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司9 (4)

◆aPPPu8oul.氏

ふぅ、と隆也は深呼吸をしてドアを開ける。
「高槻。入るぞ」
周囲は静かだ。足を踏み入れると、目的の人物はちょうど体を起こしたところだった。
「先生」
反射的に起き上がった司は低血圧らしく頭を抱え、それでも顔を隆也に向けた。
「おはよう。司」
にこりと、昨日は見せられなかった笑顔を向けて、名前を呼ぶ。血の気の薄かった司の顔が緩む。
寝起きの低い声が、かえって色っぽい。
「おはようございます。せんせ」
笑顔を返してくれたことに隆也も安堵の息をつき、司の横に腰を下ろす。
ふいに頭をなでようとして手を押しとどめ、隆也は意味もなく自分の手をいじり、気遣わしげに口を開く。
「あ〜、昨夜は……ごめんな。ほんとに、ごめん」
思い出して司の表情も一瞬曇るが、すぐに笑顔に戻る。
「ううん。大丈夫。三崎さんと話して、落ち着いたから」
言いながらゆいの台詞を思い出し、本当におかしみが湧いてくる。
隆也が格好をつけられるまでと言ったが、この調子ならすぐに格好をつけてくれるに違いない。
それが表れた笑顔なのだが、隆也には無論そんなことはわからないので、ただただ可愛らしく見える。
「そっか。ありがとな。その……田宮とは話、したから」
「……はい」
司は俯き、ぴたりと身体を寄せる。言葉は続かないが、無言のうちに伝わってくるものがある。
「…………」
愛しくて、肩を抱き寄せる。その身体の薄さも、掌に感じる体温も、肩にかかる頭の重みも、嬉しくて仕方ない。
状況は何一つ変っていないというのに、昨夜とは全てが違って感じられる。
「司」
「はい」
「……田宮と約束した。司は俺が守るから、って」
「……はい」
司の声に嬉しさがにじんでいる。けれどふと顔を上げて、その口から謝罪の言葉が出てくる。
「先生。俺もごめんなさい」
昨夜ほどではないが、やはりその言葉には胸がざわつく。
「……昨夜も、聞こうと思ったんだけどな。なんで司が謝るんだ? 」
「健を、止められなかったから……」
それを聞きたかった。その理由を。
昨夜は聞くのが怖かった。今も怖いが、それでも心構えはできた。
「それは……なんで、だ? 」
司はゆっくりと、自分の考えを反芻する。
「健を失くしたくなかったから。友人として、だけど……
 まさか、健が……今までの関係をぶち壊そうとするなんて、思わなくて、頭真っ白になっちゃって……
 言えばわかってくれるって……信じてたっていうか……思いたかったから……」
決して健との関係を―女として望んでいたわけではないと、それがわかっただけで隆也の肩から力が抜けた。
司の肩は自分に預けられている。
昨夜司の望んだままその身体を抱きしめていれば、もっと簡単な話で終ったはずだ。
落ち着いて話を聞くことも抱きしめてやることも出来ず、狼狽した姿を晒して気の聞いた言葉もかけられず。
昨夜の自分はそれこそ愛想を尽かされても仕方ないような情けなさだった。
「うん……ごめんな、昨夜は話聞いてやれなくて。カッコ悪いとこ見せちまったな」
くすりと、司が笑う。その意図はつかめないが、この穏やかな空気は悪くない。
「ううん。もーいい。俺もカッコ悪かったし。おあいこだよ」
「そっか……」
愛しさがじわじわと胸を満たす。
「な、司……」
「うん? 」
首を傾けて、見上げてくる瞳が愛らしい。あざも薄くなった頬を手で包む。
「キスしていいか? 」
「……うん」
司の腕が背に回り、目の前の瞳が閉じられる。
迷いなく唇を重ねて、その柔らかさを堪能する。執拗に唇を啄ばみ、気が済むまで舌を絡ませる。
朝起きて最初に味わうのが愛しい人の唇だという事実は、たまらなく幸せだ。
「ん……は……せんせ……」
抱きついてきた司の頭をなで、耳元に唇を落とし舌を這わせる。
「ひゃ、う、せんせ、だめ……だって……」


