「ラビー!」

自分の声が思ったよりも廊下に響いて、少年は走りながら苦笑した。何が起こったのかと一瞬こちらを向く廊下にいた科学班員達が、またいつものことだ、と再び自分の作業に目を戻す。窓から差し込む光に当って白の髪が銀色に光る。綺麗な銀灰色の瞳をいつも以上に煌かせて、大きな箱を落とさないように支えながらラビの所へと駆けていく。彼は驚いて振り向き、顔を火照らせながら走ってくる少年を呆れ顔で見つめた。

「ラッ、ビ…!」
「はいはい、何さ?―俺はココ、ココ」

まだ覚束ない足取りでふらふらと下を向いて歩くアレンを声で誘導する。そういえば去年の夏にアレンの部屋でスイカ割りをしたっけ。きちんと指示通りに歩いているかと思ったら、わざとユウの方に方向転換させて、思い切り彼の頭を棒で殴りつけた。そこから彼等の大きな追いかけっこが始まって。想い出にふけっていると、息を整えたアレンが自分の顔を覗き込んでいた。

「どうしたんですか?」
「あ、いや。で、お前は俺に何の用さ?」
「別に用って訳じゃないんですけど…」

アレンは箱をどさっと床に置いて、ごそごそと自分のポケットからスケジュール帳を出す。パラパラとページをめくって指を止める。2月。そこからまた指で辿って今日の日付とその15日後を比べる。2月5日。

「リナリーの誕生日まで、あと15日ですね」
「ん、あ、そうか…。…まさかお前その箱ッ!」
「誕生日プレゼント候補ですよ?」

アレンがにこりと微笑み、箱を静かに開く。任務遂行の御礼に貰った品々。煌びやかなネックレスや花柄のワンピース。アクセサリーは勿論のこと、靴や服まで沢山の女の子用の物。

「これ、アレンが貰ってきたんさ!?」
「そうですよ。彼女に似合うと思ったから、貰ってきたんです」

さらりと言い放ったアレンに、ある意味尊敬の意も見えたラビ。2月の5日目。自分の覚えている限り誰の誕生日でも無いこの日が何故かとても愛しく思えて、意味も無くへらっと笑ってみる。アレンも緩む頬を押さえていたが、最後には思い切り二人で笑ってしまった。

「やっぱり、皆で選んで買ったほうがいいですね」
「そうさね。リナリーにはもっと可愛い方が似合うさ」


あと15日。
2月5日。




待つ時間がとても楽しくて。
ああかみさま、この日をくれてありがとう。
















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まままままさかの展開で桃犬☆さんからイラストだけでなくSSまでいただいてしまいました、よ……!!
しかもなんて素敵なラビアレ+リナ……! 私の誕生日がリナリの誕生日の15日前として描かれていてああああああ(ごろんごろん/落ち着け)
……私の誕生日の日にこんな会話をしているのかと思うとドキドキします。その数日後にでも神田も交えて一緒にプレゼント買いに行くのかと思うとまたドキドキします(そうですか)
「皆で選んで買ったほうがいい」「リナリーにはもっと可愛いほうが似合う」というラビとアレンに本当に転がりたくなりました……。リナリーが好きな男子組って素敵ですよね(何度目)私のツボを完璧についてくださった……!!

桃犬☆さん、本当にありがとうございました!