肩を叩かれた女騎士がようやく顔を上げた。
「大丈夫? 声、聞こえてなかったみたいだけど」
「すみません。隊長」
 ラムザはにっこり微笑んでもう一度女の肩を叩いた。
「君は無事に暗黒騎士になれたわけだし、その色々気に病むかも知れないけど実際の所僕たちは」

 毎日のように人を斬っているじゃないか。
 最後まで言い切る前にムスタディオがその脇腹を小突き、一時妙な空気が流れた。
「うん、きっと眠ると疲れも取れるよ。今日は宿にも入れたし早く寝るといい」
 笑みを取り戻したラムザが促すと、女騎士も弱々しく作り笑いを浮かべて部屋に戻った。

 ここ数日は激戦の連続だった。
ドグーラ峠を越えベルベニアで一騒動、追っ手に怯え、休む間もなくフィナス河を越えて現在に至る。
その間に人は言うまでもなく斬ったし、そうでないものも大分斬った。
 元々のナイーブな性格が災いして前線に立つと手当たり次第に斬り倒してしまう一種の癖。
そのおかげで気付いた時には暗黒騎士になっていた。
 ラムザは喜んでくれたが、不安で不安で仕方無かった。


 灯りを消して横になるといよいよ心臓が張り裂けんばかりに高鳴って、自然に手が伸び自らの剣を引き寄せた。
 なるべく嫌な事は考えないように。
下の階にいるムスタディオ達の喧噪に耳を澄ませているといつしか剣は汗ばんだ手の中をすり抜け、女も眠りについた。


 それから数刻も経たずして女は目を覚ました。
真っ暗な部屋の中、何者かが床板を軋ませながら近づいてくる。
 すぐさま灯りを探したが、いかんせん見当たらない。
女の薄いローブにじわじわと汗が染み込んでいく。
剣を掴もうとベッドの上に目を向けた瞬間、女の首を太い腕が掴んだ。
「剣なんか、ここにはない」
「どうして」
「ほら、灯りならここだ」
 男がいつの間にか左手に持っていた灯りで二人の間を照らすと女が悲鳴を上げた。
忘れもしない、自分が数日前に斬った騎士である。
「会いたかったぜ、ドグーラ以来じゃないか」
 男が耳元で囁き、首を締める力が強まった。
「暗黒騎士さん、ここ最近で人と畜生併せて何人斬ったよ」
「く、苦しっ」
 嘘だ、これは夢だ。夢に違いない。
「俺たちは成仏も出来ずに、あんた業が深い」
 ふと首を絞める手から解放された女がむせこんだが、間髪入れず男に組み敷かれた。
「容赦無かったよな、同僚の生首見てすっかり戦意喪失した俺を左の首筋からズバッとさ」
 殺される。早く覚めてくれ。
女は目を瞑り体をこわばらせた。
 しかし、予想とは違って男は女の唇を奪いその体に覆い被さってきた。
女の固く閉じられた口をこじ開けて男の厚い舌が侵入し、口内を執拗になぞられた女が声を上げようとしても、
ただただ呻きが漏れるばかりで声にならない。
 こんなに現実的な夢は初めてだった。

「死なせるのは簡単だが、とにかく苦しんでもらうぜ」
 男がローブを強引に剥ぎ取ると、隠れていた大きな胸と白い肌が露わになった。
「騎士にしちゃ色白なんだな」
 視姦に耐えかねた女が顔をそらすと男は口元を下品に歪ませて乳房に吸い付いた。
先端を舐め回し、もう片方の胸も乱暴に揉みしだかれる。
 男の行為は全身に及び、耳、肩、脇腹、太もも、と舌が這い回る度に女は身を震わせた。
そして秘部への愛撫。男の無骨な指が秘裂に沿って動かされ、何度も内部に舌が突き入れられた。
 抵抗できる相手ではないのは分かっている、だからこそやり切れず女の頬を涙が伝った。
「じゃあ、そろそろやらせてもらうぜ」
「いっ…っ…」

 男の剛直が秘所にあてがわれ、間髪入れず一気に根本まで挿入され
余りの激痛に女は目を見開き身をよじらせたが、それをあざ笑うかのように男の腰が動かされた。
「もっと、素直に感じときゃマシなものをよ」
 深く突き入れられては、半分ほど引き抜かれ、また突かれて、次第に男の動きが早まってくる。
ただでさえ経験の少ない彼女にとってはこのように嬲られるなど拷問以外の何物でも無い。

 獣のような男に蹂躙され、女はただ下腹部の痛みと嫌悪感に耐えて夢が覚めるか男の精が尽きるのを祈るばかりだった。
 しかし、何度膣内に白濁が注ぎ込まれても男は果てる気配を見せない。
荒い息遣いと共に太い男根が、もはや気力を失った女の内部を打ち付ける。
5度目の射精を感じた頃、女は意識を失った。


 朝、女が目を覚ますと男の姿は無かった。
恐る恐る起き上がってみたが、脱がされたはずのローブを身に付けている。
特に体の痛みも無い。
 全部夢であった。悪夢であったのだ。
ほっと息を吐いた女は剣を手に取るなり、床に落としてしまった。
 鞘にはくっきりと文字が彫り込まれていた。
「あと19」
FIN