『誘う妹、堕ちた兄』


いったん常人と違う人生を辿り始めると、良くも悪くもどんどん道を外れていってしまうものなのかも知れない。
男はいわれの無い異端者の汚名を受けていたが、後に本当の異端者となってしまった。

後戻りの出来ない道に踏み込んだ兄、誘った妹。



獅子戦争が終わり、その影でラムザ・ベオルブらと魔との戦いも終わった。
ラムザと、今やたった一人の肉親となった末の妹アルマは戦争末期に行方不明になったとして遺体無しで葬られ、
この世に存在しない、いわば誰でもない者となった。

行くあても無く妹と二人、チョコボに乗ってイヴァリースの辺境をさ迷う日々が続いた。
戦時中に貯まった軍資には相当な余裕があったが、二人は人目を避ける為にもなるべく宿には泊まらない様にしていた。
時折り街で最低限の物資を買い込んでは、街道から外れた場所に小さな天幕を張り、毛布に包まって眠る。
ずっとこのままではいけない、どこか落ち着ける土地を探さなければ。なるべく遠くへ、誰も二人の事を知らない場所へ。
傍目にも放浪生活に疲れてきているアルマを見て、ラムザは焦っていた。しかし、住み着く場所は慎重に選ばなければならない。
万が一自分が行方不明の異端者だと知られる様な事があれば――アルマも捕まって処刑されてしまうだろう。
かといって兄妹には言葉も違うほど遠い国へ行ってうまくやっていける自信も無く、その後も放浪の日々は続いた。


二人していたずらに迷う日々を過ごしている内に、いつの間にか季節は秋になっていた。日に日に寒さが増していく。
寒さで朝までの間に何度も目が覚める様になると、アルマは兄の毛布に潜り込んで来る事が多くなった。
暖かなチョコボの腹にもたれて眠るという手が無いでは無かったのだが、チョコボが寝返りを打つ度に起こされる上、
場合によっては蹴られてケガをする事さえあるので、二人ともそれはしなかったのだ。

最初こそラムザも戸惑ったが、震えながらも懐に頭を擦り付けて幸せそうな寝顔を見せる妹に抗えず、なすがままにしていた。
実際、二人で寄り添って眠ると幾分寒さが和らいだ。腕の中で息づくアルマの体が少しずつ温まっていく頃、ラムザも眠りについた。

朝方、心地よい勃起を感じながら慌ててアルマから腰を遠ざける。幸いにもその辺りはアルマには触れていなかった様だ。
生理現象とはいえ、兄が妹に欲情したなどと勘違いされたくはない。
ラムザにとってアルマはまだ子供だ。
なるべく気を遣ってやらねば可哀想だと常々思っているラムザは、アルマの月のものに気付かぬフリをしてさえいたのだ。
そんな兄の想いを知ってか知らずか、アルマはいつしか毎晩ラムザに寄り添って眠る様になっていた。


降雪の前触れである雪虫の姿をチラホラ見かける様になってきた頃、二人は国境近くにある少し大きな宿場町に辿り着いた。
その町の市場で買出しをしている時の事だった。
雑貨屋で出会った老夫婦と何気なく世間話をしていたラムザは、どこか住みよい土地は無いものでしょうか、とこぼした。
すると、老夫婦は実はこれからドーターで商売をやっている息子夫婦のところへ引っ越すところだと言い、
良かったら昨夜まで自分達が住んでいた家を安く買わないか、と持ちかけて来た。

ラムザがそれとなくこの町について色々と聞き出してみたところ、この辺りは移民が多い土地柄なのだという。
それならラムザ達が目立たずに紛れるには都合が良い。
何よりアルマは気丈に振舞ってはいるが、疲労は隠し様も無かった。今のアルマには休息が必要だ。
ここで偶然こんな話があったのも何かの縁だ。もし状況が怪しくなってきても、最低限それまで羽根を休める事が出来ればいい。
ラムザの決断は早かった。

