『アグたんのラブラブ性活日記』
私の一日は、ラムザの腕の中ではじまる。
背中に回された腕の感触をたしかめつつ、まぶたを上げると、ラムザの寝顔が
目の前にある。もういい大人だというのに、寝顔だけはまるで子供のように
あどけない私の夫は、まだ目覚める気配もない。
「ラムザ……朝だぞ、ラムザ」
ほっぺたをつついてみても、くせっ毛を引っ張ってみても、のんきな寝息は乱れも
しない。外では、チョコボ達がとっくに目を覚まして鳴き交わしている声が聞こえる。
教会との戦いが決着し、名前さえないこの辺鄙な農村に小さな家をかまえてからと
いうもの、寝起きの悪さは夫に対する私の唯一の不満だったが、最近そうでも
なくなってきた。
「起きないな……?」
そろそろとラムザの腕から抜けて身を起こし、シーツの上を足下側へ移動する。
毛布をめくっていくと、体毛のうすい足の付け根に、くたりとぶら下がっているものが
ある。昨晩も明け方近くまで私をさんざん貫いたり、汚したり、泣かせたり、その他にも
その、いろいろやったそれは、今はさすがに力を失ってしぼんでいる。その可愛らしい
ものを手のひらに乗せて、ふっと軽く息を吹きかけてやると、その下の袋がひくりと動いた。
ラムザはまだ目覚めない。私は彼のものを舌ですくい上げて、ちゅるりと口の中に
吸い込む。唾液をまぶしながら、もぐもぐと噛んだり舐めたりしていると、柔らかかった
ラムザがたちまちぐんぐん大きく、固くなってくる。
ラムザのものは世の男性の標準よりもずいぶん大きいらしい。仲間の男達が昔から
言うには、特に膨張率が凄いそうで、確かに完全に大きくなりきってしまうと、とても
口の中には収まらない。そそり立ったものを口から出して、ベッドの上をさらに回り込み、
脚の間にうずくまる。こんなこともあろうかと、ベッドは少し大きめに作ってあるのだ。
あらためて先端をくわえると、ラムザが初めて声を漏らした。
「ん……ん」
夢うつつ、というところだろう。袋をもみほぐしながら、幹の部分をたんねんに舐めて
いくと、少しずつ声が高くなってくる。尻の筋肉がぴく、ぴくと動いて、快感をこらえて
いるのがわかる。ふふふ、抵抗しても無駄だ。どこが気持ちいいか、どうされると弱いか、
ぜんぶお前自身に教わったのだぞ。
何しろ起きているときのラムザはそれはもう助平で、その上、なんだ、いろいろと
上手くて、私はほとんど翻弄されっぱなしなので、こんな風に彼を好きにできるのは、
今のところ朝のこの一時だけだ。だから私は、ラムザのねぼすけも嫌いではない。
「あぅ……あ……っ」
根元のところを乳房ではさんで上下にゆすり、ぱんぱんに張りつめた先端を何度も
しゃぶっているうちに、えらのところがぎゅうっと張りつめたように固くなってくる。限界が
近い証拠だ。裏側の弱いところを舌で何度もこすりながら、唇をすぼめて吸ってあげると、
「んふぁッ……アグ……っ!」
寝ぼけた叫び声と同時に、びゅくん、びゅくんと熱い粘液が口の中に飛び出してきた。
ゆうべもあんなに出したのに、どこからこれほど出てくるのだろう。舌の上に注がれる、
もうすっかり慣れ親しんでしまったその味を、私はゆっくりと口の中で転がして、
飲みくだしていく。あらかた飲み終えて、残りを吸い出しにかかろうと思ったころ、
頭にそっと手がそえられた。
「アグリアスさん……おはよう」
うっすらと上気した顔を上げて、ラムザが決まり悪げな笑みを浮かべている。私も
口元をぬぐって顔を上げ、微笑み返す。
「おはよう、ラムザ。また寝坊だぞ」
頭をこづくかわりに、胸の間にはさんだ赤黒い先端をぴん、と指先ではじいてやる。
まったく、こっちのラムザの方がよほど寝起きがいい。頭を掻きながらラムザは起き
上がり、私を抱き寄せておはようのキスをしてくれる。ラムザの唇の味と、ラムザの
精の味。私が朝、一日のはじまりに味わうのは、いつだってラムザの味だ。
そのうち、私を抱き寄せていたラムザの腕が、別の動きをはじめる。私は抵抗しようと
