GM
あの後、きみたちは未檻に先導され、D7の救護施設に運ばれます。
怪我人は多少いますが、死亡者はゼロ。人々は正気に戻り、どうして避難していたか全然覚えておらず……
すべてがうやむやになったまま、時が過ぎます……。数時間くらい。
局長 「うーん、全治一週間。一週間で治るんだこれ?井上の狩人はすごいね」
詩玲音
鍛えてますから
熊にも勝ちましたしね
いつか 学院の保健室にもありますよね。怪しいヒールゼリーみたいなの
詩玲音 全てのダメージをひんやりゼリーで癒やす医者がどこかの島にはいるという
朋美 キュポンッ
局長 「ま、今日はゆっくりなさい。あとのことは我々に任せてね」
GM 詩玲音ちゃんは一応車椅子に座らせて、D7の面々は退散します。
詩玲音 この車椅子とかいうのダサいな……つらい……
里奈 「じゃあ……チョコパの準備、しようか」
GM 救護施設ですが、あらかたの設備は整っていますね。料理もできます。
いつか 「そうですね! えーっと、バナナは確かあっちに……」
詩玲音 「え? するのチョコパ?」
里奈 「当たり前だろう。今日はバレンタインデーだ」
未檻 「チョコいらねーの?」 いっぱいチョコもってきたよ
朋美 「……まあこういう時こそ、です。……はっ、わたくしも準備をしなければ……」
里奈 「バレンタインデーにチョコを食べず、いつ食べるんだ」
詩玲音 「うっ急に傷が痛く……帰りますね」
里奈 「……いつも食べてるな」
GM 詩玲音ちゃんが車椅子でころころーっと出て行こうとした瞬間に
詩玲音 これからもボクを応援してくださいね
あんり 「こらーーー!!!」 立ちふさがるあんりちゃん!
詩玲音 うわっ! 美少女
あんり 160cmくらいの女の子だよ。車椅子の取っ手をがっとつかんで、180度回転!
詩玲音 「ヒッ」
あんり 部屋にもどします。
詩玲音 「もう身体のほうは大丈夫なんすか?」
あんり
「うん、すっかり元気だよ。……筋肉痛で節々がすごく痛いけど」
「あと、ちょっと視界が慣れないぐらいかな」
詩玲音 「しばらくぶりっすもんねその背丈」
里奈 「極端だったからね」
詩玲音 「最初見た時、誰? って思いましたもん」
朋美 「そういえばわたくしは初めてですね……」
あんり でかくなったり小さくなったりで感覚がめちゃくちゃで、しばらく見下ろした対象がすごく小さく見えたり、見上げたものがすごく大きく見えてしまいますが……
いつか 「神崎先輩……本当に、良かった」
あんり 今までよりずっとすっきりしたような、明るい表情をしていますね。
詩玲音
そう……美少女になってるんですよね
だからわからなかった
あんり
「誰?はひどすぎるよ!」
「いつもだったら小さいわたしの制止も振り切って山にこもったりするんだろうけど、もうそうはいきませんからねー」
詩玲音 「今は海に行きたいですね。オホーツクの雄大さを感じたいっす」
あんり 「せめて夏に言って!」
詩玲音 冬の海結構好きなんすよ 人間がいないから
あんり
「まあ、その足怪我させたのわたしなんだけど。だからこそチョコで元気だしてもらいます」
今から作ります。
詩玲音 「あっはい……」
いつか 「やったぁ、全員参加ですね!」
里奈 「材料はいっぱいあるからね」
詩玲音 くそっ! 味方がいない!
里奈 「キロ単位である」
詩玲音 「気合い入りすぎでしょ。巨大あんりちゃんはもういないんすよ」
未檻 「俺、おいしい作り方教えてやろうか?」
いつか 「バナナもありますよー」バナナ
詩玲音 興奮剤
朋美 「初めてですが……負けませんよ……!」ぐっ チョコバトルの始まりですね
未檻
「お、おう。……作れる?大丈夫か?塩と砂糖の違いはわかるな?」
悪霊に効くほうが塩だぞ
詩玲音 「何がそんなに楽しいのやら……」 窓辺で黄昏れている
朋美 「そのぐらいは分かります!」和菓子にも使うから!
あんり 「わたしもがんばるぞー!」 えいえいおー!
