺は”ただの変質者”と変わらなかった。
「有紀・・・ゴメンな。」
「いいよ。でも僕・・・怖かった。」
「もうしないよ。」
「うん。」
「じゃあお詫びに・・・。」
今度は優しく有紀に口付けた。
どうやら、俺はサドっ気が多いようだ。これから有紀と付き合っていくうえで
改善をしていかないと今度こそ捨てられる・・・・・気をつけよ。
「あぁ〜。いいお湯。」
すっかり冷え切ってしまったお互いの身体を温めなおす為に
仲良く湯船に浸かり直した。
「気持ちいいな〜。」
機嫌も元に戻った有紀は湯船に浸かりながらウットリとした声を出す。
「そうか・・・良かった。」
来て早々に暴挙に及んでしまった所為か俺は完全に萎えていた。
「じゃあ始めるよ。」
そう言うと有紀は俺を湯船から連れ出し、バスマットに腰掛けさせた。