するが、完全に目を覚ましたラムザはもう私の思い通りにはなってくれない。私が
ラムザの腰の上にのしかかっていたはずなのに、魔法のようにいつのまにか体勢が
逆転している。
「こら、ラムザ。たまには早く起き……んっ」
「その前に、僕にもおめざを下さい」
こうして私は、しっかりとラムザに逆襲されてしまう。ラムザも一日のはじまりに
味わうのは、いつだって私の味なのだ。
朝のおめざを味わいあった後、ラムザをせかしてベッドを出る。チョコボ農家というのは
本来、夜明け前に起き出して働くものだ。陽がすっかり昇りきってからようやく窓を
開ける私達の家などは遅出もいいところで、だから起きてから昼時までは、遅れを
取り戻すために人の倍も頑張らなくてはいけない。
「ただいまーっ」
正午近く、私が畑の見回りと草取りを終えて昼の支度をしていると、汗みずくになった
ラムザが戻ってきた。近場の草地は朝のうちにみんなよその家にとられてしまうもの
だから、ラムザはいつも遠い山裾の森まで放牧に行かなくてはならない。自業自得だが
それが幸いしてか、うちのチョコボ達はみな健脚だ。
温めておいたパンをオーブンから出し、ポーキーの肝臓から作ったパテをたっぷり
塗ったのを、豆のスープにひたしてラムザはもりもり平らげていく。こんなに健啖で、
筋力だって決して弱くないのに、ちっとも体に肉がつかないのが昔から不思議でならない。
体質だろうか
。
昼食を終えて、皿を下げようと席を立つと、ラムザに後ろから抱きつかれた。振り向くと、
すかさず唇がふさがれる。
「ラムザ……こら、こんな昼間……か…らっ……」
息継ぎの合間に抗議しても、ラムザは聞いてくれない。何度ものキスで舌と口の中を
弄ばれて、私はすぐにとろん、とした気持ちになって、ラムザの腕にあらがう気をなくして
しまう。この癖をなんとかして直さないと、いつでもラムザの言いなりになってしまうという
危機感はあるのだが、そもそもキスの気持ちよさや技術を教わったのがラムザから
なので、簡単には克服できそうにない。
ラムザの手がするすると私のシャツをはだけ、スカートの下に入り込む。あそこや、
ここや、いろいろなところを撫でられるたび、どんどん私の体から力が抜けていって、
かわりに奥底で眠っていた熾き火が燃え上がってくる。スカートをめくり上げ、片脚を
かかえ上げられた頃には、いまが昼日中だ、などということはほとんど私の頭から
消え去っていた。
テーブルの上に押し倒されるような姿勢になった私の指先に、空になった木皿が
当たって音をたてる。
「あ、後片付け……が……んッ……」
「あとで僕も手伝いますから」
最後の理性による抵抗もあっさりと口づけで封じられ、汗の味のするラムザの肌が
おおいかぶさってきて、それからしばらく私はテーブルの上で、ラムザの食後の
デザートになった。
皿洗いをきっちりラムザにやらせた後、午後の仕事。草刈り、薪割り、鳥舎の掃除、
労働八号のメンテナンス、乾し肉作りにピクルス漬け、仕事は毎日山ほどある。
その途中、散歩がてら野草摘みに行った林の中で、
「ラムザ……こんな所で…っ………!」
私はラムザに、スカートの中にもぐり込まれていた。
松の実やきのこがよくとれる、緑の濃い雑木林の外れ。私は太いトウヒの幹にもたれ
かかり、その背後には数本の灌木をへだてて街道が通っている。辺地のこととて滅多に
通る人もないが、それでも行商人や、たまの遠出をする村人などがいつやって来ない
ともかぎらない。もし通りかかる人があれば、木によりかかってスカートをたくし上げた
私の姿はすぐ見つけられてしまうだろう。
「やめ、やめるのだ、ラムザ……誰かが来たら……んっく」
私は必死にラムザの顔を押し戻そうとするが、腰をがっちりつかんだラムザはびくとも
しない。舌が巧みに動いて、私の敏感な部分を舐めたりつついたりすると、その腕にも
だんだん力が入らなくなっていく。
「ラムザ……ああっ、ラムザ……!」