里奈
そうですね……。里奈は一人、学院を歩いています。
もう純潔騎士団の引き継ぎは済みました。大学も決まったし、クラスメイトのみんなもいい感じに進路が決まったりしました。
来週からは卒業式の予行とかがスケジュールに入っている。
中高一貫の六年間を味わうように、学院を歩いて回り……
最後に中庭に来る。
聖母像の前で立ち止まる。
日野子
「勇気を出して、想いを伝えてくれてありがとう」
「でも……ボクはキミの気持ちに応えることはできない。ごめんね」
里奈
「……先輩がそう言うことは、わかってました」
「でも、私、どうしても……ごめんなさい」
日野子
「キミがあやまる必要なんてないよ、里奈」
「むしろ、ボクはキミに感謝しているんだ。戦うことを決意してくれたことを、諦めないでいたことを」
「ボクは結構、酷いヤツだからね。そういう尺度でばかり、みんなを見てしまうけど」
「……キミの想いは受け止める。でも、受け入れない」
里奈 黙ってうなずく。
日野子
「そのうえで、厚かましくキミに言おう」
「それでも、キミはまだ、ボクと共に戦ってくれるかな」
「痛い目を見る。望みを蹴り飛ばして、大切なものを失って、悲しいものばかりを見るはめになる」
「それでも誰かがやらないといけない。そのはずれくじを引き続ける
「そんな道を歩んでくれるかい?」
里奈
……あのとき頷いていなければ、私はきっとこんな気持ちでここに立ってはいないだろう。
胸が苦しいはずなのに、何も考えていないかのようにすっきりしていた。
日野子先輩が死んだとわかったとき、何故自分が選ばれなかったのだろうと神を恨みもしたけれど、
それもすべて、このときのためにあったのだろうか。
「日野子先輩、遅れましたけど……」
「これが私から贈る、最後のチョコレートです」
マリア像に、あの日作ったチョコレートを置く。
「今度は、私の背中を見守っててください。私は先輩を追うのをやめて——」
「その先に行ってみせますから」
……中庭を後にします。
未檻
今回ずっと避難誘導ばっかしてた俺だが、あれもまた随分と疲れる作業でな……
腹に部位ダメージを受けたうえでの作業はこたえた。今はチョコパが終わって人気の少なくなった部屋で休んでる。
朋美
じゃあ、今行きましょう。未檻さんが一人になったのを見計らって……
「……ふう。お疲れさまでした、お身体の具合はいかがですか?」リボンのついた包みを片手に、部屋へ
未檻
「チョコを食べ続けられるぐらいには元気だぞ」 姿勢をなおしつつ、視線を朋美のほうへ。
というかカロリーを摂取しないとヤバい
朋美
「それなら良さそうですね。……では……」包みを手元に持ってきて……
チョコの出来栄えの判定してみましょうか……
判定:笑う/2D6>=7 → 12[6,6] → 12 → スペシャル(【余裕】+3)
未檻
え?
何ダス?
里奈 乙女力が覚醒した
朋美 「少し不安は残りますが、未檻さんに教わった分は完璧にできたはずです。……どうぞ!」
未檻
「……!」 俺は、これまで何でもない風に振舞えていただろうか?
「お、おう。ありがたく頂くとするか!」 と、受け取ったときにはもうとっくに口元は綻んでいて。
ちょっと照れくさそうに、包装されたチョコを見つめる。
朋美
「…………」じっ…… ……食べるまでじっと見ています
ちなみに渡したチョコは……とりゅふです!今のわたくしに作れる範囲では……なんだか最高の出来栄えと自負します!
未檻
包みを開けて…… 「へぇ……トリュフか。ただ溶かして固めただけじゃない……」
そうだな、ひとつ口に入れてみよう。塩と砂糖を間違えていないかな?
朋美 ふっ……完璧です
未檻
「まあ、言っても俺そんなに味に厳しいとかじゃねーから、あんまりじっと見なくても……」 苦笑しつつ、咀嚼して……
「?」
「????」
朋美 「…………」むむっ……?
未檻
「え、……」 もう一個食べる。食べる……食べる……
「これ……朋美が?」
朋美 「……お、おいしくなかったでしょうか……?」
未檻
「い、いや!」 慌てて首を振る!
