下からこう、上目遣いで見上げられるのは、やはり男としてはぐっとくるものがあるわけで。
「いや…気持ちいい…」
言っちゃった。嬉しそうに歪んだ司の唇が鎖骨におとされ、舌が這う。丁寧に往復されるとぞくりと肌が粟立つ。
シャツは完璧に脱がされ、司の舌は胸へと降りる。
男には意味のない飾りを、柔らかな唇がねぶる。
「……は……」
思わず漏れた息に、司は満足げに目を細め、ざらざらとした舌で乳首を責める。
隆也は不思議なデジャヴュを感じる。おかしい。こんな経験はないはずなのに、と考えて、気付いた。
いつも隆也が司にするように、司はしているのだ。
また苦笑しそうになったが、それより先に司の手が股間にのびていた。
服の上から撫でられると、情けないことに半分立ち上がりかけていたモノが喜んでしまう。
「ん、先生……ふふ、興奮してる?」
悪戯っぽく笑った司の手が、服の上から竿を握る。
「お、おい……」
制止の声をふりきって、司は床に降りて隆也のファスナーを下ろす。
下着の中で硬くなってしまった肉棒を開放してやると、ぴくぴくと嬉しそうに震えている。
この状況はまさか、と隆也は本気で焦り始めたがもう遅い。
司の手が根元を掴んで、そのまま扱き始める。
「ちゅ…ぺろ…」
亀頭にキスをして、舐めあげる。
「…く…司、そんなこと…」
して欲しかったが、させたくなかった。
隆也なりに司のことを思って自制してきたことが、思いがけなく実現して、否応なしに反応してしまう。
「ん…ぺろ……んむ……」
裏筋を何度か往復していた舌の動きが止まると、今度は完全に咥えこまれて
柔らかな唇と唾液にまみれた舌が、強弱をつけながら刺激を与え続ける。
つたない動きだが、それでもやはり気持ちいい。刺激に反応して跳ねる肉棒の先から、先走りがにじむ。
「…は…司、もう……」
何度やめろと言っても、止めようとはしない。
この光景自体も、だいぶまずい。
シャツの胸元からは鎖骨やサラシにおさえつけられた胸元が見えるし、半ば伏せられた目が苦しげに潤んでいるのも、
柔らかな唇にグロテスクな自分が咥えられているのも、どれも興奮を誘う。
「んく…っむ、う……っ…」
強く吸い付いたかと思うと、そのまま大きく唇をスライドさせる。
最初は根元から先端まで、ただ往復するように繰り返していたのが、次第に首を傾け角度に変化をつけてくる。
快感が押さえきれなくなる。わきあがる射精感を押しとどめ、なんとか司の頭を離させようとするが。
「……」
じっと上目遣いにこちらを見上げた司は、どこか余裕を浮べた表情で隆也を挑発している。
びく、と肉棒が跳ねる。司の責めが再開され、一度湧き上がった射精間はこらえ切れないところまで発展していく。
「っく…つか、さ……もう……!」
情けない声をあげながら、力づくで頭を引き離す。それと同時に、司の顔に精液をぶちまけた。
「…は…悪い…」
この光景もそれなりに扇情的で、じっと見入ってしまいたくはなるのだが、汚してしまったという意識が強くて、直視できない。
とりあえず手でぬぐってやると、司は非難がましい目で見上げてきた。
「…なんでちゃんと最後までさせてくれないの?」
「最後までって、お前…」
口内発射なんて、司相手にはまだ…まだ?そうだ、たしかに隆也もそのうちしたいとは思っていたのだが。
なんというか、やはり、17の少女相手にするのは少し罪悪感があったというかなんというか。
口ごもる隆也にはお構いなしに、司は不満の声を漏らす。
「…先生のだったら、ちゃんと飲んだのに」
「の、飲むって、お前な、その…俺はお前がしたくないだろうからって…」
床に座り込んでいた司が、隆也の上にまたがる。
「……だから。フツーならしたくないけど…」
どうしたものかと戸惑っていた隆也の汚れた手を取って、口をつける。
「先生のだったら、できるよ」
言って、せっかく顔からふき取ってやった精液を、きれいに舐め取っていく。
「司……も、もういいから、な?良くわかったよ…」
胸を締め付けられる思い、とでも言えばいいのだろうか。