見つかるかもしれない、今にも誰かに見られてしまうかもしれない。そんな焦りを
見透かすように、ラムザはわざとぴちゃぴちゃ音をさせて、じっくりと私をねぶる。
ラムザの顔は、私が溢れさせたものでもうびしょびしょだ。太もものつけねから中心まで、
丁寧に何度も何度も舐め上げられると、頭の中がぽーっと熱くなって、見られるかも
しれないという戦慄が、もっと別の甘い戦慄に少しずつすり替えられていく。やがて、
ラムザの唇が私の芯をとらえると、
「くぅン……ッ!」
子犬のような甲高い鳴き声を上げて、私は達してしまった。脚がふるえて、くずおれ
そうになるのを、ラムザが優しく支えて座らせてくれる。木の幹にもたれかかって
余韻にひたっていると、ラムザがおもむろにズボンの前を開けた。
「アグリアスさん……次は僕にも、お願いできますか?」
半分くらい起き上がったラムザのものが、ぬっと目の前に現れる。濃厚な男性の匂いが
鼻をつく。普通なら不潔なものとして顔を背けるべきはずのその匂いは、しかし私の
鼻腔から頭の中に入ってくると、ますます意識をとろかしてゆく。
左右を見回してみても、道には一人の人影もない。私はつばを呑み込むと、ラムザの
匂いに吸い寄せられるように身を乗り出し、口にくわえていた。ラムザが上から私の
襟元に手を入れて、指先で乳首を転がす。私はぎゅっと固く目をとじたままラムザを
しゃぶり、ほどなく今日二回目のミルクを飲む。
完全に力の抜けてしまった私の体をラムザが抱き起こし、口元や首筋にこぼれた精を
拭いてくれる。それから私をうつぶせにトウヒの幹に寄りかからせ、スカートをめくり上げた。
私は息をつめて、後ろから貫いてくるラムザを受け入れる。
結局最後まで、誰も通りかかることはなかった。
午後の仕事を一段落させて、夕方、放牧に出していたチョコボ達を連れ帰る。
ちょうど時間があったので、私も一緒に行くことにした。
我が家のチョコボ達のボスを務めるボコはベテランだけあって頭が良く、配下の
黒チョコボや赤チョコボも使ってたくみに群をまとめ、なまじな家畜泥棒など寄せ付けない。
そのため牧人もつけずにほったらかしで放牧ができるので、大変助かっている。ボコが
いなかったら、素人二人がいきなりチョコボ農家を始めるなど不可能であったろう。
その日も群をよく統率してくれていたボコをねぎらって、二人でチョコボに乗って家路に
つく。ボコの五番目の子供のノコは体格が大きく、二人乗りにちょうどいい。
夕日を浴びながら、のんびりノコの背に揺られる。もたれかかるラムザの背中が
あたたかい。すこし伸びてきた亜麻色の後ろ髪が頬をくすぐって、そろそろ散髪して
やろうか、などと思う。なんとはなし、ロマンチックな気分にひたりかけるが、油断すると
ラムザの手が、背中越しにするするとスカートのあたりに伸びてくる。
少しはムードというものを解しろ、と言ってやりたくなるが、ラムザにならいくらでも触って
ほしいと思ってしまうのも私なので、あまり強くは言えない。手はスカートの中に入り込み、
私のお尻を撫で回す。その指先の動きが、遠慮がちにある特定の箇所を目指して
いるのが感じられる。
ラムザは最近、私のお尻も愛したいらしい。決して無理強いはしないが、機会をみては
私のお尻、特にその中心部をそろそろと、やさしく愛撫してくる。そんな不浄なところで
愛し合うなどということは、最初考えられもしなかったが、ラムザの指や舌が何度も
通り過ぎるうちに、少しずつ未知の熱さをその部分に感じるようになってきた。遠からず、
私のそこはラムザに開発されてしまうだろうという、甘い予感がしている。
「おやまあ、ルグリアさんの。お二人で、仲のいいこと」
ラムザの指使いに炙られてとろとろとなっていたところへ、突然声をかけられて私は
飛び上がった。でっぷりと肥えた血色のいい中年の農婦が、チョコボの足元でにこにこ
笑っている。村で一番刺繍のうまい、ドナさんだ。私もときどき習いに行っている。
「やあ、ドナさん。ごきげんよう」