「ちゅ、ん……でも……美味い……」
弱いうなじを舐めてやると、舌足らずな声がとんでもないことを言ってくれる。
「やぁっ……だ、だめ、濡れちゃう……」
「……司ー、そういうこと言われると俺も始末がつかなくなるんだけどなぁ」
そういえば寝起きは感度がいいんだっけ、などとぼんやり考えながら、
本当に始末がつかなくなりそうな下半身をごまかすように、司の頭をぐりぐりとなでる。
「せ、先生のせいじゃんっ! 」
「いやいや。司のせいだ」
この意味のない、甘い会話が嬉しい。笑みがこぼれて抑えきれない。
「さ、そろそろ俺は教師に戻るぞ。今日はちゃんと……笑顔で過ごせよ? 」
「ん……」
途端に司の表情が曇る。今日はクラス行動だが、それでも健と顔をあわせるのは辛いのだろう。
「……お前が笑ってやらなきゃ、田宮も笑えないから、な」
「……うん。頑張る……」
今度は優しく、髪をすくように頭をなでる。
「明日、空いてるか? 」
明日は土曜日で、学校は休みだ。伏せられていた司の目がぱっと上を向く。
「うん。空いてる」
「じゃあ明日な。俺も頑張って今日中に洗濯するから」
「うん」
こくんと縦に振られた頭をなで、前髪をかきあげて額に唇を落とす。
「よし。じゃあお互い、頑張ろうな」
「なんか先生のほうが楽そう」
「そうでもないぞ? 洗濯もそれなりに重労働なんだからな」
意味のない、そのくせ変に気持ちを浮つかせる会話をしながら、二人は部屋を後にした。

「おはよ」
「……おはよ……」
しごく平静の調子で部屋に帰ってきた司の、しごく平静の挨拶に、健は一瞬息を飲む。
昨夜は顔を真っ青にして、細い肩を震わせて、呼吸を乱していたというのに。
司の幸せそうな表情が、すべてを物語っているようで。
自分がいれたヒビは一晩のうちに修復されて、もうどうしようもなく強固な壁になってしまったのだと、
直感的に思い知らされた。
「もう平気なのか? 」
友人の問いに、司は笑顔で答える。
「おー。平気平気。でも朝飯食う気ないから、先行っててくれ」
「だめじゃねーの、それ。んじゃ行くか」
ぞろぞろと部屋を出て行く友人の後を追ってドアの前に立った健は、くるりときびすを返して司に向き直る。
「司」
責めるわけでもなく、ただしっかりとした司の視線をまともに受ける。
自分が言うべき言葉は一つしかない、
「……ごめん、な」
「気にすんな。先生と話したんだろ? それが結論だからさ」
笑う司の言う結論は、予想通りのものだった。だからショックではないと、自分に言い聞かせる。
自分に嘘をつくのは辛い。けれどもう、同じ間違いを犯す気も起きなかった。


最終日の観光は清水寺と国立博物館だ。
清水寺、といえば景勝地として有名だが、高校生ごときに景勝をゆっくり愛でる風流心はない。
とりあえず写真は撮ってみて、あとはてんでばらばらに土産物屋などを見て回っている。
「縁結びの石があるんだって〜」
「あ、それ知ってる! 片方の石からもう片方の石まで、目を閉じて歩いていけたら恋が成就するんだって」
そんな女子の会話を耳にして、司の友人がふざけて話を持ち出す。
「な、やってみよーぜ」
「お前一人でやれよ」
あまり乗り気でない司はあてもなく足を進めるが、運悪くその恋占いの石の前に来てしまう。
「一人じゃつまんねーだろ。っつーか楽勝じゃね? あのくらい」
「どーだかな……」
「できるって」
「なんだよ、おもしろそーじゃん」
友人のノリに眉をしかめて、司は健に目を向ける。
いつもより少し距離をとっていた健は、ふいに会話の輪の中に入ってくる。
「ちょうど誰もいないしやってみよーぜ」
「よし、ジャンケンな。出さなきゃ負けだぞ。じゃーんけーん」
そう言われては乗らないわけにはいかない。司も仕方なく手を出す。
『ぽん』

