その店は昼間から案外と賑わっていた。港湾都市という奴は他の街より活気はある代わりに、綱紀粛正などという言葉とは無縁だ。
ステージの上では一人の踊り子が艶かしく踊り、日焼けした屈強な酒飲みオヤジたちの喝采を浴びていた。
興が乗ってきたのか、踊り子が淫蕩な笑みを浮かべながら薄手の上衣に手を掛ける。期待に粘つくような男どもの視線に、
焦らしながら片方だけ乳房を晒す−−異様なまでの大歓声。
女はその格好のままステージから降りると観客の一人に正面から跨り、乳を客の顔に接触するほど近づけて、
くねる腰を相手のそれに擦り付けはじめた。
男の表情はヨダレが垂れそうなほどに緩みきっている。見えないが股間が相当滾っていることだろう・・・
まぁ、別にそんなものを見に来たワケじゃない。オレは酒場の主人に近づき、金貨を五枚投げて遣した。
「戦える人間が3、4人ほしい。期間はとりあえず三月程、仕事内容次第で延長する。可能なら今すぐに」
「西から来た4人組がいる。だが腕は相当立つが、多少風紀に問題が・・・」
「構わん。繋ぎをとってくれ」
主人は無言で頷くと金貨を拾い、奥へと消えた。
死ねばいくらでも替えが利くただの駒に、風紀だの道徳だのなんて期待していない。道中でザコに襲われた場合の露払いが務まれば、それでいい。

「では、貴方が私たちの新しい雇い主ってワケね。よろしくお願いするわ」
潮風吹く甲板、陸地から遠く離れたグレバドス教会所有の小型船上。眼前でニヤニヤしているのは雇った傭兵たちのリーダー・・・
のはずだが、ここにいるのはどう見ても酒場で半裸で踊っていた女だ。
・・・これはなんだ、教会の仕込んだドッキリとかそういうオチなのか?
酒場のオヤジが用意したメンツはこの踊り子を筆頭に、話術士、陰陽士、風水士、全部オンナの傭兵団。
ラインナップが微妙すぎる。
「じゃあ早速で悪いんだけど、雇い主。うちの風水士を抱いてあげて頂戴な」
「は?何を唐突に」
当の風水士は踊り子の後ろに隠れている。なんかおどおどした態度に、気弱そうな顔は可愛いといや可愛いが、あまりアタマのキレるタイプじゃなさそうだ。
「知らないの?風水士は一日一回はイかせてあげないと、感度が落ちて風水使えなくなるのよ」
ウソつけよこの元風水士(しかも最低Lv5)。
「そうなんです・・・お、お願いします・・・ご主人様ぁ・・・」
いや騙されてるよアンタ。何ご主人様。誰ご主人様?オレ?
「うふふ。ね、あのひとがね・・・」
話術士が風水士の耳に口を近づけてなにやら囁く。
「ああん・・・」
途端、風水士の瞳が切なそうなそれに変わり、熱い息を空に吐き始めた。むっちりしたむきだしのふとももを、焦れるようにこすり合わせる。
「ほら、もう準備万端。うちの話術士のエロ話は凶悪な効果よ。普段から調教してるのもあるけど。いつもいつも陰陽士の棒が相手じゃ、アソコがいつか壊れちゃうものね」
勝手に期待し始めたエロ風水士は、胸の先端も服の上からはっきり分かるほどに勃・・・って、中何も着せてないのか?
「それも知らないのね。風水士はね、風と気を感じるためには余計な衣服は」
・・・もういい。オマエがこいつを騙して遊んでるのは良く分かった。そしてうつぶせて尻を突き出すな風水士。
「あら、若いオンナも満足させられない人?なら残念ながら、雇われてあげることはできなくてよ。その位の望みは叶えられて、はじめて人の上にたつ器じゃなくて?」
踊り子のその台詞にはさすがにカチンときた。
・・・分かった。いいだろう。それが望みなら、そのやり方でオマエら全員オレにつき従わせてやるまでだ!!!