その場で老夫婦の家を破格で買い取ったラムザは、市場の隅でうたた寝をしていたアルマをそっと起こすと、
そのまま老夫婦に案内されて件の家へ向かった。

そのこじんまりとした家は古びて煤けてはいたものの程度は良く、兄妹にとっては願ってもない物件だった。
テーブルやベッドといった大きな家具や調度品は一部を除いて売れず、持って行く事も出来ず、かといって捨てるのも忍びないと
残されたままになっていたが、それらも全て譲り受ける事になった。
買い手を不動産屋に委託して探してもらう手間賃が省けたと喜ぶ老夫婦から鍵を受け取ると、ラムザはほっと一息ついた。
ラムザは老夫婦を見送るとアルマに寝室で休んでおく様にと言い置いて、チョコボに積んであった荷を降ろして
家の中に運び入れ始めた。とはいっても量は少ない。ほどなくして全ての荷が家の居間に広げられ、
身軽になった二羽のチョコボは繋がれた新居の軒下でさも嬉しそうに羽根をばたつかせた。


荷物箱からペンを取り出してゴーグのムスタディオ宛の手紙をしたためる。
各地に散った仲間達の中でも居場所の定まらなかった者達は、
落ち着いたらひとまずムスタディオのところへ所在を知らせる事になっていた。
“ここに定住出来るかどうかはまだ分からないが、しばらくはここで暮らす事になるだろう”
伝書鳩の足に小さくたたんだ手紙を結わえつける。無事で着く事を祈り、ラムザは鳩を放った。

ここが安住の地になれば良いのだけれど……
いや、考えても仕方が無い。いずれ分かる事だし、ともかく今はちゃんとした休息がとれる場所が必要だ。アルマにも、僕にも。

ラムザが荷物の上に腰掛けて取りとめも無くそんな事を思っていると、寝室からアルマが目をこすりながら出て来た。
「アルマ、疲れてるだろ。寝ていないとダメだよ」
「うん。でも、眠気はあるのに何だか眠れる感じがしなくて……」
考えてみれば、見知らぬ家ではなかなか寝つけないものだ。新しい家に馴染むのには少し時間がかかる。
「何か軽い食べ物でも買って来ようか? 」
アルマは小さく首を振ると「兄さんと一緒に寝たい」と呟いた。

ラムザは苦笑した。ここしばらくの寒空の下での野営のせいか、しっかり者のアルマにも子供の様な甘え癖がついてしまった様だ。
ひとつしか歳が違わないというのに、この甘え様は何だろう。
しかし、そこまで思ってからラムザは自分が考えていた以上に今のアルマは心細いのだと気付いた。
これまで余りにも多くの事が起き過ぎた。人生が急変し、死んだ者とされ、この先にも安住の地があるのかどうか定かでは無い。


……まあいい、甘えさせてあげよう。それに妹にここまで懐かれているのは、それはそれで嬉しい事だ。
もし今でもベオルブ家の一員であったとしたなら、妹と同じベッドで寝るなど言語道断な不謹慎極まりない行為とされただろうし、
それ以前に年頃の妹と同じベッドで一緒に寝てやるというのは世間一般に照らし合わせても問題があるかとは思うが、
アルマにしても生活が落ち着いたら以前の歳相応にしっかり者の自分を取り戻すだろう。
それまでの間、妹の甘えに応えてやるくらいは何という事も無い。

ラムザとて疲れていた。ベッドでアルマが腕枕をねだったので左腕を差し出してやったが、
その左腕にアルマの頭の重みが感じられて間も無く、ラムザはすとんと穴に落ち込む様にして深い眠りについた。



目が覚めた時には既に日が落ちていた。
窓から差し込む月明かりに照らされた薄暗い部屋に違和感を感じて、ぼんやりとした頭でここが仮の新居だという事を思い出す。
ふと左腕に軽い痺れを感じてアルマに腕枕をしていた事も思い出したが、そこに乗っていた筈のアルマの頭が見えない。
「アルマ…? 」
首だけを起こしたラムザが目を懲らして辺りを窺うと、腰の辺りにかかっている毛布が大きく膨らんでいるのが視界の端に見えた。
なんて寝相の悪い。これではせっかくの腕枕も、し甲斐が無いというものだ。しかしそこまで考えてラムザは妙に思った。

左腕がまだ少し痺れているという事は、さっきまでアルマは腕枕に頭をもたせかけていたのだ。
アルマは一度起きてからラムザの腕が痺れるだろうと、再び腕に頭を乗せる事をせずに体を丸めて寝直したのか。
しかし何もそんな位置で寝直さなくても良いだろうに……。ラムザはため息をついた。