「塩の塊でも食べるぐらいの意気だったんだけど……なんだ……滅茶苦茶美味いぞ……」
朋美
「……!そ、それなら……」
「…………って、前半はちょっと聞き捨てならないんですが……」
未檻 て、てれ テーーーーーッ
朋美 ちょっと文句を言いつつ、喜んでもらえたので悪い気はしません
未檻 「いや、ゴメン!本当に美味い!美味いんだよ……味見した?」
朋美 「一応しましたが……そ、そうですか……?味見でたくさん食べていたので、段々分からなくなっていたのですが……」
未檻 「じゃ、改めて食ってみろよ。本当に美味いから……ほら」 数は少なくないんだよな?トリュフのひとつをつまんで、朋美の口に運ぶよ。
朋美
「で、でしたら改めて……」じゃあ、顔を近づけて……口を開け…… ……
…………今までも、こういう動きは何度かしていた筈なのですが。今回は直前で顔が止まります 目がきょろきょろ
未檻
「……っ」 ちょっと指が止まるんですけれど。
「……あーん」 そのどぎまぎした動作をしっかり認識しながらも、ずい、と差し出します。
「…………味が分からなくても食えよ」
朋美
…………では、意を決して
「あ、あーん……」口を開けます
未檻 「…………」 じっ……と、その一挙一動を見つめる。
朋美 あー…………も、もう入れました?
未檻 うん、入れる……入れた!
朋美 もぐ、もぐ 控えめに口を動かします。見られると恥ずかしいですね……
未檻 (……可愛いな……)
朋美
「…………あ、あまり見ないでください!」
「それこそ、味が分からなくなりそうというか……」
未檻
「……はは、……いや、うん。ごめんごめん」
もうひとつ取って、今度は自分の口に運んで。「美味いんだよな。こんなに美味いの、店でもそうそうねえよ」
朋美 「………………んん、んんんん~~……っ!」怒るべきか、恥ずかしがるべきか、混ざって手をばたばたします
未檻 「いっとくけど、お世辞じゃねーからな? ……これなら、毎日でも作ってほしいくらいだ」
朋美
「毎日……!?」
………………毎日……?毎日チョコを……?
作る……?間柄……?
未檻
「うん。……チョコじゃなくても、なんでも……嬉しいけど」
だけど……ここで少し、言葉に詰まる。
「……あのさ。俺はよく知らないから、聞きたいんだけど……」
「寺の人間……いや、滅土の狩人の教え、かな。おまえのトコの教えは人を救うことにあるらしいけど」
チョコの包みを大事そうに持ち……。
「誰かに救われるって考えは、ねーのかなって」 そう問います。
朋美
……スッ……
「……厳密にいえば、わたくし達に出来るのは仏の教えを示すことであって救うのは自分自身の考え方、という形なのですが……」
幸福ではああ書いてますが
「わたくし達の日々は、そこに在るだけで常に誰かに守られてもいるのですから。それ以上に何かを求めるものではないでしょう」
未檻
「…………」 視線を逸らして、呟きます。
「……俺は、俺を求めてほしい」
「朋美がこの話をするときは、俺なんかよりずっと大人びていて、抱いているものの違いを思い知るけど……」
「朋美には何も考えずに安心して、怒ったり笑ったりしてほしい。朋美を包み込めるような男になりたいんだ」
「……ただ、俺がそうするに足りないヤツだってのは分かってる。許してもらってばかりで、何もできてない」
「……」 手を伸ばして、朋美の手を握る。もうひとつ、大切な何かを打ち明けようとして、また途切れる。
朋美
「……」まず、真っ直ぐそちらを見て……
「…………」手を握られれば目を逸らす
未檻
「…………局長がさ」
「こう、言ったんだ」
曰く……おまえには何もない。家族も地位も名誉も、財産も。魔法少女としての希少性も何もなくなった。
朋美 その場面では……むむっ……という顔で聞いていますが
未檻
それで誰かを助けたいと考えるなど、未熟にもほどがある。おまえに今求められるのは、すべてを得て、他者を救うだけの……
……頭。すなわち、『これ』だ。
…………手渡されたのは、高校の。それも、外国の、ハイスクールのパンフレットだった。
朋美 「それで学校に…… いえ、これは……」高校の?