ラムザは私のお尻をいじりながら、平然と挨拶をする。羽毛とスカートに隠れて、
相手からはラムザの手は見えない。
「アグリアスさん、そろそろまた遊びにいらっしゃいな。姪っ子がねえ、あんたに会いたがって」
「はい……近いうち、お邪魔、しま、す、んっ」
ラムザの指に意地悪くこねくり回されながら、私は必死に平静をよそおって返事をする。
そのまま通り過ぎればいいものを、ドナさんはわざわざ来た道を引き返して私達についてくる。
「このハンケチ、いいでしょう? 新しい飾り縫いを考えたの。針だって、あんたは器用じゃ
ないんだから、人より練習しなきゃならないのよ」
「がんばり……ま…す……ッ!」
ラムザの指がもたらす熱に、羞恥心が加わって、腰がぐつぐつ煮られているようだ。
夕陽のせいで、顔が赤いのはわからないらしい。歯を食いしばって声をこらえている私に、
ドナさんはその後もしばらく他愛ない話をしてから、ようやく歩き去っていった。太った
後ろ姿がチョコボ達の向こうに見えなくなってから、ラムザは手を離す。殴るなり、つねるなり
してやりたかったがその力もなく、私はくったりとラムザの背にしがみついた。
チョコボ達を鳥舎に入れて水と餌を運び、ブラシをかけてから、残ったこまごまとした
雑事を片付けて、ようやくその日の仕事がひとまず終わる。私が一日のうちで二番目に
楽しみにしている、入浴の時間だ。
労働八号の動力炉につなげることで、あっというまに大量の湯が沸かせる強力温熱機を
作ってくれたのはムスタディオだ。この装置のおかげで、我が家では毎日お湯をたっぷり
使って体を洗うことができる。フィナス河産の玉砂利を敷きつめた浴室で、大たらいの湯に
下半身をひたして温まりながら、石鹸の泡を肌にすべらせる。ラファに教わって作った
ガルテナーハ秘伝の白石鹸は香りがよく、すばらしくなめらかな泡が立つ。オークス家で
使っていたのよりも上質だ。
こんな辺地で日々チョコボを追い、畑を耕す暮らしをしていれば、美容に気をつかうのも
限度がある。化粧もろくにできないし、肌は荒れ放題だ。それでも、ラムザの妻として
、
少しでも美しい女でいたい。ラムザが誇れるような妻でありたい。そう思いながら、
カシミールで作った洗い袋で念入りに肌をこする。
「背中、流しましょうか」
浴室の戸を開けて、ラムザが入ってきた。たらいの湯を手桶に汲んで、頭からかぶって
おざなりに体を流す。夫はいつも雀の行水だ。苦笑しつつ、背中を向けて体をあずける。
「ん」
私の肩を受け止め、洗い袋で背中をこすっていくラムザの手つきにいやらしさはない。
今は純粋に私の疲れをいやし、肌を気づかってくれる心が肩を支える手からつたわって
くる。うっとりとなって身を任せていると、じきに背中はすっかり洗われ、そのままごく
自然な流れで私はラムザの腕の中に抱き寄せられて、
「アグリアスさんは、日に日に綺麗になりますね」
しみじみとそんなことを言うものだから、私は一気にうなじまで赤くなってしまった。
ラムザは時々、私の心を見透かしたような、心臓がひっくり返るようなことをさらりと
言う。そのくせ本人も割と照れ屋なので、今だって背中にはどきどきと速い鼓動が
伝わってくる。
ふと、以前にラムザが遠慮がちに言い出した「特別な洗い方」のことを思い出す。その時は
恥ずかしさのあまり張り倒してしまったが、今ならできそうな気がする。私はラムザの腕の
中から抜け出して洗い袋を奪いとり、石鹸をつけなおすと体中をこすりまくった。両腕から胸、
腹にかけて、一面きめ細かな白い泡で覆われる。
「ラムザ、お前はいつも洗い方がぞんざいでいかん。今日は私がその、お前を洗ってやる」
「え」
反論の隙を与えず素早く背後に回り込んで抱きつき、胸をぎゅっと押しつけて体を
上下させる。押しつぶされて滑る乳房に何ともいえぬ感覚が走り、ラムザの背中に鳥肌が
立つのがわかった。
「うわっ……!!」
「気持ちいいか……?」
ラムザは答えないが、息をつめた体の手触りから続きを期待しているのがわかる。私は