その時、ラムザの股間の辺りに何かが触れた。その感触で自分のものが勃起していたのに気付く。
アルマが寝返りでも打ったのだろうか。ラムザはアルマを起こさぬ様、先にベッドから出る事にした。
ラムザがそっと毛布をまくり上げると服がはだけられていて、屹立した自分のものがむき出しになっているのが見えた。
わけが分からないまま慌てて服に手をかけようとすると、傍らの毛布がムクリと動いた。
「兄さん、起きちゃった? でもまだ服を着ちゃダメよ」

辺りが暗いためにアルマの表情はよく見えないが、いたずらっぽい声でからかう様な笑みを湛えているのは分かる。
「アルマ!? 冗談は止すんだ」
起き上がって乱れた着衣を戻そうとするラムザの手をつかみ、アルマは言った。
「兄さんは私の事、好き? 」
「あ、ああ。もちろんだよ。たった一人の妹なんだぞ。決まってるじゃないか」
「ちがう。 そういうのじゃ無くて、私が聞いてるのは兄さんは男の人として私を好きなのかって事」
「いきなり何を言い出すんだ。アルマ、僕を困らせないでくれ」
「兄さんは私と添い寝してくれる時、いつもココが大きくなってた」
アルマはラムザのものに手を伸ばすと、それをそっと撫で上げた。久し振りのそこへの愛撫にラムザは思わず声が出そうになる。
なんていう事だ。誤解を招かぬ様にと朝勃ちを隠していたつもりだったのが、アルマには以前からバレていたのだ。
「女の人としたいと思った時に、大きくなるんでしょう? 」
「これは男の生理現象で、意識しなくてもその、寝ている間に自然に勃ったりするんだよ。だから止すんだアルマ」
口では止める様にと言いながらも、ラムザはアルマの手を止める事が出来ない。女にそこを愛撫されるなどどれ位ぶりだろう。
細く柔らかな指で優しくさすられて、ラムザは昂りを抑えられなくなってきていた。
アルマと旅をする様になってからは自慰すらほとんどしていない。溜まっていなかったと言えば嘘になる。
「イヤよッ。私、兄さんのをもっと見ていたい。触っていたい」
ラムザはその言葉を聞いた時、急に自分の根元の奥の方から快楽の波が走り抜けるのを感じた。マズイ、と思ったが既に遅かった。
「きゃッ」


ラムザの先端から熱い精液が迸る。薄闇の中で、ぱたぱたと毛布やシーツに重い液体が落ちる音がしばらく続いた。
「ア、アルマ、ごめん」
アルマはしばらくの間、無言で手に飛び散った精液を見つめた。
「男の人ってこんな風になるのね……」
「アルマ、本当はいけないんだよ、こんな事。僕達は血のつながった兄妹なんだから、いけないんだ。分かってるだろ? 」
ラムザの言葉を無視して、アルマは時折り痙攣するかの様に震えて残滓を染み出させるラムザのものをゆっくりと撫で続ける。
「私、兄さんとしたい。前からそう思ってたの」
そう言い放つアルマの声は凛として真剣そのものだった。思いもよらぬアルマの言葉にラムザは戸惑いを隠せなかった。
「前からって……いつからそんな事」
「兄さんが私を助けに来てくれた時から。ずっと言い出せなかったけど、兄さんの事しか考えられなくなったわ」
「……でも、でもこんな……」
「私達、二人とも死んだ。もうアルマ・ベオルブでもラムザ・ベオルブでも無いわ。だから私、もう決めたの。
それに……貴族の間ではそんなに珍しくないわ。兄さんの周りの友達にだって、何人かいたじゃない」

つと、アルマがすり寄ってきた。不意にアルマの顔が近づき……ラムザの唇を塞いだ。
アルマの唇は柔らかく、暖かく、湿っていて…… 頭では拒否しなければと思っているのに、抵抗出来ない。
普段のふるまいからは想像もつかないくらい積極的に吸い付いてくるアルマの唇と吐息と、華奢な体のぬくもりに
もはや兄と妹だの禁忌だのといった言葉はラムザのぼやけながら痺れる思考の中で意味を失っていく。
アルマの甘やかな体臭と、細く柔らかい女の感触に理性は敗北し、ラムザは堕ちた。