未檻
「……これから一年、猛勉強して、受験して……地位も名誉も財産も、自分で築き上げるなら、学生の間は支援してやる。……ってさ」
そうでなければ、一生拾われるだけの人生を送ってもいい……とも。
一度、東雲高校に入れたのも、素質を試すためだったらしい。
朋美 「ということは…………その話をお受けに?」
未檻
「まだ、頷いてはいないけど……そうしようと思ってる」
「……はじまりの魔女を倒した後になるけれど……俺はちゃんと、自分の手で得るべきものを手に入れて」
「そうして築いた一生を……朋美に捧げたい」
「……そうすると、しばらくの間距離はできるけれど」
朋美
「それは、そうですね……ええと……」
…………ちょっと順を追って考えますね
……うん
「……まず、そうですね。高校……それは、良い考えだと思います」
「現状を打破する為に努力を惜しまない心掛け。……勿論、わたくしも応援致します」…………
「……その次の言葉は…………」
「………… ……この戦いが終わるまで、考えさせていただけますか?」
完璧な笑顔でお答えします
未檻
……分かってたんだ。朋美が笑顔で受け入れてくれるのは。
仮面をつけて、そう言ってくれるのは。……。
頷き、無言で朋美を抱きしめます。
朋美 わっ、と、そのまま
未檻 (俺は朋美の隣で生きていく。そのためなら、どんな困難だって乗り越えてみせる) 己の胸に誓います。
朋美
「……今更何かを言うつもりもありませんよ」
「わたくしは、あなたを信じていますから」
いつか
チョコパが終わってからですね。里奈先輩、学校にいるんでしたっけ。
私もチョコを渡したいんですよ。パーティー用じゃなくて個人用というか
なので、こう、人のいないお部屋に来ていただけます?
里奈 もちろん行きます
いつか では、あまり飾り気も雰囲気もないD7のお部屋に二人向き合って。
里奈 会議室とかかな。
いつか 「えっと……これ、実は今日のために作ってたんですけど」15cm四方ぐらいの立方体に近い、ラッピングされた箱を差し出します。
里奈
「どうもありがとう。……開けていい?」
受け取ります。
いつか 「はい」
里奈 じゃあ机において、大切に開けましょう。
いつか
箱の中からは、ドーム型のプラスチックケースが出てきます。
透明なケースの中に、小さなフィギュアが2体……デフォルメされた里奈先輩と私を模ったものです。
フィギュア……に見えたものは、よく見ればチョコレートで出来ています。
里奈 「えっ、えっ、これチョコ?」
いつか 「は、はい。あ、でも手作りというか……モデリングは自分でやったんですけど、出力は3Dプリンターで……」
里奈
「すごい、かわいい……」
「えっすごい」
いつか 40万円ぐらいするチョコレートの専用3Dプリンターを、色々な収入によって購入しました。
里奈
「すごい……」色んな角度から見る 流石に語彙が減る
全然想像してないのが来て完全に語彙がない
いつか 「そ、そこまでじっくり見られると……チョコなので……細かいところとか、どうしても」恥ずかしい
里奈
「いや……すごいよ。むしろチョコの方が解像度取れないもんね……」配信見てたから詳しい
「制限のなかよくここまで仕上げたと思うよ」
「この髪の処理とか……」
「布の立体感とか……」
いつか 「え、えへへ……」褒められて、頬が緩む
里奈
今は、冷静に考えて私といつかちゃんのモデルのデータ持ってるんだ……みたいなことに思いが至っています。
「こんなすごいチョコもらうのは初めてだよ」
これまで色々もらったけど……
いつか
「思いついちゃって、つい……どうしても作りたくなってしまって」
「実は……そのチョコには、私の夢も込められてるんです」
里奈 「どんな夢かな?」
いつか
「将来、CGとか、そういうデザイン方面に進んでみたいなっていうのが一つで」
「そして、この作品のテーマ……里奈先輩とともに戦い歩いていく未来。その覚悟です」
里奈 「いつかちゃん……」抱きしめる。
いつか 「里奈先輩……」
里奈
「きっとそれは叶うよ。これまで、私たちは色々な問題と敵を乗り越えてきたんだし」
「私は何一つ、心配してないよ」