「はい、俺一番。司が二番で健が最後な」
最初に試した友人は勢いよく足を進め、みごと恋占いの石にぶつかって一応の成功を収めた。
「お前それ、おしきっただけじゃねぇの? 」
「うるせー。次、司行って来い」
友人に肩を押されて、司も石の前に立つ。
目を閉じて、まっすぐに歩を進める。方向も距離感も、勘でしかないが、難しい距離ではない。
数歩歩いて、司は足を止め目を開ける。目の前に石があった。
「うお、すげーピッタリじゃん」
「なんだその余裕っぷり。むかつくな〜」
「この辺が男前と凡人の違いだって」
勝手なことを言う友人に冗談を返し、三人目の足取りを眺める。
おっかなびっくりの足は途中で止まってしまい、反則気味にやり直して成功させた。
「おし。最後は健だな」
ちらりと、健の表情を窺う。
そこにはぎらぎらしたものは見えない。
目を閉じた健の足が前へと踏み出す。足取りに迷いはない。
数歩進んだところで、通行人が前を横切ろうとする気配に気付いて立ち止まり、目を開いてしまう。
石はあと数歩先にあった。
「あーあ、なんだよその中途半端な結果は」
「他人に恋路を邪魔されるってことじゃねーの? 」
適当なことを言う友人の指摘に、健の頭には隆也の顔が思い浮かぶ。
「いや……」
言い掛けた健を、司が見ている。
「……自分で諦めちまうってことだろ、多分」
笑ってそう言う健の笑顔が、司の声を失わせた。


国立博物館は静寂に包まれていて、賑やかな学生も普段よりは幾分大人しく見学を続けている。
その片隅で司はゆいに経過を報告し、笑顔をかわす。
「じゃあもう、大丈夫だね」
「うん。ご心配おかけしました」
軽く頭を下げた司に、ゆいはふと真面目な顔を見せる。
「ね……田宮君とは、大丈夫? 」
聞かれて思い浮かぶのは、縁結びの石の前で笑った健の顔だ。
不自然な間、不自然な距離、どこか躊躇いがちな笑顔。
胸の痛みはお互いに残っている。司の胸には、恐怖というしこりも残っている。
けれどそれは、いずれ消えるだろう。そう信じたい。
「……まだ、前と同じようにってわけにはいかないけど……大丈夫だと思う」
「そっか……うん、元の、親友に戻れるといいね」
「……うん」
そのままゆいと別れ、一人で館内を歩き回る。
まだ意識のどこかに混乱が残っていて、落ち着いて鑑賞しているつもりでも何一つ感動できない。
だめだ、と首を振り、早々とバスに戻る。まだ誰も戻って来ていない。
バスの席は、健の隣だ。新幹線でも。
それは誰よりも健の隣にいることが楽だったことを示している。
自分の秘密を共有し、自分を守ってくれる相手。
有り得ないくらい、都合のいい相手だった。そしてそうあることが当然だと思っていた。
深く腰掛け、ため息をつく。今更自分が蒸し返してもどうしようもない。
それでも、まだ何か伝え切れていない気がする。
集合時間を確認しようと開いた手帳に目を落とし、司はふとペンを取る。
書き終わってすぐに何人かがバスに乗り込んできて、彼らとたわいない話を始める。
健が戻ってからも、いつもと同じようにくだらない話を続けた。
二人きりでなければ、意識することもなくて済んだ。