「ラーグ公もゴルターナ公もおまえの兄キたちも、皆、ひとつの大きな流れの中にいることに気付いていない・・・そう、気付いていないんだ。オレはその流れに逆らおうとしているだけ。それだけさ・・・」
「ディリータ・・・」
言って、俺はラムザに背を向けた。
「きゃ〜〜vvvこれ?これがラムザくん?いや〜ん、カワイ〜〜〜!!」
「うふふ、ね、おネエさんたちとイイことしない?」

ひ・・・人がせっかく格好をつけたところをッ・・・

「君らしくない華やかなチョイスだね、ディリータ」
やかましい!ニヤニヤすんな!!
「余計なお世話だ!成り行きだ!」
「あ、『大きな流れ』ってそゆこと?逆らえてないじゃん? プフー (-m-*)」
「こ、このアホ毛ッ!!殺してやるぞ、殺してやるーッ!!!!!!!!」

久々に取っ組み合いのケンカを繰り広げたオレたちは、ウォージリス港湾警備の騎士にみっちりと説教を喰らうハメになったのであった。

(See Next.)




「・・・・・・へ、ヘンなコトやめてよ・・・謝ってるでしょ・・・」
ライオネル城の地下室。陰陽士が、懇願するような顔でオレを見る。
スッキリ満足した寝入り端を突然襲われて、どことなくボーイッシュなその女は風水士の蔦地獄でベッドにハダカのまま大の字に縛り上げられている。
「やかましい。大事な姫様に手を出しやがって」
女ばかりと思って油断していたのはまずかった。てか、なんだってこう色情狂ばかりなんだお前らは。
「だって、すっごい好みだったんだもん。最初は嫌がってたけど、途中からは私のテクにもうメロメロだったわよ?陰陽術はスナオなココロを導き出す魔法で」
だったらなんであいつはエグエグ泣きっぱなしなんだよ。
「ま、やっちゃった以上は、お仕置きしないとねぇ」
「ひ、や、許して・・・も、もうしないから!!!」
舌なめずりでもしそうな勢いの踊り子に、陰陽士は本気で怯えてカタカタ震えはじめた。
どうやら仲間うちでも手心は加えなさそうだな。てかそんなにヤバいのかコイツ?
「さて、とりあえずどうしようかしら雇い主?」
「もう男も女も誰も抱けない体にしてやる。とりあえずお前ら全員で交代で犯せ・・・ったって無理か」
「そんなことないわよ?ほら、ここには彼女のコレクションが山ほど」
言いながら、踊り子はつかつかと部屋備えの鎧棚の前に近づく。
開いたその中には、・・・棒、棒、棒の山。
なるほど。
「・・・オマエは真性のサディストだな」
とりあえず一本手にとってみる。
「バトルバンブーか。意外と太いな」
「ゴクウの棒は相当すごいらしいわよ」
「ちょっと!コワいこと言わないでよ!!!」
全裸の陰陽士がぶんぶん首を振っているが、風水士の戒めはびくともしない。さすがエロパロ名物ツタ地獄。
「風水士、足は上から吊って開かせろ。・・・鉄扇とか挿れたら面白くないかな。絵的に」
「こっちのがすごそうよ。八角棒。挿れてぐりぐり回したら、本当に壊れちゃうわね」
うっとりした顔で棒を眺める。オマエは踊り子より刑吏とかのほうが絶対向いてるよ。
「よし、じゃあ二穴同時責めで」
「いいわねソレ」
「いやーーーッッ!!」

陰陽士の絶叫が、ライオネルの城に響き渡った。
自業自得だアホ。

(See Next.)