いつか
「私も、そのつもりです。でも……」
「今日、魔女に言われたんです。『二人の想いがぴったり重なり合う』事を諦めてしまって良いのかって」
「心の天秤は揺れ動くものです。今回も……あれだけ固く決意したはずなのに」
「欲求への執着を捨てる事でしか開かれない未来。そのために私は戦うと決めたのに」
里奈
「私は……それでいいと思う」
「それでいいよ」
「これは、慰めで言ってるんじゃないんだ。かつて私は、日野子先輩に恋をしていた」
「けど、その想いは叶わなかった。……でも、だからこそ、今がある」
「確かにすれ違うのは悲しいことだし……それを一言で良かったとは言えないよ。当時の私の気持ちを思えば、なおさらね」
「それでも……それがすべてじゃない」
「すれ違ったとしても、それは無意味じゃないんだ」
「これが私の今の答え。すれ違った末だから言えるであろう、私の答えだよ」
いつか
「里奈先輩……」
「私も……そう思います。何より」
「私が目指す未来は、里奈先輩が私に見せようとしてくれた……きっとこの二人なら勝ち取る事ができるはずの、価値ある未来だから」
里奈
手を取る。
涙に濡れるまぶたにそれを押しつけるようにして引き寄せる。
「……うん」
いつか
「里奈先輩」そのまま頭を里奈先輩の胸へと預けます。
「大好きです。ずっと、ずっと一緒にいてくださいね」
里奈 「約束するよ。ずっと一緒にいる」
いつか 「はい。私も、この先どんな戦いが待っていても……乗り越えましょう、二人で。ね」
? 『……で? 私の事は心の奥底に一生封じ込めておきますって? 冗談じゃないわ』
いつか 「!?」
里奈 「……」
?
どこからともなく響く声。
『そんなのこっちから願い下げ。そっちがその気なら……』
『いーよ。出てってあげる』
いつか
「なっ……」胸を押さえる。
胸を押さえた両手の隙間から、桃色に輝く拳大の大きさの光が飛び出し……二人の目の前に浮かびます。
? そして……
いつか?
「呼ばれてーー?」
「飛び出てーー?」
「ステラキュグニアトトト……ってなっがーーーい! ながいながい! 私の名前長すぎ!!」
スキュア 「今きめましたー。私の名前はスキュア! よろしくね❤」
里奈 「……よろしく、スキュア」
いつか
「……っ、はぁっ、はぁっ……」
その場に崩れ落ちます。
里奈 「いつかちゃん!」
スキュア 「じゃ、私行くからー」
里奈 「待て!」
スキュア
「えー」
窓開けて飛び出そうとしてたのにー
里奈
「いつかちゃんに何をした?」
「それに……行かせていいわけないだろ」
スキュア 「べっつにー?」
里奈 腕を掴もうとする。
スキュア
するり。ここではダイスを振らないのでLV7魔女相当の強さなのだ。
「強いて言えばぁ……ねえ先輩。人間ってさ、欲望とか欲求がまーーーったくなくなっちゃったらどうなると思う?」
里奈 「……それは」
スキュア
「答えはー、何もする気がなくなって、無気力状態! フツーの人間ならショック死しちゃうかも❤」
「で……死んじゃったんだよね、いつかちゃんは。1年前に」
里奈 「……!」
スキュア
「いつかちゃん、忘れちゃったみたいだけどぉ。出血大サービス! 私が思い出させてあ・げ・る❤」
ピカーっと魔法的なハートマークが広がって、二人の視界がピンクに染まるよ!
はーい、ここから回想モード!
スキュア
一年前。
もともと素質がありすぎたいつかちゃんは、はじまりの魔女に植えつけられた「種」を自らの欲望・欲求の器としてしまいました!
「種」に宿ったいつかちゃんの欲望は、固有の自我を持っちゃいました! それが私、スキュアってわけね。
可愛い可愛いスキュアちゃんは、いつかちゃんから分離して、はじまりの魔女を討伐に来ていた井上日野子たちの前に立ちふさがったのでーす!
ま、そんときにいつかちゃんはショック死しちゃったのねー
で!
日野子よ日野子! あのクソ女(ビーーーッチ)!! 化け物???
井上日野子との戦いに敗れたかわいそうなスキュアちゃんは、「種」もろとも、いつかちゃんの中に封じられてしまったのです!
欲望とか欲求って、強~~~いエネルギーを秘めてるでしょ?