京都駅から新幹線に乗り、今度は富士山を左手に見ながら地元に帰る。
その車内で、司は健の手荷物に一枚の紙をねじこんだ。
健はすぐにそれに気付いたが、その場で開けようとはなかった。
堂々と渡さなかった司の心中を察して、家で、できれば一人で読もうと心に決めた。
司はいつもどおりだ。隆也にも変ったところはないように見える。
ただ昨夜が異常だったのだ。
それぞれが自分の気持ちどおりに動くことができなくて、お互いに傷つけあって。
その結果がこれだ。
司は健の隣にいる。けれど彼女が帰るところは隆也の腕の中だ。
あるべき姿に戻ったのだ。行きの車内と、なんら変りはない。
それでもどこか、妙によそよそしい空気が残っている。足元が覚束ないような、不安を覚えさせる空気だ。
その不安から逃げるように、司は眠りについている。昨夜はあまりよく眠れなかったのかもしれない。
健の胸が鈍く痛んだ。
昨夜自分が犯しかけた過ちを反芻しながら、窓外の景色と司の寝顔を交互に眺めた。
自分がもしあそこでやめなかったら、司は自分の前でこんなに無防備に寝たりはしなかっただろう。
やめて―止められて、良かった。
首を巡らせ、隆也の姿を探す。顔は他の生徒でもなく、司でもなく、外に向いている。
やはり、行きとは違う。
修学旅行の前半は、隆也の視線が司を追って、隣にいる健が先に気付くことが多々あった。
健は、今朝笑って結論を出した司の態度に安心した。安心して、胸を痛めた。
けれどそれは結局、自分のことしか考えていなかったということなのだろう。
本当にすべてを元通りにするには、それではだめだ。けれど何をすればいいのかわからない。
ただ、うわべだけでも元に戻さなくてはいけない。
それしか、今は出来ない。


高校の最寄り駅で解散して、それぞれが大荷物を抱えて家路に着く。
「司。バスだろ」
「うん。健は……」
「マサやんちの車に乗せてもらう。うち近いし」
「そっか。じゃー、月曜日、な」
別れの挨拶もいつもどおりのさっぱりしたもので、変に笑顔を作ることもなく終った。
けれどその曖昧な歯切れよさが、どこか悲しい。
マサやんと、その母親との会話も普段どおりにできたというのに。
家に帰って、声をかけてくれた母親に一言『疲れた』と言いいながら荷物の大半を預けて、自室にこもった。
司の手紙は、短いものだった。

俺も努力するから、健も頑張ってくれ。
ずっと、友達でいような。

胸にせりあがってきたその熱さの理由がなんなのかはわからなかった。
嬉しさなのか、せつなさなのか。もっと違う、何か健が知らないような言葉でしか表せないようなものなのか。
ただ、少し何かがふっきれた気がした。ようやく泣くことができた。
司と男と女の関係をやめたときも泣かなかったけれど、今ようやく泣けたことできっと自分は何かを捨てられた。
月曜にはきっと、もっと軽い気持ちで司と向き合えるだろう。

