木漏れ日眩しい街道添いの木の下で、私達は休憩していた。
クリスは眠っている。
急いで出発したのはいいけど、この子もまだ疲れは残ってるんだろう。
ヒュージリアを出てからそれほど経ってもないのに、こんな事
してるのは私のせいだ。
馬のスピードを出せない私を心配して、クリスが休憩を提案してくれた。
クリスが早く村に戻りたいのは解ってるから、物凄く申し訳ない…。
私だって早く戻りたい。おじさま達の無事を、早く確認したい。
もしかしたら、もう遅いのかもしれないけど…
この不安を断ち切るためにも、早く村に帰りたい。だけど、その……痛くて。
昨夜のいわゆる、しょ…初体験とかゆーののために、歩くだけでも辛い。
馬に乗るなんて、とんでもなかった。
だから、スピードが出せなかったんだけど、それを怪我のせいかと、
クリスに心配されるのが、また辛い。
だって、どんなに心配されても、今は体は見せられないんだもの!
…体中、き、きすまーく…だらけで…
ホークにもう一回、馬鹿と言いたい。いいえ、何回でも言いたい。
…本当は、もっと一緒にいて欲しかった。
始めは、彼の盗賊という職業を毛嫌いして口も聞かなかったし、
かけられる言葉も全部突っぱねてたけど…
それでも親身になってくれたあの人に、気付かないうちに依存してた。
一気にいろんな事が起きすぎて、自分がそれらを恐れていた事にも
気付いてなかった。
やっと自分の中の恐怖心に気付いた時、ホークの事しか考えられなくなって…
自分でも信じられないくらい、大胆な事をしてしまった気がする。
まさか、あんな事になるなんて予想もしなかった。
でも、ずっと一緒にいられないって気付いたら、拒めなかった。
少しでも長く、同じ秘密を共有したくて、眠ってるあの人の体に
真似して痕を付けて来た。
…ずっと、覚えててくれるかなあ…
―何かあったらいつでも来いよ―
帰り掛けにくれた、あの言葉、信じていい?
村に帰って、最悪の事態になってたら…恐くて仕方なくなったら、
また抱き締めてくれる?
膝を抱える腕に力を入れ、身体に残るあの人の体温を思い出す。
この痛みこそが私に刻まれたあの人の存在であり、今の私の支え。
村でどんな現実が待っていても、きっと大丈夫…
クリスが隣で寝返りをうつ。
もう少ししたら、起こして出発しよう。
私は、もう充分元気だもの。
-END-