つまりそれが、井上日野子が思いついた、当時の状況でいつかちゃんを蘇生させる事ができる唯一の手段だったのだ!!!
こうして哀れなスキュアちゃんは、いつかちゃんの発電機となってしまったのです。しくしく
ま、私も自我を獲得しちゃったからにはー? 当然ー? 束縛されるとかさー。Mじゃないしぃ~
日野子の呪縛から逃げようとしたのよ。何度も何度も
しかーーし! 井上日野子の呪縛は杭LV6結界相当だったので、逃げられなかった!!
ま、そんなワケで、私はいつかちゃんの心に『本能』として出来る限りの働きかけをするしかなかったのよ。
理性と本能は表裏一体でしょ。
拮抗してても、外的要因とかー体調とかー、そういうので揺さぶれば目もあるじゃない?
そういう意味じゃ、アザラシの女王とか強く儚い者たちは良い仕事してくれたわーーー
でもね、結局これも失敗。
試練を乗り越え、より強固な精神を備えたいつかちゃんのハートは、私の揺さぶりぐらいじゃビクともしなくなっちゃった。
そうこうしているうちに!!
「待ってたのよねー、この時を」
「いつかちゃん、レベルアーーーーップ!!!」
「ってことは~~~? スキュアちゃんもレベルアーーーップ!!」
「煩悩が強ければ強いほど悟りの境地に近づく事ができるのであればぁ、その逆もまた然りなのである!」
「いつかちゃんの心を打ち砕く事はできなくても……」
「そう、井上日野子の呪縛ぐらいなら、いつのまにか自力で破れるようになってました。めでたしめでたし」
スキュア
「ごめんねー、長話で。これでおしまいだから。じゃ、私はこれで」
窓をあけて足をかける。
里奈
「待てッ!」
身を乗り出しても捕まえようとしますよ。
スキュア
「待ちませぇーん! だって、今までずっとその子の好きにさせてあげたのよ?」 背中の翼で窓の外に飛び上がります。飛んでます。
もちろん、里奈先輩は飛べません。残念でした。
「これからは私の好きにしまーす。いいでしょ、別に。二人ともお幸せに」
「ま……その様子だと、せいぜいあと一月か二月ってところだろうけど」大笑い
里奈 「!」
いつか 「ごほっ……ごほっ……」
里奈
「いつかちゃん、いつかちゃん……!」
抱きかかえる。
スキュア
「良かったじゃない? 私を捨てることで未来が開けたんだし」
「その僅かな希望のおかげで生きてるようなもんよ、今のあなた」
いつか
「先輩、私は大丈夫……です……だから……ごほっ」
スキュアを指差します。追って、と。
スキュア 「やーだー! 私、こんなところで里奈先輩に焼かれて死にたくなーいーもーん」
里奈
「……」
「私が……伊達にバカみたいに重たい松明を振り回してたと思うなよ……!」
背負ったまま追うぞ。
スキュア まあ、逃げるんですけどね。
里奈 でも、両方を取ります。
スキュア 「しつこーい。里奈先輩、あんまりしつこいといつかちゃんに嫌われちゃうゾ❤」
里奈 守るし、追う。
スキュア
「私もう飽きたから消えるねー。でもでも、安心して! 私も鬼じゃないから」
「最後のお祭りには参加してあげる。一月後か二月後か……どうせ、やるんでしょ。『はじまりの魔女』と」
「そこでケリをつけましょ」
里奈
「……わかった」
「私にも考えがある……。そこで全ての決着をつけよう」
スキュア
「それまでお互い、せいぜい最後の時間を楽しみましょ。うふふ❤」
大量のピンクなハートマークを残して消えます。
いつか 「……せん、ぱい」息も絶え絶えに。
里奈 「……なにかな?」
いつか
「だい、じょうぶ……です。わたしたちは……まけ、な……」
意識を失います。
里奈
「うん」
「絶対に……負けない」
いつか
次回、『[背徳]底なしの愛され願望』は、破壊されると命を繋ぐかわりにスキュアを再び受け入れ、欲求に完全敗北する事になります。
新たに取得する幸福『里奈先輩と歩む未来』を破壊された場合、スキュアを倒しても生命力を取り戻す事ができず、ゲーム終了後にいつかは死亡します。
(その幸福を選ぶ事にスキュアが同意してくれないと、返してくれないまま消え去る感じです。細かいところはGMに委譲または相談します)
里奈 「……私は……日野子先輩の先を行く」
あんり 「今何か外で音がしなかった?」 D7内にて、さっきのシーンのあと。
詩玲音 ぼうや、それは木のざわめきだよ
あんり お父さん!お父さん!!