気をよくして、腕、脇腹、脚、と順々にラムザの体を洗っていったが、調子に乗って胴体の
前側を洗おうとしたところでラムザに捕まった。乳房が痛いくらい押しつぶされて、しびれる
ような深いキスをされる。そこからはどっちがどっちを洗っているのか、わからなくなって
しまった。
夕食を終えると、村は月明かり以外に照らすもののない一面の夜闇に包まれる。私達
夫婦が貴族の生まれであることを実感するのはこんな時だ。平たく言えば、村中で
我が家だけが、ランプをつけて夜も働く習慣をもっている。
灯心油は高価だが、明かりを灯すことではかどる仕事の量を思えばそう高い買い物
ではない。もっとも私達の場合、朝が遅い分の埋め合わせを夜にやっているという
一面もあるので、あまり賢いやりかたではないかもしれない。ともあれ、そういうわけで
私達二人がベッドに入るのは、たいてい夜もずっと遅くなってからのことになる。
「ん……ラムザ……ラム……」
昼間、あんなに色々なことをしていたのに、と思うが、やはり夜のいとなみというのは
特別の意味合いをもっている。毎日毎日、飽きるほど触れあっている肌でも、シーツの
中で抱きしめあうと、
(待ちこがれていた……)
という気持ちになってしまう。それはどうやらラムザも同じらしく、夜のラムザは一日の
うちで一番荒々しい。
今、私はラムザに組み敷かれ、唇を吸われながら激しく貫かれている。熱くて太い杭が
体の中心を何度も出入りして、その熱さだけで燃え尽きてしまいそうになるのを頑張って
こらえる。こらえて、こらえて、こらえきれなくなった頃をみはからって胸の先端を甘く
噛まれたりすると、私はあっけなく決壊してしまって、ヒクヒクとふるえる私の中から
引き抜かれたラムザに、私はぼうっとした意識のまましゃぶりつく。ほどなく、顔から胸に
かけてどろりとしたラムザの熱いものがぶちまけられて、その熱で私はいったん正気に
返る。ここまでは毎晩、たいてい同じ流れだ。私はラムザの妻なのだから、中に放たれ
ても少しも不都合はないのだが、ある別の理由で、夜もはじめのうちは中をひかえて
もらっている。
ラムザの熱を顔に感じてうっとりしていると、抱き寄せられて長いキスをされる。自分の
出したものがまだ残っている私の顔や唇に口づけることを、ラムザは気にしない(もっとも
それを気にしていたら、ベッドの上でラムザがキスできるタイミングはとても限られたものに
なってしまうのだが)。その後、ラムザの手が私の体中を這いまわったり、ラムザの舌が
私の胸とおなかばかり虐めたり、お返しに私がラムザのものを挟んだり、色々とその、
気持ちよくなった後、ラムザがあぐらをかいた姿勢で私を抱き上げて、私はラムザと
抱き合いながら、ゆっくりとラムザのものを中に収める。向かいあったままつながれる
この体勢が、私は好きだ。ラムザの腰の上に座る形になるので、私の顔がラムザより
わずかに上にくるのも気分がいい。頬や額にキスをしたり、舐めたりしながら一心に
腰をゆすっていると、だんだん限界が近づいてくる。私の体が、ラムザを受け入れるための
本当の準備を終えて、待ちきれなくなっているのがわかる。
「ラムザ……もう、私……ッ」
両脚でぎゅっとラムザの腰を押さえつけると、それが合図だ。ラムザも私の腰に手を
添えて、ねじこむように私の体に深々と腰を突き立てて、そして、
(どくん……びゅる……)
そんな音が、私の耳の奧で聞こえる。
実際にはそんな音がするはずはない。だが、私の耳には確かに聞こえる。ラムザのは
長さも硬さもすごいが、それ以上にすごいのは精の出方で、朝から何度も出したというのに、
量も濃さも勢いも信じられないくらいあって、それが私の一番奧の部分に、叩きつけられる
ような勢いでどくどくと注ぎ込まれる。体の中をいっぱいに満たすその粘っこい、たぷたぷした
熱さが、全身にじんわり染みわたっていって、そうなると私はもう、思考がとろけてしまって、