堕ちた、と思った時に感じた奇妙な安らぎ。
兄妹とて男と女。好きになってしまえば、その想いを止める事など出来はしない。
アルマが自分を男として愛したいというのなら、自分もまたアルマを女として愛そう。
もし他人がそれを知ったとして、堕ちたと言われてもいい。道ならぬ道と言われてもいい。
アルマに応えてやりたい。アルマを守れるのは、もう自分しかいないのだから。


アルマの唇を舌で割って入り込んだラムザは夢中で口中を蹂躙した。アルマが甘える子猫にも似た声で喘ぐ。
ラムザはずいぶん長い間そうしていたかと思うと、いったん舌を抜いて上唇を、下唇を交互に貪った。
「キスだけでどうしてこんなに気持ちいいの……」
ラムザが息を荒げながらアルマの乳房を服の上からまさぐり始めると、今度はアルマの舌がラムザの口に押し入って来た。

もどかしく服を脱ぎ捨てながら、お互いに激しく唇を吸い合い、舌を絡ませて口中を行き来させ、唾液を交換し、性器を擦り付け合う。
(アルマ……どうしてこんなに濡れて……いや、もしかして僕が起きる前から? )
粘液が音を立てて二人の欲情を鼓舞する。その音は寝室の中にこもり、吐息と絡み合って行為の淫猥さを倍増させた。
ラムザはアルマをベッドに押し倒すと、意外なほど豊かな乳房に顔をうずめた。この柔らかさ。肌触り。
いつの間にか妹はこんなにも“女”になっていた。
両の乳房に溺れる様にして顔を擦りつけるラムザの頭を、アルマはさも愛おしげにかき抱いた。
「……兄さんは女の人とした事がある……のよね」
「……うん」
「私にもして。して欲しいの」
「分かった。でもじっくり時間をかけてするから……な? なるべく痛くない様に」

アルマの両脚を押し開き、燃え立つ炎の様な陰毛に鼻先を突っ込むと、アルマのにおいがラムザの鼻腔いっぱいに広がった。
愛液を味わいながら舐め取り、そこかしこに口づけ、舌で撫で回す。その度にアルマが短く泣く様な声でよがる。
それが可愛くて可愛くて、陰核を吸いこねたり、アルマの中へ舌を浅くしかし執拗に出し入れしたりと、
ラムザはかなりの時間を費やして口での愛撫を続けた。
いつしかアルマの尻の下のシーツはビショビショになってしまっていた。そろそろ頃合だろうか……。
ラムザは顔を上げると再びアルマの上に覆いかぶさった。
「兄さん……」
アルマが切なげな表情でラムザを見上げる。二人の中にえもいわれぬ緊張が走る。


極限まで硬くなったものをラムザは濡れそぼるアルマの秘肉に当てがってゆっくりと何度も擦りつけ、粘液を塗りこめる。
アルマはその度に悩ましげな溜息をつきつつ、微笑みを浮かべた。「こすれて気持ちいい……」
充分に愛液で潤滑されたものを、いよいよアルマの入り口に押し当てる。途端にアルマの体が強張った。
緊張しているのがありありと伝わってくる。
「アルマ、怖いなら無理しなくていいんだよ」
するとアルマが大きくかぶりを振って言った。
「いやよッ ここまで来てやめたくないッ ちょっと怖いけど……兄さんとつながりたい」
「分かった。じゃあゆっくり入れるよ……力を抜いて、楽にして」
亀頭がアルマの入り口を少しずつ押し広げ、そして徐々に飲み込まれていく。その間、アルマは息を止めてラムザにしがみついてきた。
思ったよりも抵抗無く、すんなり入っていく様にラムザには感じられた……そしてラムザは熱く柔らかなアルマの中に完全に包まれた。
「……全部入ったよ。痛くないか? 」
「ううん、思ったよりは全然痛くない。なんかホッとしちゃった」
「ゆっくり動くからね、痛かったら止めるから我慢せずに言うんだ」
コクンとうなづくアルマが気丈で愛らしい。ラムザはアルマの様子を見ながらそっと腰を動かし始めた。
その度に二人の間からニチャリ、ニチャリと淫靡な音が発せられて、より一層二人の興奮をそそる。
(溶けてしまいそうなこの感触、一体どれぐらいぶりだろう……ただただ気持ちいい……)
快感のあまり、つい腰を動かすペースを早めてしまったのに気付き、ラムザは慌てて動くのを止めた。
「ご、ごめん、アルマ。痛くなかったか? 」
「う、うん、ちょっと……」
「あのさ、しばらく動かずにいようか。入れたままで」
「うん」


