『ランベリーの悪夢』 


「ラムザ、サポートを頼む!」
オルランドゥ伯から借り受けた聖剣を鞘払い、アグリアスが駆け出す。聖別されたリボンで結んだ、編まれた長い髪を靡かせて。
陰陽士ラヴィアン・アリシアもウィザードロッドを携え、いつでも詠唱に入れる構え。
そのふたりを守るように立つのはレーゼだった。無手であり、防具らしき防具も一切身につけていない。
まるで何かの間違いで戦場に迷い込んでしまった貴婦人のよう。
何の構えもとっていない。自然体でただ立っているように見える。
しかしその裏では穏やかに調息を終え、すでに自らの血に眠る力を引き出せるよう準備は整っていた。
アタックメンバーの動きを確認して、ラムザも自らの役割をこなすべく動き始める。
剣を大地に突き立て、懐から算尺を取り出す。算尺越しに、眇めた目でフィールドを睨めまわした。
さあ、僕の獲物は。

電撃的進攻をもってランベリー城に辿り着いたラムザたちであったが。
それまでの防衛網が薄すぎたくらいだったのだ。中庭にて当然のように丁重な迎撃にあった。
敵戦力は、かつてリオファネス城の屋上で会ったことのあるアサシンがふたり。
それから命を吹き込まれた石像──アパンダと呼ばれる邪悪な魔獣だ──が四匹。
数の上では不利である。加えてまったくの想定外だった敵種。
しかしあくまで敵の主力はアサシンだろう。そちらは以前手の内を見ているから可能な限りで対策を立ててある。
その上で。こちらは完璧な連携を誇る、出撃回数も多く練度の高いチームだ。
負けることはない、と。そう考えていた。

甘かった。
知性など感じられない、獣性だけで動いているような魔物であるのに、なかなかどうして連携のとれた動きをする。
強靭な脚は城壁など軽く飛び越え、はしっこく動き回る。容易に致命魔術の狙いをつけさせない。
当たれば塵さえ残さず消滅するはずのホーリーブレスも、先ほどから躱されてばかりだ。
ラムザの算術も、相手が座標を目まぐるしく変えるせいで不発が続く。
──外した!
捉えたと思ったのも束の間、逃げられてしまった。発動した魔法は、足の爪の一本を石に還しただけに終わる。
アパンダの脅威はそれだけではなかった。熟練した術士も顔負けの速さで、邪気を束ねた魔法を立て続けに放ってくるのだ。
傷と受けカエルにされ石像にされ視界を塞がれ油まみれになり。
自然、回復に追われることになる。だんだんと、ラムザたちは防戦に追い込まれていく。

「あら、私たちのことを忘れないで欲しいわね?」
離れて見守っていたはずのアサシンたちが、いつの間にかすぐそこまで近づいていた。
──致命的なまでに接近されてる!
距離を離そうと、テレポで転移しようとした刹那。目の前に突き立った光の柱に吹き飛ばされる。
──これは……アルテマ!?
転がった先。顔を上げるラムザの視界に、素早く振り抜かれるアサシンの左手が映った。
避ける間もない。地に落ちた影に、苦無が突き刺さる。
つ か ま え た──アサシンの目が、そう嘲笑っていた。
周囲の時間から切り離されるように。主観が、無限の粘度を帯びる。周囲のすべてが光の帯のように流れ過ぎていく。

甘い香りを。嗅いだような、気がした。

気がつくと。目の前にアサシンが立っていた。確か、レディと呼ばれていた方の女性。
「こんなもの、つけているのが悪いのよ……」
待ち合わせに遅れて来た恋人を咎めるように、拗ねた口調でレディが言い募る。
そう言われると、酷く悪いことをしたような申し訳ない気持ちになる。
レディの指先で。ラムザが先ほどまで腕にしていたはずの、ン・カイの腕輪がくるくると回されていた。
「こんなものをしていたら、私たちと踊れないでしょう?」
にっこりと。蕩かすような笑み。本当に気分を害していたわけじゃないんだ、と安心する。
細腕がありえない剛力を発揮し、腕輪が握りつぶされ粉々に砕け散るのも全く気にならない。
赦されたことが、ただ嬉しくて。それだけで、満たされてしまう。