「三宅先生、お疲れ様でした」
同僚に声をかけられ、隆也は力のない笑顔を向ける。
一度学校に戻って報告書を書いて、ぽつぽつと他の教師達も帰り始めている。
「あ、はい。お疲れ様でした……ご迷惑おかけして申し訳ありません」
司の一件、どころか二件は他の教師にも迷惑がかかった。
頭を下げる隆也に、同僚は笑う。
「いえ、あの程度で済んで良かったですよ」
「はぁ、はい……」
一瞬、相手のさしている件とは違う方が頭に浮かぶ。どちらもだ。あの程度で済んでよかった。
「それじゃ、お先に失礼します」
職員室を出て行く同僚を見送り、隆也も(他の教師よりはだいぶ長い)報告書を提出して家路に着く。
外はすっかり日が暮れて、夜の闇に包まれていた。
「……すっきりした、っつーことでいいんかな、これは」
頭には、昨夜と今朝の司の様子が交互に出てくる。
痛々しい、見ているだけで胸を締め付けられるような取り乱し方と、思わず笑みが漏れるような体温と。
そして、それにいちいち胸を痛めたり、躍らせたりしている自分と。
あんな心臓に悪い思いはもう二度としたくない。とにかく明日だ。これから家に帰って、洗濯をして。
明日は司とゆっくりと過ごそう。そしてもう一度、自分の手元にいることを確かめよう。
そうでもしないと不安をぬぐいきれないと、隆也がらしくもなくため息をつき車を出そうとしたとき。
「ん? 」
携帯が鳴った。着信音で相手はすぐわかる。司からのメールだ。
『件名:お疲れ様
 仕事終った?今、外見れる?
 月が綺麗だよ。』 
司は時々、こういうメールを送ってくる。
普段はなかなかメールをよこさないくせに、ふと思いついたように、こんな繊細なことをしてくるのが
(本人は嫌がるかもしれないが)女らしい。
「……綺麗、だな」
わざわざ車の窓を開けて満月を見上げた隆也は、ぽつりと呟く。
濃い闇に浮かぶ、明るく丸く色の濃い月は美しい。呟きは心から出たものだった。
この小さな感動を、司は自分に伝えようとしてくれた。それが嬉しい。返信を打とうとして、手を止める。
声が聞きたい。呼び出し音が途切れた瞬間、声をかける。
「司 」
「先生。どうしたの? 」
何かあったのかと聞いてきそうな司の語気がおかしい。
「いや……」
声を聞きたかった、と言うのが、何故か今日は恥ずかしい。普段なら、面と向かってならいくらでも言えるのに。
何故だろうと考える間、司を待たせるのも心苦しい。明日伝えればいいと、そう結論付ける。
「月、綺麗だな」
「……うん」


司の声は落ち着いていて、一見無表情に見えるけれど恥ずかしげに目を伏せているだろう表情が目に浮かぶ。
快い沈黙を味わって、口を開く。
「……明日は、何時に来る? 」
「んーと……お昼前、かな。一緒にお昼食べよう」
明日の午後は司を独占できる。それが嬉しい。何ができるとかできないとか、そんな計算は抜きに、嬉しい。
「ん。そうだな……じゃあ、それだけだ」
「うん。それじゃ、おやすみなさい。また明日」
「お休み。また明日、な」
携帯を置いて、隆也はもう一度空を見上げる。
声を聞ければ、触れられれば、抱きしめられれば。幸せだと思う。愛しいと思う。
この気持ちさえあれば、大抵のことは乗り越えられると自信が持てる。
「すっきりしたさ。いや、しなくても……大丈夫だ」
大丈夫だ。そう月に呟いて、隆也は車を走らせた。
明日はいい天気になりそうだ。司のためにも、これから洗濯をしなければ。
そう考えた彼の口元には、幸せそうにしか見えない苦笑が浮かんでいた。