ラムザはいったんアルマから自分のものをゆっくり引き抜くと、アルマの体を横に向けて寝かせた。
月明かりの中で浮かび上がる、こちらに向けられたハート型の白い尻とスラリとした背中のラインが何ともいえず艶かしい。
そして自分もその隣に横になると、左腕をアルマの頭の下に差し出して腕枕をする。
アルマの尻は、腰を押し付けるとモゾモゾとくねった。愛液にまみれた入り口を探し当てるのに時間はかからない。
ラムザは今度は後ろから潜り込んだ。アルマがかすれた声を上げる。
(アルマ、可愛いアルマ、痛くはないか? 気持ち良くなってくれているか? 無理をしていないか? )
アルマの冷たい尻の感触が心地良い。ラムザはアルマのうなじをねぶりながら、右手を前に回して乳首を優しく弄り始めた。
「うン……くすぐったい」
アルマが大きく身震いする。
「あッ、ごめん」
「イヤ、止めないで。続けて。くすぐったいけど、何だか気持ちいいの」
うなじと乳首、アルマがどちらの事を言っているのかラムザには分からなかったが、問いただす事もせずにそのまま続けた。
いつしかやんわりとラムザの腰が動いていた。いや、アルマが尻を押し付けてきているのだ。
少しだけ、ゆっくりとだが、アルマは自分から腰を動かしている。 「アルマ、痛くないのか? 」
「うん、ちょっと動くだけなら気持ちいい」
「アルマのペースですればいいよ、アルマの好きな様にすればいい」
「うん……」


その後もアルマは大きな尻を可愛らしく小さく前後させながら、時折り艶やかな吐息をもらした。
小さな摩擦に小さな歓びを繰り返し覚えながらアルマは言った。
「いつだったか、私も兄さんみたいに男に生まれれば良かったって言ったけど、今は女に生まれてきて本当に良かったって思うわ」
一方でラムザはそろそろ限界を迎えようとしていた。一回射精しているとはいえ、久々の行為に体が敏感になっているのだ。
「アルマ、僕、もう出てしまいそうだ」
聞いているのかいないのか、アルマは腰を動かすのを止めない。夢中になっているのだ。
「いいわ。出して。私、兄さんの赤ちゃん欲しい」
最初にアルマが言っていた様に、血を重んじる一部の貴族にはしばしば近親婚が行なわれる。
自分達はもはや貴族などでは無いが、その上で自分との愛の結晶が欲しいと言っているのだ。ラムザは覚悟を決めた。
「いくよ……」
ラムザはアルマの秘肉の絡みつきに身を委ね、全てから解き放たれた恍惚の中で胎内の奥深くへと精を放った。



「……ねえ、兄さんは今まで何人の女の人とした事があるの? 」


「え……何人っていっても、そんなにはいないよ。傭兵をしていた頃に、その、そういう場所で商売でやっている人ととか」
「あの隊の中にはいなかったの? 」
「あの隊って……えッ。ア、アルマ? 」
「キレイな人、何人もいたものね。ねえ、あの中の誰? あッ、それとも一人だけじゃなくて? 」
「そ、そんな事は……」
「じゃあ一人だったんだ。ねえ、誰だったの? あのアグリアスさんていう人? 」
図星をつかれてラムザは押し黙った。肯定の沈黙にアルマがたたみかける。
「やっぱり。あの人、兄さんを見る目が他の人達とちょっと違ってたものね。……あの人、今どこでどうしているのかしら」
「何故そんな事を聞くんだ、アグリアスさんとは戦争が終わってから会ってない。」
「今でも兄さんの事好きなのかなって」
「……好きとかそういうのじゃ無かったのかも。辛い時期にお互い慰め合ってただけだったのかも知れない」