「さあ楽しみましょう……でも、その前に」
ふっくらとした唇が耳元に寄せられる。
「邪魔なあのコたちを、なんとかしないとね?」
笑みを含んだ囁きが耳をくすぐる。えもいわれぬ幸福感に、言葉もない。
「上手にできたら、ご褒美をあげるわ。さ、いってらっしゃい……」
ご褒美がもらえる。考えるだけで心が躍る。尽くさなければと思う。
大地に突き立てた騎士剣を引き抜き、ラムザは歩き出した。


アグリアスたちは、追い詰められつつあった。
最初は、押していたはずなのだ。
聖剣の加護で身軽に動く身体にて聖剣技の奥義を繰り出し、ラヴィアンとアリシアを守りながら、敵を散らしていたはずなのに。
アサシンのひとりが飛び込んできたときからだったろうか。風向きが変わってきたのは。
呪縛刀の二連撃をエスカッションで受け流した。発揮される見切りの極意。
敵の繰り出してくる暗殺術の秘技も、リボンの加護の前には意味を成さない。 ─
─いける!
一撃に切り伏せんとする斬撃を割って入ったアパンダが受け、跳び退ったアサシンの唇から短い詠唱の言葉が漏れて。
炸裂するアルテマの魔法。
ひたすらに耐え、やり過ごしながら、アグリアスは素早く周囲に視線を走らせる。
他のメンバーも、手一杯のようだ。サポートは、期待できないか。
負った傷を癒すべく、白魔法の詠唱に入る。
──このチームにとって攻めの要、剣たる自分が倒れるわけには行かぬ!
結果的にこの判断が仇となった。仕方がないことではあったのだけれど。
古人は言う。 攻撃は最大の防御であると。

じりじりと押されるようにして固まっていた四人のメンバーに、青白い光条が降り注ぐ。
着弾。炸裂。効果範囲のすべてを薙ぎ倒す激しい衝撃。
その魔術の、行使者は。
先ほどアルテマを実地で身につけたラムザであった。
目の焦点が合っていない。 もっとも、それを見ていたのはアグリアスだけだった。
他のメンバーは、未だ地に伏したままである。
アグリアスは、自分の目が信じられなかった。
自分たちに害を為し、無言で歩み寄ってくるその青年が。あのラムザであることが、信じられない。
「……ラム、ザ……?」

あれ、まだ動いてる。アグリアスさん、静かにして下さいよ。
貴女が黙ってくれれば、ご褒美がもらえるんですから。

騎士剣を振り上げる。その幅広の刀身には、"力無き者を" "護る" "盾であれ"──願いと共に刻まれた三文字のルーン。
柄頭の宝石が、陽光を受けてぎらりと煌めく。その輝きが、膝をついたまま動けないアグリアスの網膜に焼きついた。
渾身の力を込めて、剣が振り下ろされる。鋼が鋼を断ち割る音。噴き上がる血潮。
ぞっとするほどに熱い飛沫が、ラムザの顔をまだらに染める。

アサシンたちも、倒れたメンバーへそれぞれとどめの一撃を加えていた。
襟首を掴んで引きずり起こし、神速の貫き手を鳩尾に突き入れる。
かは、と呼気を吐いて。それを最後に、犠牲者はそのまま陸に打ち上げられた魚のように口をパクパクさせるばかり。
呼吸ができなくなっているのだ。まもなく白目を剥き、痙攣を始める。長くは無いだろう。
片や。左右に抜き身の菊一文字を閃かせ、好き放題に切り刻む。
血振りをし刃の曇りを確かめる頃には、犠牲者はもう物言わぬ骸。
こうして中庭に、四つの死体が転がることになった。