こうも健気な素振りを見せられると、嬉しいと同時に戸惑ってしまう。
「だめ…最後まで、させて」
飲み下すのに時間をかけて、眉間に皺を寄せながらの作業だと言うのに、まだ退かない。
「だめだ。こんなモン舐めるの嫌だろ?もう十分わかったから…」
「……わかってない……俺が、したいからしてるの。気が済むまでさせて」
言うと、指の股まで丁寧に舐めていく。もう、今日の司は止めようがない。本当に気が済むまでさせるしかない。
諦めた隆也の手を完璧に舌で掃除して、ようやく司は笑って見せた。
「はい、お終い。気持ちよかった?」
「…はは……あぁ、良かったよ……興奮して困った。どこで覚えたんだ?あんなこと」
こっそりと服を戻そうとした手を、司の手が止める。
「だめ。まだ終ってないよ。…まぁ、情報源は男だから、俺」
まだって、と嫌な予感に背筋を凍らせた隆也は、ぼんやりと考える。
あぁそっか、男子高校生だもんな、エロビデオなりDVDなり、見る機会もあるだろう…って。
「ま、待て、お前クラスの奴らとエロビデオ見たりするのか?」
司の視線が逃げる。かすかに頬を染めて。
「…まぁ、そういうこともあった」
「あった、って…」
それはけっこう、いやかなり、危険なことではないだろうか。
うっかり股間を触られたりしたらそれこそ一発でバレるし、下手をすれば貞操の危機という可能性も…
「それはもういいから!…それより先生、したくない?」
司の手が油断していた隆也の股間をまさぐる。
「いや、よくないぞ…って、おい。ま、待てって……っ」
鈴口に爪をひっかけるなんて、それこそ見て覚えた知識だろう。
「待ってもいいけど、止めないよ?」
強めに竿を握られると、うっかり反応してしまいそうになる。
「…う、いや、司、その前にちょっと話をしよう。
そのだな、お前が男としてエロビデオを見るのは別にいいんだが、その場に他の男がいるっていうのは…」
萎えた肉棒をいいように弄ばれながらの説教はあまり説得力がない。
我ながら情けないと肩を落とす隆也の上から、司が降りる。
「……もう、しないよ」
隆也の正面に立って、司はおもむろにシャツを脱ぎ捨てた。
「…司?」
「俺も危ないなって思ったから……ねぇ先生」
バックルをはずすと、男物のジーパンは腰骨の下まで落ちる。
細めのジーパンだと腰からの丸みのあるラインが見えてしまうのだ。
「先生も、ヤキモチ焼いてくれるの?」
司の頬は朱に染まっている。ジーパンは足元に滑り落ち、日に焼けていない白い腿が目の前に現れる。
「…ヤキモチ、か。それもあるな…司のこんなかっこ、誰にも見せたくないしな…」
下着の一部が色が変わっているのが見える。
「…濡れてるな」
その一言に、司の下半身がうずく。
「…うん……したく、なっちゃったから…」
ゆっくりとさらしを巻き取っていく。おさえつけられていた白い胸が露になって、呼吸とともに上下する。
見れば頬は火照っていて、少し息が上がっているようだった。司も興奮しているのだ。
濡れた下着を下ろすと、愛液が糸を引く。
するすると下ろして足を引き抜くと、生まれたままの姿になった司が再び隆也の上にまたがった。
明るいところで見ると、体の陰影がよくわかる。
「…ね、先生、しよう…ううん、して、あげる」
司の唇が重なって、舌が差し入れられる。精液の匂いが鼻につく。
わずかに苦味の残る口内を貪ると、それに負けじと舌を絡めてくる。
まだ、気持ちを伝えきれていないと思っているのだろうか。
「…っは……司。何度も言うけどな…ちゃんと、お前の気持ちは伝わってるぞ……と、いうか」
司の腰を抱き寄せて、笑う。
「心配しなくても、俺はお前しか見えてないよ」
「…俺だって、先生しか見えてないもん……先生じゃなきゃ……こんなこと、できない」
火照った頬に口付けて頭を撫でてやると、拗ねたような顔がすこし緩む。
「うん…そうだな。嬉しいよ。ただな……無理はしなくていい。あと」
腰を強く抱き寄せ、司をソファに押し倒す。
「ひゃ、先生っ!?」
「…俺をリードしようなんて100年早い」