幸せで何も考えられなくなってしまう。はじめのうち外に出してもらっているのは、つまり
そういうわけなのだ。
そこからはもう、ラムザのしたい放題だ。脚を高く上げた淫らな姿勢をとらされたり、
とても口に出せないところを舐められたり、ほとんどどんなことをされても、私は拒めない。
拒むどころか、恥ずかしさが快楽を後押しするようになって、普段なら口が裂けても
言えないような言葉でラムザにおねだりをしたりしてしまう。全身が敏感になっている
ところへ、ラムザのねちっこい指先や舌がくまなく攻め込んでくるので、ラムザが一回
精を放つ間に、私の方は二、三回は達するのが普通だ。そしてラムザときたら、
一晩に一回や二回では治まりっこないのだ。
その夜は、四つん這いになって獣の姿勢で後ろから貫かれ、お尻をいじられながら
三度目の精をお腹の中に受けたところまで覚えている。私自身はそれで六度目か
七度目の絶頂を迎えて、もう許してと懇願していたような気がする。しかしもちろん
ラムザは許してくれなくて、そこから先はもう何もわからなくなって、
「ラムザ……ラムらぁ……」
ろれつの回らない舌で夫の名を呼びながら、ひたすら夢中でしがみついていたのを
覚えている。
それから、どれほど時間がたったのかわからない。次にはっきりと記憶にあるのは、
なかば失神した私を力強く抱き寄せてくれた、ラムザの腕だ。朦朧としたままラムザの
胸板に額をすりよせると、ラムザはやさしく髪を撫でてくれる。その感触で安心して、
私は眠りに落ちていく。明日はまた忙しい、ラムザとの一日がはじまるだろう。
こうして私の一日は、ラムザの腕の中で終わる。
「なっ………なッ……」
「どうでしょうアグリアス様」
「結構いい線行ってると思うんですけど」
「何だこれはーーーーーーっ!!」
アグリアス・ルグリア、旧姓アグリアス・オークスは美しい金色の髪を逆立て、手にした
紙束を振り回してかつての部下を怒鳴りつけた。
「ですから題して『若妻女騎士のラブラブ性活日記』。緻密な考察と演繹的推理に基づいた
ドキュメンタリー志向の本格ロマンスです。いや、我ながらこんなに文才あったなんて
意外だわー」
怒鳴られる方は慣れたもので、アリシアもラヴィアンもすっかり平民暮らしが板に付いた
格好をしてきゃらきゃらと笑い交わしている。
「ラヴィシア・アリアンって筆名は、ちょっとどうかと思ったんですけど」
「ペンネームなんてシンプルな方がいいのよ。ともあれ、これで停滞するイヴァリース
官能小説界に新風をですね」
「いらん新風を起こすな! ラムザ、お前も笑ってないで何か言え!」
さっきから笑い転げて読んでいた傍らのラムザが、目尻の涙をぬぐって椅子に座り直す。
「いや、まあ、面白いけどね。実際には明け方まで頑張ったら、昼間のうちはさすがに
何にもしないよ。疲れるし」
「え?」
「……『実際には』?」
「チョコボ飼ってるし赤ん坊もいるから、毎朝は寝坊できないしね。あ、あとあの洗い方は
僕が教えたんじゃなくて、アグリアスさんがラファから」
「余計なことを言うなあっ!!」
鉄拳で夫を沈黙させ、湯気をふくほど真っ赤になったアグリアスは原稿の紙束を
奪いとって床に叩きつける。その音に驚いたか、隣室から乳児の泣く声がほそく
聞こえてきた。
「ああっひどい! あと二十九日分あるのに、せめて読んでから」
「読めるかっ!! ……む、バルバネスにお乳をやる時間だ。アリシア、ラヴィアン!
下らんものを書いた罰として、外へ出て薪割り二百本! ラムザは労八の分解整備!」
「えー」
「隊長横暴ー」
「私達、お客ですよ? 上司の結婚生活を心配して見にきたかわいい元部下に、いくら
図星を指されたからといって」
「やかましい! さっさと行けッ!!」
ランベリーの東端、国境にほど近い山裾の寒村に、ルグリアという名の一家が暮らして
いる。久々の来客を迎えたその夜、窓の灯は普段よりも遅くまでともっていた。そして
翌日の晩には、ずいぶん早く消えたそうである。
End