詩玲音 振り返ったときには水面さんはすでに息絶えていたという
あんり END
詩玲音 悲しい事件だったね
あんり
窓を開けて外を眺めて、「気のせいか……寒っ」とぴしゃっとしめる。
窓の外で水面さんが息絶えているともしらずに……
「詩玲音ちゃんも疲れちゃったね。最後まで付き合ってくれてありがとね」 つきあわせたのはわたしです。車椅子を見遣る。
詩玲音
「もうここからは車椅子系のヒロインとして生きていく道を探すしか無いっすね」
全米が泣く感じのやつで……
あんり 「ここからはわたしが責任をとっていくかぁ…… 望むところだ」
詩玲音
「あ、結構強い返しがくるようになったな……」
本当にあんりちゃんか? あんりちゃんにそっくりなミキプルーンだったりしない?
あんり 「へへ……」 にへらっと笑う。椅子に座って詩玲音ちゃんと目線を合わせる。
詩玲音 「どうしましょうね~これから」遠い目
あんり 「これから? 決まってるじゃない! まずは足を治してもらって、あと映画館を見に行って、最近駅前に出来たカフェに行ってー」
詩玲音 「ふーん?」 それって前からやってなかったっけ? っていう顔
あんり
並んで、だよ!
「あと……魔女を倒す……かな」
詩玲音
「なんか言葉にしてみると案外たいしたことないっすね……」あんまり実感の湧いていない顔
「そうっすね。魔女を倒す」
あんり 「そのたいしたことを、長い間できてなかったんだもん。なんなら詩玲音ちゃんも今度小さくなってみなよ。世話してあげるから」
詩玲音 「そんな気軽に小さくするのやめましょう」
あんり わたしは大歓迎なんだけどな~
詩玲音
このひとこわいっす
「まあしかしびっくりしましたよ。ボクはてっきり仕方なく好きになられたのかと思っていました」
「不可抗力的にあんな感じになっちゃったし、ついでにボクはぼっちだし……」
他に好きになる理由とかむしろあるのか? という顔
あんり
「そう思う? ……そうだね、実際そうだったと思う。魔女にそそのかされる前から詩玲音ちゃんなら付き合いやすいなって思ってたし」
わたしも性格悪いよ
詩玲音 「褒められてるのかなんなのか……」
あんり
「でも、なんだろうね。きっかけなんて何でもよくって……詩玲音ちゃんと一緒に長い時間……ホントに長い時間過ごしてきて……」
「あっ、好き!ずっとこんな風にやっていきたい!って思っちゃったから、もうそれで良いんだよね」
詩玲音
「まあ、それはそうかもしれませんね……」
「ボクはこの関係性にどういう名前がつけていいのかわからなかったんですけど」
「ただあれなんですよ」
「最終決戦前にこういう関係になるのって……」
「その……」
あんり 「………………」
詩玲音 「死にそうでイヤなんですよね……」
あんり
「い、言った……」 思ってたことを……
「言っちゃダメじゃん! だめだよ! どっち!?どっちを殺すの!?」
詩玲音
「死にたくねえ~」頭を抱える
がんばってぼっちを維持してきたのに・・・
「まあ……ボクが死ぬほうが妥当では?」妥当
あんり
「もうーー! いいよ、この際開き直ろう!」
「この戦いが終わったら……結婚……は、早すぎるからぁ……」 詩玲音ちゃんの頬に顔を寄せて。
詩玲音 結婚……なんて現実味の感じられない響きなんだ
あんり 「ドーナツ屋で落ち合おう」 耳元で囁きます。狩人の常套句を。
詩玲音
「そうですね。生きてても死んでても」
「……いまさら死ごときが、ボクたちを引き裂けるとも思えませんしね」
あんり 「……うんっ!!」 ぎゅーっと抱きしめます。骨に響く。
詩玲音 「グワアアアア」 死んだ
あんり (再び)END