アグリアスとラムザが関係をもったのは、ラムザが異端者の宣告を受けてしばらくしてからの事だった。
その頃はラムザにとって最も辛い時期であり、折りにふれて慰めてくれるアグリアスの優しさに甘えていた。
アグリアス自身も結局王女護衛の任務を果たせず、その上に異端者認定の煽りを受けてラムザの隊以外に宿る庇も無くなり、
ラムザ以外の前では表には出さなかったものの、酷く落ち込んでしまっていた。
二人はお互いに慰め合う必要があったのだ。そのまま自然に一緒になるという選択肢も無かったでは無いが、
明日をも知れない戦いに明け暮れる身であれば将来を誓い合う事など出来る訳も無く、
そして戦争が終わった後も二人は明確な答えを出せずに結局別々の道へ去って行った。
(好きだったと思う。でも愛していたか……分からない。
僕が無理矢理にでも引き止めるべきだったのか。あのひとは待っていたのかも知れない。しかしその時にはアルマが……)

物思いに耽る兄を見て、アルマの胸の内には静かに暗く燃える嫉妬の炎がゆらめいた。

起き上がってこちらに背を向け、ベッドの端に腰掛けたアルマの、覚えたての手管だったのだろうか。
大きく、白く、甘さと瑞々しさを予感させる白桃の様なアルマの尻を目の前にして、首をうなだれていたラムザのものが再び疼いた。
肉棒の芯から亀頭にかけて微弱な電流が駆け抜ける。グググ、と音を立てるかの様に再び次第に大きくなっていくのが自分でも分かる。
ラムザは上体を起こすと背後からアルマに腕を絡め、耳の穴に舌を差し入れてくすぐる様にこねた。アルマがビクリと身を捩って喘ぐ。
ラムザはアルマの顎に手を添えてグイと振り向かせ、吐息を漏らす口に舌を突っ込んで封をした。
(兄さん、さっきより荒っぽい……)
尻にラムザのものが当たっていた。情熱が形を持ったかの様に、硬くて、熱い。求められる喜びがアルマの中に広がってゆく。
勢いよく仰向けに転がされて揺れるアルマの白くたわわな乳房に、ラムザが頬張る様にして吸い付いた。
(赤ちゃんに吸われたらこんな感じかしら……でも乳首の先がたまらない感じ、気持ちいい……)
「もっと、もっと吸ってッ」
アルマはラムザの髪に指を差し入れて頭を押さえつけ、乳房にラムザの顔を押しつけた。
アルマの乳房に埋もれて息が出来なくなったラムザは、呻きながらもより一層強く乳首を吸いあげる。
口の中でコリコリに尖っていく乳首にラムザは甘く歯を立てた。細心の注意を払いながら甘噛みしていると、
アルマは次第にすすり泣いているかの様な切なげな声を上げ始めた。
「アルマ、もしかして痛いのか? ごめん、優しくしたつもりだったんだけど」
「ううん、違う、気持ちいいの。でも吸ってもらう方がいい。なんだかちょっと怖くて」


それからアルマの二つの乳房はラムザの手に包みこまれ、撫で回され、優しく揉みしだかれ、左右の頂を交互に吸われ続けた。
その間にも二人はゆっくりと腰を動かしていやらしく性器を擦り付け合い、半ば乾いていた蜜壷に再び潤いを取り戻しつつあった。
「アルマ……」
乳首から口を離したラムザが胸に頬を寄せたまま呟いた。
「うん……さっきみたいに、あの格好でしたい」
そう言うとアルマは横向けにコロンと寝転び、モジモジしながら尻をラムザの方へ突き出した。
ラムザはすぐに入れる様な事をせず、突き出されて震えるアルマの尻に頬を擦りつけてキスの雨を降らせた。
「兄さん……いやぁ……」
アルマは尻を振ってラムザの唇から逃れようとするが、それがかえってラムザの情欲を刺激した。
尻をしっかりと抱え込まれてしまったアルマは、しとどに濡れた蜜壷に頬ずりさえされてしまった。
タップリと愛液を滴らせた自分の秘所に頬を擦りつけられる恥かしさと嬉しさ。
アルマはいつの間にか、あ――ッあ――ッと甲高い嬌声をあげていた。

「近所に聞こえちゃうよ」
ラムザの言葉に我に返るが、もう遅い。
「だって兄さんがそんな事するから……」
「アルマ……(可愛い……)」
「ねえ兄さん……ちゃんと入れて」
ラムザはアルマの髪に鼻先を差し入れて甘い香りを楽しみながら抱きすくめると、尻の間で待つ入り口に熱い塊を侵入させた。
「いっぱい……」
アルマはそう呟くと、また前と同じ様に小さく腰を前後に振り始めた。