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「せ、せんせ……何、これぇ……」
泣きそうな声をあげている司は、ベッドに腰掛けた隆也の上に下半身を露にして座っている。
細い脚は大きく開かれ、いやらしく濡れた結合部をこちらに見せ付けている。
「何って。さんざん待たせた挙句長いことエロなしという不甲斐ない作者に代わって謝罪と賠償をだな」
飄々とした態度の隆也の手は司のシャツの中にもぐりこみ、器用にさらしを解いている。
「そんなん、俺のせいじゃない、しっ、こ、こんなのやだぁ……」
「んっ……やだぁ、とか言ってる割には気持ち良さそうに司のオマンコが締め付けてくるんだけどな」
「や、やだ。恥ずかしい、よぉっ」
顔を後ろに向けようとした司のうなじはほんのりと朱に染まっている。見られているという羞恥が、快感に変る。
「ほら、またびくびくしてる……いいから作者の代わりに皆さんにお詫びしろって。やらしい単語使ってな」
ちゅ、と首にキスをして、いやらしい笑顔を浮べる隆也の言葉に息を飲み、司は赤い頬をこちらにむける。
「ひ、う……っく、ずっと、え、エッチがなくて、ごめんなさい……ふ、あ……」
解かれたさらしが腹に落ちる。シャツの中で隆也の手がうごめき、先端を固く尖らせる。
快感に飲まれかけた瞳は一瞬こちらにむけられ、すぐに恥ずかしそうに横にそれる。
「それから、いつものお礼もしなきゃだめだろ。エッチな司を見てくれてありがとうございます、って」
「い、つも、あ、あっ……は、え、エッチな俺を、見てくれて、ありがとうございますっ……」
辱めの言葉を聞くたび、口にするたび、隆也をくわえ込んだ司の下半身が疼く。
「ほんとにエッチだな、司は……ん、動く、ぞ」 
「や、だめ……あ、あっ……は、や、だぁっ……せんせ、せんせぇっ……」
隆也が腰を動かしつき上げるたび、ぐちゅぐちゅと水音を立てて結合部が愛液に汚れる。
狭い膣口を行き来するグロテスクな肉棒も、司にはこの上ない快感を与える隆也の一部だ。
「ほらっ……ふ、もっと……やらしいこと、言って……そう、今どうなってるんだ? 司の、ここはっ……」
「だめ、だめっ……や、やだぁっ……」
「だめじゃない。ほら、見てもらって感じてるんだろ? ちゃんと、教えてくれよ……っ」
耳元に熱い吐息を吹きかけられ、司は熱に浮かされたように喘ぎ、淫らな言葉を口にする。
「は、んっ、あ、あっ……先生の、中、ぐちゃぐちゃに、してぇっ……見られて、感じてる、のぉっ」
「そうだな、感じてる、よなっ……乳首も、こんなに勃起させてっ……クリも……」
シャツの上からでもわかるほど勃起した司の乳首を強めに摘み、赤く膨れた陰核をなでる。
「ひあぁっ! ら、めぇっ、せんせ、ふ、あ、やらぁ……きもちいい、よぉっ……」
「司……ほら、最後に、お願いしろ……ふ、はぁ……もっと、見てくださいって……」
隆也の腰の動きが複雑になり、勢いを増す。シャツの下では小ぶりな胸が揉みしだかれ形を変えている。
「はぁ、はっ、あぁんっ、もっと、みて、くださいっ! やらしいのも、全部、みてぇっ!」
「よく、できたな……ごほうびだっ」
自分から揺らしだした細く締まった腰を掴み、強く突き上げる。結合部から漏れた愛液がシーツにしみを作る。
「ひ、あ、やぁあんっ! 奥、あたってっ……イっちゃ、うっ……!」
「イっていいぞ、ほらっ……見てもらえっ……」
きゅ、と陰核を摘まれて、司の体がビクリと跳ねる。隆也の責めはやまず、喘ぐ司を追い立てる。
「あっ、あぁっ、みら、れてっ……イっちゃうっ、イっちゃうのっ! あ、あぁあんッ…!」
「俺も、イくっ……っく……は……」
震え、ぐたりと力を抜いた司の体が抱きしめられる。乱れた隆也の呼吸が耳元で聞こえ、司は甘えた声を出す。
「は、はぁ……せんせぇ……」
「ん……は……司、お疲れ様……可愛かったぞ……」
頭をなでられ、司は目を閉じる。ただ、激しく息をするその口から出てきたのは拗ねたような台詞だった。
「……も、やだ……」
「あー……まぁ、もう、こういうことはないから、な」
なだめられ、目を開けた司は口を尖らせたまま頷いた。

作者に代わって謝罪と賠償を・終り


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