「侯爵さま、終わりましたわ」
謁見室の椅子に座り、肘をついて退屈そうに面を伏していた銀髪の男が、掛けられた声に顔を上げる。
「おかえり、セリア、レディ。……おや、そこの彼は?」
ふたりの美女に手を引かれてやってきた"異端者"の青年を見ていぶかしげな顔をする主に、レディは笑顔で答えた。
「いい子にしてくれましたの。ですから、ご褒美をあげようと思いまして」
ペットを自慢するような、そんな口調。
「そうか。好きにするといい。ただ……」
こちらはまたかと言わんばかりの苦笑混じりだった。日常茶飯事なのかもしれない。
「分かっていますわ。後々面倒になるようなことにはいたしません」
皆まで言わなくても、とセリアが口を挟む。
「信じているよ。……む、これは」
不意に眉をひそめ、エルムドア侯爵が呟く。
「どうかなさいましたか?」
ラムザのことなど忘れたかのように、セリアとレディの目が侯爵を向く。その表情は、忠の一字。
「どうやら招かざる客がもうひとりいらしたようだ」
何が見えているのか、遠くを夢見るような視線でエルムドアが告げる。
「神殿騎士、メリアドールですね?」
「いかがいたしますか?」
始末しますか、と。言外に滲ませてふたりは主に問い掛ける。
「ふむ……そちらは私がお相手しよう。君たちは自由に楽しんでおきたまえ。先ほどの疲れもあるだろう?」
なるほど美男子らしい女性への気遣いを見せ、エルムドアの姿が忽然と掻き消えた。
出迎えに向かったものらしい。
主の許可を得て、ふたりの目が再びラムザの方へ向く。淫蕩な笑みを湛えて。


「さ、ここに座って」
セリアに導かれるまま、ラムザは最前エルムドアが座っていた領主の椅子に腰を下ろす。
「せっかく女の子みたいに綺麗な顔なのに、汚れてしまっているわ」
言いながら、血に汚れたラムザの頬に長い舌を這わせるレディ。
「あら、なんて甘くて美味しい、血……あの聖騎士、処女だったのね。少し勿体無いことをしたかしら?」
「まあ本当……もう少しいたぶって、遊んであげても良かったかもしれないわね」
反対側の頬を舐め上げながら、目を細めてセリアが応える。
ぴちゃ、ぴちゃと。舌遣いの音がしばらく続いた。
すっかり清められたラムザの顔。離れてそれを見つめるふたりの美女は、熱く妖しい吐息をつく。

「うふふ、じゃあ、ご褒美の時間ね」
ラムザの元へ歩み寄るレディ。
「約束どおり、熱いベーゼを差し上げるわ」
座るラムザの頬へレディの手がしなやかに添えられた。上を向くよう導かれる。温度の感じられない、細い指。
剣など握ったことも無いような美しい手だった。先ほど、確かにその手は菊一文字を振るっていたはずなのに。
今のラムザにはただひたすらに美しいとしか思えない、レディの、悪戯好きの少女のような笑顔が近づけられる。
焦らすように二度三度、下唇を啄ばむような軽いキスが与えられた後、おもむろに唇が重ねられた。
口唇を割って忍び入ってきた、冷たい唇と対照的に熱い舌が、ラムザの口内を蹂躙する。
燃え上がるような悦び、高揚に包まれて。感じる、えも言われぬ天上の味。ああ、モンスターワールド。
アグリアスの返り血に染まったカメレオンローブを突き破るような勢いで、欲望が激しく屹立する。
「あらあら」
それを見咎めるセリアの声。
「可愛らしい顔してるのに、こっちのほうはずいぶんお行儀が悪いみたいね?」
怜悧な大人の美貌を淫らに上気させ、ローブの上から屹立を撫でさする。
そのもどかしい刺激がよりいっそう欲望に火を注ぐ。へそを打ち据えんばかりに反り返っていく。
「苦しそう……ふふ」
次の瞬間、セリアの手中へ魔法のように現れる苦無。熟練ゆえの手捌きである。
閃く刃光。ローブが下帯ごと、しかし皮膚は傷つけないよう切り裂かれた。まさに神業。
束縛を解かれて飛び出した屹立は、素早くセリアの右手の中に捕らえられてしまう。
冷たくやわらかな指が、熱く滾る欲望に絡みついた。さながらそれは氷の縛鎖。
縛られた熱蛇は新たな快楽にびくびくと震えながらのたうちまわる。毒液を吐き零して。
唇を塞がれているから声も出せない。喉に押しとどめられた快感の叫びがそのまま股間に流れ込んでいくかのよう。
呼吸が鼻でしかできないから、レディの甘い体臭を胸いっぱいに吸い込んでしまう。頭がくらくらする。
今やもう、ラムザに思考と呼べるものは走っていない。
レディに口を犯され、セリアに己の分身を扱かれて。与えられる刺激にただ喘ぐだけの、肉塊だ。


