「な〜にやってんさ?」

ソファーの後ろからいきなりひょいと手元を覗き込んできたラビにリナリーは短い悲鳴を上げた。

「ラビ…?もう、脅かさないで」

「そんなつもりじゃなかったんだけど…何それ」

ソファーの背もたれを跨いでリナリーの隣に座ったラビにリナリーはにこっと笑って手に持っていたものを渡す。思わず両手で受け取ってしまったがそれは片手に余裕で収まる小さなものでおまけにまるで重さを感じない。

「…紙?」

「千代紙よ。元々は正方形のものを折って形にするの」

「へぇ、器用なもんさ〜」

繊細に折られた小さな紙にラビは感嘆の声を上げた。

「それは鶴なんだって。神田に教えてもらったの」

「…ユウに?」

こんな細かい芸が出来る人だったのかということは置いといて、ラビはリナリーにこの小さな鶴の折り方を教える戸惑う神田の姿を想像して思わず吹き出した。

「傑作さ〜」

「笑わないの!!」

ラビが何を想像したか分かったのかリナリーがめっ、と母親が子供を叱るような顔をしたが可愛いばかりで恐さなど微塵もない。しかしリナリーにはラビだけに関わらず教団の皆弱いのだ。
ラビは鶴を膝の上に置いて手を顔の前で合わせ、ごめんねのポーズをとり罰が悪そうに笑う。
それを見たリナリーはくすりと笑ってラビの膝の上の鶴をそっと摘んで掌で包んだ。

「この鶴ね、千羽折ると願いが叶うんだって」

リナリーの掌に包まれた頼りなさげな小さな鶴。それに願いを叶えるという大層な真似が出来るのだろうか?ラビは眉間に皺を寄せて鶴を覗き込む。

「本当に叶うんさ?」

「う〜ん、どうだろう…気休めかもしれないけど…」

リナリーの指が鶴の羽を慈しむように撫でる。

「少しでも希望を多く持てるように…縋れるものには縋っておきたいの」

私の世界が護れるように…

そう言って笑うリナリーの顔はどこか儚気で、簡単に破けてしまう紙にも縋る姿は酷く脆く見えた。

そんな彼女を守るのは、俺ではないのだろうか…?

ラビは机の上に置いてある千代紙に手を伸ばした。そして手に取った一枚のオレンジ色の千代紙をリナリーの顔の前でぴらぴらと揺らす。

「俺にも作り方、教えてくれさ」

そう言うとリナリーは明るく笑って自分も新しく千代紙を取り、ゆっくりと折りだした。
それを真似して小さく折って、出来上がった鶴をそっと並べて…寝ることも忘れて気付いたら空は白み始めていた。

千羽には届かないけれど、願いが叶うようにとまた折り始める。




自分の世界が護れるようにと……



少しでも長く一緒にいられるようにと……





あなたを護れるようにと……
















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マイダーリン華樛のサイトで500と600を踏んだ際にリクエストさせていただきました!
サイトジャンルは全く違うのですが、駄目もとで訊いてみたら承諾してくれたので書いていただきました……だいすきー!(←
華樛はBL派のラビ受けスキーなので「ラビ受け」をリクエストしてたのですがまさかのラビリナです NL派の私に合わせてくれたのかたまたまなのかはわかりませんがまさかのラビリナです 嬉しくて涙出た……!
「めっ」とかリナリが可愛すぎてかるくしねます(私が)。ブックマンとして生きていくことを決めたラビの想いが切ない……ああもうこの素敵ヘタレ……!(※煌華はヘタレキャラ大好きです)

ラビに幸せがありますようにーと夕焼けに向かって叫ばずにはいられません。
本当にありがとうございました!