「話術士。ちょっと勧誘いってこい」
「へ?ナンパ?どの娘かにゃ??」
愛銃片手にキョロキョロと戦場を見渡す話術士に、オレは有能そうな竜騎士を指し示した。
命知らずな盗賊団の中でもその高級装備は浮いている。あれは明らかに雇われモノ、交渉次第では十分引き抜けるはずだ。
「あの娘が欲しい、りょうかーい。ディリ太、私たちじゃ満足しなくなったのん?」
誰がディリ太だ。
「タワゴト抜かすな。オマエらサポートジョブばっかりじゃねーかよ!!前線にオレ以外の奴欲しいんだよ!」
+8まで持ってる竜騎士なんてそうはいない。このチャンスは逃したくない。
「へいへい。いってきま」
トコトコと修羅場に近づく話術士。・・・大丈夫なんだろなありゃ。

がんがんがんがんがんがん。

話術士が、突然一気に宙に向かって銃を連発した。竜騎士を含む全員の視線が、彼女に釘付けになる。
話術士は可能な限りのシブい声で−−

「待ちな!アンタが何を考えてるか分かるぜ。言っておくがこいつはブレイズガン、お前のドタマなんか一発で吹っ飛ぶスーパーガンだ!だがつい夢中になって
何発撃ったか忘れちまった!どうする、おとなしく投降するか、それとも弾装がカラになったと賭けてみるか!運がよけりゃアンタはラクに死ねるぜ!」

静寂。
全員「(゚Д゚)ハァ? 」という顔で彼女を見ている。
古い上にイタいな。ま、言うまでもなく失敗なワケだが。

「雇い主!失敗しました!」
バカこっちみんな。仲間と思われたら恥ずかしいだろ。
再び全員が戦闘に戻る。とりあえず、全員の心の中で今のはなかったことになったらしい。
「普通にやれタコ。できないならお前クビ」
「にゃ!?じゃ、じゃあできたらご褒美ですよぅ!」
ふたたびターッと竜騎士に走り寄って・・・
タァン、と再び空に一発。
「よく聞きな、チンピラども!あんたたちのボスはひとでなしだ、あんたらのことをなんとも思っちゃいない!!忠義を立てても得はないよ!!おとなしくハナシを
聞くか−−そうでなきゃ、ここであたしと心中だッ!!!」
それもどうなんだよ。

そして、戦闘後。
「そんなワケで、みんなの新しい仲間の竜騎士ちゃんです!拍手〜〜」
「・・・・・・」
満面の笑みの話術士に付き添われ、竜騎士の女は兜も外さず無言で会釈した。
つかなんであれでうまくいくんだかいまだに納得いかないんだが。一体何のクスリを嗅がせたんだ。
「そんなワケでディリ太、今夜は彼女のお相手をよろしく!!初めてだそうだから、やさしくしてあげてにゃ」
「え、な、またそういう展開かよッ?!」
「えーだって約束しちゃったもん。ディリ太に一目惚れだってさ。ねー」
『ねー』じゃねぇ。お前も赤くなって俯くな新入り。
「たまには竜じゃなくて男のコにまたがってみたいって。あ、あたしもご褒美もらえるんだよね?ね?」
アホなコト言って締めるなこの池沼話術士!オレの苦労を増やすんじゃないッッ!!!
ああ・・・またバルマウフラとオヴェリアに白い目で見られるな・・・・・・・・・_| ̄|○ 川


で。
挨拶に兜も外さないと思ったら、拾った女は『人前で鎧を外したことがない』というトンデモ設定の引き篭もり竜騎士で。
ギシギシどころかメキメキと音を立てるベッドの上で、オレは重装備の女(となぜか話術士)にその後幾日も跨られるハメになったのだった。


「最近、各地で頻発している反乱もすべて教皇の企みなのか・・・。しかも、決着をつけようと、両軍がベスラ要塞に集結しつつある。まさに、きみたちの計画どおり というわけか」
「ああ。・・・だが、決着はつけさせない。なぜならその戦いの最中、ゴルターナ公とラーグ公は何者かに暗殺されることになるからだ」
「そういうことか。それはそうとディリータ。・・・ずいぶんやつれたね・・・」
「・・・お前もな、ラムザ・・・」

町外れの教会の中。歴史の一ページの途中で・・・オレたちは、そろって大きくため息をついた。(FIN.)