「……んは、っはぁっ、……んぶ……んっ……」
どのくらいそうしているだろう。一時たりともレディの唇は離されることがなく。
ひたすらに舌同士絡みあうワルツを強要されていた。溢れた唾液は、すでに顎の下まで濡らしている。
下の方の扱いも、またどこまでも巧みだった。
にちゃにちゃと。聴いているだけで脳を犯されそうな、いやらしく粘ついた音をたててセリアの指が灼熱を擦りたてる。
くびれたところを、竿の裏を、鈴口を。動きの度に攻める場所を変え、緩急をつけ。決して刺激に慣れさせない。
興奮のあまり、もはや破裂しそうなほどがちがちに張りつめている。鋼でさえ突き通してしまいそう。
欲望の先走りを絶え間なく零し続け、びくびくと脈動する剛直。
……先ほどから、焦らされてばかりだった。
奥手な処女が恥じらうように、射精が近いとみるやすぐに逃げてしまう。
あと少しで楽になれるのに、ただ軽く上っ面を撫でるような動きに変えられてしまうのだ。それでは刺激が少なすぎて。
男の性をどこまでも理解した、淫婦が手管の素晴らしきこと。
逃れ得ぬ底無しの快楽、それはもはや──地獄。唾液を、先走りをとめどなく溢れさせながら。ラムザは涙を零していた。

「……んはぁ……っ……」
もはや合わさっているのが当たり前であるとさえ感じるようになっていた、レディの唇が唐突に離れる。
捨てられてしまったような気持ちになって、思わず縋るような目で見てしまう。
まだ少女と言ってもいいような外見の暗殺者の目に、それはどう映ったろうか。
「……ふふ、姉さん?」
「なあに、レディ?」
満足げな吐息と共に吐き出されたレディの声に、顔を上げたセリアが応えた。手の動きを休めないまま。
「この子、すごく切なそうな顔してるわ」
「あら本当……そんな顔もまた素敵ね……」
含み笑いで言葉を交わすふたり。童女のようにころころと笑いあう。
「姉さんがいじめ過ぎるからよ。今にも狂いそうって顔してるじゃない?」
「あなたのせいよ。約束が違うって顔だわ。もっと熱いベーゼを求めているのよ」
じゃれ合うような言い合い。目配せを交わして。
「そうかしら。でも姉さんがそう言うなら、きっとそうね」
口から出るのはしおらしい言葉でも、唇が刻む笑みは消えない。
「ごめんなさいね。今度はきっと、満足させてあげるから……」
肘掛けに腰を下ろしてラムザの胸へとしな垂れかかり、再び唇を重ねるレディ。
先程よりも、さらに激しく。溶け合えとばかりに唇を食み、躰を強く押しつける。嵐のような舌の攻め。強く立ち昇る甘い香り。
陶然となる。しばし悦境に遊ぶラムザ。

「ベーゼが足りないのかしら。そうね、私の唇はさっきからお留守ですものね……」
先走りに汚れた右の手のひらをぺろりと舐め上げ、うっそりとセリアが嗤う。
たっぷりとした唇をちらりと覗く赤い舌が舐める。ひどく淫靡な仕草。 濡らされた口唇が、てらてらと輝いた。
ルージュを引いたように真っ赤な唇が。自ら零した体液に汚れたラムザのモノを、咥え込んでいく。

