今日も今日とて深夜の待ち合わせをした。ここのところほぼ毎晩の事で、つまりこれはもう日課みたいなものになっている。
野営地のそこかしこから鼾やら歯軋りやらが聞こえてくる。誰かがいきなり寝返りを打ったり寝言を呟いたりするのには、
やっぱり未だに慣れない。どうしてもビクっとしてしまう。たまに本当に起き出す者もいるから油断ならないのだ。
 抜き足差し足でそっと皆の天幕の間を抜けてゆく。鼾と歯軋り、そして寝返りの衣擦れから遠ざかる程に緊張感が薄れ、
代わりに性的な興奮が胸を満たし、股間に突っ張りを感じてくる。心が逸る、息が荒くなる。
昨夜、お尻大きいですねと褒めたら肘打ちを喰らったのを思い出す。女の人って、どうも分かってない人が少なくない。
くびれたウエストと二つ並んだスイカみたいなお尻の対比には、オッパイとはまた別の絶対美があるのに。
今夜こそ分からせてやりたい。いっぱい撫でて、口をつけて、ギュッて揉んで、分からせてやりたい。
 野営をする際に下見をしておいた場所には、相手が先に着いて待っていた。その背に下がる金髪の三つ編みが
月明かりを浴びて淡い銀色に見える。
 遅いぞ、と文句を言いながらもその相手が弾ける様な笑顔を浮かべているのが暗い中でもよく分かった。
小走りで駆け寄ってきた相手が跳ぶ様に抱きついてきた。相手の方が少し背が高いこともあって思わずよろめきそうになる。
 そこをグッと踏ん張って受け止めると、相手の胸に顔を埋める形になった。厚手の生地の向こうにある
双丘の柔らかさと、さりげなく薫る香水の匂いに早くも頭がクラクラしてくる。相手もそれをよく分かっているのか、
こちらを窒息させんばかりに後頭部を抱え込んでギュウッと胸を押し付けてきた。苦しいけど、気持ちいい。
 言葉ではとても表せないたまらなさがある。


 下腹部の奥に痺れる様な熱さを感じる。それは背筋を駆け上って脳髄に達し、思考を乱す。
我慢出来なくなって相手の服の上からその胸に思い切り吸い付く。直だったら痛いと言われかねない強さだが、
厚手の布地越しだからこれくらいで丁度いい。
 頭の上から悩ましげな吐息が降りかかる。こちらの頭を抱えていた腕の力が弱まり、解放された。
 洗濯が大変だから服に唾をつけるなとあれほど――と、相手が言い終わらない内に今度はこちらが相手の頭を抱え込んで
その唇をねぶる様にして吸い付き、反撃する。この時、いつもだったら相手はこの反撃にされるがままだったが、今夜は違った。
自分から積極的に舌を送り込み、絡めてきたのだ。今まではどこか恥じらいを残していたのか、こちらが舌を突っ込むと
それに応じる形でしか舌を絡めてこなかったのだが、それにしてもこういう変化がいちいち嬉しい。
段々と自分の女になってきていると実感出来る。あらかじめ敷いてあった毛布の上に相手を押し倒し、重なり合う。
相手は息を荒くしながらも一呼吸毎に甘く喘いだ。人前では絶対に出さないこの声を聞けるだけでも自分は幸福だと思う。
 いったん顔を離して相手の胸元に手を伸ばそうとすると、既に察していたのか相手は口元に妖艶な笑みを浮かべて
自ら服の合わせ目を開き、胸元をあらわにした。
 ポロン、と乳房が弾け、その先端で揺れる乳首に口を誘われる。乳房を掌で包み込んで撫でる様に揉みしだきながら
蕾の様な乳首を吸いたてると、相手は「んっ」と短く声をあげてビクリと身を震わせた。頬張った乳房の柔らかさとは対照的に、
乳首はコリコリと固さを増してゆく。その反応の速さに嬉しくなって、思う存分に時間をかけてネチこく愛撫したが、その内に
 もう、胸ばっかり! と怒られてしまったので苦笑いしながら下腹部へと顔を這わせていくと、突然相手が身体を反転させて
シックスナインの体勢になった。
 えっ、と思う間も無く怒張が暖かいぬめりに包まれ、股間の辺りから両脚にかけての力が抜けてしまった。
 今までも、しゃぶって欲しいと言えば恥かしそうに、遠慮がちにしゃぶってはくれたが、相手が自分からしてくれたのは始めてだった。
 今夜は一体どうしたというのだろう。妙に性急な大胆さに少し戸惑い、驚かされる。もしかしたら、生理が近いのかも知れない。
 この晩は結局、明け方近くまでやってしまった。翌日が辛いのは分かっていたのだが、ついついやってしまった。

 
 一応、二人の関係は秘密になっている。こちらは別に構わないのだが相手の方が「隊を束ねる者が風紀を乱す様な事があってはならない」
とか妙に固い事を言ってきかないからだ。でも裏では風紀どころか色々と乱れてますよねと言ったら拳骨で頭頂部を殴られた。
 そんな事もあって、深夜の限られたわずかな時間以外はお互い少し白々しいほど他人行儀に振舞う。
 しかし、気を遣って言わないでいてくれているだけなのだろうが、どうやらカンがいい仲間にはバレている様だ。
まあ当然かも知れない。連日二人して目の下にクマを作ってるんだから。もっとも、仲間の中にも数人、特定の男女が
クマを作っていたりするので問題無い。今のところ、隊内の風紀は(少なくとも表面上は)保たれていると言っていい。

 とにかく今は毎日が楽しい。少々寝不足でも楽しい。戦争の真っ最中だから余計にそう感じるのかも知れないけど。
 行軍中に前を行く相手の大きなお尻が左右に揺れるのを追い続けるのは楽しいし、固い胸当ての脇からのぞく布地の盛り上がりを
横目でチラチラ見るのも楽しい。逆に、気がつくと相手がじっとりとしたイヤラシイ目でこちらを見つめている事もあって、
そういう時は何もかも放り出してその場で相手を押し倒してやりたくなる。相手も多分同じ。だからその分、夜が燃える。そしてまた寝不足。

 そういえば最近仲間内でとうとう踊り子のジョブに就いた女の子が出たが、相手はあんな破廉恥な服装のジョブなど
資格は取っても運用すべきではないとか一人で憤慨していた。
 だから次の夜の待ち合わせには、相手に踊り子の服を着て来る様にと言ってやろうと思う。そして胸を隠しながらも
むしろその形をクッキリとあらわすくらいにタイトで、乳首が浮くほどに薄い布地の上から遠慮無く舐め吸い付いてやろうと思う。
 相手には古くから付き従う二人の同性の部下がいるが、その部下二人が上司の痴態を目の当たりにしたらどういう反応をするのだろう。
以前、冗談半分でその事を相手に言ったら、物凄く怒ってしばらく口を聞いてくれなくなったが、いつかその内
“偶然見られてしまう様なシチュエーション” を用意して見せ付けてやりたい。聖剣技を駆使する凄腕の上司が猫の様に
甘えた声を出しながら男に跨って腰を前後に揺らしているところを。

 だが、それは戦争が終わってイヴァリースが真に平和になる時までとっておこう。今は秘密、近い将来に残すお楽しみ。
 


                                           Fin