ラムザとアルマの兄妹が宿場町の一軒家に落ち着いて半年が過ぎた。
ラムザはかつて習得した調教の技術を活かし、野生のチョコボを捕獲するチョコボ専門ハンターの仕事を始めていた。
種つけ用やレース用のチョコボは野生種の方が好まれる。仕事の依頼は徐々に増えつつあった。
二人は夫婦を名乗り、アルマが事務を担当してラムザの事業を支えた。

生活も落ち着き、仕事も順調、二人の仲は前にも増して睦まじく、全てがうまくいっている。そんなある日の事だった。

家とは別に借りた事務所で、ゆったりしたローブを身に纏ったアルマがひとり書き物をしていると、ドアをノックする音が聞こえた。
ラムザは新たなチョコボの狩場を探して三日ほど留守にすると言って昨日出発したばかりだ。お客だろうか。
アルマがドアを開けると、そこには長身の女騎士が立っていた。
「アルマ殿、お久しぶりです。お元気そうで何より」
「……アグリアスさん! 」
編みこんだ金髪の眩しい女騎士……かつてラムザと関係していた女。その女が今になって突然訪ねて来たのだ。
「ゴーグに立ち寄った時、ムスタディオから聞きました。随分と遠くへ住む事にしたのですね。無理もない事ですが……」
平静を装いつつもアルマは胸の動悸を隠すのに必死だった。この女がここへ来た目的は……兄さん? 

アグリアスは現在、アリシアやラヴィアンと共にルザリアツアーズ専属の警護職に就いているのだという。
戦争が終わったとはいえ、治安の悪い地域では護衛無しでのツアーは考えられない。モンスターの多い観光地も然りだ。
しかし、最近になって女だてらに剣を振るうのに疲れ、長期の休暇をとったのだという。


「もしかしたら、このまま辞めるかも知れません」
アルマは確信した。アグリアスはラムザとよりを戻そうと考えているのだ。少なくともこの女は今でもラムザを愛している。
結局最後に何も言ってくれなかったラムザと別れたものの、諦めきれずに再び会いに来たのだ。
「ところで……ラムザは、兄上は出かけているのですか? 」
「兄さんは新しいチョコボの狩場を探して昨日から留守にしています。用件があるなら私から伝えておきます」
アルマのどことなく硬く冷たい感じの対応に、アグリアスは少し戸惑った。
「あ、いえ、その、用件というか、積もる話もある事だし、食事でもしながらと思っていたのだけれど。
何日か戻らないというのであれば、また後日お伺いするわ」
「ハッキリ言います。兄さんとあなたが以前つきあっていた事は知っています。戦争が終わった後に別れた事も。
こんな僻地まで兄さんに会いに来たという事は、兄さんとよりを戻したいと思って来たんじゃないんですか? 」
「ア、アルマ殿。私は……」
アグリアスは思わぬアルマからの言葉に困惑した。
何故、アルマはアグリアスが淡い期待を抱いてラムザに会いに来た事をまるで責め立てるかの様な口調で言い放ったのか。
アグリアスには全く分からない。以前のアルマとは、まるで別人の様な対応だ。
「実はね、アグリアスさん。私達は今、夫婦を名乗っているの。本当の名前が言えないというのもあるけど、私達は夫婦なの」
「……? アルマ殿、一体…… 」
「あなたに兄さんは渡さない。私はあの人の妻だから」
そう言ってアルマはローブの裾の少し上をつまむと、訝しげな表情のアグリアスに見せつける様にゆっくりと胸の下までめくり上げた。

「ああッ!! 」

アグリアスの声は悲鳴に近かった。それきり声も出せず、動く事も出来ない。
「分かったでしょう。帰って。もう兄さんに近づかないで」
アルマが手を離すと、ローブの裾は元通りに足首の辺りまでするりと落ちたが、
アグリアスの目にはつい今しがたまで見えていたものがハッキリと焼きついていた。
アグリアスが目にしたもの。ふっくらと卵型に膨らんだ腹部はまさに妊婦のそれだった。


                                         終