脳天にサンダーを落とされたような衝撃。目の前に火花が散る。
それほど強烈だったのだ。セリアの口内は。
ひやりとする唇を通り過ぎた先に待っていたのは、ねっとりとした唾液を絡めようと蠢く舌の歓迎だった。
熱い粘膜にすっぽりと包まれて、何か別の生き物のように竿の表面を這い回るざらついた感触。
ただでさえ昂ぶらされ続けた挙げ句のことである。堪ったものではなかった。
あっという間に決壊する。驚くほどの量の精液を、セリアの口へ放っていた。
それさえ予測していたのだろうか、射精の瞬間、わざと浅く咥えるようにしていたセリアは。
次々と注ぎ込まれる精液を口に溜め、舌先で転がして楽しんでいる。
口角から零れた一筋の白濁を、殊更に見せつけるようにゆっくりと指で拭い、舐め上げた。
きっと、口から零して見せたのもわざとなのだろう。どうすれば扇情的に見えるか、知り尽くした仕草であった。


ラムザの様子から射精に気付いたレディが口づけをやめ、口を尖らせた。
「ずるいわ、姉さま。ひとり占めなんて」
セリアの白い喉が、嚥下にこくりと動く。それだけの所作が、なんともひどく艶めかしい。
「濃くて美味しいわ。ご無沙汰だったのかしら?」
ラムザへ艶やかに微笑みかけて。
「ちゃんと分けてあげるわよ。おいでなさい」
レディを手招き。肘掛けから立ち上がったレディが、今度はセリアにしな垂れかかる。
抱きとめるセリア。レディのおとがいをつい、とひとさし指で上向かせ、舌を絡めていく。
唾液と共に、口内に残っていたファーストフラッシュをレディへ伝えていった。

目の前で、ふたりの美女が。舌を、身を絡ませ、自分の吐き出した精液を分け合っているその光景に。
僅かに力を失っていた股間のものが、再び張り詰めてくるのを覚える。

「今度は私が先に貰うわ。いいでしょう?」
流し目でラムザの怒張を見やり、セリアにねだるような視線を向けるレディ。
「仕方ないわね……」
困った子、と言いたげなセリアの返事を聞くや、レディはぱっと顔をほころばせた。
一挙動、ただそれだけで。
身を包んでいた、ボディラインを見せつけるようだった黒装束がほどけ、毛足の長い赤の絨毯の上に、はさりと落ちる。
一糸纏わぬ姿になったレディは、すでに濡れそぼっていた自らを誇示するようにしてラムザを跨ぎ、その屹立を沈めていった。

狭く、灼けるように熱いレディの中を味わう余裕もない。ラムザにとっては、未知の体験だったから。 全
感覚が集中したような、そこから伝えられてくる圧倒的な快感の前に敢え無く屈する。
レディの膣内に、先ほどと比べても遜色ないほど大量の精液をまき散らしていた。
ただ己の快楽を貪るべくラムザの上で腰を振っていたレディも、入り口から溢れ出してきた白濁を見て、それに気付く。
チェシャ猫のような笑みを浮かべて問い掛けた。
「そんなに気持ちよかったの? それとも、はじめてだったのかしら……」
弄うように、指先でラムザの頬を撫でて。
萎えようとするものを支えるように、きつく締め付け緩やかに小さな上下の動きを加えていく。
男を知り尽くした腰の動き。与えられる快楽に、すぐさま力を取り戻していくラムザの分身。
「そうそう。元気なコは、好きよ……」
からかうような軽い口づけ。魔性の美女は淫蕩に笑い、再び激しく腰を動かし始める。
ラムザの目の前で白い裸身が踊る。ブロンドの髪が跳ねる。むせ返るような甘い体臭。
形よい乳房が、薄紅色の頂きが、誘うように揺れていた。

