『罪と快楽の狭間』
小さい頃、街に出た。
屋敷の使用人達の目を盗み、兄妹二人でこっそりと。
二人の興味を最もひいたのは、六角錐状の布で覆われた占い屋
。
兄は恐る恐る入り口の幕を開け、薄暗い空間へと足を踏み入れ
る。
兄に体を摺り寄せながら続く妹。
彼女は兄の上腕を、不安そうに両手で握り締めている。
「おやおや、ずいぶんと小さなカップルが来たねぇ、イヒヒヒ
ヒ…」
六角錘の空間の真ん中にいたのは、顔も声もしわがれた老婆
の占い師。
水気の無い、しわがれた笑い声を薄暗さの中に響かせる。
「どれどれ…見てあげようかねぇ。」
老婆が両手で、球状のクリスタルを覆うと、
ヴォゥ…っと、クリスタルが鈍い光を放ち、老婆の手の平を
照らした。
「おやおや、こいつは…よかったねぇお嬢ちゃん、将来、その
坊ちゃんのお嫁さんになれるよ。」
兄は入口の幕を開け、薄暗い空間から、太陽の光にあふれた
空間へと足を踏み出した。
兄の上腕を離さない妹も、当然、それに続く。
「アハハハハ、あの占い屋さん当てにならないね。僕たち兄妹
なのに…」
兄は笑いながら前を向いてあるく。
「う、うん…」
占い屋から出て、兄は妹の顔を一度も見なかった。
教会での戦いが終わって二年…
イヴァリースの隣国オルダリーア西部。
大きな市街地の外れにある森の中。
所有者であった貴族が五十年戦争初期に戦死し、以来、ずっと
放置されていて廃屋と化した別荘。
僕とアルマは、その廃屋に出来る限りの修繕を施し、居として
いた。
アルマは街でのアルバイト、僕はモンスター狩りで日々の糧を
稼いでいる。
街では、何人かの気の合う友達や知人も出来た。
彼らから見て、僕とアルマは仲の良い兄妹に映っているんだろ
う。
…でも、家の中では、僕たちは仲の良い「兄弟」じゃなかった
。
ギシギシギシッ…
ああ…ああん…くふぅ…
夜。
廃屋の中にある暗い寝室。
ベッドの軋む音と、男女の艶声が響く。
「ああ…好き、兄さん、兄さん…大好き…」
「う、うぅ、くぅぅ…アルマ…」
僕の腰の上で、アルマが腰をくねらせながら、快楽をむさぼ
っている。
兄妹同士では絶対に許されない行為。
知ってはいけない快楽。
「うぅ…!」
「兄さんっ、兄さんっ」
アルマが急に、腰を振るペースを上げた。
マシュマロのように柔らかく豊かな乳房が、形を変えながら
勢いよく上下に跳ねる。
小さい頃、まるで円柱そのものだったアルマの胴体。
それがいまや、胸囲には豊かなお椀型の乳房が付き、腰は力強
く掴めば折れてしまいそうな程、細くくびれている。
「兄さぁん、胸、揉んで…もっと気持ちよくなりたい…」
アルマは僕の返事など待つ気もなく、僕の両手の平を、左右
の乳房に押し付けた。
しっとりと柔らかくて、適度に弾力があり、手の平に吸い付
いてくるアルマの乳房。
「うう…」
いけないと思いつつも、ラムザは、その「こ惑的」な感触か
ら逃れられない。
アルマの意のままに、彼女の乳房を揉みしだいてしまう。
「…ね、私のオッパイ、気持ちいいよね。兄さん、いつも夢中
で揉んでくれるもの。」
そういうアルマの声は、僕の反論を許さない。
「ハァ、ハァ…兄さん…私、イキそう…!」
アルマの好きなスタイルがある。
アルマはその形で絶頂に達するのが、アルマの最高の快楽。
ガバッ
パンパンパンパンパンパンッ!
僕の上半身にしがみつき、勢いよく腰を振る。
パンパンパンパンパンパンッ!
アルマの太ももが僕の太ももに絡み、
アルマのお腹が僕のお腹にくっつき、
アルマの乳房が僕の胸板の上で潰れ、
アルマの背中に僕の両手が回り、
アルマの頬が僕の頬に触れる。
僕とアルマの肌を可能な限り触れさせながら、共に絶頂に達す
る。
これがアルマの好きな「イき方」だった。
そして、もう一つ。
「兄さん、兄さん…ラムザ、ラムザァァァッ!」
イキながら、僕の名前を叫ぶこともアルマのお気に入り。
「あ、アルマ…!」
ビクッ!ビクッ!
ビュクビュクビュクッ!
達したアルマの体の痙攣が、抱きあっている僕に伝わってく
る。
「ハァ、ハァ…ラムザ…兄さん…」
チュッ…チュパチュパレロレロ…
最後にお互いの舌を絡めあい、それが終わって、僕たちの全
ての行為が終わる。
「血のつながった兄妹」
僕とアルマの関係を省みる度に、頭が壊れそうになる。
毎晩、ベッドの中に引きこもり、何度も誓う。
今日は絶対にアルマを抱かない。
こんな関係も終わらせる。
まだ、今なら、過度の好奇心ゆえの過ちで済ませられる。
でも…
ガチャリ
アルマがドアを開けて僕の部屋に入り、僕のいるベッドに潜
り込んでくる。
「兄さん…今日も抱いて…しようよぉ……」
布団の中、僕の耳元でそう囁くアルマ。
チュッチュッ…
「兄さん…意地悪しないで…ね、しよ、兄さぁん…」
アルマは台詞と共に、僕の首筋と頬にキスを落とし続ける。
それでも、僕は熱くなった股間を無視しながら、背中を丸め、
両手で頭を抱え、必死にアルマの誘惑に耐える。
すると、今度は僕の両肩に手をかけ、僕の耳たぶを口に含む行
為も絡めながら、
「お願い…ね、お願い…兄さん…しようよぉ…兄さんに抱いて
欲しいよぉ…」
僕が「堕ちる」まで、アルマは「お願い」を続ける。
アルマの魅惑的な声が、僕の劣情を直接揺さぶり続け、
アルマの濡れて光る瞳の視線が、僕の倫理感など、いとも簡単
に刺し貫く。
僕はそれに耐え切れず、アルマの柔らかい体を抱き寄せてしま
うのだ。
実の兄妹なのに…
僕は一度も、アルマの誘惑に勝てていない。