一方的に叩きつけられる快感。肘掛けを強く握り締め耐えていたその腕に、 不意に濡れた感触。
黒装束の前垂れをたくし上げて。セリアがラムザの腕に跨り、濡れ光る場所を押し付けてきていた。
「もう一度注いでもらったら、交代するのよ?」
動きを止めようともしないレディに苦笑しながら。
セリアの指が布越しに、自らの豊かなふくらみを揉みしだく。まるで白い蜘蛛のような指遣い。
そして腰が前後に動く。ぬめる蜜。ラムザの腕に、女性のその形がはっきりと伝えられてくる。


いつの間にか、カメレオンローブはもはや原形をとどめないほどに切り裂かれていた。ほぼ全裸に近い半裸。
いつしかラムザは椅子から引き摺り下ろされ、絨毯の上で仰向けになっている。シャンデリアが眩しい。

あれからどのくらい経ったのか。どれだけ放ち続けたのか。
約束どおり、白濁を搾るごとに交代するセリアとレディ。
ラムザは、ふたりを代わる代わる腿の上に沈めさせられていた。
灼熱のように熱く、何回突き入れほぐれようとも変わることない狭さ。強烈な締め付けで男を果てさせる、レディの膣。
レディに比べれば幾分緩く、温かいながら。まるで別の生き物のように激しく蠕動し精を搾り取る、セリアの膣。
どちらが優れているということではなかった。共にとてつもない快楽を送り込んでくる名器。
それぞれに異なる裸身、貪る姿もラムザの目を犯す。
線の細いレディの躰。清楚な外見と裏腹に、どこまでも貪欲に求める動き。
豊満なセリアの躰。穏やかながら、確実に的を絞った動き。
ブロンドの髪がふわりと広がる。額に貼り付くブラウンの髪が優美な仕草で払われる。
唇を求められる。舌が絡められる。
口が、手が、ふたりの導きで奉仕を尽くす。頂きを含み、ふくらみをこね。

幾度放とうと、決して解放されることはない。
セリアが、レディが。あらわにされたラムザの乳首に長い爪を立て、捻り、耳に舌を差し入れ、首筋をそろりと舐め上げる。
「可愛い鳴き声……いじめたくなってしまうわ……」
「素敵よ……もっとその泣き顔をみせて……?」
萎える間も与えられず。魔法ではないかと思うほど瞬時に賦活され、再び蜜滴る場所へ飲み込まれていく。
脳裏のすべてが。薔薇色の肌に、甘い香りに、覆い尽くされていった。

腰の上でレディが妖しく身をくねらせている。
膝立ちで、セリアが顔の上に跨っている。豊かな乳房の間から、蠱惑的なまなざしでラムザを見下ろしていた。
レディの動きと微妙にずらすようにして腰を跳ね上げる。大きく口を開けて、目の前の蜜垂らす果実へ吸い付く。
ふたりに教え込まれた動きだった。
齟齬ある交合が予期せぬ快感を生むように。そして蜜と自分の白濁の混合物を掻き出すように、深く舌を差し入れる。
「はぁっ、上手よ……姉さん、このコ、才能あるんじゃない……?」
「そうね……手放すのが惜しいくらい……飼ってあげたいけれど……」
髪を振り乱して踊るレディ、顔に座るようにして腰を押し付け緩やかに円を描くセリア。
今までは何処か余裕のあったふたりの表情が、すっかり蕩けている。
「そろそろ……いけそう……姉さんは……?」
「ええ、私も……本当に……もったいない……!」
ふたりの動きが激しくなる。応えて、ラムザもいっそう奉仕に没頭する。

こみ上げてくる射精感。それと呼応するように高まっていく、ソプラノとアルト、ふたつの嬌声。
ようやくこのふたりを満足させられると、ただただ喜びに突き動かされて。腰の、舌の動きを強めていく。
ふたつ、鬼気が膨れ上がった。ラムザの視界一面がアルテマの魔法のような青白い光に塗り潰される。
城を揺るがすような、重なり合うふたつの咆哮を、聴いたような気がする。
最期となる射精と同時に。黒く巨大な何かに頭と腰椎を潰されて、ラムザは絶命していた。

苦しまなかったはずである。